アリス10
7スレ目>>759
一行告白
アリス、君の寿命と比べたら短いけれど。俺の命を、君の人生にささげさせてくれないか!?
一行返答
要らない。帰れ
───────────────────────────────────────────────────────────
7スレ目>>828
お前は孤独じゃない。だって俺がいる。
───────────────────────────────────────────────────────────
10スレ目>>678
最後の最期まで
貴方のコトを
ズルリ、ズルリ
やけに重く感じる自分の身体を引きずりながら夜の森を進む。
そして自分の家へ。やっとのことで辿り着き、壁沿いに這うようにして歩む。
まるで死に場所を求めているかのように。そう考えて小さく嘲った。そうだ、まさにその通りじゃないか。
「・・・まだ、伝えれてないっていうのに・・・・・・」
ポツリとつぶやいた言葉も、ただ空しく闇に消えていくだけ。
いつもはそれを聞き届けてくれる人形も、もう全部壊れてしまった。
もう、助からない。
わかってる、そんなことくらい。
だって、切り裂かれた所からは止めどなく血が溢れているのに、もう、痛みすら感じないのだから。
やがて歩く力も尽き果て、地面に崩れ落ちる。
こんな私にも、自分に最期の時が来た事くらいわかるつもりだ。
所詮魔法使いという種族は人間より寿命が長いだけ。攻撃を受ければ普通に死んでしまう。
それでも、まだ生きたいと思っている自分がいるのだけれど。
「だって、何も、何も言えてないのよ・・・っ」
傷口を押さえていた手は、真っ赤で。
でもそれ以上に、私の両手は、自分のものじゃない血で真っ赤で。
ああ、これは罰なのだ。
ただ、貴方の側にいるためだけに、血に、罪に染まった私への罰。
ただ少し、貴方の手伝いがしたかっただけ。
だから、妖怪退治なんてものを積極的にやり始めたというのに―――
「ふふっ・・・本当にバカね、私」
言葉にして伝えることが怖くて。
貴方に拒絶されるのが恐くて。
そして何より、この関係が壊れてしまうのではと思ったら、何もできなかった。
何もできないけれど、役に立ちたかったから、せめて仕事の手伝いをしようとした。
慣れない妖怪退治。
本当はしたくなかった妖怪殺し。
それで貴方の役に立てるのならと、必死に言い聞かせて頑張ってきた。
「ごめんなさい、弱虫で」
それでもせめてと、側にいる事だけを願って。
まあ、妖怪退治の相方なんて、お世辞でも良い関係なんて言えないかもしれないけれど。
「でも・・・私、貴方の側に居られて、本当に良かった」
そんな関係が心地よくて、幸せだった。
ずっと側に居れるのならって、柄にもなくそう思ってた。
人間と関わりを持つ事なんて好きじゃなかった筈なのに。
彼にとって私はただの相方で、それ以上でもそれ以下でもなかった筈なのに。
『おかしな奴だな、アリスは』
○○の、声が聞こえた気がする。『アリス』と、私を呼ぶ声。
貴方なら、地獄の底までも来てくれるだろうか。
こんな私を、見つけてくれるだろうか。
「○○は・・・・気付いてくれるかしら」
誰に看取られる事もなく、ひっそりと死んでいく私に。
託すように真っ赤な血で、古くなった家の壁に小さく文字を綴っていく。
書いたところから崩れるように滲んでいくそれは、きっと、貴方が来る頃には全部滲んで何も見えないのだろうけど。
それでもいいと、そう思った。
否、これで充分だった。
「・・・○○、私は、貴方を愛してたのよ」
だから、せめて眠りにつく前だけは。
「―――・・・愛してた」
この想いを空に還す事を赦してください。
”I love you... Good night.”
それじゃあ、おやすみなさい
私は先に眠るわ
きっと、この滲んだ文字に託した想いでさえも
貴方には届かないのだろうから
───────────────────────────────────────────────────────────
10スレ目>>638
ここは魔理沙邸前。
今、俺の目の前にはあいつがいる。
「こんなところで会うなんて奇遇だな、アリス」
「ええ、私もまさかこんなところで会うなんて思わなかったわ」
セリフだけから考えるなら俺達は単なる友人どうしにしか見えない。
だが、実際は違う。
「たまには違うところに行ったらどう? まあ、友人の少ないあなたじゃ無理だと思うけど」
「その言葉、そっくりお前に返してやるよ。友達の少ないアリスさん」
人によっては俺達のことをこう言うだろう。
あいつらの間には常に火花が散っているぞ、と。
そう、俺達は魔理沙をめぐる恋のライバルなのだ。
「二人とも、そんなところで何やってんだ?」
「「ま、魔理沙!?」」
「お、おう。で、何の用だ?」
「「え、えっと」」
ええい、何のためにここに来たと思ってるんだ、俺!
