ルナサ1



1スレ目 >>61


「これを……受け取ってくれないかな」
俺はルナサに持っていたケースを渡す。
恐る恐るといった感じでルナサは受け取って、ケースの留め金をはずした。
「わあ…………」
静かにあがる感嘆の声。その声が聞けて心底ほっとした。
「幻想郷中を探し回ったよ。まさか外の世界のそれが、ここに残っていたなんてね」
ケースに収められたのは、長い長い年月を経てきたような、あめ色に輝くヴァイオリン。
「1730年作のグァルネリ・デル・ジェス。名器中の名器だ。外の世界なら、きっと億単位の値がつけられるだろうね」
ルナサの震える手がヴァイオリンのネックをつかみ、そして弓を握る。目がスクロールからペグ、そしてブリッジへとすばやく移動した。
どれもルナサにあわせて調整してある。
「こんなすごいのを……私のために……?」
どこか怖がっているかのような声に、俺は安心させるように笑ってみせる。
「約束しただろう。俺と君とで。君は最高の舞台で、最高の演奏を聞かせるって。そして俺は最高の舞台で、最高の演奏を聞くってね。だから、君に是非受け取ってほしい」
はっきりと、目を見て言ってみる。
しばらくして、ゆっくりとルナサはヴァイオリンを取り上げた。
静かに、演奏の姿勢をとる。
「いいよ、聞かせてあげる」
照れたように微笑んで。
「二人だけの演奏会、始めましょう」

プロポーズの言葉というより指輪代わりのヴァイオリン。
しかし実際買うとなったら全財産つぎ込んでも無理でしょうな。香霖堂の奥に埃をかぶっていたのを見つけだすしかないか。


1スレ目 >>147


 俺達は言葉を交わさぬまま、ただ肩を並べて座っていた。
 俺は静かに手元を見つめ、彼女…ルナサは空に浮かぶ半月を見上げている。
 傍では、空中に浮かんだヴァイオリンが静かな音楽を奏でていた。
「……あの、さ」
「うん?」
 振り返るルナサ。いつもの何処を見ているのかも分からない、糸のような眼。
 けど、それなりに一緒にいて…こんな俺でも少しは、その奥に見える感情も見える気がした。
 きっと…言うチャンスは、今しかない。
「俺…さ。ルナサの事…好きなんだ」
「……………ん」
 ルナサはふいと前を向いて、立ち上がった。
 そして、漂っていたヴァイオリンを手に取り…ゆっくりと、演奏を始めた。
 その音楽は、俺が聞いたこともない…言葉ではとても表せない曲だった。
 時に激しくうねり、時に優しく包みこみ…一時として同じ感覚を抱かせなかった。
 ルナサは瞳を閉じ、一心不乱にその曲を演奏し続けている。
 …それは、触れる事すらためらわれるほどに、眩しく輝いて見えた。
「……ふぅっ」
 一体どれ位の時間がたったのか。一時間にも、一瞬にも思えた。
 ルナサはバイオリンを下ろす。息は切らしていないものの、少し高揚しているようにも見える。
「どうだった?」
「どうって…凄かったよ」
 今でも体中が震えていた。魂を振るわせる演奏とは、あの曲のことなのだろう。
「あれはね…たった今、体の中で聞こえてきた音楽そのままよ」
「…聞こえてきた、音楽?」
「あなたの思いを伝えられて…私の心が奏でた音。それを可能な限り…演奏したわ」
 ルナサは、俺の瞳をじっとみつめて、そっとこう言った。
 少し照れくさそうな…それでいて自信に満ちた笑顔を浮かべながら。
「私は不器用だから…音に乗せて思いを伝えてみたの。これが、私の気持ち。私の答え。
 あなたの心に、私の心の音色は…伝わった?」
 俺の答えは…誰に聞かれるまでも、無かった。

 ルナサ姉さんはこんな風だといいな。


1スレ目 >>814


 >>164>>167見たいなノリでこれからもヘタレドリーム振りまいてもいいよね?
前みたいな一行告白とかあっさりふられたりとかそんなのもありだよね?
最近良作が多くてこんな風にビビってる俺はルナサ愛してるルナサ
あなたの張りつめた心のA線にそっと手を当てて優しく豊かに震わせたい

ルナサ「その嫌らしい手つきをやめなさい」

orz


1スレ目 >>969


…ヤバイ、道に迷った。
見渡す限り森、森、森。俺は呆れかえった。
神社の巫女に頼まれて普通の魔法使い、魔理沙の家の近くにある店に行ったのだが、これじゃあ今日中には神社に帰れそうに無いな。
それよりも、今日生きられるか考えないとな、下手すれば死ぬし。    そ ー な の か ー
何か聞こえたような気がするが、とりあえずは・・・ダッシュ!


