咲夜8
うpろだ589
今思えば、私は嵌められたのだと思う。
「咲夜さん、これを」
それは普段着ているようなメイド服でもなく、柔らかくさらりとした手触りの光沢のある黒のドレスだった。
普通の女の子なら一度は憧れる代物だ。
身体のラインを強調するような黒のそれは太腿から深いスリットが入っていた上に、胸も必要以上に強調されるようなデザインになっていて、
それを着るには大分勇気を必要としたけれど、レミリアが着ろと言うのだから逆らうことも出来はしない。
美鈴に手伝ってもらいながら何とか四苦八苦してドレスに腕を通した。
「咲夜さん、凄く綺麗です」
そう言って、美鈴は軽くメイクを落としていく。咲夜さんの肌は綺麗ですね、だからあんまり弄らなくてもいいかな。
アイラインを引いて、口紅を差す。
いいですよと言われて目を開ければ目の前の姿見に見知らぬ女が映っていた。
揺るぎない銀の髪が辛うじて自分であることを知らしめる。
「これ、履いてってレミリア様が・・・・」
「・・・・分かったわ」
ドレスと同じ黒のエナメルの靴を履く。
大きく背中の開いたドレスといい、華奢な造りと高い踵の靴といい、全てが心許なかった。
「咲夜さん、その・・・・私たちの事・・・・」
「美鈴、留守を頼んだわよ。・・・・・さあ咲夜、行きましょうか?」
現れたレミリアにはいと頷く。
美鈴はどこか悲しそうな顔をして、私が連れて行かれるのを見ていた。
行きましょうか、と言われたものの、何処へとは聞けなかった。
聞いていいような雰囲気ではまかり間違ってもなかった。
飛行しながら、流れる景色をぼんやりと見つめながら思う。果たして私は、何処に行くのであろうかと。
数分もかからずにレミリアは地上に降り立った。
それを見てこちらもゆっくりと下降する。
先に降り立ったレミリアが促すようにその手を伸ばしてくる。
少し躊躇った後に指先を重ねて動きにくい靴と格闘しながらのろのろと歩いた。
きっと靴擦れが酷いことであろう。
目の前には数回訪れたことのある屋敷があった。
重厚な扉を開いて、人のいない廊下を歩く。
かつかつと信じられないほど大きく足音が響く。柄にもなく緊張しているのかもしれない。
どうしてこんな格好をしているのかは知らないけれど、これから会いに行く人物には心当たりがあった。
こんな屋敷で用のある人物といえば、ただ一人。
「待たせたわね」
思っていた通りの場所でドアを開けたレミリアに、ある種の落胆と絶望が滲む。
「・・・・・待つ時間っていうのは、どうしてこうも長いんだろうね。レミリア、咲夜」
「・・・・・・」
他の給仕も執事も、誰もいない部屋で彼は一人静かに佇んでいた。
明るい茶色の目と視線が合う、と思った瞬間にはすでに彼は目の前にいた。
いつの間にかレミリアに預けていた手は彼に繋がれている。
「最後に会ったのはあの悪魔の妹君と一緒の時だよね、咲夜」
「・・・・っ、△△・・・・」
「○○、だよ。咲夜が呼びやすい呼び方で呼べばいいけど苗字は駄目」
今日から咲夜は俺のお嫁さんになるんだから。
確かな笑みと共に吐き出された言葉に驚愕した。
そんなことは、知らない。
何かの間違いではないのかとレミリアを見遣ったが、ただ静かに微笑み返されただけだ。
それだけで十分だった。彼の言葉が紛れもない真実だということを思い知るには。
目の前が真っ暗になって、力が抜ける。
みっともなく床の上に崩れ落ちるかと思ったけれどそんな無様な姿になる前に、○○に腰を取られた。
そのまま抱え上げられてソファの上に横たえられる。
ふわふわと沈み込む柔らかな感触が、まるで浮世離れしているのではないのかという錯覚を起こさせた。
理由なんて分からない。
けれどこの格好はその為だったのかと合点がいった。
勿論分かったからといって嬉しくも何ともない。
「咲夜」
「レミリア・・・・様」
「こうなったのは私の責任よ。・・・・私が、彼に負けたから。恨む?」
「・・・・・・」
無言で首を振る。
嫌で嫌でたまらなかったがだからといってレミリアを恨むのはお門違いだ。
例え本当にレミリアの言うとおり彼女の行為の何かが原因だったとしても恨めるはずがなかった。
「・・・私は、いいんです」
「・・・私は貴女の幸せを心から願っているわ。貴女が嫌だと言うのならこの話は―――」
「レミリア」
