咲夜5




4スレ目 >>433(うpろだ0024)


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明るい将来設計と家族計かk(ry





『レミィ?用事って?』
「夜分遅く済まないね、パチェ」
『テレパス会話なんて何年振り?』
「百から先は数えて無い―――咲夜に内緒話するなんて、あんまり無いわ」
『それも、盗聴含めて絶対にバレない方法で?
 ―――で、何をすれば良いのかしら』
「恩に着る―――愛してるわ、パチェ」
『感謝の極み、とでも言っておくわ、マイスイート』
「で、本題だけれど―――用意して欲しいものが有るの。
 一つは簡単だけれど、直ぐ用意すべき品。
 もう一つは急がなくて良いけど、とてもとても難しい品。
 多分、私達だけでは無理なものね」
『―――必要なのね。あの子の為に』
「ええ―――急ぎ足の灰被りが、どんなに急いでも、絶対に帳尻を合わせる時計よ」





「お早う御座います、お嬢様」
「今晩は、咲夜。いつも御苦労様」

 広く深い紅魔間の一室、一面深い紅で塗られた部屋。
 中央にベッド、壁際に箪笥、その他諸々。
 もはや語るまでも無く、当館が主、レミリア=スカーレットの寝室である。
「ふわぁ~……」
「今日は少々お早いですね」
 欠伸に合わせて寝巻きから細く小さな腕と、一対の蝙蝠羽が、可愛らしく伸び上がる。
 そこへさり気無く手を伸ばし、慣れた手並みで召し物を替える従者の姿も、また定番。
「ん。今日は咲夜に言って置く事があったからね」
「私に、でしょうか?」
 一声交わす間に、着替えは完了。
 姿見の前で『完璧』と誉のお言葉も、何時もの光景である。

「そうねぇ―――あ、そーだ」
「はい?」

 ただ、最近の紅魔館にも、ちょっとした変化が訪れていた。

「指輪は、ちゃんと着けなさいな?」
「しかし」
「私を嘗めてんのか。んな安物の銀製品何ざ堪えないわ」


 ぴくり、と従者の目尻が引き攣る。


 それを横目で眺めつつ、紅の悪魔の、

「それとも―――嫌いなのかしら?それ―――」
 あっさりとした一言を。


「―――そんな事ありませんッ!!」
 瀟洒とは程遠い態度で、従者は遮る。
 瞳は激情に踊り、主を見る視線は、まるで親の敵を見るかのよう。

「―――んなムキにならんでも……っふふ」
「え―――っあ」
 一瞬の従者の変わりように、くつくつと抑えた笑いを隠せない悪魔嬢。
 直ぐに従者の顔も、『やられた』と伏せられてしまう。

 ―――控えめな、ノックの音がした。
「聞いてた?」
 その一言を許諾とし、控えめな音を立ててドアが開く。

「……お嬢様よぉ、人が悪いにも限度があるぞ、それ」
 扉からおずおずと入ってきたのは、窮屈そうに着崩した礼服が目立つ、一人の男。
 片手で顔を覆うように翳し、指の隙間からは、壁の色に負けない程度の赤面が覗く。

 彼、○○は幾年程前に、幻想郷へと迷い込んできた客人。
 紅魔館に身を置く理由は『働かざるもの食うべからず』のもと、彼が選択した居住先が此処だった、だけのこと。
 幸いにして、その手の仕事を向こうで日雇い程度には稼いでいる為か、『使えない』と言う理由で
 放り出される事も無かった。

 そして現状の通り、紅魔館が誇るパーフェクトメイド・十六夜咲夜に御執心らしく、
 また彼女も、プレゼントの2、3は受け取る程度の関係までにはなっていた。

 ―――指輪を渡したのは、つい最近のことである。


「お、お嬢様っ」
 事の次第を理解した途端、従者の顔が茹で上がる。
 こちらは壁など勝負にならない程に赤かった―――とは後の悪魔嬢の談。
「あーあどーしよ、咲夜取られちゃったーしくしく悲しいなー♪」
 それはもう腹黒兎のかくやのしたり顔で、扉の側へと歩いていくお嬢様。
「あ、あの、こ、これは」
「諦めろ咲夜さん……全ては『運命通り』と言う奴なんだろ―――この人のな」
 どちらも羞恥のあまり半泣きの体を顕してきた従者二人。れ・みぜらぶる。

「うわーんこーしてやるぅ♪」
「あ゛ッ痛っ!?」
 片手で『噴水のような涙を流してランナウェイ』のポーズを構えると同時、
 もう一方の手で、従者崩れの男を後ろから張る。
 悶絶して体勢を崩した男の倒れた先には、面食らった従者と―――大きなふかふかベッド。
「ひゃあ!?」
「おふぁ!?」
 暗黙の了解のような『お約束』か、○○に押し倒される格好になるメイドさん。
 振り向けば―――

「でも悲しいけれど~♪悪魔と人間ですものね~♪ならば私はあなたの為に身を引くわ~♪」
 相も変わらず似非オペラ風味のイントネーションをつらつらと吐くお嬢様。
 既に部屋の外、ドアの隙間からハンカチ片手に目元を拭う可憐な少女―――無論芝居である。

