アリス19



新ろだ973



「幻想郷の気候は例年並み、寒い日々が続くでしょう……かぁ」

 新聞を読みながら紅茶を啜る、何時もの幻想郷の風景。
 まだアリスは疲れたのか眠っている為ここには居ないが、
まぁ今は好都合かもしれなかった。
何故疲れているかって?……まぁ、皆様の想像に任せるよ。

「……で、だ。この新聞に挟まれている用紙なんだけど……」

 新年特別アンケート『貴方はなぜその人に惹かれたのか?』実施中!!

 ……何故今交際している恋人、または嫁さんに決めたのかを存分に語って下さい
と言う事らしい。
惚気を延々諾々と語るなんて恥ずかしい事をやるなんて……
 まぁ、幻想郷の住人ならやるか。
(交際相手を堂々と自慢出来るのだ、これを放っておく訳が無い)
 それに他の人に語らせて、アリスだけ語らないというのは不公平だろう。

「……まぁ、良い余興だよね」

 なんて言い訳をしながら万年筆を握る。
第一、想い人はまだ夢の中だから十分時間はある。

「えーと……『貴方から見て彼女はどんな方ですか?』ねぇ……」

 こりゃまた惚気られる内容だ事で。

「アリスか……」

 少し考える様に目を閉じると、彼女の姿がくっきりと写る。
白くシルクのような肌、少しつりあがった瞳は、純度の高いサファイアのよう。
輝く朝日の様な金髪は流れる様に透き通り、ふわふわと触り心地は最高だ。
そんな見た目通り、彼女は強気であり努力家でもある。
 突き放す様な言い方をする事もあるし、
なにより素直じゃないから勘違いする人も多いが……
彼女は優しい人(妖怪?)だ、そうでなければ私が幻想郷で生きて暮らせるはずがない。
それに、優しい人でもなければ迷い人を一時的にでも守ってなんかくれないだろう。

「まぁ、不器用なんだよなぁ……」

 クスクス笑ってしまうが、彼女を表す言葉としては当たらずとも遠からず。
感情を表現するのが不得意で、知り合いとか友達にすら笑顔をあまり見せない。
内心は嬉しい癖に、冷めた表情を貼付けて興味なさそうにする。
あぁ、そういえば甘えるのが下手だけどアリスは構って欲しいみたいだよね。
 仕事上、上白沢さんや藤原さんと話す事が多いのだが、
そんな日には構って欲しそうな瞳でこちらを見ていたりもする。
 何で分かるかって? ……まぁこれでも彼氏だからね。
そんな視線に気付いて、軽く肩を引き寄せ、私と体を密着させるだけでも嬉しそうに微笑む。
 私の肩にアリスが頭を乗せて、のんびりする休日も幸福だったり……

「……いけない、完璧に惚気になってしまった」

 思いのまま文章を書いたが……
いやぁこれはまた惚気しか出て来ないなぁ……


「つ、次行こう次……えっと『その方の魅力的な所は?』か」

 ……全部?
 いやいやいや、手抜きとかそうじゃなくて真剣にそう思っているんだよ。
性格は不器用で意地っ張りだけど、優しくて暖かく、私を本当に必要としてくれて……
 抱きしめた時の、女性独特の甘い香りも良い香りだし、
少し顔を朱色に染めながらも私をギュッ と抱きしめてくれたり……
何と言うか、愛し合っている と思えるのだ。
不器用ながらも、アリスはアリスなりに私を愛してくれている。
それは胸を張って言える事だ。
 うん? 魅力的な所じゃない気もしてきたが……まぁ良いでしょう。
編集はプロに任せるとして、私は私の伝えたい事だけを書き綴ろう。
まぁつまる所、アリスは全てが可愛いと思うし、愛おしいと思うのだ。
惚れた男の弱みと言う奴で、彼女以外目に入らないと言うのも過言では無い。

「なんだか羞恥心と言う物が無くなって来た様な気が……えぇい構うものか!
我が○○の辞書に、撤退とか迂回とか、そんなまどろっこしい言葉は無い!!」

 よし、某黒い槍騎士連隊並のテンションになってきた。
 今なら魔術師すら倒せそうな勢いだ。

「最終詰問『その方に何か伝えたい事、叫びたい事があればどうぞ!』……」

 伝えたい事……か。
 うーん改めて問われると難しいもので、伝えたい事は次から次へと湧き出てくる。
 しかし、その内容は様々で日常会話で話せる事から、結婚式に伝えるべき事、
子供に関してなんて事まで出て来る。

「伝えたい事か……」

 もう一度言葉に出して考えてみる。
う~ん……やっぱり纏められないなあ……

「まあ、こうかな」

 アリス、私は貴女を共に歩む事をとても幸せに思っております。
どうかこれからも共に歩んで下さい、私に出来る事でしたらなんでも頑張ります。
だから何か困った事、辛い事、嬉しい事、楽しい事……なんでも良いです。
私と沢山話しをして下さい。


