妖夢1
1スレ目 >>1
妖夢へ
「幽霊でも人間でもない、半人半霊のお前が好きなんだ!!」
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1スレ目 >>21
妖夢に
「東洋と西洋の剣術が一緒になったら、武士道と騎士道が一緒になったら・・・
素敵だと思うんだけどなあ」
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1スレ目 >>180
静かに雨が降っている。そんな中で、木刀を降り続ける少女がいた。
「…っ!せいっ!はぁっ!!」
もう何時間経ったのか。ポケットから携帯を出して調べようとして…止めた。
重要なのは、これほどまでに動き続けて、妖夢が壊れないかだ。
明らかなオーバーワーク。傍から見てもありありと限界が見て取れる。
…それじゃ、駄目なんだ。
「あっ……!?」
振りかぶった木刀が手からすっぽ抜け、からからと転がる。
すでに握力も殆ど効かなくなってしまったのだろう。
歯を食いしばりながら体を引きずり、落ちた木刀を妖夢は拾おうとする。けれど…
「…っ!……つぅっ!!」
拾い上げたはずの木刀が零れ落ちる。もう無理だ。
妖夢は自らの掌を見つめて…悔しそうに地面に叩きつけ…
「駄目だっ!!」
「………!!」
…その手を、俺が途中で掴んだ。握り締めきれてない手には、信じられない程の力が込められている。
それは…妖夢が感じている無力と悔しさに、違いない。
「もう分かってるんだろう?動けるような体じゃないって…休まなきゃ、駄目だ」
「…いいから、放っておいて下さい」
よろよろと、掴まれた手を解こうとする妖夢。けれど、そんなことさせるもんか。
「嫌だ。これ以上は絶対にやらせない。妖夢が壊れてしまうよ」
「放って…放っておいてくださいっ!!」
弱弱しく…けれども、はっきりと妖夢は叫んだ。
「私は強くなりたい…強くなりたいんです!今よりも、もっと…ずっと…!
もう誰かを守れないなんて…嫌です!皆を…幽々子様を…あなたを守れる力が、今必要なんです!」
「…………」
「だから、一秒も無駄に出来ないんです…わかったら、この手を離して…」
パァン!!
「………!!」
「いい加減にしろ。こんなことしたって強くなれる訳がない。いや、むしろ体をぼろぼろにして…強くなる未来を潰す事にしかならない」
そう、あの頃…野球が好きで、上手くなりたいと思って過度の練習をし続けて…ついには何も出来なくなってしまった、俺のように。
「本当に強くなりたいのなら、今は休め。体の疲労が取れるまでは、絶対安静だ」
「…………」
妖夢は叩かれた頬を押さえたまま、俯いている。その表情は、見えない。
「…お願いだ。俺は君が俺を思ってくれているのと同じ位…いや、それ以上に君を大事に思ってるんだ。だから…お願いだから、言う事を聞いてくれ」
「……!」
それが恋心だとは…まだ言えなかった。
今はいうべき時じゃない、そう思ったからだ。
「……わかり、ました」
そういって、よろよろと妖夢は立ち上がった。
緊張の糸が切れたのか、足元がおぼつかず、ふらふらと頼りない足取り。
俺はその肩を負い、ゆっくりと部屋へと連れて行った。
服を着替えさせ(流石に俺は出来ないけど)、お粥を作り水を飲ませ、敷いておいた布団に妖夢を寝かせる。顔色はあまりよくなかったが、それでも少しは落ち着いたらしい。
「…眠れそうか?」
「はい…体結構痛いですけど、なんとかなりそうです」
妖夢はそういって、掛け布団を引き上げた。寝るようなので、お暇しよう。
そう思い、立ち上がった俺を、妖夢は引き止めた。
「あの………です、ね?」
「ん?」
「大事だ…って言ってくれたの…本当ですか?」
顔が真っ赤に染まっている。まずい、熱でも出たか?
