美鈴8



めーりんとの話その4(うpろだ1501)


 死んで花実が咲くものか。


『明日も仕事かぁ…』

 俺はどこを見るでもなく、虚空を仰ぐ。
 指には紫煙たなびくタバコが一本。

 ここ2週間、仕事場と我が家を往復するだけの日々。
 家を出る時の美鈴の顔は少し寂しそうで。
 それなりの立場になると、色々と好き勝手も言えなくなる。

 改めて“男の甲斐性”という物に思いを巡らせていた。

 幸い、今日は早めに上がれたので店を少し見て歩く事にした。

 最初は気分転換のつもりだったのだが───


「ん?」

 店先の一際目立つ場所に、それはあった。
 周りの花と一緒にゆらゆらと揺れている。
 そう言えば紅魔館の花壇にも咲いていたなと思い、近くで見る事にした。

「その子が気に入ったの?」

 ややハスキーなよく通る声に振り向くと、

「ああ、風見さんでしたか」
「ごきげんよう。仲良くやってるかしら?」

 トレードマークの日傘は閉じている。

「おかげさまで…と言いたい所なんですが」
「あら、喧嘩でもしたの?」
「いえ、ここんとこ仕事が立て込んでて、美鈴が寂しがってるんじゃないかなと…」
 俺は自嘲するように目を細めていた。

「そう」
 彼女はそう言うと、手元の籠から何かを取り出し俺の手に握らせる。

「…球根、ですか」
「その子は切り花だから長くは保たないわ。あなたにその気があるのなら、この子を育ててみなさい」
 手のひらのそれを見ていた俺の顔に不安があったのだろうか。
「心配しなくても、その子はきっと応えてくれるわ。手間を掛けた分だけね」
 意味ありげに微笑む。


 ほどなくして彼女と別れると、永遠亭の兎達が何かを配っているのが見えた。
 それは俺にも半ば押しつけられるように渡される。

『竹林の中心で愛を叫ぶ』

 わら半紙の上中央にデカデカとした文字。
 やけに達筆だ。

 要するに伴侶に宛てて愛のメッセージを伝えよう、というイベントをやるらしい。
 開催場所は永遠亭。
 参加者は男性限定。
 ご丁寧に『参加者の行き帰りの安全は保証される』との文言も。


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「お邪魔するわ」
「あ、今日はどうなされたんですかお嬢様?」
「一緒に図書館に来なさい」
「はぁ…」


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 迷いの竹林の入り口に兎が一羽。
 提灯が吊された竹竿を前足で持ってちょこんと佇んでいた。
 見ればたくさんの明かりが奥へ続いている。
 なるほど、こういう事か。


 半時間ほど歩いただろうか、一際明るい一角。
 そこにはいかにもという日本建築の屋敷が。
 ここが永遠亭だろうか。

 見ると机が置いてあり、そこにも兎がいる。
 どうやら参加者はそこで記帳する事になっているらしい。
 すでにそれなりの人数が来ているようだ。
 見知った名前もある。

 記帳を追え、兎の先導で会場へ向かった。


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「今日は何かありましたっけ? フラン様にパチュリー様に咲夜さんにこぁちゃんまで」
「これから面白いものが見られるから、一緒にどうかと思ってね」
「面白いもの…ですか」
「さ、パチェ、映してちょうだい」
「…受信感度は良好のようね」
「ここは…永遠亭?」
「そう。ここでのイベントを見ようと思ってね」
「男性限定だって言うから私たちは入れないのよ」
「ところでどんなイベントなんですか?」
「その内わかるわ」


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 みんなすげぇなぁ。


 俺は驚嘆していた。
 愛する女性への想い、というものがいかに重い事か。
 皆、それぞれの形で叫ぶ“愛”。
 ただ真っ直ぐに、ひたすら真っ直ぐに叩き込まれる言葉の威力。
 単なる声の大きさなどではなく、自分の愛する存在へ向ける純粋な想い。

 一人が叫び終える毎に起こる拍手。
 幽霊、天狗、亡霊、騒霊、妖精、妖獣…
 種族は違っても、ここでの立場は皆同じ。
 叫び終わった者同士で酒を酌み交わし、惚気話に花を咲かせていたりもする。

