レミリア9



13スレ目>>276 うpろだ965


「お嬢様、今日の御昼食です」
「そう」

 最近、紅魔館における食事事情がかなり改善されたきた。
 というのは、外から来たある人間が調理主任に就いたからである。

 最初は、その男のことを他の人間と同じように単なる食糧程度にしか思っていなかった。
 それが変わったのは、私が気まぐれに彼に外の料理を作らせたときだ。
 元々、料理人だったという彼の料理には、非の打ちどころがなかった。
 味や見た目は文句なかったし、何より私の高貴であるべしという矜持を満たしてくれた。
 そう、文句はない。たまに運ばれるこういうものを除いては……。

「今日は何の料理かしら?」
「○○曰く、外の世界にあるものだと……」

 私は、咲夜の運んだきた料理へ目をやった。
 金細工の施されたランチプレート。館のように真っ赤で、山型に盛られたチキンライス。
 ハンバーグ、ポテト、ナポリタン、デザートにはプリンまで付いていた。
 そして何より、目を引くのがライスの頂上に立てられた小さな旗。

 その料理を、私は外の世界の本で目にした気がした。

「……咲夜、この料理の名前は?」
「私には存じかねます」

 この料理の名前は……確か……。
 そう、あれだ! 
 ……。
 あの男、無自覚でやってるのか?

「咲夜、○○を今すぐここに連れて来なさい」
「かしこまりました」





「で、これはどういうことかしら?」
「どういうこと、と申されますと?」

 白い調理服に身をつつんだ○○が私の前に立つ。

「だから、この料「あ、○○だー」」

 私の言葉を遮る形で、フランが部屋に入ってきた。

「○○、さっきのごはんおいしかったよ。それに、この旗もかっこいいし!」
「お褒めに預かり、光栄です」

 私そっちのけで、会話を進める二人。

「ああ、もう! とにかく、次からはもっとちゃんとしたのを作りなさい!」

 私はカッとなり、立てられた小さな旗を○○に投げつけた。














 次の日

 私は、咲夜の運んだきた料理へ目をやった。
 金細工の施されたランチプレート。山型に盛られたチャーハン。ハ(ry

「これはどういうことかしら?」
「日本国旗はお気に召さなかったようなので、アメリカ国旗に……」
「そういうこと言ってんじゃないわよ!」

 私は○○を思い切り殴り付けた。
 その日から、調理主任が長期休暇を取ることになったのは言うまでもない。
 これが後に起こる、第一次紅魔館食糧危機の始まりとなる、お子様ランチ事件の全貌である。

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うpろだ1020


「○○、何してるの?」

 珍しく○○の部屋に遊びに来ていたレミリアが、○○が耳に細い棒のようなものを入れているのを不思議そうに見ていた。

「ああ、これですか? 耳かきですよ。里で見付けたんです」
「耳かき?」
「耳掃除するとき使うんです。耳は垢がたまりやすいですから」

 懐紙に耳垢をまとめて捨てながら、○○は首を傾げる。

「レミリアさんのもしましょうか?」
「え?」
「人にやってもらうと綺麗に掃除できるんですよ。それに、興味あるんでしょう?」

 ベッドに座って、○○は膝をポンポンと叩いた。

「そ、そんなことはないけど……そこまで言うならさせてあげるわ」

 羽だけを楽しそうにはためかせながら、レミリアが膝に頭を乗せる。落ち着く体勢になるのを待って、○○が手を伸ばした。

「では失礼して」
「……ひゃうっ!?」

 声に驚いて、○○は耳に触れた手を離す。

「びっくりした……」
「それは僕のセリフですよ……続けて大丈夫ですか?」

 どうもくすぐったいようだ。下手に動かれると危ない気がする。

「だ、大丈夫よ。続けなさい」
「わかりました……でも、危ないから動かないでくださいね。手元が狂うと怪我しますし」
「大丈夫よ、すぐに治るのはわかってるでしょう?」
「それは身をもって。でもそういう問題じゃないです。レミリアさんを傷付けるのが嫌なんですから」
「……わかったわ」

 少しの空白の後、レミリアはそう頷いた。そういうことをさらりと言うなとか何とか聞こえた気がしたが、よく聞き取れなかったのであえて訊かない。
 とはいえ、耳に触れるとビクリと震えるため、危なくて仕方がない。

