咲夜9



11スレ目>>189


「咲夜さーん!俺とつがいになって!!」
「こ、断らせてもらいますっ!」
ここは幻想郷、幻想になったモノが集まったりひっちゃかめっちゃかな場所・・・
「咲夜さん!俺の愛の歌を聴いてくれっ!!」
どれだけ走っても追いかけてくる男、名前は○○というらしい

「十六夜咲夜さん!俺の名前は○○と言います!結婚を前提に御憑き愛シテクダサイ!!」
「え、ええと・・・その・・・ごめんなさい」

うん、確かそんな出会いだった
○○は里に行くたび、正確に言えば私を発見するたびに、追いかけてくる
ナイフを投げようが、時を止めようが、お構い無しに
きっと亡霊か何かなんだ、だから物理攻撃は効かないんだ・・・あれを人間とは認めたくない
「嗚呼チクショウ、今日も逃げられた・・・咲夜さーん!まったねー」
彼なりの精一杯の譲歩なのか、紅魔館には入ってこない、買い物中も追いかけてこない
私は買い物をした帰り道に紅魔館まで逃げ切れれば勝ちなのだ、生存的な意味で
「・・・はぁ、疲れるなぁ」
「どうぞ」
「あら、ありがと・・・」
差し出された水は良く冷えていておいしかった・・・あれ?
「うわ、びっくりした、気配を消して背後に立たないでくれる?」
背後には銀のトレイを持ったメイドが・・・でも彼女は救護担当では?
「あらあら、メイド長が息を切らしてご帰還なされたのでせめて冷たいお水を、と思った私のおせっかいでしたね・・・およよよよ」
「も、もう人をおちょくるのもいい加減に」
「およよよよ」
今どきおよよよよなんて泣く人はいない、絶対にいない
「・・・水美味しかったわよ、ありがとう・・・これでいい」
「はい、それでいいんですよメイド長」
部下におちょくられるなんて・・・私もまだまだ
「あ、そうだ救ちゃん」
「はい、何でしょう咲夜さん?」
「じつはかくかくしかじかで」
「しつこくつきまとう男を撃沈し滅するにはどうしたら良いかですって?」
「い、いや、そこまでは・・・」





「あ、咲夜さーん、こんにちは!お買い物ですか?」
「・・・」
「元気ないですか?ど、何処か体が悪いとか」
「・・・い、いい加減にしてくれない?私も暇じゃ無いのよね」
「咲夜・・・さん?」
メイドに教わったとおりに、憶えた言葉をつむいでいく
「いい加減ウンザリなのよ、毎回毎回しつこく付き纏ってきて、私の身にもなってくれないかしら?」
「・・・そうですよね、俺みたいなキモ男の愚図の無職野郎に付き纏われて、そりゃ気持ち悪いし煩わしいですよね」
「え、いや・・・そこまでは」
「すいません、迷惑だとは思ってましたが・・・いけませんね、自分のノリを他人に押し付けて・・・ははは、やっぱり俺は生まれてこの方・・・」
ふらふらと、背を向けて歩き出した、そのとき私は始めて彼の背中を見た
彼は最後に今までご迷惑おかけしました、申し訳ない
そう言ってとぼとぼとリストラされた50代後半のサラリーマンのように、歩いていった
「あ・・・ま、待ちなさいよ!」
「・・・え?」
思わず呼び止めた、しかし言うべき言葉は何も考えていない、これはしまった
「え、ええと・・・そ、その程度なの!?私に拒絶されたぐらいで消える愛だったの!?私が拒もうがなに言おうが付き纏って、頑張りなさいよ!」
「さ、咲夜さん??」
自分でもなに言ってるかわからない、さっきとは真」逆のことを言っている、これではまさにあべこべ蛙だ
「私が諦めるぐらいまでがんばりなさいよ!むしろ私を惚れさせてみなさいよ!!どうなの!?」
「・・・」
○○完全に沈黙
そりゃそうだ、自分でもなに言ってるか解らないのだから、どっちをどう受け取ればいいか混乱もするだろう
付き纏うなといったり、付き纏えといったり
「咲夜さん・・・」
もしかして怒らせてしまったのかもしれない、嫌われたかもしれない、それは少し、寂しい気がした
「え、えっとね○○、何が言いたいかというとね」
「咲夜ぁぁぁぁぁ!!好きだぁぁぁあああああ!!!愛してる!俺と夫婦に!仲睦まじい夫婦になってくれっ!!」
条件反射で私は走り出した、紅魔館に向けて
「待て、俺の話を聞いてくれ!!まず俺が君の何処に惚れたかをだな」
「いい!聞きたくない!」
「まず几帳面な所だ!しかし里に降りてきて雑貨屋などで可愛らしいアクセサリーを見つけたりすると周りを確認してちょっと着けてみたりなんかして」
「や、やめて!というかなんでそんなことまで!!?」
「俺はその雑貨屋の息子だぁぁ!!」
紅魔館はもうすぐだ、門の内に入ってしまえば、美鈴に撃退してもらうなり、なんなりとできる
「おお!?」
「はぁ、はぁ、はぁっ・・・今日も逃げ切ったわよ」
「ぐ・・・残念無念・・・また明日」
とびきりの笑顔で、彼は笑った、そして大きく手を振って帰っていった
「・・・嵐というより竜巻のような、男ね・・・」
「咲夜さん・・・アレはいったいなんなんですか?」
呆気にとられて動けないでいた美鈴が、やっと話せた一言は、当然の疑問だった



