橙3
11スレ目>>258
①隙間妖怪の式の式 橙の言い分
いつも思ってたんですけど藍様はいちいち私のやることに文句言いすぎです。ありえないです。
自分はあんな、え、何ですか?私とただおしゃべりしてる人たちを「邪魔だ消えろ」とか言って無意味にぶっとばしたり!
(そうゆうのってなんかおかしいと思います。なんで私と話してる人ばかり狙うのかわけがわかりません)
って言ったら叩かれますし!私の頭の形が変形して帽子がおしゃれにかぶれなくなったらどうするんですか、むぅ。
あと、私じゃない他の式にお水くみに行かせたりだとか○○に一日十個限定の大福屋さんのお饅頭食べたいとか言って朝から並ばせたりだとか、
本当に文句の言われるべき行いっぽいことをあんなにもたくさんしているのに、ひどいです!
特にお饅頭の一件、さいていだと思います!
そういうのは自分で頑張って並んでゲットすることに意義があるんです。
私も実際朝から並んで買ってきましたしねお饅頭!おいしかったですエヘヘ!
って言ったらまた怒鳴られるし!
「修行サボってお饅頭買いに行くなんてなに考えてるんだ。しかも一人でなんて・・・一人は危ないから勝手な行動はとるな」
ですって。
自分なんか紫様と日向ぼっこしてるくせに私がお饅頭買いに行ったら怒るんですか?もう信じられません。
…私が未熟だってことなんでしょうか、それ。
だから、藍様の身の回りのことは他の子に全部まかせて、私なんていらない、って・・・・・・・・
と、とにかく。
藍様なんて大嫌いですもう橙は知りません。
第一ですね、私は藍様や紫様ほどではないにしてももう結構生きてるんですよ?
子供じゃないんです。
それなのに、私にはお饅頭を朝早く並んで買ってはいけない、修行は絶対にサボるな、夜七時以降の外出は何があってもダメ、一人であんまり出歩くな。
私ってばもうほぼマヨヒガに住み込みになっちゃってますし。
信じられません!ひどすぎです!ぼうくん、です!
いくら藍様が美人で、頭も良くて、強くて、お料理もうまくて、スタイル抜群で、
式の私から見てももしかしたら藍様より完璧超人なのは紫様ぐらいしか・・・ううん、紫様もかなわないんじゃないのかな・・・
とうっかり本気で感嘆のため息を漏らしてしまいそうな最強ご主人様でも、こんなことってひどいです。
藍様が私に対して今の態度を改めないと言うのなら、今後一切私は藍様を藍様って呼んであげません。
霊夢や魔理沙が呼ぶように、私も「藍」って呼んでみちゃいます!
ど、どうです、他人行儀でしょう!
ちなみに私は橙ですが、仲良くしてくれる里の人々からは可愛く「橙ちゃん」って呼ばれているんですよ。
う、うらやましいでしょう、悔しかったら藍様もみんなに「藍ちゃん」って呼ばれてみることです!
橙はもう、怒りました。明日から、夜の九時まで、外で出歩いてやります。
なぜ九時に帰ってくるのかは、九時を過ぎたら藍様に怒られそうでこわいとか、そういう理由じゃなくて、ご飯が食べたいからなのですよ!
私は今まで藍様の言うことをきちんと聞いていましたけど、もう怖くないんですからねっ!
ほんとうに、ご飯が食べたいから九時に帰るんです。
藍様なんか、・・・・・怖くないもん! 橙より!
その藍様から返事が来たようですよ、橙ちゃん。
②橙のご主人様 藍様のお言葉
突然ちゃぶ台の上に乱雑な文字の書きなぐられた紙が置かれていて、少し驚いた。
勝手に私の部屋に入るなと言ってあっただろう?橙。
それに、この紙は修行の成果を書けと言って今朝渡したもので、つまり橙はこれを修行中に書いたと見える。
修行をちゃんと積んで立派な式にならなくてはならない、というのも、何十年も前に言い聞かせてあったのに。
橙は私の言うことを真面目に聞いてきたと手紙の中で言っていたけれど、どうも私にはそうとは思えないな。
…と、つまり、今みたいに、橙は私がお前の行動全てに、色々と口を出してくるのが気に食わないんだな?