「耳かき、中に入れられないですよ」
「し、仕方がないじゃない」
「うーん、では失礼します」

 ○○は片手でレミリアの肩を押さえ付けた。これなら安定する。

「さ、これなら大丈夫でしょう。続けますよー」
「……何だか楽しそうね」




 さてどうしたものか。
 ようやく耳掃除をしながら、○○は困惑した表情を浮かべていた。
 無事に始められたまでは良かったのだが――

「ん……ひゃ……」

 くすぐったいのが我慢できないのか、レミリアが微かに震えながら、小さく声をあげているのだった。
 身をよじるのは何とか身体を押さえて止めてはいるが、何だかこのままではいろいろな意味でまずい気がする。

「痛くないですか?」
「それは、大丈夫……ん」

 他愛も無い会話でもしていないと、何だか自分がやましいことでもしているかのような錯覚に陥ってしまう。
 いや、会話していてもどうかという話なのだが。

「あ」

 少し陰になって見えないので、身体を押さえていた手を離して耳に触れる。

「ん……っ!」
「ちょっとじっとしていてくださいねー」

 びく、と身体が震えるのが大きくなったが、大人しくじっとしている。丁度いいので、このまま掃除してしまおう。
 誰かの耳掃除というのはそう経験はなかったが、なかなか面白いものなのだ。

「いっ……」
「すみません、ちょっと我慢しててください」
「う、ん……んん」
「はい、取れましたー」

 懐紙に取って、ふむ、と○○は呟く。そろそろこちらはいいかもしれない。

「ん……終わり?」
「こちら側は終わりです。次は反対側をしましょうか」
「ま、まだやるの?」

 少し息が荒いまま紅い顔を向けたレミリアに、○○は笑顔を向ける。

「片方だけだと気持ち悪いでしょう?」
「……まあ、そうだけど」
「だから、はい、反対側」
「…………楽しんでるわね?」
「いえいえそんなことは」

 まったく誤魔化す気の無い返答に、レミリアは微かに涙目になった目で上目遣いに睨みながら、一言だけ言った。

「後で覚えてなさいよ……」



 逆側の耳に触れるときにも身体をびくと震わせたが、諦めたのか慣れたのか、時折震えながらもレミリアは○○の成すがままになっている。

(……とか言うとものすごく変なことしてるみたいだけど)

 そう心に思いながら、掃除を始める。

「ん……ん」
「痛かったら痛いって言ってくださいね」
「……うん」

 こちらに顔を向けているが表情は見えない。それでも何となく可愛らしくて、○○は顔を綻ばせた。

「……何、ん、笑ってるのよ」
「いや、可愛いなと思いまして」
「……そういうこと、さらりと言わない」

 さらに紅くなったのだろう顔を○○に擦り寄るように伏せて、レミリアは○○の服を握った。

「こっちはくすぐったいんだから、早く終らせなさい」
「はいはい」

 大人しいうちに、○○は手早く掃除を続けていく。時折漏れる声を少しばかり楽しみながら。





「んー、何だかすっきりした気がするわ」
「でしょう? 気持ちいいものですよ、耳掃除って」
「ちょっとくすぐったかったけどね」

 くすくすと笑いながら、だが機嫌は悪くないようで、○○は安堵する。

「またしてあげましょうか?」
「そうね、また気が向いたら」

 膝の上で横になったまま、レミリアは○○を見上げた。

「どうしてあんなに楽しそうだったの?」
「いやだって可愛かったですし。それに」
「ひゃ!?」
「耳が敏感だなんて知りませんでしたしね。新たな発見です」

 レミリアの耳を、つっ、と指でなぞって、○○は楽しそうに笑う。

「……っ……」

 びくっとなった後、レミリアは○○を睨み上げ、そして、えいとばかりに手を跳ね除けて起き上がった。

「貴方が横になりなさい」
「はい?」
「私が耳掃除するから、貴方が横になるの」
「でも、僕さっきまでやってましたが……」
「いいから! やられっぱなしは気に喰わないの。さっさと横になりなさい」

 言われるままされるがままに、○○はレミリアの膝の上に頭を乗せる。さっきとは逆の体勢だ。

「……レミリアさん、やったことは?」
「ないわよ。でも今されたばかりだからわかるわ」
「……では、お願いします」

 一抹の不安を抱えながら、○○はレミリアが気が済むまで大人しくしていることにした。












 後日、図書館にて。修行の休憩中の会話。

「……それで、どうだったの?」
「は? 何がですか?」
「耳掃除。レミィにしてもらってたって聞いたけど。レミィが誰かに何かするなんて珍しいから」
「……あのときほど、自分が吸血鬼になってよかったと思ったことはありませんでしたね……まあ、悪くなかったというかむしろ良くはあったんですが」
「……そう。仲が良さそうで何よりね」


