咲夜4
>>295
「冷えてきたな……」
雪のちらつく窓を眺め、やや温くなった紅茶を飲みながらポツリと呟く。
俺、○○が此処、幻想郷と呼ばれる異界に来てはや半年。季節は冬を迎えている。
運の悪い人間はそのまま妖怪に食われてお陀仏らしいが、何の因果か俺は吸血鬼のお嬢様が治める屋敷「紅魔館」で働いている。血を定期的に吸わせる事を条件に。
そのお嬢様――レミリア――曰く、「ただの気紛れよ。それ以上でもそれ以下でもないわ」、らしい。
まあ家も無い、金も無い、これといった特殊な力も無い、と無い無い尽くしの俺としては願ったり叶ったりだったが。
自己紹介で門番の名前を聞いて呼んだら涙を流して喜ばれたのも、その数日後に他のメイド達と一緒にレミリアの妹――フランドール――に殺されかけたのも今となってはいい思い出だ。……良くねぇ。
「ああ、あの時はマジで走馬灯と三途の川見れたんだよなぁ。フランの奴、すっげー嬉しそうに突っ込んできたし……」
初撃の大技でメイド長を庇って(他のメイドに投げられて壁にされたとも言う)大火傷。意識を失った俺は詳しい事は知らないが、聞くところによると、間一髪の所でレミリアが間に合ったらしい。流石は吸血鬼。
全身大火傷、両腕にいたっては肩まで炭化寸前までいったが、奇跡としか言いようの無い魔法とか薬のお陰で今は五体満足でいる。ビバ、ファンタジー。
「あー、現実逃避は終わったか? 私はそろそろ帰るぜ? 紅茶とお菓子ご馳走さん。私としてはもう少し濃い方が好きだな」
白黒の魔法使いによって急速に現実に引き戻される。畜生、勝手に飲み食いしやがって……
……事の始まりは数分前。今日の仕事も終わって自室で一息ついていた所にソレは来た。
「おーい、○○。いるかー?」
「魔理沙か? 開いてるぞ」
いつでもジャイアニズム全開なコイツともそれなりに長い付き合いだ。俺の世界のブツを偶に持ってくるし。PSXにはマジで驚いた。だが使えねぇ。
「お邪魔します、と」
静かにドアを開ける魔理沙。しきりに横を気にしながら。
「どうした? いつもならドアをぶち破らんばかりの勢いで来る癖に」
「いや、な。驚くなよ? ……絶対に驚くなよ?」
……イキナリ嫌な予感がする。俺の理性と本能と第六感が全会一致で「コイツを追い出せ、コイツの訪問を無かった事にしろ」、と警報をかける。
当然それに逆らう理由もなく、
「かえr「マスタースパークとミルキーウェイ、どっちだ?」……了解」
理不尽な暴力に屈する俺。議会もお手上げ。……クソッタレだ。
「で、今日はどうした? 部屋にも入ってこないし。なんか持ってきたのか?」
完全に諦めた俺はおとなしく話を聞くことにした。無力な俺を笑わば笑え。ただしマスタースパークを食らった後でな。
「ああ……ちょっと向こうを向いててくれ」
「? ああ」
言われるままに窓に目をやる。
ズルズル……
なにかを引きずる音が聞こえる。
ボフッ
俺のベッドに乗せたらしい。嫌な予感が止まらない……
「よし、いいぜ。頼むから大声を上げないでくれよ? 私の命に関わるんでな」
なにやら物騒な事をのたまう魔理沙。振り向いたその先には……
「……働きすぎだな、俺。遂に幻覚が見えるようになったか」
「私にも見えるぜ。お揃いだ。やったな」
「笑えねぇ。笑えねぇ冗談だ。寧ろ夢だな。夢だと言ってくれ……」
