咲夜12



うpろだ1062


紅魔館――――――――幻想郷に来てから身を寄せている場所だがここに来てまだ2年ほどだ。

待遇的には「傭兵」。とはいえ館内が主で外出は稀だ。

「○○。お疲れ様。悪いけどちょっと手伝ってくれる?」

十六夜咲夜。ここに来るきっかけになった人物だ。通称「咲夜さん」。

「了解。援軍が来たからには安心かと」

こういう仕事は慣れている。ここに来るまでこの傭兵の肩書きのおかげで多種多様な仕事をしてきた。

ちなみに今日の収穫は街で買った懐中時計。

「ふぅ…依頼終了と。ところでこのビー玉もどきの正体とか知らない?」

ここに来てからなぜか持っていた赤・青・緑・白・黄の「ビー玉もどき」。正直自分でもよくわからない。

「頭の中までは完璧じゃないし…図書館にでも行けばいいんじゃない?」

「あ。そっか…パチェならわかるかな」

夜が明けてから着替えて行ってみる。結構図書館には行く方だ。


―――傭兵移動中&受講中―――


ヴワル魔法図書館。幻想郷の中で本の量が一番多そうなこの館の書斎。ちゃんとノックはする。

「開いてるからどうぞ…ゲホっ…」


極端に短い相槌。パチュリー・ノーレッジ。この図書館の主で喘息持ち。見ていてハラハラする。

「珍しいモノ持ってるじゃない。興味深いから見せてくれる?取ったりしないから」


………新手のカツアゲかこれは。流し目で見られると妙な緊張感が走る。いや…むしろ威圧感か。


見せてみると大体分かったのかジト目で話し出した。正直ジト目は怖いが結構いい話は期待できる。

「この5つの玉には霊獣が宿ってる…それぞれ強大な力を持つ霊獣がね。とりあえず座って」


霊獣なんて見たことも信じたこともなかった。淡々と話されるこの玉の能力。とりあえず座る。

「この4色…四神は今の状態で使えるけど黄色は今はダメ。下手すれば――死ぬ場合もあるから」


そんな現代で言えば核兵器やら放射能やら地雷原みたいな代物が混じってるとは思っても見なかった。

「この黄色い玉は麒麟…この子達のリーダー格…言って見れば頂点に君臨する存在」


黄色い玉はまだ無理だとしても意外に使える能力が多いことがわかっただけでも収穫だ。

「死にたくないならこれは絶対使わないこと。どんな状況でも。泣く人…いるでしょ?」


咲夜さんのことはバレてたらしい。紅魔館のブレインには及ばないか。

「守ってあげてね…あの子…ホントはすごく脆いから」



ここまで洞察力があると敬服どころか畏怖に値する。そろそろ戻るか。


―――傭兵移動中―――



「どう?答えは出た?…何その目。この私と弾幕張ろうって目?」

「ちょっと四神の力ってのを試したくてさ。時間あれば軽くでいいから」

「アンタねぇ…後悔しても知らないからね。少し待って。用意してくるから」


場所は近くの森上空。早くも咲夜さんは本気モード。軽くヤバい。むしろ軽くない。ヘビーだ。空気的に。


「じゃあ…早めにチェックメイトにしてあげる。幻在『クロックコープス』!!」

「結構しっくり来るな…。朱雀『紅煉獄炎翔』!!」


飛んでくるナイフが炎で相殺されるが次の手が早い。相手に取って不足なしだ。


「アンタが敵じゃなくてよかったわ…ホントに。傷符『インクライブレッドソウル』!」

「まぁそれはお互いに!白虎『白刃裂風牙』!!」


ピンポイントでナイフを風で吹き飛ばして回避する。正直驚いた。さすがは霊獣。


「嘘…――――ふーん。じゃあ本気出すから。奇術『ミスディレクション』!」

「前から――後ろ!?手加減ナシか…玄武『翠林城塞砲』!!」


地面から林のような緑色の柱が立って全方位のナイフを防いだ後で左右に展開。その後砲撃。


「ここまでとはね…でもこれで最後。幻世『ザ・ワールド』――――その頑張りは認めてあげる」

「遠慮ナシだ!青龍『蒼穹逆鱗葬』!!―――――――――――――え?」


青い激流が暴走するが時を止められる。直立不動の金縛り。その隙に1つだけナイフが飛来する。


「チェックメイト。ほら。戻って傷口診るからさっさと立って」

「やっぱ敵わないか。この通り戦術的敗北だよ」