そう思ったが、そうでもないらしい。……まさか、なぁ。
「そうだよ。大事で…大好きだ。それは、偽りじゃない」
俺はそう答えた。きっとこれが…俺の今の行動原理だから。
「………です」
「…?」
虫の鳴く様なか細い声。よく聞き取れなかったので、顔を近づける。
「わ……わたしも……大好き、です……っ!!」
そういうと、妖夢はばふっと掛け布団を被ってしまう。
トマトとガチ勝負できる位真っ赤になってるのは、簡単に予想できた。
「………」
そして、多分俺も。いたたまれなくなったので、やっぱりお暇することにした。
部屋を出るために障子に手をかけた時、ぽつりと…呟くように、言った。
「俺もだよ。君を…妖夢を、一人の女性として、俺は愛してる」
それだけ言って、俺は廊下へ出た。
ぽりぽりと頭をかきながら、部屋へ戻りながら、ふと思った。
「今日、寝れるのかな…俺も、妖夢も」
俺はともかく、妖夢は寝たほうがいいんだけど。
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1スレ目 >>186
「ちょ……っと、待て……ってば」
白玉楼へと向かう階段は長かった。もはや上のほうなどは霞がかかって見えない。
さっきから俺と妖夢は一定の距離を保ったままの鬼ごっこを続けている。もちろん俺が鬼。
飛んでいかなかったり、ある程度距離が離れると、やはり一定の距離までは待っていてくれるのは、俺に何か伝えようとしているのだろうか。あるいは唯の、ブラフ。
「なん、で……。さっ、きから、無視するんだ、よ!!」
渾身の叫びは届かない。
叫んだせいで余計に息が上がる。
心臓は既にパンク状態。肺はバースト寸前。足は鉛の鋳物のようだ。ランナーズハイ? なんですかそれ食べられますか? かゆ、うま。
俺は普段の通りに香霖堂の前で妖夢を見つけ、普段の通りに手を振って歩み寄っただけ。それだけでこのいつ終わるとも知れない鬼ごっこが始まってしまったのだ。
生憎と俺は妖夢にシカトされるような言動を取った覚えは無い。だが、もしかして無意識のうちに彼女を傷つけてしまったのではないか。そんな自責の念と、もう一つ、最近よく感じるなんだかよく解らない強い感情が俺を突き動かしていた。
「だ……か、ら、待て、ってば……っぶへ」
全身で勢いをつけて階段を登っていた俺は、いつの間にか妖夢が止まっていたことに気づかず、背中に突っ込んでしまう背負われた鞘にぶつかってなんとも顔が痛い。
「ゼイ……ゼイ……ようやく、止まっ……」
止まったのは俺の言葉。
俺の目の前に白銀に閃く刃があった。
俺の目の前に楼観剣が突きつけられていた。
物理的にはたったの1m弱でも、楼観剣によって隔てられたその空間は、俺には一光年にも感じられた。
「妖……む?」
「貴方は私の心を惑わしすぎる」
俺が話しかけるよりも早く、妖夢が堰を切った。
威圧感で染め上げられたその声は、聞きなれた「みょん子」のものではなかった。
「私は西行寺家三代目御庭番魂魄妖夢。我が主、幽々子様をお守りするのが私の使命」
そうか、そういうことだったのか。
「そのためには自分の命すら棄てても惜しくないのに……それなのに……」
つまり『俺が何かした』とか『俺が何か言った』とかそういうレヴェルの話ではなくて
「……これ以上、私の邪魔をするというのであれば、……斬ります」
『俺の存在自身』が立派な負荷だったのですね。
魂魄という家系に縛られ、幼くして御庭番となり、それを自らの存在価値としてきた少女。
『俺』という、完全無垢なるイレギュラーとの出会い。
もしかすると、妖夢を『魂魄妖夢』という一人の少女として接したのは俺が初めてだったのかも知れない。
「解った……」
俺は意を固めた。右手を伸ばし、目の前の楼観剣を握り締める。掌から手首、肘を伝って石段に真っ赤な血が流れるが気にしない。
そのまま引っ張ると、いとも簡単に楼観剣を俺の首に添えることができた。
「な、何を?」
「俺が妖夢の負荷になっているのなら、俺は潔く身を引くよ。でも、俺、妖夢のことがどうしようもない位に好きだから、妖夢の居ない生活とか考えられないから、だから、このまま、妖夢の手で、俺を殺してくれよ」
特に未練も恐怖も無かった。そのまま紺碧の瞳をじっと見つめる。
首に当てられた刃は、細かく震えているものの、一分も引かれる気配はなかった。
「……ないじゃないですか」
ふと、楼観剣から力が抜ける。俺も落下にあわせて手を離すと、楼観剣はそのまま無機質な音をたてて階段を転がり落ちていった。
「そんなこと、出来るわけ無いじゃないですか……。私だって、苦しくなるほど大好きなのに、そんな人のことを斬れるはずが、ない……ですよ」
「妖夢……」
大粒の涙をぼろぼろこぼして泣きじゃくる妖夢。そんな姿さえもが愛おしい。俺はその背を抱きしめようとして
「あら、まだ気が早いんじゃないのぉ?」
頭の上からの突然の声に戦慄した。
「ゆ……幽々子さま……」
その声の主は、西行寺幽々子以外の誰でもなかった。ゆっくりと俺たちと同じ段を目指して降下してくる。
のんびりとした声、雅な容姿とは裏腹に、俺の鈍い第六感でさえもがアラートを鳴らしていた。
「あらあら妖夢、どうしたのかしら? 『貴方を惑わすその男を殺してらっしゃい』私はそう命令したはずよ?」
成程。今回の黒幕の登場というわけか。
俺は咄嗟に妖夢を守るように身を乗り出す。
「申し訳……ございません」
「言い訳は良いわ。……そこの人間、貴方、うちの妖夢をずいぶん骨抜きにしてくれたみたいね。お陰で庭木の手入れは杜撰だし、ご飯は時間通りに出てこないし、いろいろ大変なのよ?」
扇で口を隠して笑う。どこか妖艶な笑みだった。
「そいつは失礼したな」
「でも、それも今日でおしまい……初めからこうすれば良かったんだけど……」
その扇を俺に向け、小さく数度仰ぐ。すると、光り輝く小さな蝶が一羽、実に頼りなさ気に、しかし俺を確実に狙って飛び出した。