本物にしか見えない犬耳とふさふさな尻尾が生えた状態で気絶している、ここのメイド長、十六夜咲夜だった……
――で、冒頭に戻る。
「待て、いくらなんでもこれは似合いすぎて俺の理性が危険でピンチでメルトダウン寸前だぞ? てか本人の部屋に連れて行けよ。どこにあるのか知らんが」
「悪いな。私もメイド長の部屋を知らないんだ。他のメイドに聞くのもマズイだろ? バレるし。そこでお前に白羽の矢が立ったわけだ。近かったし。良かったな」
「ああ。まったくだ。感激のあまり涙が止まりそうにない。で、アレは本物なのか? お前の趣味とかだったら本気で引くぞ? 後説明もしてくれ。詳しくな」
「心配しなくても本物だよ。まあ、そのなんだ。図書館から拝借した魔道書を早速試したくてだな」
「……たまたま通りかかった咲夜にかけたらこうなったんだな?」
俺のベッドを占領しながら気持ち良さそうに寝ている咲夜を眺めながら問い詰める。が、答えは無い。ちなみに姿も。
「逃げたな……G」
テーブルの書置きには「後は任せる。効果は半日ぐらいで消えるらしいから安心しろ。解呪は出来ないらしいけどな。骨は拾ってやるよ。万が一バラしたら……」、となんともありがたいお言葉が書かれていた。ジーザス。
Gとは主に台所に生息する通称「黒い悪魔」だ。気配無く消える所とかそっくり。
生命力は折り紙つき。いまならお友達価格。そーなのかー。
「……アホか、俺」
さて、受信してないでいい加減真面目に考えよう。
事態は単純ながら深刻。限りある選択肢の先はDEAD ENDで一杯だ。
特に何気にピコピコ揺れてる尻尾と犬耳。動物好きな俺を悶死させるのに十分な破壊力。
しかもここにいるのはいつもの完全で瀟洒なメイド長ではなく一人の無防備かつ可憐な犬耳少女。
相乗効果でダメージ限界突破、みたいな?
髪を撫でてみる。サラサラだ。手入れが行き届いてる。
せっかくだから耳を撫でてみる。おおっ! ふにふに!
「んっ……」
次、尻尾。ふわふわの天然モノだ。いつもの癖で思わず強めに握ってしまう。
「んぅっ……」
なんていうか、可愛いな。
ヤバ、ムラっと来た。寧ろこのままおいしくいただいても……
……オイ! ウヲイ! マジで落ち着け俺! (ガン!)
さっきからナニしてる!? (ガン!)
思考が破綻シテマスヨ!? (ガン!)
死亡フラグを自分で立ててどうする!? (ガン!)
額からナイフを生やしたいのか!? (ガン!)
「はあ、はあっ……ヤバかった……」
思いっきり壁に頭を打ち付けることでなんとか平静を取り戻す。紅い染みが出来たがあえて無視。
とりあえずコイツが起きるまでは待っていよう。で、ナイフが飛んでくる前に原因を説明する。完璧だ。
魔理沙の報復が怖いが、流石に殺されはしないだろう……多分。
せっかくだから俺はこの生存率の高い(と思う)選択を選ぶぜ!
……いや、普通にメイドを呼んでもいいんだが、後で「十六夜咲夜非公式ファンクラブ」に殺されそうだし。
このシチュエーションは絶対に危険だ。他人には見せられない。魔理沙……覚えてろよ……
今はいない魔理沙に恨みを込めていると、ふとベッドの上の彼女と目が合った。
壁の音で目を覚ましたんだろう。清々しいまでの自爆っぷりだ。
「おい、大丈夫か……?」
やるだけやった(と思う)。後は神に祈るか……
中途半端な所で続く
犬耳な咲夜さんを書きたかった。
後悔はしていない。
後編もきっとこんな感じ。寧ろ加速?