だから私の行動自体が気に食わない、と。
…紫様と日向ぼっこしていたのは本当だしお饅頭を○○に買いに行かせたのにも言い訳はしないけれど、
夜七時以降に外出するのと、修行をお饅頭を買いたいとかいう理由でサボること、それは認めるわけにはいかない。
何故なら私がそのことで橙に注意するのは、きちんとした理由と、私がお前を大切な式として心配する故の主心があって、
決して橙が嫌いだとか、役に立たないだとか、私の我侭で言っているわけではないからだ。
橙は頭が特別いい、という訳ではないけれど、契約を交わした私の式だ。
私が何を考えて、何を言いたいのかは、少しは分かるだろう?
修行というのは退屈なことが多いだろうけど、橙が一人前の式になるためには必要な過程だ。
夜七時以降に出歩いてはいけないというのは、何も私が橙を監禁しておくつもりだとか、夜の世界には素晴らしいものがあるから橙には見せないで独り占めしておきたいとか、
そういうのではないことは、橙にも伝わっていると信じている。
確かに夜は昼間と違った色合いで楽しいことも多いかもしれないが、危険なこともそれこそ山のようにあるんだ。
特に橙のような純朴そうな女の子には。
私は、それを心配しているんだよ。それだけは解ってほしい。私が橙に願うのはそれだけだ。
橙、お前は、主人の私が言うのも何だが、とても可愛らしい女の子なんだ。
無邪気だし、穏やかだし、何より華がある。
きっともう少し時が経ったら、もっともっと美しい、素晴らしい女性になるだろうと思う。
だから今は、どうか主人の私の言うことをよく聞いて、その真っ直ぐな精神をおかしな方向に屈折させることなく、健やかに育ってほしい。
私は橙のことを誰よりも大切にしているよ。
(追伸:お前を橙ちゃんだなんて気安く呼んでいるのは、どこの里の人間だ?
・・・まったく、○○だけでも監視の目が行き届かないというのに・・・いや何でもない。
一度そのことについて真剣にぶち殺(※消した跡)・・・じゃない、話し合いたいから今度会いに行くと伝えておいてくれ。
今日は橙の好きな焼き魚だから、早めに帰ってくるように。
それじゃあまた後で。 藍より)
…おや?
藍様からの手紙だけじゃなく、もう一枚手紙が来ているようですよ、橙ちゃん。
③最近なぜか八雲家と知り合いになった里の人間 ○○からの手紙
いきなりこんな手紙を渡して、驚かせてしまったと思う。すまない。
しかし、今日一日の藍さん、つまりお前のご主人様の姿を見ていて、どうしてもこれは橙に伝えなければならないと思って、筆を取った次第だ。
俺は回りくどい文学的表現とやらが苦手なので、率直に言おう。
今日一日の藍さんの落ち込み具合といったら、相当なものだった。
今日俺がこの手紙と共に届けた藍さんの手紙だって、あれでも何度書き直したか知れないのだ。
彼女の私室に、機会があったら一度忍び込んでみるといい。
もちろん見つからなければの話だが・・・きっとお前は、引き出しの中いっぱいに入った藍さんがお前に宛てた手紙の書き損じ版を大量に発見することができるだろう。
藍さんは橙も知ってのとおり、並大抵のことは完璧にこなしてみせるし、統率力も十分あり、その能力も相当なものがある。
お前のご主人様はとてもすごい人だ。俺はあの人を尊敬してるよ、紫さんと同じくらいに。
…ああ、すまん。話が逸れてしまったな。
今日一日、ずっと落ち込んでいた藍さんの話だったな。
橙は、藍さんのことを厳しいと思ったり、橙と話している人間をなぜかぶっ飛ばしたり(・・・俺もやられた。理由はわかるが、あえて伏せておこう)、
また朝っぱらからお饅頭を買わせに並ばせるなんて最低で、いちいち文句をつけてくると思っているらしいことが文面から覗けたが、
それはある一つの側面だけを見た、極端な論に過ぎないと俺は思う。
そりゃあ確かにその見解の中に事実はたっぷり混ざってるし、俺だってパシリかよやってらんねーよとか思うことも多々あるが、
藍さんが決して悪い人じゃなくて、誰よりも何よりもお前を、橙のことを大切に思っているということは、俺なんかよりお前が一番よく知ってるだろう?