アレに当たれば死ぬというのに、体は動かない。
そして、俺の胸元数cmまで近寄ったそれは、
見事半分に斬られた。
斬られたソレは綺麗な粉となり、風に舞って消えた。
残った白楼剣を抜いて、緊張した面持ちで幽々子の顔を見つめる妖夢。
「あら妖夢、貴方、主人の邪魔をするというの?」
相変わらず妖艶な笑みを浮かべて妖夢に問う。
「……もし、幽々子さまがこの人を殺そうとするのならば……私は御庭番の役職を返上しなければなりません」
一言一言を噛み締めるように、言い切った。そして続ける。
「そしてこの魂魄妖夢、(任意の名前)さんを守るためならば、冥界の主さえも切り裂いてごらんに入れましょう!!」
白楼剣を突きつけて、怒涛の勢いで叫ぶ。
しかし、それでも幽々子の表情は貼り付けたかのように全く変わっていなかった。
「……ふ、ふふ……」
が、突然身をかがめて笑い出してしまった。
「……な、何がおかしい!!」
思いも寄らない行動に思わず我に返ったのか、妖夢の顔は赤ペンキで洗顔でもしたかのようだ。
俺は全く意味が解らずに唖然とするしかなかった。
「だってぇ……妖夢ってば、本当に本気なんだもの……」
そういって笑い涙を拭きながら体を起こした。俺と妖夢はその雰囲気の変貌に思わず顔を見合わせる。
「私が妖夢の恋路の邪魔をするわけ無いじゃない。ちょぉっと試しただけよぉ?」
この台詞は、この場にいる誰もが予想だにしなかっただろう。うわ、なんだこのオチ。
「ちょっとまて……俺、それで二度も死に掛けたわけだが」
今考えると本当に意識がマッハで遠のいていくが、右手の鋭い痛みが良い感じで鎖となっていた。
「そのときは……そのときよね。妖夢がそこまでしか想ってなかったということで、ねぇ。」
空恐ろしい答えをありがとう。俺は結果オーライという言葉の意味を一番理解できている人間だと思う。
「さて、と、そこの人間…… (任意の名前)と言ったかしら」
「あぁ、以後お見知りおきを。亡霊の姫君」
「貴方と妖夢のお互いを想う気持ちはよく解ったわ。でもね、もし、妖夢を悲しませたりしたら……」
脊椎をドライアイスで固められたかのような悪寒を、視線だけで与えられた。
「まあ、そのときはそのときよね。……じゃあ妖夢、私は帰るけど、キチンとご飯の支度はして頂戴ね?」
と言って踵を返すと、音も無く消えてしまった。
妙な静けさだけがその場に残る。たった数十分前のことが今ではもう悠久の彼方で起こったのように感じられた。
「(任意のなm(ry)さん……」
「……」
妖夢がしきりに声を掛けてくるのは解っていたが、何を言って良いか解らなかった。結果として嬉しいのは事実だが過程が過程すぎて嬉しさを軽く超越してしまっているのだ。
「もう。(任意n(ry)さんてば!!」
グイと腕を引かれる。一瞬気を取られたその隙に、
何かやわらかい物体が
俺の唇に
触れていきました
「ちょ、今の、は?」
「さあ? なんだったんでしょう?」
つーんとそっぽを向いてしまう妖夢。
これからも同じときを過ごしていける。そんな何か当たり前のような事実さえも俺に幸せを与えるには十分だった。
真っ赤に染まった掌を眺めて誓う。
この幸せをいつまでも離さない。と。
了
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1スレ目 >>394
「妖夢、好きだ」
白玉楼の庭、桜の木の下で妖夢に想いを告げる。
「えっ……、そ、その……」
「ああ、もう!可愛いなぁ、妖夢は!」
思わず抱きしめる。
「なっ、ちょ……っと、やん」
俺の腕の中で身悶える妖夢。
「大丈夫、落ち着いて」
頭をそっとなでてやる。
「いえ……、そういうことではなくてですね」
「……返事、聞かせてもらえるかな?」
真っ赤になって俯く妖夢。
「え、ええと、……はい、私もあなたのことが……、す、す、好きです……」
妖夢をもっとぎゅっと抱きしめる。
「死んでも一緒だよ、妖夢。未練を残して必ず白玉楼に戻ってくる。そしてずっと一緒だからな……」
「……はい」
「ところで」
「なんだい、妖夢」
妖夢を見つめる。
「なんで私じゃなくて、半 霊 に 話 し か け て る ん で す か 」
「妖夢可愛いよ妖夢」
なでなで
「ひゃ……!ちょっと!感覚共有してんるんですから……やめっ……て」
「このひんやりとしたモチモチ感がなんともいえないんだよなぁ」
さすりさすりもみもみ
「ひゃ……!ほんと……やめっ……!」
「白玉妖夢たん、可愛いなぁ」
なでなでさすりさすりむにゅむにゅ
「い……い……
,.ヘ,._,... --── - 、
_,.ヘi ゝ _____ `ヽ、 i ヽ、
ヽ、ゝ,.'",.-'''"" , `゙ 'ヽ、 ' , レ 、
,' イ / ハ ハ ',. ', ー┼う
i L_/ゝ、!_,.イ」 i ハ i i. ', l
.| レ.o 。-ー-、 レゝ!-'i_ハ__」 あ
o ゚ | l i "" ⌒'。o i l あ
,.;: .| i | i ヘ ,.─-、 从ノレ' ぁ
.,。;: '" レハ.,. '- 、ヽ 〈 i ,.イ i | o 。 ぁ
.,。;: '" ,,... / iV `T7´-、!ノLハ__」 :
/ ゝ_,. ノ _ヘrイヘ ヽ, ,,..,, :
// / ズ 7`ー"7イ レヽイ」ヽ(i⌒ヽ ,;" ';,
: l | ピ / /ン ヽ/ i,_ i ,' ;: 。゚ o
ヽ 、 ャ , ' , '/ |o =Y ', :;
─ - ....,,,__「 i/ .// .lo ', ヽ ,:"
二ニニニニ] iし'=イ) く λ iヽ、__ノ,,,... "
L_lー-'"/ `>--- '"〒ヽ,___,.」
ッ-ヘ。__。ヘ /ー- 、 △
レ, '´゚ `,〉. /==ヽ i (・∀・ ) あれ?なんで小町ちゃんがいるんだろう?
