アリス18



新ろだ726



「アリスー?いるかー?」

俺の手に持ってるのは神無月外界旅行のチラシ。
色々あってアリスのことが好きだと思う俺は外の世界へアリスと一緒に行こうとか思ってる。
無論目標はアレだろう


「お、こんなところにいたのか」

「あら、○○。丁度よかったわ。ちょっと・・・話したいことがあるのよ」

なんか雰囲気が違うな。
まぁいいか

「ん?話ってなんだ?」

「えーっと・・・そのね・・・」

「歯切れが悪いな。いつものお前らしくないぞ」

「う、うるさいわね!少しは乙女の事情も察しなさいよ」

おと・・・め・・・?

「なんか今すごい喧嘩を売られた気がするんだけど?」

「なんで心読んでるんですか。覚りじゃあるまいし。誤字にあらず」

「やっぱり喧嘩売ってるのね?いいわよ?かかってきなさいよ」

おぉう・・・これが惚れた女の凄みか・・・!
っと・・・。

「喧嘩売ったのは謝ります。ところでアリスさんの用ってなんですか?」

「なに行き成り敬語になってるのよ・・・。まぁいいわ。ところで○○はこれをしってる?」

そう言われながら見せられたものは、

「神無月外界旅行のあれですよね。まぁ知らないわけないじゃないか」

「よかったわ。・・・ってあなたも同じもの持ってるじゃないの」

「おっと忘れてた。・・・あれ・・・まさかね」

「なによ、変な顔して・・・」

おっとそんな変な顔してたか。

「アリスってまさか・・・俺と一緒にこれに行きたいってことか?」

「そう・・・そうだけど、なんか文句あるの!?このわ た し!と行きたくないってわけ!?」

「いえいえいえいえそんなわけないじゃないですか。大体俺だってアリスを誘いにきたってのに俺が断るわけないじゃないですか。」

「あら。それならいいわ。よかったわね。このわたしと一緒に行くことができて。」

女王様気質・・・。

だ が そ れ が い い 。

「はい。お付き合いしますよ。お姫様」







だがこれ・・・。
俺の目標達成できるのか・・・?



新ろだ827



 私の彼女はあまり表現が上手では無い。
「アリス」
「ん?」
 朝、朝食を取りながら彼女に声をかける。
 何時も通り紅茶片手に目線だけを向けて、
あまり興味無さそうに続きを促す。
「好きですよ」
「……そう」
 やはり興味無さそうに紅茶を飲み続ける彼女。
 ただその頬が朱色に染まっていくのを見て、
無関心では無い事が見れただけで良しとしよう。

「なあ○○」
「何? 霧雨」
 午後、散歩の為人里に出向いていた私に恋色魔法使いが話しかける。
 アリス亭でお世話になっている私は、霧雨やノーレッジ等
魔法使い関係の人と知り合い程度にはなっていた。
「お前、アリスの事どう思ってるんだ?」
「好きですよ」
「……即答かよ」
 ヤレヤレ、と呆れ顔になる霧雨。
……貴女が聞いてきたんでしょうが。
「だけどよ、あんまり反応もなければ好きだとも言って来ないんだろ?
それってお前的にはどうなんだよ」
「ん~……まあ、言葉が無いのは残念ですけど」
 まあ、仕方ないといえば仕方ないのだけれども……

 聞いた話によると、私が来る前はあまり人と話したり
人と触れ合う事を極力避けていたらしい。
 理由をそれとなく聞いた所によると
「だって、何時魔界に帰るか分からないでしょ?」
 とのことだった。
「人と触れ合えば触れ合うほど、私が帰る時辛くなるのよ」
「だったら、極力触れ合わない方が良いじゃない?」
 とか何とか、ネガティブ全開な事を言っていたので
「あるかも知れない明日を憂えるより、今日ある今を楽しむ事を考えましょうよ。
もしかしたら明日別れるかも知れませんけど、
その時笑顔で別れられて、楽しかった思い出に残しましょうよ。
……居なくなった事に気づかれずに、寂しくお別れなんて嫌ですよ」
 その時のアリスは、呆然とした様な顔をした後、物珍しそうに私を見て一言
「……ありがと」
 ボソリ、と呟くような声であったが、確かに私には聞こえた。

