妖夢9



11スレ目>>236


桜がしきりに舞う庭の中、刀を持った2人組が、向かいあわせに立っていた。

「お願いします!」
「お願いします。」


一方は魂魄 妖夢。ご存知の通り、半霊半人。説明終わり。
もう一方は○○。今は、白玉楼の世話になっている。


今日を含めると何回目になるだろうか。この手合わせは。
礼をして、2,3歩後ろに下がり、剣を抜く。これはいつものこと。
周りの幽霊が、見物のために集まってきた。これもいつものこと。

私は構えを取った。おじいちゃんから教えを教えてもらったときからこの構えは今まで変えた事が無い。変えるつもりも無い。

○○さんが構え始めた。といっても、見物人からすれば構えを取ってるようには見えないだろう。

でも何回も手合わせした私になら分かる。私も最初、彼をなめて手痛い反撃を受けてしまったから。
彼は、構えないことが構えなのだ。

それは型にとらわれない、相手のどんな攻撃にも対応できる、といった理由だから、と彼は言っていた。

でもそれはかなり難しいことだ。一太刀で相手の攻撃パターン、速度、癖を見極めなければ、対応以前の問題になってしまう。
それを知ったとき、私はレベルの違いに愕然とした。

でも、それから私は今まで怠りがちだった修練を今まで以上に頑張ることができた。
おかげで、剣の腕は自分でもわかるくらい上達した。
これは、○○さんのおかげといっていいだろう。


・・・・考え事はここまでにしよう。
ここからは、一瞬の雑念が全てを決してしまう・・・!


場を支配するのは沈黙。
降りしきる桜だけが、時間の存在を教えてくれる。

妖夢が一歩、右足を踏み出した。対して、○○は一歩も動かない。

勝負は一瞬だった。

剣がぶつかり合う音がすると同時に妖夢の姿が消えた。
そして、少し遅れて○○の姿が消えた。

一瞬後、両者がさっきまで立っていた位置が入れ替わった状態で現れた。

この瞬間、時は完全に止まっていた。
桜でさえ、今の出来事に感心するかのように、一瞬だけ、降らなかった。

時を動かしたのは、○○だった。

「・・・・・・見事だったよ、妖夢。だけど、・・・・・・もう一歩だね」

ドサッ・・・

○○のセリフが言い終わると同時に妖夢が倒れた。




「懲りないわね~、あなたたちも。見てて面白いからいいんだけどね」

私の怪我の治療をしながら、幽々子様は言った。
自分で治療するといっても聞いてくれない。いつものことだけど。

「いや~それにしても、妖夢はすごいね。すごく成長してるよ、うん。」
「そんな・・・・まだまだですよ。負けちゃったし・・・・」
「いや、でもあれは結構危なかった。久しぶりに僕も冷や汗かいたからなぁ」
「あら、死人でも冷や汗かくのね」
「そりゃあもう。死人だって生きてます」
「面白いこというわね」

というか、幽々子様も死人でしょ・・・・って突っ込みは置いておこう。

「さて、久しぶりに運動したし、酒でも飲むかな。」
「あら、じゃあ花見なんてどうかしら」
「昨日もしたじゃないですか、幽々子様・・・・」
「いいじゃない。減るものじゃないわ」
「お酒が減りますよ・・・・」
「お酒なんて後から買えばいいんだ。僕が生きてた頃なんてお酒なんかまともに飲めなかったんだぞ?」
「決定ね。場所はいつものところでいいかしら」
「もちろんさ。では、お先に失礼」

そういって、○○さんは行ってしまった。

「で、どうなの?妖夢」
「な、なにがですか?」
「決まってるじゃない。○○のことよ。うまくいってるの?」
「う・・・・やっぱり私にそんな勇気ないです・・・」
「困った子ねぇ。モタモタするなら私が取っちゃうわよ♪」
「そ、それはダメです!」
「うふふ。妖夢がちゃんと自分の気持ちを伝えたらね」
「う・・・・・いじわるです、幽々子様」
「じゃ、花見の席で待ってるわ~♪」

幽々子様も行ってしまった。部屋に残っているのは、顔が赤い私だけだ。



○○さんは、もとは明治時代の武士(本人談)だったのだが、そこで死んでしまった際何かの拍子に時代を飛んでこっちへ来てしまったらしい。
はじめてここに来たときも、大して何も感心もせず、自分が死んだことに驚きもせず、めんどくさそうに