i ハ)))ハ))ノ) / .)ノ (νν
イオi ゚ ヮ゚ノヘ / (( )ノ
,ぐ`i盃、ツつ'
,メ∪イ-i、ゝ/
゙'ーi_'ォ_ァ"/
本体より半霊のほうが可愛く思えてきたので衝動的に書いた
今ではほんのり反省している
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1スレ目 >>730-732>>747-751
「あ~、こりゃいい湯だな~」
白玉楼にある温泉で、肩まで湯に浸かって俺は伸びをしていた。
とにかくここの湯船は広い。ちょっとしたプールくらいはある。
壁も床も全部檜でできているし、開け放たれた窓からは二百由旬の庭が見渡せる。
「元の世界じゃ絶対に味わえないよな…………」
うっすらと白く濁った湯と、一面にほのかに香る檜の香り。
一流の旅館でもこんな贅沢はできないだろう。
『どうかしら。楽しんでくれている?』
ふと、耳元で声がしたので顔を上げてみると、うっすらと紫色に光る蝶が羽ばたいている。
幽々子様の使う死蝶じゃないか。音声の伝達までできたんだ。
「そりゃあもう最高ですよ。ありがとうございます」
滞在している先の主に、俺はいないにもかかわらずつい頭を下げてしまう。
『ふふ、ならよかった。湯加減はどう?温くないかしら』
「いいえ全然。俺は熱いのが好きですけど、これならもうあつらえたみたいです」
俺が返答すると、ふっとその死蝶は数回点滅するなり消えてしまった。おや、コメントもなしか。
なんて思っていると、不意に向こうの引き戸がガラガラと音を立てて開いた。
げっ!?ま、まさか…………
「ゆ、幽々子様?」
「はーい。私も来ちゃった」
来ちゃった、じゃないでしょ!
当たり前だが、幽々子様はあの和洋折衷な服など一糸まとっていない。
幸い申し訳程度にバスタオルを巻いているからいいものの、たかが薄い布一枚だ。妙にリアルに体の曲線が浮き上がっている。
幸い………だよな?
胸の辺りとか腰の辺りとかもうくっきりと。幽々子様って着やせするタイプなんだよな、なんて思ってしまう自分が憎らしい。
「さ~て、湯加減はどんなかな」
俺の視線など全然お構いなく、幽々子様はのんきに手桶で湯船のお湯をすくって自分の体にかけている。
濡れたバスタオルが体に張り付いて、何だかその、微妙に透けているみたいで………
「お、俺もうあがりますから!その幽々子様はごゆっくり!」
こりゃやばいかも。全然幽々子様は気にしていないようだけど、俺のほうが気にする、いや気にしなければいけない。ざばっと湯船から逃げようとすると、
「あら駄目よ。まだ入ったばかりじゃない。温泉はゆっくり浸かって始めて薬効があるのよ。もっといなきゃ駄目」
「いえその全然大丈夫ですからはい。薬効はじゅうぶんすぎるくらい」
「いいえ、これはここの主としての命令。もうしばらく私に付き合いなさい」
微妙に、声の温度が下がって俺は動きを止めた。
うう、ただの人間である俺が、死を操る亡霊の姫君なんかに勝てるわけがない。
「な、ならばもう少しだけ…………」
仕方なく湯船に戻ると、幽々子様はさっきの殺気(シャレだ)なんかなかったかのようににっこり笑っている。
「はい、よくできました。あとちょっと浸かっていれば体の芯まであったまるわ。顔はもう赤いみたいだけど」
そんな格好の幽々子様がいるからですけどね。
幽々子様はひとしきり手桶から湯を浴びた後、するりと俺の隣で湯船に浸かった。
肩と肩が触れ合うくらいに密着している。この広い湯船でだ。
体が緊張でがちがちになるし、頭は逆にお湯の熱も手伝ってぼんやりする。
い、いかん。理性がストーブの上の
チルノのように溶けていきそうだ。
一方その元凶である幽々子様は、何が嬉しいのか、しきりににこにこしている。
この人も博麗神社の巫女みたいに頭の中が春だよなあ。
「あ~、いい気持ち。ほっとするわ~」
両手を挙げてう~んと伸びをする幽々子様。
自然に、ゆるく結わえてあったバスタオルが解けて何だか…………
「幽々子様タオルタオル!脱げてますよ!」
「あら、もともと湯船にタオルは入れるものじゃないわ。この際取っちゃおうかしら?」
ぎゃああああ!そ、そんな破廉恥な!
