妖夢10



13スレ目>>523、628 14スレ目>>29 うpろだ1004、1005、1009、1016



みょーん
みょみょーん
みょみょみょーん
みょみょみょみょ(ry

んあ、ここはどこだ?
ってオイ、足がナイじゃん!!
???「そこの幽霊何してるんですか?」
君は誰だ?
???「私は魂魄妖夢、この白玉楼の庭師です」
そうなのか…白玉楼って何?
妖夢「白玉楼とは冥界に存在する西行寺家のお屋敷です」
そんなところに何で俺はいるんだ?
妖夢「何でって…見た限り死んだとしか言えないのですが…」
そうか…俺は死んだのか…
んで俺はこれからどうすればいいんだ?
妖夢「さぁ?」
さぁって…西行寺家だっけ?そこに住まわせてもらえないかな?
妖夢「ん~幽々子様がどういうかはわかりませんが…それならついて来てください」

~青年&少女移動中~
にしてもこのお屋敷は広いな~
妖夢「一応二百由旬はありますかね」
ふ~ん
………庭師ってどんな仕事なんだ?
妖夢「無駄な枝を切りそろえたりとかそんな仕事ですね」
…………まだか?
妖夢「まだです」
そういやここにいる幽霊って飛べるのか?
妖夢「私や幽々子様は飛べますよ。それ以外では…巫女やメイドが飛んだりしますね」
巫女やメイドが空を飛ぶ?そりゃすごい世界だ
妖夢「ここは幻想郷です。あなたの居た世界とは違うのかもしれません」
幻想郷ね~


妖夢「……あっ、着きました」
これまたでかい屋敷だな
幽々子「妖夢おかえり~仕事はどうだっ…その方は?」
妖夢「どうやらもとの世界で死んでこちらの方に来たみたいです」
こんにちは、あなたが西行寺…えと」
幽々子「西行寺幽々子ですわ。以後お見知りおきを」
幽々子さんですか、えとお願いがあってまいりました
幽々子「その前にあなたのお名前は?」
はい、○○といいます
幽々子「○○ですか…してそのお願いとは何でしょう?」
○○「できればこのお屋敷に私を居候させていただきたいのですが…」
幽々子「タダではダメね。あなた何かできる?」
○○「う~ん、これといって何かできるわけではないんですが…お手伝い程度ならできます」
幽々子「ならあなたは庭師の仕事を手伝いなさい。それでいいなら居候を認めるわ」
妖夢「○○さん?」
○○「はい!がんばります!」
幽々子「いい声ね。さて…妖夢~ごはん~」
妖夢「早速ですが手伝ってもらえますか○○さん」
○○「了解。あとさんづけはやめてくれ頼むから」
妖夢「ふふっ、わかりました○○。じゃあ行きましょう」

~青年&少女料理中~
妖夢「○○って意外といろんなもの作れますね」
○○「一人暮らしだったからな。自炊や洗濯、掃除とかはある程度できるぞ」
妖夢「以外ですね~」
トントントントントン
包丁がリズムよくその音を刻む
○○「妖夢こそ包丁の扱いが上手じゃないか」
妖夢「私は庭師兼幽々子様の護衛役ですから」
○○「だからそんな物騒なもの持ってるのか」
妖夢「この「白楼剣」と「楼観剣」を使って敵を倒してますから」
○○「そうか…妖夢は可愛いからそんなもの持ってないほうがいいぞ」
妖夢「な、何を言うんですか///こ、この剣がな、ないと幽々子様を守れませんし……それに可愛いなんて……」
○○「???、妖夢?」
妖夢「ごほん。と、とりあえず早く作っちゃいましょう!!」
○○「あ、ああ」

~青年&少女&亡霊の姫食事中~
幽々子「それでね、妖夢がね…」
○○「妖夢ってそんなキャラだったんですね~」
妖夢「は、恥ずかしいことばらさないでください!!」
幽々子「別にいいじゃない~せっかくの客人よこの位のお話くらいしないと~」
○○「そうだぞ妖夢、とっても面白いぞ妖夢の過去の話」
妖夢「食べ終わったのなら片づけを手伝ってください!!」
○○「わかった、それではごちそうさまでした」
幽々子「妖夢おかわり~」
妖夢「まだ食べるんですか…」
○○「幽々子さんはよく食べるな~だからそんなに胸が大「ダン!!」
俺の座ってたあたりにナイフが…アブね~
妖夢「変なこと言うからですよ…」

