美鈴2



5スレ目 >>13,74,75,76


「皆がお前の名前を忘れても、俺だけはちゃんと覚えているから。だから――俺と結婚してくれ!ちゅうごく!!」


蹴り殺されました

→三途の河へ

幻想郷の外から来た俺は、紅魔館の門番である中国と言う妖怪に行き倒れていた所を助けてもらった。
それ以来紅魔館にお世話になり、中国とは友人以上恋人未満辺りにはなったと思う。

だがついさっき、紅魔館門前で中国にプロポーズしたら、何故か中国に蹴り殺された。

――――回想――――
「皆がお前の名前を忘れても、俺だけは忘れないから。
―――だから、俺と結婚してくれ !ちゅうごく !!」
プロポーズの直後、中国はまず赤くなり、何かに気付いて裏切られたような表情になった後にマジ泣き。

「〇〇さんの馬鹿ァッ!」

そして、上段回し蹴りで俺の側頭部にヒット。
ぐしゃり、と何かが潰れる音が辺りに響いた。


――――回想終了――――
因みに俺の最期の言葉は「白(グシャり」

痛みを感じる事もなく、次の瞬間には三途の河の前にいた。

「何が悪かったんだろう?」
やっぱりプロポーズの内容がいけなかったのだろうか。
だとしたら、何処の辺りなのだろう…。
やはり、フランやチルノ達に相談して考えたのが悪かったのだろうか ?

「…直球で『好きだ。結婚してくれ、ちゅうごく』の方が良かったのかもしれない」

いや、もしかしたら元々俺の事が嫌いで……
これ以上考えているとドツボに嵌まりそうなので頭を切り替える事にする。

――そういえば

「どうして誰もいないんだ」
だいぶ前に紅白に聞いたが、死んだらまず小町って不良死神に絡まれるから有り金全部渡して河を渡る……だったかな ?
でも実際問題、金なんて持ってないし小町って死神もいない。
と、なればもう最終手段(これ)しかないよな ?

「……泳ぐか」

ここが三途の河なら、渡り切れれば問題ないはずだ。
幸い河の流れも緩いし、なんとか泳ぎ切れない距離でもない。

軽く準備体操をし、深呼吸してから景気良く三途の河へとダイブする。
そしてクロールに移ろうとし、重大な事実と現実を思い出した。


――俺、泳げないんだった

必死にもがくが、段々と沈んでいく俺の身体。
落ち着け。
こういう切羽詰まった時こそ冷静に、クールになるんだ。
さぁ、落ち着く為にまず深呼ky…「ゴボブばっ!?」

…しまった。
つい水中で深呼吸をしてしまった俺。
んー、これが無酸素状態かー。
冷たいなー、寂しいなー、つーか、水面がとーのいて行くー。

……などと現実逃避している場合ではない!

しーきゅーしーきゅー。
誰か、たーすーけーてー。


…届け、俺のこの毒電波(思い)!の方が良かった……か………?

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
―― 博麗神社

縁側に座り、ズズーっと熱いお茶をすする。

「…暇ね」

もそもそと煎餅を探す。

……あった
煎餅を一口食べ、またお茶をすすってからまた一言

「…暇ね」

いつもなら魔理沙とかが神社に来る時間なのに、今日は誰も来ない。
煎餅をもう一口噛った。

「…… ?」
何処かで誰かに助けを求められた気がする。
直感だが
「まぁ、いいか」

あまり気にせず熱いお茶をすすった。


◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


→図書館

「……ハッ !」
どうやら俺は復活した様だ。
危ない危ない。三途の河を渡っていたらどうなっていた事か
――死んでまで死の恐怖を味わうとは思わなかったな

「あれ ?でも、なんで俺生きてるんだ」
先程の上段回し蹴りで、俺の頭は萃香割り……じゃなかった。
スイカ割りのスイカよろしく脳や色々なモノをぶちまけてある意味、十八禁状態だったはずなのに完全に再生してる。


まぁ、とりあえず――生きてるってスんばらしィイイ !


「生まれて二十年目にして、初めての味わった混乱(生の喜び)に我を忘れてしまいそうだ、ぜ。」

「気がついたのね」

何処かからか声が聞こえたので辺りを見回す。
辺りには本、本、本、本本本本本本本
本本本本本本本本本本本本本本本本本
本本本本本紫もやし本本こぁ本本本本
本本本本本本本本本本本本本本本本本

――って、あまりの混乱(生の喜び)に、こぁとヴワル図書館の紫もやし、
【ダチェルィ・ナウルゥェッジ】(【】内は巻き舌で)の存在に気付かなかった。


「こぁにダチェリィ「パチュリーよ」……パチュリーが蘇生させてくれたのか ?