 やがて俺の番がやってきた。

 何て言おう。

 どう言おう。

 ええい、考えても仕方ない。
 意を決した俺はステージへ上がった───


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「あっ!」
「今日のメインイベント、という所かしらね」
「メイリン顔あかーい♪」
「ほらほら、近づき過ぎよ」


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「えーと…」

 気分を落ち着けるために深呼吸をひとつ。
 周りからは声援が飛んでいる。

「俺の嫁は…良く気が付いて、料理も上手くて…そしてとても、とても綺麗で」

 目を閉じると、美鈴の姿が鮮やかに浮かぶ。

「優しくて、厳しくて、甘えん坊で、怒りん坊で」

 思えば美鈴との生活は彩りに満ちて、退屈した覚えがない。

「俺なんかには勿体ないくらいの出来た嫁で」

 あの日誓った約束。

「そんな彼女に、思い切り、叫びます」


 精一杯息を吸い、そして。





「美鈴ーーーーーーーーーーーーーーー!」

「最近忙しくて! かまってあげられなくてごめんなーーーーーーーーー!」

「これからすぐ帰るから待っててくれーーーーー!」

 喉は張り裂けんばかり。
 肺がビリビリと震えるのがわかる。
 酸素が足りない。
 情けない事なのだが。

 でも、まだだ。

 まだ言ってない言葉がある。
 本人の前で何度も言っている言葉だけど。
 言い過ぎて安っぽくなっていないだろうか、少し心配している言葉だけれど。

 いや、待て。
 『安っぽい』だと?
 冗談じゃない。
 この気持ちは“本物”だ。
 これっぽっちも揺らぎなどしない。

 さぁ、言え。
 見せつけてやれ。

「いつも! いつも! 本当にありがとうーーーーーーーーーーーー!」





 幻想郷中に知らしめてやれ。





「愛してるぞーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」





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「いや… これはこれは…」
「咲夜、紅茶をお願い。濃いめのストレートで」
「…私もー」
「ではストレートを5杯、ですね」

「まぁ、美鈴は紅茶どころじゃなさそうだし…」


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 律儀に家までついてきてくれた兎に労いの言葉と人参を渡して家に入ると

『みんなと図書館にいます』

 という書き置き。

 頭に「?」を発生させつつ行ってみると───




 そこにはニヤニヤ顔の5人と、机に突っ伏している美鈴。




「どういう状況ですか…?」

 おそるおそる尋ねると



「「「「「ごちそうさまでした」」」」」



 その声は完全にシンクロしていた。


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「恥ずかしくて死にそうでしたよ…」
「まさか中継までされていたとは…」

 七曜の魔女が語ったところによると、天狗と河童が組んであのイベントの一部始終を生中継していたそうだ。
 叫び終わった後にブン屋がインタビューしてきたのはそれ絡みだったのか…

「でも」

 その声に振り向くと

「あの時、あなたが言ってくれた“愛してる”は一番…嬉しかったですよ?」

 掛け値なしの美鈴スマイルがあった。

「そう言ってもらうと、俺も行った甲斐があったってもんだ」

 まだ擦れが取れない声。
 でも、不思議と疲れが消えている気がする。

 あれ?
 何か忘れているような…



 ああ、思い出した。



「美鈴」
「はい?」

「明日も仕事なんだ」
「お弁当ですね?」
「ああ、頼むよ」
「明後日は?」


 俺はニヤリとして言った。

「そんな先の事はわからないな」

 美鈴はあっけに取られたような顔。

「冗談だよ。休みの予定だから久々にのんびりしようか?」


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「ところで“渡したいもの”って?」
「ああ、これ」
「あ、球根ですね。どうしたんですか、これ」
「花屋の前で風見さんと会ってね。切り花よりは、って話になってこれを貰ったんだ」
「お休みになったら植えましょうか」
「じゃあ、花壇を作らないとなぁ」
「ふふっ、土いじりも久々ですねぇ」
「スコップどこにやったっけ…」

