リリカ3
13スレ目>>222 うpろだ963
それはいつもの日のことでした。
里の端っこにある小さな小さなお化け屋敷、そこにはいつも騒霊達が遊びにきて演奏をしています。
「○○ってなんかおかしいよねー」
「……うん、私達といても何もないよ」
メルランとルナサがにこにこしながら演奏を聞いていた○○に奇異な表情を浮かべ聞きました。
人間は妖怪や幽霊が普通は怖いものです。
「いいじゃん、別に邪魔するわけでもないし」
「そうね、それに誰かに聞いてもらった方が張り合いもあるしね!」
「私も……嬉しいな」
末っ子のリリカが言うとお姉さん達もそれもそうだと演奏を再開しました。
リリカも音を出そうとすると○○はにこにこ嬉しそうな顔をしながらお礼を言いました。
「ありがとう、リリカ」
「別に。あんたがいた方がお客の反応が分かりやすいし」
とリリカは素っ気なく○○に言いましたが○○は首を振り
「そうじゃない、そうだとしてもありがとう。僕、リリカの事大好きだよ」
「なっ……ッ!?」
リリカは急に○○が言い出したことに驚きを隠せません。何か言おうとしても口だけがあうあうして言葉が出てこないのです。
「ルナサも好きだしメルランも好き」
そうにこにこ笑いながら言う○○にリリカは肩すかしを喰らいました。
なんだ……、そういう事か。リリカは残念半分にホッとしました。
「姉さん達もアンタのこと好きよ。だからアンタのこと心配してるんだから」
「僕は大丈夫。それよりやっぱりリリカが一番好きだよ」
リリカはさっき安心したせいかかなりびっくりしてしまいました。
ちょっと目を泳がせながら何を言おうかとしていたら
「どうかしたの、リリカ?怒った?」
○○はちょっと悲しそうにしながらこっちを向いています。
「ち、違うよ。……それより、メルラン姉さんよりも……?」
「うん」
「ルナサ姉さんよりも?」
「うん、だってリリカは口では意地悪しても優しいもん」
「そっか……」
おやおや何だかんだでリリカも嬉しそうです。
○○と一緒ににこにこ笑いながらどんな音を出そうかと考えてるとルナサが心配そうに声を掛けてきました。
「…暗くなってきたから、○○を、家まで送って行くわ」
「いいわよ、姉さん。今日は私が送って行く」
「そう……」
「○○、暗くなってきたから帰るわ。早くしてね」
○○はそう言われると座っていた椅子に掛けていた杖を手慣れた感じで手に取り軋む床を叩きながら歩いてきました。
「わかった、ちょっと待っててね」
そう言って○○は杖で進路を決めながらスタスタリリカの下に来ると
「帰ろ?」
とにこにこしながら言いました。
しばらくしてお化け屋敷から遠ざかって歩いていく○○とリリカをルナサは心配そうに見ていました。
「心配?お姉ちゃん。大丈夫よ、リリカもいるし里の中なら妖怪も来ないわ」
「そうじゃない……、でも、今はいい」
否定しながらルナサは浮かない顔をしながらもう見えない○○とリリカが歩いていった方をじっと見ていました。
14スレ目>>22 うpろだ1015
めでたく俺の彼女であるリリカと結婚することになった。
やっぱりご挨拶は必要だよねというわけでプリズムリバー家にご招待。
よーしお姉さん方に結婚を承認してもらえるように頑張るぞー。以上。
「なんでリリカこの春うららかな季節に家の中でマフラーなんか巻いてるの」
リリカの上お姉さんであるルナサさんの言葉に俺は溢れ出てくる冷や汗を普段は持たないハンカチで拭う。
昨日の夜慌てて買ってきたチープなものだがこんな席でだらだらと汗を垂れ流しているわけにはいかない。
リリカも冷や汗なのかマフラーが暑くてなのか分からないがなんだか頬が高揚していて暑そうである。
「いいいいいや私冷え性だからね!ねっ○○」
「あれ?冷え性って手足が冷たくなるんじゃなかった?ねっ○○くん」
「はっ はいそうですねメルランさん、いやでも、首周りには血管が集中していますから、そこを暖めると血行が良くなって宜しいかと」
「へーそうなんだーさすが○○くんーねっルナサ姉○○くんすごぉい」
「・・・ふぅん本当に頭の回転がいいね○○さんは」
え?あれ?今の嫌味じゃないよなルナサさん嫌味じゃないよな?