「なあ○○、ちょっと真面目は話をするぜ」
「ん?」
 昔を思い出していた私に霧雨が声をかける。
「その……私と付き合ってみる気は無いか?」
 また冗談でからかっているのか? とも思ったが、霧雨の目は真剣だ。
 そりゃ確かに霧雨とはまあまあ一緒に居る時間も多いし、
アリスの次くらいに付き合いの長い友人ではある。
 アリスと違って、好意を口に出す事も行動する事も一直線で躊躇いが無いと思う。
 でも……違うんだ、一緒に居て確かに楽しいとは思えるし、
話に花を咲かせる事も出来る友人だと思える。
 そう、友人なんだ……私には、霧雨が友人としか思えないんだ。
「……ごめん、霧雨。私には貴女が友人としか思えない」
「そっか……」
「ごめんなさい、でも私にはアリスしか見れないんです。
彼女の声なき声が聞こえるんです、だから私は残念だとは思うけど寂しくないんです。
あの人が私を思ってくれているって分かるから、
私を好きで居てくれるって分かっているから」
「へっ……そうかい、熱々な事で……だとさ七色人形使い!
盗ったり永遠に借りたりしないから安心しろよ!!」
「!?」
 ザッ、と人里の路地からアリスが出てくる。
「……馬鹿魔法使い、余計なおせっかいしすぎなのよ」
 胸の上海人形をギュッ、と抱きしめて顔を真っ赤にしながら霧雨を睨めつける。
「へへへ……私は恋色魔法使い、友人の幸せの為ならひと肌もふた肌も脱ぐさ」
 対して霧雨の方は余裕綽々、笑顔でアリスの視線に対抗している。
 ……嵌められた? もしかして霧雨に嵌められましたか??
「○○、アリスの事頼むぜ本当に。
そいつは不器用な上に変にプライドがあって素直じゃないからな!」
「魔理沙!!」
 恋色魔法使いは箒に乗って上空へ、混乱する私に魔理沙の笑顔が写る。
「○○!! 悪かったな変な事聞いて、だけどお前の思いは分かったよ。
アリスは大切な友人だからな、真剣に好きだって言える奴かどうか知りたかったんだ」
 隣で降りてきなさい! と言っていたアリスが、
大切な友人と聞いた瞬間にトーンダウンする。
「○○、お前ならアリスを幸せに出来ると思う! 私が保証してやるよ!!
だから精一杯愛してやれよ、お前なりの愛し方でな!!」
「分かっていますよ! 言われなくても!!」
 ニカッ、と霧雨が笑う。相変わらず笑顔が明るい人だ。
 そしてアリスの方へと顔を向け、ニヤニヤしながら
「アリスも良かったな、良い彼氏に巡り合えたみたいだぜ!
お前も不器用なりに変なプライドとか捨てて甘えてみたらどうだ?
その方がずっと上手くいくと思うぜ?」
「余計なお世話よ! ……○○も恥ずかしい返事しない!!」
 ポカポカと私の頭を叩き始めるアリス、どう考えても八つ当たりである。
「おお、コワイコワイ……じゃ、またな~」
「逃げるな魔理沙ぁぁぁ!!」
 颯爽と飛んでいく霧雨……
と言うかアリスも飛べるんだから飛んで追いかけたら良いんじゃないか?
「あ~もう!」
「え~と……アリスさん?」
「何よ!?」
「飛んで追いかけたら?」
「……この鈍感!!」
 また叩かれる私、頭が⑨になったら責任とって貰おうかな。
「馬鹿、追いかけたら一緒に居れないじゃない……」
 ボソッ、と真っ赤になったアリスが呟く。
「……ありがとう」
 頭をゆっくりと撫でてみると、頬の朱色が二割増。
「~~!!ほら○○、帰るわよ」
「はい、アリス」
 速足で歩きだすアリスを追いかけて、隣で歩幅を合わせようとすると、
アリスも合わせるように速度を緩めてくれた。
 ギュッ、と服を掴んでくるアリスの手。
 その手を優しく自分の手で包み込み、手をつなぎ合わせる。
「……ありがと」
「どういたしまして」
「その……えっと……大好き」
 ほほ笑みながら大好きと口にしてくれたアリスに、私はほほ笑んで
「私も大好きですよ」
 と返事する。
 不器用でちょっと意地っ張りで、言葉少ない彼女だけど、私はアリスが大好きです。



新ろだ832



「よ~アリス、良い天気だな」
 今日も平和よね……と、午後の紅茶を楽しんでいた私に声が掛けられる。
 ○○は人里に散歩……まあ、物珍しい物が多いらしく暇があると
散策に出かける事が多い。
「魔理沙、今日は何の用事よ?」
「ん~特にこれと言った用事は無いんだが……そういや○○はどうしたんだ?」
「ああ、○○なら人里に散歩に行ってるわよ、
あいつ暇だと良くフラフラしているわ……ねえ、魔理沙」
 勝手にカップを持ち出し、紅茶を注いでいる魔理沙に声をかける。
 思えば何を考えてあんな事を魔理沙に聞いたんだろうか……
今考えても良く分からない。
「ん? 何だ?」
「私って……○○に嫌われないかな?」