「それで、ここは酒が飲めるのかい?」

と聞いてきたのだ。流石に私も幽々子様もビックリした。

そのあと、幽々子様は○○さんのことをとても気に入ったらしく、ここに泊めよう、と言い出した。
ちなみに、二人とも、性格が私から見ればそっくりだ。
おっとりで、マイペースで、めんどくさがりで、大食い。でもここぞというときに強い。だからこそ、意気投合したのかもしれない。


さて、私も花見の準備をしないと・・・・



白玉楼の庭に、○○と幽々子が酒を飲んでいた。妖夢は、まだ来ていない。

「花見酒が毎日できるなんて、感激して成仏しちゃいそうだよ」
「成仏ねぇ。そういえばあなた、何か未練でもあったの?冥界であなたのような人間の形を保った幽霊なんて、あまりいないわ」

通常、ここに来る幽霊は大抵、魂だけの形をしている。○○のような人間の形をした幽霊は、現世によほどの未練を持った人間か、例外の人間だけなのだ。
それを聞くと、○○は酒を飲むのを中断して、どこか遠くを見るような目つきになった。

「嫌なら別に言わなくてもいいわ。安易に聞くのも悪いしね」
「嫌ではないさ。それに、ちょうどいい。酒の肴にもなるし、話そう。ただ、妖夢には黙っててくれよ」

なぜ妖夢に言っちゃダメなのかわからなかったが、了解しておいた。

「僕はね・・・道場を開いてたんだ。といっても、あまり有名じゃなかったけどね」

そうして、彼は語りはじめた。

「教え子にね、そうだな・・・・ちょうど妖夢のような、身長や性格の子がいたんだ。
 その子は本当にすごくてね・・・・・無口だったけど、剣に対する気持ちは真剣だったね。教えるたびに伸びる伸びる。こっちも教えがいがあったよ」

彼は一旦切ると、酒を一口飲んだ。
私は、だまって聞いていた。

「だけどね・・・・ある日道場に来てみると、・・・・・その子は殺されていたんだ。背中に刀を突き立てられていた。しかも、その刀は僕のものだった。
 疑いをかけられ、捕まりそうになった僕は、必死で逃げたよ。その頃の記憶は、あんまり頭にないな。
 気がついたら、僕は違う藩まで来ていた。いわゆる、脱藩をしてしまったわけさ。そこからはもう、来る日も来る日も戦いだったよ。
 そして、僕は、何度もの戦に生き残れず、死んだってわけだ。ちなみに、あの子を誰が殺したのかは・・・・今でもわからない。
 大方、才能に嫉妬した野郎がやったんだろうさ」

飲んでいる酒が切れかけていた。そろそろ話も終わる頃だろう。

「だからね、・・・・・・・妖夢を見たときは本当にビックリしたよ。身長も髪型も表情もそっくりだった。
 あの子の生まれ変わりだと思ったくらいだ。」
「それで、妖夢を鍛えてあげてるってわけなの?」
「そうさ。現世で果たせなかったことを、果たそうと思ってね。
 ・・・・・・妖夢はそろそろ、僕を倒すことができるだろう。その時こそ、僕は最高の幸せを感じるだろうね」
「そう・・・・残念ね。ということは、あなたとはもうすぐお別れってことかしら?」
「きっと。成仏するだろうね」
「だから、妖夢に言っちゃダメって言ったのね」
「ああ。この話を妖夢が聞いたら、きっと妖夢は僕を倒すことを躊躇してしまうだろう。
 それだけは絶対に駄目だ。だから、僕のためにも、妖夢のためにも、この話は、黙っておいて欲しいんだ」
「そう」


「お待たせしました、幽々子様、○○さん」

妖夢がようやく来たようだ。

「役者はそろったわね。じゃ、乾杯といきましょ」
「「「かんぱ~い!」」」

妖夢はわからないだろうが、これがきっと最後の○○との花見酒になるだろう。味わって飲むことにしよう。
その日は、私たちはゆっくりと、過ごした。





「じゃあ、気をつけてね、妖夢、○○」
「はい、幽々子様」
「このご恩忘れないよ、幽々子さん」

私は、手合わせに向かった妖夢と○○を見送った。
○○に会うのは、今日で最後になるだろうと思う。


妖夢はついに自分の思いを打ち明けなかった。





「お願いします!」
「お願いします」

もう何度もしている手合わせ。しかし、いつもとは一つだけ違和感があった。
それは、彼の表情だった。なんというか・・・・そう、旅立つ我が子を見守るような・・・・そんな感じの表情をしていた。
どこかでみたことがある気がする表情だった。だけど、思い出せない。それより・・・・

―――今度こそ、○○さんに勝つ!