咲夜「こんにちは、お邪魔だったかしら?」
幽々子「あら、いらっしゃい」
妖夢「いらっしゃい咲夜さん」
咲夜「あら、この方は?」
○○「○○です。このお屋敷に居候させてもらっています」
咲夜「珍しいわね、こんなところに居候だなんて」
妖夢「咲夜さん今日はどのような御一件でしょう?」
咲夜「ああそうだったわね。実はレミリア様が…」

~少女説明中~

妖夢「今のうちに片付けちゃいましょう」
○○「そうだな」



─────────


レミリア「咲夜」
咲夜「なんでしょう?お嬢様」
レミリア「暇だから白玉楼の庭師のところから、八雲紫が今起きているか聞いてきて。ちょっと外界のものが必要になったのよ」
咲夜「わかりました。では行って参ります」
美鈴「咲夜さんどこ行くんですか~?」
咲夜「お嬢様のお使いよ」
美鈴「いってらっしゃい~」

~ところ変わって白玉楼~
咲夜「というわけで、八雲紫はもう冬眠から目覚めたかしら」
???「あらあら冬眠とはひどいわね」
幽々子「紫来てたの?」
紫「ええ、それでそこのメイドさん私に何かよう?」
咲夜「お嬢様がこのようなものを……ゴニョゴニョ」
紫「ああ、これならマヨヒガの中にあるから後で藍に持って行かせるわ」
咲夜「そう、ありがとう」
紫「お礼を言われるほどでもないわ」



─────


俺がここに来てから一ヶ月たった

妖夢「まだ掃除は終わってませんよ○○さん」
○○「へ~い」
だんだんとこの生活にも馴染み始めている
幽々子さんによると幻想郷は全てを受け入れるらしい
妖夢「返事は「はい」ですよ○○さん」
○○「…はい」
仕事の手伝いの合間に妖夢に剣を教えてもらっている
おかげで筋肉痛がひどい
…いきなり腕立て・腹筋・背筋10000回は死ぬというものだ
???「こんにちは~だれかいませんか~」
妖夢「ん?誰か来ましたので行ってきます」
そのまま妖夢はパタパタと走っていった

○○「こんなところにもお客様がくるのか」
???「こんにちは~」
○○「うおっ!!…え~とどちら様でしょうか?」
???「私は鈴仙・優曇華院・イナバ。長いから鈴仙でいいわ。永遠亭から薬を届けにきたの」
○○「ここは幽霊しか居ないのに薬が必要なのか?」
鈴仙「半人半霊の子が居るじゃありませんか。それに亡霊の姫に食欲を抑える薬をと…」
○○「ふ~ん」
鈴仙「ところであなたは?」
ここで一応自己紹介しておいた
鈴仙「なるほどなるほど…そのうち鴉天狗には気をつけなさい」
○○「はぁ…「鈴仙さん、こんなところにいたんですか?」
妖夢が戻ってきたようだ
○○「おかえり~」
顔を赤らめた妖夢「えっと…その…た、ただいまです…」
鈴仙「ふ~ん二人はそういう関係なのね~」
妖夢「なっ!何を言うんですか!!私と○○さんはただの主従関係というか何と言うか…」
○○「まぁそういうことだ」
鈴仙「…妖夢こっち来て」

妖夢(なんですか?)
鈴仙(ああいうタイプに惚れるとそれを気づかせるまで大変よ)
妖夢(!!!)
鈴仙(さっさと告白しなさいよ)
妖夢(それは…)
○○「二人して何話してるんだ?」
鈴仙「!な、何でもありませんよ~」
妖夢「そ、そうですよま、○○さん」
○○「?妖夢顔が赤いぞ?」
そのまま○○の手が妖夢の額に…むきゅー
○○「ちょっ!!妖夢!だ、だれか医者を!!」
鈴仙「すこし寝かせておけば大丈夫ですよ(こんな感じで彼女は持つのでしょうか…)
○○「そうか…良かった…」
鈴仙「おっともうこんな時間ですね。私は帰ります。あと筋肉痛がひどそうなので湿布置いていきますね」
○○「そうですか。ありがとうございました鈴仙さん」
鈴仙「今後とも永遠亭を御ひいきに~」
鈴仙さんはそのまま宙に浮き、冥界の門まで飛んでいった