「それで、結局元に戻ったというより、余計にパワーアップさせちゃったわけですか」
「わ、笑うなら笑いなさい、私だって莫迦な事をしたと思ってるわ」
莫迦な事をした、そういう割には、いい顔をしていらっしゃる
私を惚れさせてみろ、か・・・なんだ、とっくに・・・
「・・・咲夜さん、きっと毎日楽しいですよ、今までどおり、これからも」
「救、ちゃん?」
「人生は短いんですから、全力疾走で楽しみましょう」
「太く短く生きろって奴?」
一度きりの人生、彼のように色恋に生きるもよし、私のように人をおちょくるもよし、咲夜さんのようにいっぱいいっぱいでも、それでもよし

「それじゃあ救ちゃん・・・いろいろありがとね、仕事に戻るわ」
ほかの子にはナイショよ、そう言ってメイド長は救護室から出て行かれました
私としてはもう少しドタバタしたほうが面白いと思うのですが、残念な事にあっさりとカップル成立のようです、正確に言えばまだ成立はしてませんが
「あー・・・個人的には傍観が一番楽しいと思うのですがねぇ」
いつも見てばかりですが見られる側をした事が無いのでなんとも言えません
でもメイド長を見ていれば、恋とか愛とかも、悪くないのかもしれません




「咲夜さーん!大好きですッ!」
「私もよッ!!」
「・・・・ええっ!!?ちょ、おま」

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11スレ目>>271


 「……何だ、これ?」

 紅魔館の周りを散歩していた所、小さくて円柱状のビンが落ちていた。
 いや、落ちていた、というよりは置かれていた、という表現の方が正しいだろうか。
 中には液体が入っていた。誰が置いていったのだろうか。
 もしかしたら、危ない物とか?
 どちらにしろ、この怪しい物を放っておく訳にはいかない。
 こういうのに詳しそうなのは……パチュリーさんかな。


 「……ごめんなさい。これは私には分からないわ」

 図書館へと伸びている廊下を歩いているとき、咲夜さんを見つけたのでこのビンについて聞いた所、残念な回答と共にビンが返ってくる。

 「そうですか……」
 「パチュリー様なら知ってるかもしれないわ」

 そう言いながら、咲夜さんは図書館があるであろう方へと目を向ける。
 もちろん、俺の目的地は最初からそこだった。そもそもパチュリーさんに聞く予定だったのだから。

 「じゃあ、パチュリーさんに聞いてみます。呼び止めてすいませんでした」

 咲夜さんの脇をすり抜けて、本来の目的地へと向かう。

 「――ちょっと、待っていなさい」

 咲夜さんのいた場所から声が聞こえた。
 しかし、その声を聞いている間に咲夜さんはいつの間にか俺の目の前にいる。
 その手に、ビンを持ちながら。

 おかしな話である。
 咲夜さんが目の前にいるのに、別の場所から声が聞こえるのだから。
 しかも、手に持っていたビンはいつの間にか目の前の人に渡っている。
 でも、それはこの人だから出来る。