静かな、威圧的な声だった。
ぞっと皮膚が粟立つ。
初めて出会ったとき、この男はこんな声はしていなかった。
震える拳をきつく握り締めて、真っ直ぐに見上げた。
薄らと笑う瞳と視線がかち合う。
それからレミリアを見遣った。・・・悲しそうな、顔をしていた。
「・・・いい、です。結婚でも、何でもします」
「咲夜・・・・」
「紅魔館の皆さんのことを、よろしくお願いします」
それだけしか言えなかった。
覚悟を決めても所詮はその程度ということだ、情けない。
温かなレミリアの手が頭に触れた。
そのまま小さな子供を宥めるように、くしゃりとひとつ髪を掻き混ぜられる。
たったそれだけのことで身を切られるような思いだった。
この温もりはもう二度と手に入れられないのかもしれない。
「○○」
「分かってるって、レミリア。ちゃんと幸せにするよ・・・咲夜」
のろのろと顔をもう一度○○に向ければ毒を持った笑みで返された。
幸せになんてなれるはずがない、美鈴もパチュリーもフランも
小悪魔も敬愛する主君であるレミリアもいない世界に自分の望む幸せがあるとは到底思えなかった。
投げ出したままの左手を取って、その薬指に指輪を嵌められる。
細くて華奢でシンプルな指輪だ。
虹色の石が嵌っているがそれが何なのかは生憎と分からなかった。
「オパールだよ。綺麗だろう?似合うと思ったんだ」
そう言って指輪を嵌めた(彼のものになった)手をそっと握って、口付けられる。
そのまま強く指に歯を立てられた。
反射的に逃れようとしたら更に強く手を握られる。
おそらくは血が滲んだのだろう、赤く濡れたものが見えた。
「・・・・っ、あ」
「浮気防止に、もう一つ」
ぺろりと唇を舐めて、爽やかに笑う。
レミリアの表情は悲しげなまま凍りついたように動かない。
だから、それ以上彼女に負担はかけたくなくて、大丈夫ですと言えば無理矢理納得したような顔をしてそれでもしっかりと頷いてくれた。
「・・・・じゃあ、私はこれで」
「いつでも遊びに来ていいって、紅魔館のみんなに言ってあげて」
「お気遣い、結構よ」
それだけ言ってくるりとレミリアは後ろを向く。
その背中が全ての言葉を拒絶していて、だから何も言えなかった。
彼女の後姿がドアの向こうに消えて、その足音すら捕らえられなくなって、もう一度ソファに沈み込んだ。
靴はすでに○○によって脱がされていた。
思考が同じ所で停滞している、何もかも考えるのに疲れた。
張り詰めた神経が緩むこともなくそのままいつか切れてしまいそうだと思いながら、目を閉じる。
とにかく今は眠りたかった。
目が覚めたら全ては夢だったという都合の良い話はないだろうか。
瞼を閉じたらとうの昔に枯れたはずの涙が二粒、頬を流れ落ちた。
補足。
十六夜咲夜
元紅魔館のメイド長。
咲夜に目をつけた○○とレミリアの賭け戦闘でレミリアが負けてしまったため、○○の嫁になることを決定付けられる。
それ以降すこぶる腹黒な旦那に振り回される毎日を過ごすことに。
○○にあまりいい感情を抱いていない(レミリアを負かしたので)。
○○
レミリアより強い、最強?な○○。
性格はすこぶる黒い、とにかく黒い。腹の底まで真っ黒。
事実かどうかは分からないが全て計算づくの上で奸計用いて咲夜をゲットしたとかしなかったとかいう、そんな。
多分十中八九本当のこと。
意外にも結婚生活自体にはどちらかと言えば乗り気なようで、ことあるごとにあの手この手と咲夜を虐めては(困ってたり屈辱に打ち震えていたりする姿を見て)楽しんでいるらしい。
心の底から性悪ですね。
でも咲夜のことを本当に心から、
親馬鹿、咲夜馬鹿。
○○との戦闘に負けて泣く泣く咲夜を嫁に出すことになってしまった。
彼女が嫁に行った日は一人で枕を濡らしていたとか何とか。
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うpろだ591
俺がプロポーズしてから一月ちょっと
彼女が十六夜に別れを告げて一月弱
特に変わったわけでもなく、ただいつものように、毎日が過ぎて行っている
正直に言えば彼女が来てから店の方も繁盛してるし、人でも増えて楽になった
でもまだ何となく、その・・・嫁に来たという実感が湧かないのも事実だ
いまだ恋人のまま、同棲しているような感覚
いったい結婚とはなんなのだろうか?