もちろん、お前には俺にはわからないような、藍さんが主人である不自由も感じることもあるだろうが、
お前はそれと同時に藍さんが主人であることへのたくさんの誇りや喜びも感じているはずだ。
とにかく、彼女を困らせないであげてくれ。
あの人が落ち込んで、それはもう落ち込んで、なんか空気が違うんだよ。
…藍さんが落ち込むと、紫さんも調子悪いように見えるし、俺だってそうなんだ。
どうか、喧嘩もたまにはいいが、嫌いなんてだけは決して言わないようにして、主従仲良く過ごしてほしい。
俺は藍さんの手紙を読んでいないから、あの人が何を言ったかは知らないけど、きっと橙のことを思った甘ったるい文章なんだろうな。想像つかないなあ。
そういう藍さんのことが、いつもより微笑ましく思えてくるよ。
…なんだか作文みたいな締めになってしまったな。
恥ずかしいことだ。
とにかく、まあ、お頼み申したい。
今度、藍さんが仕事をしに里へ出ると言っていたから、こっそり覗いてみるといい。俺も覗きに行くから。
幻想郷全体のために、紫さんのために、あるいはお前のために。
藍さんはやらなくちゃいけない仕事をたくさん抱えてるって言ってたぞ。
偉い人だよ、お前のご主人様は。 ○○より
翌日。
○○さん、お手紙ですよ。橙ちゃんから。
④橙の恋文(?)
○○、この前はお手紙ありがとう!
藍様とは、仲直りしたよ。うん、やっぱり私の方が悪かったみたい。
私は少しかっとなりやすいたちで、あんまり深く考えずにいろんなことにきゃあきゃあと文句を言ってしまう、下らないくせがあるみたいだから恥ずかしいなぁ。
次から気をつけるけど、またわがままを言って心配かけちゃったらごめんね。
ええと、うまく言えないんだけど、お手紙、すごく嬉しかった。
感動しちゃいました。
藍様の手紙もそうだけど、○○のお手紙も、本当に本当に嬉しかったの。
私のばかなかんしゃくで巻き起こったことを、こんなにも真剣に心配して、あのお手紙を書いてくれた○○のことを考えたら、
こう、胸がきゅんとしたというか、あ、なんか馬鹿みたいでよくない言い方だね。
えーと、じゅわっと、あつくなっちゃった。・・・うわ、また馬鹿みたい。
でも、本当に、今もとってもあついんだよ。どきどき、してる。
なんなんだろう、私、○○を・・・えっと、ああ、やっぱり、何でもないっ!
変なこと言ってごめんね。
私みたいな半人前の式は、たまにこう、変なこと言っちゃうから、よくないなあ。
○○を困らせる気なんてないんだけど。
もう困らせちゃったかな?だとしたら、謝ります。ごめんね。
あの、じゃあ今度、藍様がお仕事してるところを、久しぶりに見に行くことにするね。
藍様の立派な姿を見たいのもあるんだけど、○○に、この前の手紙のお礼を言いたいから。
○○、その日いるんだよね?・・・じゃあ、藍様見たあと、二人でどこか遊びに行こうね!
