パチュリー3
>>415
――――妖怪は人間を襲う。
――――人間は妖怪を退治する。
――――そう、当たり前の事。
ある日、いつも通り本を読んでいたら魔理沙が来た。
だが今回は、もう一人変わった少年を連れてきた。
その少年は妖怪が好きらしい。…そんなことはどうでもいいが。
咲夜が四人分の紅茶を持ってきて、二つを私と魔理沙のところに置く。
その後、少年(りりと言うらしい)に近づいて、
「りり君、あなたのことを待っている方がいるの。来てくれる?」
その声に少年が少しおびえた顔をした。
「大丈夫…たぶん何もされないわよ」
すると魔理沙が口を挟む。
「待ってるって誰なんだ?」
誰かが待っている。それは私も興味があった。
「お嬢様です」
その答えに私は少し驚いた。レミィが興味を示す事は滅多に無いのだ。
「あー…ダメだな。私はそいつを守れと言われているんだ」
流石に魔理沙でも人を見殺しにはしない。これは普通の事である。
だが、今の私にはレミィが何に興味を持っているかが気になった。
「魔理沙…きっとお嬢様はなにもしないわ」
それに、お客として呼んでいるのだ。それを殺すことはレミィのプライドが許さないだろう。
「そうは言ってもな…りりどうする? お前が決めろ」
少年は行くだろうとは思うが、一応は見てみる事にする。
「わ、わかりました。その…お嬢様に会います…」
その言葉に咲夜は少年を連れて出ていった。
<ここから、自作部分です>
「……大丈夫かな。あいつ」
パチュリーに何もしないといわれても気になることは気になる。
「大丈夫よ、レミィはよほどの事が無い限り、お客様を殺すなんて失態はしないわ」
「よほどの事って、どう言う事だ?」
「そう、例えば…」
そう言ったと私に指を指して。
「あなたが本を百冊借りたまま返さないとか」
「おいおい、百冊も借りてないぜ?」
「今、八十三冊目よ」
そんなに借りていたとは知らなかった。
と、そろそろ少し返してやろうかと考えていたとき、
「にゃー」
…猫?
「おー、パチュリー。随分上手い声真似じゃないか」
「私じゃないわよ、この子よ」
そう言って膝に乗せていた(座っているので死角)から猫を取り出した。
その猫は全身紫色で、はっきり言って変わった猫だった。
「ついに猫イラズじゃ敵わなくなったのか」
「猫イラズは代用品。この子が里帰りしている間の」
冗談めかしていったつもりだが、パチュリーは真面目に返してきた。
というか、猫が里帰りなんて聞いた事が無い。前に回転する尻尾が二本の黒猫なら見たが。
「でも、アレルギーとかしつけとか色々大丈夫なのか?」
「この子は特別よ。一応使い魔のようなものだし」
「使い魔、ねぇ…。便利なのか?」
「まぁ、実験台とか魔力増幅装置みたいなものね」
「それじゃあ戦闘には使えにくいんじゃないのか? 落ちたりすると危ないし」
「飛べるからそこらへんは問題無いわ」
流石はパチュリーだ、極悪非道だぜ。
これ以上聞くと、この猫が可哀相になってきたので話を変えることにする。
ちなみに猫はパチュリーの膝の上に帰還していた。
「そ、そういえばさ」
「何?」
「パチュリーは弟子とか取らないのか? あの薬師みたいに」
「もう弟子なんて取らないわよ」
まぁそう答えるだろうとは考えていたが、一つの言葉が頭に引っかかった。
「もう? ってこは、取った事あるんだな」
「ええ、一人だけ」
「パチュリーが弟子なんて取るなんてな」
「悪い?」
悪くは無いが、ありえないと思っていた。
「…その話し、詳しく聞きたい?」
「ああ、聞きたいぜ」
ネタになることは間違い無い、反射的に身を乗り出しす。
「それは、むか~しむかしのことじゃった…」
「まてパチュリー。その言い方だとおじいさんが桃を割って中から出てきた人間が鬼を退治しそうだ」
鬼といえば、あの鬼はどうしたのだろうか?