「―――とゆーわけで、私はこのハートブレイクをフランやパチェに慰めてもらうから♪
 さくやー、あなた今日はお休みで良いわ」
 嘘泣きをはたと止め、ちろりと赤い舌を出して、
「ちょ、お嬢―――」
「反論は一切聞かないのであしからず。あ、出血大サービスで部屋は自由に使って良いわよ」
 形容するなら『あくまの笑み』を浮かべて、

「では、ごゆっくりー(はぁと)」
 部屋の扉を閉じた。
 ご丁寧に、鍵付きで。

「……つーか咲夜さん。何故に向こうから鍵掛けられるんか?」
「お、お嬢様がお忍びで不意に外出したりするから―――っていい加減退きなさいっ」
「と、とは言っても―――っわわ、動くな色々と当た―――ご」
 最高の角度で、○○の鳩尾に肘鉄が入った。

「おお゛お゛お゛お゛お゛ッ……」
「あーもう、お嬢様ったらこんな結界の類何処で……」
 悶絶する○○を他所に、咲夜は扉の検分を始める。
 だが当然といえば当然か、華奢な造りの筈の扉はびくともしない。

「せめて、洗面所や火の元その他全て完備なのが、幸いかしらね」
「っ……あと飯も酒もな。言われて運んで来た」
 こうなると最早完璧なスイートルームである。

「はぁ……」
 眉間に手を当て、途方に暮れる瀟洒な従者。
 さしものパーフェクトメイドも、こうなるとほぼお手上げである。

「ま、しゃーないさ」
 一方の○○は、一転して降参のご様子。
 ベッドに腰掛け、自分が持ってきたワゴンの中身を改め始めた。
「仕様が無い、って―――」
「それよりも―――っと失礼」
 詰め寄ろうとした咲夜を制し、その左手を取る。

「……何時の間につけたんだか」
「あ……」
 その薬指には、如何にも安物です、と言わんばかりの銀の指輪。

「古道具屋でパン一斤が化けたような代物だってのに……有り難い事で」
 言葉も無い、という表情で、その手を優しく諸手で包む。
 その表情に咲夜は無言。ただ僅かに頬を染め、呆けた目で○○の顔を眺めていた。

「……俺で、良かったのか」
 ふと漏れた、自嘲交じりの、消え入りそうな声。
 その一言に、咲夜は悪戯っぽく微笑む。
「そうね―――確かに色々足りないわね」
「ったく、容赦ないな」
「ええ、なって無いわ、全然」
 そのまま○○の隣に座り、見せ付けるように指輪を翳す。
 ふと○○気が付けば、右手にはナイフ。

「だから、こうしちゃう」
「は?」
 かつん、と。ナイフの切っ先が指輪に立てられ―――



 ―――次の瞬間には、膝の上に、二つに増えた指輪が転がっていた。

「うわ、また手の込んだ」
 手にとって見れば、銀の指輪は螺旋状、丁度互いに噛み合う形でスライスされていた。
 中程で一端斬り飛ばされ、完全な輪にはなっていない。

「ええ、私から見たらその指輪程度。
 ここに転がり込んで精々数年。未だ弾幕の一つ飛ばせず空も飛べず、弾除けとしては毛玉にも劣る。
 貴方が掃除をすれば、舞う埃の方がだいぶ多くて、猫イラズにもなりはしない。
 外から持ってきた土産話も、果たして何時底を付くのやら」
「……うわーい、舌先だけで薄っぺらい俺のプライドボッコボコ」
「ボコボコになる程あるの?」
 ○○のハートが廃棄決定の針休めのようになって来たところで、
「でもね」
 と、項垂れた○○の手を取る。

「それでも、初めて会ってから今までずっと。
 私を等身大の人間として接し、気に掛けてくれたのよね」

 目を伏せ、その両手を抱くように包み、静かに頬に当てる。
 ○○は、赤ら顔を背け、蚊の鳴くような声で呟く。
「……だってあんた、お嬢様の事になるとテンパリがちだし、
 意外に抜けてる事あるし……休んでる姿とか、あんま見ないし」
「余計なお世話よね。これでも生涯現役・悪魔の狗よ?」


「で……一生死ぬ人間、なんだよな」


 背けた眼を再び戻し、真摯な視線を咲夜に向ける。
 彼女はただ頷くのみで、続く言葉を待つ。


「あんたに何かあれば、あのお嬢様も、妹様も、本の虫も、美鈴も。
 そしてあの巫女さんや白黒―――あんたを知る人皆が悲しむ」

「そんなに縁深い人妖関係を築いたつもりは無いのだけれど?」
 浴びせられるのは、突き放すような冷たい声。
「さ、私にこの指輪を渡すまでは良いわ。
 あとは、その契約が、私が受けるに足るかどうか。

 ―――言って御覧なさい?
 どんな口上で、この悪魔の狗を従えるのかしら?」

 それまでとは一変。
 それこそ、彼女の象徴の一つであるナイフの様な鋭さを以って、
 彼へと詰め寄る。

 だが○○は首を振り、優しい表情で続ける。

「時を操るあんたにとって。
 自分が死んだ後、あの人たちがどうなるのか。悲しむのなら、その人をどれだけ苛むのか。
 そして、自分に続く者は、ちゃんと現れるのか―――怖いことといったら、そのくらいだろ」