まさかリリカみたいな明るい子の面倒を見てきた家庭の長女たる人がそんな嫌味とか・・・
そう思う俺の心自体が嫌味だよ!と俺は必死に自分をラブ&ピースな方向に持っていこうと努力するけど
ルナサさんがチラッチラと俺に視線をやりながら二回目の
「ふーん・・・○○さんは本当に頭がよく回るね・・・」
をおっしゃるのでもうほんとどうしよう俺絶対いい印象もたれてないっていうかコレでまだ俺のこと好印象だったら
俺は「もっと妹のことをよく考えろ!」と激怒しかねない勢いだしっどうしよう俺ってばなんて日頃の行いが悪いんだ・・・
俺はこれまでの人生に無いほど絶え間なく愛想笑い。というか俺宜しいかと、とかいうキャラじゃない・・・!
幾らこう、一目惚れしたリリカのライブに通いつめてなんとかリリカに告白して付き合うことになって
ほのぼの幸せ絶頂の中またもやライブに行ってリリカが演奏してる途中に何故かプロポーズしてしまい色んなメーター振り切っちゃったっ
からって、あ、あんなめちゃくちゃに、跡、つけること、なかったよな俺・・・!
どんな激しいこと、いやここでは言えないようなことだけど、したってあそこまではつけないよな・・・!
変だなあっ俺そのライブから帰ってきてからほんとにキスしかしてないのにへんだなあっあっこれほんとだからっ
俺リリカにプロポーズしちゃった事件の後は色々と慌しくて落ち着く時間も無かったしほんとにそんな何かするような間なかったんだほんとだよっ
その、ちょろっと首に何かしたくらいであとは何も・・・いや跡は、その・・・
「私リリカの首がどんなものだったか忘れたから見たい」
「いやほんと大したことない首だよ あっ嘘っなんかブツブツとか出てて気持ち悪いから見ないほうがいいよルナサ姉さん」
「私妹の首が気持ち悪い状態になってるの見たい」
「うそっじゃあうそっ 気持ち悪くないから面白くないからっ ねっ○○っ」
「あっはい、ええ、ほんとすべすべのとても健やかな首です」
「そう・・・リリカは姉には首見せないのに○○さんには見せたんだ。それってもしかして差別?」
「さささべつなんてそんな違うよ何いってんのルナサ姉さんもう」
「おっ 俺はただあの偶然リリカがマフラーを外してるところを目撃しただけで・・・」
やばいなんかもう生まれて初めて緊張で尿意が刺激されるという状態に陥ってしまった
「ルナサ姉もうっあんまり○○くんとリリカをいじめないのー あっ○○くんお菓子どんどん食べてね」
「あっそうそうメルラン姉さんの作ったかりんとうおいしいよ」
「うん○○さん確かにメルランの作ったかりんとうおいしいよ」
なんかプリズムリバー家の皆さんって全体的に統一感があるな・・・。
「で、なに」
「なにってなに?ルナサ姉さん」
「今私○○さんに話しかけたナリ」
「やだもうルナサ姉さん○○の前でナリとかやめてよっ」
「何言ってるのリリカだっていつも『おはようナリ』ってコロスケのものまねしてるじゃない!」
「やめてよやめてよメルラン姉さんのバカっ○○の前で」
「い、いや俺も・・・たまに言いますよ、ナリとか・・・うん・・・」
ナリとか今人生で初めて言ったよ・・・
でもリリカおうちでおはようナリとか言ってるんだ・・・なにそれ可愛い・・・なんかもう・・・姉妹の前のみっていうのが可愛い・・・
「・・・」
「なぁにルナサ姉むずかしい顔して」
「あははルナサ姉さんってばいつもそんな顔だからわかんないよ」
俺は姉妹の会話を聞きながらリリカの薦めてくれるかりんとうを熱いお茶と共にぽりぽり頂く。
うわぁほんとにおいしい・・・これ手作りなのか?すごいなぁ・・・リリカも意外と料理出来るけどそれはきっと家の環境もあるんだな。
「でもーリリカと○○くんもちょっと抜けてる子と頭のいい子でバランスよくていいよねっ」
「むー、抜けてるって何さ」
「いえ俺はほんとに・・・俺だってリリカに教えられることがたくさんありますから・・・」
「お、おおー」
「お、おおー」
え、今どっちが先言った?