「否あァ否ァァッ!断じてそのような所業お天道様が許しませぬ!聞き届けられぬならば不肖この某この場で腹をば掻ッッッ捌いて幽々子様に抗議つかまつる次第でございます!」
ゆらゆらとまだかろうじて体を隠しているバスタオルを、幽々子様が本気で指でつまんで取り除けようとして俺はついに怒鳴った。
もっとも、自分でも熱のせいで何を言っているのか分からないけど。
「あ、そ、そう…………なら、そうするけど……少しのぼせちゃったかしら?」
俺の剣幕にさすがに幽々子様はたじろぐ。いや、引いたって感じだけど。
でも、おとなしくバスタオルで体を覆って湯船に浸かってくれた。
本当に申し訳程度に覆っているだけ。
胸元は思いっきり見えているし、脚は太ももからほんの少し上くらいしかタオルが隠していない。
見てはいけないと思いつつもちらちらと視線を送ってしまうけど、幽々子様は相変わらず全然そんなことには頓着しない。
あ~、これはもしかして一種のいじめでしょうか幽々子様。
「それにしても、外界からの客人なんてどれくらいぶりでしょうね」
俺の悩みなどまるで無視して、幽々子様はぼんやりと外を見ながら言う。
「俺のことですか?」
「ええ。外の亡霊たちも、みんな新しいもの好きだからあなたがいるおかげでずいぶん楽しく騒いでいるわ。そして私や妖夢も同じ。だから、ちょっともてなしに張り切っているわけ。迷惑だったかしら?」
ほんのりと桜色に染まった肌を見せつつ、幽々子様は小首をかしげる。
そんな姿を見せられて、迷惑でしたなんていえるわけがない。
「い、いいえ全然!すごく嬉しいです。食事とかだけじゃなくて、こんなふうに温泉まで用意してくれるだなんて、本当に感謝しています」
首をぶんぶんと横に振ると、幽々子様は微笑む。
「そう。ならよかった。あなたったらさっきから少し冷淡だったから」
「いえ、そのそれは…………」
まさかあなたと混浴しているからですなんて言えるわけがない。
でも、幸い幽々子様はそれ以上追求することはなかった。
その代わりに、こんなことを言ってくれた。
「なら、ここに妖夢も呼びましょ。背中を流してもらうなんていいかも」
いやはや、素晴らしすぎるお考えですよ、幽々子様。
数分もしないうちにがらりと引き戸が開いたので、思わず振り返るとそこには……
「お待たせしました幽々子さ…………きゃああああっ!」
上は何も着ないでドロワーズだけだった妖夢が、悲鳴と共に脱衣場に逃げ込む。
あんな声を妖夢が上げるのは初めて聞いた。
「あらあら、騒々しいわね」
「幽々子様のせいですよ!俺がいること言わなかったんですか!?」
「そうよ。驚かせようと思って」
俺は言い返す気力も失せ、妖夢の逃げ込んだ脱衣場を見ながらできるだけ湯の中に体を隠そうとしてみた。
がちゃがちゃという音がしばらくして、やがて上にさらしをいい加減に巻いた妖夢が血相を変えてこちらにすっ飛んでくる。
手にポン刀をぶら下げてだけど。
「ゆ、幽々子様の入浴中に押し入るとは……この狼藉者め――――っ!」
うおお、目が本気だ。
「ちょっ、ちょっと待って妖夢!誤解、誤解だよそれは!」
「問答無用。斬れば分かる!」
背を向けて平泳ぎで逃げようとする俺の背中で、妖夢が刀を振りかぶったのがわかった。
片手で柄を指に挟む。
その奇っ怪なる握り方はこれぞ虎眼流「流れ」。
まさに友六の如く、明らかに遠すぎる間合いから伸びる刀身で、
彼の延髄が後ろからサックリと斬られるのはもはや自明の理。
お美事!お美事でございまする!