 何より、と顔を寄せ、手を優しく解き、

「それをあのお嬢様に当て嵌めて考える。その事が何よりも、それこそ想像するのも恐ろしく、辛い―――
 ……と、俺は勘違いを承知で思ったんだが」

 肩から、浅く、柔らかく抱きしめた。
「育ての親であり、遺す娘であり―――必ず置いて逝く、家族だものな」

「何が出てくるのかと思えば―――とんだ妄想ね」
 辛辣な口調は変わらないが。
 その眼は潤み、表情は、温かい笑みに変わっていた。

「でも面白い話。―――で、そんな私に対して、貴方の売りは何?」
「紅魔館で、あんたと同じ時間単位の人間が増える。
 そーすりゃ、節度わきまえて休み取るようになるし、能力に任せた無茶もやらなくなる」
「私がどうもしなければ意味ないじゃない―――他に無いの?」
「単純に人手が一人増える。あんたの手間が減る」
「そこまで鍛え上げる手間も考えなさい―――次」
「あんたの世話係に、一切の遠慮なく使える人手だ。それも今すぐ」
「余計なお世話よ」

 そのうち咲夜も腕を回し、彼の背に手を置く。
「もう無いのかしら?」
「ある。ここからは取っておきだ」


 どっかの本で見たかもしれない。ただの二番煎じかもしれない、と。
 そう前置きして、優しく言う。


「仮にあんたに置いてかれても、俺は絶対に悲しまない。あんたの為に」
「その時にならないと解らないわね」
「出来ないことは無いさ。その時は確実に、あんたが待ってるんだから」
「天国と地獄で別れたら?」
「閻魔に伝言と花束ぐらいは頼むとしようか。
 他に、泣いている奴が居たら、叩いて引き摺り立たせて、そして笑顔に変えてやれる」
「他の誰かでも、出来るわね」
「応とも。が、ここが肝だ。

 ―――絶対にあんたより長生きして、あんたに出来ないフォロー済ませて。
 そして必ず、あんたの所に辿り着く。あんたの待っている所に。

 ―――この約束を出来るポジション、今の俺以外に早々無いと思うんだが?」



「―――自惚れにも限度があるわ」
「先刻承知」
「皮算用って知ってる?」
「出来なくても差し引き零。マイナスにはならんな」
「―――前置きのせいで、興醒め、よ」
「元より以下略。俺にゃどーも似合わないし、取って付けた感があるんでな」
 ○○の背に、より強い力が掛かる。

「……俺だけで用意できるのは、もう打ち止めだ」
「じゃあ、一つ、質問」
 いつの間にそうしていたのか。
 ○○の胸に埋められていた、咲夜の顔が上がる

「それだけ……用意されて……断ったら、わた、し、どん……っな、女に、見られるのよ」

 ―――涙でぐしゃぐしゃになった、満面の苦笑が。

「それこそ、俺のマイハートブレイクで済む問題だ。
 他の誰にも、文句は言わせないし―――」

 ○○はすかさずハンカチを取り出し、涙その他で色々当てられなくなった顔を整えてやる。

「自分を貫く為なら、お嬢様の為なら、神様だってナイフ一本で捌いちまう。
 そんな怖い怖いメイドさんが―――」

 最後に、涙の跡さえ拭い去り、満足げに微笑み、言い切る。

「俺の―――愛しい愛しい十六夜咲夜だ」




「―――申し分無いわ。―――お受けしましょう」

 次に現れたのは、言うまでも無く。

 元通りの『完全で瀟洒な微笑み』を浮かべる、可憐な乙女だった。


「そっ―――か」
 途端、脱力する○○。音を立ててベッドに背を投げ出す。
 見る見るうちにその表情が綻び、やがて汗がだらだらと流れ―――そして耳まで赤ら顔へ。
「うへー、すっげ恥ずかしい上に臭ぇ台詞吐いちまったー……
 しかも、もしかしなくても俺って滅茶苦茶キモイー?」
「撤回は許さないわよ?」
「当たり前だっての―――ただ、俺今すごーいイタタタタな人だよなーって」
「んな事何時までも言ってると、色々と当てられなくするわよ?
 『歯医者』って知ってる?」
「げ、やめてそれマジ勘べ―――ッ!??」



 ○○の口は、より積極的且つ情熱的且つディープな方法で塞がれた。

 ―――つまりは、咲夜の唇によって直接、である。



「―――っは」
 艶やかな残滓を伴って、二人の顔が離れる。
 一体どれだけ、組み伏せていたのか。
 ○○の顔に羞恥とは違う赤みが混じる辺り、決して短くは無い。

「ふふ……こっちの方が良いわね、やっぱり」
「さ、咲夜さ―――」

 間髪居れず。但し先程より長く。

「―――っふ、私は息継ぎなんて『停めれば』問題ないけど、貴方はどう?」
「……そう、くるか……っ何で……」
 鼻は使えるが、向こう側から『吸われて』いる為、
 流石に三度目となると、人類の肺活量記録に挑戦することになる。
「色々あるんだけれど……そうね、先ず一つだけ」

