パチュリー13



12スレ目>>853 うpろだ896


1月5日
 新しい研究テーマを立ち上げることにした。
 基礎理論は既に構築しているので、そう苦労せずに結実を見ることが可能だろう。
 今日は朝から妙にメイドたちが浮き足立っていた。
 もともと騒がしい連中なのに、更に落ち着きがないとなったら、大変な目障りだ。
 小悪魔によると、昨晩保護した行き倒れの人間の男が、中々の男前だとの事。
 実にどうでもいい理由だった。
 小悪魔がニヤニヤしながら「気になりますか? 気になりますか?」とやかましかったので、アグニシャインで燃やしておいた。

1月7日
 小悪魔に伴われて、人間の男が図書館にやってきた。
 先日助けた行き倒れだとの事。
 メイドたちが騒ぐほどの美形ではないように思う。
 何か挨拶をしてきたが、面倒なので適当に目礼を返しておいた。
 そのまま放っておいたらおもむろに禁書を開こうとしだしたので、慌てて止めに入った。
 普通の図書館と魔法図書館の区別がついていないらしい。
 結局そのまま図書館を案内することになってしまった。
 別に面白くもおかしくもなく済んだが、終始おとなしくしていてくれたのはありがたかった。あまり喋るほうではないらしい。
 ただ、魔法についての話をするたびに、一々驚いていたのが印象的だった。
 彼が帰った後、小悪魔がニヤニヤしながら「いやあお疲れ様でした」などと言い出したので、あんたの仕事でしょうとエメラルドメガリスで潰しておいた。

1月8日
 昨日の男がまたやってきた。
 帰らなくていいのかと思ったが、小悪魔によると外界からの迷い人であるとの事。
 魔法についての知識がない理由に納得する。
 帰る方法が見つかるまでここにいることにしたらしい。
 紅魔館は普通の人間が生きていくには少々厳しい環境であるように思うが、一体何が気に入ったのか。
 まあ別に私には関係のないことだ。
 図書館の使用許可を求められたので、騒がないこと、私の邪魔をしないこと、勝手に本を持っていかないことなどを条件に許可した。
 それはわざわざ言うほどのことなんですかと不思議そうな顔をされた。悲しい。
 彼は本を持ってきて、読んで、帰っていった。
 去り際にまた来ますね、と言ってきたので、そう、と適当に返しておいた。
 私としては、私の邪魔にさえならなければ、いてもいなくてもどうでもいい。
 小悪魔がニヤニヤしながら、「恋の予感ですか?」とよくわからないことを言ってきたので、プリンセスウンディネで頭を冷やしておいた。

2月13日
 今日は特筆すべきことはなかった。研究も引き続き順調に推移している。
 無理をして一点挙げるとするなら、○○の姿を今日は見なかったことだろうか。
 このところは毎日来ていたように思うが、あまり注意していなかったので本当にそうだったかはよく分からない。
 聞いてもいないのに小悪魔が、彼が風邪を引いたらしいということをしつこく言ってきた。私にどうしろと言うのか。
 それを問うと、ニヤニヤしながら「またまたあ。わかってるくせに」と意味不明なことを言ってきたので、マーキュリポイズンで沈没してもらった。

2月14日
 今日は朝から妙なことを言われ通しだった。
 まず起き抜けに顔を合わせるなり小悪魔が「部屋は二階の掃除用具入れの隣ですよ」と言い出した。誰の部屋だ。
 朝食の席に行こうとすると廊下で門番と出くわし「酷い風邪だそうで。このたびは大変でしたねえ」と慰められた。なぜ私が大変なのか。
 席に着いたら着いたでレミィが「そういえば、あいつの容態はどうだ?」と聞いてきた。私が知るわけがない。
 挙句の果てに咲夜が「薬膳を作ったのですが。持っていっていただけますか?」などと言って怪しげなスープを押し付けてきた。自分で持って行けと思った。
 妙な臭いに辟易しながら持っていくと、○○はベッドで眠っていた。確かに風邪のようで、高潮した頬や湿っぽい吐息がその症状を伝えていた。
 ベッド脇に土鍋を置くと、その音に反応して、一瞬だけ薄目を開けたように見えたが、消耗しているのか、すぐにまた眠りに落ちていった。
 看病など柄でもないのですぐに立ち去ろうと思ったが、せめて床に散乱しているシャツくらいは椅子にでも掛けておいてやろうかと手に取ると、
「おう、風邪引いたんだって? 調子はどうだ?」と言いながら扉を蹴破るようにして魔理沙が入ってきた。
 しかし魔理沙はシャツを持つ私を見ると急に頬を赤らめ「あー、すまん。これを渡しに来ただけだから。義理だから全然心配しなくていいぜ」と
早口で言いながら、私に小さい箱を押し付けるやいなや「じゃあお前から渡しておいてくれよ。まあなんだ、邪魔したな」と、
困惑する私を尻目に去っていった。
 意味が分からないので箱を開けると、「義理 Marisa.K」と白文字で大書されたチョコレートが入っていた。
 そういえば、これまでは女所帯なので大して気に留めることもなかったが、今日は確かそういう風習がある日だった。
もっとも、男がいたとしても気には留めなかったと思うが。
 それも土鍋の横において部屋を出る。なんだかよく分からないが、まだ朝だというのに異様に疲れた。
 図書館に戻ると、小悪魔がニヤニヤしながら「看病イベントですね! これでフラグが立ちましたよ」とこれまた意味不明なことを言ってきたので、
ジンジャガストで薙ぎ倒しておいた。