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うpろだ1030


「ふぃ~、生き返るぜ~」

 守矢神社の方々が運営している温泉に入りながら俺はそう独り言をいう。
 文々。新聞にも載っていたがここの一番の目玉である日替わり露天風呂。
 天然温泉であるにもかかわらず日毎に産出地を変えている。しかもその管理は諏訪子様がしているらしい。
 諏訪子様が神であることを改めて感じさせられる。ちなみに今日は群馬の老神温泉らしい。

 ちゃぽん

 ふむ、誰か入ってきたらしい。かなりの湯気でぼんやりとした人影しか見えないが邪魔になるといけない。
 俺は真ん中でぷかぷかと浮かぶのをやめると端の方に移動した。
 ゆっくりと進んでくるぼーっと見ているとそこに一陣の風が吹き――

 一糸纏わぬレミリアがそこにいた。

「れれれれっ、れみりゃっ!?」
「なによ、その言い方。私はそんな変な名前じゃないわよ」

 ざぶざぶと水面を掻き分けてこっちに近づいてくる。

「ちょっ!? なんでこっち近づいてくるのっ!? こんなに広いんだから他の場所に行った方がいいかと!」
「こんだけ広いのに○○しかいないから側にいくのよ」
「さいですか。でも吸血鬼が温泉入って大丈夫なの?」
「流水じゃないから別になんのは問題ないわ」
「あとちゃんとタオルで隠してください。胸とかあそことか」
「あら、私は○○に見られても別にかまわないわ」

 そのまま俺の横にちょこんとレミリアは腰掛けてしまった。
 うう、目のやり場に困る。澄ました横顔、なだらかな胸丘や、まだ産毛も「そこまでよ!」おおぅパッチェさんが。自重せねば。

「ふふっ、カチカチね」
「どこみてるんですかぁっ!? それに絶対キャラ間違ってると思います!!」
「私は○○の態度を見ていったのだけれど? ○○はいったいどこだと思っていたのかしら?」
「うう、いいように弄ばれている気が……」

 と、俺はある物を持ってきていたことを思い出した。

「レミリア、ちょっと待っててくれ」

 そう言い残して俺は風呂の縁に置いてあった桶を持ちレミリアの所に戻った。

「早苗に少しだけならってことで許可してもらったんだ。一緒にどうだい?」
「へぇ、桃のリキュールね。それじゃお言葉に甘えようかしら」
「あ、でもグラスが一つしかないや」
「それでもかまわないわ」
「それじゃお先にどうぞ」
「ええ、いただくわ」

 氷でキンキンに冷やしたリキュールをグラスにトクトクと注ぎ、レミリアはそれをとても上品に飲み干した。

「ふぅ、すごく濃厚な桃の味なのに後味はスッキリ。あなたにしては中々の物を見つけたわね」
「お褒めいただき、光栄でございます。お嬢様」
「ふふっ、やめて。○○にそんな口調で喋られるとなんだかこそばゆいわ」
「うわっ、ひどいな」
「じゃ、今度は私が注いであげる」
「ああ、ありがとう。――っとと。それじゃいただきます」
「――うん。たしかにおいしい」

 交互に酒を注ぎながら二人きりの酒宴を楽しみながらふと空を見上げると綺麗な紅い月が真上に見えた。

「どうしたのよ? 急に上を見上げて」
「いや、今日は月が綺麗だなってさ。そしてうまい酒にとっておきの美少女がいる。これ以上の贅沢はないかなって思っていただけ」
「○○どうしたのよ。今日は変なことばっかり言って。もしかして酔っ払ってる?」
「かもね」

 横に視線を向けるとくすくすと笑うレミリアがいた。
 普段のどこか嘲笑が混じった笑みとは違い、外見に相応しい少女のように笑うレミリアはとても魅力的に映った。

「なに? じっと私の顔を見つめて? なにかついてる?」
「いや。レミリアってそうやって笑うとすごくかわいいなって見とれてた」
「なっ!? ばっ、は、恥ずかしいセリフ禁止っ!!」
「あいたっ」