「……まあ、こんなものかな」

 軽く背を伸ばし、書いたアンケートを封筒に包み外に出る。
タイミングが良いというか、見ていたのかと言うか……
射命丸の使いであるらしい烏が郵便受けで待機していた。

「……見ていたのかい?」
「かあ」

 残念ながら私に烏語は分からない。
とりあえず封筒を烏に渡す様に出すと、機用にくちばしでくわえ空高く飛んで行った。

「さてと……とりあえず朝食の用意をしようかな。そろそろアリスも起きるだろうし」

 今日もまた、何時もと変わらない日が始まる。
アリスと過ごす、平凡な幻想郷の一日……



新ろだ993



「ふぁぁ……」

 まだ冬という事もあり、布団の温かさが眠気を誘うそんな中あくびをしながら起き上がる。
隣に目をやると、アリスはまだ夢の中らしく穏やかな表情で眠っている。
彼女を起こさない様に布団を出て、何時も通りに着替えて朝食の準備をする。

「ん~……今日は寒いからなぁ、とりあえずスープとパンかな」

 キッチンに入りながら内容を考える。
 やはり寒い朝には温かい飲み物は必需品だし、パン食が主流のアリスにはみそ汁より
スープだろう。
 まぁ、たまに炊きたての白米とみそ汁という組み合わせもあるが……

「ありゃ、薪が少ないか……」

 準備をしようとした最初から躓く私、夕食で使った分を補充し忘れてたみたいだ。
仕方ない と玄関にかけてある上着を着込み外の倉庫へと出かける。
まぁ、短い間に戻ってくるつもりだし鍵はかけなくて良いかな。

「寒っ」

 サクサクと霜柱を踏み締めながら、家の裏側の倉庫に向かう。
 薪は外に無造作に置いておくと、朝露によって濡れたりして使い物になら
なくなってしまう。
 冬は雪等で特に薪を作るのが面倒な為、裏側の倉庫に纏めて作った物をストック
しているのだ。

「よっと……まぁ朝使う分だけで良いか」

 適当に纏めてられた薪の束を取り、ついでとばかりに井戸から水を汲み上げる。
涌き水の様に透明で、現代の様に農薬や科学廃棄物等が無い為安心して飲める。
一応沸騰させた方が、雑菌等を殺せて安全性が上がるが、私は冷たい水が好きだ。

「……まぁまぁ慣れて来たかな」

 水道やガスの無い生活。毎日キャンプしている様で、ちょっと大変だが慣れれば楽しい物だ。

「○○!!」
「はい?」

 バタン! とドアが激しい音をたてて開かれる。
 名前を呼ばれたので、そちらを向くと寝ている筈のアリスが必死の形相でドアを
開け放っていた。
……何かやったっけ?

「アリス?」

 はぁ……はぁ……と息を切らせながら私を見ているアリス。

「○○……」
「はい、なんでしょ……ってうわっ!」

 フラフラと、不安げに歩いて来たと思うと、突然体当たりをする様に抱き着いてくる。
あまりにも突然だったため、受け止めきれずに尻餅を付く。
……あと少し横だったら井戸に真っ逆さまに落ちる所であった事に少しだけ肝を冷やす。

「びっくりした……ってアリス? もしかして……泣いている?」
「……ぐすっ……」

 返事の代わりに、背中に回した腕がギュッ と強くなる。
 表情は私の胸元に顔を押し付けている為全く分からないが、微かに震えている事だけは
分かった。

「……どうかしましたか」
「……いな……なっ……おもっ……」

 つっかえながら言葉を紡ぐアリス、よくは分からないが、居なくなったと思ったらしい。
食事の支度はお互い交代でする事は決めてあるし、今日は私の担当なんだが……

「夢……嫌な夢……」

 あぁ、悪夢でも見たのかな。
震えているアリスの背中を優しく撫で、頭をポンポンッ と軽く叩く。

「怖かった?」

 無言で頷くアリス。
なるべく一緒に居るのだが、それでもやはり【外来人】と言うのは大きな不安の種と
なってしまうのであろう。

「そっか……うん、分かった。 アリス、そんな薄着じゃ寒いんじゃないかな? とりあえず
家に戻らないかな? 暖かい紅茶を淹れるよ。
それから……今日はのんびりしましょうか、仕事もないからね」

 幾らこの頃暖かくなり始めたと言っても、寝巻一枚じゃ寒すぎる。
それだけ慌てていたのだろうけど……まあ、それだけ大切に思ってくれているんだと考えられる
から嬉しい事ではあるが、風邪をひかれても困る。
アリスは無言だったが、僅かに頷く様に顔を動かす。

「えっと……離れてくれない?」
「……嫌」

 フルフルと頭を横に振る。
嫌と言われてもなあ……アリスが上から抱きついて来ているものだから身動きが取れないし、
○ビル○ーツみたく背中にブースターが付いてる訳でも無いので、人一人抱えたまま
起き上がるなんて芸当は出来ない。