読まれていた。敢えてスペルを展開しこちらの手の内を探り最後の最後に時間を止めて一撃を見舞う。


「でも久々に苦戦したのは事実。その努力の成果は凄いって言えるから。でも麒麟は禁止。いい?」

「痛ぅ―――――…練習あるのみ…か。頑張らないとな」

それでも努力は認めてくれた。


「ジョーカーは…切り札は最後まで残しておくもの。力に頼り過ぎると必ずツケがくるの」

「それが今の状態…か。また一つ学んだよ」


紅魔館で手当てを受ける。パチェが麒麟のことを言ってくれたらしい。

それから自分に用意された休憩時間で各スペルの発動までのタイムラグを埋める。



1週間後―――――よりによって紅魔館の幹部クラスが咲夜さん以外留守の日に災厄は来た。


「アンノウン接近!妖怪の部類かと思われます!数…計り知れないです!!」


物見が叫ぶ。計り知れないなら上等だ。咲夜さんに内緒で先陣切ってアンノウンに向かう。

弾幕を張って応戦するが数が数。減る気配は皆無に等しい。スペルは一応温存しておく。

どうやら頼もしい援軍が来たらしい。というか門番どこ行った。戻ってきたら生存率めっさ低いぞ。


「○○!アンタはもう…この戦闘が終わったら一応覚悟はしておくこと――怪我したら許さないから」

「一応心配はしてくれるんだ?…了解。お手柔らかに!」


減らない。むしろ増えてきている。これがアンノウンの正体じゃない。これは『攻撃手段』――弾幕。


「ちょっとコレどこから湧いてくるの!?一向に減らないじゃない…ゴキブリ以上に性質悪いわ」

「これが敵ならとっくに消滅してる――本体を探して集中的に叩けばこれも消えるはず…!」


攻撃方法・正体・形状・特徴・弱点・そして存在全てが未知数にして未確認…正真正銘の「アンノウン」。


「攻撃が向こうに…咲夜さんに集中して…チィっ!霊獣『四神結界』!!」


相手の考えはアバウトにだが読めた。能力が高い方から潰す。シュミレーションゲームの鉄則だ。


「あ…ありがと…これに免じてさっきのはチャラにしてあげる」

助かった。とはいかないみたいだ。弾幕が止む。ボスの登場ということらしい。

「何コレ…ホントに妖怪!?やってやろうじゃない…!!」


ヒドラ。海蛇座のモデルになった9本の頭を持つ大蛇。こんな蛇が幻想入りしていたこと自体驚きだ。


「通りで弾幕が多いわけだ…早いとこ潰して終わらせる!」

とはいえ巨大さでは向こうが数段上だ。周期的にスペルを使って順調に首を落とす。

でも異変が一つ。咲夜さんが身震いしている。下手したら被弾しかねない。

ここは四神結界で防御させながら戦う。


朱雀「紅煉獄炎翔」。

白虎「白刃裂風牙」。

玄武「翠林城塞砲」。

青龍「蒼穹逆鱗葬」。


なんとか親首以外を叩き落として浄化したが少し力加減をミスったらしい。激痛が走る。

「万策尽きたってところかな…違うか。まだ手はある…よな。使ってみるか…麒麟」


単なる独り言。麒麟を使う。生死を賭けた大博打。聞こえて――ないな。


「ダメ…怪我したら許さ…ないって言っ…たでしょ…?」


目の前に気を取られすぎて後方が見えなかった。この掠れた声で思い浮かぶ状況は1つしかない。

結界がブチ破られていた――相当被弾しているはずなのにこんなバカを心配してくれる。


「下がってな…さい。すぐ…終わる…から」


無理だ。その傷で時間なんか止めたらその後無事じゃ済まない。


「関係ないね!――バカだからさ。ゴメン。フルパワーでぶっ放すから下がってた方がいいって」


持っていたナデシコの柄の袋を投げる。咲夜さんナイスキャッチ。

明日が満月。明後日は「十六夜」。いつも足引っ張ってドジ踏んで…
それでも認めてくれるせめてものお礼。そのための懐中時計。


『守ってあげてね』――パチェから言われた一言。もちろんそのつもりだ。


「死んでも…知らない…。骨も…拾わない…!」


どんな顔かは声でわかる。
泣いてる顔は見たくない。だから振り向かずに。躊躇わずに。冷徹なる雷をこの手で目の前の災厄に。


「麒麟――――――『雷帝閃煌覇』――――――これで終わらせる」


雷が縦・横・斜め・正面から飛び交う。