○○(とりあえず妖夢を布団に寝かせて…さて掃除の続きでもしますか…)




妖夢in布団(私が○○さんに惚れている?そうなのかな…)




─────



???「妖夢さ~ん」
妖夢「こんにちは文さん。今日はどのようなご用件でしょう?」
文「いや~最近ここに居候しているという○○さんの取材に…」
妖夢「またありもしないことを書くつもりですか。そんなことはさせませんよ!」
文「弾幕ですか、それな「妖夢さん掃除終わりました…ってアレ?」
妖夢「…チッ、○○さんそうですかじゃあ休憩にしましょう」
文(舌打ちですか妖夢さん…)「こほん、あなたが○○さんですね?」
○○「はぁ…そうですけど何か?」
妖夢「そんな鴉天狗放っておいて向こうへ行きましょう○○さん!!」
文「私は射命丸文。文々。新聞の記者であなたの取材がしたくてここまできたのですが…」
○○「取材ですか?いいですけど…「ちょっと○○さん!!」いいじゃん別に減るもんじゃないし」
文「それなら遠慮は要りませんね!!まずはここでの経緯をお話いただけますか?」

少女&青年取材中
妖夢「はあ…○○さん余計なこと言わなきゃいいんですけど…」
文「なるほど、なるほど、それでは妖夢さんとはどういうご関係で?」
妖夢「ぶふっーーーー!!」
○○「妖夢汚いぞー」
妖夢「そんな質問ダメです!!却下です!!最悪です!!」
○○「ん~別にただの師弟関係だしな~それほど何かあるわけじゃないし…」
文「それなら○○さんは妖夢さんのことをどう思って「これ以上言うのなら斬りますよ」
○○「スキですよ」
妖夢「はい????」
○○「友達として」
妖夢「……………」
文「あややややや、妖夢さん気を確かに」
○○「ん、俺なんかへんなこと言ったか?」
文「これは相当な…なんというか…」
妖夢「………お昼ごはんの用意をしてきます……」
妖夢はトボトボと歩いていった
○○「???」
文「…あなた人の気持ちを考えなさいとか言われたことあります?」
○○「よくありますけど…それが何か?」
文「…妖夢さんに同情します…」

妖夢「……友達ですか…はぁ」
幽々子「どうしたの妖夢」
妖夢「はっゆ、幽々子様!!」
幽々子「あなた少し疲れてるんじゃない?」
妖夢「…べつにそのようなことは…」
幽々子「…迷いは時に人を成長させてくれるわ」
妖夢「幽々子様?」
幽々子「…その迷いを断ち切るために自らも何か変わらなきゃいけないのよ妖夢」
妖夢「………」
幽々子「グ~~~お腹すいた~」
妖夢「…わかりました。今昼食の用意をします」

妖夢(私の迷い?それは……)



──────

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13スレ目>>606 うpろだ1009


 春のうららかな日差しが気持ち良くて、白玉楼の縁側に寝そべってみた。
 ぽかぽかと暖かくて、すぐに眠くなってくる。
 こうなってくると、何か枕にするものがほしくなってくる。

「……お、いいもの発見」

 ちょうど横をふわふわと浮かんでいた妖夢の半霊に、物は試しと手を伸ばす。
 ひょっとしたらすり抜けてしまうかと思ったが、ちゃんとつかむことができた。
 少しひんやりしているが、意外にぷにぷにと柔らかい手触りだ。
 逃げようとするのを押さえて、頭の下に敷く。
 ……おお、これはなかなか。
 ただ、半霊がいるということは近くにもう半分もいるわけで。

「半霊がついてこないと思ったら……何やってるんですか○○さん」
「何って、枕にちょうどいいと思って。
 しかしこんなに柔らかいもんだとは知らなかったなあ。
 このへんなんか特に……」
「!!!……ど、どこをつついてるんですか!」