「仕方が無いわね…」
そう言うとパチュリーは話し始めた…。
「それは、そう。30年くらい前でね、ここで起こったのよ…」
――――人間が妖怪を食べる? 無茶ね。
30年前にも図書館に住んでいた私は、いつも通り本を読んでいた。
ちなみに、その頃は誰もいなくて、一人で黙々と読んでたわ。
でも、それが一つの出来事によって壊され始めたのよ…。
「…? 誰かしら?」
突然の気配。しかも図書館の奥から。
無論メイド達は近づいてこないし、ありえない事だ。
「……面倒だけど、読書の邪魔になるし…」
そう言うと少し浮かんで気配のほうに近づいていった。
「で、そこには誰がいたんだ?」
「一人の少年よ。背丈は私より小さいわ」
「おいおい、随分小柄だな」
その少年は、周りの本棚を呆然と見ていただけだった。
「あなた、誰? どこから来たのかしら?」
いきなり殺すのも悪いだろうと思って、その少年に話しかけた。
「…えっと、僕は○○です。村から来ました。…それ以前にここはどこですか?」
いきなり話しかけてきたのに答えるとは変わった人間だ。
というか、進入してどこか知らないと言うのもおかしな話しである。
それに、普通の人間なら湖の真ん中にさえ近づけないはずである。
「ここは、図書館よ。あなた、何でここに来たのかしら?」
「えーっとですね。…頭の上で指をくるくる~っと回したら、何時の間にかここに来てしまいまして」
正直ありえない。魔法も何も唱えずに指を頭の上で回しただけでここについてしまったのである。
「あなた、回す前に何か考えてた?」
「たしか、大量の魔法の本が読みたいって、微かに」
なるほど、つまりは念じている最中に術式か何かが出来あがってしまって、ここに来たわけである。
だが、移動呪文はかなり高度な呪文である。それを適当にやって出来るのだろうか?
それに、私は彼に興味があった。
「…あなた、魔法を使いたいと思う?」
何故かは解らないが、なぜかこの少年には魔法を教えても良いかもしれない、という考えが生まれていた。
「魔法ですか? 使いたいですよ」
「親は?」
「…居ません。………前に妖怪に殺されました」
それなら好都合である。
「そう。じゃあ、ついてきて」
そう言ってもとの場所に戻った。
「で、若き○○はダークサイドに落ちたのか」
「何の話よ」
「まあそれはともかく、なんで弟子なんかにしたんだ?」
「才能がね、あったのよ。彼の目を見たら解ったわ」
「勿論、それ以外の理由もあるんだろ?」
「……………胸キュン?」
「イメージ崩れるぞ」
「余計な御世話。それで、彼は私の事をなぜか先生と呼んだのよ。理由はわからないけど」
「まぁ、悪い気はしなかっただろ?」
「まぁ…ね」
「…ここまでが基礎の基礎。わかった?」
「解りました」
うん、私が教えた事をすぐに飲み込んでくれるので正直教えがいがある。
「さて、次は……。…ついてきて」
「? はい」
理由も聞いてこないので、いちいち説明する必要が無くて楽である。
その割に質問は良くする。変わった子だ。少し抜けているところも少々。
二人が着いたところは本棚の境目である。
「この本棚をパッと見渡して。周りのよりも明るい本があったらそれを取る。解った?」
「はい。…でも、なぜですか?」
「周りよりも明るい本はあなたの得意魔法。とりあえず得意のからやるべきだから…。まぁ、私は全部だけどね」
それで納得したのか、順順に見渡していく。
…が、全然目にとまるものが無いらしく、一つ二つと取りに行かずに通る。
(この子には、得意魔法が無いのかしら…?)