二人っきりだよ。友達呼んじゃだめだからね。
あと、藍様を慕う気持ちの、ほんの一欠けらでいいから、私にもその愛をくれて、一緒にたくさん遊んでくれたら、もう絶対わがまま言わないよ。
もっともっと、○○とお話したいな。
…それでね、その日、ちょっとだけ、○○に言いたいことがあるから、その、えっと、楽しみにしててね! 橙より
さらに翌日。
「あ、あのさ、橙・・・」
「あ、○○っ。・・・この前の手紙、読んでくれ「あ、あの!これ、暇なときでいいから読んでくれ」
⑤再度、○○からの手紙
藍さんと仲直りしたみたいで、よかったな、橙。
…それで、その、そんな風に言ってもらえるとは想像してなかったから、かなり驚いた。
白状するとおろおろしてる。・・・格好悪いな、橙には見せられない。
ええと、その、遊ぶのはいつでも遊んでやるぞ。橙はマヨヒガに来ることが多いし、俺もそこに行くのが多いから、たくさん遊べると思う。
えと、すまん。なんと言えばいんだろうか。
俺は本当に驚いていて、なんて返せばいいのか分からないんだ。
でもたくさん遊んでやるし、聞いてほしいことってのも、・・・・きちんと聞いてやるからな。
俺も、橙とたくさん話したいし・・・。
しかし、お前もやっぱり隙間妖怪の式の式だな。俺を動揺させるのが上手い。 ○○より
「ん、こんなところに手紙・・・?
なんだ、橙宛てか。○○から?
どれどれ・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おい、橙。ちょっと来い、なんだこれは?」
そしてそして。
⑥○○の恋人(予定?)のご主人様、藍様のお言葉
○○、お前と一度真剣に殺し合(※消した跡)・・・・もとい、話し合いたいことがあるから今夜一人でマヨヒガまで来い。 藍より
12スレ目>>371 うpろだ821
しばらくぱちり、ぱちりとやっていると、向こうから橙がのこのこやって来る。
猫の時に何度か餌付けしているので、奴との仲は割と良い。
まあ、あの時はこの猫が化け猫だとはちいとも知らなかったけどな。
橙はしばらく将棋の盤面を見つめていたが、やがて飽きたのかごそごそと俺の懐に潜り込み始めた。
…待て、猫verならいざ知らず、人間状態だと物理的に精神的にとダブルできついぞ。
おい、コラ、橙、何してんだお前。
「ん?…何が?」
何がじゃねえだろ。潜るんだったら猫になって出直して来い。
「…別に良いじゃん。あったかいし」
…まあ、確かに暖かいけれども。
「ならいいでしょ?問題なし!」
大アリだこの猫耳野郎。
「もう…いちいち煩いなぁ○○は。そんなに恥ずかしいの?」
…あのなあ…恥ずかしいってか常識的な話…
「あ、心臓ドクドク言ってる。…なんだ。やっぱり照れてるだけじゃん」
ああ、こら、この妖怪野郎。心臓の音を聞くんじゃねえ。女と肌を30パーセント以上密着させると死ぬ病気にかかってんだよ俺は。
「嘘つきー。…ふうん。○○って結構照れ屋なんだね。…ふふ、可愛い」
ああもうこの猫は全く…可愛いってのは俺がお前に対して言うセリフであってお前が俺に言うセリフじゃねーってのー。
「ふふふ…そーれっ!」
のわっ!
てめぇこの式野郎め、いきなり押し倒すたぁどういう了見だこの…えーっと…猫。この猫野郎。
「この野郎のバリエーション無くなってきたね。…さて、どれどれ…ふふ、やっぱり…これ、さっきより大きくなってるよ?」
心臓の音ですよー!心臓の音の話ですよー!