「幻想郷に・・・紅魔館に来て、お嬢様のお世話をして、パチュリー様にお茶を入れたり図書館の掃除をしたり、メイドたちをまとめたり、サボってる美鈴を怒ったり」
彼女はまるで遠い遠い昔の事ように話す、瞳は悲しげに、口調は柔らかく
「霊夢や魔理沙が遊びに来て、たまにそれを撃退したり歓迎したり、異変の時も色々と大変だったわ・・・それでも凄く・・・楽しかった」
俺があまり知らない彼女のメイド生活、だか実に解り易く・・・光景が目に浮かぶようだ
俺の知らない彼女を、見て見たいなんてすこし、思った
「このまま年老いて死ぬのも悪くない、むしろ恵まれているなんて思ってた・・・でも」
俺とであった、俺に恋をしてくれた、そして俺も恋をした
「まさか自分が普通の人間みたいに・・・人を好きになって、体を重ねて、プロポーズまでされちゃって・・・幸せすぎて、夢なんじゃないかって、でも夢じゃなくて」
もし夢でも、俺は夢から現実まで出張って、君をさらいに行くよ
「紅魔館にいたときが一番幸せなんだと思ってた、いろんな人に大切にされて、幸せだった、危険もあったけど、充実してたし、満足してた」
「・・・じゃあ、何で君は俺との生活を選んだ?」
俺は、彼女も俺とおなじ事を言ってくれると信じて、一つの質問を、投げかけた
「それは・・・私はあなたを愛してるから、そして彼方が私を愛してくれるから――」
俺も、同じ気持ちだ
俺達は愛し合ってる、だけどまだ夫婦ではない、まだ俺達は彼氏彼女なのだ
何か区切りが必要なのだ、人によって色々だが、最も一般的なのは結婚式だろう、それと
「・・・古くは蛤の殻などを渡していたらしいが」
「?」
「まぁ一般的に・・・これが一番だと思ってな」
いつ渡そうか、ずっと出番を待っていた控え選手
温めていた身体、待ちわびていた気持ち
「え・・・指輪・・・」
「あんまりいいものじゃ無いが(推定月収8か月分)外から取り寄せてもらうのに金が掛かっちまってな・・・」
「綺麗・・・白金?」
「ああ、君には銀が似合うと思ったんだが・・・まぁいつまでも色あせない二人の愛情と言う意味も込めて・・・白金で」
ああ、俺はなに言ってるんだ、よくもまぁ恥ずかしい台詞をいえたものだ、素面なのに
「あ、ありがとう・・・やだ、嬉しすぎて」
涙が、ぽろぽろと零れ落ちた
俺もつられて泣きそうになるが、其処は男ですから、しっかりと胸で受け止めてやらんといかん
「咲夜、結婚式とやらををあげようか」
「え?・・・な、なんで?」
「区切りをつけよう、それと・・・お世話になってる連中に、幸せになる、って宣言しなきゃ・・・な」
お嬢様と妹様と引きこもりと小と中国とメイドsと霊夢と魔理沙とアリスとそれから、それから・・・
「そうね・・・うん、皆に自慢しなきゃね、私幸せですよ、ってね」
なんか違う気もするが、彼女はそれでいいのだろう、周りも、俺も・・・たぶん
陽気ぽかぽか、昼寝をするには丁度いい昼下がり
あの人がいなくなって、怒られる回数は減ったけど・・・ちょっと、いやだいぶ寂しい
「美鈴、頑張ってるかしら?」
「・・・・・さ、咲夜さん!?きょ、きょうはどおして!?」
「ふふふ、ちょっとね」
久しく聞いたのは、偉く上機嫌で、透き通るように綺麗な声だった
「お嬢様、いらっしゃいますか?」
久しく聞いた従者の声、幻聴かと思ったが間違いなく、其処に姿があった
「咲夜!?まさかもう・・・別居!!?」
「ち、違いますよ!そんなことは全然」
あの男に任せて、良かった、そう思わざるを得なかった
咲夜がこんなに幸せそうに・・・
少し、いや凄く悔しい
「今日はちょっとした、報告とお願いを」
「報告とお願い?」
「私達・・・結婚式を挙げる事にしました」
To be continued!
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11スレ目>>58
理由は特に無かった。
人を好きになることに理由は要らないという言葉は本当らしい。
彼女を目で追い始めたのは何時からだったろうか。
ここは紅魔館のとある一室。
丁寧に掃除をしながら俺はいつものように彼女のことを考える。
十六夜 咲夜、俺の心を捉えて放さない人。
最初はそれほど気になる人ではなかった。
周りのメンバーの印象が強すぎて、常識人に見えたのが彼女くらいだった所為なのだろうが。
話せば長くなる成り行き上、ここで仕事をすることになった俺の上司。
ただ、彼女はそうであるはずだったのに。
何時からか変わっていた。
彼女の性格、仕草、言葉。
そういった何気ないものが俺にとって妙に気になるものになっていた。
「さて、こんなものか」
部屋の隅から隅まで掃除し終えた俺は部屋に置いてあった椅子に腰掛ける。
その状態から椅子にもたれかかり、天井を見上げる。
「何やってんだろう、俺」
彼女を想い続け、数年が経った。
何時までこんな半端な状態を維持するつもりなのだろう。
何度も彼女にこの想いを伝えようと思った。
その度に俺の中にある理性が必ず警告するのだ。
断られればそのあとはどうなるのか、と。
咲夜さんと今までのように接することができなくなる。
それどころか、俺は告白する覚悟など持ち合わせていないのだ。
現状維持――その言葉がいやに俺の頭の中を駆け巡る。
どんなに悩んでも変わらない、もどかしい状態が続いてきた。
彼女を見ていると何時だって俺という存在が霞む気がした。
大した力も無い、ドジを踏む、融通が利かない、器量も普通。
それに比べて彼女は完璧と呼ぶに相応しい。
そんな俺が彼女と共に居たいと思うとはなんともおかしな話だ。