「……まあ良いや、このまましばらく居ようか?」
「……うん……」

 アリスと自分の体の間で難しかったが、なんとか上着のボタンを外し、
上着をアリスの背中に回して強く抱きしめる。
全く、冷えた体で寒いだろうに……

 しばらく、と言ったが、結局アリスはその後も離れたがらなかった。
その為、一日中アリスは私から離れず、子供みたいに膝の上に乗ったり、腕に抱きついたり……
少しでも、彼女の不安が無くなれば良いのだが……

「○○」
「ん?」
「ずっと……一緒に居てよ?」
「それは勿論、結婚まで誓った仲なんだから……安心してよ」
「……うん」

 その夜、アリスは私の胸元に顔を埋める様にギュッ、と寝巻を掴む。
ゆっくりと彼女を抱きしめ、アリスを包み込むように眠りに着く。

 後日談だが、私に抱きしめられる様に寝る様になってから悪夢を見なくなったそうだ。
今ではその就寝方法が常に取られる様になり、文文。新聞一面に馬鹿ップル健在!! などの
見出しを飾る事になるが……それはまだ別の話。




新ろだ1023




「ふぅできた・・・」

俺の手にあるのはチョコレート

なぜ俺がチョコを作っていたのか?
決まってるさ
このチョコを愛しのアリスに渡すためだ

・・・あれ?今日はどこへ消えたんだ・・・?

まぁ別に少しくらい過ぎてもいいだろう
渡すことに意義がある

            ・
            ・
            ・

「おーい、アリスー」

「あら、どうしたのこんな深夜に」

「ちょっと渡したいものがあってな」

と、俺の手から不格好に包装された小さなチョコを渡した

「俺からの愛のプレゼントだ。受け取ってくれ」

「って、これってチョコじゃない。どうしたのよ」

「まぁほら。今日はバレンタインだろ。だからチョコだ」

もう既に今日ではないが

「・・・バレンタインって女がチョコを渡す日じゃなかったかしら・・・?」

「幻想郷じゃ常識に囚われたら負けなんだよ」

「まぁ頂くけど・・・。私がチョコを貰ったっていうことは、あなたにチョコは渡さなくてもいいのよね?」

「え、あの、アリス様、ちょっとそれはないっすよ。」

そして彼女の小悪魔的な笑み

「ふふふ、冗談よ。はいこれ」


そして渡された俺とは天と地ほどに綺麗な包装されたチョコ

「アリス様・・・。ありがとうございます!」

「そのアリス様っての・・・やめてくれないかしら・・・」

「それでは、頂きます」

「全然聞いてないわね・・・。まぁいいわ」




「○○・・・。これちょっと苦すぎるわよ・・・」

「大丈夫、大丈夫。こっちのは甘いですよ」

「・・・・・・・・・」

「そんなに苦いなら俺の口からアリスの作ったチョコでも食べます?」

「・・・っばか!」

「残念ですねー。こんなに甘いのに」

「・・・やめてなんていってないわよ?早く頂戴な」

「では、お言葉に甘えて。お上がりください」





俺の甘い夜はまだまだ続きそうだ




新ろだ2-004


 バレンタインという日を過ごす人種を簡単に分けると、
大体四種類くらいに分類される。
 1 貰えるのは家族だけ、他には貰う事なぞなく己の嫉妬心に炎を絶やさない奴ら。
 2 義理チョコをばらまくだけばらまき、ホワイトデーでのお返しを期待する人。
 3 手作りチョコを作り、渡す相手や貰える相手が居る勝ち組。
 4 チョコで告白する勢いで頑張って恋愛する、甘酸っぱい人達。

「はぁ……私は一応3番なんだけどねぇ」

 そう本を読みながら溜息をつくアリス。
 確かに彼女には恋人(婚約者)が居るし、一緒に暮らしているが、
仕事で彼が家にいない時間がある事から、チョコを作る事は出来る。
 しかし、決定的な致命傷があった。 それは……

「なんであいつ、あんなにも料理出来るのよ……」

 そう、○○は料理が得意だったのだ。
 勿論アリスだって不得意とゆう訳では無いが
(クリスマスディナーを作れるくらいだし、交代で食事を作るのだから下手では無い)
 彼の手料理は、自分のより数段は美味しかったのだ。
和食、洋食、デザート、この三種類は相当経験を積んでいるらしく、
秘伝の調味料配分とか煮崩れさせない煮物の作り方、美味しい鰤大根の作り方……
上げればきりがない。
 そんな相手にチョコを渡すのだ、下手な物は作れないとプレッシャーが相当掛かる。

「でも初めて……初めてのバレンタインなんだから、
出来れば美味しいって言わせたいよね……」

 恐らく、どんなに下手でもいびつな形でも彼は喜んで受け取ってくれるだろう。
 しかしそれでは駄目なのだ、彼に余計な気を使わせているに過ぎない。
 それに……アリスにも意地というものがある、
彼氏に料理の腕前で負けているのは悔しい。