「ハァ、ハァ、ハァ。走った、俺が、馬鹿だったぁ・・・」
走ったところで景色は変わらず、相変わらず木に囲まれた薄暗い森の中。
周りが少しずつ暗くなっていって、少し視界が狭まれる。
「このまま死ぬんだろうか・・・。あぁ、死ぬ前に外に帰りたかったなぁ・・・」
ここで死んだら誰か見つけるだろうか?・・・まぁ、いいか。
近くにあった切り株に腰かかり、・・・と、そこで遠くからバイオリンらしき音が聞こえた。
「これは・・・幻聴か?それでも、試してみる価値はあるかもな!」
そのかすかなバイオリンの音がする方向に向かって、もう一度走る。


走って少しして、突然視界が開けた。
そこに居るのは、黒い服に金色の髪、そして今バイオリンを演奏している少女だった。
(無我夢中で走っていたから気付かなかったが、良い曲だな)
俺は邪魔しないように、近くの切り株に腰かかり、目を閉じてその演奏を聴いた。
…と、バイオリンの演奏が急に止まり、少女がこちらを軽く見たあと。
「あなた、誰?演奏の邪魔なんだけど」
「ん?ああ、俺は・・・遭難者でいいのか?」
「私に、聞かれても困る」
彼女は間髪いれずに答えてきた。めげずに聞く。
「えっと、いきなりで悪いんだが、ここから何処に行けば神社にいけるかわかるか?」
「・・・とりあえずは、わかる」
「帰らないといけないんだ、教えてくれ」
こんな森の中で野垂れ死にはゴメンだ。すると、彼女はこちらを向いて。
「直線で行くには、あっち。今から走ったら、日が沈む前にいけるはず」
そう言って指差した方向を見る。俺が進んだ道の・・・・・逆、方、向。
「ありがとう。えっと、名前は?」
「名前を尋ねるときは、自分から名乗りなさい」
叱られてしまった。この年でしかられるとは、母親以来だ。
「あ、そうか。俺は、○○ってんだ」
「私は、ルナサ。ルナサ・プリズムリバー
「ルナサ、か。ルナサはいつもここで演奏してるのか?」
「まぁ、そう」
ルナサが曖昧に答える。そして後ろを向いて歩きながら。
「早く帰ったら?急がないと、沈む前に帰れない」
「マジか!?それじゃ、ありがとう!」
急がないと、妖怪にに食われてしまう。
俺は不思議な少女、ルナサ・プリズムリバーの事を忘れて、生きるか死ぬかを考えながら走って帰った。






とりあえずは沈むギリギリに神社に戻れた。その代償として足が棒のようになったが。
「ぜぇ・・・ぜぇ・・・し、死ぬ。えーりんえーりん、助けてえーりん・・・」
前に元気になる呪文を教えてもらったので言ってみるが・・・、効果なし。くそっ、あの白兎め・・・。
「まったく、どうやったら昼に出かけて、日が沈む頃に帰ってくるのかしら?」
そう呆れ半分、疑問半分で言ってきたのが、この神社、博麗神社の巫女博麗霊夢だ。
それよりも、少し気になる事があって霊夢にたずねた。
「そうだ、少し気になったんだが・・・」
「なに?」
「霊夢のスリーサイz」