 紅潮した、妖艶さの滲む笑みで、上から○○を見つめる咲夜。

「咲夜、って呼んでくれるなら、止めてあげる」
「……それ、いまいちデメリットが良く解らんのだが……」
「あら失礼、なら皆まで言ってあげるわね」



「……呼んでくれたら止めてあげる―――その後は、貴方のものよ」 




(省略されました。全てを読むにはここにFINAL波動砲を16連射してください:猶予時間2秒)




「で  き  る  か  ーーーーーーーーーッ!!!?」
「ブブーハイ残念時間切れー」
「あ゛ーーーーーーーーー!!!?」
「はいはい出歯亀出歯亀」


 レミリアの一言により、水晶球が曇り、何も写さなくなった。
 彼女の力により件の結界を介し繋がっていた『糸』が、断ち切られた為である。

「そして証拠隠滅&記録防止ちょっぷー」

 パチュリー御用達の高級水晶球が、極超音速のギロチンドロップにより木っ端微塵に粉砕された。

「うわぁい徹底しているわね高級品よ10年ものよロイヤルフレアすんぞこの悪魔」
「じゃあ残してたらどーしたの?」
「無  論  百  万  回  保  存  す  る」
「オーケィ、パチェ。お前とは後で弾幕言語で熱烈に愛を確かめ合う必要があるらしい」
「それは良いわね。向こうよりも熱烈になるよう、腕によりを掛けるわ」


 素敵な友人関係である。



「ちょ、ちょっと待ちなさいよアンタッ!?」
 半泣き状態の顔のまま、本日の来客者が異議申し立てに入った。

「承諾条件の一つにこんな千年に一度あるかないかのディープシチュエーション閲覧権限があったから
 わざわざ永遠亭まで来たってのに!?意義有りッ!  ニアそ」
「やかましいぞ永遠の引き篭もり。立会人になる権限をやるとは言ったが、そこまでは範囲外。
 それともあの中に乱入するか?永遠に魂刻まれるのがお好みなら止めないが」

「そ れ も ま た 良 し ッ Σd( ゚皿゚  )」

「正直なのは良い事だ。気に入った。―――おい隙間」
「はいはい地下室一名ごあんなーい」
「ギャーーーーーッ!!!?えーりんえーりんたすけてえーr(とす)あふぅ」
「姫、ぶっちゃけたい所を敢えてオブラードに包みまくって控えめに言いますと、
 今作業の邪魔しやがりますなら、今直ぐにでも蓬莱の薬中和剤開発に着手しますが。
 参考程度に、今の心境なら姫専用一人分限定で10秒で仕上がります」
「死刑宣告ッ!!!?」
「魔理沙、ウザイから即効性でお願い」
「人の恋路を以下中略、ファイナルスパークッ!!!!!!」


 凄まじくごたごたとした喧騒(約一名分)を、虹色の魔砲が光に還元していく。
 後に残った灰は小悪魔が掻き集め、隙間に放り込んでいった。

「で、開発部、どのくらい掛かるのかしら」
 邪魔者に一瞥くれてやった後に、レミリアは『開発部』要員に呼びかける。
 図書館内の閲覧室一つ分をちょろまかし、永琳の術によって咲夜の空間操作に便乗、改竄を行い、
 隙間に蓋を仕上げさせ、留めに知識人に隠させて作った区画。
「彼女の能力の歴史のみ抜き出せとは……極上の無茶を言うものだ」
 咲夜の近辺の消耗品を検分しているのは、歴史を操る半獣。
「あら、無理ではないのね?」
「当然だ。胸焼けするほど良い歴史を拝ませてもらったし―――蔵書を幾つ見ても良いのだろう?
 甲斐はある」

「能力の複製も、そこまで手間は掛からないわね。正直、姫が居なければ一生掛かっても無理だったわ。
 報酬、期待しているわよ?」

 永琳が断片化した能力の残滓を部品と呼べる段階まで術式変換し、輝夜の術によりそれを固着化する。
「んー、式はこんなものでよいかしら」
「紫様……それでは術者の負荷が大きすぎるのでは」
「えー?また効率化?これ以上自由度を減らすのは勿体無いわよ?」
「限定的で良いんですってば。大き過ぎるモノだとあの巫女でも感化できません」

 固着した能力の断片を配置する回路としての式を編むのは、八雲の仕事。

「緋々色金じゃ駄目ね。これだけ精密な装置だもの、もっと軽く高純度でも魔的位階が高いモノでないと」
「げげ、後はミスリル位しか残ってないぞ?」
「当て、ある?」
「……事情を霊夢に話して、陰陽玉一つ頂くしかないかもな」
「アレを核にするのー!?設計から練り直しじゃない!?」

 膨大且つ強大なそれらを、実像として結び支える『器』を用意するのは、寄蒐家二人。

「……ふーっ、神酒や霊薬でドーピングしても、これだけの負担……厳しいわ」

 その全工程で消耗される魔力を、七曜の賢者が一手に担う。

「パチェ、大丈夫?」
「問題ないわ―――たかが大奇跡程度、悪魔の加護の前に敵ではない。
 ええ、それこそ一週間で形にしてみせようとも」
 疲労の色を隠せない表情で、しかし何時もの半眼ではなく、覇気ある眼で友に応える。