「……よし、頑張ろ」
「何を頑張るのです?」
「キャッ!?」
「ぬわっ!!」

 まさか背後から声をかけられるとは思わず、
手に持っていた本を思いっきり投げ付ける。
 バササッ! と本が開く音と、彼が後ろ向きに倒れる派手な音が耳をつく。

「あっ……だ、大丈夫○○!?」
「痛たた……大丈夫だよアリス、驚いたけどね」
「それはいきなり背後に立つ○○が悪いんでしょ!」
「えっと……それはすみませんでした、しかし何を熱心に読んでいたんだい?」
「あ……えっと、魔術書よ魔術書! ちょうどパチュリーから借りてきた物があるのよ」

 く、苦しかったかしら……

「ああ、成程……」

 信じた!?

「ま、まあそういう事だから……気にしないで」
「うん、まあ頑張ってね」
「ありがとう」

 多分新しい魔法の事とでも思ってくれたかしら……それならそれで良いわ。
よし、今のうちに準備しておかないと……



 そんなこんなで2月14日、バレンタインデー当日。
本日も彼は仕事らしく、朝早く行ってきます と言いながら出て行った。
彼の仕事は軽食屋の接客兼調理師らしい。
(人里の人間、妖怪問わずに経営している自営業の人に雇われているらしい。
彼曰くおやっさん)
 何と言うか……○○ってある程度なら何でも練習して上手くなるのよね。
努力家であるし、人当たりも良い物だから接客業とかも向いているらしい。
常連客の受けも上々らしく、男女両方に人気があるらしい。

 ……私と正反対な性格。

 ラッピングした手作りチョコレートが、微妙に重く思えた。
……ちょっと……見に行ってみようかな。
そう思った私は即座に上着を着こみ、彼の働いているであろう店へと向かった。


「いらっしゃいませ、おひとり様ですか? ってアリスちゃんかい?」
「……どうも」

 店に入ると、彼の雇い主であるおやっさんが出迎えてくれる。
店内はそれなりに込み合っている上、女性客で溢れていた。
その間を○○が駆けまわっている。

「いやあ……こんな日にまで○○君を働かせて悪いねえ」
「いえ……別に」

 おやっさんの言葉より、○○の方に目が行くのは仕方が無いのだろう。 
なにせ……

「○○さ~ん、注文お願いできますか?」
「かしこまりました~」
「あ~、次こっちお願いしますね~?」
「分かりました、少々お待ち下さいね~」

 ……何で今日の昼に女性客が多いのよ。
しかも名前で呼んでいるの!? それを嫌がりもせず受けるあいつもどうなのよ……

「あ、アリスちゃん?」
「……(イライライラ……)……」

 そんな私に全く気付かずに○○は笑顔で仕事を続ける。
ハキハキとした受け答えをし、注文の相談に乗り、時には冗談を言ったりしている。
そして、私にとっては衝撃的な展開が目の前で起こる。

「あ、○○さん。今日バレンタインデーって知ってました?」

 声をかけたのは烏天狗の妖怪らしく、黒い翼を器用に折りたたんで席に座っている。
そんな妖怪でも、彼は平気で返答している。

「成程。 ですからこんなにもチョコレート商品が出るんですね」
「そうそう♪ あ、私こんな物作ってきたんですけど」

 そう言いながら、手提げらしき物から箱状の物を取りだし○○に差し出す。 
……嘘。

「これは……えっと?」
「嫌ですね~、チョコに決まってるじゃないですか~」

 ……受け取らないよね?
受け取らないよね!? ○○!!

「……では、ありがたくお受け取りますね」
「ふふふっ、ありがたく受け取ってくれていいのですよ?」
「はい、ありがとうございます」

 ……馬鹿。
○○の馬鹿!!

「……!!」
「あ、アリスちゃん!!」

 おやっさんが何か言っていた気がするが、そんな事はどうでも良い。
訳が分からないし、それよりも○○が……
○○が私以外の人からチョコレートを受け取っているなんて……
 家に着くと同時に布団に潜り込もうとしたが、
胸元に入れておいたチョコが引っかかった。
……○○は人当たりが良いから、そりゃ私以外からも貰えるわよね……
 どうせ一つも貰えずに、寂しそうに帰って来るんだから私だけが……
私だけが○○に上げられると思っていたのに……

「……こんなもの、もう良いや」

 ポイッ、と入れてあったチョコを放り投げ布団を頭から被る。
もうどうでも良い、今日なんてどうでも良い……
でも、○○が帰ってきたらどうしよう。
 恨み事を言えば良いの? 八つ当たりみたいに喚き散らせば良いの?
もし……それで嫌われたら……本当に○○が私から離れたら……?
○○は適応能力がある、おやっさんの所でも住み込みで働かせてくれるだろうし、
私の変わりなんて幾らでも……そう、先ほどの烏天狗とかでも良いのかもしれない。
そうだろう、彼なら……

「アリス!!」



「あ、アリスちゃん!!」
「え!?」

 アリス? 来ていたのか?
え、もしかして最悪な場面見られましたか?
あれ、混乱してる? 私一体今何してるんだっけ?