妄想全開のアホ文章で申し訳ない。
4スレ目 >>69
掃除をしていると美鈴が薄気味悪い笑みで話しかけてくる。
「咲夜さぁーん! 昨日はお楽しみだったみたいですねぇ。ウッシッシ!」
「な、何を根拠にそんな事を……」
すると美鈴が、首のある部分をチョンチョンと指差す。
「誤魔化そうとしても無駄ですよ。しっかり愛の証のキスマー……」
美鈴が言い終わる前に時止め、部屋に確認しに行く。ついでの美鈴にお礼は忘れない。
「ク。あれ、いなくなってる。っていうか何よ! いつもよりナイフ量多くない!少しからかっただけなのにぃ!」
館に美鈴の叫び声が響く、いつより二倍の量だ。さすがに今日は復帰はできないだろう。
もし奴がこのことを喋ったら……。 よし!館のみんなに中華料理を振舞ってあげましょう。
「それにしても油断してたわ。昨日は疲れてて、あんなことするつもりなかったのに……」
と、昨日こと思い出したのか鏡の前でモジモジ(死語)している。その様子を○○とお嬢がこっそり覗く。
「あんた達ちょっとは自重しなさいよ。最近、館の風紀が乱れまくりよ」
「そうはいいますがね、お嬢。ベットでまるで子犬のような目で今日はするの? なんて聞いてくるわけですよ。」
「それは、たまらないわね。さすが瀟洒ッ! ツボがわかってるぅ!」
「いやいや、これもお嬢の教育の賜物です」
人目も気にせず、廊下でクマカカカッ!と二人で笑う。
「あら、楽しそうですわね」
「あ、あら咲夜いたの…」
「いましたよ。突然ですが、お嬢様は最近お太りになられたみたいなので一週間おやつは抜きです」
「そんな!ヴァンパイアライフの最大楽しみ! お・や・つが一週間もお預け!うぎぎぎ! 終わった何もかも!」
ガシャンと窓をブチ破り、陽光降り注ぐ外に飛び出してゆく。輝く太陽の下でお嬢はおやつに会えるかな
だって食べたいーんだもん。
「あんたは、これから妹様の遊び相手よ。思う存分イタズラしてきなさい。」
「望むところ!といいたいが無理!あれは真性のS! こっちがヒギィされる」
レーヴァテインを○門に突っ込まれる。ものすごく熱いです…。まちがいなく逝かされちゃう!
「存分にヒギられなさい。さようなら」
ああ、私の人生は終わた。最後に!
「咲夜さん大好きです! 愛してます!! 結婚してください!!!」
4スレ目 >>233
「ああ、暇だ……」
いきなりだが本当にやることが無い。
趣味と実益を兼ねて始めた“人里からマヨヒガまでお気軽に”が謳い文句の宅配便は休みの日だし、いつも楽しみしている天狗の新聞も今日はお休みらしい。特別な日、との事だ。
それにしても……今日って何の日だっけか。
「ま、いっか」
そう切り捨てて疑問を窓の外に投げ捨てる。覚えてないって事は大した日でもないんだろ。
さて、本気で暇でも潰すか……。
抗う事の許されない世界意思の元、即座に俺は思考を光速で展開させていく。
――青年妄想中。
……そうして数十分が経過し、某大作RPGも裸足で逃げ出す壮大な冒険と数多の犠牲の果てに勇者の証である伝説の光のメイド服を手に入れた霊夢が、第七世界全てを支配する魔王であるミスティアの居城である屋台で世界中の元気を集めた茶碗と魔女っ子ステッキを手に半裸で阿波踊りを狂ったように踊り始める所まできて――、
――コンコン。
そんな控えめなノックの音が聞こえた。そして混沌極まる妄想は、瞬時にそれを生んだ混沌に飲み込まれる。次は無い。
しかし誰だ? 文なら普通に玄関なぞブチ破ってくる筈。よく薬の材料を注文しにくるえーりんさんはノックせずに入ってくる筈だ。このようなノックをしてくる相手には心当たりが無い。宗教の勧誘でもなかろう。玄関に“諸々の勧誘お断り”ってはってあるし。
なら見知らぬ妖怪? いや、それも無いと思う。ていうか妖怪ってわざわざ人間の家襲うのにノックするのか?