 周囲も、それに続く。
「一週間とは言ってくれる」
「貫徹決定ね、私はともかく、他は大丈夫?」
「なら敢えて今のうちに寝ておこうかしら。後で問題が出たら事だわ」
「解りました、お休みなさいませ―――橙、屋雀の屋台にひとっ走り頼む」
「あいあいさー♪」
「八卦炉は仕組みから全然違うしなぁ……あ、肝吸いを頼む」
「頭に栄養が欲しいわねー、冥界のに茶菓子もお願い」

「ぐはぁーーッ!!!?」
 ずばむ、と扉を開け放ち、全身真っ黒焦げの輝夜が帰ってきた。
「Wellcome back, Etarnal Lunatic "NEET".」
「誰が永狂ニートかこの悪魔ッ!?つまるところ同類の分際でッ!!
 ―――あ、素材ならウチにあるミステリウムから漁って良いわよ―――けふぅ」
 そこまで言って力尽きたか、口から煙を吐き、尻餅をつく。

「悪いわね―――妹は落ち着いた?」
「今はまた妹紅が相手してるわ。引っ張ってきて正解。―――何をやったのよ?」
「ちゃっちゃっと、時空間操作の能力のうち、『パラドックス自動解決』っぽい部分をちょっとだけ、ね。
 因果上、この世に一つの能力を、間借り出来るようにしてみたわ」

 ぼすん、と盛大な音を立てて五体倒地する月の姫。

「んな発狂ギリギリ、禁忌的にも完全ビーンボールすりゃ、反動でパニック症状も起こすわよ。
 ―――素面のアンタのほうがおかしいわ」

 フランドールの能力はありとあらゆる物を、望む規模で破壊することさえ可能だとされる。
 ただ、それを認識・知覚する必要があり。
 ―――万物の法則を超える能力のピンポイントとなると、それこそ姉の領分のほうが都合が良い。

「そーでもないわ。今は日光どころか月光も毒ね。もースカスカ」
「閻魔は黙認?」
「寧ろこっそり支援されたかも―――理由は多分、私の動機と同じだろうがね」


 ―――ぴくり。
 動機、という言葉に、全員が反応する。



「そーいやそうね。これ何のために作るのよ?」
「ウチの可愛い狗を嫁に取ろうなんて言い出す馬鹿に、のしつける為よ」
「だーかーらー、何で普通の人間にあのメイドの能力をのしつける必要が有るの?」
「何だ、私なんかより倍以上生きていて、そんなことも見当付かないのか」




 途端、レミリアの表情が満面の笑みに変わる。
「そう遠くないうちに、咲夜に長い暇を出す日が来る―――具体的には、一年程」


「―――ん~成る程~」
 思い至ったか、蓬莱の姫も全く同じ表情を浮かべる。
 他の面々も、気付いたものは、頬の笑みを隠せない。


「何が可笑しい?」
「悪魔でも楽しみなのね、そういうの」
「ああ、楽しみだともさ―――うふ」
「ふっふふふふ」



「「うふ、うふふふふふふふふふふふ―――」」
 余りにも不似合いな笑みを浮かべる大物二人にさえも。
 気に障る者等、一人も居なかった。


「うふ、うふふふふ、うふふふふふ―――」
「いやいや魔理沙」
 誘爆したもの一名。




「いやいや、気の早いことだけれど、笑みが止まらない」
 すっかり笑みに細まった眼で、作業代の『ソレ』を見つめる。


 ―――ほんの、一年で良い。
 その時間を買う為なら、どのような財でも投げ打とう。
 ―――たかだか人間でも、我が愛娘も同然。
 その一年で、彼女の幸せを『買える』のだ。
 財を払う範囲で得られる幸せなら、安いものだ。

 その幸せを運んでくれる、あの婿への礼にも丁度良かろう。
 精々、幸せな日々に馬車馬よりも働くがいい。






 ―――そこでふと、思い出す。

「そういえば、奇遇ね」
「何が?」







 不便だと半ば戯れに定めた、愛娘の誕生日。
 その初めての記念日に渡したものと、結果的に同じものとなってしまった。
 ―――流石にこれは、読めなかった。
 全く、『縁とは異なるもの』とは悪魔にも適応されると言うのか。流石は幻想郷。










「あの子に初めて贈ったプレゼントと同じか―――懐中時計」











「小町」
「何です、映姫様」
「子供を愉しみにし、それが産まれて来る幸いを守ること。それはまっこと尊い善行なのです」
 ―――ええ、子供は世の宝ですとも。それが安息に世に生まれ落ちるなら、閻魔様の眼も緩みますとも」
「何回目ですかその台詞。そりゃーそんな糸目じゃ何も見えないでしょーに」
「あらやだ小町ったら正直者ねぇ」
「(うへぇ、気持ち悪い)」









―――二十四時間後。


「お休みはどうだったかしら、咲夜」
「ええ、実に充実した一日でしたわ」
「一日と3時間、でしょう?」
「流石はお嬢様、お見通しでしたか」
「FINAL16連射は失敗だったけれどね」