「うう、○○は立派だなぁ」
「うんっほんとにっ○○くんってかっこいいっ好きだよー」
「好きっ・・・って姉さんはダメだよっ」
わぁ目を瞑ったらリリカが二人みたいだ・・・!ルナサさんはちょっと系統が違うけどこの二人は実にほのぼのしてていい・・・!
いいなぁこんなハーレム。うらやましいなぁ俺もこんな人生を送りたい
ということを考えていたらいつの間にかルナサさんがテーブルからいなくなっている。あれ?
身代わりに巨大なカエルのぬいぐるみが置かれていたから気付かなかった・・・って気付け俺!ノリ突っ込み!
プリズムリバー家内には人の頭脳をプリズムリバー風にする成分でも流れているのか!?
「・・・あの・・・ルナサさんはどこに・・・」
「あれ?そういえばいないねルナサ姉」
「お手洗いかな」
「どうしたんだろうね」
えっ!?まさか俺が二人ばっかりに構ってへらへらしてるから気分を害してお席を・・・!?
あぁ!まさか自分がこんなに猛烈に彼女の姉上との関係に頭を悩ませる日が来るとは少なくとも
一昨日には想像できなかったよ!人生って何が起こるかわかんないよ!俺は思わず頭を抱えて蹲りたくなるが
だめだっがんばらないと俺っ!そもそも俺ってなんかルナサさんに嫌われてるっぽいけど頑張らないと俺っ
ほんとに頑張れ俺!いつまでも子供じゃいられない!
「おまたせ」
「うわぁルナサ姉さんなに!?その格好!」
「わぁルナサ姉懐かしいもの出してきたわねー」
「懐かしいっていうか懐かしいっていうかかなり年季はいってるように見えるんだけど私の気のせい?」
気のせいっていうか気のせいじゃないっていうかルナサさんそれ所謂『甲冑』じゃないですか!?
~一言解説・『甲冑』とは?~
戦いのとき身を守るために着用する武具。胴体を覆う甲(よろい)と、頭にかぶる冑(かぶと)。/大辞泉
突如現れた現在では武具というより民芸的・工芸的価値が高く着て歩いている人・または着て戦っている人よりは
圧倒的に観賞用として利用している人が多いって言うか大多数むしろ100%なはずの甲冑を小粋に着こなしている
ルナサさんの姿に俺は・・・俺はもう一体どうすれば・・・あれなんか俺ってすごい普通の人じゃんみたいな・・・
ルナサさんは、しゃらんと時代劇のような音を立てながら鞘から日本刀を取り出す。
リリカが「ぎゃー!」と叫んで俺の腕にしがみついた。なっ、なっ、ええ!?ええっ何っルナサさんの職業って確かバイオリニストだよな!?