2月16日
 驚愕の事実が判明した。
 どうも周囲からは、私と○○が両想いの仲だと思われているらしい。
 通りで先日は皆から妙なことを言われると思った。
 実際には、私と○○は会話することすらあまり無いのだが、確かに図書館の外から見ると、私に会いに足しげく通いつめているように見えるかもしれない。
 良い悪いという以前に困惑せざるを得ない事態だ。実験にも身が入らない。
 考えていると、間の悪いことに当の本人がやってきた。もう大丈夫なんですか、という小悪魔の質問に、ええおかげさまで、などと呑気に答えている。
 こちらの身にもなってほしいものだ。
 ○○がこちらを向いて、パチュリーさん一昨日の朝に来てくれましたよね、と言ってきた。あいまいにうなずくと、きっとあのスープが効いたんです、
ありがとうございますと頭を下げた。
 あれは私じゃなくて咲夜が作ったものだと言おうと思ったが、小悪魔がさえぎるように「いやーそうなんですよー、パチュリー様ったら慣れない料理を
一生懸命、○○さんのためにですね」とよどみなく嘘を並べ立てた。○○はそれを聞き、よりいっそう感謝の念を深めたようだった。非常に困る。
 彼はまた帰り際に改めて礼を言い、お返しには期待しておいてくださいね、と笑顔を残して去っていった。
 小悪魔に目線で非難を送ると、悪びれずにニヤニヤしながら「だって本当に両想いになったほうが面白いじゃないですか」とうそぶくので、
セントエルモピラーで爆破しておいた。

2月28日
 どうにも先日以来、○○が来ると調子がおかしくなって困る。
 それもこれも、あの両想いだとか何とかいう噂のせいだろう。
 何度か否定してみても、誰もが「またまた照れちゃって」という顔をする。まったく信じてくれないのはどういうことだろうか。
 小悪魔によると、○○と私は「静かで本好き」という共通点があるため、きわめて「お似合い」であるのだそうだ。意味が分からない。
 その○○は今日もテーブルの隅でページをめくっていたが、こんな状況ではその様子が気になって何度も目を向けてしまう。
一度は○○がそれに気づいて目が合ってしまい、慌てて視線をそらしたほどだ。まるでこれでは本当に恋仲のようではないかと、我ながら呆れてしまう。
 そういえば○○はこの噂を知っているのだろうか。知っているのだとしたら、それについてどう思っているのだろうか。以前なら気にも留めなかっただろう
些細なことが、なぜか今はとても気になった。
 あと小悪魔がニヤニヤしながら「いやあ青春っていいですねえ」と言ってきたので、エレメンタルハーベスターで削っておいた。