ダチェリー、もといパチュリーはコクと頷いた。
「ありがとう紫もやし。この恩は三日程は忘れない !」

殴られた。


とりあえず何度も言ってる気がするが
「生きてるってスんばらスィイイ!!」
と叫びながら、こぁを抱き上げてグルグル回る。
「こぁあぁぁあぁああ~~~…… !」
こぁが叫び声を上げているが今の俺は例えレミリアや某真祖の姫君、お子様超魔王や二十七祖全員が同時に掛かって来ても止められない。


ごめんなさい。
嘘です。
まだ死にたくありません



回る回る回る回る回る回る回る回る回る回る回る回――


「使い魔としてだけどね」

時が止まった。
腕から力が抜ける。

「こぁっ ?!」

手からすっぽ抜けたこぁは、整理中の本の山に弾丸のように飛んでいき、派手な音を起てながら本の山にのまれていった。

「きゅ~~……」

本の山からかわいらしい呻き声が聞こえてくるが残念ながら俺にはそれを堪能する心の余裕がない。

「なに ?」

「だから、あなたは使い魔になったの。私の」


……………


「 な ん だ っ て ー ?!」
「まぁ、正確にはこの本 ――【転生の書】があなたの主人になるわね」

パチュリーはそう言いながら、黒いボロボロの分厚い本を差し出した。

俺はそれを受け取り、頁をめくってみる。
本に書かれてある文字はどう見ても日本語でも英語でもないのに、何故か読める。
――内容――
(※簡略化してあります)
【転生の書・黒】
この本の説明

1、死者の死骸と魂を使用し、この書の所有者の使い魔にする

2、使い魔にした者の命はこの書そのもの。一度絶命するたびに頁が一枚づつ消滅し、全て頁がなくなると使い魔の魂ごと消滅する。
また、この書が存在する限り不老である。

3、使い魔の種族はこの書に書き込んだ種族となる。
(この項目の横の名前欄に俺の名前が書いてあり、その下の種族欄には【本の精】と書いてある)

4、ぱちぇ萌え

5、超重大項目
■■■に■■■■成■■■■■■■、■■■■■少■■■る■■■■■、人■妖
怪■どの■■■■■う。
■人■■と■■■■る。
(■の部分は汚れて読めない)

6、つまりはパチェ萌え

――――ここまで――――


一部訳の解らない項目が在ったが……成る程、良い事づくめじゃないか。
中国と一緒に歩くのに、充分な寿命を手に入れた。

「はい。誕生日プレゼント――つまり、それの所有者は〇〇よ」

マジで ?
「マジで」

そういえば、今日は俺の誕生日だったな。
素で忘れてた。

「でもいいのか ?」

いくら俺でもこんな高価そうなものを貰うのは気が引ける。

「いいのよ。人の好意は黙って受け取りなさい」


「……ありがとう。バチェリー」

蹴られました



「よしっ !中国にリターンマッチだ」

図書館を出ようとしたところでパチュリーに服の裾を掴まれる。
「〇〇、もしかしてあなた門番の名前が中国だと思ってる ?」

「……違うのか ?」
パチュリーは盛大に溜息を吐く。

いい ?あの娘の名前はね――――


◆ ◇ ◆ ◇ ◆

――紅魔館門前
「おーい !」
赤い髪の少女が振り返る。俺は少女の目の辺りが赤くなっているのに気付いた。
たぶん、ついさっきまで泣いていたのだろう。名前を間違えて覚えられていたの
がそんなにショックだったのだろうか

「〇〇さん……よかった。パチュリー様にお願いしたかいがありました」

彼女は少し涙目で、微笑んだ。

………

「……ハッ !」

いかんいかん。ついつい彼女に見入ってしまった。

「さっきは名前間違えて覚えていて……ごめん」


深呼吸する。今回は水中じゃない。落ち着け、今回は紫もやしにちゃんと彼女の
名前を教えてもらったじゃないか。

……よし

「好きだ。俺と結婚してくれ、ほんみりん」


―― 二回ほど殴り殺されました


残り頁数

     ―― 三百五十頁

NG
「〇〇さん……よかった。パチュリー様にお願いしたかいがありました」

彼女は少し涙目で、微笑んだ。

俺の中で何かがうごめいた。
「ひゃっ…?!」
無言で彼女を抱き上げる。
「〇〇……さん?」

彼女は予想外の出来事にまるで小動物のようにキョトンとしている。

―― 何かが、外れた

「はあう~ ☆お持ち帰りぃい~ !!」

次の瞬間、〇〇は美鈴を押し倒s
<省略されました。全てを見るには太平洋の海底で三十回ほど深呼吸してください>


6スレ目>>258


図書館前の廊下で黒白マホ使いとすれ違ったのが数分前。
俺は今、カレーパンを持って門前にいる。

「…あ~。やっぱり」
ハリネズミならぬナイフネズミになっている美鈴が倒れていた。

「〇〇、さん…?」
美鈴はズタボロの身体を起こそうとするが、力が入らないのかまた倒れた。

「あー…。動くな動くな。抜いてやるから」

そういいながら、美鈴に刺さったナイフを一本一本引き抜いてやる。
最初見た時は寒気というか、何と言うか。
―― とにかくそんな感じの物を感じたのだが。
最近は慣れたのか躊躇なしに引き抜けるようになった。

幻想郷に来た以上、仕方のない事なのかもしれない。まぁ、俺はまだツイてる方
だろう。
本来なら、常に殺す覚悟と殺され(食料にな)る覚悟をしなくてはならない場所な
んだから。
それができるかどうかは別としてだが。

「全部抜けたぞ」

それにしても流石メイド長。
素人目にも全てが急所を外している事がわかる。

「ありが、とう。ござ、います…」
まぁ、刺さっていたナイフの本数は十を軽く越えていたんだが。
「大丈夫、なわけないか」

「はいぃ~…」
聞いているこちらが情けなくなるほど弱々しい声を出す美鈴。
何となく抱きしめたくなる衝動に襲われたが、冷静に考えて美鈴にトドメを刺し
てしまいそうなので無理矢理押さえ込む。