 「……時間弄ったんですか」

 自分でも分かるほどに呆れていた。
 そんな簡単に時間弄っていいのだろうか。

 「えぇ、ここからは少し遠いから……それよりもこのビンの事、パチュリー様から聞いてきたわ」

 咲夜さんはそっぽを向きながら話す。
 その頬が、少し紅く染まっている気がするのは、気のせいだろうか

 「聞いてきてくれたんですか? 何て言ってました?」

 俺が聞くと、咲夜さんはその頬の熱を感染拡大させたのか、顔中を紅くした。
 何か面白い事でも聞けたのだろうか。そうでも無ければ、いつも冷静に仕事をしている咲夜さんがこんな顔をするはずがない。

 しかし、その回答は予想に反した。

 「その……パチュリー様にも分からなかったみたい」

 ……そうですか。

 「でも、毒は無いから、飲んで確かめてみるのが早いと」 

 ……そうなんですか。

 「だから、あなた飲みなさい」

 なるほど、俺が飲んで確か――え?
 今、なんと仰いましたか。

 「ほら、早く飲みなさい」

 相変わらず、そっぽを向いたまま、ビンを俺に突き出してくる咲夜さん。
 いや、その。

 「の、飲めと言われましても」
 「だ、大丈夫よ、害は無いんだから、死ぬことは無いわよ」

 俺だって疑う人間ですから。
 毒は無いけど、何の効果か分からない液体。
 そんな物。

 「の、飲めるわけじゃないですか! そんなの飲んで変なことになったらどうするんですか!?」

 こんなのを疑いも無く飲むなんて、人間としてどうかしてる。
 いや、存在するものとして、かな?

 「……飲まなかったら一週間不眠不休で働かせるわよ」
 「なっ……!?」

 どこまで飲ませたいんだ、この人。
 メイド長の指導の下で、不眠不休の仕事。
 少しでも休もうものなら、問答無用で殺人ドール。
 生きていられる訳が無い。
 だったら、毒は無くても飲んだほうがいい、の、か?

 「わ、分かりましたよ……飲めばいいんですよね?」
 「えぇ、よく分かってるじゃない」

 瞬間、満面の笑み。顔は相変わらず真っ赤だけど。
 ビンを受け取り蓋を開ける。
 えぇい、何だ。この間、誰のかも分からない血を原液で飲まされたばかりじゃないか。
 そんなのに比べれば、これくらい!

 ――ゴクッ。

 味はしなかった。ただ、少しヌメリとした感触がある。味はしないはずなのに、喉に少し残る感じがある。
 あまり、良い気分はしない。一口で飲みきれる量だったのが、せめてもの救いだ。
 効果は、その後すぐに現れた。
 急激な目眩。立っていられなくなってその場に倒れた。

 咲夜さんが顔色を変えて寄ってきた。
 飲ませたのは貴女でしょうに。
 咲夜さんが呟くように言った。よく聞こえなかったけど、確かに聞こえたのは"言ってなかった"。

 くそぅ、やっぱり答え聞いてきたな!?

 どんな答えかは知らないけど、ここまで苦しむとは思ってなかったのだろうか。
 全く、人を何だと思っているんだ。
 負の思考全開で苦しみ抜いて、やがて引いてくる目眩。落ち着いた頃には、廊下の天井をボーっと眺めていた。

 「う……あ……」

 喉が痺れているようで、しっかりと声を出せない。
 身体を起こそうとしても、気だるくて起きられない。
 どう考えたって、毒入りだった。騙されてしまった訳だ。

 横を見ると、咲夜さんがこちらを見ていた。
 皮肉気味に笑みを作る。が、上手くいかない。
 笑えてはいるんだけど、その大事な「皮肉」部分を表現できていない気がする。
 やがて、咲夜さんは呟いた。

 「……可愛い」

 は? 一人の男に向かって"可愛い"ですと?
 いつでもどこでもかっこよさを求めている男に向かって"可愛い"は男としてのプライドをひどく傷つけることになる。
 もちろん、俺もしっかりとした男ですから、凄く凹む訳でして。

 凹んでいると、抱きしめられていた。
 全身をしっかりと腕の中で包み込まれて、咲夜さんの中にいる状態。
 凄く良い匂いがする。忙しくても、その辺は気を使っているんだなぁ。
 相変わらず、すっぽりと包み込まれてしまっている。

 ……あれ? 俺そこまで小さかったっけ?