3月13日
 本を読んでいる○○の元に狐の式神が訪れた。
 そろそろ春、隙間妖怪が目覚める時期なので、それにあわせて外界に帰る算段をつけたいとの由。
 ようやくと言うべきか、これで私の精神にも平穏が訪れるというわけだ。
 しかしあろうことか、○○は狐に、帰るつもりはありませんと言った。
 私の心臓はなぜか跳ね上がり、狐も当然驚いたが、私を見ると急ににやつきだし、何かを納得した様子で帰っていった。
 そしてまた図書館は静かな状態に戻ったが、私はどうしても気になったので、なぜ帰らないのかと尋ねた。
 ○○は驚いたように顔を上げたが、すぐに満面の笑みを浮かべると、僕がここに通うようになって初めてじゃないですか、パチュリーさんのほうから
話しかけてくれたの、などと言い出した。
 私はそれを聞くと急に○○を見ていられなくなって、馬鹿じゃないの、と小声で言い、本に視線を落とした。
 そのページに何が書かれていたのかは、あまり覚えていない。
 後で小悪魔がニヤニヤしながら「あーあパチュリー様ばっかりいいですねー。私もときめきたいですー」と言い出したので、ノエキアンデリュージュで
押し流しておいた。

3月14日
 そういえば結局昨日はなぜ帰らないのか聞いていなかったということに気づき、改めて今日聞いてみた。
 ○○は悩んでいるようなそぶりを見せたあと、もともと帰るところなんてなかったんです、と少し寂しそうに笑った。
 それを聞いて初めて、そういえば私は○○のことを何も知らないということに気づいた。知っていることといえばせいぜい名前くらいだった。
 それに気づくと、私は急に○○へ質問がしたくなった。
 外界では何をしていたのか。どんな本を読むのか。好きな食べ物は。そのような、まったくどうでもいい疑問は尽きることなく湧き続け、その答えを
得るたびに、私のどこかにある空白が埋まっていくように感じられた。
 今日は随分と喋った気がする。今まで○○と喋った分、その数倍を今日一日で喋っただろう。
 その間、本は脇に置かれたままだったが、ありえないことに、それはあまり気にならなかった。
 最後に、○○は「先月のお礼です」と言って袋包みのクッキーを置いて帰っていった。
 おそらく手作りだろうそれを前に私がぼんやりしていると、小悪魔がニヤニヤしながら「いらないんですかー。私が食べちゃいますよー」と
言ってきたので、ラーヴァクロムレクで撃ち抜いておいた。

3月25日
 いつになく真剣な目つきの○○がやってきて、何かと思ったら愛の告白をされた。
 正直○○本人よりも、「ついにやった!」という顔の小悪魔のほうが強く印象に残っている。
 返事は少し待ってほしい旨を告げると、○○は分かりましたと言って、本は読まずに帰っていった。
 ○○のいないテーブルは、少し広く感じた。
 なんで即断即決じゃないんですかー、と不満そうな小悪魔は無視し、私は考えた。
 ○○とは誰か――紅魔館の前で行き倒れていた外の人間。毎日のように図書館へ来る。
 私はそれが嫌か――嫌ではない。
 では、それは好ましいことか――今はそのように思える。
 愛の告白を受けて、どのように感じたか――嬉しかった。
 つまり……おそらく、私は○○のことが好きだ。
 本当は、こんな問答を行うまでもなく、自分の答えはわかっていた。
 ただ、それを認めてしまうのは、少し怖かったのだろう。
 何しろ、知識以外の物事に自らをゆだねたことは、いまだかつて全くなかったのだから。
 きっと、私には自分から踏み出す一歩が必要なのだと思う。
 そう決心して腰を上げると、小悪魔がニヤニヤしながら「行きますか? 行っちゃいますか?」とやたら楽しげに言うので、サイレントセレナで
少し黙らせておいた。

3月26日
 小悪魔がニヤニヤしながら「ゆうべはおたのしみでしたね」と言ってきたので、ロイヤルフレアで蒸発させておいた。

6月30日
 6月の花嫁は幸せになるという俗説がある。それになぞらえたのかどうかは知らないが、とにかく今日、私と○○の結婚式が執り行われた。
 わずか半年前、過去に戻って「お前は来年の6月に結婚する」と言ったら信じるだろうか。とても信じまい。実に隔世の感があった。
 ただ隣にいる、慣れない礼服に辟易した様子の○○の存在が、これは夢ではないということを告げていた。
 控え室で○○が、言ってなかったけど、ここにお世話になることに決めた理由は、パチュリーに一目ぼれしたからなんだよね、とぽつりと言った。
 私はそれに、今更そんなことを言われても困ると思った。これから本番だというのに、恥ずかしくて新婦が新郎の顔を見れないというのでは式にならないから。
 結婚式の様子については、多く語ることもない。館のメイドたちやそれなりに多くの人妖が私たちを祝福し、私たちはその祝福を受けた。
 式は西洋の作法にのっとって行われた。もちろん神父などというものを呼ぶはずもないが、代わりに紅魔館のエントランスに設けられた高台にレミィが立ち
「おいお前、パチュリー・ノーレッジを妻とし、病める時も健やかなる時も、生涯愛することをこの私に誓え」とものすごく偉そうなことを言っていた。
 ○○は私の目を見て笑みを浮かべると、レミィに向かい、誓います、と言った。
 その言葉だけで、私は幸せになれた。
 ことはそう単純ではない。そもそも寿命も異なるし、今後どうしていくのかということも不透明だ。
 ただそれでも、その言葉を聴けただけで、今の私は、これはきっと間違いではなかった、と思えた。
 次いでレミィが私にも問いかけた。私もまた、レミィに誓った。
 ありきたりな言葉だけれど、きっとその誓いが、二人で生きていくということなのだろうと思う。
 そのあと、小悪魔が泣きながら米粒を投げてきたので、花束を叩きつけておいた。