 そんな話をしていると

「ごきげんよう」

 ひょっこり顔を出したのはメイド長。

「お嬢様から手紙を預かってきたわ」

 そう言って差し出された封筒。

 表には
『その花が咲いたら開封する事』
 と、書かれてあった。

「どういう事なんでしょうね?」
「お嬢様は“運命を読んだ”と言ってたわね」
「…うーん、まぁ、この球根に関係があるだろうってのは判るけど」
「ともかく植えて、花が咲くまで待ちましょうか」
「それしかないだろうなぁ」


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 チューリップ

 ピンク


 ───不滅の愛



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(この先あとがき。読んでも読まなくても)





























 というわけで、よめーりん話の4回目です。
 2週間ぶっ続けってのがそろそろキツくなってきたお年頃です。(何

 今日は「愛妻の日」という事で、その辺を絡めて書いてみました。
 てか、ネタを振ったからには書かないとw

 なんかいつにも増して内容がイチャイチャしてねぇなと。

 美鈴とはイチャイチャよりも静かで確かな愛を育むのがいいかなぁと最近思うようになりました。

 はー、美鈴と結婚してぇ。

 俺、明後日休みだったら免許の申請しに行くんだ…

 ともかく、明日も精一杯。

 次は多分バレンタインネタになる予定。







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(この先、ちょっとしたオマケ)






















「そう言えばもうすぐ節分ですけど…」
「あー…」
「住まいは別ですけどねぇ」
「さすがに“鬼は外”とか言えないしなぁ」


うpろだ1504


~~~~紅魔館-紅 美鈴 私室~~~~

「げほっ・・・ごほっ………うぅ」
『よぅ、門番。大丈夫か?』
「あれ、○○s、げほっげほっ…うぅ。」
『様子見に来ただけだ。元気なやつは各部屋を回ってみている。俺はお前や門番隊が主な担当だからな』
「そう・・・ですか・・・げほっげほっ、なんで妖怪の私が風邪を……ごほっごほっ…うぅ」
『風邪をひいているのはお前だけじゃない。
紅白や白黒、メイド長をはじめ、パチュリー様や小悪魔さん、
果ては吸血鬼であるレミリア様やフラン様までもが風邪をひいている。
風邪をひいていないのは一部の者だけだ。それもあまり多くないし、調子も優れないみたいだ』


幻想郷では今、人妖問わず風邪が流行している
俗に言う幻想風邪である(嘘)
妖怪はもとより、体の弱い里人は惨状ともいえるほど酷いらしい
原因はおそらく何かのウィルスだろうが未だわかっておらず、
永遠亭の八意 永琳をはじめとした解析チームが原因解明と治療に向けて調査等が行われている

「でも、何で○○さんは風邪をひかないんでs、げほっげほっ!」
『さぁな?俺は外来人だから免疫を持っていたのかもしれん。
それとも俺は人間でもなければ妖怪でもないから罹らないのかも知れんな』

俺は元々外界の人間だったがみょんなことでこちら側の世界に迷い込んだ。
気付けば紅魔館の近くの湖にいて、彷徨っているうちに[そーなのかー]とかいう妖怪に襲われ、
命からがらここにたどり着いた。
しかし着いたは良いものの、即座に館の主に食事になり吸血鬼になった
…はずなのに、なぜだか解らないが俺は半人半吸血鬼として蘇った


「でも人間の咲夜さんも吸血鬼のレミリア様も罹っているのに半々のあなたがどうし罹らないんですか?
もしかしてばk『だーれが馬鹿だって?中国ぅ!?』(シャキーン
「あうううう、ごめんなさいごめんなさい、お願いだから刃物は勘弁して下さい。
あと私は中国じゃなくって紅 美鈴です!!」
『はいはい、そうですか。クレナイ ミスズさん、あのチルノですら風邪で寝込んでいるんですよ
この病気は頭の善悪で発病するものじゃないんですよ。・・・それにどちらかといえば貴女の方が頭は悪い』
「読み方違います!!ホン メイリンです!クレナイ ミスズじゃありません。
しかもさりげなく酷いこと言わないでください!!」
『ん?じゃぁ正面から言ってやろうか?』
「ごめんなさい。もう二度とあんなこと言いません」
『解ればヨロシイ…………んん~、少し熱があるな。うん、とりあえず安静しとけよ、じゃぁな』
「え?何処に行くんですか?看病してくれるんじゃないんですか?」
『それだけ話せたら看病は不要だろ?後は自力で治せ』
「そんなぁ」
『冗談だ。永遠亭に行ってくる。薬が無いか聞くのとあそこの薬師とすこし話をしてくる』
「あ、そうですか。道中お気をつけて。」
『俺が帰ってくる頃には、お前だけはくたばってるかもな。
それと、ここに林檎おいとくぞ。気休め程度にはなる。食っとけ
…………帰ってきたら看病してやるよ』
「……え?」
『な、なんでもない、じゃぁな』
…(バタンッ!

自分で言ったものの恥ずかしくなったので急いで俺は部屋を出て永遠亭に向かうことにした