 しばらくそうしていて、喉の痺れと、全身の気だるさが取れてきた。

 「あ、あの……咲夜さん?」

 咲夜さんの中から何とか抜け出し、声を出す。その声は、いつもの俺の声ではない。
 確かに俺の声に似てはいる。けど、声は高くて、まるで声変わりの前のようで――

 「……うわ!」

 自分の身体を見回して状況把握。

 ――身体が、巻き戻ってる。

 つまり、子供になってしまった。

 「ちょ、咲夜さん……この状況、説明してもら……」

 目の前の人を見る。
 その人の目に、いつもの完全で瀟洒な従者の目は無かった。
 これは、ヤバい。この人からは逃げたほうがいい。
 本能から警鐘が鳴っている。

 「し、失礼しました!」

 それに従い、咲夜さんとは逆方向に駆け出してこの場から逃げる。
 いつもよりも、地面が近い。
 走る足が、いつもより遅い。
 巻き戻ることによって、こんなにも不便になるとは。

 自分の部屋はどこだったか。ここの突き当たりを右に曲がって最初の扉……!

 突き当たりの廊下を曲がったところで、何かにぶつかった。
 予期しない衝撃に速度を殺せず、その大きな反動に尻餅をついてしまった。

 「ごめんなさ――」
 「どうしたの? そんなに慌てて」
 「…………」

 目の前にいたのは、我らのメイド長、咲夜さま。
 また、時間を止めたんですね。
 俺が苦笑を浮かべると、
 その人は満面の笑みを浮かべながら俺を抱き上げた。


 気付けば、メイド服姿で咲夜さんの部屋にいた。
 言われて気付いたけど、俺は身体が小さくなっている訳だから服とかぶかぶかな訳で。

 「それはそれで凄く萌――いえ、何でもないわ。とりあえず、新しい服を用意してあげるわね」

 そんな風に言いくるめられ、まずは咲夜さんの部屋へ。

 そして出てきたメイド服に批判したところ、人様には言えないような事をされ、みっちりと身体に仕込まれた。何が、とは言わない。
 メイド服は着せられ、一人称を"僕"に改められた。しかし、地まではさすがに調教できないだろう。俺は"俺"である。
 更に、咲夜さんの事は名前の後に「おねーさん」を付ける事に。
 短時間でここまで仕込まれた。もう俺の心身の八割は咲夜さんに染められている。

 「いよいよ最後の仕上げね!」

 そう言う膝立ち状態の咲夜さんの表情は今までに見ないくらい、楽しそうだった。
 もう逆らえない身体となってしまっている俺は、これで最後、と言う事に対する安堵と、この最後に何をさせるのか、という恐怖感で一杯だった。
 ちなみに、咲夜さんの膝立ち状態と俺の立っている背は全く同じである。

 「○○、次の言葉を言いなさい。いいわね?」
 「いいわね……?」

 いや、待て。そこは復唱する所じゃないだろ。しかも首を傾げるオプション付き。
 自分でも突っ込んでしまうほど、色々とみっちり仕込まれてしまったらしい。
 これは呆れられたか、お叱りかな、と思っていたのだが。

 「あぁ、もう可愛い!」

 銀髪の弾丸が飛んできた。瞬く間に腕の中へ。

 「もう大目に見ちゃう! おねーさん大目に見ちゃう!!」
 「…………」

 この溺愛ぶり。何と返せばいいのか、分からない。

 何というか、新鮮だった。
 あの完全で瀟洒だった咲夜さんが、こんな風に変わるなんて。
 そんな咲夜さんの違った一面が見れて、何となく嬉しい気持ちになっていたのかもしれない。
 気付いたら、俺は既に戻れない状況に立たされている事に気付かないまま。