9月30日
 今日で結婚から3ヶ月経ったことに気づいたが、生活が何か変わったかというと、実のところそれほど変わったようには思えない。
 私は相変わらず図書館で本を読んでいるし、○○もまた、館の仕事をこなしては図書館へとやってくる。
 今日、唯一つ違ったのは、○○と二人本を読んでいると、小悪魔が知らない男を連れてきたことだった。
 聞けば、彼もまた、○○と同じように外界から来た行き倒れだという。
 彼は○○と違ってよく喋り、また屈託なく笑ったが、馬が合ったのか三人で歓談していた。
 やがて部屋を案内すると言って男二人は出て行ったが、小悪魔がなんとなく落ち着かない様子で、そわそわと立ったり座ったり、ちらちらと
扉に目線を送ったりしていた。
 私はピンと来るところがあり、ニヤニヤと笑みを浮かべながら小悪魔に言った。「恋の予感かしら?」
 反撃はなく、ただ小悪魔は酷く赤面した。

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12スレ目>>887


退行したぱっちぇさん。

「ねぇねぇ○○」
「どうしたのパチュリー」
「あのね、お本読んで~」
「あ・・ぁ良いよ、ささ、ベッドに行こうね」
「○○~」
「なあに?」
「お本てね、食べられるの?」
「美味しくないよ」
「じゃあ食べない」
「うん」


「・・・でした、おしまい」
「ありがと~○○~」
「今日のお話は面白かった?」
「ん・・・わかんない、でも」
「でも?」
「○○が読んでくれたから、面白かった気がする~」
「そうかい、それはよかった・・・
 ところでパチュリー」
「?」
「ぎゅってしたいのは良いが腰に抱き着くとポジション的に」
「そ、そ、そ、そそそそそこまでですぅ!」

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12スレ目>>970 うpろだ925


「うう……」

 口から言葉が漏れると同時に無意識で本を開く手が止まった。
 集中して読んでたはずなのに、思わず呻いてしまうようなこの匂い。
 いや、匂いそのものはまったくもって問題ない。
 甘くていい匂いだ。
 ……だから問題なのはその量。甘い匂いがこれはありえんだろうというくらいに充満している。それも紅魔館中に。
 そもそもこのヴワル図書館にまで届くような匂いってどういうことだ。
 しかし本来このことにお怒りになられるはずであろうパチュリーはというと、今回はこの匂いを生産する側。
 お嬢様、妹様、中gもとい美鈴さん、咲夜さんも同様だ。
 加えて紅魔館で働くメイドの数を考えれば……いややっぱありえない。どう考えてもおかしい。
 一体どれだけの数の『チョコレート』がこの紅魔館にあるというのだろう。 
 想像することすらもはや不可能っていうか想像したくない。
 流石は悪魔の館というべきなのか。なにか間違ってる気がするけど。






 ――今日の日付は2月14日。つまるところ完全無欠にバレンタインデーだった。






「つってもなあ」

 一体なんで幻想郷に外の世界の行事なバレンタインデーがあるのかとかはこの際おいとく。
 しかしこっちであるからといっても俺にはさほど関係が無い。
 確かにこっちに来て女の子の友人がやたら増えたが、まあ義理チョコ一個くらいもらえれば御の字と思ってるし。
 本命?
 ははは、ばかだなあ。そんなの天地がひっくり返ってチルノが⑨じゃなくなるくらいありえない。
 もう期待すらできなくなった俺の外での経験に涙がでそうだ。
 く、くやしくなんかない!
 ……でもパチュリーが生産する側ときいたからちょっとだけ期待もしてたりもする。
 どっか矛盾してるけどしょうがないよね、だって男の子だもん。