――コンコン。
二度目。ノックの音は相変わらず控えめに。
っといかん。
「どうぞ、開いてるよ」
外に聞こえるように、少々大きめの声を出す。
待ってました、とばかりにガチャリ、とドアが開いた。
そして入ってきたのは……、
「こんばんわ。お邪魔するわね」
俺の家の近所の館でメイド長をやってる十六夜咲夜さんでした。しかも私服。凄まじくレアな光景だ。ていうか持ってたのか、私服。いっつもミニのメイド服だからロングスカートなのが妙に新鮮だ。眼福眼福。
……しかし、何ゆえこんな微妙な時間(夜七時だ)に。いや、知らない仲でもないけどさ。
「魔理沙から聞いたんだけど、貴方、中々イケる口らしいじゃない。いきなりで悪いんだけど、ちょっと付き合ってくれる?」
そう微笑んで掲げるのはバスケット。中にはグラスとワイン。
ワインは言うまでもなく、グラスからすら俺みたいな庶民にはとても手が出せないオーラが漂っていた。
「ん、喜んで」
当然快諾する。美人さんのお誘いを無下に断れるほど俺は女性関係に自由してない。
タダで高い酒を飲める、という誘惑も当然あったが。
「んで? 本日はどういったご用件で?」
言外に「本当の用件を言え」と伝える。
「あら、判った?」
「わからいでか。魔理沙に酒の話をしたことは無い。未成年だろうし」
「我ながら迂闊ね。……これ、貴方の事でしょ?」
どこからか取り出し、手渡されたのは新聞。当然文の物だろう。日付は……今日?
色々と疑問に思いつつも記事を見る。そして一面トップを見て納得。
「……成程」
――本日お誕生日のお目出度い人。紅魔館近所にお住まいの○○さん。
でかでかと俺の盗撮写真が載っていた。仕事中の。
まあ盗撮はいい。見た所恥ずかしい写真でもないし。しかしこのお目出度い人、というのはいただけない。年中頭が春な腋巫女じゃあるまいし。
「というわけだから。グラスはプレゼントするわ。ナイフの餌食になりたくなかったら精々割らないように」
「うい、了解」
おっかない要求に苦笑する。
しかしありがたいもんだ。正直本人も新聞見るまで忘れてたっつーのに。
何時の間にか中身を注がれていたグラスを受け取る。
目の前の彼女も二十歳未満だろうが、そこはそれ。美人さん以下略。
「誕生日おめでとう。乾杯」
「乾杯」
――チン。
※1この後、文とかえーりんがお祝いに来て微妙に修羅場るはずだったが蛇足っぽいんでカットカットカットォ!
4スレ目 >>282-283
「……腹、減ったな」
毛布に包まりながら夜空を見上げ、ポツリと呟く。ひもじい。
眼前は荒野。ていうか地獄。目にも精神衛生上にも非常によろしくない。
これも全部あの三人のせいだ。人の家の前で喧嘩するのはいいけど少しは手加減しろよ。
「……畜生。輝夜とレミリアに損害賠償請求してやる」
気の赴くまま怨嗟を呟く。
当然、文は本人からせしめる。覚悟しやがれ。絞れるだけ絞ってやる。できないなら身体で……。
――ぐ~。
「……」
間抜けに腹が鳴った。適当な事を考えて紛らわせようかと思ったが、やっぱりひもじい。
そこで思い出す。そういえば今日の俺は晩飯がまだなのだ。そりゃあ腹も減るはずだ。しかし、今すぐに食うもの、食えるものは……。
「……あ」
――ねえ、おつまみ持ってきたんだけど、ちょっと台所借りていいかしら。
思い出す。咲夜の持ってきたチーズを。
そして俺はチーズに一口も手をつけていない。つかワインもそんなに飲んでない。俺よ、そんなんでいいのか? 咲夜はきっと明日になったら持って帰るぞ?
あんな高そうなモノ、そうそう戴ける物じゃない。それをみすみす溝に捨てるのか!?