妖夢が構えはじめた。対する○○はいつもどおり、構えない。
例によって、場の時が止まる。今回、先に動いたのは、○○のほうだった。

(行くぞ、妖夢。見事僕を超えてみせろ!)

○○の剣太刀はしなやかだ。豪か、柔か、と言われたら、100人が柔と答えるような剣太刀だ。
その次々と出される剣太刀を、妖夢は綺麗に、完璧に防いでいた。

お互い一言も発さず、剣がぶつかり合う音だけが響く。
その音は、見るもの、聞くものを魅了させるほどであった。

功の勢を見せていた○○が防御にまわり始めた。妖夢の反撃が、鋭く、重くなってきたからである。

(いける!)

これを好機とみた妖夢は、防御から一転、攻めにまわった。
どの太刀も、見物人では早すぎて見えないだろう。剣の音だけが、二人が戦い合っている証拠になっている。
音だけを、見ているようなものだ。

(押されてきたか・・・)

徐々に○○の足が後退し始めた。妖夢の剣を受けきれなくなった証拠だ。
そして、後退していたためか、○○の剣の構えに一瞬、隙が出来た。もちろん、妖夢は見逃さなかった。

(これで・・・・決める!)



この隙は、実は○○の罠だった。
負けるのは時間の問題と判断した○○は、妖夢にしか捉えられないような隙をわざと見せて、そこを攻めることにしたのだ。

(これをかわされたら、僕の負けだ。見事に・・・・・避けてみせろ、妖夢!)


何かが違う。○○さんにしては珍しく、一瞬隙が出来た。もちろん、考えるより先に本脳が、そこを叩けと告げていた。
でも何かが違う。本脳に支配されかけていた私の脳が、危険を告げている。

あれは罠だ、と。

一瞬の判断だった。

「う・・・おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

はじめて、妖夢が叫んだ。妖夢は必死だった。勝つことに、必死だった。
本脳すらも支配した妖夢の脳は、そこを全力で右に避けろと告げていた。

狙っていた胴体の攻撃をやめ、一転して、姿勢を低くして右に避けた。
一瞬の差だった。

頭上から剣が空を斬る音がした。

その音を確認し終わる前に、私は彼が剣を振りぬいた隙を狙って、斬った。





いつもより長かった剣の音が止んだ。沈黙だけが、音もなく流れている。



「・・・・・・見事だよ、妖夢。よくぞ、ここまで・・・・・たどりついてくれた」

○○さんがそう言った後の表情は、私を凍りつかせた。
今まで感じていた違和感、もとい、既視感は、これだったのだ。

その表情は・・・・・私の元から消える前のおじいちゃんの表情に似ていた。
そのことに気づいた私は、夢中で剣を放り投げて○○さんの傍へ駆け寄った。

○○さんは、体が消えかかっていた。

そう、成仏する・・・・・・前兆だ。

「○○さん・・・!まさか、こうなることを知って・・・・・」
「そうだよ、妖夢。・・・・・やっぱり君は強いね。
 ・・・・・・もう僕の役目は終わったんだろう。ここに・・・・・もう未練はないよ」
「うっ・・・うっ・・・・」
「妖夢・・・・泣いているのかい」


彼が成仏することもそうだが、それ以上に悔しいことがあった。


私は、まだ○○さんに自分の気持ちを告げていない。


泣きながら、私は叫んだ。

「○○さん”っ!!駄目です・・・・・・行かないでくだざい”っ!
 あなだに未練がなくても・・・・・私にはあるんですっ!」

徐々に○○さんの体が消えていく。

もう、迷わなかった。

「私はっ!あなだのことが好ぎですっ!だからっ!・・・・・・だから、いかないでください・・・・・・
 私を・・・・・置いていがない”で下さい・・・・うう・・・うわああああああああああああああああああ」

涙が止まらなかった。
いまさら言ってももう遅いだろう。現に、彼は成仏しかかっている。

「妖夢・・・・。困ったな、これ以上、情が移る前にさよならしておきたかったんだけどな・・・・」

私は周りも気にせず大泣きしていた。まるで赤ん坊のようだ。
すると、頭に心地よい感触がした。

それは、まるで、赤子をあやすかのように・・・・・・愛しい人を愛でるかのように・・・・・私の頭を撫でていた彼の手だった。

「妖夢、よく聞いて。僕はもうすぐ消えるだろう。これはもう決定時事項だ。僕はもう戻ってこないつもりだったけど・・・・・気が変わった。
 ・・・・・・僕はいつか必ずここに戻ってくることにしよう。さっきの妖夢の告白の返事は・・・・・その時までお預けだ。
 それまで・・・・・・・・剣の修行を怠らないように。じゃあ、またね、妖夢」