~~~~紅魔館⇒永遠亭~~~~



『こんにちわ、永琳先生。あれから何かわかりましたか?』
「原因と特効薬は解ったんだけど、肝心の材料が見つからないわ」
『材料、といいますと?』
「ワクチンよ。元気な人からワクチンが出来ないか調べてみたけど感染してないだけでワクチンになりそうな物は見つからなかったわ。ホントは他にも色々あるけど・・・」
『ワクチンですか……』
「何が月の頭脳よ。結局材料がなくちゃ何もできないじゃない。ハァ」
『そう悲観しなくても……』
「…………」
『…………』
「…………」
『あー、そうだ。永琳先生』
「?なにかしら」
『私のなかにはワクチンになりそうな物ないですかね?』
「・・・罹ってないから無いとは思うけど一応調べてみるわ」


 --青年調査中--


『……で、どうでした?永琳先生』
「……一つ聞いていいかしら?」
『何でしょうか?』
「あなた・・・何者?なんで感染して無いのにあるのよ!!」
『あー、やっぱり。ありましたか』
「…………は?」
『いやね、外界にいたとき、色んな投薬・細菌実験とかをさせられましてね。
多分、それが理由だと思いますよ。』
「………………」
『まぁ、そんなことはどうでもいいんですがね。
さっさと特効薬作って幻想郷に活気を取り戻しましょうや、先生』
「…………そうね…………ハァ」
『(なにか悪いこと言ったかな?)多分特効薬できるのは材料と時間がかかると思うので解熱剤や鎮痛剤とかもらって帰りますね。それじゃぁ…………』(ガチャッ
「……?」

(ザシュッ!……ボトっ)

「!!!!!あなた、一体何を!?」
『大量に必要だろうと思って、供給源として私の腕を代価にしようと……』
「…………ありがたいことはありがたいんだけど……」
『はい……?』
「あなたは馬鹿なの?なんでそんなことまでするのよ!?」
『…………アイツのためですよ』
「アイツ?」
『簡単に言えば好きな人ですよ。その子も風邪を引いてしまい、苦しんでいるので、少しでも早く治してやろうと思いまして……』
「…………あなたも無茶するわねぇ。特効薬完成したらすぐに持って行かせるわ」
『ありがとうございます。今は手持ちがないので薬が完成したらその時に一括してお願いできますか?』
「ハァ……お金ならいいわよ。貴方がくれた腕一本で十分よ」
『あ、そうですか。すみません。ならもう一本いりますか?どうせすぐに再生するので(シャキーン』
「!もういいわ!二つあっても邪魔になるし!!!……いくら再生するからとっても無茶は禁物よ」
『かまいませんよ。愛しい人のためならば……』
「そう……じゃ、お大事に」
『では、失礼します』

~~~~永遠亭⇒紅魔館-中央広間~~~~

『元気な者は永遠亭からもらってきた薬を病人に飲ませてやってくれ。
まず、近衛メイド隊はメイド長とパチュリー様、レミリア様、フラン様を。
とくにフラン様を担当するものは気を付けてな。
A隊は妖精メイド各員へ。B隊は図書館従事者に、C隊は……………、で俺は門番隊各員を担当する。
……今、紅魔館で動けるのは我々だけだ。風邪をこじらせ亡くなってしまった者もいると聞く。
辛いものは決して無理をせずに休め。死んでしまっては元も子もない
今、この紅魔館と永遠亭の八意 永琳先生の協力によって、特効薬が完成しようとしている。
皆!もう少しの辛抱だ。無理をせず、かつ頑張っていこう!!』
「「「「ハイ!了解しました。」」」」