 本を片手にニヤニヤしながらそんな事を考えていると、扉を開ける音が俺の意識を妄想から引き上げた。
 目を向ければそこにはパチュリーと小悪魔の姿。
 ……と同時に、館に充満していたであろう甘いをとおりこして甘ったるいチョコレートの匂いが襲ってきた。

「あががががが」

「○○? どうしたの」

「あ、いやなんでもない」

「? ……そう。じゃあ小悪魔、準備して」

「はいー」

 平素状態そのままに、そう言って奥に飛んでいく小悪魔。
 つかなぜこの強烈な匂いに気付かないんだ皆。感覚が一時的に麻痺してんじゃと思わざるを得ない。
 救いといえば、パチュリーが後ろ手に持っているものからの匂いはここまで強烈ではないこと。

「…………」

「…………」

 そして小悪魔が準備している間。
 その間ずっと身体をソワソワしさせているパチュリーから断続的に俺に視線が飛んできていた。
 視線が合うとそらされ、だけど恐る恐る戻して、しかしまた合うとそらす。
 普段では絶対にお目にかかれないパチュリーの姿に俺はもう狂喜乱舞しそうです。キャッフー。
 これはいいんですよね、期待してもいいんですよね!?
 少なくとも義理はもらえるはず!
 しかしそんなことはおくびにも出さず平静を装う俺。
 そして気付いたときにはすでにお茶会セットは準備完了しており、俺とパチュリーは向かい合うように席についていた。
 とりあえず、目の前の適温に温められた紅茶を手に取り一口飲む。
 ……嗅覚の影響をうけたのか、なんだか甘い。

「あの、これ……」

 お互いに紅茶を飲んでいたがやがてパチュリーの方がカップをおいた。
 陶器がかち合う音と同時に、すっと俺の方に小さな包装された箱が差し出される。

「あ、これチョコ?」

「ええ。……今日は、そういう日なんでしょ? 貴方は整理とか手伝ってもらってるし、本の扱いも丁寧だし、もってかないし……」

 言葉を探しながら色々と理由付けしようとするあたり、らしいといえばらしい。
 可愛いなあと思ったがどこぞのギャルゲー主人公のように口にだしたりはしないぜ。

「食べてみても?」

「……うん」

 顔がニヤケるのを必死で抑え込みながら、包装を丁寧に剥がしていく。
 この包装もところどころ曲がってたりしていたが手作り感がまた非常にグッドです。
 箱を開けてみると中に入っていたのは一個のチョコレート。
 ……しかしですねパチュリーさん。ハート型ってのは、こう、気恥ずかしいです。はい。
 向こうもそうなのか俺が箱を開けた瞬間に俯いてしまった。耳まで真っ赤にして。
 とりあえずこのハートのチョコを真っ二つに割ってしまうというバッドエンドフラグを回避すべく、端っこを少しだけ割る。
 そして口の中に放り込んだ。
 ……。
 …………。
 ………………。

「どう……?」

 無言でいた俺に不安を抱いたのだろう。
 恐る恐るといった感じで聞いてきたパチュリーに、俺は新たに割ったチョコの欠片をパチュリーの口の中に突っ込むことでその返答とした。

「んむ!?」

 最初は一体なにを! と眉がつりあがっていたが咀嚼するにつれてだんだん眉がさがっていく。
 俺の言わんとしていたことがわかったのだと思う。
 そうして、こくりと喉を小さく鳴らした後

「ニガイ」

 言ってから紅茶に手をつけた。
 それを確認してから、俺もまた紅茶に手をつける。

 チョコそのものの出来は全然問題ない。むしろかなり良いと言っていい。
 しかし如何せん、苦すぎた。ビターというよりはド・ビター。つまり凄く苦い。
 まあ、この甘ったるい空気の中なので俺には普通のビターより少し苦いくらいにしか感じなかったのだが。
 同じものを食べたパチュリーの感想は違っていたようで。

「ごめんなさい……」

 ひどく申し訳なさそうに言ってきた。
 ついでにちょっと涙目。
 俺の冷静な部分は「涙目のパチュリー。なんてレア……!」とか思ってたりもするが大部分では大慌てだ。

 どうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう!?
 その時。
 8割がたパニックになりかけな俺の目に飛び込んできたのはティーセット一式。

 ――これだっ!