頭から彼の手の感触が消えていく。
急いで見上げると、そこには・・・もう、誰もいなかった。




「や~れやれ。これで全員かな~?」

船に魂を乗せて、三途の川を渡る。
今日は珍しく仕事していたアタイだった。

「はぁ~。それにしてもやんなっちゃうよねぇ。毎日毎日こんな地味な作業をさー。
 いくらアタイでも気が滅入るよ」

しゃべらない魂たちに話しかける。会話は一方通行だけど、アタイの唯一の仕事中の至福の時間だった。
だけど、この日は違った。

返事が聞こえてきたのである。

「どこの世界も同じようなものなんだねぇ」

「・・・・!?」

振り返ると、さっきまで魂だったはずのものが、一人だけ人間の形に変化していた。

「あんた、一体・・・・?」
「どうでもいいけど、死神さん。ちゃんと前向いて船頭してよ」

久しぶりにめんどくさそうな奴に出会ってしまった。

「へぇ・・・・ここまで人間の形を保てるって事は、あんた、ロクな成仏の仕方をしなかったね・・・・?」
「そうかもね。好きな人に告白されて逝くような成仏の仕方が、ロクではないのならね」

いけ好かん野郎だ。ちょっと懲らしめようか。

「死神さん、前、前」
「え・・・?」

いつの間にか、もう渡りきっていた。

「じゃ、死神さん。縁があったら、また会いましょう」
「あったらね」

いけ好かなくはあるが、人間にしては面白そうなやつだ。




(人間の形をした幽霊を裁くなんて、久しぶりですね・・・)

次に現れた幽霊は、はっきりとした人間の形をしていた。
この場合、考えられるケースは2通りだ。

成仏しても人間の形を保っていられるほどの魔力(妖力)を持っているか、
成仏する瞬間に別の未練が出来てしまったか・・・・である。

この人間を見る限り、大した魔力を持っているようには見えない。
後者であろう。


「それで、あなたの名前は○○。間違いありませんか」
「はい。そうだけど、あなたが閻魔様ですか?」
「いかにも。四季映姫・ヤマザナドゥと申します」
「想像していた閻魔様と違う・・・・・」
「何か言いましたか?」
「いいえ、なにも」(自分でも思うところはあるようだな・・・・)

「コホン。それで、あなたの生前は以下のとおりですね。」

省略

「そして、戦で討ち死。以上で間違いありませんか」
「多分。それで、えーと・・・・なんだっけ、名前・・・山田さん?お願いがあるんですけど」
「誰が山田ですか!えーきと呼びなさい。・・・・・コホン。それで、お願いとはなんですか」

「僕を、冥界に帰してください」

「はい?」

「聞こえませんでしたか?僕を冥界に帰してください」
「それは・・・・・冥界に未練があるからですか?」
「はい。・・・・・待たせてるんですよ。ある半人前を・・・・・ね」
「・・・・・・なるほど。しかし、あなたにだって今まで起こした罪はある。
 それを償わないことには、戻ることなど、不可能ですよ?」
「・・・・・だったら、償います」

そういえば、幽霊と会話したことは久しぶりだ。あの西行寺の女を除けば。

「この先に進みなさい。道は・・・おのずと、見えてくるでしょう。
 償い終えたら、ここに戻ってきなさい。そのとき、私が判断しましょう」
「わかりました。期待して待ってて下さい」

そういって、彼は消えた。
まぁ、彼の起こした罪は少なかったから、償い終えるのは簡単でしょう。




・・・・・半日後、彼は戻ってきた。

「あー、トラウマになりそうな光景だった・・・・」

見たところ、そんなに苦労をしたようには見えないが、心が洗われている。
償いを終えた証拠だ。

「ふむ。問題ないですね。冥界に戻ることを許可します」
「それで、どうやって戻れるんですかね」
「私が戻します。ただ、こっちにきた幽霊がまた冥界に戻るといった行為は異例なので、その分代償がありますが、かまいませんね」
「え?そんなこと一言も聞いてな・・・・ってえーきさん?まだ話は終わってな」