「あらら……義理なんだけどなあ……文にだけ取材されない様に賄r……
ごほん、親交を深めておこうとおもっただけなんですがね」
「○○君! 今すぐ追いかけないと!!」

 え、追いかける? 誰をどうやって?
あ、仕事だっけ? 仕事しないと……

「しっかりしたまえ○○君!!」
「……あ、は、はい!」

 おやっさんに肩を揺さぶられ、ようやく正気に戻る。
制服をおやっさんに渡し、とにかく走り始める。

「道に気をつけろよ○○君!!」
「は、はい! この埋め合わせは必ず!!」

 人里からアリスの家までは走っても時間がかかるし、
木々が邪魔で走る速度も低下する。
 ええい、構うものか! 木々が引っかかり肌に無数の擦り傷が作られるが構わない。
このくらいの痛み、アリスがあの場を見てしまった痛みに比べれば……

「アリス!!」


 ○○が帰ってきたらしい。
布団から顔だけ出して包まった状態で○○を見ると、
息を切らせて、肌を露出した部分が傷だらけでボロボロになっている。
仕事熱心だから、終業まで帰ってこないと思っていた。

「何よ……」
「えっと……その……ごめん」
「……嬉しそうだったじゃない」
「……ごめん」
「聞きたい事があるんだけど」
「……何でしょうか?」
「天狗の子からのチョコ……どうしたの?」
「無礼だけど……置いてきた」

 置いてきたんだ……へえ……
と、言う事はあれは食べた訳じゃないのね。

「あれは義理で、私を取材したかったらしいんだけど……
受け取った事に変わりは無いよね……」
「……義理ねえ」
「その……本命はアリス以外受ける気は無いから……」

 ……馬鹿。
そう言って欲しいとは思っているけど、ああやって仕事場で隠れて貰っているような事
されると……私も信用できなくなっちゃうのよ。
……まあ、今回は……今回だけは仕事を放り投げて帰って来てくれたから……

「…………」

 無言で両手を○○に向けて突きだす。

「えっと……血で汚れます」
「汚くない」
「でも……」
「…………」

 無言で見つめると、観念したのかただ単に諦めたのか、
○○は私の両腕の中に入り、抱きしめて良いのかどうか分からないらしく、
そのまま固まっている。
 ならば私の好きなようにさせて貰おう。

「あ、アリス!?」

 ペロッ と傷口を舐める。
鉄の味と少々汗の様なしょっぱい味。

「痛かったでしょ?」
「えっと……はい」
「治してあげる」

 ○○の顔を両手で押さえ、血が出ている傷口もそうでない傷口も丁重に舐めてゆく。
勿論、唾液には殺菌効果がある為である。

「んっ……」

 舐めとる水音がやけに大きく聞こえるのは、周囲が静かだからなのだろうか。
○○も擽ったそうにしているが、逃げようとはしなかった。


 数十分くらいだろうか、○○の顔を飽きもせず舐め、
傷口の血が止まった事を確認してから彼の顔を離す。

「治ったかしら?」
「えっと……多分」
「ふふっ、なら良かった」

 ○○を離し、床に放り投げてしまったチョコを取る。

「多分砕けちゃったと思うけど……受け取ってくれる?」
「……はい、喜んで」

 なんだか随分遠回りした気がするけど……ようやく渡せた。
ラッピングを丁重に開けた○○が、チョコ(やはり中身は砕けていた)を
一つ取り口に入れる。

「うん、美味しい」
「そう、頑張った甲斐があったわ」
「あ、もしかして頑張るって……」
「うん、魔術書ってのは嘘、ごめんね? 驚かせたかったから……」
「別に構いません、私の為に頑張ってくれたんですから……」

 そうにこやかな笑う彼。
……そうやって笑うのはズルイ、○○に対して何も言えなくなる。
この笑顔を向けるのが私だけなら心配無いのだが……
仕事柄そういう訳にもいかないだろう。
 それならば……