「必死になっちゃって……そうだ!私のこと、「可愛い」って言って!」
…またえらく唐突だなこの唐突野郎。
「さっき言ってたでしょ?「可愛いっていうのは、俺がお前に言うセリフだ」って。だから言って?」
断る。
「…言ってくれるまで、どかないから」
……………
「藍様、そろそろ帰ってくるかなー…」
……………………可愛い…です…
「ん?もう一回」
……橙は…可愛い…です…
「…ふふっ、よし、合格っ!」
そう言って飛び跳ねるように俺の上からどく橙。
…負けた。
鼻歌交じりにラン・らん・藍と嬉しそうに帰っていく橙。
勝者の後ろ姿を見つめつつ、俺はひとつ、大きなため息をつく。
…あの野郎、今度はこっちから奴の懐に潜りこんでやる。
12スレ目>>242
「うぁー・・・」
「ねぇねぇ○○君!」
「ん~?どしたの橙ちゃん」
「あのね、あのね!私としりとりしよ!」
「何でいきなり・・・まあいいけどさ」
「それでね!負けた方はね!勝った方のゆーこと一つ聞くの!」
「そんなに手を回したら危ないよ・・・
んじゃ、しりとり」
「リンカーン暗殺事件!」
「はい俺の勝ちそれじゃ夕飯のおかず買って来てはいこれメモと代金」
「うん!」
「・・・あるぇ~?」
※途中から混ざった様です
13スレ目>>518
春といえばこの季節でもある
○「よーし、つかまえた」
橙「やだぁっ! ○○離してぇ!」
○「だーめ。この前は途中で逃げられちゃったから今日は全身くまなくしてやるからな」
橙「いやだぁ! 藍さま助けてぇ!!」
藍「くっ……すまない橙……我慢してくれ」
橙「そ、そんなぁ……ふにゃああっ!! せ、背中がぞくぞくするよぅ……
○○もうやめてぇ……何でもいうこと聞くからぁ……誰か、誰か助けてぇ!」
○「はい、おしまい。ずいぶん抜けたなぁ」
橙「うー、体中がムズムズするよぅ」
藍「でもちゃんと櫛をいれないと家の中が毛だらけになってしまうからな。我慢するんだ。
……こ、こほん、○○? 今度は私のしっぽも頼みたいんだが……」
○「いいですよ、それじゃこっちにきてください」
藍「ああ。……やっぱり○○に梳かしてもらうが一番いいな。ああっ、そこそこ、そこがいいっ、も、もっとしてくれ」
○「はいはい」
新ろだ406
「ほう、君はちぇんと言うのか?」
「違うよ、橙、だよ」
「ちぇン、チェん、ちェン…チェン、橙!よし、覚えたぞ」
「あはは~変なの!○○名前覚えるの苦手なの?」
「いや、どうも異国の発音は難しくてね…」
あれから御握りをぺろりと平らげた目の前の猫叉は礼を述べた後橙と名乗った。
名乗られたならばこちらも返すが礼儀であるので、自らも○○と名乗り、法力僧をしていると自己紹介した。
「そういえば○○はここで何をしているの?ここ、私の秘密の場所だったんだけどなぁ…」
「はは、それは悪いことをしたね。僕はある目的のために旅をしている途中でね。偶然ここに辿り着いたんだ。」
「へぇ、旅してるんだぁ。どんなことしてるの?」
「いろんなことをしているよ。そうだなぁ…よく悪い奴を退治したり、村のお手伝いをしたりするよ。」
自己紹介が済んだ後はこのような会話が繰り広げられていた。
どうも橙はこの法力僧に好奇心を刺激されたらしい。
まぁ、それもそうだろう。幻想郷においても法力僧はかなり珍しいものである。
なんでも自分のご主人様に聞いて知っていたのだとか。
「橙のご主人様?」
「うん、そうだよ。藍様っていうの。とっても強くて優しいんだよ?」
そう嬉しそうに語る橙に、いい主に恵まれているのだなとなんだか穏やかな気持ちになる。
「そうか。橙は藍様が好きか?」
「うん、大好きだよ!」
「その藍様は今頃橙を探しているんじゃないかな?もう夜も遅いし、きっと心配しているよ?」
そう言うと橙の耳がしゅんと垂れ下がってしまった。
「うん、そうかもしれないけど………ケンカしちゃって。」
「それで飛び出してきてしまったのかな?」
「うん…」
そうか、とだけ答える。
実際とても困ったことになったな…橙を放っていくという選択肢は端からないからまあ面倒を見るのは確定としてだ。
食料をどうするかだな。
自分だけならば物忌みだけで食いつないでいけるが、育ち盛りっぽい橙を一緒の食事にするわけにもいかない。
ふむ。どうしたものか。まぁ、いざとなれば狩りでもすればいいか。釣りという手もある。
「橙、帰る気はないの?」
「うん、今はまだ帰りたくない…」
膝を抱えている橙は今にも泣き出しそうだ。ケンカをするのも初めてだったのかもしれない。
「…分かった。じゃあ僕と一緒にしばらくここにいるかい?」
「え!?」
「ここは廃村みたいだし、滞在には困らないからね。それに困った人を助けるのが僕の役目だし」
「ありがとう○○!」
「おっとっと」
勢いよく抱きついてくる橙を受け止めるが流石は妖。子供とはいえとんでもない力だ。
擦り寄ってくる橙をそのまま膝に乗せ、頭を撫でたり咽を擽ってやったりする。
咽をゴロゴロならして気持ちよさげに目を細める姿を見ていると心が和む。そうこうしている内に再び橙は眠ってしまった。
橙が眠っていた座布団に横にして毛布をかける。
さて、自分は明日の食料でも調達に行くとしますか。
もうちょっと続くかも?