「は、自虐が過ぎるか」
そう弱気な自分を一蹴してみてもやはり皮肉の言葉が沸きあがってくる。
「ああ、畜生。どうしてこんなに愛おしいんだ。どうしてこの感情を伝えられないんだ。どうしていつも踏みとどまっちまうんだ」
自分でも気がつかないうちに言葉が勝手に紡がれる。
少しずつ声が大きくなっていく。
分かっているのに、抑えられなかった。
ガタ…と部屋のドアから音がした。
誰か居るのかと思ったころにはもう遅く、既にその誰かへと呼びかけていた。
「誰だ?」
言い終わった直後に気配を消しながら音を立てずに素早く動きドアを開ける。
そこに居たのは驚いた顔で俺を見つめる、先ほどまで俺が思いを馳せていた咲夜さんその人だった。
「咲夜さん?どうしてここに?」
いきなりドアが開いたことに対して咲夜さんは驚いているようだ。
それもそうか、時間を止めようとしている間にこうなれば。
「え、あ…その…そろそろ掃除が終わったかと思って様子を見に来たのだけれど…」
戸惑いながらも彼女はここに来た理由を告げる。
しかし、何故か妙に落ち着きが無い。
本来の彼女なら既に平静を取り戻しているはずなのに。
……嫌な予感がする。
俺はその嫌な予感を確かめるために彼女に一つ質問をした。
「あの、さっきの言葉……聞いていましたか?」
「い、いえ。聞いてないけど」
嘘だと直感した。
何故だか分からないが、俺と同じような感じがしたのだ。
「嘘ですね。そもそも、この部屋には防音加工が施されていないですし、あれくらいの声ならば聞こえてもおかしくは無いはずです」
「っ!」
咲夜さんの一瞬見せたその顔で俺は確信した。
「図星ですね」
彼女が慌てて取り繕ってももう遅かった。
それからしばらく言いようの無い、居心地の悪い静寂が辺りを包んだ。
「その・・・ごめんなさい」
「いえ、別に構いませんよ」
言葉が続かない。
さっきからバクバクと早鐘を打つ心臓が酷くうるさい。
彼女に聞かれていた恥ずかしさと、今後の彼女との関係はどうなるのだろうという不安が綯い交ぜになって、本当に落ち着かない。
「あの、私でよければ相談してくれないかしら」
なんとなくわかっていた。
彼女ならそう言うのでは、と。
その言葉を聞いた途端に彼女との距離が遠くなった気がした。
「そういうこと、私には経験が無いけど、私ができる範囲内なら協力してあげるから・・・」
そう言って微笑んだ彼女の表情はまさしく俺を連想させた。
本当に悲しそうで、本当に辛そうな、秘めこんで消してしまおうとする表情を見て、俺はただ、ここで何かを言わなければならない気がした。
「いえ、その必要はありませんよ」
自分の心を奮い立たせて言葉を紡がせる。
何を戸惑う、ここで言わなければ全てにおいて後悔する。
それで本当にいいのか。
「え・・?」
「聞かれていたのなら、もう踏みとどまる必要はありませんからね」
さあ、言おう。
秘め続けたこの想いを。
ただ、その為に今の俺はここにいる。
「咲夜さん、俺は貴女のことが好きです」
一度溢れたら、もう流れは止められない。
なんと思われようが構うものか。
今この瞬間だけはこの想いをぶつけたい。
「咲夜さんの声をもっと聞きたい、咲夜さんの笑顔をもっと見たい、咲夜さんの心に少しでも触れたい、
咲夜さんに少しでも近づきたい、咲夜さんを近くで感じたい、咲夜さんのことを知りたい、咲夜さんを愛したい。――――」
俺の言葉は止まるところを知らなかった。
最初は口をぽかんと開けて呆けた表情を浮かべていた彼女だが、次々と述べられる言葉を理解していく内に、その顔が徐々に赤く染まり、
遂には視線を泳がせて慌てふためき始めた。
「あ、う・・あ、あの・・その・・・」
もはや彼女は、完全に落ち着きを失っている。
その様はいつオーバーヒートしてもおかしくない程だ。
対して俺は、自分の心から次々と湧き上がる言葉をただただ口に出すことに必死なので、まったくといっていいほど彼女の様子を気にしていなかった。
「こんなことをいきなり、しかも勝手に言って迷惑なのは承知しています。けれど・・・駄目でしょうか」
「っ、そんなことない!」
ほぼ即答だった。
「私だって、あなたのことが・・!その・・す、好き・・」
段々と消え入りそうになる声。
しかし、最後の言葉ははっきりと聞こえた。
そう言われて俺は気がついた。
彼女も同じだったのだと。
そう分かると、なんだか顔が一気に熱くなってきた。
たぶん耳まで真っ赤なのだろう。
「えっと・・本当、ですか?」
「嘘でこんなこと、言わないわよ・・っ!」
ああ、これではっきり分かった。
そして、なんとなく顔が綻んでいるのが自分でも分かる。
再び沈黙が辺りを包んだが、今度はあの居心地の悪いものとは違う、どこかむずがゆいような…まあ、悪くない沈黙だった。
「えーっと、咲夜さん、ってあれ?!」
気づいた時には、彼女はもうそこにいなかった。
恐らく時間を止めて何処かに行ったのだろう。
「・・・まあ、いいか」
そう、まだ時間はたっぷりある。
ようやく進展したのだ。
もう恐れる必要は少なくとも無い。
さっそく、彼女を探しに行こう。
どんな顔をして会えばいいか分からないが、とにかく会いたい。
そう思った瞬間、彼女との距離が近づいたような気がした。
さあ、行くか。
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8スレ目 >>207
う~ん、今日はヒマだなー
黒白も紅白も来ないし、毎日こんなだといいなー
って咲夜さん!?いつからここに?