「……ねえ、○○。明日も仕事よね?」
「そうだけど……えっと……休もうか?」
「ううん、休まなくて良いわ。 その代わり……」



「おはようございます」

 バレンタインデー翌日、○○君の元気な声が聞こえる。
昨日は大丈夫だったのだろうか? 声を聞いた限りは平気そうだろうが……

「やあ○○君おh……」
「…………」

 彼の額、首筋を見て少し驚く。
まあキスマークが付いていれば当然だろうか……

「……どうしたんだい?」
「えっと……証だそうで……」

 ああなるほど、領有権か……
彼は私のモノだ と言う事かねえ、若いって良いねえ。

「えっと……拭き取りましょうか?」
「いやあ……拭き取ると怖い目にあうかもよ?」
「?」

 彼の背後を指さすと、彼も振りかえる。
そこには槍や弓、剣等あらゆる武装を持った上海人形達が見ていた。

「「「シャンハ~イ」」」
「……わあ」
「ハハハハッ!!……まあ気にしないで良いよ。 ここは外界とは違うんだからね」

 バンバンッ! と彼の背中を叩き豪快に笑う。


 その後、彼が昨日の烏天狗にその有様について根掘り葉掘り聞かれる事になるのだが……
それはまた別の話。



新ろだ2-107


「最近、アリスの様子がおかしいんだが」

そんなことを言ってきたのは、魔理沙だった。
いつものように博麗神社に飛んできて、開口一番のそのセリフだったので反応するより先に疑問がわいてきた。

「おかしいって、どんなふうによ?」

それは霊夢も同じだったようで、俺が思っていたのとまったく同じ疑問を口にした。
その疑問に対して魔理沙はこう言った。

「いや、いつもなら私がアリスの家に行くとすぐに出てくるのに、この頃は入ったことすら気付かないこともあるんだ」

魔理沙が今言ったことは、おかしいとはっきり言えるようなものだった。
いつもならアリスの家に行くとすぐに出てくる。
本人曰く、勝手に歩き回られては困るということらしいが入ったことにすら気付かないというのは異常だった。

「というわけで〇〇、一回見に行ってくれ」

「は?なんで俺なんだよ」

「そうね。それが一番いいかもね」

「よし、多数決で決定だな。よろしく頼むぜ、〇〇」




というわけで、俺は今アリスの家の前にいる。
魔法の森の中はキノコの胞子でヤバいと聞いたのだが、そこは魔理沙の箒に乗せてもらい、最小限に済ませた。
そのあと魔理沙は「報告頼むぜ」と言って飛んで行ってしまったが。
とりあえず、俺としてもアリスのことが心配なのは確かなので様子を見ることにしてみる。

「おーい、アリスー?いるんだろー?」

魔法使いの家という割には普通のドアを開け、家の中に入っていく。
そのまま数秒ほど待ってみるが、いつもなら来るはずのアリスが来ない。
これは本当にヤバいか…?と思いつつ進んで行くと、いつもアリスと一緒にいる人形がいるのが見えた。
確か名前は…

「上海と蓬莱だったか?」

その声が聞こえたのか、二体の人形がこちらに向き直り、こちらに飛んできた。

「シャンハーイ」「ホラーイ」

そのまま、俺の服の袖を掴んで引っ張ってくる。
まるで、どこかに連れて行こうとするように。

「俺を連れて行こうとしてるのか?」

「シャンハーイ」「ホラーイ」

その言葉が正しいというように頷く上海と蓬莱。
ならば反抗するのは得策ではないと思い、引かれるがまま歩いていく。
そうして連れてこられたのは、アリスがいつも人形を作っているという作業部屋の前だった。

「ここ、なのか?」

「シャンハーイ」「ホラーイ」

また頷く。
その動作を見、意を決してドアノブに手をかける。
いつもならほとんど入ることを許されていない部屋だ。
だが、上海と蓬莱がそれを知っているはずなのに俺を連れて来たんだ。
ならば、入らないという選択肢は無い。

「アリス、入るぞ。…アリス!?おい、しっかりしろ!」

部屋に入った俺を迎えたのは、部屋の中央でうつぶせに倒れているアリスの姿だった。
それを見て慌てて駆け寄り、声をかける。
すると、声が聞こえたのか、アリスが眼をあける。

「あ、〇〇…?どうして、ここに…?」

「魔理沙がお前の様子がおかしいって言ってたから見に来たんだ。そうしたら上海と蓬莱に連れてこられて…。それより、大丈夫なのか!?一体何があったんだよ!」

「ごめん、ちょっと作業に夢中になってて寝てなかっただけよ。完成したから眠ろうと部屋に行こうとしたら目眩がして…」

「いったいどれだけ寝てないんだ?」

「えっ…と。多分二週間ぐらい、かしら…」

「そんなことしてたら倒れるのは当たり前だ!もっと体に気を使え!」

「どうしても、早く仕上げたかったから…。それに、魔法使いには、睡眠とかは必要ないから。でも、今回はやりすぎたみたい。少し、眠るわ。私が起きるまで待っててくれる…」

そう言うとアリスは返事をする間もなく眠ってしまったようで、すぐに寝息が聞こえてきた。
その光景を見て安心したのか、俺はそのまま座りこんでしまう。
その後、ここで寝かせるわけにはいかないだろうと考え、部屋に運ぼうとする。
だがその前に上海と蓬莱がアリスの頭を持ち上げて俺の脚の上に乗せてしまった。
…これは俗に言う膝枕というやつか?男女は逆になっているが。