~~~~中央広間⇒門番隊宿舎~~~~


……
…………
………………

…………(ガチャ
『ふぅ、これで門番隊は終わりか。あとは……美鈴だけだな……』



『美鈴、入るぞ』
「あ″、○○ざん、お見舞いでずが?」
『まぁ、そんなとこだ。って声大丈夫か?』
「何とかでず、うぅ」
『ハァ、無理するな。お前は紅魔館を守る門番だろう?早く治せよ…………んと、ほらよ』
「あい?○○さん、これは?」
『永遠亭から薬を貰ってきた。どこまで効くかは分からないがある程度は効くだろう。……ほら水だ』
「あ、ありがとうございます。…………○○さん、今日は何だかとても優しいですね。」
『んん~、聞き捨てならんなぁ。それは普段の俺は優しくないということか?』
「うぅ~、普段の○○さんも優しいですよ」
『解ればヨロシイ。一応お前も病人だからな。俺はどんな相手であろうと病人、怪我人には優しいんでな』
「うーん、じゃあ、ずっと病気したり、怪我しようかな?」
『…………ハァ??』
「ごめんなさい、冗談です」
『まぁいい、スリ林檎だ、これも飲んどけ。それと少し席を開けるぞ』
「あ、はい、ありがとうございます。……何処へ行くんですか?」
『ん、まぁ、ちょっと……な』


 -30分後-

『美鈴、入るぞ?』
「あ、はい・・・って何ですか?それ?」
『お粥……食事だ。調理係がほぼ壊滅状態で、俺が一人で作ったから味はそこまで美味くないがな。』
「え?○○さん、料理できたんですか?」
『あっちの世界では一人暮らしだったからな、家事の大半のことは出来るぞ。
なんなら今度、ご馳走してやろうか?』
「え?いいんですか?」
『時間と材料があればの話だがな。・・・食べないと冷めるぞ。』
「え、あ、そうですね。じゃ、いただきまーす」