 そのひらめきのままに、新たに注ぎなおされた紅茶に多めの砂糖とミルクを入れる。
 パチュリーの紅茶にもおなじことをして例のチョコを割り、二欠片つくって片方をパチュリーのソーサーに置く。
 そして俺の奇行に向けられるじと目はとりあえず無視してチョコを再び口に放り込んだ。

「あ……」

 小さな声が聞こえたような気もしたけどそれも無視。
 口の中で砕かれたチョコが熱でゆっくりと溶け、苦味が広がっていくところにさっき作った甘めのミルクティーを含む。
 すると二つの味がちょうどいいかんじに混ざり合っていって――

「ん。うまい」

 素直な感想が口から出た。
 俺がそう言うと、確かめるようにパチュリーもおなじようにしてチョコを食べる。
 するとこちらも少しだけ驚いた顔で

「……おいしい」

 と言った。
 まあやった事といえば、苦ければ甘いので打ち消せいいというそれだけの事なのだけれど。
 今回の場合はそこにミルクが加わったことで、砂糖の尖った甘さがマイルドになったのだ。
 チョコの出来はいいんだし。口当たりの良さは抜群だった。
 ともあれ、僅かな変化ではあるがパチュリーも笑顔を浮かべてくれているみたいだしよかったよかった。
 涙目なパチュリーも可愛かったけれど。
 やっぱり……その、好きな人には笑っていて欲しいし、そっちの方が断然イイ。
 改めてそう思いながら俺は手に持っていたカップを静かに置いた。


「チョコ、ありがとな」

「どういたしまして」


 はにかみながらも笑顔を向けてくれたパチュリーに、思わず赤面しながらそれを誤魔化すためにまたチョコを一欠片口に入れる。
 口の中に広がる苦味を感じながら思った。
 ――まあ、こんなバレンタインも悪くないかな。





















 ……後日、図書館中に染み付いたチョコの匂いにパチュリーが遅れて激怒した。

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13スレ目>>216


「―ゴホッ、ゴホッ」
「……やれやれ、またか」

 ここ何日か、パチュリーが俺をつけ回してる。
 いわゆるストーカー、なのだが……

「また発作だな?ほら、背中さすってやるから」
「ゴホッ……あ、ありがとう……」
「なあ、もうやめたら?俺は絶対浮気なんかしないし、
 何よりパチュリーにはストーカー向いてないって」
「……だって、貴方を他の誰かに取られたらと思うと、私……」

 体力がなく、動き回るのになれていないのに
 外をついてくるもんだから、
 発作を起こしたり日射病で倒れたり。
 何度介抱したことか。

「せめて、小悪魔に代わってもらうとか……」
「……あの子が一番心配なのよ、ゲホッ、ゴホッ……」

 こりゃ図書館に住み込むしかないかな、などという俺の思いをよそに、
 今日もパチュリーはついて来るのだった。

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13スレ目>>221


「……エヘヘ……○○とこんな感じでこう」
「なあ、パチュリー、なに読んでるんだ?」
「ちょ、見ちゃ駄目!……ハァハァ」
「寂しいなあ……。?……鼻血!おい、マジでなに読んでたんだよ!」
「証拠を……隠滅しなきゃ……」
「そんなことより早く安静に!ただでさ「大丈夫。ちょっとくらっと来ただけ……あれ?」
「どうした」
「本がない……」
「大事なものだったのか?よし、探してきてやる!」
「あ、ちょっ」

「ここにありますよー!!!!!」(小悪魔)
『放課後の淫魔な図書館』

「え?なにそ「そ、そこまでよッ!!!」

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13スレ目>>239


じー……
パチェ「…………(読書中)」

むにっ
パチェ「……………何?」

いやなんでも
パチェ「…そう……(読書再開)」

むにむに
パチェ「…………」

愛してるぞ
「……そう」


パチェ可愛いよパチェ

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13スレ目>>255


ふと思った
身長180オーバーの俺からしたら、幻想郷の女の子はみんなちっちゃいのだ
勿論想像だが、イメージ的に長身なのは師匠やこまっちゃんぐらいなものだと思う

そこでその体格差を最大限に活かし、パチュリーを膝の上に座らせたい
椅子の上に座った俺の膝の上に、パチュリーが腰掛けるのだ

「これ1冊しかないから・・・」とかわざわざ言って俺の上に腰掛けてくるパチュリー
座ったはいいものの慣れない据わり心地にもぞもぞするお尻から伝わるバイブレーション
視線を下げればすぐそこにある絹糸のような紫の髪とそこから漂うフレグランス
じっと見ている視線に気づいて「何よぅ」と見上げてくる不機嫌そうな瞳
それを塞ぐようにぎゅっと抱き締めて、半ば強引にその唇を・・・