―――ゴスッ!
鈍い音とともに俺の後頭部に激痛が走った。霊夢の手元を見るといつの間にか、お払い棒が。
「変なこと聞かない、次聞いたら地獄見るわよ」
「うぅ・・・冗談なのに」
「冗談に聞こえなかったわ」
俺の反撃もあっさりかわして、霊夢が答える。
「まぁ、それよりもだが」
気を取り直して俺は、今日の昼から起こった出来事を話した。
里に行ってから帰り際に道に迷った事。そこで金髪のバイオリンを演奏するルナサと言う少女にあったことなど。
一通り話した後。
「あんたね、行く前に地図渡したでしょ?」
「コレは、魔理沙が見ても解らん」
そう言って胸元のポケットにあった紙を見せる。適当に書かれた神社と、その上辺りにある店。・・・それだけ。
「それに、東西南北ぐらい書いてくれ」
「書いたところで解らないでしょ」
多少呆れながら霊夢が反撃をする。残念ながら対応策はある。
「解るぞ、このコンパスがあればな!」
そう言ってポケットからコンパスを取り出す。さながら外の世界で昔見ていたドラ○もんのような感じで。
「その、コンパスとやらをよく見てみなさい」
そう言われたので、よく見てみると・・・あっちらこっちらクルクル回転している。
「幻想郷では、東西南北なんて無いわ。あるのは上下左右と前後だけ」
霊夢から聞いた、この事で俺は呆然とした。
「そー、なの、かー」
かろうじて言った言葉がコレである。一気に形勢逆転、俺は崖っぷちに立たされた。
「解った?だから地図に東西南北かいても意味が無いの。・・・ってことで、あんたが晩御飯作ってよね」
そう霊夢からちっこい閻魔様の説教以上に厳しいお言葉を言われて、さらに地獄いきとも言われた。
俺が呆然としていると、目の前で霊夢がお払い棒を振りかぶっていた。
「さっさと・・・・動けぇ!!」
天秤打法奥義円月殺法を頭部にもろに食らった俺は、静かに昏倒する。
「だぁからチルノは、アホなのだぁ!!」
薄れ行く意識の中で、取り付かれたんじゃないかと思う程ノリノリの霊夢の声が聞こえた気がした。

チルノはアホじゃない!バカだ!




「そうそう、帰れる時期が決まったわよ」
何とか覚醒した後、霊夢がいきなり切り出した。
「そ、そうか!で、いつ頃だ?」
元々外から来た俺は、この幻想郷には慣れにくい。と、いう事で帰れるかと頼んだのだ。
「そう焦らないの。だいたい・・・一週間前後ね」
「一週間か・・・」
そう聞くと長そうで短いと考えられる。まぁゆっくり過ごせばすぐだろう。
「まぁ、ほとんどは紫の気まぐれだけど。二週間とかにはならないと思うわ」
霊夢がめんどくさそうに言ったその後。
「で、晩御飯は誰が作るんだっけ?」
殺気と有無を言わさぬ威厳をあわせて聞いてきた。ああ、怖い怖い。
「俺だよ・・・。今作るから待ってろって」
そういいながら台所に逃げ出すように向かう。