そう思いかけたとき、
「あ、ありました!」
やっと見つけられたためか、喜び勇んで取りに行った。
そうして戻ってきたときには四冊の本があった。
「何の本だったんだ?」
「光、闇、日、月よ」
「じゃあそれが得意属性だったんだな」
「しかも、最後の地点にあったのを取ってきたからね、随分嬉しかったんじゃないかしら」
「でも、得意属性の本が一冊ってのはありえないじゃないか? ここは魔法図書館だぜ?」
「元々、その四つの属性については少なかったから。それだけしか目に入らなかったのかもしれないわね」
レミィと○○の出会いはそれはもう変わったものだった。
「え~っと日の呪文…は、こうやって…」
ああ、どうして彼は普段難しい属性が得意なのだろう…。
暴発が恐くて仕方が無い。本を読んでる暇さえないのだ。
「わっ!」
と、いきなり部屋が眩しくなった。
「ど、どうしたの!?」
「呪文が発動しちゃって」
「どんな呪文!?」
「えっと、たしか…ロイヤルフレア」
「ロイヤルフレア!? まさかあなた、本を右開きしたでしょ!」
「ええ、まあ」
○○は眩しくないのか? こっちは眩しすぎるが。
「魔道書は左開き! それじゃあ高位呪文から覚える事になっちゃうじゃない!」
「えーっと、これを解く方法は…」
なんて暢気に探してる。やっぱり眩しくないようだ。
と、
「パチェ? 入るわよー」
レミィが入ってこようとしてきた。…拙い、吸血鬼に日光は死と同じである。
「レミィ! 入ったら死ぬわ!」
「何言ってるのパチェ? そんなわけないじゃない」
死にます。灰になってお終いです。
それならばと思って○○の方を向くが、眩しくて全然見えない。
「○○! 闇の魔法で相殺!」
もうなんど大声を出したか。それを聞いた○○は、
「あ、はい。えーっと、オリエンタルダークブライトは、こう…」
暢気に読んでいる。あー、もう。
「早く!」
と、術式が出来たのか。今度は真っ暗になってしまう。
それなのに○○は本を読んでいる。暗くて読めなくないのか?
―――ガチャ
「うわ! 全然見えないじゃない!」
間一髪、レミィが生還しました。ってそういう場合じゃない。
「○○、なんて書いてある…?」
恐る恐る尋ねる。
「えーっとですね。一度空間を包み込んで闇にしたあとに大爆発。です」
あーなるほど、それでロイヤルフレアを包み込んだと。って、
「また右開き!?」
「ええ、負けるとダメだと思って…」
「左舷から開くの! なにやってんの!?」
今、なにか電波が入りました。大変結構でございます。
じゃなくて! このままだと全員死んでしまう。
「○○! 範囲を極限まで小さく出来る?」
「やってみます!」
そう言うと、一部を除いて元の明るさに戻った。
「そのままの状況で維持!」
「はい!」
そして呪文を唱え、○○が小さくしたところを包み、圧縮して、固める。
「もう、良いわよ…はぁ」
ここまで、疲れたのは始めてだ…。
「そうですか?」
「何が何だったのかしら…」
「二人とも能天気過ぎるわよ…」
「それはともかく…、この玉どうしますか?」
「それ? それは閃光弾として使えるけど…、今使ったらレミィが灰になるわ」
「というか、あなた誰?」
「っていう感じでね、それはもう大変だったんだから…」
「パチュリー、愚痴っぽくなってるぞ…」
「でね、そのころはまだ私弾幕のこと教えてなくて…」
「酒、入ってんのか?」
「酒といえば、○○は酒もダメでね…。悪酔いはしないんだけど苦手で…」
「おーい店主! 酒一本追加!」
「店主とはな……アチャー!(ヘッドバット」
「???」
「でね、そのころはまだ私、くわしい弾幕の事教えてなくて…」
「いかん、ループしてきた…」
「まさか、中国に負けたのよ?」
なぜか○○は来ない、散歩に行ってくると言ったっきり全然。
心配になってきたので、最近雇ったらしい門番のところに聞きに行く。
つもりだったが、
「ちょ、聞いてくださいって!」
「貴様のような人間、見た事も聞いた事も無い!」
元凶だった。
○○は最近外に出ないため、○○のことが門番の耳に入っていなかったのだ。
この門番、得意技が体術のために、私達のような魔法使いには相性が悪いのだ。
そういえば、スペルカードについて教えるの忘れていたのも関係しているのかも。
(あ、詠唱中に止められた。…まぁ、そうでしょうに)
と、そろそろ助けに行ってあげようとしたところに。
「なっ!」
門番が出した突きをかわして掴み、前のほうの足を払った。
しかもその行動中にも詠唱を続け、終わらせる。
「ふるいけやかはすとびこむみづのをと!」
視界が一瞬眩しくなった。
直視はまぬがれたため、すぐに目が元に戻る。
と、そこ居たのは。
目を回している門番が一人。
…○○は逃げたらしい。
(まぁ、あの子らしいわね。あまり危害を加えないあたり)
思わず苦笑してしまう。さて、戻るか。
「なんでそいつは攻撃しなかったんだ?」
「まぁ、紅魔館の人だからというのが理由ね」
「……そのころから中国は負けてたのか…」
「その後にスペルカードとか色々教えたわ。あの子は弾幕ごっこの素質もある見たいだったし」
「ほぉ、一度戦ってみたかったな」
「う~ん、自分から仕掛けるタイプじゃなかったけど…。やるときはやる子だったわ。強さは…そのころは普段の私と同じぐらいね」
「そうなると、そろそろパチュリーのほうが弱くなるんだな」
「…喘息のせいよ」
「っていうか酔いは醒めたのか?」
――――人間が妖怪を食べる? まぁ、鳥なら良いんじゃない?