え?ヒマだなーの辺りですか?いや確かにヒマだっていいましたけどサボってたわけじゃ……
ちょ、咲夜さんナイフはやめてください!
~少女説得中~
はあはあはあはあ、た、助かった……
それにしても咲夜さん今日はやけに機嫌、悪いですね
さては○○さんと何かありました?
え?何で分かったかって?そりゃ分かりますよ
これでも私咲夜さんの何倍も生きてるんですからよ
恋をしたことだってありますし結婚だってしましたよ、子供は……できませんでしたけどね
…………そんなに珍獣を見たみたいに驚かないでくださいよ
まあ彼は人間でしたからもう死んじゃったんですけどね
悲しくなかったのかって?そりゃ当時は泣きましたよ、泣いて泣いて泣いて
それこそ泣かなかった日なんてないぐらいでした
でも、それでも私はあの人と結ばれたことを後悔はしていません
だから、咲夜さんも後悔はしないでくださいね
これは人生の先輩からのアドバイスとでも思ってください
○○さん、もう咲夜さん行っちゃいましたよ
私の話、聞いてましたよね?だったら私の言いたい事分かりますよね
咲夜さんにも言いましたけど後悔だけはしないで下さいね
ふぅ、二人とも世話が掛かるなぁ
でも、あの二人を見てると昔のわたしたちを思い出すなぁ……
あなた、私は今日も元気であなたを愛しています
美鈴は妖怪で長生きだから昔結婚しててもおかしくないんじゃないか?
って事で書いてみた美鈴しか喋ってないけどwwww
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8スレ目 >>430
「フラン!早く部屋に戻りなさい!!」
「やだっ!もうあんな暗いところは飽き飽きよ!!」
紅魔館の中を縦横無尽に走り回るスカーレット姉妹、どうやら妹様があの部屋から脱走なされたようだ
「○○!フランを止めなさい!」
「ええっ!?私が!!?無理です!無理です!!」
「ゴメンね○○」
俺の横を抜ける時に妹様は確かにそういった
すぱっ、っと綺麗に腕を切られてしまった
「ちぃっ!あのバカ妹!!」
そう言ってレミリア様も何処かへ行かれてしまった
「・・・切られ損・・・左腕どうしようかなぁ」
俺は吸血鬼(出来損ない)なのでこれぐらいはなんとも無いが・・・痛いorz
とりあえず切られた左腕を拾って途方にくれた
「パチュリー様、治癒魔法って使えます?」
仕方がないので図書館へと足を運んだ
紅魔館の頭脳!引きこもり!エレメントマスター!喘息患者!
魔法使い
パチュリー・ノーレッジ
彼女に聞けば大抵の問題は解決してしまうのだが
「咲夜に頼めば?彼女裁縫は得意よ?」
「いや・・・治癒力が弱いもので・・・」
「貴方腐っても吸血鬼でしょ?表面さえくっつけば遅くとも1日ぐらいで治るはずよ」
彼女はすぐに読書に意識を向けた、こうなってはもう言葉も届かないだろう
仕方がないので咲夜さんの所へ
「腐っても吸血鬼か・・・ほんとに腐ってるから笑えないなー腐った死体に改名しようか」
「何をブツブツ言ってるのよ、怪しいわよ」
「あ、咲夜さん、丁度いい所に」
「?」
これまでの経緯を説明し左腕の表面をくっつけてくれるようにお願いした
腕の接合なんて嫌がられるかと思ったがすんなり受けてくれた
「貴方も吸血鬼何だから避けるなり受けるなりしなさいよね」
「は、ははは・・・」
「ちょっと!?こんな事で落ち込まないでよ!」
「いや・・・此処に来てから一度も役に立ってないな、と思って」
妹様に逃げられる、侵入者を止められない、掃除も料理も並以下
出来るのは夜の見回りとメイド達が出来ない力仕事ぐらい
「はぁ・・・俺は、駄目だなぁ」
「・・・少なくとも、メイド達は貴方の事頼りにしてると思うわ」
「そう、ですか?」
「優しいし、何でもよく気付くし、力持ちだし、家具の移動とか楽になったわ」
「・・・少しでも役に立ててるなら幸いです」
「私は・・・貴方が此処に来て最初は胡散臭いと思ったけど・・・今は、大好きよ」
「へ?・・・え?大好きってその・・・」
「さぁ、腕もくっついたし、仕事に戻りましょ!」
「あ、ありがとうございます、あ、あの、咲夜さん?」
「ん?」
「それってどういう
彼女は優しく微笑んで部屋から出て行った、俺はその笑顔があまりにもまぶしくて思わず見とれてしまった
それ以上に自分で何を言われたかまだ理解できないでいた
「―ッ!」
彼女の言葉と微笑を、理解したと言うか、思い出したというか
とたんに恥ずかしくなってその後は仕事にならなかった
「LOVEなのかvery LIKEなのか・・・うーん」