――――翌日
俺は懲りずに森の中に入っていた。理由は、もう一度あの演奏を聴きたいがために。
今度は迷わずに・・・は行けなかった。その代わり耳を澄ましているとかすかに音が聞こえる。
俺はその方向にゆっくりと行っていた。気付いたら走っていたけど。
前と同じ場所に、いた。空からあふれる光に照らされて、そこだけ別の空間のように。そこに彼女はいた。
今度も同じ場所に座り、前回と同じように演奏に耳を傾ける。
~~~♪ ~~~♪ ~~~♪
ゆったりと流れる曲、聴いていると悲しい気持ちになるかもしれない曲。
…と、演奏が終わったのか。ルナサが演奏をとめた。
「また来たの?・・・それとも、また迷ったの?」
こちらを見ずに聞いてくる。
「迷ったわけじゃなくて。ちゃんと来たんだよ。・・・途中迷ったけど」
俺の答えに、ルナサが少し笑ったように見えた。しかし、すぐに元の表情に戻った。
「アナタも懲りないわね。下手したら死ぬのに」
「死んだら死んだでいいさ」
自分が言ったのになぜか違和感がある。きっと鬱になったんだろう。
少しの沈黙の後。
「・・・ねぇ、・・・少し話・・・しない?」
多少赤みが差した頬と一緒に遠慮がちな声が聞こえた。
「ん、まぁいいけど」
俺はそっけなく答える。ルナサが少し安心したような表情をした後、近くの切り株に座って、自分のことを話し始めた。
自分は四姉妹なこと。自分が長女で、次女は白い服のトランペッター、メルランと言って毎回廃テンションな事。
三女は赤い服のキーボード担当のリリカで、毎回悩まされているなど。
中でも一番驚いたのが、ルナサが騒霊だということ。
「騒霊・・・?幽霊か」
「幽霊とは違うと思うけど、大体は同じ。私たちは演奏をするの。ポルターガイストも、騒霊なのよ」
そのほかにも色々と話してくれた。話しているときはルナサはうれしそうに話していた。
俺はその話をしっかりと聞く。

「・・・・だいたいこんなものかな?じゃあ次はあなたのこと」
いきなり話を振られたので、何を話して言いか戸惑う。
「お、俺も話すのか?」
「当たり前。私のことを話したのだからあなたも話すべきよ」
そう言われたので渋々話すことにした。
外の世界に住んでいたこと。一人で住んでいたことなど。あまり話すことがないのですぐに終わった。
「ふぅん・・・大変ね」
全部聞いた後、ルナサがそう感想を漏らした。
「まぁ、あと少しの辛抱だけど」
「どうして?」
少し興味を持ったのか、聞いてきた。一瞬言葉に詰まる。
「・・・・・・慣れるのは時間の問題だろうし」
本当のことを喋ろうとしたのだが、なぜか後ろめたい気持ちがあったので、つい嘘をついてしまった。
それきり話すことがなくなったので。お互い森の中の音を聞くことにした。


「姉さん!やっぱりここにいた」
声がしたほうを向くと、肩で息をしている赤い服の少女がいた。たしか、リリカと言ったか。
「どうしたの?リリカ」
ルナサが驚いて聞く。驚いてるようには見えないが。
「どうしたのじゃないわよ・・・、コンサートのリハーサルの時間がそろそろ始まるってのに・・・。
 ん?姉さん、その人・・・誰?」
リリカがこちらに気付いて、訝しげに見た。
「ただの観客よ」
ルナサが素っ気無く答える。
「ふぅん・・・まぁいいや。姉さん早く!」
リリカがルナサを急かす。どうやら急ぎの用らしい。
「んじゃ、帰るとしますかな」
「私も急がないといけないから・・・」
「ん、じゃ」
そう言ってヒラヒラと手を振って帰る。・・・さて、神社に帰って霊夢の手伝いでもしてるか。






その翌日も、翌々日もいつもの場所に行ってルナサと話をしていた。
少しした後、帰って、神社の手伝いをする日々が続いた。
そのことを知ってか知らずか、霊夢が言った。
「どこで何しているかは私は知らないけど。あんまり仲良くしすぎると帰るとき辛くなるわよ」
それでも、今日もルナサのところに行く。


――――そして、残りの日が一日になった。

朝起きて居間に出ると、いつもは俺よりも遅く起きる霊夢が何故か居る。そして霊夢はこちらを睨むと。
「今日が幻想郷に居られる最後の日。・・・友人には別れを言っておきなさい。たとえ、どんな結果になろうとも」
いつもと違う雰囲気に俺は押された。それからいつもの口調で。