出会ってからほぼ一年。○○はメキメキと力をつけていった。
そしてあくる日、いつも通り(?)起きる…が○○の気配が無い。
と、置手紙があった。
『先生へ、
少しばかり出かけてきます。
○○』
なぜか、悪寒がした。
さすがに普通の妖怪程度なら簡単に倒せるだろうとは思うが、何故か心配になった。
それも錯覚と思い、とりあえず本を読む。
一日目、帰ってくる気配が無い。まぁ里帰りでもしているのだろうと思い気にしないでおく。
二日目、やっぱり帰ってくる気配無し、流石に少し心配になってきた。
そして三日目、
いつも通り本を読んでいたらレミィが来た。
「パチェ」
「何?」
「あの子、死ぬわよ」
「え…?」
突然の言葉に声を失う。
「今日の夜、死ぬ運命にあるわ」
「そう…」
何が悪かったんだろうか、やっぱり三日も空けると魔力が尽きるのだろうか?
「そうじゃないわよ。あなた、殺したくないでしょ?」
「…当たり前よ」
内心、とても焦っている自分がいる。しかしそれを必死で押しとどめる。
「だったら、なんで何もしないのかしら?」
「…運命、なんでしょう?」
「……パチェ、あなたが知らないとは思ってもいなかったわ」
「なにを、かしら」
「運命はね、それがわかっていたら変えられるのよ。過ぎたものなら変えられないけど、まだ過ぎてもいないものなら変えられるのよ。
知っているのに変えないのは、それがいい事かバカだからね」
「………」
「なんで、何もしないのかしら?」
「もし、助けられなかったら?」
「たとえ、助けられなくたって別の道がある。足掻かないでいるのは、バカな証拠よ」
「………」
「…パチェだから、教えてるのよ」
「……それは、友人だからかしら?」
「それもあるけど…、パチェが悲しんでる姿なんて見たくないし」
そう言い終えるとレミィは出ていった。
(運命は変えられる…か。…でも、もし死んでいたら)
『たとえ、助けられなくたって別の道がある』
『足掻かないでいるのは、バカな証拠よ』
気がついたら、外に飛び出していた。
外はもう夜。それでもパチュリーは探しつづけた。
『運命はね、それがわかっていたら変えられるのよ』
(変えて、みせる!)
しかし、外は暗闇である。どこを探しても見つからない。
(魔力で探そうにも…、たぶんいつもの魔力じゃないからわからない…。
…○○が、日か光の魔法をつかってくれれば…)
そう思い、辺りを見まわすがその類のものは見当たらない。
と、
――――ズガンッ!!
大きい破裂音がした。その後、激しい閃光がパチュリーを襲う。
(これは…!)
前に、ロイヤルフレアをオリエンタルダークブライトで包み込んだものを固めた記憶がある。
(…たしか、その後○○に渡した気がするわ)
しかし、光は一瞬で音も感知しづらい音だった。
(でも、微かに魔力はある)
その魔力の元に向かってパチュリーは駆けた。
「○○!!」
そこにいたのは、満身創痍の倒れている○○と、妖怪の群だった。
「先生!? あ、危ないです!」
「大丈夫よ。…今日は、喘息の調子が良いから」
そう言い、二枚のスペルカードを取り出す。
「木&金符『エメラルドメガリス』」
魔法が妖怪達を襲う。
が、
「無傷…?」
「この妖怪は、全ての属性に、対して…耐性を持っています……」
それでは倒せない。心の中で舌打ちをしながらもを解決策を探る。
妖怪達は徐々に迫っていき、逃げ場が無くなってきた。
「……先生。僕に考えが」
「なに?」
「…先生の全てのカード、貸してください」
その一言でパチュリーには全てが読めてしまった。
「まさか、○○! あなたまさか………!」
「……そうです、全ての魔力を解き放てば、倒せるはずです」
○○は マ○ンテを となえた!
ぼうそうした まりょくが てきをおそう!