「あら、意外と片付いているのね、部屋」
「立つ鳥跡を濁さず、と言います」



「―――随分と長く、延長試合に縺れ込んだようだけれど」
「お互い、決定的リードを奪えずに―――熱烈な一戦でしたわ」
「点取り合戦?」
「守備に回ることなど、頭に有りませんでした」



「……そこで徹底的にスルー?動じなくなったわね」
「それはそうですとも」




「瀟洒な母にならなくてはいけませんから」

「(ぱーちぇー……予定早めないと拙いわ。五日で出来る?)」
『(むりぽ)』



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本日の基本コンセプト。
→咲夜さんを幸せ一杯に泣かせたい。


本日の発展系コンセプト。
→親心全開なお嬢様が見たい。


結局のところ、この二つで全てです。
途中からオーバーな部分も出ましたが、後悔だけはしておりません。


……さて、愛しの霊夢は何処行ったOTL
浮気御免なs(夢想転生



4スレ目 >>668


「悪魔の狗ってお前が呼ばれるなら、俺は悪魔の狗の狗になってやる!」

せっかくだから俺は下僕フラグを立てるぜ!



4スレ目 >>853(うpろだ0048)


変人と言ったら変かもしれないが、一風変わった店を経営している知り合いがいる。
そいつの店は何とも奇妙な品ばかりが並んでいて、まさしく趣味でやっているような店だった。

「こーりん元気か?」と、お決まりのセリフとともに店へ入る。

すると、そこには、こーりんの他に見慣れた紅白の巫女と白黒の魔女、そして初めて見る客がいた。

そして、この時が俺と彼女の最初の出会いだった。

最初、その見慣れない客は、他の二人の客と話をしていた。そして、俺は客がきていても暇そうにしている
こーりんに小さな声で話しかけた。

「こーりん、あのお客さんは?」
「ああ、霊夢達の知り合いで、湖に大きな館があるだろう?そこで働いているメイドだよ」
「へぇー」

俺はじっと、そのメイドの横顔を見ていた。すると突然、こちらの視線に気付いたのか、横目で鋭い眼差しを向けてきた。
それは一瞬だったが、俺はその目から発するプレッシャーの様なものに負けて、思わず顔をそむけた。

「お前、ほれただろう」

目の前のこーりんがニヤニヤした目で言った。そう言われた時、俺の顔、特に耳が熱くなった。・・・そして、こーりんの言葉を否定することはできなかった。

あの人の目は鋭く、威圧感もある。だけど落ち着いてもいて、どこか優しそうな雰囲気も併せ持っている。なんとも不思議だ。
しかし、ずっと見とれたまま、再び目が会うと気まずそうな予感がしたので、適当にこーりんと下らない話をして、店の品を眺めることにした。
趣味が悪いと思える物、昔から売れ残っているもの、買わないけれどお気に入りのモノ、様々なものが不規則にならんでいる。

「失礼、そこを通らせて頂いてよろしいかしら」

彼女の声は突然聞こえた。俺は申し訳なさそうな顔をして、急いで通路からどく。すると、彼女は微笑しながら一言ありがとう、と言って店から去っていった。
気付けば紅白も白黒も店から出ていく所だった。

「やはり気になるか」

こーりんは後から声をかけてきた。そして、俺は彼女は普段店にくるのかと訪ねると、何度か店に来た事はあるが、
殆ど店でたむろしている、霊夢や魔理沙が目的だと教えてくれた。また、霊夢がこーりんに対して、館の主である吸血鬼が
いつも神社でたむろしていて、時々だが従者である彼女が迎えにくることがあることも、伝えてくれた。
ただ、これを聞いても俺にはどうしようもなかった。ただ、こーりんの言っていた通り、神社に主を迎えにきた彼女を遠くから見ることだけはできた。
いや、それだけしかできなかったと言うべきか。俺は、彼女は、ずっと遠いままの存在で終わることを予感していた・・・。

そのまま、月日が流れ、いつしか俺の心の中の彼女は消えそうになっていた。人の心とは移ろいやすいものだ。
だが、事件は突然やってくるものだ。それは俺が再びこーりんの店へ行って帰る道中の出来事。
薄暗い林道の中を歩いていると、茂みの方から小さなうめき声が聞こえた。その声には聞き覚えがあった。

…彼女だ! 

気がついたら、俺は無我夢中になって彼女を探していた。そして、ようやく見つけた彼女は、全身傷だらけで倒れていた。俺は急いで彼女の元へと駆けつける。

「だ、大丈夫か!?」

俺は大声で呼びかけた。すると、彼女はまた小さな声で苦しみながらも、やがて俺の声に気付いて目を覚ます。
ただ、同時に彼女は驚き、とっさに俺を突き飛ばして、距離を取った。そして、服に隠し持っていたナイフを取り出して構える。
が、俺の顔をよく確かめると、彼女は平静を取り戻し、ナイフをしまった。

「ごめんなさい」

彼女は申し訳なさそうに言った。それに対して俺は気にしないでと返す。
どうやら、彼女はお嬢様と呼ぶ、館の主を迎えにいく途中、妖怪に襲われたらしい。それで彼女は闘い、妖怪は退けたものの、彼女自身も疲れ果て、気を失ってしまったようだ。