・・・・・・戻すことに成功しました。
ちなみに、今回、彼の代償となったものは、彼が幻想郷に来てからの記憶です。

「といっても、すぐ思い出すことが出来る程度に・・・・ですけど」

あとは、あなた次第ですよ。


半人前の・・・・・・魂魄 妖夢さん。





○○さんが消えてから、約一年が経とうとしていた。
枯れていた桜が、再び花をつけようとする季節になった。

彼が消えた日、私は一晩中泣いた。
でも、泣くのはその日限りにしようと決めた。
次の日からは、幽々子様には心配されちゃったけど、いつもどおりの生活に戻れた。

でも、彼に言われたとおり、剣の鍛錬は一日たりとも怠っていない。
おかげで、この前魔理沙や霊夢その他諸々が襲撃してきたが、全て撃退することが出来た。
幽々子様には、

「私の出番も考えなさい!」

と怒られてしまったが。



庭の掃除を終え、暇な時間がやってきた。
この時が来ると、私は幽々子様に用事を言われてない限り、散歩することにしている。

もちろん、彼が来ているか、確かめるためだ。

「はぁ、もう一年が経っちゃうのか。早いな・・・」

○○さんがいない一年は、毎日が同じに感じた。
といっても、ちゃんと仕事はこなしている。が、いつもなにかが足りないような感覚に襲われるのだ。

「いつまで待たせるんだろう・・・・。本当に、○○さんは・・・・私を悲しませるのが好きなんですね」

涙が溢れそうになったが、グッと堪えた。
ここで泣いていては、戻ってくると言ってくれた彼に示しが付かない。
目を拭いて、散歩を続行することにした。


すると、門のところに誰かが立っていた。

あれは・・・・・○○さん!?


「あ・・・・あの!」
「ん?ああ、ちょうどよかった、そこのお嬢さん、ここがどこだか教えてくれないかい」

私は人違いかなと思ったが、違った、
顔も、しゃべり方も、○○さんだった。
でもこの感じは・・・・・

(そうなんですね・・・)

私は瞬時に理解した。○○さんは、戻ってこれたのだ。
けど、きっと代償か何かあったのだろう。それが記憶だったのだ。

「ここは・・・・白玉楼です。死人が、幽霊が、集うところです」
「へぇ、ところで君、剣を背負っているって事は、剣をやっているのかい?よかったらお手合わせできないかな」

私は思わず心の中で笑ってしまった。
何もかもそっくりなのだ。そう、最初に○○さんがここに来たときと。
あの時も、確かに○○さんはこんなことを言っていた。

「いいですよ。私が女だからって、舐めないで下さいね」
「当たり前だよ。ほら、あそこの庭なんかやるのにちょうどいい」

だけど、一つだけ、あの時と大きく違っていることがある。それも決定的な。
あのときの私は、あなたを見くびっていた。



けど、今の私は違う。むしろ、見くびっているのはあなたのほうですよ、○○さん。



私は構えを取った。もちろん、今まで手合わせの度に、彼に見せていた構えだ。

(・・・・・・どこかでみたことあるような)


○○さん・・・・あなたは覚えてないでしょうけど、あなたは私にひどいことをしてきたんですよ?

私をボコボコにして・・・・
気が付いたらあなたをいつの間にか好きになっていて・・・・
勝ったと思ったら勝手に去っていっちゃって・・・
私を悲しませて・・・・


それに、まだあの告白の返事を聞かせてもらってません・・・・・


どれもこれも全て・・・・・・


「この・・・・一太刀で・・・・思い出させてあげます!覚悟して下さい、○○さん!
 私を・・・・・・悲しませた罪は、重いんですよ!」

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10スレ目>>991


―拝啓、ドコゾにいるのかいないのかよくわからないおじいさまへ
「幽々子ー」
少し前までは静かだった白玉楼も、今では静かとは言わなくなってまいりました
「あら、何かしら○○」
というのも、
「ちょっと楽しい運動を教えてあげようと思ってだな」
この
「まず両手を胸にあててー」
○○とかいう人間が
「で、ぽんぽんぽんで両手を上にー」
頻繁に来だしたからで
「こうかしら?」
というか、
「そうそう。んで、それにあわせてこういうんだ」
生者が何故こうも易々とおおおおお
「はい、「らんらんるー♪」」
「だあああああああああああああああああああ!」
思わず叫んでしまった
二人合わせてきょとんとしている
「どうしたのかしら妖夢ー?」
「どうしたー?妖夢ー」
「だからそこハモるな同じ仕草をするなっ」
顔を見合わせてどうしたのかしらとでも言いいそうな顔
「でーすーかーらー」
とのばして一端止め、今まで言わんとしたことを言う
「何で生者がふっつーに何の躊躇もなくここにこれるんですか!結界は!?そもそも入り口は上空にあるんですよ!?ただの人間のあなたがどうやってきてるんですか!」
ぜーはーぜーはー
「まぁまぁ落ち着いて落ち着いて。ほら、息を」
「吸ってー」
「ひっ」
「吸ってー」
「ひっ」
「はいてー」
「ふー」
「はいつなげてー」
「ひっひf・・・って何させるんですかあああああああ!!」
思わずぐーで殴った
「はっはっは、痛いなぁ妖夢」
まるでこたえてないのが何ともいえない
「はっはっはー。知りたければ俺を捕まえてごらーん」
「は、はぁ・・・?」
いきなり何を言い出すのかこの人は
「ほーっほっほほー。捕まえてごらんなさーい♪」
「まてまてーあっはっはh・・・って!」
のせられてしまった
というか、何で私が男役?
「胸の平たさh」
「皆まで言わせるかあああああああ!」
かきーんと打った
柄で