「ごちそうさまでした」
『お粗末さま。っと言ったところか?知らんが……んん~と』
「……あ」
『熱もだいぶ下がったな。まだ安心は出来ないな。
もうすぐ特効薬が完成するから。ってどうした?顔赤いぞ、まだ熱があったのか?』
「/////」
『うん?どうした?』
「○○さんのおでこと私のおでこが……キャー///」
『ッッッ!!!////』
「///……アレ?○○さんも顔赤いですよ?」
『うっ、うるさい!さっさと寝ろ!悪化するぞ!!』
「えー、もっとお話しましょうよ、○○さぁーん」
『やかましいわ!!病人はさっさとおとなしく寝てろ!話なら治ってからいくらでもしてやる!』
「え?じゃ、治ったら、もっとお話ししましょうね♪○○さん!」
『!!!~~~帰る!』バタン


~~~~門番隊宿舎⇒○○私室~~~~
…………完全に墓穴を掘った。喋る度にミスを生む。
ヤバいな、顔、真っ赤だ。見せられたものじゃない
心臓は破裂しそうだ。叫んでしまいそうだ。完全にアイツのペースだ
これは非常にマズい。とりあえず落ち着け、俺
他人が俺を見たら何ていうんだろう
…………ツンデレか
そんなつもりじゃないんだけどな
アイツの前だと、どうしても正直なれないな
………………ハァ。もう寝よう
腕は……もうすでに完治したか
明日には特効薬完成するといいな。アイツのためにも





『美鈴、入るぞ』
「はーい♪」
「病人のわりには元気ねぇ」
「アレ?永琳先生?」
「治療しにきたわよ。でもその必要もなさそうだけどね」
『そうおっしゃらずに、ぶり返したら大変なので一応お願いします。』
「はいはい、わかったわ。じゃ、門番さん、腕だして」
「え″?注射ですか?」
『そんな露骨に嫌な顔をするなよ。せっかく特効薬ができたんだ。うってもらって完全に治せ
それとも、ぶり返して、また苦しみたいのか?』
「う″!それは……嫌です」
『じゃ、さっさと注射受けて治せ』
「……はぁーい」
「あらあら、随分と仲が良いのねぇ。やっぱり好きな人の前だと態度が違うわねぇ」
「え?」
『ちょっ!!永琳先生!!なんてことを言うんですか!?』
「○○さん、それってどういういみでs、痛っ!」
「……はい注射終わり。少なくとも2日間は安静にしてなさい。どんなに治ったと思ってもね」
『あ、永琳先生、ありがとうございます。』
「ふふ、どうも、こちらこそ抗体提供、感謝するわ。」
「え?それってどういうことですか?」
「この特効薬を作るのに○○の中にあった弱ったウィルスと抗体を使ったのよ。彼ったら凄いわよ。
自分の身体にあるって分かったら、自分で腕を切り落としたのよ。
『好きな人のためだ』って言ってね。羨ましいわ。ねぇ、門番さん」
『ちょっ!!永琳先生!!そのことは言わないで下さいと最初言ったじゃないですか!?』
「あらそう?聞こえなかったけど……♪」
『絶対わざとだ、この人…………』
「あのぅ、○○さん?」
『所で永琳先生。抗体使ったって言ってましたけど、他人の抗体って使っても大丈夫なんですか?
血液感染とか色々あるんじゃないんですか?特に私は半分吸血鬼ですし』
「一応加熱処理とかしてあるから大丈夫よ。因幡達でも問題無かったし」
『(この人は実験に因幡を使ったのか!?鬼だな…)』
「それに抗体使ったといっても貴方の居た世界とは違う手法で使ったから問題もないわ」
『さいですか……』
「じゃ、お大事にね、門番さん。」
「あ、はい。ありがとうございます」
「じゃ、私は帰るから。」
『どうもありがとうございました。永琳先生』


……
………
…………

『じゃ、永琳先生も帰ったところで、俺も失礼するかな……』
「…………さい」
『ん?どうした?』
「○、○○さん。さっきの永琳先生の言ったことって……本当ですか?」
『さぁて?何のことだか?///』
「顔、紅くなってますよ」
『う、うるさい///』
「えへへ、○○さん、可愛いですよ。○○さんは言葉はキツいけどいつも優しいから好きですよ」
『!?!?!?』
「また、紅くなりましたよ?○○さんは私のこと好きですか?」
『え、あ、そ、それは……うんと……』
「私は○○さんの事が大好きです!○○さんは私の事どう思ってますか!?」
『っ!!…………きだ』
「聞こえませんでした」
『永琳先生の言ったことも本当だ。お前が苦しそうだったから、早く治すために材料調達に協力した。
ただそれだけだ。お、お前が好きだからとかそんなんじゃなくて、なんというか…。
そうだ、他に苦しんでいる人の為に協力しただけだ。
決してお前のことが好きだから、お前の為にやったんじゃなくて、その、な・・・レミリア様や咲夜さんの為であって、なんというか、かんというか……』