「冗談。今、俺が全部貰う」
決めると同時に家に侵入。……しかし、侵入って。一応ここ俺の家なのに……。
自分で言ってて少し虚しくなったが、気を取り直して部屋に入り、並べた布団を横目で見る。
「……仲良く寝ちゃってまあ」
先ほどまでの乱闘が嘘のように、二つの布団を三人で仲良く使っている。右に文。左にえーりんさん。真ん中に咲夜。三人とも寝相がいい。
朝が来て、三人同時に目が覚めた場合、大変な事が起こる気がしないでもないが、そこはアホ毛の神様にでも祈ろう。
しかし、なんというか。この状況は。
「これだけ綺麗どころが揃ってて、この有様。どういう事よ……?」
まあ、ここで手を出せばその瞬間デッドエンド決定なわけだが。さらに問答無用で地獄行きだろう。
果てしなく物騒な事を考えながら、椅子に座る。部屋の明かりは消したまま。部屋に差し込むのは月明かりだけ。
グラスとワインとチーズはそのままテーブルに置いてあった。当然か。俺が手をつけていないのだから。
苦笑しながらワインをグラスに注ぐ。注ぐ。注ぐ。
そしてつまみを口の中に放り込む。瞬間広がる濃厚なチーズの味。
「……美味い。流石レミリアの屋敷のモノなだけはある」
ただただ美味い。ワインも美味い。それ以上の感想が無い。いかに俺が貧乏舌なのか判った瞬間だ。どうでもいいが。
――――。
「…………」
無言でもう片方のグラス、つまり咲夜のそれを持つ。
――ひゅっ。
そして背後に投擲。グラスが音を立てて空気を割く。
が、壁にぶつかって割れる事は無い。何故なら……。
「ちょっと。割れたらどうするのよ。これ高いんだから」
背後から不満そうな声。咲夜だ。
やっぱり起きてやがったか。
「喧しい。人の家の前であれだけ暴れたんだ。これでチャラにしてやるから安いと思え。後、撒き散らしたナイフの片付けはしとけよ」
「はいはい」
そこまで言うと咲夜は俺の前で飲んでいた。態々メイド服も着替えてまで。
しかし咲夜はこういう仕草がよく似合う。俺とそう年は離れていない筈なのだが。
この色女め。
「で、どこで起きた?」
「綺麗どころ、の所」
「さいで」
つまり今か。
咲夜は酔っているのか照れているのか、少々顔が赤い。
まあ、別に聞かれても困る事でもないので別にいいか。
三人が美人なのは言うまでも無い事だし。
咲夜と俺はそんな雑談を交わし続け、そのまま朝が来て、これといったいざこざも無く、三人は帰っていった。
さらに言うと、気が付けば俺の家の前は何事も無かったかのように直っていた。三人が直したらしい。……すげえ。
そして、部屋に戻った俺の前には……。
「……自分のグラス、忘れてやんの」
咲夜のグラスが置かれていた。ま、いいか。その内自分で取りにくるだろ。
一個なら売ってもいいけど、ばれたら刺されそうだしな。
――翌日。
「……早かったな。グラス取りに来たのか?」
「飲みに来たわ。今日は夕食持参で」
「……上げってけ」
――数日後。
「……持って来た酒は昨日の分で終わったろ」
「新しく持ってきたわ」
「……」
――一ヵ月後。
「……なあ。これって普通“通い妻”って言わないか?」
「あら。泊まってないわよ」
「まあ、いいんだけどさ。現に助かってるし」
――三ヶ月後。
「じゃあ、行ってくるわね」
「ん。ああ、今日は帰りが少し遅くなるんだど、晩飯は……」
「心配しなくても○○が帰ってくるまで待つわよ」
「すまん」
……あれ? なんかおかしくね?
そういやここ最近、文の新聞もえーりんさんも来てないような……?
4スレ目 >>387
咲夜は毎日うちに来る。
「あのさぁ。ずっと気になってたんだけど」
思い切って訊ねることにした。
「何かしら?」
さっさっとパンを口に放り込みながら相槌を打っている。
食事の仕方一つとっても彼女のそれはひどく洗練されていて、見てると気持ちがいい。
いま食べているパンも彼女が用意したものだ。
こんな風に咲夜はあれこれと僕の世話を焼いてくれる。
「何でうちに来るの?」
「迷惑かしら?」
艶然と微笑みながら聞き返す。
それだけで、爽やかな朝もなんだか色っぽいものに変わってゆくような気がするから不思議だ。
「いや、そんなことないんだけどさ。その、このままだと、自分じゃ何一つできなくなりそうで」
どもりがちに答えた僕に。
「あら」
何でもないようにそう言ったときの彼女の顔は。
「一生面倒を見てあげてもいいのよ?」
控えめに言っても、とても美しかった。
最終更新:2010年05月15日 23:09