「私って……○○に嫌われないかな?」
「……はあ?」
 珍しくアリスが弱音を吐いている。
 意地っ張りで他人に弱味を見せたりしない奴が、
沈んだ表情で紅茶に写る自身を見つめていた。
「ほら、○○は私を好きだって言ってくれるじゃない」
「……あ~……そうだな」
 まあ私の目の前で、アリスの事が好きだとか真面目に言える奴だ。
 そのくらい大切に思ってくれているんだろうが、正直こちらとしてはご馳走様だぜ。
「でも、私ってあいつの事好きって言えたの……こ、告白された時くらいでね?
あいつが好きだって言ってくれるのは嬉しいのよ? 心が温かくなるって言うか……
でも、私あんまり表現するの得意じゃないから……そっけなくなっちゃうんだけど、
大丈夫かな? ○○……私の事嫌いにならないかな? 嫌われるのは……嫌だな……」
 おいおい……涙ぐむまで悩んでるのかよ……
 そんな事本人に聞いてくれよな、どうせ第三者である私が言った所で
気休めにしかならないんだろうし……
 ……へへっ、ここは恋の魔法使いの出番って訳だな!!
「ふ~……おし、決めた! アリス、今から10分後くらいにここに来てくれ」
「はっ?」
「良いから良いから、ここに来るんだぞ? 絶対だからな!!」
「ちょ、魔理沙!?」
 うじうじ悩んでるくらいな行動するってもんだぜ。
 一方的に言い放ち人里に向けて飛び立つ、目標○○! 全速前進だぜ!


 ○○の格好は幻想郷では目立つ、上空からでもすぐ見つけられる為サッ、
と隣に降下する。
「よう○○、散歩か?」
「やあ霧雨、そうですよ……まあ何時も通りと言った所です」
 しばらく雑談で時間を潰し、アリスが到着するまで待つ。
 アリスの気配(まあ魔法使いって奴は、周囲に同じ様な奴が居れば魔力で大体分かる)
を感じたのなら、作戦開始だぜ。
「なあ○○」
「何? 霧雨」
 まずは小手調べ、○○がアリスをどう思っているかを
再度聞きだしてアリスに聞かせる。
「お前、アリスの事どう思ってるんだ?」
「好きですよ」
「……即答かよ」
 はは、全くこいつらしい返答だぜ。
だけどあまりにあっさり返事が来て呆れるぜ本当……
「だけどよ、あんまり反応もなければ好きだとも言って来ないんだろ?
それってお前的にはどうなんだよ」
 さて、第二段階。
 アリスも気にしている、あまり表現できない事について聞きだす。
「ん~……まあ、言葉が無いのは残念ですけど」
 そう言うと○○は少しだけ何かを思い出しているようだ。
 まあ大体の想像はつくし、思いだすという行為に思考能力を
割いてくれるのはありがたい。
「なあ○○、ちょっと真面目は話をするぜ」
「ん?」
 さて、霧雨 魔理沙、一世一代の大芝居だぜ。
「その……私と付き合ってみる気は無いか?」
 大根役者では勤まらないこの役目、見事私が演じて見せるぜ。
 ○○は最初、冗談として受け止めた様だったが、徐々に真剣な瞳に変わっていった。
 へへっ……なんだ、私の演技も捨てたもんじゃねえな。
「……ごめん、霧雨。私には貴女が友人としか思えない」
「そっか……」
 残念そうに声色を変える……こりゃ恋の魔法使いじゃなくて
恋を弄ぶ詐欺師(エージェント)の気分だぜ。
 その間にも○○の告白(奴にしてみれば断わる為の口実)は続く。
「ごめんなさい、でも私にはアリスしか見れないんです。
彼女の声なき声が聞こえるんです、だから私は残念だとは思うけど寂しくないんです。
あの人が私を思ってくれているって分かるから、
私を好きで居てくれるって分かっているから」
「へっ……そうかい、熱々な事で……だとさ七色人形使い!
盗ったり永遠に借りたりしないから安心しろよ!!」
「!?」
 ○○の瞳が驚きに開かれる。
 ザッ、と土を踏む音がして後ろの気配が動く。
「……馬鹿魔法使い、余計なおせっかいしすぎなのよ」
 馬鹿ってのは酷いだろう、こっちは泣きそうなお前の為に
一世一代の大芝居を打ったんだぜ? こりゃ魔道書三冊は堅いな。
「へへへ……私は恋色魔法使い、友人の幸せの為ならひと肌もふた肌も脱ぐさ」
 ニヤニヤしながら後ろのアリスを振り向く。
 お~お~、真っ赤になりながらも睨めつける視線だけは健在だ。
 これならもう大丈夫だろうし、○○自身の本当の言葉が聞けたんだ。
もうあんなに悩まなくて済むだろうし、悲しい表情を見なくてすみそうだな。
「○○、アリスの事頼むぜ本当に。
そいつは不器用な上に変にプライドがあって素直じゃないからな!」
「魔理沙!!」
 よっ、と箒に跨り上昇する。
 もうあいつらは私が居なくても上手く行くだろうし、
役目を終えたお邪魔者は馬に蹴られる前に退散するのが吉だぜ。
「○○!! 悪かったな変な事聞いて、だけどお前の思いは分かったよ。
アリスは大切な友人だからな、真剣に好きだって言える奴かどうか知りたかったんだ」
 アリス、本当お前はどう思っているか知らないけどな。
 私にとってお前は掛け替えの無い親友なんだぜ?
だからこうして芝居も打てるし、背中を押す事も出来るんだぜ?
「○○、お前ならアリスを幸せに出来ると思う! 私が保証してやるよ!!
だから精一杯愛してやれよ、お前なりの愛し方でな!!」
「分かっていますよ! 言われなくても!!」
 お~お~、はっきり言ってくれちゃうものだ。
 まあ……そんな奴だから安心できるんだけどな。
「アリスも良かったな、良い彼氏に巡り合えたみたいだぜ!
お前も不器用なりに変なプライドとか捨てて甘えてみたらどうだ?
その方がずっと上手くいくと思うぜ?」
「余計なお世話よ! ……○○も恥ずかしい返事しない!!」
 はははっ、照れ隠しに○○の頭を叩いていやがる。
 あれじゃ可哀そうだな……まあ、彼氏の特権でもあり役目だ。
 我慢して受け入れるんだな○○。
「おお、コワイコワイ……じゃ、またな~」
「逃げるな魔理沙ぁぁぁ!!」
 後ろからアリスの叫ぶ声が聞こえてくるが無視して飛び続ける。
 どうせ追いかけて来る訳が無いんだ、このままゆっくりと逃げさせてもらうぜ。
「へへっ……恋の魔法使いを動かしたんだ、絶対に幸せになれよ、アリス」
 私は霧雨 魔理沙、恋の魔法使いだ。
 普段は適当に幸せと厄介事を、騒がしい毎日と楽しい日々を、
私は私の手の届く距離に居る奴等に撒いていく、
あいつらが笑って幸せに過ごせるように……そう願いながら。