 ?……どこって、半霊、だよな?
 じゃあこのへん……

「な、ななな何考えてるんですか○○さん!まだ明るいのにそんな」

 いったい俺はどこを触っているのだろう。
 非常に気になる。
 ……そうだ。

「なあ妖夢。ちょっとあれやってみてくれるか?ほら、半霊が妖夢になるやつ。
 えーと何だっけ、確か幽明求聞ごふぅ!?」

 鞘に収めたままの剣で脳天に一撃。
 どうやら妖夢が慌てている理由の核心を突いたらしい。
 意識が一瞬遠のいた。

「それをやったら洒落にならないところを○○さんが触ってるから止めてるんです!
 ほんとにもう……」

 そんなことを言いながら妖夢は、頭を抱えている俺の横に正座した。
 ぽんぽんと軽く膝を叩く。

「―枕がいるんだったら、私の膝をお貸ししますから」
「え、ほんと?」

 頭の痛みも忘れて顔を上げた。

「急に元気にならないでください!……少しだけですよ?」

 ではお言葉に甘えて。

「あったかいなあ」
「そうですね。もうすぐ桜も咲き始めるでしょう」
「いやそうじゃなくて、妖夢が。やっぱり半霊よりこっちの方がいいかな」
「……もう」

 妖夢の手が、前髪を分けながら優しく頭を撫でてくれる。

「半霊も半人も、どちらも一応私なんですけどね。
 ……だから今度からは、ちゃんと言ってくれたらいつでも、どちらでも枕になってあげますよ?」

 そう言って妖夢は顔を真っ赤に染め、俺の顔を覗き込んでいた目をそらした。

「魂魄妖夢は、文字通り全身全霊で、○○さんのこと好きですから……」

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うpろだ1043


 冥界にある白玉楼。そこに植えられている桜は屈指の美しさを誇る。
 毎年花見の季節になるとわざわざここまで足を運ばせてまでやってくるほどだ。
 主に紅白の巫女や白黒の魔法使いがその例だ。
 そして今現在俺の目に映る桜はまだ三分咲きというのに
 外にいたころには決して見られぬといっても過言ではないというほどに美しかった。
 しかし――


「小腹がすいたな……」


 花より団子という言葉があるようにいくら美しくてもそれだけじゃお腹が膨れない。
 ぼんやりと桜を眺めながら何か食べるものないかなーと考えているとふよふよと目の前を通り過ぎるものがあった。
 むんずとつかんでみるとそれは妖夢の半霊だった。

「何だ、はぐれたのか?」
 むにむにといじくりながら言葉をかける。まぁ半霊が答えられる訳ないのだが。
 もちもちと意外にやわらかいそれを見て俺はふと思った。
 そういえば前々から思っていたけど妖夢の半霊って何かに似てるんだよなぁ。
「そうだ、雪見大福だ」
 きめ細かい白さ、そしてこの手に伝わるもちもちとした感覚。まさしく大福そっくりだ。
 しかしここまで大福そっくりだと食感も同じなのか確かめたくなる。
 周りを見渡しても誰もいない。これは好都合だ。おもむろに半霊の尻尾を口の中に含んだ。



 はむっ



「ひやあああああぁぁぁぁーーーー!?!?!?」



 誰かの悲鳴が聞こえたが気にしない。
 それにしても素晴らしい! しっとりとしていて舌触りはなめらか、かなりの弾力があり程よい冷たさがまた心地よい。
 味がないのが残念だが、それを差し引いても十分なほどだ。傷つけないように俺は甘噛みを続けた。はむはむ。



 ドタドタドタドタッ!!