嗚呼、今日も白玉楼は賑やかである

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11スレ目>>119


「と、言うわけで作ってみた。
 どうだ、上手いもんだろ」
「ちょっ、何でそんなもの作っているんですか!?」
「妖夢に着せたいからだ。他に理由はあるのか?
 大丈夫、その姿を見るのは俺とそこの襖の陰からこっそりと見ているデバガメ二人だけだ」
「そういう問題じゃなくて!!
 さすがにそれは恥ずかしくて……、その……」
「……そうか」
「あ、いやそんなに落ち込まなくても」
「…………そうか」
「うー、わかりましたよ。着ます、着ますから落ち込まないでください」
「そ・う・か!!」
「うわっ!? 今の葉はもしかして演技!?」
「俺の演技も中々のもんだろ?」
「~~~っ!!」



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「あら~、やっぱり言いくるめられてるわねぇ~。
 妖夢もまだまだよね~」
「幽々子さん……。僕らは何でこっそりとあの二人を見ているのでしょうか?」
「いいじゃないの」
「はぁ、まあ何時ものことですから……。
 幽々子さん、もしかしてあの衣装を着たいとか考えてたりしません?」
「よくわかったわねぇ」
「それなりに付き合いは長いですから」
「そうね……、貴方にお披露目するのはまた後で、ね」
「楽しみにしてますよ、と一応言っておきます……」

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11スレ目>>124


「いらっしゃーい」
「こんにちは」
俺が店番をしていた、ある日の出来事
店にやってきたのは一人の幼女、後ろの方に白い何かがういているがエクトプラズムだろう
些細な事は気にしない
「ええと・・・これと、これと・・・それも」
メモを見ながら商品を手にとっていく、だが悲しいかな背が低い
目当ての商品は取れないらしい
「ぐ、この・・・半霊に乗れば・・・」
俺は何も言わずに踏み台を出してやった
「あ、ありがとうございますっ」
「お使いも大変だなお嬢ちゃん」
「こ、子ども扱いしないでください!」
大人に見られたい年頃なのか、しかしどう見ても子供だ
「ああ、ごめん・・・そうだ御詫びにこれをあげよう」
「アメちゃんだ、珍しいアメだぞ」
「だ、だから子ども扱いしないでください」
「・・・いらないの?」
「え、あ・・・い、いります」
やっぱり子供だ、嬉しそうに蒼いアメを眺めている
そして口に含んで目を輝かせる、子供は可愛いなぁ
買い物が済んで帰ろうとする幼女に
「お嬢ちゃん、また来たらアメをあげよう」
ちょっとからかうつもりで、言ったのだが
「はいっ!また来ます」
いい返事を返すと、荷物を抱えて走っていった
「・・・子供は良く走るなぁ」
走っていく後姿は、やはり子供のそれだった

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11スレ目>>453


妖夢! 雪のような白い幽霊でホワイトクリスマスと洒落込もうぜ!