「おい、上海、蓬莱。アリスを部屋に運びたいから手伝ってくれないか?」

「シャンハーイ」「ホラーイ」

その俺の言葉に首を横に振って答える二体の人形。

「このままでいろと…?」

「シャンハーイ」「ホラーイ」

今度の言葉には縦の首振りが返って来た。
やれやれ、奇妙な事になったもんだ…。
そう思いながらも、今はこの時間を過ごそうと、アリスの金糸のような髪を手で梳きながら再びアリスの眼が開くのを待った。
…アリスの寝顔は、いつもの凛々しい顔とは違い、とても可愛らしかった。





「…ごめんなさい」

「…いや、それは別にいいけど。それよりも、いったいどうしてあんなことになってたんだ?」

「…そうね、説明するんだったわね。……これを作ってたのよ」

そう応接間で言葉を交わす俺たち。
アリスの謝罪は、あの後数時間たった時、眼を覚ました時に目の前に合った俺の顔に驚いてとっさに平手で殴ってしまったことへの謝罪だ。
まあその後、事情を説明したら許してもらえたが。
ちなみに事情を説明した後、アリスは上海たちを褒めるべきか怒るべきか微妙な表情で見ていたことを報告しておく。
それはともかく、何故あんなところで倒れていたのかの説明をアリスに求める。
すると、人形たちがある一枚の服を持ってきた。

「…これは?」

「あなたのために作った服よ」

「は?なんで俺のために?」

そう答えると、アリスは呆れたような表情で―――実際呆れていたのだろう―――作ることになった経緯を話し始めた。

「あなた、前に妖怪に襲われて死にかけたこと覚えてる?」

「ああ、あの時のことか。覚えてるよ。本当にギリギリのところだったらしいな」

「そう、その時にあなた護身用の物何も持って無かったらしいじゃない」

「ああ、襲われるなんて考えもしなかったからな」

「あなたね…。まあいいわ。だからこれを作ったのよ。糸の一本一本に魔力を通して防御力を限界まで上げてあるわ。他にも、軽量化とかいろいろしてあるんだけど…。まあ一番は防御力を重視してあるから」

「ちょ、ちょっと待ってくれ。俺のために二週間もかけてこれを作ったっていうのか!?そんな手間をかけて?」

「さっきからそうだって言ってるじゃない。これはあなたのものだから持っていっていいのよ?」

「…なんでだ?そりゃこれだけの物をもらえるのは嬉しいけど、俺は返せるものなんて何もないし、何より理由がわからない。なんで俺のためにあんな無理してまでこれだけの物を作ってくれるんだ?」

それが俺の本心だった。
もらえるのは嬉しい。ましてやアリスが俺だけのために作ってくれたんだ、嬉しくないはずが無い。
だけど、理由が知りたい。
何でここまでしてくれるのか。
その問いに対する答えは、俺の望んでいた、だけど心のどこかで諦めていたものだった。

「……こと……きだ…ら」

「…?よく聞こえない。もう一回言ってくれ」

「あなたが…〇〇のことが好きだから!〇〇のいない世界なんて想像するのも嫌だから!」

「…え?」

それは誰がどう聞いても愛の告白といえるものだった。
それを聞いた俺は呆然として、だけど頭のどこかではその意味を確実に理解していた。
そんな俺を尻目に、アリスがどんどん言葉を放っていく。

「〇〇が妖怪に襲われて永遠亭に運び込まれたって聞いた時、居てもたってもいられなくてそのまま永遠亭まで飛んで行って、治療が終わって寝ている〇〇の姿を見たとき、本当に嬉しくて涙が出た」

そんなことを聞いたのは初めてだった。
意識が無かったからとかは関係なく、その時アリスを安心させてやれなかった自分が嫌いになった。

「その時に気付いたわ。わたし〇〇のことが好きなんだって。〇〇がいなくなったらわたしは死んでいるのと同じなんだって。だから、これを作ったの。〇〇が危険な目に合うことが少しでも少なくなるように」

その言葉を聞いて、俺に言える言葉は一つだけだった。

「ありがとう、アリス。俺も、アリスのことが好き…いや、愛してる。世界の誰よりも」

「え…?」

その言葉を聞いたアリスの顔は本当に予想外だというような顔で、俺は聞かずにはいられなかった。

「どうしたんだ?なんか変な事言ったか、俺」

「え、だって〇〇今わたしのこと、そ、その…あ、愛してるって…」

「ああ、愛してる。俺はアリスのことが好きだ」

その言葉を聞き、やっと実感がわいたのかアリスの表情が嬉しそうな顔に変わっていく。
だが、その後すぐに不安そうな顔に変わり、こう聞いてきた。

「本当に、わたしでいいの…?わたしは魔理沙みたいに明るくないし、パチュリーみたいにいろんな魔法を使えるわけでもないし、命蓮寺の魔法使いみたいに大人っていうわけでもないし…」