「まぁ、いいか。 ―― 美鈴、少し頭を上げてみてくれ」

俺がそう言うと、美鈴は弱々しく頭を上げてくれた。
その瞬間、俺の膝を美鈴の頭と地面に捩込む。

「ひざ、枕…… ?」
「何となくやりたくなったんだ。止めてほしいんだったら止めるけど……」

「いえ、なんだか、安心しま……す」
そう言い終えるなり、スースーと寝息をたてはじめる美鈴。

「……ふあ」
何か眠たくなって来たな。
まぁ、門番はそこでデバガメしている美鈴の部下(?)達に任せて、俺も寝ようか

意識が落ちる少し前

―― やさしい風が、頬を撫でた


―― キリトリ ――
大体の場合、〇〇がひざ枕をされる側なので、たまにはこちらがする側になって
も良いと思ふ。
あまりIchaついてない希ガス
↓本音↓
中国をひざ枕してあげたかった!それだけだ!!

―― キリトリ ――


6スレ目>>295


「君は誰からも名前で呼ばれていないけど、俺はそんな事は無い。
 世界中が君を名前で呼ばなくても俺は君の名を呼ぶよ。美鈴」


6スレ目>>342


 寒空の下、一日中門にへばりつき空を見上げ続ける。
 それが門番隊の仕事かというと語弊があるだろう。
 門番隊だって数が居るのだから休憩時間くらいあるわけで、
 俺と隊長、紅美鈴は詰め所で二人、ぐってりと暖を取っていた。

「今日は一段と寒かったですねー」
「そうですね、でももう少ししたら夜中勤務だからもっと寒いですよ」

 ストーブを前に緩みきった表情で美鈴が溢す。
 俺はというと歯をガチガチと鳴らしながらストーブに抱きつかんとして答えている。
 美鈴は微笑みながら、そんな俺を眺めていた。

「隊長は気が使えるからそんなに寒くないでしょう?」
「あは、それでも寒いものは寒いですよ?」

 恨みがましい視線で、穏やかな瞳に抵抗するが、この人には無駄だ。
 とびきりの笑顔で、どんな悪意も受け流してしまう人なのだから。

「人肌恋しい」
「あったかいですよねー」
「隊長、膝枕してください」
「いいですよ?」

 今、美鈴は何と言ったのだろうか。
 何となく口にした冗談だったが、美鈴は変わらぬ笑顔で膝を叩いている。

「え、マジっすか?」
「あは、マジマジ」

 俺は暫く固まった後、ようやく事態を飲み込んだ意識を動かして美鈴の隣に腰掛ける。

「……お邪魔します」
「はいー」

 ゆっくりと倒れこんで、柔らかい太ももに顔を乗せた。
 何というか、思った以上に恥ずかしいことをしているように感じて、熱が上がる。
 本当に、言ってみるものだ。

「こんなの皆に見つかったら恨まれそうですね」
「門番隊の皆?」
「えぇ、隊長って女性にも人気あるんですよ」
「あは、それじゃあ……男の子にはどうなのかな」

 見上げる顔は困ったようで、一拍置いて朱が混じる。
 門番隊に男は俺しか居ない。獲物として血を抜かれそうなとき、美鈴が雇ってくれたのだ。
 理由が、粋がいいからと言うのには少し参ったけど。
 おかげで今は、里には無い充実した日々を送っている。

「……そこそこ、あるんじゃないっすかね」
「そこそこかー」

 美鈴の笑顔が近い。
 照れているのが勿体無いような気がして、呆然と見つめ続ける。
 なんかもう、最高の眺めだった。主に胸部。

「ねぇ、私も一つお願いしていいですか?」
「はい?」
「ちょっと、名前で呼んでくれませんか? 今だけ」
「……なんでですか」
「名前で呼ばれることが無いんですよ、隊長とか門番で通っちゃいますから」

 少しだけ期待した自分が居たのに気づいて、はぁ、と気の抜けた返事を返す。
 本当に、狙っているかのようなことを自然と言う人である。

「紅さん」
「名前ですって」
「……美鈴さん」
「さんは余計かな」

「美鈴」
「……はい」

 澄んだ笑顔、優しい笑顔、暖かい笑顔。美鈴の笑顔がすぐ近くにある。
 膝に乗せた顔が妙に熱い。

「――好きだ」

 言ってみる、言ってやる、言ってやった。
 初めて手を差し伸べられたときから、ずっと想ってたことを言いのけた。
 美鈴の微笑は変わらない。やっぱりなと思いながら、名残惜しく思って膝の温もりを感じておく。
 微笑が降りてきた、只でさえ近かったのに、これ以上ないほどに距離が無くなる。

「私も好きですよ」

 唇には柔らかな感触の残留が残る。
 本当に、言ってみるものだ。


6スレ目>>402


俺が紅魔館に住み込んで数ヶ月が経った。
最初、幻想郷に迷い込んだときはもう終わりかと思ったが人間何とかなるものだ。
紅魔館で俺は門の警備を任された。
だが勿論、俺は普通の人間だから魔法なんて使えないし白黒の魔法使いを追い払うことなんて夢のまた夢だ。
だから、俺は紅魔館のお嬢様であるレミリア様やメイド長の咲夜さんから心底呆れられていた。
だけど、そんな俺でも門番でもある美鈴さんだけは違った。
白黒魔法使いに速攻でやられても優しく怪我の治療をしてくれたし何時も俺に笑顔で居てくれた。