「ルナサ姉はねっ昔日光江戸村で一番強い殿の役のバイトをやってたのよ!」
「やってたナリ」
「それで本気で結構強かったのよ!」
「つよかったナリ」
「でも今は普通にプリズムリバー楽団の一員なのよ!」
「でも一員ナリ」
な、なにやってんだバイオリニストーー!!!!!俺はとりあえずリリカをかばって前に出る。
いやかばってっていうか、俺が斬られそうになったときリリカが前に飛び出したりとかしたら困るし・・・ってえ!?俺斬られるの!?
「なんか○○さんが意気込んで遊びに来てるからこれは・・・これはあれ。そういうイベント」
「え!?なにルナサ姉!?」
「そういうイベントってなにルナサ姉さん!?」
「メルランとリリカにはわからなくてもいい。これは私たちの問題だから」
ルナサさんが俺に刀の先を突きつける。無駄の無い動作だ。思わず目を奪われる。
カブトの下で首をかしげたルナサさんが薄く笑った。
「表に出よう。○○さん」
(そんでナリ)
「ルナサ姉さん、びっくりしたよ!まさか○○と斬り合いでもするのかと思ったー」
「リリカってばルナサ姉がそんな危ないことするわけないじゃない」
「そうよ・・・私は蚊に血を吸われたって殺さないしね」
………。
いや、いやいや・・・別に、呆れてるとか、そういうんじゃないんだよ。これはほんと。
家の庭に出た三人姉妹含む俺は、鎧姿のルナサさんが日本刀(レプリカだそうです)でざりざりと
俺と自分の間に一本の境界線を引くのを見ている。そして、用意されたのは一般家庭にあるのは珍しいような
随分立派な荒縄・・・。
なんだこれ。綱引き用?
「どうせ君は俺にリリカを下さい!とか言いに来たんでしょう!」
今までずっと俯いて暗い印象だったルナサさんが突然声を張り上げる。
そしてまた刀を流れるような動作で振り上げて、俺の目の前に突きつけた。
うお!あぶなっ・・・っていうか鎧着てて重いはずなのに俺に避ける隙を作らせないなんてルナサさん普通にかなりすごいんじゃないのか?
と思ってルナサさんの発言の意味を汲むのを忘れていたがようやく脳が受け入れて俺は物凄くどきっとする。
「・・・!」
「というかこれで言われないでただかりんとう食べて帰られても困るけど!」
「ル、ルナサ姉さんってば!なんかキャラ変わってるし変なこといって、やめ・・・」
リリカが俺とルナサさんの間に飛び出してこようとするが、俺はそれを遮る。
一瞬だけ視線を彼女の顔にやると、目が合った。
すぐに逸らしてルナサさんを見る。
「おっしゃるとおりです。今日はリリカを貰いに来ました」
俺が言うと、ルナサさんは不敵に笑って「その言葉を待ってた」と呟く。不敵に笑うとか出来たんだな。
というもしかしたら失礼なことを考えているとルナサさんは日本刀を鞘に戻して、縄を持った。ギュッと固く手首に巻きつける。
「縄を握って○○さん。種目は綱引き、ルールは簡単。この境界線を越えた方が負け」
俺は地面に刻まれた浅い茶色の溝を見る。ルナサさんに習って、しっかりと縄を掴む。
「リリカは一生勝者のものになる。つまり君が負けたらリリカは一生私たちのもので独身のイカズゴケになるの」
「なぬえええええーー!?」
「えっへへルナサ姉ってば話をややこしくするんだからぁ」
俺はなぬえええええーー!?と叫んでいるリリカを振り返る。そして不安そうな彼女の目をじっと見つめた。
大丈夫だリリカ、絶対負けないよ!
お前のために、俺はもう何にも負けないって決めたんだ!こんな初めからくじけるような俺に、お前の旦那さんなんか任せられない!