 とりあえず、この状況から一刻も早く抜け出したい。

 「あの、咲夜おねーさん。さっきの続きを――」

 俺が言うと、咲夜さんはハッと我に返り、俺から離れると膝立ちの状態で言った。
 そして、少し焦れ気味に先ほどの続きを始めた。

 「『僕のお嫁さんになって下さい』。はい、復唱」
 「え、えぇ!?」

 何を言わせますか、このメイド長。
 とても楽しそうな顔で。
 とても期待に満ちた眼で。

 その顔が、今はとても怖い。

 「はい、復唱」

 もう一度、促す。
 既に調教し尽くされているこの身体はいとも簡単に言うことを聞いてしまう。

 「さ、咲夜おねーさん、僕のお嫁さんになって下さい」

 だから、変なオプションを付けるな、と。
 変な所でツボ突いちゃダメだろ。
 知らない自分が、更に上を目指している。

 「あぁ、もう可愛すぎる! しかも名指しなんて!」

 そして二発目に打たれた銀髪の弾丸。狙いはもちろん、俺。
 今度は頬ずりされながら腕の中へ。

 「もうお嫁になっちゃう! おねーさん何度でもお嫁になっちゃう!!」

 何度でもお嫁って、結婚して離婚して結婚して離婚してを繰り返すつもりですか。
 それはそれで疲れる話だ。

 「さぁ、もう一度言うのよ!」
 「咲夜おねーさん、僕のお嫁さんになって下さい」
 「もっとよ!」
 「咲夜おねーさん――」


 何度もせがむので、その度に同じことを言ってあげた。
 最後の方はほとんど機械的になってしまったが、鼻血を噴いていたので、きっと問題は無いだろう。

 で、大変な事になったのはその後で。
 咲夜さんは止まらない鼻血を手で押さえながら、興奮冷めやらぬ様子で俺に言い放ったのだ。

 「あなたはこの部屋から出ることを一切禁じます。安心しなさい、食事は用意してあげるから」

 食事とそういう事が問題なんじゃない。この部屋から出られない事が問題なんだ。
 しかし、既に調教完了されている俺にそんな事を言えるはずも無く。

 「分かりました。咲夜おねーさん」

 と笑顔で答えるしかなかった。
 咲夜さんは美人だし面倒見も良いからこれでも良いかな、なんて少しでも思ってしまった自分がいた。




 で、これは一体いつになったら戻るんだ? 

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11スレ目>>481


「・・・ぐっすり寝てるじゃ無いか」
ここは紅魔館、明日は(日付が変わったので正確には今日)クリスマス!
俺は愛しのメイド長にプレゼントを渡すためこうやって侵入しているのだ!!
「靴下は・・・無いなぁ、下げとけっての」
とりあえず枕元はなんなんで横のテーブルの上にマフラーやらなんやら詰まった袋を置いといた
「さて、もうちょっと寝顔を見てたいけど・・・退散しますか」
「んっ・・・え?・・・し、侵入者!!」
寝間着のはずなのにどこからか取り出したナイフをこちらに投擲する、何とか避けたものの頬を掠っていった
次々に投げられる銀のナイフ、雪に喩えるには鋭すぎるそれを何とか避ける
部屋から出てもまだ追ってくる、いっそ窓を突き破って逃げようか、でも空飛ぶそりも天かけるトナカイもいないのだ


ぐっすりと寝ていたら物音がした
部屋を見渡したら真っ赤な服で髭もじゃの男が部屋を物色していた
「なっ!」
返り血で真っ赤に染まった服、長い髭と狂気を孕んだ眼
一瞬で解った、不法侵入者だと
ベットの下に隠し置いてあるナイフを取り、投げた
しかし男はそれを難なくかわすと脱兎の如く部屋を飛び出していった
「逃がすか!」
私は寝間着のままナイフのホルダーを持って男を追った


サンタ服は凄く動きにくい、ブーツは愛用のものをはいてきたのだが・・・
ヒュッ
風を切る音と同時にナイフが飛んできた、角で引き離したと思ったんだがもう追いつかれたらしい
「ヘイ嬢ちゃん!この格好見てわかんないか!?俺はサンタだ!サンタクロースだ!アンダスタン?」
「ああなんだ、それは失礼しました・・・なんて言う訳ないでしょ!!」
「うをっ!?おま、死んだらどーする!!?」
相手をするより逃げた方が得策、そう思って背を向けて走り出した
「え?」
前方後方いや、輪のようにナイフが俺を囲んで―
「殺人ドール・・・殺った」
赤い服はズタズタに切り裂かれ、体に無数のナイフが
「・・・び、びっくりした」
「!!?ふ、不死身!?あれ・・・そういえばこの声・・・あれ???」
「ちゃーんす!!」
窓の外に木を見つけた、これを逃す手は無い
「さよならお嬢さん、良い子はゆっくりおやすみ」