「じー)……私のこと嫌いですか?私の為じゃないんですか?」
『(そんな目で見ないでくれ)え、あ……お、俺は……』
「じー)…………」
『あー、もう!!俺はお前のことが大好きだ!さっき言ったことは全部嘘だ。
レミリア様や咲夜さんや苦しんでる連中の為じゃなくお前の為に全部やったんだ!!
俺は、俺は…!!』
「○○さん…ちょっといいですか?」
『な、なんだよ!?』
「ん…んん」
『!!!』
「えへへ、キスしちゃいました///」
『ななななななな』
「もう1回しますか?」
『………///』
「冗談ですよ///風邪直ったらキチンとしてくださいね♪」
『……あ、ああ……』
「これからよろしくお願いしますね、○○さん♪」
『こここちらこそよろしく……ちょっとリリ、リンゴでも持ってくるわ。』
「リンゴより○○さんがいてくれる方がいいなぁ……」
『……う、うつされても困る。よって…帰る!!』
「えぇー!…私のこと嫌いですかぁ?」
『や、やかましい///風邪治したらいくらでも一緒に居てやる!!だから寝てろ馬鹿!!』
「じゃぁ、約束ですよ♪」
『(また墓穴を掘った…)』

後日治った門番の横には男が居たそうだ


めーりんとの話その5(うpろだ1506)


 良薬は口に苦し。



 俺は何年かぶりで派手に風邪をひいていた。
 春一番も吹いたってのに。
 夕べから熱が出始め、今朝になって本格的に。
 体温計がないが、かなり熱があるのはわかる。

 と言うか、頭が回らない。

 とりあえず床に臥せっているという事だけが今の俺が自覚できる全てだ。

 美鈴は仕事場の頭領へ連絡に行っている。


 波が来た。
 俺はたまらず枕元の桶を引き寄せる。


 胃液しか出てこない。
 まぁ、派手にぶちまけるよりははるかにマシなのだが。
 すでにほとんど効かなくなっている鼻にツンとした臭い。
 久しぶりなだけに、これだけでもかなりクる。


 何分くらい経ったのか、それとも数時間過ぎているのか。
 朦朧とした頭にうんざりする。


 美鈴───。


 こりゃマズイ。

 そう思ったとたん、俺の意識は途絶えた。


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 冷たい感触に目を覚ますと、ぼんやりとした視界の端に何か見える。

 紅い髪。

 微かに香の匂いがした。


「美鈴…?」

 呼びかけると、とたとたという聞き慣れた音。

「よかった… お薬が効いてきたみたいですね」
「…薬?」

 はて、俺は薬を飲んだ覚えはないんだが。

「永琳さんが来て、注射してくれたんですよ」

 ああ、そういう事か。
 妙に右腕にうずきがあると思ったら。

 緩やかに意識が戻ってくる。
 目の焦点も。


「美鈴、目が赤いな…」

 えっ、という表情をすると、目をぐしぐしと擦る。

「あー、いや… その、急だったんで、慌てちゃって…
「ごめんな、心配かけちゃって」
「そんな事、気にしないで下さい」
「あー、ホント久しぶりだからなぁ、風邪ひいたのって。俺もびっくりだ」


「そういや、美鈴、仕事はどうした?」
「今日はお休みです。第一、病気の旦那さまを放り出して行けるわけないでしょう?」

 目尻をつり上げ、少し怖い顔をしてみせる。
 まぁ、いつもがいつもなのでまるっきり怖くないのだが。


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「お粥作ってきますね」

 その言葉に俺はピクリとした。
 実は俺はお粥が大の苦手だったりする。

 大概は好き嫌いなく食べられるのだが、お粥だけはどうやってもダメだ。
 どう嫌いなのか詳しく説明すると余計に気持ち悪くなるくらいダメなのだ。

「お粥じゃなきゃダメかなぁ」

 言ってはみたものの、幻想郷には気の利いた流動食などはないので、結局お粥に頼る事になるのではあるが。

 美鈴はしばし考え

「雑炊っぽくしてみましょうか」


 ああ、その手があった。


 程なくして土鍋を持った美鈴が戻ってきた。


「雑炊“っぽく”じゃなくて雑炊だな」

 俺が見た限りでは少なくともそう見えた。

 一口。
 よく噛んで、ゆっくりと飲み込む。

 やっぱり雑炊だ。
 しかし、今の俺の体にはまだ少し辛かったらしい。
 少々胃が騒いでいる。

 だが、旨い。
 もう一口。

 落ち着いて、ゆっくりと。

「うん、旨い」


 じんわりと体が温まって行く。


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 結局、二人で用意された全てを平らげ、食後の薬を飲んだ俺は再び布団の住人となっていた。