と俺が熱く思っていたら
「○○くん頑張って!あっルナサ姉は昔象使いのバイトをしていた頃象との綱引きに勝利したという過去もあるのよ!」
「過去もあるナリ」
「あと里のヒーロショーでバルタン星人の役を任されたこともあったのよ!」
「あったナリ」
ば、バルタン星人どうでもいいいいいーー!!!なんだか知られざる過去が明らかになりまくるルナサさんだが、
象・・・象くらいで!負けてたまるもんか!象なんかに怯まないぞ!象でもバルタン星人でも何でも来いってもんだ!
俺は絶対リリカと結婚するんだ!
「メルラン、コールよろしく」
「オッケー!はっけよーい」
「え?ここはよーいドン、じゃないの」
「あっそうかな」
「まぁどっちでもいいけど」
「そう?でも別によーいドンでもいいよと見せかけてはっけよーいドーン!!」
フェイントかーーーーーーーー!!!!
俺はリリカが「卑怯!なにこのひとたち!?私も人のこと言えないけど卑怯!卑怯!」と涙声で叫んでいるのを聞きながら一歩遅れたが必死に縄を引く。
うおっ・・・なにこれ!?えっ!?うそだろ!えっこれすごくない!?俺もかなり力は強いはずなのにビクともしない、というか
気を抜いたら向こう側に連れて行かれそうだ・・・えっルナサさん絶対バイオリニストだけじゃないよね仕事?カタギじゃない?
俺は足を強く踏ん張って、歯を食いしばる。うおお甲冑重たいっ・・・!重量を増すための甲冑だったのか!
ルナサさんは非常に華奢で女の子だし俺より小さいけど、甲冑を着られただけでこうも伯仲するとは。
一歩出遅れたのがかなり効いて、なかなかこちらを優勢にすることが出来ない。やっばいまさかこんなところで最大の試練・・・!!
「はっはっは!所詮そんなもの!そんなんじゃうちのリリカはあげられないよ」
「まっ○○!!頑張って!うわあああんルナサ姉さんのばかああ妹の幸せの邪魔をしないでくれよおおお」
「リリカ一生私とメルランといるのもそこそこ楽しいと思うよ」
負けるかーーー!!!
「うっ、リリカを俺に下さい!」
「いやだ!やるものか!」
「くださいってば!」
「絶対いや!」
「リリカが俺がいいっつってんだよっ」
あっ思わず悪い言葉がっ
「そうだー!!○○がいいんじゃー!!」
「なにそれ?ありえない!昔リリカはバイオリンと結婚したかったんだよ?」
「あっ○○それルナサ姉さんの嘘!私キーボードと結婚するって言ってた子だから!」
「そうそうリリカはキーボードと結婚するって言ってたのよねー トランペットの方がいいと思うんだけどなぁ」
「今は俺と結婚するって言ってるんです!!」
…言い返す俺も俺だが・・・
「ってか今だけじゃなくて一生俺のなんです!リリカは!」
「そうだー!!○○!おーえす!おーえす!」
「くっこしゃくな・・・メルラン手伝って!」
何!?こいつ・・・ってルナサさんにこいつ・・・とか思っちゃったよまぁいいやもうこいつ・・・!
正々堂々真剣勝負中に助っ人を頼むなんて、しかも妹に、それほどリリカを俺に渡したくないか!?
気持ちはわかるが往生際が悪いぞ!今更俺以外とリリカが結婚できるわけないだろう!今断るなら交際を容認するな!
「わーい皆で綱引きなんてハッピー」
「あっ二人ともずるい!二対一なんて・・・○○私もっ」
がっばあとリリカは綱じゃなくて俺にしがみついてくる。ええ!?リリカなにそれ一種の妨害!?
びっくりして二歩ぐらい前に進んじゃったよ!
「っしゃあーー!バカめ、若さが仇になったな!」
「ルナサ姉も十分若いわよー」
「だよね」
来た!力緩んだぞっチャンス!今で決める!