「今日の朝食はあなたがやるんでしょ?早くして」
そう言われて俺は慌てて台所に向かった。


昼になり、俺はいつものように森へ向かったが・・・足取りが重い。
(あんまり仲良くしすぎると帰るとき辛くなるわよ)(別れを言っておきなさい。たとえ、どんな結果になろうとも)
霊夢の言った事が頭をよぎる。
「どうするか・・・」
今になって、仲良くしすぎた事に後悔した。このまま、伝えていいのだろうか。
ここに残る・・・そんな事も考えるが、それでは霊夢達が困るだろう。
いっそ死んでしまえば・・・、そう考えた後に考えを振りほどく。
「ふ・・・。自暴自棄の趣味なんて無いのにな」
思わず苦笑がもれる。行って、別れを言って、帰ればいいだけ。たったそれだけの事なのに、足取りが重い。
それでも、一歩一歩ルナサとの場所へ向かう。
…と、バイオリンの演奏がしっかりと聞こえてきたところで、足が止まった。
―――行っては、彼女を傷つけるだけだ。
もう目の前に、ルナサの姿が見える。
―――彼女の悲しむ姿は見たくは無い
今すぐここを立ち去りたい感情が全身を支配する。
―――伝えたら、彼女が悲しむ。そんな姿は見たくは、無い。
気付いたら俺は、その場から全速力で逃げ出していた。胸が痛む。刃物で刺されたときとは違う、別の痛み。
だが、それもすぐに収まった。


その後俺は、適当にブラブラして。夕方頃に神社に帰った。
(今日が幻想郷に居られる、最後の日・・・か)
神社に帰るときも、何故か後ろめたい気持ちがあった。
「遅かったわね、いつもならもう少し早いのに」
いつもどうりの霊夢の口調に、胸が痛んだ。
「・・・ああ」
「・・・・・・別れは、言えた?」
確信をつくその一言に、俺は悪寒を覚えた。おもわず表情に出る。
「・・・まぁいいわ、あなたが、それでいいのなら」
霊夢も少し声のトーンを落として喋った。
「今日は、私が作るわ。あなたは、待ってなさい」
そう言って神社の中へ向かう。その後に続いて俺も、向かう。何故か、霊夢の背中が悲しみであふれているように見えた。



―――そして、幻想郷から帰る日
俺と霊夢と紫とその式が博麗神社から東、じゃない左の所に居た。そこに、博麗大結界があるらしい。
あるといわれても、目には見えない。しかし、感覚でなんとなくわかる。
「最後に一回だけ、聞くわ。あなたは、外の世界、元の世界に帰りたい?」
紫が、そう聞いてきた。もう答えは揺らがない。
「・・・ああ」
「・・・じゃあ、いくわよ」
そう言って霊夢は構える。
「あ、ちょっと待って」
紫が止める。その後こちらに来て。
「この手紙、元の世界に返って寂しくなったら開くといいわ。きっと、元気になるから」
そう言われて渡された手紙を、ポケットに入れる。
「いいわ、じゃあ始めましょう」
霊夢は力を込めて、結界の封印に備える。
そして、結界に穴が開いた、感じがした。あとは歩くだけ。それだけで、元の生活に戻れる。
「待って!」
聞き覚えのある声に、反射的に振り向いてしまった。そこにいるのは、ルナサ・プリズムリバー。
「昨日、来なかったから、不安だった。それで、もしかしてと思って・・・」
そう言ってこちらに走り出してくる。
「愛の力は凄いわね。・・・けど」
紫が感想を漏らしたあと式に命令した。
「藍、止めなさい」
有無を言わさない命令に、式神は一瞬戸惑う。
「え?しかし・・・」
「いいから、止めなさい」
「・・・はい」
そう言われ、走ってくるルナサの体を、止める。
「っ!・・・放して!」
「駄目だ・・・紫様の、命令だ」
式が苦虫を潰したように答える。そして紫がこちらを振り向いて。
「さあ、行きなさい。もう少し時間はあるけど、あなたは決めたはずよ?」
―――そうだ、元の世界に返らないと
自然に足が外の世界へと進む。霊夢は後ろを向いていた。
「行かないで!お願い・・・私は、あなたが居ないと駄目なのよ!!」
ルナサが必死に泣いて叫ぶ。俺は一瞬足を止めそうになった。
「・・・私は、あなたのことが・・・好き」
何かを喋ったような気がしたが、・・・聞かなかったことにした。
そして、霊夢が大結界を塞ぐ。




これで、終わった。あの人間は、外の世界へと行った。一霊の、悲しみを残して。