早く言わないと……。
「「クッキーを焼いてきたんだ(きたのよ)」」
勇気を出して言ったはいいが、横からも同じ内容の言葉が聞こえてきた。
「そ、そうか。二人が同時にそんなもの持ってくるなんて珍しいな。
まあ、茶ぐらいは用意するからあがっていけよ」
そう言うと魔理沙は家の中へと入っていった。
「ちょっと、男のあんたが何でクッキーなんか焼いてくるのよ!」
「時代遅れだな。今じゃあ、男だって料理スキルぐらい持ってるもんだぞ」
この女、どうやら俺と同じ考えでここに来たらしい。
昨日の魔理沙が言った、クッキーか何か甘いものでも食べたいなあ、って言葉に反応してだ。
「おおい、早く入って来いよ」
「くっ、覚えてなさいよ」
そして俺達は魔理沙邸に入っていった。
何回目になるかもわからない、魔理沙争奪戦の始まりである。
「いやぁ、やっぱアリスのクッキーはなかなかうまいぜ」
「あたりまえでしょ。どっかの誰かさんみたいに思いつきで作ってるわけじゃないんだから」
「どっかの誰かさんってのは誰のことなのかな?」
「さて、誰のことでしょうねぇ」
「「……ふふふふふっ」」
「じゃあ、今度は○○の方をもらうぜ」
「ああ、ぜひ食ってみてくれ」
魔理沙は俺の作ったクッキーを手に取り、口の中へ運んだ。
俺とアリスの二人は固唾を飲んでそれを見守る。
「うん、○○のもかなりうまいな」
「そんな! 素人のはずなのに……」
アリスは慌ててクッキーをつかみ、それを口の中へ放り込んだ。
「う、うそ。負けた……」
「ふっ、幻想郷に来るまでの俺の趣味はお菓子づくりだったんだよ。だから、クッキーぐらい焼けて当然だ」
「へー、そうなのか。何か意外だぜ」
そこで俺は隣に座っているアリスに勝ち誇った目を向けてやった。
彼女はその視線にすぐ気がついたようだ。
「……っ!」
「痛っ!」
いきなり背中に痛みが走った。
どうやら、アリスが思いっきりつねっているらしい。
しかも魔理沙に見つからないように。
だが、黙ってやられている俺じゃない。
「うっ!」
そう、俺もあいつの背中を力一杯つねってやった。
相当痛いらしく、少し涙目でこっちをにらんできた。
その後、こっちの背中の痛みがさらに激しくなった。
「くっ! 往生際の悪い……」
負けじと俺もさらに力を加える。
そしてさらにアリスも……。
それが何度か続いてから、魔理沙が口を開いた。
「二人ともどうした? なんか顔が少し赤いぜ」
「「な、なんでもないっ!」」
「そうか、ならいいぜ。ん? 茶が切れたな。また入れてくるぜ」
彼女はポットを持って台所へ引っこんでいった。
「ねぇ、少しいいかしら」
アリスが小声で話しかけてくる。
「私としてはそろそろこの不毛な戦いをやめにしたいんだけど」
「まったくもって同感だな」
「ええ、だからもう決着をつけようと思うの」
「どうやってだ? まさか川原で殴り合いでもするのか?」
「弾幕ごっこならしてもいいけど」
「遠慮しとくわ」
そう、俺は弾幕ごっこができない。というより、弾幕すら出せないんだ。
だから、こんなことで勝負されても困る。
理由は違うがそれはアリスの方も同じだった。
「……まったく、私は正々堂々と勝ちたいの。だから、こういう方法をとるわ」
そこで彼女はある提案を話してくれた。
要約するとこうだ。
まず、今日の帰り際に二人が同時に魔理沙に告白する。
そしてその返事をもらえた方が勝ち。負けた方はいさぎよく身を引く。
ここで俺がこの提案を飲まなければ、アリスは臆病だとあざ笑うだろう。
それも癪に思ったので、それに乗ることにした。
「ふうん。それでいいよ、俺は」
「ずいぶんな自信ね。ぶっつけ本番で出来るのかしら?」
挑発した目でこちらを見つめる。
「俺を誰だと思ってる? いつも感じている感情をそのまま伝えるだけじゃないか」