そんな彼女に俺はいつしか恋心を抱いていた。


しかし、俺は人間で彼女は妖怪(何の妖怪かは教えてくれない)という大きな差があった。
それが原因で俺は彼女に思いを伝えられないでいた。
そして、そんな意気地が無い俺をよそに幻想郷の時は進みもう新年まで少しとなっていた。

「相変わらず寒いですよね○○さん」
「そうですね。もう手足の感覚も無くなってきていますよ」

今日は本当に寒い。そんな寒い空の下で一日中立っていたら凍死するかもしれない。
事実、手の感覚はほとんど無い。あぁ、温かいスープが飲みたい。

「本当に寒そうですね……そうだ○○さん。手出してください」

美鈴さんに言われ俺が手を差し出すと美鈴さんは俺の手を握った。

「めっ、美鈴さん!?イキナリ何を」
「いや、凄く寒そうだったから手を握って少しでも暖まってもらおうかなって思ったんですよ。迷惑ですか?」
「嫌……暖かいです」
「それは良かった」

そして実質、俺と美鈴さんは手を握ったまま立っていた。
ふと気づいたが手を握ってもらうと自然と向かい合う形になる。
だから、俺の目には美鈴さんの目がある。
いつもと変わらない優しい目だ。
気づいたら俺は自然と美鈴さんに伝えたかったことを言っていた。

「美鈴さん。俺は貴方が好きです」
「え? 何か言いましたか?」
「俺は……俺は美鈴さんのことがずっと好きでした。愛しています」

言った。言ってしまった。美鈴さんは驚きの表情を浮かべている。当たり前だろう。
数ヶ月、ただ一緒に居る俺がイキナリの愛の告白だ。固まるのも当然だ。

「わ、私も……私も○○さんの事が好きです」

だから、俺も美鈴さんの言葉に反応できなかった。

「え? い、今何て」
「私も○○さんの事が好きでした。○○さんと同じでしたね」

あぁ、もしかしたらこの寒さのおかげで俺の告白は成功したのかもしれない。
俺はこの幻想郷で今のところ一番寒いこの日に感謝しながら何時までも暖かい美鈴さんの手を握っていた。


7スレ目>>75(6スレ目>>402続き)



夕方 紅魔館 正門 ○○視点

寒かった冬が過ぎ去って春を告げる妖精が嬉しそうに飛び回っているが、幻想郷はまだ寒い日が続いている。
無論、この紅魔館も寒さの例外ではなく特に門の番として日々鍛錬と見張りをしている門番達は堪ったものではない。
だが去年、美鈴さんに告白し見事OKを貰った俺にとってはこんな寒さなど関係ない。
俺の心の中は美鈴さんの事で一杯なのである。
しかし、恋人として付き合い始めて短いながらも時間が経ったが未だに言えない事がある。

……今の俺の本当の気持ちだ。今の俺は真剣に美鈴さんに結婚を申し込みたい……

確かに去年、しかも冬に告白したばかりで早過ぎると誰もが言うだろう。
しかし、俺はこの幻想郷で短期間だが長い年月を過ぎたような経験をした。
紅魔館で美鈴さんの恋人となった後、毎日美鈴さんと一緒に文字通り血の滲む様な修行に励んだ。
美鈴さんと一緒に職務中に談笑して咲夜さんのナイフに襲われた。
美鈴さんの苦労を少しでも楽に出来るように嫌いな勉学をして魔法を学んだ。
美鈴さんが喜んでくれると願って香霖堂で買ったイヤリングをプレゼントした。
美鈴さんと一緒に年を越した。一緒に神社に初詣にも行った。
美鈴さんから手作りのチョコレートを貰った。
チョコレートのお返しに自分で作ったクナイをプレゼントした。
美鈴さんと一緒に笑った。
美鈴さんと一緒に敵を迎え撃った。
美鈴さんが迎え撃ってボロボロになった俺を看護してくれた。

そんな美鈴さんと恋人としてではなく夫婦として一緒に時を過ごしたい

「○○さん。どうしたんですか?悩みなら聞きますよ」

同じ門番をしているメイド達に話しかけられた。

「いや、ちょっとな……なぁ、お前等ってどう結婚の申し込みされたらOKする?」
「え、○○さん! とうとう美鈴さんに結婚の申し込みですね!」
「ちょ、声でかい! 美鈴さんに聞かれたらどうするんだよ!?」
「大丈夫ですよ。美鈴さん今、お嬢様に呼ばれて館内にいますから」
「そうか……て、お前等今とうとうって言わなかったか?」
「言いましたよ。まさか○○さん、もしかして隠してるつもりでした?」
「……どういう意味だよ」
「そのまんまの意味です。多分、気付いてなかったのは○○さんと美鈴さんぐらいですよ」
「そ、そこまで露骨だったのか……何か、急に不安になってきた」
「でっ、でも○○さんならきっと大丈夫です! でも不安があるなら少しですが付き合いますよ」
「これでも、幻想郷の少女ですから! 今日は咲夜さんも大目に見てくれます!……多分」