「うぅ・・・。どうして」
この前冥界の結界に居た、金髪の娘が泣きそうな言葉で言った。
「大丈夫、彼は帰って来るわ。・・・絶対」
紫が慰めにも似た真実を喋ったような気がする。実際、私も帰って来ると思う。
そうだ、帰って来たら引っ叩いてやろうか。そう思いながら、私は帰った。





元の世界に帰ってきた俺だが。どうせ親戚は誰も居ない、誰にも幻想郷のことを話さずに暮らしていた。
―――そして、数日後
どうしてもこの平凡な毎日が馴染めない。幻想郷に居た頃は毎日が平凡じゃなかったからな。
もともと友人も少なかった俺に、幻想郷の人とか妖怪とかは普通に接してくれた。
…ふと、紫から渡された手紙を思い出し。開けてみることにした。

『  ○○へ

  幻想郷に帰りたければ、あなたが迷った森で、私の名前を呼びなさい。
  気が向けば、返してあげない事もないわ。
  ただし、もう一度幻想郷に戻ったら。もう帰れないわよ。

                   by プリンセス☆マジカル☆ゆかりん 』

「・・・ずいぶん変わった手紙だな。・・・・・・俺が最初に迷った森、か」
戻ったら帰れない。それは俺には決められない決断だった。
ここでの平凡な生活も、悪くは無いのかもしれない。それでも、幻想郷に帰りたいと思った。
「・・・なんで戻りたいんだ?」
俺が戻りたい理由・・・。考えてもいなかった、今考えるか。
(スリルがあるから・・・じゃないな、別の理由があるのかもしれない)
頭の中での幻想郷の記憶を探してみると。ふと、思いつくのが一つあった。
「・・・ルナサ」
さまざまなルナサの表情や、話などが鮮明に出てくる。
(・・・・よし!)
気付いたら俺は外に出ていた。


俺が迷った森、それはそう遠くないところだった。
「紫ーーーー!!」
叫んでみる、返事が無い。・・・・もしや嘘つかれた?今度は別の名前で呼んでみる。
「プリンセスマジカルゆかりんーーー!!」
やはり返事なし。・・・少し違うのか?
その後も色々試してみたものの、一つも当たらない。・・・やはり、これか。
「プリンセス☆マジカル☆ゆかりんーーーーー!!」
「はーい。プリンセス☆マジカル☆ゆかりんちゃん可憐に登場!」
…正直、冷めた。
「なによ、折角来てあげたのに・・・帰りたくないの?」
紫が膨れっ面で聞いてきた。
「いや、帰りたいさ。この数日で、自分の気持ちに決心がついた」
「そう?帰らせてあげてもいいけど・・・その前に問題」
まさか、蓬莱の弾の枝とか言わないよな?
「蓬莱の弾の枝を取ってk」「無茶言うな」
「最後まで言わせてよ・・・。蓬莱の弾の枝は取ってこなくていいわ」
当たり前だ、そんなこと言ったら幻想郷に行く必要があるじゃないか。
「そのかわり、あなたが幻想郷で一番大切に思う人、それを教えて」
「なっ・・・」
予想外の質問だった。まだ本人にも伝えてないのに、それを紫に教えるとは・・・。じ、自殺行為だ。
「さぁ、幻想郷に帰る?それとも帰らない?」
こうなったら覚悟を決めるしかないみたいだ。俺は一息おいて、深呼吸したあとに。
「ゴニョゴニョ」
耳元で喋った。しかも小声で。
「えぇ!?あのムグッ」
「言うな言うな~!」
慌てて口を押さえる。あーあ、経路から言うとこの後に新聞として配られるだろうに。
「解ったわよ・・・。じゃ、その本人の前まで送ってあげるわ」
「本当か!?」
「当たり前よ、マジカルゆかりんは嘘はつかないわ」
ついてます、それはもうついてますって。
「んじゃ、このスキマに入って」
そう言って出したスキマ。・・・うわぁ、怖いよ。
「さっさと入れー!」「うわっ!」
俺が躊躇っている所に、紫が蹴りを一発。そのせいで隙間の中に入ってしまった。
「頑張ってねー」
去り際にそんな事を言ってきた。あのスキマめ・・・。


案の定あの男は戻ってきた。コレでよかったのだろうか?
…自分がよければ、いいのかもしれない。
「まぁ、とりあえず。祝い事は皆で楽しまないと。」


気付いたら館の目の前に居た。結構大きい。
「ここが、ルナサ達の家・・・?」
結構大きめな家にすんでるとは言っていたが、ここまで大きいとは。
中に入ろうとして、館に歩を進めていると。
「あ、あんたは!あの時の!」