短文スマソ
新ろだ536
ナー ミャー
ナーオ なー
「にゃーお(○○ーご飯くださーい)」
ニャー にゃー
みゃー なーお
五月蝿いほどの猫の鳴き声が響く。ウチにとってはいつもながらのことだ。
メシを食う前になると、ウチにやって来るのだ。
いつも猫を引き連れてるのはマヨヒガから来た橙という化け猫である。
「およ?今日は団体さんか」
「にゃーん」
「・・・わりぃ、橙。人間の状態で話してくれないか、猫の言葉じゃよくわからんのだ」
「にゃー」
二本の尻尾がある猫はドロンと煙を出し、煙が消えると人間の状態の橙がいた。
「んじゃ改めて、用件はなにかな?」
「えっとね、この子達お腹空かせてて、それでご飯が欲しいんだけどさ・・・」
「あいよ、ちょっとだけ待ちな。・・・いつものでいいか?」
「うん!いつものの【ねこまんま】でお願いしまーす!」
俺は台所へ向かい、味噌汁とご飯とニボシをまぜて猫達に与える。
猫達は一斉にねこまんまを食べ始めた。
…どういうわけか、どこからなのか殺気の篭もった視線が来てるのは気のせいなのか…?
…まさかな
「やっぱ猫はかわいいなぁ・・・」
「○○って猫が好きなの?」
「そりゃあもちろん大好きだよ、特にのんびりと寝転んでる姿がさ。」
「へぇー」
くるるる……
「あ…」
「ん?」
突然の腹の虫の音に橙は顔を赤くして俯いた。
なんだろう、グッと来る物が・・・
「橙も飯、食うか?今から飯食うところなんだが」
「うん!」
やっぱこの子は可愛いな。明るくていい子だ
…だが殺気の篭もった視線がさらに強くなった…背中がゾワゾワする…
飯を平らげた後、橙に聞いてみることにした。
「なぁ、橙」
「なーにー?」
「橙の尊敬する人?いや妖怪か。確か・・・」
「尊敬する人ー?藍様だよー♪」
「そうそう、その人。どんなひとなの?」
「藍様はねー、すっごく強いんだー♪」
「ほう、そうか」
橙は藍様っていう人の話を一時間位だろうか、
その人の話を聞かされた・・・
その人のことが好きなんだろうな、多分。
ん?視線が無くなった?
「○○ー」
「なんだ?」
「私のこと好き?」
「勿論。橙はオレのこと好きか?」
「うん!大好き!」
…やっぱ、この子は明るくて可愛いな。
しかし、あの殺気の篭もった視線は一体なんだったんだろうな・・・?
まるで「我が娘にどこの馬の(ry」っていう感じだったな…
勢いとともに書いてしまったが後悔はしていない。続きもしない。
新ろだ958
「……きて。……てください。」
年明けを迎えて炬燵でまどろんでいた時、自分を起こす幼い声が聞こえてくる。
新年を迎えた瞬間までは覚えているがいつの間にか寝てしまっていたようだ。
普段の朝も起こしてもらっているが、やはり必死に起こそうとしているのはかわいいなー。
寝起きの頭でぼーっとそんな事を考えていると、まだ起きていないと思ったのか声を少し大きくして肩をゆらしてくる。
「おきてください。一緒に初詣に行ってくれるじゃないんですか?」
正直起きかけの人間を揺らすのは眠るのを助長しているのではないかと思う。
ゆりかごとか電車で眠るのも適度な揺れがあるからだろうし。
まあそんなどうでもいい事は置いておき、若干涙声になってきた声にいいかげん反応しようと思う。
「起きてるよ、橙」
頭を炬燵からおこし薄眼を開けて横を見ると、涙目になっている橙の顔が目に入る。
「涙目の橙もかわいいなぁ」
(ちょっと寝ちゃったな。わるい)
寝起きのあいさつをすると、橙が頬を膨らませて怒った目でこちらを見てくる。
はて、俺は何か変な事を言っただろうか。
もしかしたら寝ぼけて変な事を口走ったか?