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8スレ目 >>671
「いらっしゃい・・・なんだ、君か」
里のはずれの方に建つ一軒の怪しげな家、いや正確には店、か
「お客になんだとは失礼ね」
其処に訪れたのはメイド服のパッdげふんげふん、十六夜咲夜だった
「頼んでいおいたのは出来てる?」
「ばっちり、あまり乱暴に使うなよ、すぐ刃毀れするからな」
そう言って数十本の短剣を渡した
「わかってる、けど投げナイフはもともと消耗品でしょ」
代金を払い、短剣を鞄にいれた
「・・・」
「・・・」
じっと見つめあう、よくわからないが張り詰めた雰囲気だ
「わかったよ、お茶飲んでいきなお嬢さん」
「ありがと♪今日もゆっくりしていくわ」
ナイフ研ぎで2時間も3時間も粘られるとは・・・しかし常連さんなのである
「・・・帰らなくていいのか、吸血鬼のお嬢様が待ってるんじゃないのか?」
「いいのよ、今日は一日休みだから」
「ふ~ん、お前さんにも休みがあるんだな」
「○○なんて毎日休みみたいなものじゃない、お客も私ぐらいでしょ?」
「そんなことは無い!へんな爺さんとか二刀流の幼女とかも来るぞ」
数年に一度だがね、週一で来るのは咲夜ぐらいだろう、客が少なすぎるが生活になんら問題はない
「それじゃ帰ろうかな」
「ん、気をつけてな」
店を出て、帰路に着いた
「・・・引き止めてはくれないか」
ため息を吐きながら、自然と言葉が出た
「やだ、これじゃまるで」
そう、彼に・・・恋してるみたい
「いつか、○○のほうから・・・お茶に誘ってくれないかな」
吐く息が白くなる、私の隣は空のままだ
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8スレ目 >>677
「○○ここの荷物を4倉庫にお願い」
「はい、解かりました」
最近は咲夜さんにあごで使われてばかりだ
掃除も料理もお茶も駄目な俺は重量級の荷物整理、深夜の雑草ぬき、深夜の門番
これぐらいしか仕事がないもんだから暇でしょうがない
暇な時間はフラン様の話し相手をしたり、レミリア様から有難い講釈を受けたり
パチュリー様から実験のサンプルを取られたり、そんな感じ
「お疲れ様、休憩にしましょう」
彼女は本当によく出来たメイドだ、一言で言えば堅い
でも、時折見せる少女のような一面に、おれはメロメロ(死語)だった
休憩時間のことだった、窓の外に話しかけてる咲夜さんをみた
霊夢さんとでも話してるのかと思ったら、小鳥に話しかけてた
いやもう、かわいいね、やばいよあれは
けっこう華奢でね、腕なんかすごーく細いのよ
前に大きめの荷物を持とうとしてね、持てたんだけど重くて足の上に落しちゃったみたいなんだよ
すっごい涙目でね、でも我慢してるんだよ
人目を忍んで痛かったーとかいってるのよ
いや、もうね、あのギャップ、惚れたよ
普段は完璧なメイドを演じてて、実はか弱い年相応の少女ってのはね、おじさんぐっと来るね
「○○ー!この荷物をー」
「はいっ!ただいま」
いけね、へんな妄想をしてしまった
「これとこれを、終わったら今日はおしまいよ」
せっかく腕力があるんだから、こういう仕事でがんばるしかない
咲夜さんが小さい荷物を運ぼうとしててを滑らせた
「ッ!」
落としたのはこの前と同じ足の上
「あ、この前と同じとこ・・・」
「み、見てたのね!?この前私が―」
「わーごめんなさいごめんなさい、偶然見たんですよー」
頭を庇って、下を向いた・・・あれ?
「咲夜さん!?血!足血がでてます!」
咲夜のエロいじゃなくてきれいな足の甲から血が滲み出ていた
「あら、ほんと・・・大丈夫よこれぐら「救護班!手当てをー」
「ちょ!?○○!?」
音より速く、咲夜を抱えて(もちお姫様抱っこ)救護が出来るメイドの所へ駈けた
「はい、これで大丈夫ですよ、意外ですねメイド長がうっかりミスで怪我だ何て」
咲く夜は少し恥ずかしそうに、俺は横で心配そうに、メイドは何だかニヤニヤしながら
「それじゃ私はこれで、あまり足に負担をかけないでくださいね」
「ありがと・・・ほかの子には黙っててよ」
「ふふふ、解かりましたよ」
「・・・よかったー」
「○○さん」
メイドにが耳元でボソッとしゃべって言った
「○○GJ!咲夜フラグげとー!」
意味不明な呪文を呟いて部屋を出て行った、何だあれは?
「○、○○・・・その・・・あ、ありがと」
これはヤヴァイ、いつも気丈な咲夜が、頬を染めて、素直に、礼を言ってる
少し申し訳なさそうな感じが可愛さを更に引き出して、これは・・・がんばれ理性!