ぱりーん・・・がさがさどすん

「・・・○○・・・よね、あの声」
あんな変な格好をしてたし、髭で顔がよく見えなかったけど・・・全然気付かなかった
「・・・・・・サンタのつもりだったのかしら」
随分赤黒い服だったし、ブーツは軍人みたいだったし、挙動不審でにやにやしてたし
「・・・もしかして・・・プレゼントとか・・・期待してもいいのかしら」
○○が私の部屋にあの格好で侵入するなんて
①いやらしい目だったから、夜這いかしら
②サンタの格好してたし、プレゼントしかないでしょ

莫迦な考えをしながら部屋に戻った、投げたナイフを回収して
「・・・②か」
テーブルの上にはラッピングされた袋が置いてある、幸運にも傷一つ無い

がさがさ、ごそごそ
マフラー、たんぜん・・・ぬくいなぁ、丁度欲しかったのよー
マフラーを巻いてみようと広げた時、床に何かが落ちた
音からして何か重いもの、金属か石?
「あ・・・」
拾い上げたのはお月様のペンダント
ガラスか水晶かダイヤか、違いは解らないし、そんな事はどうでもいい
ドッグタグみたいな飾りの裏に「Merry Christmas!」とだけ書いてあった
「・・・初めて、クリスマスプレゼント・・・」
寝ないといけない時間だけど、嬉しくて目が覚めた
それに、こんなに涙が溢れているのに眠るのはむずかしい
この気持ちをもう少し噛み締めていたと言う思いもあったから



「あー・・・寒い、咲夜に殺されるところだったぜ、やっぱり紅魔館へいく時はチェーンメイルが欠かせないな」
ずたずたに切り裂かれたコートを羽織って、ゆっくりと歩いていく
外じゃ「ホワイトクリスマス」何て盛り上がるんだけど・・・黒幕頑張りすぎ
「はぁ・・・喜んでくれるといいんだけど・・・ねぇ」
ぼすぼすと音を立てて雪道を踏みしめ、えっちらおっちらと家に帰るのだった



メイド曰く
メイド長がメイド服の上からたんぜん羽織ってマフラーしてた、何か凄く不自然だった
門番曰く
凄く暖かそうなのでちょっと貸して欲しいといったら殺されかけた、よほど大切なものなのか
匿名曰く
以前より怒らなくなった、柔らかくなった?と言う印象を受けるようになった
匿名希望
怖くないメイド長というプレゼントをありがとうサンタさん!

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11スレ目>>503


今日は12月25日。所謂クリスマス。
もっとも、ここ紅魔館においては関係のない話だけれど。

数年前までは物珍しさからか毎年パーティが行われていたのだが、やはり吸血鬼がクリスマスを祝うのは
おかしいと思ったのか、そもそもクリスマスというイベント自体に飽きたのかは定かではないけれど近年は特に何事もなく過ごされている。
まあ、その方が私も楽ができるので特に問題はない。





「○○、そこの掃除が終わったら休憩に入っていていいわよ。」

年末に向けて大掃除に励む○○に一声かけておく。彼のことだから、きっとそれなりの時間働き詰めだろう。
全く、某門番も彼の十分の一でいいから真面目だと嬉しいのに……。

「いえ、今日は少し用事があるのでなるべく早く片付けてしまいたいのですが……。」
「それなら別に良いけど。あまり根を詰め過ぎないようにね。」
「はい、有難う御座います。」

そう言って廊下の奥へ消えていく彼を見送る。
そういえば今日がクリスマスということは、彼がここに来てからもう一年が経つのか。





確か、初めて会ったのも今日のような重苦しい曇り空の下だった。

里へ買い物に行った帰り妖怪に襲われている彼を見つけ、気まぐれに助けたのが全ての始まり。
外の人間だと聞いて、お嬢様への手土産にでもしようと思い連れて行ったのだが、館の人妖に妙に気に入られてしまい執事という形で雇う事になった。