いや、ちゃんと寝た事をあやまったはずだ。
よしどこにも問題はないな、そう思って橙の目を見返す。
すると橙は、はぁと小さく息をはいた。
「涙目の私はかわいいんですか?」
「な、エスパー!?」
い、いつのまに橙は読心術を身につけたんだ。
これでは普段の生活に支障が出てしまう。
どうやって橙をいろんな格好やシチュエーションで辱めたらいいんだ。
もしかしてこれも読まれているのか、それならばどうすれば
「口に出てましたけど」
なんてシンプルな答えだろう。
その回答は予想外だったな。
「もう。それより早く初詣に行きましょうよ」
そうだなぁ、と返事をして橙の方を見て――――――
「は?」
思わずフリーズした。
「どうしたんですか?」
「いや、その格好は………」
「小母様に貰ったんです」
紫さんは何をあげて、ていうかなんでこんなの持ってるんだ。
この為だけに手に入れたんだろうなぁ、そんな人だし。
そんな俺の内心には気付かずに両手を広げて着ている紅白の和服―――ようするに巫女服を見せびらかしてくる。
「似合ってますか?」
非常に似合ってるよ?
初詣とは致命的にかみ合わない気もするけど。
まあ細かい事はいいか、本人がうれしそうなんだし。
「あぁ、似合ってるよ」
言うと嬉しそうに橙がはにかむ。
ほんとにかわいいなぁ。
よし、行くか。
炬燵の上にある財布と携帯をポケットに入れて立ちあがる。
玄関に向かおうとすると袖を引かれた。
どうしたんだ、と言おうとして橙を見る。
すると頬を赤く染めておずおずと手を出してきた。
しかし恥ずかしいのか声は出さずに下を向いてしまう。
なるほどと一人うなずいて、思わず苦笑する。
これは俺のほうから言うしかないんだろうな。
俺も手を差し出して微笑みかける。
「外は寒いからな、手でもつないでいかないか?」
「うんっ」
顔をあげた橙の顔には、今年最初の最高の笑顔が浮かんでいた。
新ろだ959
とある橙さんの家の一コマ4
師走の三十一日。今日も残すところあと二時間程で終わりとなる。
もうすぐ新年を迎えるというわけだ。本当に一年というものは過ぎるのが早い。
さて私は今、家族三人で食卓兼コタツにて年越しうどんを食べている最中であった。
別に妻の橙や娘は蕎麦が嫌いなわけではない。しかし、我が家では年越し蕎麦ならぬ、年越しうどんが恒例となっている。
まあ、理由としては主に私が原因なのだが…。要するに、私はソバアレルギーなので基本的に蕎麦を食べられないのだ。
そのため、毎年気をきかせて、妻がうどんと蕎麦を別々に作ってくれていたのだが、いつの頃からか家族みんな年越しうどんとなっていた。
何だか気を使わせているみたいで申し訳ないと言うと
「別に大晦日に蕎麦を食べなきゃいけないきまりはないですし。いいじゃありませんか、うちはうちですよ」
『そうだよ。それにわたしはおとーさんと一緒のが食べたいもん』
と二人は暖かい言葉をかけてくれた。なんとなく嬉しくなったが、それが顔に出そうになったので我慢する。
『ふふふ…どう、感動したでしょ? 明日は期待してるからね、おとーさん?』
すると、ふいに私の心を見透かしたように、娘が意地悪そうな顔でからかった。
ああ、そうか。明日は元旦だからね。子どもにとっては楽しみな日というわけである。
ふと時計を見ると、十一時半を少し過ぎたころであった。あと少しで除夜の鐘とともに新年が来るわけだ。
娘は今年こそは除夜の鐘を聞くと張り切っていたが、やはり睡魔には勝てないようであった。