俺はメイド達に感謝し、結婚の申し込みの必勝法を教えてもらう事にした。
役に立つかはどうかは別として。


同刻 紅魔館内 レミリアお嬢様の部屋 美鈴視点

「で、中国。貴女の気持ちはどうなの?」

え~と、門の番として今日は真面目に勤務していた私は咲夜さんに呼ばれてお嬢様の前まで来て……
私……何かしたっけ?後、私の名前は中国じゃなくて美鈴です。紅 美鈴。

「え~と……あの~お嬢様?一体、何のお話でしょうか?」
「何を言って……まさかまだ○○から何も聞いてないの?」
「○○さんからって……特に思い当たる節が無いのですが……」
「あの、小心者は……仕方ない。じゃあ、私から言ってあげr」
「お嬢様、そういうのは直接本人から聞かないと意味が無いですよ」

本当に私は何で呼ばれたんだろうか。目の前では、お嬢様が咲夜さんに口を塞がれている。
コントかなぁ?でも違ったら絶対怒られるだろうから笑わない方がいいなぁ。

「分かった咲夜。分かったから手を離して。ゴホン、美鈴。貴女は○○の事をどう思っているの?」

お嬢様が聞いてくる。あれ、中国じゃない。

「え、○○さんですか? とても優しくて良い人だと思いますけど」
「そうじゃなくて、貴女は○○の彼女なんでしょう。その彼女としてどう思っているか聞いているの」
「彼女として……分かりません。でも、絶対に離れたくないです。」

もっと○○さんと一緒に門番を続けたい。
もっと○○さんと戦いたい。
もっと○○さんの笑顔が見たい。
もっと○○さんと話したい。

もっと○○さんと一緒に時を過ごしたい

「それが貴女の気持ち?」

お嬢様が尋ねる。だから私も答える。私が○○さんに言いたい本当の気持ち。

「ハイ。私は……」

私はお嬢様に自分の気持ちを伝える。私が○○さんをどう思っているか。
私の話を聞いているお嬢様の表情は何時もと違う気がする。

「……そう、分かったわ。戻っていいわよ。あぁ、今日はもう仕事に戻らなくていいわ。○○も」
「分かりました。では失礼します」

そして、私はお嬢様の部屋から出て門に向かった。

美鈴が出て行った後、部屋の中で咲夜はレミリアに尋ねた。

「お嬢様。あの二人、どうなりますか?」
「その答えは言わないわよ。だって直ぐに答えは出てくるんですもの」
「そうですか」
「それにしても今日は良い日ね。こんなにも月が紅いんですもの」

館を出ると幻想郷はもう夕方から夜へと変わっていた。
門では○○さんがメイド達に礼を言っていた。そして、私は気づいてこっちを見た○○さんに言った。

「○○さん。今日はもう終っていいとお嬢様が言ってましたよ」
「そうですか。じゃあ、今から散歩にでも行きませんか?」

どうせ、この後は用事が無いので○○さんの提案に乗り散歩に出かけることにした。



夜 幻想郷 夜空 ○○視点

俺と美鈴さんは今、幻想郷の空を飛んでいる。眼前には幻想郷を照らす月が見える。
何故、俺が空を飛べるかというと、簡単に言うとパチュリー様から教えてもらった最初の魔法のおかげだ。
俺の隣では美鈴さんが風を受けて気持ちよさそうに目を細めている。
さっき、(自称)幻想郷の少女であるメイド達に教えを受けていたが、さっぱり役に立ちそうになかった。
どれもこれも自分の恋愛感を言うだけ言って後は頑張れの一言で終っていたからだ。
やはり、自分の気持ちを正直に言おう。

「美鈴さん。俺達が始めてあったときの事、覚えてます?」

俺は、空の上で止まって美鈴さんに尋ねる。美鈴さんも止まって答えてくれる。

「勿論、覚えてますよ。今日と同じ紅い三日月の夜でしたね」
「そうです。あの時、美鈴さんが来なかったら俺は多分、妖怪の餌でしたからね」
「そうでしょうね。初めて紅魔館の門番になったときも生傷が絶えませんでしたからね」
「そうそう。懐かしいですね」

そんな俺と美鈴さんが始めてあった時からを笑いながら話す。
それだけでも幸せだった。でも、人間とは欲が深いものである。
この幸せをもっと増やしたいと思うのも人間としては当然だろう。

「美鈴さん。俺が美鈴さんに告白して何ヶ月が経ったか分かりますか?」
「問題ですか? え~と、5ヶ月ぐらいですね」
「そうです。で、美鈴さんに言いたい事があるんです」
「何ですか?」

俺は意を決する。断られても後悔などしない。するはずが無い。
だから、俺は言う。目の前に居る最愛の人に俺の考えた単純で最高の言葉を

「美鈴さん。いや、美鈴……結婚しよう」

幻想郷の時が止まった。いや、実際には動いているが俺には止まったような気がした。
多分、俺の顔は月に照らされなくても紅いだろう。
よく見ると、美鈴さんの顔も紅く染まっている。それは月の光なのかはどうかは分からないが。