「まあいいわ。どうせ勝つのは私だから」
「それはこっちのセリフだ」
しばらくお互いに火花を散らしていると、ようやく魔理沙が戻ってきた。
「おまたせ……っと、どうやらお邪魔だったみたいだな」
見つめ合う俺達を見て、微妙に勘違いしたことを言いやがった。
「「だれがこんな奴と!」」
それに対して俺達もかなりベタな返し方をした。
さっきはああ言ったものの、実際に告白の内容を考えるとなるとどう言えばいいのかわからない。
しかも、その本人が目の前にいるのだ。
気恥ずかしいやら何やらで悶々と考えていると、いつのまにやらもう帰る時間になっていた。
「じゃあ、魔理沙。私達はそろそろ帰るわ」
「わかった。気をつけて帰れよ」
「でも、その前に私達からあなたに伝えたいことがあるの」
「ん、何だ?」
ついにこのときが来てしまった。
正直、心臓がバクバクしてて今にも破裂しそうだ。
「えっとね、その……私は魔理沙が……」
「俺は魔理沙のことが……その……」
「私がどうしたんだ?」
「だ、だ……だいす……」
「だい……、だ、だ……」
「だ? すまん、後ろが聞こえなかったんだぜ」
頭の中は真っ白だ。さっきまで考えてた言葉も全然出てこない。
でも、言わなきゃ。俺は魔理沙が大好きなんだって。
とにかく、言わなきゃ……。
「「だ……、弾幕ごっこしろ!(しなさい!)」」
「は? まあ、別にかまわないけど。○○は弾幕が使えないんじゃないのか?」
「う、うるせぇ! 男は度胸だろうが!」
「そうよ! 早くしなさいよ!」
「わ、わかったよ。じゃあ、外で待ってるぜ」
魔理沙はほうきとミニ八卦炉を手に取り、家の外へと出て行った。
ああ……、俺はなんてことをしてしまったんだろう。
いくら恥ずかしいからってあんなことを言ってしまうなんて。
横を見ると、顔を真っ赤にして震えているアリスがいた。
今の俺も第三者から見ればあんな風なんだろうな。
そんな詮無いことを考えながら、俺とアリスの二人はとぼとぼと外へ歩いて行った。
目が覚めると、草木の焼けるにおいが鼻をついた。
予想通りの結果だが、俺は今地面に横たわってる。
そして隣には同じようなアリスの姿がある。
その原因は魔理沙だけでなく俺にもあるが。
俺は開始早々アリスの人形をつかまえ、彼女の後頭部めがけて全力で投げつけた。
そしてその結果アリスはそれに気を取られ、弾幕の海に沈んだ。
まあ俺に勝ち目はないから、俺にとっての最悪の事態さえ避けれればそれでいい。
「やってくれるじゃない、○○」
「お前一人を勝たせるとでも思ったか」
「「ふふふふふ……、はぁ……」」
「で、魔理沙は?」
「もう帰ったみたい。私達が気絶してる間にね」
「……薄情だな」
「まったくね」
再び、二人はため息をついた。
「じゃあ、俺も帰るとするか。もう動けるぐらいには回復したから」
「私はまだ無理ね。あなたほど手加減されてなかったし、直撃だったから」
「無様だな、アリス」
「誰のせいだと思ってんのよ」
半ばあきれるような目でこっちをにらんできた。
「ふぅ、わかったよ。夜になると危ないからな。俺が送っていってやる」
俺は彼女を抱きあげ、背中に背負った。
「ちょっ、何するのよ! 放しなさい!」
「うおっ! 暴れるな、落ちるぞ」
「変なとこ触んないでよ! この変態!」
「せっかく送ってやってんのにその言い草は何だよ!」
「うるさい! 元はと言えばあなたのせいでしょうが!」
しばらくそんなやりとりを続けていると、お互いに言いたいことを言いきってしまったのか、話すことがなくなってしまった。
しかし、アリスって思ってたより軽いな。やっぱ女の子なんだな。
これでもう少し静かならかわいいのに……って何変なこと考えてるんだ!