――――なんて幻覚が一瞬視界をかすめ、
「まあ、いけない子ね妖夢。お客様に段平を振りかざすとは何事?」
いつまで経っても首と胴は繋がったままだ。
ゆっくりと振り返ると、幽々子様が俺と妖夢の間に割って入っていた。
振り下ろされた刀身を、手の甲に止まる死蝶の羽がそっと受け止めていた。
「ですが幽々子様……この人は…………」
妖夢と目が合うとすごい勢いで睨まれた。慌てて湯に急速潜航する。
「何を勘違いしているのかしら。私はこの方と一緒にお風呂に入っているの。いけないかしら?」
「そっ!そうなんですか?」
「ええ、そうよ。客人をもてなすのに共に湯を浴びるのは基本よ。昔から言うじゃない『裸の付き合い』って」
幽々子様、それはだいぶ用法が間違っているような気がしてならないのですが。
「ほら、謝りなさい。まったくしょうがない子ね、妖夢は」
あ~あ、いつの間にか妖夢の方が悪者にされているよ。
普通、自分の主人と客が混浴していたら明らかに妖夢の反応の方が正常なのにな。
自分のことは棚に上げて現状を見つめてみる俺。
けれども、ひたすら生真面目なのがとりえの妖夢だ。すっかりその詭弁にのせられてしまっていた。
「もっ、申し訳ありません!そのようなこととはつゆ知らずお客人に刃物を向けるとはこの魂魄妖夢一生の不覚!
どうぞ不甲斐無い若輩者として笑ってお許し下さい!」
ああ、これが若さか。
「いや、別にいいけど」
「そうよ。謝っているならさっさと服を脱いでこっちにおいでなさいな。ほら、早く背中を流して」
謝れって言った本人がそのことを忘れているよ。
しかし妖夢は疑問を持つなどといった概念は持ち合わせていないらしい。
「はい!ただいま」
と元気よく返事をするなりまた脱衣場に駆け込んでいった。
かくして、妖夢は幽々子様と同じバスタオル一枚を体に巻きつけただけで浴室に戻ってきた。
「襦袢とかなかったのか?」
「はい…………」
「いつもは裸でやってもらうんだけどね。どうして今日はそんなの巻いているの~?」
「これは…………その………最後の、良心です…………」
冷静に戻ると恥ずかしいのか、しきりに妖夢は顔をうつむけて居心地が悪そうにしている。
当たり前だ。肌をさらして平気な顔でいられるのは幽々子様くらいなものだ。
この人はモデルなみにスタイルがいいし。
対する妖夢は……ああ、あまり評しない方がいいかも。
ものの見事に貧相な体形。アバラが浮き出ているって意味じゃないけど、
隣にいる幽々子様とつい比べてしまうといささか悲しい。
手足は子供じみて細いし、胸はバスタオルをほんのわずかに押し上げているだけ。
でも半霊ゆえに血の気の少ない肌は陶器のように白さが際立っているし、
細い手足も逆にどこか中性的で魅力がある。
いちいち細かにチェックしてしまうこの目が憎い、憎いよ俺は。
「じゃあ、お願いするわね妖夢」
幽々子様はざばっと湯船からあがるなり、さっさと桶の上に座ってしまった。
ちょうどこっちに背を向ける形になると、バスタオルを解いて裸の背中があらわになる。
「ほら、あなたもこっちに来て」
「ええええっ!?いや、その幽々子様が終わってからでいいですから」
「え~、どうせなら三人で楽しくしましょうよ」
不満そうな幽々子様。三人で楽しく………ですか。それはさすがにご勘弁を。
とりあえず、さすがに幽々子様と一緒に背中を流してもらうのは勘弁してもらった。
俺は結局、幽々子様が体を洗い終わるまで湯船の中で向こうを向いて沈んでいた。
けれども耳には、
「あ……そこ…………うん、気持ちいい………ああっ」
とか、
「きゃんっ、くすぐったい…………あん、もう…………」
とかいう妙に色っぽい声が入ってきて仕方がなかったんだけれど。
このもてなしは、新手のセクハラか何かだろうか。
幽々子様はひとしきり体を洗ってもらってから湯船にゆっくり浸かると、
それで満足したのか「じゃあ妖夢、後はお願いね。しっかり洗ってあげるのよ」と笑いながら浴室から出て行ってしまった。
相変わらずろくにタオルで体を覆いもせずにだ。
「わーわー!見ちゃ駄目です!」と叫びながら妖夢が俺に抱きつきつつ目を隠し、
そしてから自分のしていることに気づいて真っ赤になって飛び退き、
最後に足を滑らせて湯船に転落という派手なコンボがあったことも忘れはしない。
その騒ぎを見てもさすがは幽々子様だ。
「まあまあ、妖夢もすっかりはしゃいじゃって」
なんて笑いながらモデルのように歩いて脱衣場のほうに消えていった。
それにしても腰のラインがきれいだったよなぁ。
ある意味、あの余裕こそがこの白玉楼の主を主たらしめているのかも。
「それでは――始めます」
「ああ、じゃあ――」
湯船から出て幽々子様のように桶の上に座ると、さっと妖夢が後ろに控えた。
なにやら緊張して改まった口調とともに、背中をごしごしと石鹸を滑らせたタオルで拭いてくれる。
あ、これって結構気持ちいいかも。