ヤバい。意識が飛びそうだ。ここまで強大な雷は操作不可能で逆流しないのが唯一の救いだ。

まだ息絶えないか。あと少し…せめてあと一撃。あと一撃あれば確実に仕留められる。



「それじゃ…最終兵器の登場だ。ジョーカーってのは最後の最後で切るんだよ」



パチェの「賢者の石」を元にアレンジを加えた最後の「リーサルウェポン」。
特攻用に編み出したリミッター解除の最大出力。5つの神の真骨頂を融合させ覚醒させるスペル。


「何を!?それ以上やったら大怪我レベルじゃ済まない!まして麒麟を使った後に!」


最後の最後…むしろ最期にカッコつけさせてくれて感謝はしている。ここに来れてよかった。


「今はちょっと自分の限界ってヤツに挑みたいだけだから。この程度じゃ死なないって」

「この―――――――――――――――――バカ」

ターゲットは目の前のバケモノ。コイツだけは刺し違えても倒す。



「消滅させてやる――聖獣『破邪獣神結界』――まだ――神獣『五芒星滅殺陣』――デッドエンドだ」



これが限界突破の最終兵器。高威力かつ高火力の多段式波状攻撃。おまけに霊獣の加護つきときた。

ここまでは作戦通り。麒麟を呼ばないとこのスペルは使えない。だからあえて逆らってみた。

後はヒドラの浄化を見届ける。一応これで99.9%策は成った。

どうしても0・1%が欠ける策。むしろ99・9%が100%の策。


「明後日…生きてるか死んでるか…どっちかの0.1%に賭けてみるかな…」


意識が途切れる前の生命のコイントス。表か裏かで生死が分かれる。

最後の0.1%――それは自分が死んでも生きても達成される。その段階で初めて真の100%になる。

この策は敵を「ハメる」策でなく「殲滅する」策。いかなる犠牲を払っても。それが自分であっても。


咲夜さんの「誕生日」。わからないから毎年「十六夜月」の日に決めていた。今年は――無理かな。


せめて自力で渡したかったな――懐中時計。絶対泣いてるよ――。

それから何分…何時間…何日経ったのかわからないが目は覚めた。ここは…紅魔館。


「25時間…44分…35秒。――――――ホントに…ほっとけないんだから」

「持ってたんだ…懐中時計。ほら…死んでないし」


冷徹ないつもの声じゃない。泣いてるけど優しい声。

「また足引っ張っちゃったかな…痛ぇ!傷!傷開く!…でもまぁ…いっか」

抱きつかれたところが傷口だったのは言うまでもない。絶対わざとじゃないがこれはダメージがデカい。


それから約1日半。十六夜が出る日。まだ夜には早すぎるが。

「○○!!速効でケリつけて。まだ依頼はあるから覚悟することね」

ちょ…仮にだけど誕生日…今日だってこと確実に忘れてるなこれは。

それでもすれ違い様に呟いてみる。

「咲夜さん――――――誕生日―――――ーおめでと」

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うpろだ1126


「少し風邪でも引いたかな…」

紅魔館の自室でオフ時間に呟く。

いやリリーホワイトが「春ですよ~」とここまで伝えにきてくれるわけだが何しろ季節の変わり目だ。

「そろそろ戦線復帰ね。この頃調子悪そうだから仕事は多いけど軽めにシフト組んだから」
「了解…っと。やる事はさっさと片付けますか」

上司の咲夜さんが軽めにシフトを組んでくれたみたいで助かった。とはいえ仕事は多いが。各段階のメモが渡される。

「えーと…最初は庭の水やりと買い溜めした食糧を運ぶわけか」

ポケットに入れたビー玉もどき。たまにこの中から霊獣が手のひらサイズに実体化して出てくる。ちょっと可愛い。

ちょっと早めに終わらせる。これで第1段階と第2段階が同時に終わったわけだ。

「次は…え?借りてる本があるから図書館に返してくればいい?」

第3段階が私用っぽいがまぁ気にしない。箱で買った栄養ドリンクも1本出して持っていく。こういう時期に心配な人物が図書館に約1名。

「返却ならその棚に入れてくれればいいからね…差し入れありがと」
「いつも本貸してもらってるから粗品でゴメンな」
「そういえば麒麟も使えるようになったみたいじゃない?」
「お陰さまでこの通り」