なんてちゃちなものではない。下手をすれば体ごと吹き飛んでお終いである。
「ダメよ! そんなことで、命を捨てるの!?」
「しかし、このままだと先生まで!!」
○○は自分を助けようとしてそんなことを言っている。それは解るが、納得が出来ない。
「でも!! あなたが…」
「大丈夫です、1%でも生きる確立があるなら、それに僕は賭けます。
このまま、一緒に死ぬくらいなら…、それくらい、賭けても良いんじゃないですか?」
「………だったら、私が」
「駄目です、あなたにはまだやることがあると思います。それに、死ぬなら自分だけで良いんです!」
「なぜ…そこまでするの…?」
「先生、僕の親は妖怪に殺されたと言ってましたよね?」
「…ええ」
「それ以来、僕は心を閉ざしていました。他人にあまり接せずに、暮らしていました。笑うなんてそのころは一度も無かったです。
でも、ここに来て変わりました。笑うなんてほぼ毎日あります。それに、親のいない僕にとって先生は親のようでした。
…………だからもう、大切な人を失うのはごめんです!!」
「テテッテ、テテーテーテ♪(マリオ」
「真面目に聞きなさいよ」
「湿っぽいのは嫌いなんだよ」
「…先生が無理ならいいです。四枚でも目くらまし程度にはなるでしょう」
「………いえ、全部あなたに託すわ」
「……ありがとう、ございます…」
そう言い、カードを11枚持ち魔力を、解き放つ。
「火水木金土月日闇光符『幻想夢物語』」
それは、美しいようで、儚く。
それは、儚いようで、晴々として。
全ては一人の思いとなり、妖怪達を襲う。
――――ドガァァァァァァァン!!
敵が死んだかもわからない、砂埃の中。
二人がいた。
「…○○?」
「すみません、全部放出するほど勇気が無くて…」
その答えに、パチュリーは砂埃の服を気にせず一筋の涙を流し、笑った。
「それが、普通よ」
その答えに、○○も笑った。
しかし、
「え…!?」
「………無傷!?」
そこにいるのは、無傷の妖怪達であった。
「ここまで、効かないとは思いませんでした…」
と、一匹の妖怪が振りかぶった。
「!」
「せ、先生!?」
驚く○○をよそにパチュリーは○○を守るべく、妖怪の目の前に立ちはだかる。
「くっ!」
攻撃される。
それでもその場所を動かない。
「先生! なぜ、そんなことを!!」
「…私は、図書館でずっと一人で本を読んでいたわ。たまにレミィがくるけど、ほとんど一人で。
でも、あなたが来てそれは無くなった。時には実験をして、時には失敗して、そして笑いあった。
そして何時しか気付いたわ、あなたの事が好きだと。それには自分だって驚いた。
でも、それよりも強いものがあるのよ………。もう……、もう、あんな所に一人で居るのは嫌!!
そのためなら、運命だって変えてみせる!!」
「!! 先生!」
「!」
また妖怪がパチュリーを貫こうと振りかぶった。
――――ザシュッ!!
貫かれたのは、パチュリーではなくその妖怪だった。
一本の槍が、その妖怪を貫いていた。
「この、槍は…!」
「レミィ…!?」
「こうなるとは思っていたわ。とりあえず、間に合って良かったわ…」
その後、レミリアは妖怪達の方を向き。笑みを浮かべた。
「……さて、雑魚妖怪達、覚悟はいいかしら?」
一匹、また一匹と槍で貫かれる。どんなに逃げ惑おうと槍が逃がさず貫く。
そして、妖怪達は全員死んだ。
「…まさか、レミィが来るとは思わなかったわ…」
「大切な友人のためよ? これくらい当たり前」
「……そうね、ありがとう」
「先生。無茶し過ぎです…」
その言葉にパチュリーは普通に返す。
「あなたほどではないわ」
「……そうですか? …それは兎も角、ありがとうございました。…あなたに会えて本当に良かったです」
そこで唐突にレミリアが割って入った。
「パチェ……正直、この調子だと確実に死ぬわ。…ここ以外で、血が出過ぎてる。その上、魔力も殆ど無い」
「……え!?」
「やっぱり、ばれてましたか」
「…当たり前よ」
「……先生、死ぬ前に渡しておきたいものが…」
「待って! 死ぬなんて、言わないで!」
「パチェ、ここは訊くときよ…」
「この三日で見つけたものです…」