俺は魔理沙一筋だろうが! その俺が何でアリスのことなんか考えなきゃいけないんだ。
だが、一度そう思ってしまうとどうもそのことが頭から離れなくなってしまう。
肩にかかる彼女の髪。ほのかに漂ってくる女の子の香り。
そして、背中に当たるむ(ry
はっ、いかんいかん! また変な考えをしてしまうところだった。
と、そこでようやくアリスの家にたどり着いた。
「えっと、玄関まででいいわ。もう歩けるから」
「そ、そうか……」
まずい。さっきあんなことを考えてたせいか彼女の顔を正面から見られない。
「一応お礼は言っておくわ。……その、ありがと」
「あ、ああ。別にいいさ。ま……また今度な。」
「……はっ。う、うん」
別れの挨拶をした俺は足早に帰った。
今のこの真っ赤にそまっているだろう顔をアリスに見せないために。
もしこのとき彼女の顔を見ていたら、俺はあることに気が付いていただろう。
そう、俺の顔と同じぐらいに彼女の顔も真っ赤になっていたことに。
そして彼女もまた、俺の顔を直視できていなかったということに。
───────────────────────────────────────────────────────────
10スレ目>>694
雨が、降ってきた。
夜の冷たい雨が降り、人通りのない暗く冷たい森の中。
点々と赤い道しるべを残しながら、それでもとアリスは家の壁を伝うように扉へと進んでいた。
しくじったわね・・・なんて考える頭もぼうっとしてきてハッキリしない。
本当は妖怪退治を終えたのだから真っ先に彼の所へ行って報告したいところだが、体が思うように動いてくれない。
如何せん、血を流し過ぎた。
切り裂かれた腹は熱く、血は止まるという事を知りそうにない。
雨のせいもあってか体温がみるみる奪われていくのが分かった。
カクンと膝が落ち、壁にもたれかかるように座り込むと、水溜りが赤く染まる。
「ん・・・・そろそろ、かし、ら」
顔の前に左手をかざしながら、自嘲と共に呟く。
傷口を押さえていたその手は既に血塗れで、今の自分は返り血と自分の血で全身真っ赤だ。
息は今までにないほど熱く乱れている。
酸素を求めようと呼吸を繰り返すが、喉元からこぼれてゆき失敗に終わっていく。
最悪の状況。
人形を持たない人形使い。
動く事もままならない重い身体。
指の隙間からこぼれてゆく、血。
「―――・・・・・・」
最悪の状況、なのに。
考えているのは自分の命の心配じゃなくて、もっと。
こうなる状況を作ってしまった、罪作りな男のこと。
私が望んで追いかけてきた、(私のことをどうとも思っていない、)あのひとのこと。
私が死んでも、(私があなたのことをどれだけ考えていたかも知らないで、)泣かないだろうあのひとのこと。
もとよりこんな関係だった。
そこに悔むべき箇所も、取り戻すべき失態もない。
何もできないからせめてと、この道を選んだのは私自身なのだから。
心残りがあるとすればただひとつ。
それは自分の力不足に他ならない。
勝手に追いかけて、ひとりで滑稽に踊って、そして最期は誰にも目を向けられず。
そして目的もただひとつだった。
私は彼に、○○に認められたいと思って、最初からそれだけで、
「・・・・・・ッ」
ふと、近づいてくる気配に口端を上げた。
「・・・見つかっちゃった」
仕留め損ねた残党が来たらしい。
少しくらい静かにしてほしいものだ、という願いとは裏腹に、バタバタと足音が大きく聞こえるようになる。
妖怪が近づいてくる。
光が殆ど差し込んでこないために、それらの表情はよく見えないが、きっと笑っているのだろうと予想する。
きっと、弱った私を見て、そして殺せるというコトが嬉しいのだろう。
「Good-bye, ・・・let's meet in hell.」
…最後に、さようなら地獄で会いましょうなんて恨み事を残して。
もう、どうにもならない事は分かっているけれど。
どうする事もできないのだから。
だから、すっと瞳を閉じた。