…元気だな。パチェ。とりあえずまた本を借りて図書館を出る。自室に本を置いて第3段階終了。

「次が難関だな…紅茶の葉の分別。『葉脈で種類ごとに分けること』…」

第4段階で難易度一気に急上昇。これが難しいらしい。

「一応これで前半戦終了か。結局ボスクラスは最後に来るわけな」

約30分経過。ようやく半分だ。「感想は」とか聞かれたら即「長い」の一言で済むくらい地道な作業だ。

「結構な種類だったよなぁ…後半戦のメモでも貰いに行きますか」

一応は区切りがついて帰還。部屋の中でドサッと鈍い音がしたが物でも落ちたか。

「咲夜さーん?後半戦のメモもらいに――――――!?」
「カッコ悪いとこ見せたみたい…でも大丈夫」
「いやでも今倒れて…」
「大丈夫だって言ってるで…しょ」

そうだ。よく考えたら目の前にいつ倒れてもおかしくない上司がいたのに気付けない自分の洞察力のなさを呪いたい。

「大丈夫そうに見えないって!指示さえ貰えれば代わりくらいできるし部下の意見も聞かないと」
「部下にはできないことだってあるでしょ…」

よろけながら言われても正直説得力がない。だったら失敗してもできるところまで突き進むまで。

「何もしないよりマシかと思う」
「ホントにもう…優しすぎ。なら後半戦はカット。各段階ごとに終わったらここに来て。指示は○○に一任。夕食には復帰するから」

これまでにない大役。代理とはいえ咲夜さんの仕事を任されたわけだ。一人でできる事は極力こなす。

「慣れない事するとさすがにキツいな…これは」

この紅魔館には咲夜さんの部下のメイド精鋭部隊が30人以上いる。だがここはある意味戦場だ。言い出した以上は退けない。

「あと少しで夕食って…時間的にヤバいか…!進んじゃいるが指揮はキツいな…」

「時間よ止まれ――――――――――」

この声と能力は…どうやら援軍が来たみたいだ。一瞬背筋が凍りそうになった。

「まだ動いちゃダメなんじゃ…」
「お陰さまで完全復活。その子にも手伝ってもらうけどいい?」
「了解!」

丁度いいところに思い通りの指示。

「そして時は動き出す――――1、2班はすぐに食事の用意!3、4班はその補佐!周期的に状況を報告!5、6班は遊撃!」

早くも本領発揮。ここまで来ると威圧感がある。

「援護は任せるからよろしく。ここの火力が低いから上げて!」
「久しぶりに出しますか!炎符『ヴァーミリオンブレイズ』!」

ミニ朱雀大活躍。スペルの有効活用法…とは言えないか。正直なところは無駄遣いかもしれない。いや確実に無駄遣いだ。

そして無事に夕食終了。咲夜さんの声に一瞬ホントにビビった。

その後は普段と同じ。個人で入浴を済ませてその日の任務は完了だ。

「あれ…ダルいのが取れてる…」
「お疲れ様。あれだけ動いて汗かいたでしょ」
「ビビったなぁ…咲夜さんか」

いつの間にいたんだ…というツッコミはナシ。

「今日はホントによく耐えてくれたわ」
「100点中75点くらい…かな?」
「今回だけ96点にしてあげる」

何とも100点に近いとはいえ微妙な…いや…ここは素直に受け取ろう。

「じゃあ増えた21点はコイツに分けとこ」

そういえばフランとお嬢様がそろそろ起きてくる頃だ。

「「夜更かし決定!?」」

声がシンクロした。どこぞの紫色の暴走メカもビックリのタイミングで。目の前にはお嬢様が。

「あら…休まないの?2人して珍しい」
「休む暇があるなら借りの清算が先なので」
「たまには徹夜もいいかと思ってるんすよ」

言い方は違ってもほぼ内容的には同じだ。ここで前方から猛スピードで突っ込んでくる人物が。鳩尾に鉄拳がめり込む。二重の極みかこれは。

「あー!!○○ー!咲夜ぁー!今日はフランと遊べそう?」
「痛ぇ…今はフルじゃないから弾幕は無理な?余裕がある時には一戦頼む。ゴメンな?」
「ちぇー」

いやでも正直なところ弾幕はカンベンしてくれと言いたくなる。まぁそれでもフランは無邪気な分許せるが。

「じゃあ…チェスやろ!チェス!」
「地下室にあったっけか?確かなかったような…」
「フラン。私の部屋のチェスを貸すから心配しないで。壊さないこと。いい?あと紅茶が飲みたいわ」
「お嬢様。用意ならここに」

とまぁお嬢様の部屋でお茶会決定。さすがにフランを封じる策も考えているらしい。

「フラン…もう一度言うけど壊さないこと。―――いい?もし万が一壊したらその時は…分かるわね?グングニル投げるから」
「ひっ―――!?」
「返事は…?」
「はい…」

お嬢様すげぇ。すーげーぇ!何だいそのボムは!?フランが涙目に。心の中で思った。「フランを止められるのはこの人しかいない」と。

「じゃフランと一回やって!いいでしょ?」
「久しぶりだな…チェス。頑張ってみるかな」

そんなこんなで30分後。

「ほい。チェックメイト」
「えー!?○○つーよーいー!!手加減してくれなきゃこの部屋ブッ壊すかんねー!!」

ここでまさかの衝撃発言。それは言っちゃダメだ。そして逃げちゃダメだ。その奥から冷たいお嬢様の声が。これはキレてるぞ…!?

「フラン…?今何て言ったかもう一回言ってみなさい」
「え――――?」
「ゆっくりと一字一句滞りなく私に聞こえるようにハッキリとね。グングニル投げられたくないでしょ」
「うん…。でもフランは…まだ…何も…」
「嘘吐きは――――弾幕の始まりよ。グングニルの破壊力はフランが一番よく知ってるはず…私の能力もね」
「ふぇぇぇ…」
「ただの冗談。真っ直ぐなのもいいけどもっと周りを見なさい。私の部屋を残骸にする気?」