「い、いえ、当然のことをしたまでですよ」
「・・・そうね、そうよね、貴方は誰にだって優しいよね・・・」
なぜそんな悲しそうな顔をするんだ、俺は君の笑っている顔がすきなんだ
曇った顔は、暗い顔は
「咲夜さん?なにか・・・」
「はは、なんでもないの、仕事に戻りましょ」
部屋を、出て行こうとした彼女の手を、握った、俺は彼女を引きとめた
「俺で、俺でよければ・・・話してください」
「そう、ね・・・私、好きな人がいるんだけどね、そいつは鈍くて、何処か抜けてるけど・・・とても優しいの、誰にでも・・・誰にでも優しいのよ」
咲夜さんに好きな人?俺は・・・いやだ、そんなのは嫌だ、でも・・・彼女は
「そいつ・・・幸せな奴ですね!咲く夜さんにこんなに想われてて」
黒い感情を押し殺した、でないと俺はきっと酷い事を言ってしまう、醜い
「・・・そうよ、こんなに想ってるのに、あの莫迦鈍くて・・・」
彼女の瞳を涙が濡らす、泣いている姿をみて、不謹慎にも、綺麗だと思った
「咲夜さん・・・泣かないで」
「誰のせいで泣いてると思ってるのよ!!ばかー!!!」
ぱしーん、と勢いよくびんた、そのまま彼女は走っていった
いたい・・・なんで俺が
「誰のせいで・・・・鈍くて・・・誰にでも・・・・・・」
彼女の言葉を思い返して整理して
「え・・・俺?もしかして、もしかしなくて俺?」
いや、この結論に至った事を妄想乙とか言われても構わない
彼女の言葉からは、行動からは、それが最も正しい―
「はっははは、俺が・・・咲く夜さんが俺を」
生まれて初めて、嬉しくて泣いた、嬉しすぎて笑った
笑いながら泣いた、そして走って行った十六夜咲夜の後を追って走った
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8スレ目 >>747・750
「なぁ咲夜、俺は・・・お前の事が―」
ぴぴぴぴぴぴぴがちゃ
「ん・・・夢だよね、あの人がそんな事・・・」
もう少し時計が鳴るのが遅ければ、あの人のセリフを
溶けるくらい甘いセリフが頭をよぎった、自分で恥ずかしくなった、馬鹿馬鹿しいと思って
「早く着替えなきゃ、仕事が」
すぐに着替え、身支度を済ませ仕事へと向かった
部屋を出た、瞬間何かにぶつかった
「きゃっ!」
どす、っと堅いものにぶつかった・・・あれ?
「大丈夫ですか!?咲夜さん?」
○○さんの胸、らしい、頭のすぐ上から○○さんの声がする・・・
「ご、ごめんなさい、私ったら急いでて・・・その」
あんな夢を見てすぐに○○さんに会っちゃうなんて、恥ずかしくて顔が見れない
「咲夜さん?どうしたんですか!?顔が赤いですよ?熱でも」
「大丈夫です、大丈夫ですから」
なんでもないからそんなに近づかないで!今は―
俯いてるのに○○さんの顔が正面に見えた・・・え?
おでこが、おでこが
あの例のあれ(おでことおでこで熱を測るの)
ぱたっ
私は私の倒れる音を聞いた
「あ、メイド長、気がつきましたか」
「ここ、は?」
「医務室ですよ、メイド長いきなり倒れたんですよ?」
「そうだ、○○さんは!?」
とんだ失態を見せてしまった、というか恥ずかしくてしょうがない
「かっこいいですよねーメイド長を軽々と抱えて医務室まで来られたんですけど」
私が知らないうちに私はいい思いをしてたらしい、意識がないのが悔しい所ね
「すっごくあわててましたよー、お姫様抱っこって絵になりますよね」
おおおおお姫様抱っこ!??きゃー
「もう大丈夫ですよ、熱中症という事にしておきますから」
メイドはさっきからニヤニヤしている
「ニヤニヤしないでよ、私だって恥ずかしいんだから」
「あ、いえいえ、そういうことではなくてですね・・・メイド長、いえ咲夜さんは○○さんにとってとても大切な人なんだなぁって」
「な、なにを」
「だっていつもクールで優しい彼があんなに取り乱して、あれだけ思われてる咲夜さんが羨ましいですよ」
「そんなこと・・・ないわよ、彼は誰にだって優しいわ」
「・・・まぁいいですけど、思ってるだけじゃ思いは想いのままですよ?」
「・・・ありがとう、仕事に戻るわ」
「はい、がんばってくださいね咲夜さん・・・陰ながら応援させてもらいます!」
「ふふ、ありがと」
「これからどうなるかwktkしますね」
「わくてか?」
きにしないでください
「咲夜さん!もう動いて大丈夫なんですか!?」
「ええ、全然大丈夫です、すいません、朝から迷惑ばかり」
「いえ、咲夜さんが元気ならそれでいいんですよ!迷惑だなんて、ぜんぜん」
この人が私を好き?私の大好きなこの人が、私を好きでいてくれるの?本当に・
「○○さん・・・今日は何時まででしたっけ?」
「仕事ですか?確か5時半までだったと」
「・・・6時に・・・中庭で、その・・・待ち合わせしませんか?」
「何か相談とか、ですか?」
「え、ええそんな所です、いいですか?」
「構いませんよ、それでは6時に中庭で」
その後はいつもどおりに仕事をした、仕事をすることで、少しでも気がまぎれればと思った
「メイド長!」
「な、なに?いきなり」
「○○さんを誘ったんですね~!」
「き、聞いてたの!?」
「聞いたんではありません、聞こえたんです、不可抗力であって自己の意思による選択の(ry」
「・・・今朝も言ったけど他のメイドには秘密だからね!?わかってる?」
「ええ、ちゃんと把握してますよ、こういう秘密は秘密にするからこそ面白いんですよ」
「・・・今夜は・・・がんばるわ、どんな結果であれそれを受け入れる」
「がんばってくださいね、私は咲夜さんを応援してますよ」
ほーほー ふくろうが鳴いてる、今は5時45分、私は少し早く来てしまった
待ちきれなかった、期待と不安に押しつぶされそうだった、早く楽になりたかった
楽になれるといいのにな
「せっかちさんですね、約束まであと十分ほどありますよ」
○○さんが、来た
「呼び出しておいて遅れるの失礼だと思って」
「そうですか・・・それでなぜ私を?」
言おう、言うぞ、言えっ!