落ち着いた彼女は、再び膝を地につけた。まだ力が出ないらしい。ひとまず、ここでじっとしている訳にもいかないので、彼女を抱いて家のある村へ向かった。
道中、俺と彼女は様々な話をした。例えば、館の話、主の話、巫女の話なんかもした。また、以前、神社の近くで俺が彼女を見ていたことに気付いていた、という事にも触れた。
俺はそれを聞いて、凄く恥ずかしく思ったが、彼女は悪い気はしなかったと笑った表情で言ってくれた。

俺達は、陽が沈んだ後、ようやく村につき、落ち着いた。しかし、ホッとした次の瞬間、俺は村の入り口に一人の少女が居ることに気付いた。
彼女もこれに気付き、慌てた様子で少女に声をかけた。

「お嬢様!」
「…全く、迎えにもこないと思ったら、館にも居ないし、ずいぶん探したわよ」
「…申し訳ありません。」

彼女は急いで俺の腕から離れ、少女の元へと向かった。それから彼女の側へ寄ると、こちらに振り向いて言った。

「咲夜と申します。今日はありがとうございました」

そして、彼女は少女と共に闇へと消えていった。


後日、俺が自宅で暑さに倒れていると、突然、客がきた。急いで服装を直して玄関に迎え出てみると、
そこには以前にも増して魅力的な瞳を輝かせた彼女が居た。

「何故か、急にお暇を頂いたので、先日のちゃんとしたお礼に参りました」

とりあえず、玄関で立たせたままなのも申し訳ないので、挨拶をすませると家の中へと招き入れた。
そこから、俺が背を向けて奥へ案内しようとした時、いきなり彼女は肩から腕を回して抱きついてきた。

「今日は一日、あなたの側に置かせて貰ってよろしいでしょうか」

無論、俺にはそれを断ることなどできなかった。


4スレ目 >>861



俺なんて一行告白が精一杯だぜ。
「時を操るからなんだってんだ。
あんたは一人の女性で……
俺が惚れてしまうほどにいい女なんだ」 →咲夜


うーん?うまくいかないなあ。

4スレ目 >>862


俺も咲夜に一言いっておくか。
「能力の所為じゃない、俺の時間は君の魅力のおかげで止まってしまったんだ。」

ξ・∀・)<臭いセリフ


5スレ目>>304


「咲夜お手」
「わん」
「咲夜おすわり」
「わふん」
「うぎぎぎぎgかぁわいいなぁー咲夜はぁ~」
「??」
「よーし、パパ咲夜と一緒に風呂に入るぞぉ~」


カポーン


「こら咲夜!あばれるんじゃない!風呂桶に毛が入るじゃないか!」
「く~ん」・・・
「ほ~らよしよし良い子良い子、あとでジャンキー食わせてやるよ」
「わん!わん!」


5スレ目>>585


月がこんなに綺麗だから、思わず紅魔館の屋根に登ってしまった。
何で紅魔館かって?消去法でここしか残らなかったんだよ。
まず候補に入ったのが永遠亭。だが、月見だんごに何を盛られるか分かったもんじゃないから却下。
次に候補として上がったのは博麗神社。毎年毎年どんちゃん騒ぎで収集が付かなくなるから却下。
あと、萃香に月見酒の呑み比べなどを挑まれようものなら最悪だ。月見酒はしんみりと嗜むのが通なのだよ。
で、残るは紅魔館。ここは湖が近くて涼むには最高の場所だ。レミリアは霊夢の所に行ってて不在だけど。
ちなみに正式に招待されてないから不法侵入扱いなんだなこれが。カリオストロよろしく壁をよじ登って潜入する。

「よっ、と。おぉ、絶景かな絶景かな」
遠くの山やら空の雲やらが月明かりに照らされて浮かび上がる。手を伸ばせば月さえも掴めそうだ。
しかし風が強い。庭の木々はざわめき、空の雲はもの凄い勢いで流れて行く。
「あら、あなたも涼みに来たの? 呼んだ覚えは無いんだけれどね…」
どうやら先客がいたようだ。屋敷のメイド長が屋根の上で佇んでいた。
この強風でも靴下とスカートの間の絶対領域は揺ぎ無い。少しくらい見えても良いものの…
え?何がって?そりゃあ旦那、こっちはスカートを履いたメイドさんを見上げる形になるんだぜ?
「屋根とメイドと夕涼み、か。なんかミスマッチで面白いな」
「もう深夜よ? それに、招待していない客人には即刻退場して頂かないとね」
「堅いこと言うなって。隣座るぞ? だめか?」
そう言いながら腰を降ろす。世の中やったもの勝ちなのだよワトスン君。
「言いながら座らないの。……仕方が無いわね。今夜の月に免じて特別よ?」
「サンキュ。いやぁ、屋根の上から見る夜景はいいなぁ」
「この辺りにはここ以外に建物が無いから、見渡す限り真っ暗よ?」
「なあに、どんなに暗い夜でも俺の北極星はいつでも輝いているから問題無い」
そう言いながら咲夜の肩を抱き寄せ……ようとしたが逃げられた。
「……その程度じゃあ口説いている内には入らないわね」
そうは言っているが、頬が少し紅く染まっているように見えるのは、屋敷の壁の色のせいだろうか?
「その割には顔、真っ赤だぞ?」
「えっ? あ、そ、そんなことは……」
「嘘。暗くて見えないよ」
「っ!?」
おぉ慌ててる慌ててる、こんな珍しい光景滅多にお目に掛かれないからな。いやぁご馳走様でした。
「ま、いつもお仕事お疲れ様ってことで」
「言うようになったわね……仕返しよ」