いやそこは弾幕じゃなくて泥棒だろ。しかも冗談とは言っているが声がマジだ。

「マズいわ…この部屋より先に私達が残骸になる…○○…逃げる用意はいい?頭の中で3回数えたら一気に壁際に下がるから。できる?」
「勿論…感覚はまだあるみたいで」

*1

一応咲夜さんと壁際に退避。一方フランは半ベソ状態だ。

「ごめん゛…なざい゛…」
「気にしないの。悔しいのは分かるけどその気持ちをぶつける相手が違うでしょ…?」

あー。泣かせたー。でも優しいところは初めて見た。気持ちよか先にグングニルをぶつける相手がまず違うだろと自虐的ながらも心の中でツッコんでおく。

「咲夜さん…いつもこんなん?」
「そ。喧嘩しない分まだマシよ…本気で喧嘩した日には阿鼻叫喚の地獄絵図なんだから。生きた心地しないもの」

咲夜さんの苦労が分かった気がする。ここまで言わせるんだから相当ヤバいと思われる。

「○○…フランの仇を取らせてもらおうかしらね?」
「…ハイ?これ何て死亡フラグ?」
「行ってきなさい。骨は拾ってあげるから」
「え!?ちょ…咲夜さん!?――――チェスで特攻…か」

チェスでこんな威圧感を感じたのは生まれてこの方初めてだ。

かれこれ20分後。

「チェックメイト。フラン…仇は討ったからね」
「お嬢様…ちょっとは手加減を…」
「絶 対 ヤ ダ」

大人気ないことこの上ない。仮にも相当年上だろ。…とは言えない。言った時点で人生がゲームオーバーだ。ここで意外な来客が。

「随分とまぁ…派手に騒いでるじゃない…寝れやしないわ。ねぇ?レミィ?ここで提案があるんだけど」
「提案って…パチェのは理不尽な条件が多いけど聞くだけ聞くわ」
「ベリーインレイクかプリンセスウンディネならどっちがいい?制限時間は2分。答えが出ない場合は両方ぶっ放すわ」
「パチェ…それ私に喧嘩売ってるの?水は吸血鬼の天敵だってのに」

ちょ…パチェ!?その一言でここが阿鼻叫喚の地獄絵図三つ巴バージョンになりかねないのに何てことを…!!

「嫌なら混ぜて。それが条件」
「最初からそう言えばいいのに…」

うーわー…パチェがドス黒い。お嬢様の表情が引きつってる。ある意味で紅魔館最強かもしれない。

「ふーん…チェスね…咲夜。一戦だけ相手お願いできる?」
「――――へ!?私…ですか!?」

ドサクサに紛れてマヌケな声が聞こえた気がするが気にしない気にしない。

「それと時間巻き戻したりしたら秘密を大暴露するからよろしくね」
「秘密って何ですか!?」

どこまで黒いんだよ今日のパチェは…。そして30分後。

「はい。チェックメイト」
「秘密の件は…」
「最初から秘密なんて知らないけど?でもその顔は…ねぇ?」
「何もないですっ!」

ここでも静かな戦闘が終わったらしい。何だこの紫孔明は。咲夜さんが押されてる。

「この本…結構面白いの。歴史が元ネタでね」
「はぁ…」

そしてさらに意外すぎる人物が。例えれば集合写真の端っこに欠席者で写っている感じだ。

「寒ぅ~…声くらいかけてくれても…」

中g…違う。危ない危ない。美鈴がここに来るのが意外だ。

「「「「「あ。忘れてた」」」」」
「うぅ…酷い…」

そこに魔の手が。フランの目が輝いてるということは…

「あぁー!美鈴!外行って遊ぼ!外!ねーぇー!外行かなきゃ地下室で弾幕やーりーたーいー!」
「はぁ…って…そんな「泣くからね」みたいな目はやめてください!」

やっぱりな。そして美鈴はフランに引きずられて戦場に。敬礼。

「ちょ…助け…お嬢様ー!咲夜さーん!パチュリー様ー!○○ー!まだ逝きたくないですよぉー!!」

「普段の失態を返上するチャンスと思うことね。勝てたらチャラにしてあげる」
「少しフランと遊んであげて。全力出してもいいから」
「門番なんだし…図書館の本の整理より退屈しないと思うけど」

うわ酷ぇ。ここで否定的な意見出したらグングニルと殺人ドールと賢者の石が炸裂するかもしれない。


――外――

「遊んでくれてもいーじゃんケチー!禁忌『レーヴァテイン』!!」
「悲しいけどこれ…弾幕なのよね…」
「行っけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「嫌……アッ――――!!!!」

――中――


「ちょ…咲夜さん…今すげぇ悲鳴聞こえたんだけど大丈夫かね…」
「美鈴はあれでも妖怪らしいからあの程度じゃ死なないでしょ。後で包帯とか持ってくけど」

サラッと惨いことを…でもこれだけ言わせるんだ。それだけ強いんだと思う。

「ただいまー!ふぁ~…ぁ…眠い…ちょっと寝てくるね」
「この紅美鈴…帰還…もとい生還…しまし…た…」
「そろそろ図書館開けなきゃいけないから私はこれで退散するわ」
「朝食まで私も少し仮眠取るわ」

お疲れ様。美鈴すげぇ。レーヴァテインに耐えてる。ボロボロだが。

そして個人でバラバラに散開してお茶会終了。

午前6時。もう明るい。

「では朝食の用意をしますので。○○。手伝って。美鈴は任務に戻ること」
「「り…了解!」」

ナイスフォロー。あのお嬢様の威圧感はもう物理的な領域だ。指先一つでダウンどころの騒ぎじゃないぞアレは。ニュータイプか?