「私はっ・・・」
声が震える、上手く声がでない、なんで!?
「私は」
恐怖か不安か、黒い感情で声が震える、悔しくて涙が出た
今朝とは違う、衝突ではなく抱擁、私は、彼に抱きしめられた
「何があってどういうことなのかは解かりません・・・でも泣かないでください」
あったかい、人肌がこんなに心地いいなんて
「○○さん・・・私・・・あなたの事が好きです、大好きなんです」
「咲夜さん・・・俺も言いたい事があるんですけど、いいですか?」
「は、い」
拒絶か、怖くなって身構えた、衝撃で、壊れないように
「俺は、○○は、十六夜咲夜が好きで好きでしょうがない、大好きだ・・・だから」
「○○さん・・・」
また抱きしめられた、いや今度は違う、お互いに、抱きしめ合った
私は、私たちは、自然と、お互いの唇を求め合った
「・・・よかったですねメイド長!ぐすぐす」
遠くから二人の様子を見守っていたメイドがぼろぼろ泣きながら喜んでた
レミリア様に朝早く咲夜の部屋を出て行く○○が目撃されてしまうのは別の話・・・
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8スレ目 >>807
「いらっしゃいませ~」
「こんにちは」
此処は調味料、珍味、漢方原料取扱店「ヰ茶主列度」
「こんにちは咲夜さん、今日は何をお求めですか?」
「パチュリー様の要望でね、この紙に書いてある物を」
「かしこまりました」
十六夜咲夜は既に買出しを終えたらしい、持っている荷物の量からするとうちが最後か
「大変ですね、買出しからお遣いから、館のあれこれ」
「もう慣れたわ、流石にね」
世間話をしながら商品を探し、揃えていく
守宮の尻尾~蜥蜴の青尾~♪コウモリこうもっり♪るるるー
「これで全部です、お化けきのこは切らしてるので、申し訳ない」
「じゃあそう伝えておくわ・・・」
…流石の咲夜さんもお疲れのご様子で
「これオマケしときますね」
「なにそれ?」
「栄養ドリンクヰ茶磨れすぺしゃる、です」
「…怪しすぎる、大丈夫よね?」
「少し飲んでみて駄目だったら門番か魔法使いに上げてください」
拳大ほどの瓶に容れられたワインレッドの液体・・・
とりあえず貰える物は貰う、ポケットにそっと仕舞った
「あの・・・えっと・・・来週がですね・・・その、休みなんですよ」
「久しぶりの休みですね、ゆっくり出来るといいですね」
「そうじゃなくて・・・その・・・よかったら、いえ、時間があればでいいんです!私と・・・その・・・」
ガラス細工を触るように、咲夜の唇に触れた、指だよ?
「お嬢さん、来週もしお時間が有れば、この私と、過ごしてもらえませんか?」
「あ・・・は、はいっ!喜んで!」
その晩、暗い部屋に一人、明かりを灯し瓶を眺める少女
「早く来週にならないかなぁ」
瓶の中で、真紅の液体がころがった
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9スレ目 >>411
ドアの閉まる音に首を向けると咲夜が立っていた。
「あれ、レミリア様のところにいなくてもいいのか?」
「ええ。なんだか体調が優れないとか言って、早々に寝ちゃったわ」
「ふうん。――ま、座れよ。紅茶と珈琲どっちがいい」
「それくらいなら私が……」
「いいって、俺にも少しはやらせろよ。で、どっちだ?」
「じゃあ……紅茶。美味しく淹れなきゃだめよ」
悪戯っぽく咲夜は笑う。いつも張り詰めたままの表情も年相応に見えた。
震える手で紅茶を渡すと、微笑んでそれに口をつけた。
「まあまあね。ま、ぎりぎり及第点って所かしら」
「……厳しいなぁ。結構自信あったんだぜ?」
「自信があっても結果が伴うとは限らないのよ。精進することね」
「妙に実感篭ってるな…。――まさか咲夜も昔は?」
「何のことかしら?」
「はは、じゃあ気にしないでおくぜ」
月が照らす部屋で俺と咲夜は小さな声で笑った。
誰が聞くこともない、笑い声が部屋に染み込んでいった。
「なんで私がここに、とは訊かないのね」
「恥ずかしいからな。あえて、だ」
「ふふふ、そう。じゃあ、恥ずかしいついでに踊りましょうか」
「おいおい、俺はステップなんて知らないぜ?」
「大丈夫、私が教えてあげる」
「そうか、なら安心だな」
「今宵、私の時間は貴方のもの。踊りましょう、日が昇るまで」
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最終更新:2010年05月16日 00:00