 ゆでだこみたいに顔を真っ赤にしたレミリアに頭をはたかれた。
 そしてそっぽを向いて何かぶつぶつ言い出した。

「まったくこいつは……(ぶつぶつ)わたしの気持ちも知らないで……(ぶつぶつ)」

 断片的に何か聞こえてくるが、聞かないのが紳士であろう。
 他に視線を移しているとまた誰かがやってきたらしい。カラカラと戸を開ける音がした。

「お嬢様、そろそろお上がりになられた方が……なぜ○○がここにいるのかしら?」

 うひゃあ……今この状況で一番会いたくないお方がいらっしゃいました。
 めちゃくちゃドス黒いオーラが漂ってきます。

「いいのよ咲夜。○○が先に入っていたんだから。それじゃ私は先に上がるわね」
「ちょっと、お嬢様。お体くらい隠してください」

 どこも隠そうとしないレミリアにバスタオルを巻く咲夜さん。この手際のよさはさすがメイド長。
 などと下らないことを考えているとレミリアがこっちを見ていた。

「今日は楽しかったわ。今度はフランも連れてくるからそのときは3人一緒に入りましょ。約束ね」
「あ、ああ……」

 そう言ってレミリアは微笑んだ。その姿はまるで月光に照らされた花のように美しかった。
 レミリアが出て行った後も暫く惚けたまま動けなくなっていた。

「まずい……当てられた……」

 うーん、これものぼせた部類に入るんだろうか? あの笑顔が焼きついて今夜は眠れそうにないや……

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うpろだ1061


「○○、今日も後でするわよ」
「いいですけど、随分楽しそうですねえ」
「楽しいもの。慣れてきたしね」
「それは僥幸。もう血を見るのは勘弁ですからね?」
「し、仕方ないじゃない、初めてしたんだから」


「……会話だけだと、かなり妖しいこと言ってるわよ、二人とも」

 呆れた声で、パチュリーが話に加わった。午後の紅茶の時間、紅魔館のティールームのいつもの光景である。

「ん? パチェにも耳掃除してあげようか?」
「遠慮しておくわ。危険には近付かない主義だもの」
「むー、そんなことないわよ。ねえ、○○?」
「向上の後は見られる、とだけは」
「それはどういうことよ?」

 問いには答えず、○○は紅茶をすすった。

「○○さんの部屋からたまに悲鳴が聞こえてたとか聞いたけど」
「最近はわりと大丈夫ですよ。鼓膜の被害もなくなりましたし」
「そこまで酷くはないわよ」
「最初は今までに体験したことのない恐怖を味わいましたけどね?」

 楽しそうにからかう○○を、レミリアが軽く睨んだ。

「随分と意地悪を言うのね」
「いえいえそんなことは」
「じゃれあうのもいいけど、私達がいるのも忘れないようにね?」

 レミリアがいつの間にやら○○の膝の上に座を移しているのを見て、パチュリーがさらに呆れながら咲夜と頷きを交わした。

「妖精メイド達の噂になっていましたよ。何やら声が聞こえてきていたと。そのメイド達は当然嗜めましたが」
「あら、別に後ろ暗いことをしてるわけじゃないわよ?」

 くすくすとレミリアは笑う。

「妖精メイド達にも勧めたらどうかしら」
「今以上に仕事をしなくなりますよ?」
「んー、確かに楽しいものねえ」
「そんなに頻繁にやるものでもないはずなんですけどね」

 どこか呆れたような微苦笑で○○が相槌を入れた。

「レミィが楽しんでいるんだからいいんじゃないかしら。
 それに、レミィがそんなに楽しそうにしてることにも興味はあるわ」
「あ、やっぱりパチェもやる?」
「レミィにされるのは怖いから、するなら○○さんにしてもらおうかしら」
「それは駄目。○○がしていいのは私だけだもの」
「はいはい」

 呆れたような微笑みでパチュリーは親友の言葉に頷いた。

「……レミリアさんは、この前咲夜さんにもしてもらってませんでした?」
「私はいいの」
「じゃあ咲夜に」
「かしこまりました」
「むー、私は駄目なわけ?」
「○○さんに太鼓判押されるようになってからにして頂戴」




 そんなこんなで、紅魔館はひそやかな耳掃除ブームになっていたのだった。




 そして事の発端達は――

「○○ー」
「はいはい」

 呼ばれて、○○はベッドに腰掛けているレミリアの膝に頭を乗せた。
 本来なら喜ぶべき状況であるはずなのだが、どうも反射的に身構えてしまう。身構えたところでガード不可だが。