「助かった…」
「私より先に死なれちゃ困るもの…別に…心配だからじゃないからね。アンタも十分悪運強いんだから」

悟った。ツンデレ属性潜伏中だな。

「今日は昨日の後半戦も含めるからよろしくね」
「え゛…!?」
「さっき『もう少しで上司の秘密を握れるぜ』みたいな顔したからその罰よ」
「そんな理不尽な…」
「アンタ文句あるわけ!?あるなら操りドールと殺人ドールの2択から末路を選ぶことね。上司に殉じられるなら本望でしょ?」
「皆無です!」
「ならよし」

今日はホントにくたばる可能性が大きいな。

まぁ…賑やかだし飽きないからそれもいいか。

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うpろだ1086


 暖かな風が桜の花弁を舞わせる頃になった。
 春が、幻想郷にやってきていたのだ。



 そんなある日、博麗神社では宴会が開かれていた。
 目的は言うまでも無く、夜桜。
 夜桜の宴。
 人妖が集う、美しく華やかな宴――





 そして賑やかな宴ならば、それに裏方がいるのもまた道理。
 ○○は酒の肴の追加を作りながら、新しい皿や椀を準備していた。

「ふう、こんなものかな」

 勝手知ったる――とまでは行かないが、宴会の度にその腕を振るっているので、博麗神社の台所はよくわかっている。
 それに、今は紅魔館で執事染みたことをやっているが、そうなるまでの少しの間、ここで世話になっていたこともあった。
 出来上がった料理を皿に適当に盛ったところで、戸口の方から彼に声が掛かる。

「お疲れさま、追加は出来た?」
「ええ、咲夜さんもお疲れさまです。はい、こちらが」

 声の主は咲夜だった。片付けの分なのか、皿と空き瓶を幾つか抱えている。すぐに重そうなそれを受け取って、代わりに料理を渡した。

「宴も酣ですから、逆に軽めのものに」
「そうね、その方が良いかも。だいぶ出来上がってる面子も多いしね」
「咲夜さんは?」
「今回はあまり飲んでないから。貴方も?」
「料理がすぐに無くなってますからね。少し飲んではこちらに、と言ったところですか」

 皿を水に漬けながら、○○は少し迷った後、こう提案した。

「もし宜しければ、それを置いてきた後で一献どうですか?」
「え?」
「いや、まあ、その、ゆっくり桜を楽しむ余裕もそろそろ出来そうですし、どうせなら、と」

 少し慌てたように言葉を探す○○を見て、咲夜は軽く微笑する。

「いいわよ。ただ、お嬢様方の様子を見てからになるけれど」
「あ、はい、大丈夫です。では、何か肴を用意してますね」
「ええ」

 去っていく咲夜を見送った後、○○は簡単なつまみを用意することにした。




 小半刻の後、咲夜と○○は二人して宴の片隅に腰を下ろしていた。

「いや、絶景ですねえ」
「そうね、毎年のことだけど、やっぱり綺麗だと思うわ……外は、違うのかしら?」
「今、これほどの桜を、こんなに落ち着いて見れる場所がどれほどあるか――僕は、知らないです」

 そう言って、彼は徳利を掲げ、咲夜の手にしている小さな猪口にそっと注いだ。

「メイドに御猪口というのも、妙な組み合わせですね」
「これしかなかったものね。はい、貴方にも」
「ありがとうございます」

 ○○の手にある盃に、咲夜が酒を注ぐ。軽く挙げて、乾杯の代わりにした。
 一口喉に流し込んで、○○は空を仰いで大きく息をついた。満天の星に十六夜月、それに映える夜桜。

「しかし良い気分です。良い月夜に夜桜、旨い酒に……それに何より、こうして咲夜さんと一緒に居られて、本当に言うこと無いですね」
「あら、もう酔ったのかしら?」
「まだ素面のつもりですけれど」