そう言って懐にあったものを差し出す。
「これは…グリモア……?」
「そうです、あると便利かと思いまして…」
「そのために、命をかけてまで?」
「……ええ」
「…無茶過ぎるわ、そんなので命を捨てるなんて!」
「…でも」
「でもじゃない! こんなグリモアなんかよりも、本なんかよりも、あなたが重要なの!」
「………しかし、もう無理です」
「くっ…!」
「最後に、一つだけ。…あなたが、好きです」
そう言うと、○○は目を閉じた。
「……○○」
「へぇー大変だったな」
「……あなた、途中から全然聞いてなかったでしょ」
「まあな。で、そいつはまだ生きてるのか?」
「普通は、死んでるわよ…」
「念のためだ、念のため」
そこで一旦話しが切れる。
「パチュリー様、何かする事は?」
と、
小悪魔がやってきて聞いてきた。
「じゃあこの本とこの本、元の場所に戻してきてくれる?」
「はい」
そう言うと、小悪魔は指定された本を持って歩いていった。
「…しかし、小悪魔も大変だな。あいつ、ここの全部一人でやってんだよな?」
「まあ、そうなるわね」
「たしか、パチュリーが召還したんだよな?」
「…それ以外に誰がするって言うの?」
(……まさかね)
「さて、それじゃあ本を貰って帰る準備するかな?」
「もってかないでー」
「もってくぜ」
少しして、あの少年が戻ってきた。
結局、魔理沙から本を守る事は出来なかったが。
「お、もういいのか?じゃあ帰るか」
「その本ちゃんと返しなさいよ」
一応忠告としては言って置く。
「気が向いたらな」
結局こう返されるのだが。…八十四冊。
「さて、もういいわよ?」
そう言うと、膝の上の猫が飛んだ。
そして魔法を猫自身が自分でかける。
魔法をかけると、その猫は光に包まれ、光が解けた頃には一人の少年になってた。
紫色の髪の、パチュリーより小さい少年だった。
ただ、猫耳と尻尾を除いて。
「はぁ、久しぶりに元に戻れました」
少年は少し伸びをした後、パチュリーに向かって。
「っていうか先生、なんで猫なんですか?」
「なんとなく、よ」
「さいですか」
毎回思う疑問をとりあえず捨て、パチュリーに聞く。
「先生、なぜ本当の事を伝えなかったんですか?
本当はグリモアが只の本になって、そのかわり僕が猫になって助かったってことを」
「まあ、良いじゃないの」
「良くないです…。また隠す必要があるじゃないですか」
「それより…、あの子、どうだった?」
「……妖怪と人間が共存できる、と言ってました」
「それについて、どう思ってる?」
「…随分無茶を言っています。でも、そう考える気持ちもわからなくないのです。
それに、思う気持ちは十分過ぎます。…あの子はきっと凄い事をしますよ」
「…で、もしかして助けるつもり?」
「さあ? どうでしょう?」
「……一週間お昼ご飯禁止」
「あ、ピンポイント攻撃ですね?」
――――思いが強ければ何にでもなる。
――――たとえ、運命が決まっていても。
End
~~~あそ(び)がき~~~
どーも、こんにちわこんばんわ。めどいからA氏です。
パチェです、主人公猫です、むきゅーです(なにそれ
書いていて羨ましいやらなんやら…。
っていうか猫耳です。ああ、自分で書いていてなんだが主人公かわr(幻想夢物語
今回は399氏のりり君を後ろに友情出演。無駄に繋がれる。
ええ、ありがとうございます!
さてさて、今回もハッピーエンド? ですが改造シーンを。
改造、1
『先生へ、
少しばかり呪ってきます。
○○』
なぜか悪寒がした。
カーン、カーン、カーン…
改造、2
「無傷…?」
「この妖怪は、全ての属性に、対して…耐性を持っています……」
「だからって…………どくばりじゃ無茶よ! 相手のHPは一桁じゃないわ!!」
「経験値が………欲しかったんです! 魔法使いでも倒せると証明したかったんです…」
メタルキングは にげだした!
改造、3
「魔道書は左開き! それじゃあ高位呪文から覚える事になっちゃうじゃない!」
「………でも、これ巻物ですよ?」
「どこから持ってきたのそれ!?」
「入るわよー」
駄目だスネーク!未来が変わってしまう!タイムパラドックスだ!
最終更新:2010年05月16日 20:58