某日 紅魔館 中庭 ?視点

今日は、この紅魔館でパーティーが開かれていた。
主催はレミリア。しかし、主役ではない。
主役は、黒いタキシードに身を包んだ男と純白のドレスを着た女。

「ね、言ったでしょう。直ぐに答えは出てくるって」

そう、呟いたのは小さき吸血鬼。
しかし、その言葉は男と女を祝福する声の中に消えていくだけだった。




以下、後書き

御覧いただき真に有難うございます。現行スレ>55です。
この作品はプロポスレ@Wiki美鈴2の6スレ目>>402 の後日談です。
しかし、>>402の話を見ていない方も居ると思いましたので始めて呼んでも話が分かるようにしました。
まぁ、個人的な意見としては是非>>402の話も読んでいただきたいところですが強制はしません。
長々と書き続けましたが以上、これにて了です。有難うございました。


6スレ目>>657-661


  「○○、いるの?」
  「あ、はい。今行きます」

  幻想郷に来て早一ヶ月。
  異能の力を持つが故に現世の人達から弾き出され、森を浮浪者のごとく彷徨ってて、ようやく出た場所がここだった。
  森の中でリボンを付けた女の子に食われかけ、あわやというところを今俺を呼んだ紅魔館のメイド長、十六夜咲夜さんに助けられた。
  それ以来、俺はこの館の主人であるレミリア=スカーレット様に気に入られ、ここで執事として生活している。
  ……執事と言っても名ばかりで、実際の仕事は炊事やら洗濯やら掃除など。これってメイドの仕事だよな……?
  まぁ同僚のメイド妖精はこれっぽっちも役に立たないし、咲夜さんに全ての仕事を押し付けるのも男として居心地が悪いので、この待遇で満足している。
  ああ、レミリア様に血を与えるという仕事が俺専用にあった。他にも妹様の遊び相手とか……俺、そのうち死にそう。
  俺は一応他の一般人とは違い、特殊な能力を持ってはいるが、そんなもんここの人達に通用するわけがない。レベルが違いすぎる。
  ていうか、ここの人(人じゃない御方ばっかりか)たちどうやって空飛んでんの……

  「咲夜さん、何か用ですか?」 
  「どうもまた命知らずな侵入者がやってきたみたいなの。美鈴が壁の修理をしてるから、手伝ってあげて」
  「承知しました」

  俺は恭しく頭を下げる。
  ここの人達は皆強力だ。俺なんか小指一つで成す術の無いまま殺されてしまう。マジで。
  俺は死にたくない。だから礼節は欠かさず守っている。
  咲夜さんは同じ境遇だからなのか、よく親切にしてくれるけど…


  「美鈴さーん」
  「あ、○○さん!」

  俺が声をかけると、美鈴さんが嬉しそうな顔で振り向いた。
  美鈴さんは一見人間に見えるが、妖怪だ。中国系の服装を身に纏い、紅魔館の門番を仰せつかっている。
  彼女はどうも周囲に男っ気が無かったらしく(というか、俺のここでの知り合いは女性ばかりだ)、新しくこの館で仕えることになった俺を可愛がってくれている。

  「咲夜さんに言われて、壁の修理の手伝いに来ました」
  「あ、じゃあここにセメントあるから塗ってって」
  「はい」

  幻想郷には魔法があるからそれで直せばいいのに……とも思うが、そう便利なものじゃないらしい。
  まぁ、紅魔館で唯一魔法が使えるパチュリー様は外に出ない人だからな。
  しばらく修理作業に没頭していると、ふと美鈴さんが怪我をしていることに気付いた。

  「その傷、大丈夫ですか?」
  「え? ああ、このくらいなら平気ですよ」
  「侵入者、強かったんですか?」
  「まさか、スペルカードを使うまでも無かったですよ」

  美鈴さんはにっこり笑う。
  この人の強さは知ってるけど、それでも女の人が傷付くのは正直いただけない。

  「あまり無理しないでくださいよ」
  「心配してくれてるんですか?」
  「そりゃ……まぁ」
  「大丈夫ですよ、お姉さん強いんですから!」

  えっへん、と美鈴さんが胸を張る。
  この人はどうも俺に対してお姉さんぶろうとする。何でも他の人からは自分の扱いが酷いからだかなんだか……
  ちなみに胸を張ったとき、そのたわわに実った大きな胸がブルンブルン……
  ……ゲフン、ゲフン。


  修理が終わったところで丁度昼食の時間になった。監視用の妖精を残し、美鈴さんと食堂に向かう。
  メイドの妖精たちは自分たちの食事を作ることしか出来ないので、自分の食事は自分で作らなくちゃいけない。
  ……何のために妖精を雇っているのか、理解に苦しむ……

  「今日は○○さんのためにご馳走しちゃいますよ」
  「え? でも悪いですよ」
  「いえいえ、手伝ってくれたおかげです」
  「でも手伝ったのは咲夜さんに指示されたからで……」
  「もうっ、お姉さんのいうことは素直に聞きなさい!」

  美鈴さんがぷりぷり怒る。
  これ以上の遠慮は失礼だし、身の危険も感じてくるので、仕方なく承知する。
  怒った顔も可愛いなぁ……と思ったのは秘密だ。
  美鈴さんは大きなフライパンを軽々と操り、想像に違わず炒飯を二人前作った。

  「いただきます」

  俺は感謝の意を込めて手を合わせて頭を下げ、レンゲで炒飯を掬って食べる。
  ……ふと隣を見れば、美鈴さんがジーっと真剣な目でこちらを見ていた。感想が聞きたいのだろう。