 その返答にくすくすと微笑って、咲夜も猪口を傾けた。

「貴方はあまり強くないんだから、程ほどにね。あの酔っ払い達の様子を見るに、後片付けが回ってくるのは必至よ?」
「大丈夫ですって」

 そう言いつつ手酌をしようとした○○の手を遮って、咲夜が盃に注ぎ足す。

「いいけれどね。酔っ払った貴方は面白いし」
「……それ言われると逆に酔えなくなりますが。何してるんですか僕」
「さあ、何でしょうね?」

 楽しそうに、咲夜ははぐらかした。やれやれと思うが、どうやらこのささやかな二人飲みを気に入ってはくれているようで、ほっと胸を撫で下ろす。

「何かやらかし始めたら止めてくださいよ?」
「大丈夫、いざとなったらナイフで止めてあげるから」
「それ止まるのは息の根ですよね?」

 じゃれあうような会話をしながら、○○もまた咲夜に酒を勧める。

「咲夜さん、どうぞ」
「ええ、ありがとう」

 喧騒を少し離れた、どこか静かな夜桜見。

「心地良い、わね」
「ええ」

 何気ない会話を交わしてると、不意に、咲夜が肩に寄り添ってきた。

「さ、咲夜さん?」
「少し、こうしていてもいいかしら」
「……ええ、いくらでも。他ならぬ貴女のお願いですし」
「ふふ、ありがとう」

 喧騒が遠い。静かに何も言わず、二人で桜を見上げる。







 天には月、地には桜、手には盃、傍らには愛し人。
 君、何を以って愉しまざるや。









 静かな時間も、杯を重ねるうちに少し変化が起こる。

「あれ……」
「飲みすぎね」

 ぐら、と○○の身体が揺れる。瞳に酒精が混じっていた。

「やっぱり、弱いわね」
「申し訳ない……」
「いいわよ、ほら」

 咲夜は微笑うと、膝の上に○○の頭を乗せた。

「これで落ち着くかしら?」
「ありがとう……」

 うとうとし始めた○○の頭を撫でてやると、すぐに寝息を立て始めた。
 この青年はある程度酔うと、前後不覚になるよりも先に寝入ってしまう。
 年上の癖に、寝るとあどけない少年のようで、何となく微笑ましくて。

「貴方のこんな姿なんて、こういう時でもないと見れないものね」

 眠る彼に向かって、優しい言葉をかける。
 宴席の喧騒も、少しずつ小さくなってきた。酔いつぶれた者、まだ静かに呑んでいる者、様々なのだろう。
 直に宴も終わる。そうすれば、また彼女達の仕事も出てくるだろう。
 だからせめてそれまでは、穏やかに眠る愛しい人と夜桜を、独り占めにしてしまおう。
 舞い散る夜桜を眺めながら、咲夜は心の中だけでそう呟いた。

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うpろだ1123


「咲夜さん」
紅魔館の長い廊下、その窓を磨くのも私の仕事だ
少しとおくから、呼ばれた
「あ、○○さん・・・どうしました?」
彼は日光に当たらないように廊下の曲がり角から顔だけ出して、私を呼んでいた
「いえ、救ちゃんから言伝を頼まれまして」
窓を磨いていた手を止め、彼の元まで歩いていった
そして廊下の影までいくと、彼は申し訳なさそうに、頭を下げた
「スイマセン、面倒な身体で」
何を今更、もうなれたことだし、仕方のないことだ
「・・・それで、あの子は何て?」
「ええと・・・包帯やらなんやらのストックがなくなってきたので確認に来てできればそのまま買いに行ってください、だそうです」
「ああ、そろそろだと思ってもう注文しておいたわ」
そろそろかと思い注文だけはしていたのだが、実に丁度良いタイミングだった
「流石ですねメイド長」
「まぁ、ね・・・もう慣れたわ」
自分を最強だと疑わず、自らを超える力がないと、決め付けていた
ここに来るまでは
生き死にを超越する、運命を操る、万物境界をいじる
驚きと絶望の連続、そして
それにすら慣れて、この世界で、生きている自分がいる
「咲夜さん?」
「・・・なんでもないわ」
目の前の彼もだ
どうやって吸血鬼に成ったかは知らないが、なんとも吸血鬼らしくない、頼りない、弱い
でも、彼のような存在は、私にとって・・・何かとても新鮮だった
「さーくやさーん」
「・・・ねぇ○○さん、この後時間いいかしら?」
「?別に構いませんが・・・」


「一度貴方とはじっくり話して見たいと思ってたんだけどね」
なかなか時間が無くてね、と彼女は笑った
女性の部屋に入るのはすごく、緊張する
しかし部屋に招かれるとは思ってなかった
「ほら、貴方も飲んだら?」
咲夜さん、真っ昼間から強そうな酒飲んでますね(棒読み
「だいたい貴方ねぇ、妹様以外の吸血鬼がここに居られるって事がどういうことかわかってる?」
とっくに酔ってるのか、いつもより饒舌な気がした
「歯牙にもかけないということ・・・ですか?」
「そう、その通りよ」
そして興味半分おふざけ半分で、俺を雇っている
彼女の興味の対象は、俺がいかにして、成ったか
「ほら、飲みなさい」
奨められるがままに酒を飲まされた
喉が焼ける、そう思ったとき、グラスを彼女と共有している事に気がついた
唇に変な感触、口紅?いやリップクリームか・・・へ?
「あら、顔が真っ赤よ?もう酔ったの?」
うぁ、メイド長の顔が、近くに
丸いテーブルに手を着いて、俺のほうに身を乗り出して
手の着きどころが悪かったのか、テーブルが古かったのか
俺のほうにつんのめる様に、倒れこんできた
ひっくり返るテーブル、滑っていくボトル
転がるグラス、酒を飲んで鈍くなったのか、彼女の力が発動する気配が無い
やけに速い頭の回転と、ゆっくり流れる周りの光景
ボトルを掴んで、グラスは、届かない
何より、こっちに飛び込んでくる咲夜さんを
がこっ、どすん、パリーン
「・・・」
「・・・なんとか、なるもんだ」
放心したように、と言うかそのものか、ぽーっとしている咲夜さん
俺は椅子に座ったまま、咲夜さんを身体で受け止めて、左手でボトルを持ったこの状況
固まって動けない