しかし、来るはずの衝撃はいつまでたってもアリスを襲う事はない。
不審に思ったアリスがゆっくりと瞳を開けると、そこにはさっきまで戦っていた妖怪たちの亡骸。
そして暗闇の中から、聞きなれた声が私の耳に届いた。
「―――・・・何を、やってるんだ」
その声の主に、アリスは思わず目を見開く。
「・・・意外。どうして、こんなところに」
そう言うと、彼は少し眉間にしわを寄せた。
何故かと思ったが、あえて口には出さなかった。
「そんなに意外か?」
「だって、○○が来るなんて、思わなかったもの」
ふふっと弱々しく途切れながらも笑うアリスに、○○がゆっくりと近づく。
そして、眉間にしわを寄せたまま、傷口にそっと手を添えた。
「・・・里の奴らがもう少しで来てくれる。そしたら治療できるからな」
「大丈夫よ、急所は外れてるし」
まあ少し、出血が多いけど・・・とアリスが笑う。
その顔に血の気はなく、『何が大丈夫なのか』と聞きたくなるほどで、
○○はその笑みを見るたびに胸を締め付けられるような感覚に、ぐっと手を握りしめた。
「・・・・・・どう、して・・・・・・」
「・・・○○?」
「どうして、お前は笑っていられるんだよ・・・!?」
『どうしたの?』とアリスは急に俯いてしまった○○の顔を覗き込もうとした。
しかし、それはアリスの首元に頭を埋めるようにして寄りかかってきた○○のせいで出来なかった。
「俺はお前を見つけた時、心臓が止まるんじゃないかと思うほどだったのに、今だって、」
ポツリ、ポツリと言葉を漏らす○○にアリスはじっと耳を傾ける。
「お前を失ってしまうんじゃないかと、」
「居なくなってしまうんじゃないかと、」
「なのに、お前は・・・笑って・・・ッ」
微かに肩を震わす○○の背になんとか手を回しながら、アリスは微笑んだ。
いつの間にか雨は止んでいて、同じように濡れていたはずの○○は温かく感じた。
「・・・ごめん、なさいね?心配かけて」
「・・・ゴメンじゃ、ねえよ」
顔を上げた○○と目が合う。
瞬間、アリスの表情は驚きへと変わった。
「○○・・・泣いてるの?」
「何で泣かなくちゃ、ならないんだよ」
「だって、涙・・・」
そう言って、アリスが○○の頬をゆっくりとした動作で拭う。
○○の頬には幾重にも水の流れた跡があった。
「・・・これは、雨だ」
○○がアリスの手を掴んで止めさせようとする。
けれど、アリスは止めようとはしなかった。
「・・・もう、雨は止んでるのに?」
「・・・っ」
「ありがとう、○○」
「!?」
…私の為に泣いてくれて。
私を想って泣いてくれて。
「・・・私、まだ夢じゃないかと思ってるのよ、だって、うれしいもの、」
でなければこれは死後の世界の幻覚か。
それほどに、○○がここに居てくれる事は得難い奇跡だったのだ。
「・・・○○、が、きてくれたって、こと」
会いたいと思った。
死ぬ前に、心の底から愛した人に会わせてほしいと、ただ願った。
無意識のうちに、祈っていた。
…それだけじゃない。
○○のあんな顔を見て、心配されて、その優しい言葉に、
なぜだかむねにわきあがるあたたかいもの。
…ああ、いとしいのだ、と。
私は本当に、このひとのことが―――
「大好き、よ・・・・」
そう微笑んだアリスが、ゆっくりと瞳を閉じた。
「・・・アリス・・・?」
ぱたりと話す事も、動く事もなくなったアリスに、○○は狼狽する。
まさか、という気持ちが沸き起こり、アリスの肩を強く揺すりながら必死で名前を呼んだ。
「アリス・・・ッ!!アリスーッ!!」
「五月蝿い」
「ふごっ!?」
刹那、○○の腹にドスッと突きが入る。
何事かと○○がアリスを見ると、不機嫌極まりない様子でこちらを睨みつけていた。
「少しぐらい寝かせなさいよ」
驚きを隠せない○○は、あんぐりと口を開けていて。
「な・・・!?死んだん、じゃ・・・・」
「勝手に殺さないで頂戴」
「生憎、まだ死んでなんてあげないから」
貴方に泣かれてまで、死ねるわけ無いでしょう?