「ど、どうでしょうか――――強すぎませんか?」
「ううん、全然。すごく気持ちいい」
後ろで妖夢が笑った気配がした。
「率直なご感想ありがとうございます」
しばらくまたごしごしと。
「あ、ばんざいしてくれますか」
言われたとおりに両手を挙げると、結構念入りに洗ってくれる。何だか子供の頃にかえったみたいで少々恥ずかしい。
「先ほどはすみませんでした。いきなり斬りかかったりして。頭に血がのぼって何も考えられなくて…………ごめんなさい」
「そんなことないって。普通ああ思うよ。……本当にびっくりしたぜ。いきなり幽々子さまが『はーい』なんて言って向こうから来るんだからさ」
「はぁ………言葉もありません。幽々子様はそういったところが本当にあっけらかんとしておられますから」
しくしくといった感じの妖夢のため息が背中で聞こえる。
「でもいい人じゃないか。ぼんやりしているけど懐は深いと思うけどな」
「ええ。それは否定しません。でも、本当に年中ぼんやりな方なんですよう。
こんなんじゃ先代に顔向けできません」
愚痴りながらも妖夢はしっかりと背中を洗ってくれ、最後に手桶でお湯をかけてくれた。
「はい。これでおしまいです」
「ん、ありがとう。――――でも悪かったね。忙しかっただろ。いきなり風呂に呼びつけて背中を流せ、だなんてさ」
ここ数日のことを思い返すと、いつも忙しそうに妖夢はあちこち駆け回っていた。
きっとさっきまで、たぶん夕食の準備をしていただろう。
それがいきなり風呂に呼ばれ、別の仕事を言い付かるとは。
つくづく弄られている妖夢が少しかわいそうで言ってみると、
「いえ、そんなことありません…………」
曖昧な返事が返ってきた。
首だけで振り返る。
そこには、やっぱりタオル一枚で身を隠しているせいか恥ずかしそうな顔の妖夢がいる。
その視線がしばし泳いで、それから俺のほうを見て、
「あなたに喜んでもらいたいのですから、苦になんてなりません」
え?
言った意味が一瞬分からないでいると、妖夢のただでさえ赤い顔がさらに赤くなった。
「あ!わ?そ、その………いえ別にそんな意味じゃなくてですね――し、失礼しました!」
脱兎の如くという表現がぴったり来る勢いで、妖夢は俺に頭を下げて浴室から出て行った。
それはもう、とんでもない速さで。
「は、はは…………」
いきなり、そんなことを言われるとはな。
俺は立ち上がった。体はすっかり温まっている。
「出るか」
出て服を着たら、あの庭師の仕事を手伝ってやろう。
俺だって、あの子の喜ぶ顔が見たいからな。
ただひたすら温泉シーンが書きたかった珍作です。
皆様も何かの機会に白玉楼にお立ち寄りの際には、
ぜひそこの温泉に入浴することをお勧めします。
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1スレ目 >>943
「魂魄妖夢!お前に果し合いを申し込む!」
思えば、これが最後の試合にしようと考えていた
俺の決意だった。
「はぁ…」
対する気の無い返事をする相手の方は、一人の少女――魂魄妖夢だ。
別に俺は彼女に対して、憎んだり恨んだりはしていない。
では、何を果たすのか?
それは…俺の想いだ。
とある日、俺は偶然にも彼女を見つけたのだ。
それは単なる偶然だったのかもしれないし、必然だったのかもしれない。
ともかく俺は、まぁ必死に修行している彼女に対して、ある想いを抱いたわけで…
無論、告白した。
結果は数分掛かった。
「…私と勝負して一本取れたら、考えても良いですよ」
いや、そこまで持ち込むのに数分掛かっただけで、勝負の結果自体は
数秒どころか、一瞬だった。
とりあえず、その日から、約二百を軽く超える剣術勝負をしてきたわけだが。
まるで一本を取れる気配は無かった。
必殺である『旋風剣』も、『怒雷武斬』も『天覇封神斬』、『燕返し』もまるで当たりはしなかったし
全身全霊を賭けた、手刀の技『エクスカリバー』も楽にかわされた。
ある日、妖刀に手を出したら、物の取り憑かれたが見事に折り取られてしまい、
その刀は刃だけになって、三途の川に落とされてしまった。
今までやってきたのも、ほとんど無駄になるくらい、俺は修練も重ねた。
しかし、彼女には全て通じる事は無かった。
そもそも彼女が積んでいる修行と俺の修行は格が違いすぎたのだ。
俺の修行が壱ならば、彼女は弐拾、その位の修行の差があったのだ。
「これで最後なんですか?」
「あぁ、男に二言は無い」
追い込まれて実力が出るようなタイプじゃないが、少しでも崖っぷちになって
力を出せるようにしないと、勝算なんてあるわけが無い。
いや、そもそも勝算は欠片程もない。
ただ、今度は一瞬で終わらないように、粘り、粘り続けるだけだ。
「お願いします」
「…あぁ、お願いします」
試合前の礼、ここまで緊張する事も、滅多に無いだろう。
最後の勝負は――
ここから始まるのだ。
「…行きます」
まずは様子見とばかりに、彼女はスペルの宣言すらせず、ただ