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12スレ目>>985 うpろだ930


 白玉楼。青年が一人掃除をしている。ふと空を見上げ、彼は手を上げた。

「○○さん!」
「ああ、妖夢さん。おかえりなさい。どうしました?」

 昨日今日と、時間を見つけて出かけていた妖夢を掃除しながら出迎えて、○○は首を傾げた。

「え、ええと、これです!」
「……ああ、バレンタイン」

 妖夢から差し出された箱、そこから香る甘い匂いに、思い出したように、○○は手を打つ。

「ええと、ちょっと教えてもらって」
「なるほど、それで昨日から何だかそわそわしていたわけですね」
「! 気付いてました?」

 こくり、と頷いて、○○は微笑んだ。

「頂いても?」
「もちろんです!」

 その答えにますます笑みを深くして、○○は有り難そうに箱を受け取る。

「では、休憩にしてお茶を淹れましょうか。あ、幽々子さんは……」
「あ、私が。幽々子様にも別に作ってきてるんです」
「きっと喜ばれますよ」

 自分一人でない、というのは寂しいが、でも幽々子を除け者にするのも気が引ける。

「それでは、僕は掃除の片付けしてきますので、後で行きます」
「縁側で待ってますね」

 身を翻して走っていく妖夢の姿を、彼は眩しそうに見送った。




「……あれ? 幽々子さんは?」

 片付けて戻ってきた○○は、縁側で一人所在無く座っていた妖夢に声をかけた。

「あ、う、それが……」

 幽々子曰く『あらあら、今日は恋人達の日でしょう? 野暮なことはしないわよ~』とかで、どこかにふらりと遊びに行ってしまったらしい。
 妖夢に作ってもらったチョコはしっかり持って行ったらしいが。

「……どちらに向かわれたんでしょう」
「神社か紫様のところか……あ、でも紫様は冬眠中だったっけ……?」

 二人して首を傾げるが、彼女の行き先は中々見えない。裏をかいて永遠亭とかにも行ってそうで。

「とりあえず、気を利かせて頂いたことですし、頂いてよろしいですか?」
「あ、は、はい! どうぞ!」

 チョコのことに触れると、妖夢は途端に紅くなって緊張する。これはもしや。

「……チョコ作りは初めてですか」
「はい。洋菓子は作る機会がなくて……」
「ああ、まあ、確かに」

 頷いて、○○は箱を開けた。ココアをまぶしたトリュフが可愛らしく並んでいる。

「では、いただきます」

 一つ口にして、こほ、と○○はむせた。傍にあった茶を啜り、ふむ、と呟く。

「あ、あの、どうでした?」
「美味しいです。よく出来てると思いますよ。ただ……」

 ○○は一つ摘むと、妖夢に食べさせた。唐突のことで驚いた妖夢だが、やはり、こほ、とむせた。

「ご、ごめんなさい!」
「いや、美味しいですから、そんなに謝らなくても」

 そう言って、○○はもう一つつまんで食べる。甘くて美味しい。紛れもないチョコ。だが。

「コ、ココアまぶしすぎました……?」
「多分」
「ご、ごめんなさい……」

 しゅん、と恐縮してしまっている妖夢の頭を撫でて、○○は首を振る。

「最初はそういうものですよ。僕が最初に料理したときは酷いものでしたから」

 チョコは焦がしたことありますしね、とフォローを入れる。
 フォローになっているかどうかは別として。

「でも、こんなの……」
「妖夢さん」

 言葉を途中で遮って、○○はまた一つ口に放り込み、じっくりと味わう。

「誰でも一度で上手くは行かない。でも、何度もやってれば上手くなる……これも十分美味しいですが」
「○○さん……」
「次に、今より上のを作れればいいんです。だから、そんなに沈まないで。出来れば、次のときも僕が食べれたら嬉しいですけど」
「はい……はい! 頑張ります!」

 うんうんと頷いて、しかし、と心の中で思う。息をしたときにココアが粉になって舞っているんだけど、どれだけまぶしたんだろう。
 まあ、それでも遺すなんて積もりは微塵もないが。というか残してたまるか。誰かが分けろと言っても絶対渡さない。

「……あ、僕ばかり食べてますね。妖夢さんも食べます?」
「ん……食べます。次のためにも、こうならないよう覚えておかないと……」

 妖夢も口に入れて、粉っぽいなあ、と呟いた。前向きにはなったが、それでも失敗は悔しいらしい。
 一生懸命なその様子を微笑ましく見守っていると、不意に妖夢が声を上げた。