だって心残りで
安心してあの世なんかいけないわ
貴方の泣き顔なんて
見てしまったら もう
(・・・勿体無くって何処にも逝けやしない)
───────────────────────────────────────────────────────────
10スレ目>>731
私は今日紅魔館に来ている、もちろん本を借りる為だ
いやいや、魔理沙と違って私は借りたものは返すわよ?
「んー・・・あれ?」
「どうしたのアリス?」
そんなこんなで図書館で物色していると、見慣れない奴を見かけたのだ
「アップルティーです、パチュリー様・・・・・・」
机に紅茶とシフォンケーキ、そして彼は私を見つめた
「ええと・・・」
「彼女はアリス、私の友人よ」
「そうでしたか・・・此処で執事をさせてもらっている○○というものです」
「へぇ・・・改めて、私はアリス、
アリス・マーガトロイドよ」
「よろしくお願いします・・・それでは仕事に戻ります」
お盆だけ持って彼は退室した
「ねぇ、彼って人間?」
「いえ、吸血鬼の出来損ないよ」
「へえ・・・」
そのときは特に気にも留めなかった
ちょっといい男ぐらいに思ってたんだけど
レミリアが気に入った男なんだから、何かあるんだろう、それぐらいの認識
そんな考えもすぐに何処かへと、私は読書に意識を戻すのだった
「はぁ、すっかり遅くなっちゃった」
本を読んでいるといつの間にか夜
パチュリーと一緒に本を読んでいると時間間隔がなくなっちゃうわね
「おや?アリスさんお帰りですか?」
「あら○○さん、私はもう帰るところよ」
「玄関まで遅らせてもらいます」
「ありがと」
相変わらず長い廊下、図書館から玄関まで十分近く掛かるのではないか、そういう長さだ
「そういえば○○さんはどうして紅魔館に?」
「どうして・・・そうですね、簡単に説明すると吸血鬼になって行き場がない私を、レミリア様が保護してくれたんです」
「へえ・・・え?貴方ってレミリアから派生した吸血鬼じゃないの!?」
「いえ、半端な方法で吸血鬼になったもので・・・半人前以下です」
たぶん、私が彼に興味を持ったのはこの瞬間ではないだろうか?
幻想郷に存在する唯一の吸血鬼、スカーレット
しかし此処に、スカーレット姉妹以外の吸血鬼が居る、それだけで彼の存在は重いものとなる
「アリスさん?もう玄関ですよ」
「え?あ、ああ・・・」
ちょっと色々考えてしまった、ボーっとするにも程がある
「あ、ありがとう!それじゃあおやすみなさい」
彼女は危ない足取りで闇に溶けていった
「大丈夫かな・・・」
「何が大丈夫なのかしら?」
「うひゃぁ!?さ、咲夜さん」
いつの間にか背後にいるのは慣れたけどいちいち耳にふーってしないでください
「うふふ、可愛いのね・・・このあと」
「あ、アリスさんを送り届けてきますねっ!」
脱兎の如く、逃げましたよ
以前あんな感じで誘われてホイホイついて行っちまって・・・
まぁ忘れよう、世の中にはそういうことのほうが多い、はずだ
「う~ん」
吸血鬼になるには吸血鬼にかんでもらうか、それ以外の方法で
「アリスーマエヲミテー」
「へ?きゃっ!?」
考え事をしていたせいで思いっきり太い枝におでこをぶつけてしまった
「いたた・・・」
驚いてついでにこけてしまった、お尻が痛い
「アリスさん!大丈夫ですか!」
「○、○○さん!?どうして」
「いや、うわのそらだったので、いちおう・・・心配で・・・」
差し伸べられた大きな手、一瞬躊躇って、掴んだ
彼の手が暖かかったからだろうか?なぜか私は恥ずかしくなった
こけた事もおでこをうった事も、なぜか無性に恥ずかしくなった
「あ、ああありがとう!それじゃあ」
彼女は俺の前からまさに脱兎の如く逃げ出した
でもすぐに何かにぶつかってうめく声が聞こえた・・・もうなんだかな
~後日~
「お邪魔するわ」
「あらアリス、またきたの」
「今日はちょっとね・・・」
「?」
館内をうろうろ、うろうろ
「何処にいるのよ・・・」