新ろだ912


「ねぇ○○、髪触っても良い?」

 風呂上がり、特にやる事も無く本を読んでいた時アリスが声をかけてきた。
 本から顔を上げると、彼女も風呂上がりらしく少し頬が朱色に染まっていた。

「髪ですか? まぁ構いませんけど……」
「ありがと」

 私が許可すると、壊れ物を扱う様にそっと髪に触れる。
 髪に指を通してすいたり、ポフポフッ と軽く手を当てたりしている。

「……綺麗ね、○○の髪」
「そうかな? 特に何もして無いけど」
「うん、羨ましくなるくらいサラサラしてる」

 アリスの白く細い指が、私の黒い髪で踊る。
 単に触れているだけで、特に何かしようという訳でも無くただただ髪をすき続ける。

「……アリス? どうかしましたか?」
「ううん……特になにも」
「嘘ですよね」
「…………」

 無言 まぁ話したくないのならそれで構わないのだが……

「何か手伝える事があったら相談して下さいね」
「……うん、ありがと」



「何か手伝える事があったら相談して下さいね」

 彼が微笑みながら私の方に顔を向ける。
 私は多分、ありがとうと伝えたと思うが余りよく覚えていない。
 今、彼の手を握りながらベットに寝ているのだが一行に眠気は襲ってこない。
 それもこれも、昼にあった映姫から告げられた事を考えているからだ……


「アリス マーガトロイド」
「えっと……四季映姫 ヤマザナドゥ……だったかしら」

 楽園の閻魔 四季映姫 ヤマザナドゥ。
 何時もは彼岸の先、死者を裁く裁判所から滅多な事では出てこない彼女が
 何故ここにいるのだろうか?

「そうです、私が四季映姫 ヤマザナドゥ。 以後見知り置きを」
「……で、その閻魔様が私に何か用かしら?」
「まぁ、時間もありませんし手短に言いますよ」

 彼女が姿勢を正し(もっとも歩く時もピシッ と背を伸ばしているからそう感じただけだが)
 私を真っ直ぐに見据える。

「○○の道を歪める事は止めなさい、貴女が今積める善行は彼との思い出を沢山作る事」
「……はっ?」

 言っている意味が分からなかった。
 道を歪める? 私が○○の? もしかしなくても喧嘩売ってるのかしら?

「……喧嘩売ってるのかしら? 時間が無いなら無いで手短に片付けてあげましょうか?」

 人形達を展開させる私を、やれやれ……と言った感じに映姫は見ている。

「言葉が足りなかったのは認めますが、何もいきなり喧嘩腰になる事は無いでしょう」
「…………」
「ふうっ……まぁ良いでしょう、ちゃんと話しましょう。
 ……アリス マーガトロイド、貴女は魔法使い 寿命は人間なぞ及び付かない程、
 長い時を生きていける」

 そんな当たり前な事を今更言われても……
 表情に出ていたのか、映姫の顔が分かっています という表情をしていた。

「さて、何十年か後……もしかしたら明日かも知れませんが」

 一旦言葉を区切る映姫。

「○○が死ぬ時、貴女は見送る覚悟がありますか?」
「!!……」

 考えていない無い訳では無かった、彼と死に別れる事……
 しかし、考えていると言っても浅くすぐに忘れる様にしていた。
 考えても仕方ない事だ、まだそれは先の話だ……と。
 私的には見送るつもりであるし、後何年あるか分からないが一生懸命共にありたい、そう願った。
 だか映姫に面と向かって言われるとどうだ、腕が笑い始めそれが全身に広がってゆく。
 覚悟はある そう言うつもりが、口は無意味に開閉を繰り返す。
 もし、もし言ってしまったら……
「そうですか、それなら明日彼の寿命が尽きますので、連れて行こうが構いませんね」
 だが、一緒に生きて貰うと言った場合
「ならば貴女は人間を輪廻転生から歪める張本人であり黒、歪められる前に貴女を裁きます」
 勿論、負けるつもりは無いが映姫に逆らう事(弾幕勝負は遊び事なので逆らう事にはならない)
 は大体=で地獄、冥界等の諸勢力に宣戦布告しかねない。