そんなことを聞いてくるアリスに、俺はこう返した。

「そんなことはどうでもいいんだ。俺が愛してるのはアリス・マーガトロイドっていう一人の女の子で、他の誰が何と言おうと俺の中で一番大切な女性だから」

そう言うと、アリスは泣きながら俺に抱きついてきた。
そうして俺は最後にこう付け足した。

「アリス、さっき俺は何も返せないって言ったこと、訂正する」

「え…?」

「俺は、お前を幸せにする。世界中のだれよりも、アリスのことを幸せにする。それが、俺がアリスに返せるものだから」

「…!!ええ、その言葉、絶対に忘れないから!嘘ついたら承知しないからね!」

そう涙を流しながら言うアリスを見て、俺は一つの決意をしていた。
まずは、魔法使いになる方法をアリスに教わらないとな…。
だってそうしなければ、幸せにするという言葉が、嘘になってしまうのだから。



新ろだ2-130


「なぁアリス」

「どうしたのよ」

「結婚するか?」

「・・・いきなり話しかけてきたと思ったらなによそれ」

「したくないか?」

「誰もそんなこと言ってないわ。その言葉はすごく嬉しいし、ずっと待ってたわよ」

こんな会話で始まる俺たち
なぜ俺がアリスと付き合っているかといえば話はそんなに長くはない

            ・
            ・
            ・
ある日のことだ
俺がふと適当な場所に足を伸ばしていた
俺の日課といえるようなものではあるがこの日は運が悪かった

妖精にでも化かされたのであろう
俺が進んでいたはずの道
それがいつのまにかスッと消えていた

これはまずい
こんなことを考えてる余裕があるなら大丈夫だろう
そんなことを考えている頭の中にあることが浮かぶ
どうにもならない
そう思っていたときだった

「まったく・・・危ないわね・・・」

落ちていくはずの俺の体はなぜか宙に浮いていた

「最近は飛び降り自殺が流行ってるのかしら?」

そのまま俺は地面に降ろされる
そして相手の顔を見る
・・・思わず絶句してしまった
目の前にいたのはあまりに美しかった少女だからだ

「大丈夫だったかしら?○○さん」

「何で俺の名前を?」

「有名よ?なにを考えてるかわからない人間がいるって」

俺はそこまで有名だったのか
こんな美少女に名前を覚えられるのは嬉しいが
まぁたしかにこんな場所まで散歩にくるってのはおかしいか

「まぁ怪我がなくてなによりだわ。それじゃ私はこれで」

「ちょっとまってください!」

「どうかしたのかしら?どこか怪我でもした?

「その・・・、俺と付き合ってください!

俺は何を言ってるんだ?
ほら相手ドン引きじゃないか

「本当に何を考えてるかわからないわね・・・。もしかしてただのバカ?」

「それは失礼な。何も考えてないだけです」

「やっぱりただのバカね。付き合うのは無理だけど・・・まぁ面白い人間みたいだし名前くらいなら教えてあげるわ。
 私はアリス・マーガトロイドよ」

「そうですか・・・。それは残念ですが・・・これからあなたを振り向かせようと頑張ります!」

「ふふっ、本当に面白い人間ね」

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            ・
            ・

「ってこれは最初の出会いか。じゃあ次の回想どうぞ」

「?」

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            ・
            ・

「あら○○さん、久しぶりね」

「あぁアリスさんでしたっけ。この前はどうも。
 俺と付き合う件について考え直してくれました?」

「どこにもそんな件なかったわよ。っていうかそれ本気なの?」

「本気ですよ。俺はアリスさんに一目惚れしちゃいましたから。
 そしてアリスさんは俺に惹かれる。わかっていますから」

「一目惚れでここまでって・・・。どれだけ自信あるのよ」

「俺の八割は自信でできてますから。
 俺にはこの幻想郷で一番アリスさんを幸せにできるという自信があります」

「どこからそんな自信が来るのやら・・・。
 まぁいいわ、あなたがそこまで言うのならその自信見せてもらうわよ」

「まさかアリスさん、俺に惚れました?」

「そんなわけないじゃない。少し見てみたくなったのよ、あなたの夢物語をね」
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            ・
            ・

回想おわりっと

「本当にそんなに長くなかったな」

「さっきから何独り言言ってるのよ」

「俺とアリスの出会いを簡単に思い出してたんだ。
 あのときは何も考えずに言ってみたが、言ってはみるものだな」

「・・・まさかあんな熱烈な告白されるとは思っても見なかったわ」

「そういえば、俺は一目惚れだったがアリスは俺のどんなところに惹かれたんだ?」

「惹かれてなんかいないわ。あなたには私がいないとダメだと思ったのよ。
 昔も、これからもね」

「それは参ったな。まぁ俺自身もお前がいないとダメなのはわかるがな」

「だからこれからも一緒にいてあげるわよ。感謝しなさい。」

多分これからも続くんだろうな
この一人では生きていけないような日々は
十割が自信で出来ていても
絶対に


最終更新:2011年02月11日 21:17