本人曰く、一流のホテルで働いていた、というだけあって立ち振る舞いは洗練されているし、非常に役立ってくれている。
実際彼が来てから随分と仕事が楽になったと思う……そのせいで余計に妖精メイド達が働かなくなった気もするけれど。


一年前にはこの館に存在さえしていなかったというのに、今では彼のいない紅魔館なんて考えられないような気さえするのだから本当に不思議なものだと思う。





「クリスマス、か。」

自然と溜息が漏れる。パチュリー様によるとクリスマスというのは恋人と二人きりで過ごすものなのだとか。
彼と二人で過ごせたら……なんて、全くもって似合わない。


結局彼に惹かれ始めたのはいつだったのだろう。今年の春ここに残る事を選んでくれたときか、それとももっと前から……。

「あら、咲夜が溜息なんて珍しいわね。」
「お、お嬢様?!申し訳ありません少し考え事を……。」

聞きなれた声に思考に沈みかけていた意識が急速に引き上げられる。
見苦しいところを見せてしまった。お嬢様に声をかけられるまで気付けないとは、そうとう重症かもしれない。

「○○の事で頭が一杯なのはわかるけれど、もう少し周りに気を配ったほうが良いんじゃないかしら。」
「なッ、何を仰るんですか?!私は別に……。」

ニヤニヤと、それこそ悪魔のような笑みで問いかけてくるお嬢様。最近はこの話でからかわれっぱなしだ。
そして毎回無駄だとわかってはいるが必死の抵抗を試み、余計に楽しませるはめになるというパターンを繰り返している。
いい加減飽きてほしいのだけれど、この分だと当分はこのままかもしれない……本当に溜息が出る。



「それはともかく、私は●●のところに行ってくるから。今日はもう自由にしていていいわ。」
「畏まりました。行ってらっしゃいませ。」

クリスマスは恋人と、か……お嬢様が少し羨ましい。

「あ、そうそう。咲夜もこの機会に○○に告白の一つでもしてみたらどうかしら。」
「え……?」
「やっぱり想いは伝えないと、でしょう?」
「え、え?」
「せっかくこんな良いイベントがあるのだから、有効利用しないと駄目よ。」
「あ、あの、お嬢様?」
「それじゃ、頑張りなさいよ。」

言いたい事だけ言って、さっさと飛んでいってしまう。無責任すぎる、と言っても結局無駄なんだろう。
正直いきなり告白なんて言われても、どうすればいいか……でも、お嬢様の言う事も正しいだけに無視は出来ない。
クリスマスも残りはあと数時間になってしまっている。










彼と二人きりで、彼の作ったディナーを食べる。それ自体は別に珍しい事ではない。
お嬢様や美鈴と一緒に夕食をとることはないし、妹様やパチュリー様にいたってはそもそも自分の領域から出てくる事が稀だ。
だから彼と二人での夕食という事自体には慣れている、慣れてはいるのだけれど……お嬢様のせいで妙に意識してしまう。

「メイド長、どうかされましたか?」
「え、いや、何でもないわ。大丈夫。」
「それなら良いのですが……。」

声をかけられただけなのに、心臓が飛び出るかと思った。きっと美味しいだろう夕食の味もほとんどわからない。


私は彼のことが好きだ、それははっきりと自覚している。でも、こんな状態では告白はおろかまともに会話すら出来ない。
これで『完全で瀟洒な従者』とは自分で自分が情けなくなる。目の前ではすでに食べ終わった彼が片付けを始めたところだった。
全く、こちらの気も知らないで、というのは少し自分勝手過ぎるか。





「メイド長……少しお時間を頂いてもよろしいでしょうか。」
「何、かしら。」

食事が終わり、紅茶を飲んでくつろいでいると唐突に彼から声をかけられた。
少し珍しい真剣そのものの彼の表情に一気に心拍数が上がる。もしかしたら、なんて思うのは自惚れ過ぎか。