「……まぁ意地悪な質問でしたね」

 無言な私に映姫は姿勢を解く。
 何かされていた訳でも無いが、力が抜け腰が砕けた。

「心配せずとも、彼の寿命はまだありますからご安心を。
 今の質問も直ぐに答えて貰う必要はありません」

 話は終わったのか、映姫が歩き出す。
 しかし私は足に力が入らず、立ち上がる事が出来ない。

「しかし、返答次第では……私は貴女と彼を裁かなければならなくなる。よく考える事です」

 すれ違い様にそう言い残し、一度も振り返らず映姫は去って行った。
 私は……○○が居ない生活に戻る事が出来るのだろうか?



 それは夜になるにつれて増大していった。
 彼と話しをしている間は平気だが、彼が眠り返答しなくなると不安は一層高まった。
 このまま目覚めないのではないか……そう思って。
 寝息を感じる為、彼の顔に自身の顔を近付ける。
 彼の体温を感じようと、腕を体に巻き付け抱きしめる、それでも足りない。
 私の心は締め付けられて悲鳴を上げている。
 悲鳴が結晶になって漏れ始める、目からぽろぽろと零れ彼の寝間着を少し濡らしてしまう。

「……助けてよ……○○」

 聞こえるはずもない弱音、彼に甘えられず、かといって離れる事ももう出来ない。

「泣かないでアリス、君が泣くのを見るのは嫌だよ」

 彼の腕が意識を持って私を抱き寄せる。
 彼の吐息が私の頭に息吹を吹き掛ける。
 彼の耳が私の悲鳴を聞き取り、彼の口が私の締め付けを和らげようとしてくれる。

「……寝て……ぐすっ、無か……?」
「声が聞こえれば起きるよ、それが泣き声なら尚更ね」

 ギュッ、と抱きしめる力が強まる。
 彼の鼓動がとくん、とくん……と生きている音を響かせている。

「さて、何をして欲しいかなアリス。 君が望むならなんでもしてあげるよ……
 出来なくても全力を尽くすさ」

 甘えている、私は彼に依存している。
 何時か、私は彼を人間としての道から踏み外させてしまうだろう……
 それが間違いか、正しいかは分からない。 
 私は所詮魔法使いなだけで神でも何でもないのだから。

「今は……寝るまで抱きしめて……」 
「了解」
「それと……何時か、一つだけ我儘を言わせて。時期は分からないけど……」
「アリスなら何時でも、何個でも良いよ。
 アリスに我儘を言われるのは頼られている証拠だからね」
「ううん、一つで良い。 その一つに全部籠めるから……」

 最後の最後に頼む我儘、その選択肢は二つしか無い。
 その選択肢は……




新ろだ922


魔界のお母様。如何お過ごしでしょうか。私のほうは元気にしています。目が覚めたら思いの人である○○が
隣で寝ていたという事実がなければもっと元気です。○○は下半身が元k(ry

「どんな状況よ………………頭痛い………………」

確実に事後なのは///分かってる///お股変な感じするし///
とりあえず冷静になるのよ私……昨日は……えっと………………

「神社で宴会があるって魔理沙に言われて……ついたら萃香と文にお酒しこたま飲まされて……」
「酔っ払って暴走して俺を押し倒したと」
「・・・。私のバーカ。○○……」
「なんだよ……正直酒が抜けてなくて頭ガンガンするんだ……」

謝らなければならない。こんなことして許される訳がない。私は○○が好きだけと……○○がそうだとは限ら
ない。だけど……言葉が見つからない……どの面下げて謝れと……

「先に言っておく」

言葉に詰まる私に彼は優しげな顔で私を見つめていた。顔が赤い。私も多分そうであろう。

「好きでもない相手なら問答無用で蹴り飛ばしてる。お前だから抵抗しなかっただけだ」

赤みが増す。呼吸が乱れる。それってつまり……

「私も……○○だからした訳で……やっちったのは酔った勢いだけど気持ちは……」
「あぁ、シてる最中にたっぷり聞いた。覚えてないだろうけど」

……。酔った私は随分と大胆だったらしい。覚えてないのが恨めしい………………

「んじゃ……改めて……」

頭を抱えていたら今度は○○に押し倒された。そして……

「んぅ!? ん、ん……! ん……ちゅ……ん………………ぷはっ!」

キスされた///しかも///

「ディープだなんて積極的ね///」
「いやいやアリスさんや。シてる最中の貴女に比べればこの程度」

……………。本当に大胆だったのね…………

「さてさて……アリスは覚えてないみたいだけど、昨晩は随分と気持ちの露呈を喰らいました。次は俺のター
ンですね分かります」

そうして○○は有無を言わさずに私を

~スキマ送りになりました。文句はルールに言って下さい~


その後、宴会のたびにからかわれたのは言うまでもない




END


新ろだ941


「……バカ」

 満員御礼の喫茶店。
 柔らかい木目調のデザインと美味しい飲み物が自慢のお店。
 その片隅で。
 アリスは独り、呟いた。
 視線の先にいるのは、ここでウェイターをやっている愛しい彼。