「あ・・・○○・・・あ、ありがと」
「い、いえ・・・怪我は無いですか?」
頼りないと思っていた彼の身体は、大きくて
包み込まれるような感覚、ドキドキと早い鼓動
吊橋効果と言う奴か、危ない状況と、異性との接触が重なって、でもこれは
「・・・咲夜さん?もしかして立てませんか?」
「え?・・・ぁうっ!?」
自分が今彼に抱きついて、ぽーっとしている状況をやっと理解し、驚いて、飛びのいた
「さ、咲夜さん?大丈夫なんですか?」
ちがう、このドキドキは、火照った身体は、そんな感情じゃ無い
私が、そんなありえない、こんな拍子に、彼に対して、そんな気持ちを
「○、○・・・」
「さ、咲夜さん?」
心配そうに見つめる彼の目が、止めだった
「ご、ごめんなさいっっ!!」
脱兎の如く部屋を飛び出た
彼の驚いたような声と、引き止める台詞
それを聞こえなかった振りをして、逃げた
初めて感じた、感情に戸惑い、竦んでしまった


彼が追ってこないようにと、日当たりのいい中庭ににげこんだ
「なんなのよ、これは」
これじゃあまるで、物語の中の少女のようだ、と
自分には一切関係ない、そう思っていたのに
「○、○さん」
彼の顔を思い出しただけで、顔がかぁっと熱くなった
数分、数十分前まで、大して意識していなかった相手を
たった一度の接触で、こんなことになるなんて
いや、彼がここに来た時から、意識はしていた
唯一の男手、出来損ない
そうか、意識はしていたんだ
それの方向性と、見る位置が変わった
嗚呼、なんだか面倒なことになってしまった
よりによって同じ職場、顔を合わせないわけにも行かないのだ
どうにか明日までには、この惚けた頭が、冷める事を祈るしかないようだ

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うpろだ1157


 ペットのヤドカリを観察する時、俺は床にへばりついて横から観察する。そんな
観察をしている時、部屋に咲夜さんが入ってきた。
「ん?何してるの○○?」
「ああ。咲夜さん。ヤドカリの観察ですよ。」
 むぅ。この角度からスカートの下はおろか顔さえ見えんな。とりあえず起きあが
る。
「そう。面白い?」
「ええまあ。俺のペットなんで。」
「ふーん。じゃ、私も観察させて欲しいわね。」
「どうぞどうぞ」
 断る理由は無いだろうし。ヤドカリを踏まないように俺は後ろに退いた。
「んじゃ、お邪魔するわね。」
 さっきの俺みたいに床にへばりついて横から観察する咲夜さん。なぜだか微笑ま
しい。咲夜さんも結構楽しいらしく。ヤドカリを弱くツンツンしながら笑顔を見せ
ていた。
「ん?」
 待てよ。落ち着け○○。咲夜さんは、今床にへばりついている。そして咲夜さん
はミニスカだ。つまり、これは視線を下に落としたら見える物がある。そうか。こ
れは俺が無意識のうちに立てた計画だったのだ!!!1!!
「フフフ。計画通り・・・」
「?」
 ようし。ならばその色が何色か見せて頂こうじゃあありませんか。どれどれー。
お?
「白か・・・」
「?!」
 しまった。つい口に出してしまった。ヤバィ。これはヤバィ。
「○○・・・」
「いや、これはですね。あの」
 何というか。その赤面しつつすぐに起き上がろうとしてずっこけそうになる姿た
まりません。はい。
 ん?俺何考えてるんだ?咲夜さんは鬼の様な形相をしているじゃないか。さっさ
と言い訳を考えて素数を数えなければ・・・1、2、3、5、7、⑨・・・あれ?
 だが咲夜さんはその鬼の様な形相を解いてため息を吐いた。 
「・・・。まあいいわ。○○なら。どうせ見られるの覚悟でやった訳だし。」
「へ?」
 ん?「○○なら」?。ん。これはまさかの咲夜さんフラグktkr?
 俺は脳内を整理しながら警戒を解く。咲夜さんはにっこりと笑っていた。
 そして、 
 ・・・その次の言葉を俺は理解する時間さえ与えられなかった。
「殺人ドール一発だけで許してあげる。」
 にっこりとした笑みが不敵な笑みへと変貌を遂げる。そして俺の周りに発生する
無数の青や赤の柄のナイフ達。
 外の世界のお母さん。お父さん。僕はもうオシマイみたいです。

                     アッー!

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最終更新:2010年05月16日 00:26

*1 1…2…3!!