刹那、時の流れが止まったかと思うと



ちゅ

頬に何か柔らかいものが触れた感触と同時に時が動き出す。

「……真っ暗で見えないわね?」
「そ、そうだな……」
「……ふふっ」
「あれ、今珍しく笑った? 笑ったよな?」
「…………さぁ」



うーむ、どうも咲夜さんは難しいな……


5スレ目>>599


「お嬢様の命令なの。ごめんなさい…」

咲夜さんの声に、いつもの優しさは……ない。
何かの冗談かと思いたかった。しかし、咲夜さんの目の色を見て冗談でないというは分かった。

「…っはは、何でさ」
乾いた笑い。
普段の「オレ」を演じるコトは、できなかった。

「自分では気付いていないみたいだけど、あなたはイレギュラーな存在。
 スキマ妖怪の能力もお嬢様の運命操作も通用しない。そんなあなたが負の方向へ目覚めたら……」
幻想郷のパワーバランスは崩れて、世界そのものが崩壊する……か。図書館の主も言っていたな。
つまり、スキマ妖怪の力で元の世界へ戻せないのなら――

あとは俺を殺すしか方法が無いというのか。

いくらイレギュラーな存在とはいえ、今の肉体は生身の人間そのもの。殺すなら今のうちという訳だ。


ぶしゅり。

そんな音と共に、オレは地に伏した。どうやら右足を斬られたらしい。
……逃がすつもりは毛頭無いってことか。

「他に方法が無かったの。容赦はしないわ」

二度目の衝撃。
銀色に光るナイフの刃が、今度は左足を切り裂いた。

容赦しているんだかしていないんだか、わからない。
足を刺すなんて面倒な事をする前に、腹でも頭でも刺せたのに。


そう。その気になれば、赤子の手をひねるぐらい簡単に、俺を殺せる。
時を止めて、1080度全方位からナイフの集中砲火を浴びせればいい。

何故だか、俺は。
咲夜さんに看取られて最期を迎えられるなら、幸せかなぁ……などと考え始めていた。

それで、気付いてしまった。
つまりオレは、どうしようもなく咲夜さんのコトが好きだったというコトに。

「これで最期ね。何か言い残すことはあるかしら?
 もう少し抵抗するかと思ったけど、何もしてこないのね」

見れば、咲夜さんはナイフを振り上げている途中だった。
ここで何も言わなければ、彼女はナイフを振り下ろすだろう。

……だけど、そんなコトは、出来るはずがない。

「馬鹿なこと言うな。俺が、あなたの事を傷つけられる筈が無い。
 それに、オレはあなたに殺されたって別に構わない。
 最期まで昨夜さんの傍にいられて、オレは本当に幸せだったんだからさ
 これだけは最期に言っておく」


 俺はな。…お前に殺されるなら、後悔なんて一つたりともないんだか…r


急に目の前が真っ白に染まり、俺の身体は地面に崩れ落ちた。
どうやら両足からの出血が予想を遥かに上回る量で、体中の血液が抜け落ちたらしい。
これがウワサの出血多量ってヤツか。


――ナイフは、いつまでたっても落ちてこない。

当然だ。
咲夜さんは、ナイフを捨てて俺の身体を抱き起こしているのだから。
もう目の前は白一面の世界で何も見えないハズなのに、ふと瞼を開いてみると…


咲夜さんは泣いていた。
あぁ、もう少しだけ……この顔を眺めていたい。

…でも、そろそろ限界だ。
まぁ、単なる貧血に過ぎないだろう。

咲夜さんは必死に何かを叫んでいるけど、もう何も聞こえない。


――次に目が覚めて、紅魔館か永遠亭のベッドで起きた時に、また彼女に会えると期待して



俺は瞳を閉じた。



Ending No.19  伝えられなかった想い(咲夜編)

(後日談を見たければ、ノーマル以上でノーコンティニュークリアをめざそう!!)


5スレ目>>823


 咲夜さんにアタックをしかける事数週間
 努力の甲斐あってか、遂に向こうからアプローチが来た!
 そう、それは激しい雨の降る日だった……




 ……雨は雨でも、ナイフの雨だったけどな!





「う! あああああああああ……
 ヒトゴロシーーーッ!!
 ハァ、ハァ、ハァ
 いきなり何をするんですか咲夜さん!!
 死んでしまうじゃないですか!!」

「あら? 少し激し過ぎたかしら? ごめんなさい。
 うふっ、あなたって案外ノーマルなのね。
 でも人殺しよばわりはひどいわ。
 また今度、あなたの準備が出来てから、ゆっくりと愛を確かめあいましょう、○○」

「さ、咲夜さん!
 そんな!
 それが君の愛し方だなんて!
 激しいよ咲夜さん!
 激し過ぎるでヤンス~~~~~~!!」


 正直、反省してる
 だが俺は謝らない


最終更新:2010年05月15日 23:24