「いや、今日は喫茶店の業務がですね」
「別にずっとっていうわけじゃないし、いいだろう?」
「そうそう、お店が終わってからでいいから、私と付き合いなさい」

 等々。
 とにかく嵐のようなお誘いに辟易している。

 バカ。
 もっとちゃんと断りなさいよ。
 彼女が、ここにいるんだから。

 表立って、「自分が彼女だ」と言えないのが、こんなにももどかしいとは思わなかった。
 何でも、喫茶店の店員は店の人気のためもあって、そういうことはタブーらしい。

 はぁ。

 溜息をつく。
 何で、好きになっちゃったんだろうな。
 未だに、イブのお誘いに辟易している彼を見つめる。

 容姿は、十人並。
 性格は、やさしい所はあるけど、それくらい。
 お金は、どちらかと言えばないほうかもしれない。

 でも。
 外から来た人であるせいなのか。
 彼には、幻想郷の人にはない魅力があった。
 どこ、と言われると難しいけれど。

 その証左が、あの状況。

「……バカ」

 再び、独りごちる。
 彼が、なぜかもてるのはわかってた。
 自分も、どうして好きになったのかわからないけど、気がついたら好きになってた。
 けれど。

「彼女がいるんだから、きっぱりと断りなさいよね」

 並み居るライバルを抑えて、告白をOKしてもらったのは私なのだ。
 それが、他の女の子相手にヘラヘラ笑っているのだから、機嫌が悪くなっても仕方がない。
 そう、例え営業スマイルであっても。

 チン、と。
 彼に貰ったホットハニーレモンのグラスを、人差し指で強めに弾く。
 この音で、少しでも彼がこっちを向いてくれれば。

 だが、そっと横目で見てもこちらには気がついていない様。
 相変わらず、女の子の相手をしている。

 ……もう、バカ。

 ちょっとむくれて、窓の外を見遣る。
 曇ったガラスからぼんやり見えるのは、2人連れのカップルばかり。
 粉雪がひらひらと舞う石畳を、手を組んだり繋いだり。

 ……いいなあ。
 手持ち無沙汰な右手を、開けたり閉めたりしてみる。
 あるのは、窓際の少し冷えた空気。

 恨みがましく、彼を見ても。
 厨房に給仕にと忙しい彼は見向きもしない。

 何か、頼もうか。
 何度そう思ったことだろう。
 一言、発するだけで。愛しい彼の声が、自分に向いている彼の声が聞けるのだ。
 でも、頼めない。
 あんなに忙しそうに駆けずり回っている彼を見てしまったら。
 少しでも楽をさせてあげようと思ってしまう。
 結局、あるのは店に入ったときに頼んだ、暖かかったハニーレモン。

「私も大概、バカよね」

 ハニーレモンをちびちびと啜る。
 この喫茶店が忙しいのは、わかりきっていたこと。
 だから、クリスマスイブのデートの約束は、店の終わった後の午後11時。
 なのに。
 居ても立ってもいられなくて、開店してからずっと窓際でぼんやりしている。
 昨日はデートができるだけで、天にも昇るような心地で全然眠れなかった。
 それなのに、今はちょっと彼が女の子と話しただけで焼餅を焼いている。

 ちらりと。
 横目で時計を見た。
 まだ、午後3時。デートまで8時間。

「長いなあ……」

 ふぁぁ。
 思わず、欠伸が出た。
 昨晩はほとんど眠っていない。
 けれど、ここで寝るわけにはいかない。
 折角セットした髪も崩れてしまうし、グロス入りのリップクリームも落ちてしまうかもしれない。
 何より。
 彼に寝顔を見せるわけにはいかないのだ。

 ふぁぁ。
 また、欠伸が出た。
 ダメ、ダメよアリス。
 ここで寝るわけにはいかないの。
 彼に、だらしない女の子だと思わせるわけにはいかないの。
 そう思いながらも睡魔には耐え切れず、いつしかアリスは、眠りに落ちていった。






「アリス、アリス」

 ううん、なあに?