「そんなに警戒しなくてもいいじゃない」
「いや、反射で」
「大丈夫よ、今日は怪我させないから」

 羽がパタパタと動いていて、機嫌がいいのがよくわかる。

「それでは、お願いします」

 ○○は観念することにした。というか、それ以外そもそも選択肢は残されていなかったが。
 ――が、意外に上達していたらしい。

「あー、上手になりましたね」
「気持ちいい?」
「そうですねー。気持ちいいです」

 痒いところに手が届く、というのか、それとも以前に慣れてしまっていたからそう思うのか。
 ともかく、怪我もなく順調である。それが当然の姿であるとも思うが。

「私も、こういうのが気持ちいいってわかったから」
「はい」
「○○も気持ちいいといいな、くらいは思ってるんだから」
「ありがとうございます」

 素直に礼を言って、とりあえず身を任せることにする。うん、思わずうとうとしてしまいそうなほど気持ちが良い。

「……寝ると危ないわよ?」
「ん、ああ、すみません」
「それで怪我しても私の所為じゃないからね」
「はい、ごめんなさい」

 そう会話しながら両耳の掃除を終え、○○は起き上がって照れくさそうに笑った。

「いや、すみません、気持ちよくてつい」
「それは嬉しいけど」

 言いながら、レミリアは勝手に○○の膝の上に横になった。

「ふふ、でもようやく一矢報いた気分だわ」
「報いる、って、耳掃除は勝負じゃないですよ」
「でも……ん、だって、私ばかりだったもの」

 耳に触れられるとくすぐったさそうにしながら、レミリアはくすくす微笑う。

「いつも○○には痛い思いさせてたみたいだし……ん」
「そんなに気にしなくても良いのに」
「それは嫌なの」

 甘えたような拗ねた言葉が可愛らしい。口に出すと怒られるので声にはしないが。

「んー……でも、○○にやってもらうのが気持ち良いわね」
「そうですか?」
「ええ、咲夜にもしてもらったのも気持ち良かったけれど、やっぱり○○が良いわ」
「光栄です。はい、反対側」

 何と応じたものかと悩みながら、とりあえずそう返す。

「ん……でも、慣れない、わね」
「どうしました?」
「くすぐったいのよ、まだ。そろそろ慣れるかなって思ってる、のに。○○に触られるのが、くすぐったくて」

 確かに耳に触れると、まだびくりとしたり、目をぎゅっと閉じたりしている。

「むしろ、何だか、ん、どんどんくすぐったくなってきてる、気も、するのよね」
「……あまり喋ってると危ないですよ」

 その発言はいろいろヤバいと思いながら、常識的なことだけを口にする。

「あら、どうして?」
「わかってて言ってませんか?」

 悪戯っぽい声を出してきたので、一時中断して耳をなぞって仕返しをすることにした。

「……んっ、だから、くすぐったいってば」
「変なこと言うからです」
「……随分意地悪になったわね」
「レミリアさんの扱いは慣れてきたつもりですが」
「…………貴方こそ、わかってて言ってるでしょう?」
「いえいえそんなことは」

 しれっと白々しい声を出してみたが、一瞬だけかなり強く頬を引っ張られ、相当痛い思いをすることになった。





「ところで、どうして僕は誰かにしちゃ駄目なんですか?」
「当たり前じゃないの、○○がしていいのは私だけ、○○にしていいのも、ね」

 ○○の膝の上に座って、半ば振り返りながらレミリアは言う。

「○○は私のものだから。例えパチェや咲夜でも駄目」
「……それは、もしかして、妬いてくれてたりします?」
「煩い」

 ぷい、と顔を背けてしまうが、少し耳が紅くなっている様子が見えた。思わず、頬が緩む。

「何、にやにやしてるのよ」
「いや、可愛いなあって」
「だから煩い」

 レミリアは怒ったように言って、○○の方に向き直った。

「あまり減らず口を叩くなら……」
「……っ」

 急に口唇を塞がれて、○○は驚く。口唇が離れる頃には、レミリアは○○の上で楽しげな笑みを浮かべていた。

「塞ぐわよ、こうやって」
「……もう、やってるじゃないですか」
「私が主だ、っていうこと忘れてるみたいだから。しっかり教えないと、ね」

 何だか理不尽な気がするが、それでも○○は両手を挙げた。そもそも最愛の人に勝てるわけが無い。

「好きにしてください」
「よろしい」
「ですが、後ろ暗いことはしないんじゃなかったんですか?」
「あら、何も後ろ暗いことなんかないわよ」

 恋人同士なんだから、と言って、レミリアはもう一度○○に口付けた。

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最終更新:2012年07月01日 20:04