「これを。」

彼の言葉とともに差し出される綺麗に飾られた小さな箱。

「開けてもいいかしら?」
「ええ、もちろん。」

期待と不安で心が破裂しそうになるのを抑え、丁寧に包装をはがしていく。

「ネックレス……?」
「今日はクリスマスでしょう?いつもお世話になっているお礼です。」
「ありがとう、大切にするわ。」

私の答えに満足したように微笑む、彼。
『いつもお世話になっているお礼』か、あまりに都合の良い期待をしていた自分が情けない。
それでも、少なくともある程度良い感情を持たれているのはわかった。それだけでも充分嬉しい。あとは少し勇気を振り絞るだけ……。


行くしかない、と決意を固めた瞬間彼がポケットから再び小箱を取り出す。

「……」
「あの、○○……?」

『開けて』と視線で促され、先程と同じように包装をはがしていく。





中身を見る。あまりにも有り得ない出来事に頬をつねりたい衝動に駆られるが、彼の前なので我慢する。
しかし、これは……つまりそういう意味だと受け取ってもいいのだろうか。いや、やっぱり有り得ない、そんな訳はない。でも、もしかしたら……。

「指輪……気に入ってもらえましたか?」
「え、ええ……これも『いつものお礼』……というわけではない…わよね?」
「これは……私の気持ちです。」

箱の中に入っていたのは、ダイヤのあしらわれたシンプルな指輪。
デザインこそシンプルだが、非常に精巧に出来ている。幻想郷でこれだけのものを買うとなればそれなりに高額になるだろう。
ここまでくれば流石に疑いようもない。

「咲夜さん、私はあなたのことを愛しています。」

指輪と同じようにシンプルなプロポーズ、それでも私の涙腺を決壊させるには充分な威力だった。

「……私も……あなたの事が…好き。」

半分鼻声になりながらそれだけ言うのが精一杯で、そのまま彼に優しく抱きしめられる。

「……良かった。」

心底ホッとしたような彼の声にさっきまで悩んでいた自分が馬鹿らしく思える。こんな事ならさっさと告白でも何でもしてしまえば良かったのに、と。
まあ、そんな事が出来れば苦労はしていないし、彼からのプロポーズの言葉が聞けたので良しとしよう。





しばらくして落ち着くと、私は彼へ何も贈るものを準備していない事に気付く。
こんなことならクリスマスプレゼントの一つでも用意しておけばよかった、と今更ながらに後悔するがどうにもならない。
彼はそんな事は気にしないのだろうけれど、これでは私の気がすまない。

「○○、ごめんなさい。私は何も準備していなくて……。」
「別にいいですよ、見返りが欲しかった訳じゃないですから。」
「でも……。」

彼は少し考えるような素振りを見せ、何か思いついたようで再びこちらに向き直る。

「それじゃあ、今日の残り数時間、ずっと傍にいて下さい。」
「そんな事で良いの?」
「ええ。クリスマスは恋人と二人きりで、なんて素敵じゃないですか。」

少し恥ずかしそうに笑う彼。その意見には賛成だけれど、結局私からは何もあげられていない。





だから、せめて。


これからもずっと。


命尽きるまであなたを愛すると誓おう。


聖なる夜に誓いの口付けを。





「あなたが望むなら……今宵私の時間はあなたのもの。」

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10スレ目>>478


――俺は、最高の幸せの瞬間にいる


〇〇の時間は、私だけのもの
〇〇の存在する空間も、私だけのもの
〇〇は、私のことだけを考えたまま、凍り付いた時と空間で存在し続ける
最高の方法だ。 片時も離れることがなく、片時も心が通じ合った瞬間が終わらない
ついでに、人間として老い、醜くなる私の姿を〇〇に見られることもない。


――俺は、最高の幸せの瞬間にいる


「ねぇ、咲夜。最近〇〇を見ないけど、人里に帰したの?」

「里にはいないと聞いてますわ。元々外の住民ですから、里心でもついてそちらに帰られたのでしょう」

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10スレ目>>530


この時間帯なら咲夜さんも空いているだろうか…。


ちょっと会ってこようかな・・・・・。



あ!さ、咲夜さん・・・!えぇっと、その・・・・。

ず、ずっと前から好きでした!ぼ、僕と付き合ってください!!

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最終更新:2011年03月27日 22:01