「あ」
「ん? ……!」

 ペロ、と擬音がするような様子で、妖夢が○○の口の端を、舐めた。

「……!!?」

 とりあえず、言葉が出ないほど驚く。いきなり大胆な行動に出るような子ではないだけになおさら。

「……? あ! え、あ、えと! 口の端にココアがついてて、でも私の手もココアついてたから、その……!」

 手が汚れていて、でも口の端のココアを拭おうとして、思いついたのが今の行動だった、ということらしい。
 それでも、こちらを仰天させるには十分すぎた。

「うー……ごめんなさい……」

 妖夢は妖夢で真っ赤になってしまっている。自分がどれだけ大胆なことをしたのか、ようやくわかったようだ。
 下手したら、普通にキスするよりも恥ずかしい。

「……妖夢さん」
「……はい……? ……!」

 舐め返してみた。いや、妖夢の口の端にココアがついていたのも事実なのだが。

「お返しです」
「――――!!」

 耳まで赤くなった妖夢を、楽しそうに○○は見遣る。そして、また一つトリュフを口にした。




「……○○さん」
「はい」

 しばらくして落ち着いて、それでもまだ顔の紅いまま、妖夢が尋ねてきた。

「また来年も、もらってくれますか?」
「勿論」

 心外な、という表情をして、○○は応える。

「今度、また料理教えてください。お菓子も」
「はい、いくらでも」
「……そして、一緒にいてください」
「はい」

 微笑んで、○○は妖夢の頭を撫でようとして――止まる。

「……手、洗わないとですね」
「ですね」

 何だか締まらないけど、そんなのもいいかもしれない。

「手を洗ったら、幽々子さん探しに行きましょうか」
「ですね、どちらに行かれているやら」


 台所に向かいながら、二人はそっと手を繋いだ。
 ココアの粉がついてしまったけど、全然気にならなかった。

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13スレ目>>31 うpろだ935


霧がかかり始めた紅魔館前の湖。
朝もはよから大ガマに挑み、無惨に食われた⑨が案外ヒョイっと釣れないかと釣り糸を垂らしてのんびりやってる所だった。

お使い帰りだろうか。どこからともなく、ふよふよとやってくる妖夢の姿を見つけた。

「…よお、朝からご苦労さん」

俺が声をかけると、彼女は一瞬だけ驚いて、あたりを見回す。

「下だ、下」

声の発生源が何処であるかを知り、妖夢はとっさにスカートを抑える。
そのまますうっと降りてくる彼女に、とりあえずカウンターで一発。

「…白、か」
「やっ、やっぱり見てたんですかっ!」

「お使いかい?ご苦労さん」
「いえ、これぐらいは当然の事ですから」
「だからご苦労さんっつってんのさ。…ほれ、土産に持ってきな」

そう言って、魚の入ったバケツごと妖夢に手渡す

「そんな…悪いですよ」
「いいっていいって。冥府の姫にゃあ売っといて損な恩はねえだろ?」

冗談交じりにそう言うと、妖夢は一瞬、厳しい表情を見せて、

「…それなら、尚更受け取れません」

と、勢いよくバケツを突っ返してきた。

「冗談だアホ。冥府の姫にゃあ張っといて得な策略はねえだろ」

どうせ全部見透かされるんだしな。

「え?あ、冗談ですか…。…でもやっぱり悪いですよ」
「なーに。元々暇つぶしに始めた殺生だ。幽々子にペロリと平らげて貰えりゃこいつらも本望だろう?」
「でも…」

ああもう面倒くさい。

「分ーったよ。それじゃひとつ、折中案を出そうか」
「折中案?」
「そ。この魚は俺が、白玉楼で食うって事」
「…へ?」
「つまり、朝飯を奢って貰おうって訳よ。同じ部屋で飯食ってて、あの幽々子がほっとく訳もないからな」
「…なんか妙な気分です」

主を小馬鹿にしたのに気づいてないのか。

「魚を何処で食おうと俺の勝手だから、あくまで魚を貰ったことにもならず、且つ魚のお裾分けもできるって寸法よ。…ついでに、朝から妖夢の手料理も食えるしな」

「妖夢の手料理が食える」の部分に妖夢がぴくりと反応したのを俺は見逃さなかった。

「しっ…仕方ありませんね。…では…その…」
「お手を拝借」
「きゃあっ!ちょ、きゅ、急に手を握らないで下さいっ!」
「白玉楼まで歩いて行けと?冗談。こちとら空も飛べない一般人だからな」
「だっ、だからって…その、不意に手を握るというのは…」
「手、握られるのは嫌かい?他の案としては「抱きついた状態」「首に手を置いた状態」「足にぶら下がる状態」ぐらいだが…あ、足の案は妖夢の白が見えまくるという副作用が「手でいいですっ!」…あ、そう?」
「全くもう…貴方って人は………スー…ハー……」

やけに念入りな深呼吸を重ねた後、俺に手を差し出す妖夢。
その手を少し強めに握り返す俺。


その後、早朝の釣りと白玉楼での朝食は俺の日課になったりするのだが…まあ、それは別の話。

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最終更新:2010年05月23日 00:43