うろうろ、きょろきょろ
ただでさえ広い、そして部屋数も多いから探すのは大変だ
「吸血鬼なんだから日光が当たらないところにいるはずよね」
となると必ず館の中にいると思うんだけど
「う~ん・・・」
とりあえず上海と手分けして探す事にした
「はぁ・・・これで今日の仕事は終り・・・明日の分まで・・・いや止めとこう、明日出来ることは~って言うし」
「ミツケター、○○ミツケター」
「ん?人形・・・・・・・確か、何処かで見たような・・・」
「アリスー○○ミツケター」
「ああ、アリスさんの右斜め上にいた人形ちゃんじゃ無いか」
「グッドモーニング○○ー」
「え?ああ、グッドモーニング」
ずいぶんと愛嬌のある人形だ、可愛らしい事この上ない
「○○さん?」
「アリスさん、おはようございます」
「あ、おはようございます・・・ちょっとお時間いいですか?」
「?」
その後俺は吸血鬼になった経緯と方法を根掘り葉掘り聞かれた
根掘るって解るけどよ、葉を掘ったら裏に(ry
「じゃあまだ吸血鬼の能力を手にしたわけではないのね?」
「一応今は腐敗が終わって人間と同じぐらいにはなりました、でも身体能力などはまだ・・・治癒は少々」
「へぇ・・・じゃあ今は欠点だらけって事ね」
「はい・・・これから欠点を補うほどの能力がつけばいいのですが」
今のところ吸血鬼の欠点だけを持っている感じだ
個人的には怪力とか霧になるとかは便利そうなんだけども
「ふぅん・・・まぁつまりホントに出来損ないだったのね」
痛いところをつかれた、まったく持って反論できないのが悔しい
「まぁ最初から完璧な吸血鬼なんていませんよHAHAHA」
「ふふ、そういう事にしておくわ」
彼の手
暖かい手
大きな手
あのときの暖かい手の感触
なぜかドキリとしてしまった、なぜ?
「・・・アリスさん?」
「え?あ・・・」
いけない、私ったら彼の事ばっかり
「そ、そろそろ帰るわね」
「あ、はい、お送りします」
長い廊下、廊下の半分には日が当たらないように設計されている
当然彼は影を歩く
そうか、今は昼だから、玄関まで・・・か
そうよね、灰になっちゃうもんね
「ねぇ○○さん」
「はい、なんでしょう」
「いま・・・その・・・付き合ってる女性はいたりする?」
「い、いえ・・・いませんが」
「も、もしかして男s「男もいません!」
そうかそうか、この紅魔館で紅一点?でありながらフリーなんだ、そうなんだ
「じゃあ・・・私と付き合ってみない?」
「え?・・・」
「・・・」
「じゃ、じゃあ今度までに返事を頂戴ね!」
「ちょ、ちょっと待ってくださ・・・あ」
「ふふ」
彼女は既に日の光の下にいる
危うく灰になるところだった、つまりまんまと逃げられたわけだ
「またね~」
ひらひらと、陽気に手を振るアリスさん、結局声をかける間もなく、視界から消えてしまった
「・・・人生初の告白(される側)が・・・これか」
影の中で少し明るい気分になった
しかし彼女の言う次が気になるのも事実であった
「い、言っちゃった・・・」
心臓がバクバクと、大きな音を立てて鼓動を刻む
震えるぞハート!燃え尽きるほどの・・・尽きちゃ駄目だ
「はは、言えたんだ」
ほとんど勢いで、それでも言えた
意気地なしの自分が、言う事が出来た
ああ、日の光ってこんなにも・・・眩しかったのか
何となく、とても、機嫌がいい
そうだ、今日ぐらいは茶菓子を買って行って上げようかしら?
不思議と不安はない、拒絶が怖いとか、そういう気持ちは浮かばない
「何でかしら?・・・いい研究内容だわ」
(何故私は、こんなにも強気なのか?)
それはきっと恋の魔法
何処かの白黒のお株を奪わんばかりの・・・恋の予感
「次はいつ、紅魔館に行こうかしら?」
「彼女はいつ、紅魔館に来るのか?」
───────────────────────────────────────────────────────────
最終更新:2010年05月18日 22:32