…どうしてパチュリーは現実にはいないんだ
ヤらしいこととかしなくていいから、一日中腕に抱いて過ごしていたいよぅ

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13スレ目>>335


図書館にて――
パ「また来てたの?」
○「ああ、ここには面白い本がたくさんあるからね。ほとんど読めないけど」
パ「そう。はい、コーヒー」
○「お、ありがと」
パ「…………ぼそっ(日符『ロイヤルフレア』)」
 ゴボゴボゴボッ
○「うあっちぃ!?」
 コトッ
パ「えー?」
○「ふーっふーっ、あー熱かった。てかなんで急に熱くなったんだ?」
パ「なんでこぼさなかったの?」
○「本のある場所で飲物をこぼすようなことはしないって。それよりいたずらしたのパチュリーだろ」
パ「ここにある本は飲物くらいかけられても問題ないしズボンにこぼしたコーヒーを拭きながら
  だんだんとアレな雰囲気になって○○とそこまでよ! なことしたかったのに」
○「それが目的か」
パ「えーと、積極的に○○とアバンチュールする方法は……」
○「おーい、そこは消極的にだろー」

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うpろだ1304


ものすごい轟音と共に現れた普通の魔法使い
「パチェ~。今日も借りに来たぜ~っと。○○じゃないか」
パチェはやれやれ。といった目つきで魔理沙を眺める。
が、特に動く気は無いらしい。いつもの事。といった感じで。
「魔理沙。パチュリーの…というか紅魔館の苦労も考えような」
「いやいや○○。これは私の道だ。邪魔はさせん」
そう言って魔理沙は俺の頭を撫でる
「邪魔をする気は無いがなぁ。パチェの苦労を考えたら、一声掛けといたほうがいいな、と」
「○○。魔理沙は基本的には何を言っても無駄よ。何かを言って帰るようなら苦労はしない」
その言葉に魔理沙が食いつく
「また私を馬鹿みたいに言いやがって」
「違うの?」
「私は馬鹿じゃないぜ。図書館に寄って本を借りる勤勉な魔法使いだ。なぁ○○?」
あながち間違えでは無いが、借りるってとこがどうもパチェには気に食わないらしい。
「借りる借りるって、いつ返すのよ。そろそろ取り立てに行くわよ?」
「別にいいぜ?返却する義務はいつも課せられてないからな。お前が捕まるだけだ」
「何よそれ。勝手に取って行ってる貴女が言えるセリフなの?」
ピリピリした空気が流れる。そして俺空気。
「な…なぁパチェ。少し落ち着け。魔理沙も。な?」
「それもそうだな。○○に落ち着けと言われて、落ち着かなかったら良いことが起きない」
「いつも落ち着かないで事を悪いほうに進めてるのは貴女だけどね」
「なんだと」
更にピリピリとした空気が流れる。なんだ?今日はパチェの機嫌が悪いのか?
「パチェ。落ち着けって。なんか今日変だぞ?」
「…○○。魔理沙の事を追い返しておいて。私はちょっと自分の部屋に行くから」
「俺に任されても…」
「いいから」
「…はいはい」
これはさっさと魔理沙を帰してパチェと話す必要がありそうだな…
「なぁ魔理沙。今日は勉強もいいが休む日にしないか?いつも勉強詰めじゃあ疲れるだろ」
なんとなく変な空気と分かった魔理沙は今日は食い下がる
「…あぁ。分かった。今日は勉強と趣味を慎む日にするぜ。じゃあな」
そう言って素直に帰る魔理沙。小悪魔はドアの修理に早速取り掛かっている
「小悪魔?」
「なんでしょうか」
そう言ってこっちを見る
「パチェ、今日機嫌悪かったみたいだけど…なんか知ってる?」
「いいえ。なんででしょう?魔理沙さんが来るまでは、いつもどおりの用に見えましたが」
「だよなー。まぁちょっとパチェのところに行ってくるわ。いつもすまないが修理頼んだ」
「はいはい。パチュリー様の部屋に行ってもお話だけにしてくださいよ」
「なんだそのジョークは」
俺は苦笑いし、ドアの修理を小悪魔に任せてパチェの部屋に向かう。
「どうしたんだろう…」
本当に何なのか分からないままパチェの部屋の前に止まる。
そして一呼吸置いてノックする。
「誰?」
「○○だけど」
「…いいわよ」
そう言われ俺は部屋に入る。
パチェはベットに寝転がっている。その横に腰を掛ける
「で、何よ?」
「いや、今日どうしたのかな。って」
「別に何でも無いわ」
「そういうときに限って絶対なんかあるんだよな」
そう俺が言うとパチェが黙る
「どうしたんだよ。言ってくれなきゃわかんないぞ?」
「あんまり言いたくない…というか、ちょっと考えれば分かるわよ…」
そう言われ、俺はパチェの機嫌が悪くなったと思われる行動が、何かあったか考える
今日は図書館に来て、そろそろ図書館を仕舞おうかなー。
って思ってるときに魔理沙が来て、俺が注意して、魔理沙がさり気なく反論しながら俺の頭を撫でて
俺が微妙に突っ込みを入れた後パチェが怒って…