  「美味しいです、凄く」
  「良かった!」

  美鈴さんが満面の笑みを浮かべる。

  「みんなせっかく作ってあげても何も言わずに食べるだけで……○○さんの口に合って良かったぁ」

  そう言って微笑む美鈴さんは……とても綺麗だ。


  その後無我夢中で炒飯に喰らい付いていると、

  「ねぇ、○○さん」

  と、美鈴さんが俺の名を呼んだ。
  俺も食べる手を止めて、

  「はい、なんでしょう」
  「○○さんって、いつも一歩引いてますよね」
  「……はい?」
  「私、○○さんが笑ったところを見たことがないなぁ」

  美鈴さんは両手を組んで、そんなことを仰られる。
  ……そんなこと言われても、困る。

  「笑ってるじゃないですか」
  「いえ、○○さんの笑い方は社交的な感じがします。心の底から笑ってません」
  「……」

  真剣な表情で顔を覗き込まれ、思わず目を逸らしてしまう。
  確かに、そのことについて思うところが無いわけでもない。
  この幻想郷に来て、いきなり食べられそうになったあの恐怖。
  トラウマ、と呼ぶべきなのだろうか。あれ以来、どうもここの人達に対して心の内を開けない。

  「……すみません」
  「あ、べ、別に責めてるわけじゃありませんから、そんな辛そうな顔しないでください」
  「そんな顔してました?」
  「ええ」

  そうか。
  辛いのかな、俺……


  「ねぇ」

  美鈴さんが俺の手を取る。
  思わず胸が高鳴ってしまうが、なんとか表情には出さずに済んだ。

  「もう少し、肩の力を抜いていいと思いますよ。確かに、ここは外の世界とは環境が違うでしょう。
   でも、みんな――少なくともこの紅魔館の人達は、貴方をどうこうしようなんて思っていません。
   貴方はもう幻想郷の住人なんですから、もっとこの世界を楽しんだ方がいいですよ」

  握った手から体温が伝わる。
  体温だけじゃなくて、心も……伝わった、気がする。

  「なんとか……頑張ってみようと思います」
  「はい、頑張ってください! 大丈夫、○○さんを害そうとする輩は私が成敗しますから!」
  「……ははっ、期待してます」

  外の世界を追い出されて。
  ここに来て、いきなり殺されかけて。
  色々波乱万丈な人生を歩んでるけど、俺、ここで頑張っていこう。
  目の前の、この人が俺を信じてくれる限り……





  「……まぁ手なんか握っちゃって羨ましいわねぇ」
  「!?」
  「ささささささ咲夜さん!?」

  突然声をかけられ、慌てて握った手を離す。
  見れば、そこには変ににこやかすぎる笑みを浮かべた咲夜さんが……

  「○○、ちょっといらっしゃい」
  「はっ、な、何か御用でしょうか」
  「ええ、仕事を頼みたいの。仕事を……ね」

  咲夜さんは目を紅く染めて……紅!? 
  ……怖い。行きたくない。

  「た、助けてお姉さん」
  「む、無理です」
  「さっき私が成敗しますとか言ってたじゃないですか!」
  「お姉さんにも出来ることと出来ないことがあるんですー!」
  「早く来なさい!」
  「はい!」

  ああ、頑張ろうと誓ったばかりなのにくじけそうです。
  誰か俺を助けてください。

  「大丈夫よ、あまり痛くしないから」
  「痛いことするんですか!?」

  へるぷみー。


7スレ目>>217-218


  紅い館の玄関を開け、何時ものように歩を進める。
  俺は軽く手を挙げながら、真剣な目つきで門の傍らに立つ彼女に声を掛けた。
  「よう、美鈴」
  「あ、○○さん」
  「今日もお勤め、ごくろーさんです」
  挙げた手をそのまま曲げて、軽く敬礼のマネゴトなんぞをしてみせる。
  「どうも。 ○○さんは…散歩ですか?」
  「うんにゃ、昼飯。 たまには外でと思ってな」
  そう言ってもう片方の手に持った包みを見せると、急に彼女がもじもじしだした。
  「あー…うー…そのぉ」
  「どした美鈴?」
  意味のない言葉と共にぐねぐねと身を捩る美鈴。その目は俺の持つ包みに注がれて…って
  「…もしかして、昼飯?」
  「はいぃ…午前中の失敗で」
  (うおおおおぉぉぉぉ………)
  言い終るより早く、どこぞの初号機とタメ張る位の唸り声が彼女のお腹から響く。
  やがてそれが収まると同時に、真っ赤になった美鈴が蚊の鳴くような声で、
  「抜かれちゃい、まして」
  「…それはそれは」
  そう言えば少し前に例の白黒魔法使いが来ていたっけか。
  「…それで、良ければ分けてもらえない、かな…と」
  断る理由は見当たらないが、如何せん量が量だ、分けるには心許ない。
  数秒間考えた後に俺が出した結論は、
  「よし、俺が軽く作って来てやる」
  「え? そんな、そこまでして貰うわけには」
  「いいからいいから。 気にすんなよ」
  美鈴の答えを一笑に付して、俺は館へとんぼ返りする。 さて、何にするかな?