 朝よりは楽になったが、さすがに布団からはまだ出られるような体調ではないのだが。


「ちょっと体を拭きましょうか」

 美鈴はお湯の入った手桶と手拭いを用意していた。
 そう言えば寝間着がじっとりとしている。

「うん、頼むよ」

 どっこいせ、と体を起こすと美鈴が俺の寝間着の上をはだけさせる。


 静かな午後。
 聞こえるのは鳥の声と、手拭いを絞る時の水の音。

 首から肩、胸から背中、腹と美鈴は何も言わずに俺の体を拭いていく。

「ありがとうな」
「いえいえ、これくらい何ともありません♪」

 しばしの時間の後、随分とさっぱりした俺は再び布団の中へ。
 すぐ横で美鈴が付き添っている。

「今の俺の横にいたってつまんないぞ?」

 半分寝ている俺に

「じゃあ、添い寝してあげましょうか♪」
「風邪が移るぞ」
「私の頑丈さを知らないわけじゃないでしょう?」

 にこやかな顔で布団に入ってくる。
 と、少し顔が厳しくなった。

「まだ寒気とかするんですか?」
「んー、ちょっと」

 そう言うと、美鈴は俺をぎゅうっと抱きしめる。
 体の震えも、寒気も一気に消えていく気がした。


 あったかいな。


 いつしか俺は眠っていた。


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 再び目を覚ますと日はすでにかなり傾き、暗くなりはじめていた。

 何やら甘い香りが漂っている。

 そう思っていると、美鈴が襖を開けて入って来た。
 手には大きめのカップが二つ。

「どうしたんだい、それ?」
「アリスさんに教えてもらったんですよ。ホットチョコレートです」
「そうか… なんだか懐かしいなぁ。こっちに来てからは始めてのチョコレートかな」
「そうですね、去年はバレンタインどころじゃありませんでしたからねぇ」

 二人で顔を見合わせ、思わず苦笑してしまう。
 一緒になってから数ヶ月は色々と大変だった事を思い出した。


「でも、後悔なんてしてませんけど」
「する気もないぞ」

 微笑む。

 ああ、美鈴のこの笑顔は俺にいつも幸せをくれるんだ。


 体を起こしてカップを受け取る。

 甘く、やさしい香り。
 美鈴とは違うが、どことなく似ているような。

 一口。


「あつっ!」

 こういう時に猫舌はイヤだ。
 わかっていたのに、まだ頭が回ってなかったらしい。


「大丈夫ですか?」
「うん、ごめん。ちょっとうっかりしてた」

「じゃあ」


 美鈴がカップから一口。


 そして───



                               End.



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(この先、おまけとか後書きとか。読んでも読まなくても)





























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「アンタ、とんでもないバケモノを好きになっちゃったんだねぇ」

 ニヤリと嫌らしい顔。
 そこには笑みと、ほんの少しの哀れみを含ませたような。


「今───、何と言った?」

 俺は気力を振り絞って、言った。

「んー?」
「何と言った、と聞いてるんだ」

 辛うじて動く顔をそいつに向け、精一杯睨みつける。

「あら、まだ動けたのね。人間って中途半端に頑丈だから困るわ」
「答えろ」

 くっくっと耳に付く笑い声。

「あの門番の事よ。まったく、あんなバケモノだったなんてね」


「ふざけんな」

 地べたに這い蹲ったまま、声を絞り出す。

「バケモノだと? 美鈴が? ふざけてんじゃねぇぞ。その言葉を取り消せ」

 煮えくり返った腑をぶち撒けるように。

「あら、バケモノをバケモノと言って何が悪いのかしら」
「取り消せ」
「五月蠅い人間ねぇ」
「取り消せ」

 動け、動いてくれ。
 ほんの少しの時間だけでいい。
 体を動かさせてくれ。
 立ち上がらせてくれ。

 指が、手が、腕が、足が。
 言う事を聞いてくれない。

 だったら無理矢理にでも動かしてやる。
 必死に運動命令を送ってやる。

「取り消せ」

 指が動いた。

「取り消せ」

 手が動いた。

「美鈴は美鈴だ」

 腕が動いた。

「美鈴は、美鈴だ。 紅美鈴だ」

 膝が動いた。

「俺が愛した、ただ一人の女、紅美鈴だ」


最終更新:2010年06月02日 23:59