無心に刀を振るう。
風を切る音が、耳に聞こえる前に、何とか受け流す。
金属の音が響き渡る。
周囲の草木も、ただ俺と彼女の勝負を見守っている。
一人の少女とは思えない斬撃だった。
一太刀一太刀が重く普通の人間なら間違いなく腕を痺れさせるだろう。
そんな攻撃も今では、一応捌ける程度にはなった。痺れは取れないが。
「ふっ…!」
呼吸と共に、振り下ろされる斬撃。
それを何とかかわすと、こちらも攻撃に移る。
わざと隙を作ってこちらを誘い込む事は分かりきっている。
数十回前の決闘でも同じ手を使われて何とか学習はした。
「はぁっ!」
普通の横薙ぎではあたる事は無いだろう。
しかし、彼女は高く飛び上がり、俺の背後に立った。
…チェックメイトか。
「どうします? まだやりますか?」
「…いや、もう勝負はついただろ。潔く、その刀でバッサリとやっちまえ。
俺に後悔は無いからな」
愛する者に殺されると言う喜びも、また一興。
と言ったら格好良すぎるが、
「出来たら、あんたの必殺技で葬って欲しい」
彼女の剣は言うなれば芸術だ。
その芸術になるのも悪くは無い。
刀が、閃く。
「人鬼――『未来永劫斬』」
俺の想いと、肉体が消えていく。
あぁ、最後に彼女と決闘をすることが出来て、良かった。
白玉楼に帰り、妖夢は剣を振るっていると
主である西行寺幽々子が、ひょっこりと現れた。
「あら、どうかしたの妖夢?」
「あ、幽々子様…何でもありません」
別段、話しても問題はないようなことだったが、何となく相談しづらい事であった。
と言うか、どう相談しろと言うのだろう?
『自分を人間だと思い込んでいた霊』が自分を好きだと言って、決闘をして
その結果、彼の霊をこの手で斬り、彼は成仏してしまった。
あまりにも言うにしては滑稽な話である。
そもそも、あの霊は本当に自分を好きだったと言うのか?
「ねぇ、妖夢」
「はい、何でしょう?」
「一つだけ、妖夢の為になる格言を授けてあげるわ」
これは別に珍しいことではない。
と言うか、幽々子の話は抽象的であり、あまり助言としては
近い言葉とは言いづらかった。
「…『恋に時間は関係ない。恋は叶った瞬間、愛となる』」
「も、もしかして知ってたんですか?」
「えぇ、どうも様子がおかしいと思ったから、ちょっとだけ、ね」
一部始終は大体知っているらしく、幽々子は含んだ笑みを浮かべた。
「それで…その言葉は」
「恋をするなら時間は一瞬でも、十年でも同じと言う事よ。
その恋が叶えば、形となって愛となる」
「あの霊は…」
「叶ったわよ。愛と言う形、ならね」
それは一体どう言う事だろう?
妖夢はあの霊を愛していたわけではない。
ただ、彼の相手をしてあげただけのはずだ。
「…だって、あなたは彼の為に泣いてあげているでしょう?」
いつの間にか、頬を涙がつたっていた。
悲しいはずはないのに、何故か涙が溢れてきた。
「…あ、あれ?」
「『悲しい思い』とは失ってから、ちょっと経って始めて解るものなのよ。
…泣きなさい、妖夢」
その日は庭師は修行をしていなかった。
だが、彼女は涙を流した分だけ強くなるのだろう。
一人の男が彼女を強くしたのだ。
女性としても、剣士としても――
おまけ
「協力してくれて、どうもありがとう」
目の前には、えらく生気がある亡霊の姫が居た。
無論、この人のことを俺は知っている。
「いや、あなたの事ですから。こんな事だろうと思っていました」
「あなたは、自分が既に死んでいるということは、分かっていたのよね?」
鋭い質問だ。
「まぁ、一応は。それでも、彼女に一世一代の告白くらいはしたかったんですよ」
彼女――妖夢を見ていて危なっかしかったって事もあるけど。
「ふぅん」
それを信じていないのか、亡霊の姫は疑わしそうな視線を俺に送る。
「それよりも、よく成仏しなかったわねぇ」
「…鍛えましたから」
鍛えてどうこうなるものじゃないはずだけど、何故か彼女の刀の効果は
俺には薄いようだった。
それでも、悲しんだ彼女の涙が見れただけでも十分だ。
「今度、彼女に俺を紹介してくれますか?」
「…妖夢から一本取れるようになったらね」
まだまだ、俺が彼女と会うのには時間がかかりそうだった。
===チラシの裏===
ほのぼのしねえ…何だこれ?
===チラシの裏ここまで===
後書き
おれは東方の愛のSSを書くためなら死んでもいいと思っていた…
だが、色々な人間に会って分かった…おれは愛を伝えるためにSSを書くッ!
はい、そんなわけで妖夢のSSな訳です。
殺し愛をしたかった…ただそれだけなんだ…。
すまない、皆にはがっかりさせてしまった…。
あ、出てきた必殺技は全部ネタですので気にしないで下さい。
むしろ、全部分かった人って居るんでしょうか?
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最終更新:2010年05月22日 23:13