「リリカ今だ引くぞ!」
「っしゃあーー!」
あっやっぱり姉妹だ
「っていうかーちょうヒキョいんですけどー私だってそれなりに長い年月を過ごしてきたわけだしぃ体力とかー」
「もうルナサ姉ってばー今度はギャル系?ダメよ負けたのにグチグチ言うのはクズのすることよ」
「く、クズ・・・」
「メ、メルラン姉さんクズまで言ったらさすがにかわいそうだよ」
メルランさんは結構おくち悪いな。
甲冑を庭の真ん中でガチャガチャ脱いで元の格好に戻ったルナサさんが言う。
「じゃあなに・・・○○さんはリリカを貰い受けた末どうするの」
俺は慌てて姿勢を正す。
「そ、それはもちろん・・・彼女と結婚させていただきたいと思ってます」
「ふぅん・・・奴隷にするんじゃなくて?」
GAYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!
なんでルナサさんがあの台詞を知っているんだ!?
この前ポロッと言ってしまった『リリカは俺の奴隷だもんな?』って冗談のような実際冗談に近いけどあの台詞をなんで!?
俺は耳を塞いでその場で昏倒しそうになったがすんでのところで堪えた。え!?えっ!もしかしてもしかして!?あの現場見られてた!?
「・・・ってリリカのこと思ってそうだから言ってみたんだけど」
「お、思ってるわけないじゃん○○がまさか・・・ねえ?」
「あっははは そそうだよ思ってるわけなななないじゃないか・・・ねえ?」
リリカも俺も汗だらだらだ。
よかった、どうやらただのハッタリだったらしい・・・にしては的を射すぎているが。
俺が胸を撫で下ろすなり恥ずかしさで血圧が140くらいになるなりしていたらルナサさんが鎧と兜を抱えて
「じゃあこれ片付けてくるから」と言って部屋の中に入っていく。
…これで・・・いいのか・・・?
何か想像してたのと9割くらい違ったな・・・と思っていると、縄を片付けていたメルランさんが
「しばらくお家に入らないでいてあげようねー」
と言う。
「え?どうして?」
「なんでもー」
メルランさんはくすくす笑ってる。・・・この人いっつも笑ってるなー
窓から明かりが漏れて、リリカの家の中がくっきりと俺の目に映る。
でもルナサさんは見えるところにはいないようだ。リリカは縄をぐるぐるまとめて物置に置きに行ってる。
「リリカのことどういう風にしてもいいけど、仲良くしてあげてね」
「はい・・・って、あいや、どういう風に・・・ほ、本当に大事にするつもりでいますから」
「うんっ!」
メルランさんがにこにこ笑っている。
リリカと違ってメルランさんはふわふわした人だけど、雰囲気がよく似てる。
一見似てないルナサさんとも、ちょっとした仕草や表情がとてもよく似てるし。うん、やっぱり姉妹だ。
メルランさんは明るい笑顔を浮かべながら、夜空を見上げて、長い睫毛を瞬かせた。
「奴隷だもんね、かぁ・・・」
「ぶはっ」
俺は飲んでもいないものを噴出してしまったがメルランさんはスルー。
「私も若い頃、よく言ったなあ・・・男の人に」
俺は聞かなかったことにして夜空を見上げた。幸せの形は人それぞれ。俺もきっと、リリカと世界一の幸せ者になるぞ。
「今以上に彼女を幸せにしてみせます、絶対」
新ろだ64
八雲紫の提案した神無月の外界旅行、プリズムリバー3姉妹ももちろん参加している。
しかし今回はそれぞれの想い人と一緒に、3人別々での行動である。
そして僕はリリカと一緒に幻想郷の外への旅行であり帰省を楽しんでいる。
「うっわー!うわー!!ねぇ○○!!あれ何あれ!!?」
「あれは飛行機って言って「あれは!?」」
さっきからずっとこの調子、電車の中で何かを指さしては答える前に次の物を指さす。