お腹が膨れたせいもあるのだろう。娘は眠そうにウトウトとしだした。
コタツで寝ると風邪をひくので、妻が娘を寝室の方へと連れて行く。
一人になった私はボンヤリと時計を見ていた。今、時計は十一時五十分くらいである。
しかし、今年一年もいろいろなことがあったものだ。楽しいこともあったし、大変なこともあった。
妙に砂糖異変が多かった気もするが…。まあ、仲のよいカップルは不滅なわけだから、また来年も異変は起こるんだろうな。
それに、どうせ新年になったらまた雪が砂糖に変わるんだろう。それも、もう慣れたことだ。
なによりも今年一年、家族が特に大きな病気をすることもなく無事に過ごせた。これはとてもありがたいことである。
新年になったら、幻想郷の神様にお参りしにいかないといけないな。まあ、全員は大変だからいける範囲にはなるだろうが…。
私がそんな取りとめも無いことを考えていると、程なくして妻が戻ってきた。
「ただいま。うぅ…廊下が寒い。本当、この時期は猫にはツライわよねぇ」
と、尻尾の毛を逆立てて寒そうに震えながら言った。
そういえば妻はものすごく寒がりだったのを今更思い出す。
何だか悪いことをしたな。とりあえず妻にごめんねと謝った。しかし、今日は謝ってばかりである。
妻は、そんな大げさに謝らなくてもと言いながら、軽く笑ってコタツに入ろうとして、ふと動きを止めた。
そして、少し何事か考えた後、私の方を見てこう言った。
「あの…あなた? じゃあ、えっと…あなたへの罰として……あなたの膝の上に座りたい…です」
そう言った後、恥ずかしそうに妻は私に目で訴えかけてくる。
当然断る理由もないので、おいでと妻を私の膝の上に呼び寄せた。すると、妻は嬉しそうに私の膝の上に乗ってくる。
「ん~暖かい。何だか、久しぶりな感覚…ああ、とっても幸せだわ」
といいながら妻は気持ちよさそうに私の胸に身体をあずけてきた。
私は、冷たくなっている妻の身体を優しく抱きしめるた。すると、その小さな身体からトクントクンと心臓の音が聞こえてくる。
そのまま、しばらく私は妻を抱きしめていた。
やがて、その冷たい身体が私とコタツの温度と混ざり合って同じくらいの暖かさとなってきた。
心地よい暖かさの中、二人でまどろみかけたとき、ふいに遠くの方で除夜の鐘の音が聞こえた。
ハッと気がついて耳を澄ます。妻も気がついたらしく頭の耳をピクピクさせながら、除夜の鐘の音を聞いていた。
時計の針は、すでに午前零時をまわっている。
しばらく二人で除夜の鐘を聞いていたが、ふいに妻がこちらを向いた。妻の顔がこんなに近くにあるので、なんだか気恥ずかしくなる
妻もまさかこんなに顔が近くなるとは思ってなかったようで、顔が真っ赤になっている。
「あ、あけましておめでとうございます。今年も、そして今後ともずっとよろしくお願いします」
真っ赤な顔で、しかし嬉しそうに妻が新年のあいさつをしてくれる。
こちらこそよろしくお願いしますと私も妻を抱きしめながら言った。
妻も嬉しそうに私を抱き返してくる。すると、さっきよりもお互いの顔がさらに近づいていく。
そのまま自然に二人の唇は重なっていた。
部屋の中は時計が時間を刻む音がするだけである。
一旦唇を離して妻を見た。余程、長い間唇を重ねていたのだろう、二人とも息を荒げている。
それでもお互い物足りなくて、もう一度唇を重ねる。
そして、その内私たちは時計の音も何もかも気にならなくなっていった。
最終更新:2010年08月06日 21:21