「起きてよ、アリス。クリスマスイブだよ」

 うん、クリスマスイブは彼とデート――。

 寝過ごした!?
 はっ、と。
 一気に目が覚めた。

 急に身体を動かしたせいで、肩に掛けてあった毛布がパサリと床に落ちる。
 目の前には、愛しい彼の顔がどアップで。

「ああ、やっと起きた」

 屈託なく笑う彼。
 薄暗い店内。
 窓から零れるイルミネーション。

 その時、鳩時計が鳴って。
 正確に11回、時を刻んだ。

 周囲を見て、やっと把握する。
 ああ、自分は居眠りをしてしまったのだと。

「……見た?」
「何を?」
「えっとそのー。……寝顔とかいろいろ」

 一縷の望みをかけて、尋ねる。
 でも、希望は打ち砕かれるためにあるもの。

「うん、見た。寝顔可愛かったよ」
「きゃあぁぁぁぁぁぁーーーーーーーー!」

 考えるより早く、手で顔を覆った。
 恥ずかしい。
 穴があったら入りたいとはこのこと。
 ただ、だらしない女の子とか、幻滅されている様子がないのが救いか。

 そんな、恥ずかしがるアリスに。
 彼はそっと手を触れた。

「どうした、アリス?」
「だって、恥ずかしいじゃない。寝顔とかすっぴんに近いところを見られるなんて」

 そう、アリスが言うと。
 彼はそっとアリスの手を取って、顔から離した。
 彼の暖かい吐息が耳元にかかる。

「アリスは、どんな顔でも可愛いよ」

 愛の囁き。
 じんわりと、胸が温かくなってくる。

「バカ。気障なこと言っているんじゃないわよ。顔が赤くなっているわよ」
「そ、そんなことはないって。大体、暗くて見えない筈だ」
「そんなことはないわ。だって――」

 横に座っている彼の首に手を回すと、そっと唇を重ねる。

「私が、あなたのことをわからないはずないもの」

 キスは、蜂蜜とレモンの甘酸っぱい味がした。



新ろだ945



「降って来たな……」

 仕事を終え、人里からの帰り道、ふと空を見上げるとふわふわと舞い始めた白い雪。
 今年も>>497の彼と彼女からホワイトクリスマスがプレゼントされるみたいだ。

「……っと、見とれて無いで早く帰らないと」

 雪を見上げる事を止め、また走りだす。
 仕事先の親父さんから、宴会の誘いを受けたが丁重に断り、家路を急ぐ。
 何時も元気に仕事をしてくれているから、感謝の気持ちを示したい
 との事だったのだが、私には先約が居る。

「冗談だよ○○君、君には先約が居るだろうからね……
 いや、先日指輪を買ったんだってね?
 何故知ってるかって? 馬鹿言っちゃいけないよ。
 そんな事ちょっと調べれば分かるし、何より長年の感って奴だね」

 頑張れよ と親父さんに後押しされ、仕事場を後にする。
 帰りながら考える事は、やっぱり準備した指輪の事や、アリスの事だった。
 指輪のサイズは前にさりげなく聞いたから合わない……という事は無いと思う。
 花とか買うべきだったかな? とも思ったが今更遅い。
 まぁ、後は帰ってから流れに身を任せるしか無いか……


「……っと、こんな物かしら」

 彼の帰宅を待ちながら、料理を食卓に並べる。
 うん、我ながら上手くできた物ね。
 クリスマスなんて、一人でしんみり過ごすか、
 母様と一緒に過ごすくらいしか思えなかったが……
 それが今年は彼と過ごすなんてね、夢みたい。

「……うん、しっかりと痛い」

 軽く頬を抓っても痛い事から、少なくとも最悪の夢オチ とかはありえないだろう。
 部屋の装飾はほとんどしていないが、
 彼はあまり派手な事を好まない事から構わないだろう。
 そう考えていると、玄関の開く音がする。
 どうやら帰って来たみたいだ。
 さて、○○は料理を気に入ってくれるかしら?

「アリス、ただいま」
「お帰りなさい、○○」

 ちょっとドキドキしながら彼を出迎える。
 彼の目が食卓の方に行き、嬉しそうに微笑む。

「頑張ってくれたのかな」
「勿論、腕によりをかけたわ」

 楽しみです 彼が寝室に着替えに行っている間に、シャンパンとグラスの用意をする。
 クリスマスケーキは先程から台所で冷やしてあるから、後で持って来る事にしよう。
 さて、後は楽しむだけかしら?


「それじゃあ、メリークリスマス。アリス」
「メリークリスマス、○○」

 キンッ と軽くうちあわせ中身を飲む。
 うん、しっかりと冷やされていて喉越しが良い。
 アリスの手料理は中々美味しいものであった。
 しっかりと下準備していたらしく、味も染みていて……朝から準備してくれたのかな?

「うん、美味しいよ」
「そう? それなら良かったわ」

 なんて事無い様な言い方をしておきながら、
 しっかりと俯いて顔が赤くなる辺り嬉しいのだろう。
 そんなアリスが可愛くて、くすくす笑うとアリスが何が可笑しいのよ 
 と言った表情で見上げてくる。
 特に何でもないですよ と笑うと、何でもないのに笑うわけ無いじゃない
 と少しだけ不機嫌になる。
 仕方なく正直に アリスが可愛いからだよ と伝えると、~~っ!!
 と声にならない声を上げて顔が真っ赤に染まる。

「……馬鹿、からかって楽しんでいるんでしょう」
「からかうつもりは無いですし、本当の事を言ったまでなんだけどね」
「…………」

 そんななんて事無い会話をしながら食事を進める。
 まあ、他の人達は外で騒いだりするのが良いとか、
 楽しいとかもあるのかもしれないけれど、
 私達にはこれくらい落ち着いていた方が良いと思う。