  「ほい、ぅお待たせぇ!」
  「わ、早いですね!?」
  「はっは。 軽くって言ったろ?」
  「はぁ。 で、それは?」
   怪訝そうな顔で、俺の手にしたお盆-正確にはそれに乗った楕円形の物体を指差す美鈴。
  「うむ、俺のいた世界の食べ物でな。 ヤキソバパンだ」
  「やきそばぱん…」
   流石に知らないか。 だがなぜ紅魔館に中華ソバやオタ○クソースがあるのか、
  俺としてはそっちの方が気にかかるのだが…今度咲夜さんに訊いて見るとしよう。 
  「こ、これ、頂いても?」
   ンな飢餓感に満ち満ちた目をして訊かれるとコッチが恐いですメイリンさん。
  「どーぞどーぞ」
  「では、いただきます…」
   ぱくりと一口かじった美鈴の横に俺も腰を下ろし、包みを開ける。
  ふと隣を見ると、俯いたままで小刻みに体を震わせている美鈴の姿が目に入った。 
  「な、なぁ美鈴? どうかし」
  「…お」
  「お?」
  「美味しいですぅ~…」
   よく見ると目じりに涙まで溜めて口をもぐもぐさせている。
  「そ、そうか? そりゃ何よりだ」
   尻がむず痒くなるような居た堪れなさを感じつつ弁当を口に運ぶ俺の隣、
  美鈴が栗鼠の如くパンを頬張る光景は、それからしばらくの間続いたのだった。



  「ごちそうさまでした…」
  「お粗末さんでした…でいいのか?」
  「たぶん」
  「そっか」
   どちらからともなく笑いが漏れる。 空の弁当箱を包み終えた俺に
  「○○さん、その、また…お願いできます?」
  「あぁ、ヤキソバパン? お安い御用だ」
  「ありがとうございます…」
   ニコリと笑う美鈴を見て、俺の心に暖かいものが広がる。 ついでに僅かな悪戯心も。
  「ところで…俺からも一つお願いがある」
  「はい?」
   いざ言うとなると緊張するが、チャンスは今しかないのだ、踏ん張れ俺! 
  「食休みに…その、膝枕を、だな」
  「はぁ、いいですよ。 どうぞ」
  「…あれ、意外にあっさり? もうちょっと照れるとか」
  「言わないで下さい、これでも心臓バクバクしてるんです」
  「そりゃ触って確かめろと言う…いや待て膝蹴りよりも膝枕がいいなぁ俺は!」
   さっき食ったばっかの弁当との対面を全力で拒否して、座り直した美鈴の膝に頭を乗せる。 
  おお、やっぱり女の子の体ってーのはやーらかいもんなんだなぁ…。
  「…悪いな」
  「はい?」
  「こんな状態じゃ門番が出来んだろ」
  「いえいえ、これもやきそばぱんのためです」
  「左様でございますか」
   ある意味正直な返答に思わず苦笑を漏らしてしまう。
  そんな俺を見たからか、彼女も笑みを浮かべる。 柔らかな笑顔の頬に、僅かな朱色。
  「でも、貴方にこうしてあげたかったのも本心ですよ?」
  「…………」
  「あのぉ、○○さん?」
   まずい、今のは非常にまずい。 完全な不意打ちです、クリティカルです。
  彼女の顔を直視出来ず、強引に顔を横に向けながら、何とか一言だけ口にする。
  「…眠くなってきたから、寝る」
  「あ、もしかして照れて」
  「…ぐー、ぐー」
  「こら、狸寝入りしない!」
   ポコポコと側頭部を打擲されながら、ではあるが。
  俺は柔らかな日差しと柔らかな枕と共に、至上の昼下がりを堪能したのだった。

  after?
  「どうするんだ、この二人」
  「しばらくこのまま、が一番かしら」
  「………起こさないのか?」
  「起きた時の反応が楽しみでしょう」
  「…天狗が来て記事になるかも、だぜ?」
  「それもまた面白、よ」
  「うっへぇ…悪い上司だぜ」

  「ぅん…め~りん~」
  「くぅ…くぅ…」


7スレ目>>293


「ごろん」
美鈴の膝枕。
「んん……めーりん、柔らかい…………」
「もう、何を馬鹿なこと言ってるんですか……」
「ほんとのことだもん……」

「って、ちょっと膝枕でうつぶせは……!」
美鈴のお腹に顔を埋めてみる。

「めーりん、温かい……いい匂い…………」
「もう…………本当にしょうがないですね、○○さんは…………」
抱えるようにして頭を優しく撫でてくれた。


7スレ目>>303


今日から、ゴールデンウィークで久しぶりに出かけることにした。

「美鈴は何処に行きたい?」
て、聞いてみたら
「私は、○○さんと一緒なら何処にでも付いて行きますよ」


7スレ目>>674


「俺も今日付で門番になった。そんなわけだから頼むぜ相方さん。ああ心配すんな、
俺は思ってるほどヤワじゃないぞ。足腰は強い方だから長時間突っ立ってるのも
苦じゃないし、日射病への防御も済んd……あ?戦力外?うるせーな、どうせ凡人だよ。
だがよ、侵入者を門前に暫く留めておく位は出来るぜ?口は達者だからな。言わば
お前が錠前なら俺はドアノブだ、多少は通り難いように渋くなってやるさ……何より、
勤務中はお前を退屈させない、これが俺の最大の任務だ」


最終更新:2010年06月02日 00:03