騒霊の名に恥じないせわしなさだね、全く。
まぁ、はしゃいでるリリカも可愛いからいいんだけどね。
そんなことを繰り返しているといつの間にか夕方、電車を降りる時間になった。
電車で少しいちゃいちゃするのも良かったと思うんだけど、結局質問攻めで終わってしまった。
まぁいいさ、時間はまだまだたっぷりあるんだ。
駅のホームは幻想郷よりも人が多くて、リリカの目も幾分か輝いて見える。
やっぱり演奏したいのだろう、アーティストの性って奴かもね。
離れないように指をからませ合った手を少し緩めてから
わかった上で、僕はあえて聞いた。
「演奏・・・したい?」
「うん!!!」
あぁ分かってたよ、僕とのデートのはずだったんだけどなぁ・・・。
「演奏ね、路上ライブでもやってみたらどうかな?」
許可とってないとマズかった気がするけどまぁいいよね。
ふと目を向けるとリリカはすでにキーボードを弾き始めていた。
呆れつつも僕は既に集まりだした観客の中に紛れる。
幻想の廃れた世界で、しかし僕にとっては見慣れ聞きなれた幻想の音を奏でるリリカは、やはり少し幻想的であった。
それが音のせいなのか、夕焼けを受けているリリカの美しさのせいなのかは分からない。
その本物の幻想に惹かれ、リリカに惹かれて人も集まり始めた。
幻想を捨てたふりをした人たちが、心の底で求めていた幻想の音楽。
さぁ、このライブはどこまで大きくなるんだろうね。
「ありがとーございましたー!!」
盛大な拍手とともにリリカのライブが終わった
リリカが演奏を終えて感謝の言葉を述べる頃には既に日は落ちていた。
人数もざっと後ろを見ただけで300人はいる。
中には警察も―――って、いいんですか警察さん。
僕は山のような人ごみをかき分けて、リリカの手をつかみ人だかりを抜けた。
「さぁ、そろそろ行こうか」
「うん、どこ行く?」
「とりあえずは宿にいかないと・・・」
「そうだね、それじゃしゅっぱーつ!!」
左手で僕の手を握りつつ満面の笑みでこぶしを上げるリリカ。
あぁもう、実は時間くいすぎて少し怒ってたんだけど、こんな笑顔見たら文句なんていえないや。
若干観客たちからねたみの視線が痛いです・・・おお、パルスィパルスィ。
宿泊先は予想外に大きなホテルだった。
紫さんは一体どうやってこんなところに予約を取ったんだろうか・・・
「さすがに部屋はスイートルームじゃなかったか」
ま、当たり前だよね。
するとリリカは僕の肘に抱きついて
「○○と一緒ならどんな部屋でもいいんだよ♪」と満面の笑みで言ってきた。
嬉しいこと言ってくれるじゃない・・・恥ずかしいけどね
「それじゃ僕は先にシャワー浴びてくるね」
にやけた顔のごまかしも含めてそう言い残し僕は脱衣所へはいる
――数分後
「ふぅ、僕は出たけどリリカも入る?」
「それよりすごいねー!ベッドふっかふかー!!」
「・・・あれ?」
おかしい、さっき二つあったベッドが一つしかない
本来ベッドがあるべき場所には・・・
巨大なスキマがその口を閉じようとしていた
「こらああああああああああああああああああああああ!!!!!」
なんていうか、まったく、あの人は・・・
「リリカもなんで気付かないのさ、真横でベッドが落下してるんだよ?」
「ん?あたしは気付いてたよー」
―――あぁ、もう、この子は
「でさっ!ひっじょーに残念ながらベッドは一つしかないから」
―――本当にずる賢くて
「一緒に寝よ?」
―――本当に
「あぁ、ベッドが一つしかないんじゃしょうがないな」
―――本当に可愛い僕のお姫様だ
翌朝布団を全部はがれ、僕が風邪をひいたけれどそれはここで話すことでもないだろうし、別の機会に。
最終更新:2010年05月31日 21:24