「アリス」
「ん?」
「手、貸してもらえますか?」

 ?マークを浮かべたアリスの手を借り、左手の薬指にそっと指輪をはめる。
 人里の商店で予約しておいた ダイヤモンドの指輪。
 驚くアリスの前で彼女に向けてほほ笑む。

「結婚は来年の春が良いけどさ、婚約は今でも構わないよね?」
「……あんたね……」
「突然で申し訳無いし、装飾した言葉とか何にも考えていないんだけど、
 言わせて下さい。 アリス マーガトロイド 私と結婚して頂けませんか?」
「……本当、唐突で何の前触れも無くて、直球ドストレート 簡潔な言葉だけね」
「すみません……」

 フフッ……とアリスが笑う。

「でも、貴方らしくて良いわ」

 ギュッ と指輪をはめた左手を胸元に抱きしめるアリス。
 嬉しそうに、大事そうにしてくれている……
 その姿を見れただけでも苦労した甲斐があるというものだろう。 

「○○」
「はい」
「新年の挨拶に、一度魔界に戻るかも知れないわ」
「そうですね、挨拶は重要です」
「……それだけ?」

 期待した表情で私を見つめてくるアリス。
 相変わらず遠まわしな表現だが、私にはその方が他人に分からなくて……
 私達だけが通じ合えている証拠の様で嬉しい。

「いえ、ご挨拶にご一緒出来れば嬉しいのですが……」
「ふふっ……ちゃんと今度は言葉を考えておきなさいよ?」
「勿論、義母様のご挨拶ですから……う~ん……どうしようかな」

 ブツブツ……と文面を考える私。
 そんな私の手を取り、しっかりと包み込むアリス。

「○○、ありがとうね」
「何がでしょうか?」
「私みたいな、不器用な女を選んでくれて よ」
「でしたら私もありがとう」
「なんで?」
「私と出会って、私と話してくれて、私を好きになってくれて ありがとう」

 ふふふっ、と彼女が笑う。
 お互い様だね お互い様ですね
 笑いあいながら彼女の頬にそっと手を添えると、
 その手に甘えるようにアリスが顔を寄せて来る。


 ありがとう、そう感謝の気持ちを籠めながら彼女に口づけを交わす。
 アリスとのキスは、何時も通り紅茶の味がした。



新ろだ961



「○○」
「なんでしょ?」

 もう今年も終わりだな……と思いながら紅茶を飲んでいると、
前に座っているアリスが声をかけてくる。

「今年はありがとう」
「それはまた突然だね」

 少しほほ笑みながら言う彼女に少し驚く。
 何時もであれば感謝の言葉とかそういった事を表現してくれるのは、
遠回しだったりボソッ と呟く様に言ってくれるものなんだが……


「何時も思っている事よ、今年はもう数分で終わるんだから、
締めにはしっかり言っておかないと後悔するもの」
「なるほど、なら私も言いましょうかね」
「なに?」

 ふふふっ と私が笑うと彼女もつられる様に少し笑う。
 私の場合は何時だってストレートに伝えてはいるが、
アリスにだけ言わせるのも何だか不公平な気がしたからだ。

「今年は私と共に歩んで頂きありがとうございました」
「貴方だからこそ隣に居たのよ」

 少し頬を朱色にしながらアリスが言う。 本当、今日は特別な日なのだろう。

「今日は素直だね」
「良いでしょ? 今年最後なんだから」
「嬉しい事です」

 少し手を伸ばし、アリスの手に触れる。
 アリスも手を少し伸ばし、私の手に自分の手を絡ませギュッ と握りしめる。
 こんな少しの事だけど、アリスに触れられているのがとても嬉しいし、
今年の最後はとても幸せに暮らせているんだと思える。

 ボーン……ボーン…… と柱時計が鳴る。

「あけましたね」
「そうね」

 少し名残惜しいが、アリスの手を離して姿勢を正す。
 手を離したとき、アリスも何だか寂しい様な勿体無い様な……
少し複雑な表情をしていた。
 かと言って新年の挨拶をしない訳にはいかないし、
その挨拶はちゃんとしないと示しが付かない。

「アリス、新年あけましておめでとうございます」

 深々と頭を下げ、アリスに新年の挨拶を送る。

「あ……あけましておめでとう」

 少し慌てながら彼女も姿勢を正し、私同様に頭を下げる。

「本年もよろしくお願いいたします」
「よろしくね」

 頭を上げ、アリスにほほ笑むとアリスも笑ってくれた。
 明日は神綺様に挨拶に行くらしいが……魔界って、人間行けるんかねえ?
 そんな事を少し考えたが、まあ今はどうでもいいか。

「えっと……新年最初の良いかな?」
「……全く、せっかちなんだから」

 そう呆れたように良いながらも、アリスの表情は嫌がってはいなかった。
 そっ と手を添え、アリスと口づけを交わす。

「……さて、今年は色々忙しくなりそうだけど……宜しくね、アリス」
「幸せになる為に忙しいなら臨む所よ、宜しくね○○」



最終更新:2011年02月11日 21:13