…そういうことか、パチェ。可愛いやつめ
俺はパチェの頭を撫でる
「あぁもう可愛いなぁパチェは。俺が魔理沙に撫でられたくらいで怒って」
パチェは顔を赤くして枕に頭を埋める。やはり図星か。
「だって…私の大好きな○○が魔理沙に撫でられたら…」
「ちょっとしたことでヤキモチを焼くのが、お前のまた可愛いところなんだなぁ。パチェ。好きだぜ」
そう言うとパチェはのっそりと起き上がり、俺に抱きいて、ベットに一緒に倒れる
「今日はなんか凄い積極的だな」
俺は笑いながら言う
「だって久しぶりに○○が好きって言ってくれたんだもん。私も大好きよ。○○」
パチェも笑顔で返す
そんな甘甘ムードの中ベットで二人が寝転がっている
俺がパチェの顔を見つめると目を横に反らす
そこで顔を徐々に近づけて…


コンコン
二人ともビクリと体が動く

ガチャリ
「小悪魔です。パチュリー様。ドアの修理が終わりました…っと」
俺が小悪魔の顔を反射的に見ると、この世のものと思えないほどニヤニヤしている
「へぇー…へぇー。お取り込み中でしたか。へぇー。」
いやらしく笑いながら小悪魔は言う。
「では、失礼致します。パチュリー様」
パチェは口をパクパクさせ、目は泳いでいる。
小悪魔が帰ろうとするが、後ろからでもニヤニヤオーラが出てるのが分かる。
そりゃ、あんなシーンを見せたらな。
ガチャリ。とドアを閉め、小悪魔が出て行った
「…はぁ。見つかっちゃったな」
小悪魔にばれたらちょっかいを掛けられる。と常々言わていたが、まさかこんな所を見られるとは。
「でも、まぁ見つかっちゃったんだから、これからは堂々と図書館でもイチャイチャできるわね。しないけど」
「ま、そうだな。見つかったんだからしょうがないな」
俺とパチェは楽しげに笑う。
「○○。さっきやろうとしてたことは、結局無しになったの?」
パチェは目を閉じて言う
「いやいや。そんな分けないだろ」
そう言ってキスを交わす
「もうせっかくだしこのまま寝ちゃう?」
「う~ん。まぁそうだな。時間も時間だし」
魔理沙が趣味を働く時間は大抵真夜中だ。
「じゃあ髪縛ってるのはずしてくるからちょっと待ってて」
「あ、俺はずすよ」
そう言ってパチェを後ろに向かせてそれをはずす
「はい。とれたよ」
「有難う」
「相変わらず、髪。凄い綺麗だな」
「○○に撫でてもらえるように髪を綺麗にしてるから…」
「そんなことをしなくても、パチェは可愛いさ。俺もお前にもっと好かれるように、格好良くならなきゃな」
「大丈夫よ。○○は、世界で一番私の好きな人だし、世界で一番格好良いから」
二人とも、ウフフ。と遠慮がちに笑う

俺はパチェの髪を撫でながら眠りに付く。
朝起きて、腕が痺れててもまぁ良いか。それは幸せな痺れだと分かっているから。

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最終更新:2010年05月16日 23:17