声をかけられた方を向いてみると、リリカが駆け寄ってきた。その後、突然胸倉を掴んで。
「あんた!姉さんに何やったのよ!姉さん、数日前から元気が無くて。元々元気ないのにさらに・・・」
少しずつ声の音量が減っていって泣き顔になる。俺も不安になってきた。
「リリカ、ルナサはどこにいる?」
「あんたなんかに教えるか!絶対に!」
リリカは泣きながら反論した。
「姉さんなら、・・・いつものところよ」
後ろから声をかけられたの振り返ると、白い服の・・・たしか、メルランが居た。
「姉さん!なんでこんなやつに教えるの!」
「探し物が知っているなら、答えるのが普通でしょ?」
「でもっ・・・!」
「いいから、行かせてあげなさい」
そう言われてリリカは渋々と手を放す。
「・・・ありがとう」
「お礼を言ってる暇があったら、行ってあげて。姉さんも待ってるわ」
俺はいつもの場所に向かって走り出す。

「本当に、これでよかったの?」
リリカが聞く
「姉さんが幸せになればいいんじゃない?」
そう言って、男が居なくなった場所でメルランは静かに微笑む。


いつもの場所。森の中に太陽の光が降り注ぎ、そこだけが違う場所と思われる場所。そこに、ルナサはいた。
「ルナサ!」
ルナサに駆け寄る。ルナサは呆然としていた。
「・・・○○?何でここに?」
ゆっくりと振り向き、喋った。
「ルナサを探しに・・・来たんだ」
「どうして・・・?」
決まっている、そのためにスキマ妖怪にまで話したんだ。

「好きだから」

「・・・え?」
「俺はあの時、ルナサを見て胸が痛かった。何でかって外の世界に戻ってから考えたんだけど・・・少し前に解ったんだ。
 俺はルナサが好きだってな」
ルナサは状況が飲み込めないようで、目が点になっている。
「つ、つまりあなたが、私のことを」
「何度も言わせるな、好きなんだよ」
流石に三度も言うと恥ずかしい。顔が真っ赤になってしまった。
ルナサの方を見ると、やっぱり真っ赤になっている。
「ルナサ。えっと・・・その、き、キスしても・・・いいか?」
「・・・いいわ」
二人は見つめあい、口付けを交わす。


「うわっ!」
突然後ろから声がかかったので思わず振り返ると。・・・魔理沙の姿が。
「ま、ままま魔理沙、どうしてここに?」
「あちゃー・・・ばれないと思ったんだが。お前達が押すからだぜ?」
魔理沙が見た方向を見るとスキマが。さらに中には幻想郷の面々が。
「魔理沙が出なければもう少しのびたかもしれないのに」
「私の力で永遠にすればよかったかしら?」
「久々にいいものがみれたな」
「いつ見てもいいわね。どう、私たちもやらない妖夢?」
「や、やめてください。幽々子様・・・」
「コレはスクープです!・・・でも、皆知ってますね」
「映姫様、サボっちゃっていいんですか?」
「いいわけないでしょう。でも、コレが見れたから良しとします」
「していいのかしら?」
「皆さん!私は中国ではありません!紅美鈴です!ホンメイリンです!」
…などなど、勝手に喋っている。
「まぁ何はともあれ」
『おめでとう!!』
それもうれしいのだが、それよりも・・・。
「紫ぃ・・・。あんた喋ったな」
「喋ってないわよ?連れてきただけ」
「同じだって・・・」
反省0の言葉に怒る気も無くなる。まぁこれはこれでいいか。

「めるぽMERUPOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!」
『!?』
全員が驚いてプリズムリバーの館の方を見ると、メルランの姿が。ああ、そういえば暴走するって言ってたっけか。
「これ、どうやって止めるんだっけ?ルナサ」
「ガッするのよ」
「ああ、そうだっけ。じゃあやるか」
「メルラン死ななければいいけど・・・」
そう言って二人は構える。





そして





「ガッ!!!!!」


―――――END――――――

どうも、ずいぶんと長くなってしまいました。
っていうかまじめに書くとひどいことになりますね、はい。
すこしシリアスになってしまったのかも。そう思わないのかも。
ああ、萌えなくてすいません。でもこう書くしかないのです。
こんな作品でも萌えてくれれば光栄です。


最終更新:2010年05月30日 23:14