「ままままま、○○さんっ!? いったいなにしてるんですかっ!?」
「いひょう、ひょうむじゃないか。にゃにかあったのくふぁ?」
「何かあったのか、じゃありません!! いきなり、んっ、噛み付かれれば、ふぁっ、誰だって何事かって思います!」
「ひょういれば、こいつと感覚繋がっているんひゃっけ」
「うあっ、そうです! だから早く口から、やぁっ、出してくださいっ!!」
「うーん、きなこかあんこが欲しいなぁ」
「ちょっ、ああんっ、何変なこといってるんですかっ! 早くやめてください! ああっ、そこはっ!」

 ぷるぷると悶える妖夢を見てさすがにこれ以上は酷だなと思い、尻尾を口から出す。

「はぁはぁ、で、何でいきなりこんなことをしたんですか?」
「いやぁ、ちょっと小腹が減ってさ。たまたま通りかかったやつをつい」
「あなたはお腹が減ったら人の一部を食べるんですか!?」
「たまたまだよ、たまたま。それに前読んだことのある絵本のことも思い出しちゃってさ」
「へぇ、そんな気分になる絵本があるんですか、じゃあその内容教えてくださいよ」
「内容はたしかおばけをてんぷらにして食べる話だったかな」
「えっ」
「そういえば妖夢の半霊に顔をつけるとそのおばけにそっくりだな。案外てんぷらにしたらおいしいかな」

 あははと笑って何とか切り抜けようとしたが妖夢は俯いて微動だにしなかった。
 まずい、怒らせたかと思い顔を覗き込むと――ぽろぽろと涙をこぼしていた。

「よ、妖夢!?」
「うっ、○○さんはわたしのこと、そういう目で見てたんですね。ぐすっ。ひ、ひどいです。人の一部をおいしそうだなんて、ううっ
 そんなこと、幽々子さまだって言ったことないのにーーーーー!!!!」

 堰を切ったかのように大泣きする妖夢。慌てて宥めにかかる。

「嘘だから! じょーだん! 冗談だって! だから泣き止んでくれよ」
「知りません! 聞きたくありません!! うわーーーーん!」

 このままじゃラチがあかないので妖夢を抱きしめて落ち着くのを待つことにする。
 初めはわめきながら体をよじって俺から逃れようとしたが、しだいに落ち着いてきたのか
 スンスンと鼻をならして俺にもたれかかってきた。

「……落ち着いた?」
「はい……すみません、取り乱したりして」
「いや、俺もバカなことやったとは思ってる」
「反省してますか?」
「ああ、反省している」
 と告げたところで

 ぐきゅるる~

 おぅ、しっと。どこまでも空気の読めない俺の体が恨めしい……。

 くりゅるる~

 ん、今のは俺のじゃないぞ。なんというかつつましいというか可愛らしいというか、そんな表現がぴったりくる音だ。
 じゃあもう一人しかいないだろうと顔を下に向けると真っ赤な顔の妖夢が見えた。

「……すみません、おもいっきり泣いたものですから」
「いやいや、可愛らしい音でしたよ?」
「あうぅ……」
「にしてもあいかわらず小腹は空いたままだ。お茶菓子ない?」
「そうですねぇ、たしか紫様から貰った芋ようかんがまだ残ってたはずです。一緒に食べますか?」
「食べる食べる」
「わかりました。用意してきますね。……あとお腹が空いたら私に声かけてください。なにか用意しますからもうこんなことしないでくださいね」

 そう言って妖夢は台所にむかって行った。
 そして戸棚から芋ようかんを見つけてつまみ食いしている幽々子さまを見つけて妖夢が怒ったのは別の話。

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うpろだ1073


「妖夢、下がっていなさい」
「でも、幽々子さま!」

 止めようとする妖夢に、幽々子は振り向いて首を横に振る。

「あれは、何なんですか!?○○さんは、どうなってしまったんですか!?」

 二人の前には、焦点を失った目で虚空を見つめながら、ゆっくりと向かってくる○○の姿があった。







 冬が始まった頃、白玉楼に迷い込んだ○○を最初に見つけたのは妖夢だった。
 外の世界から突然冥界に迷い込んで、自分がどこにいるのかもわかっていない○○を、
 妖夢は幽々子の元へ連れて行った。

「あらあら、生きた人間ね。貴女のお婿さんかしら?」
「な、何をみょんなことをおっしゃるんですか!?」
「みょん?―まあ冗談はともかくとして、帰るあてもないでしょうし、しばらくここにいるといいわ。貴方、名前は?」
「……○○です」
「そう。私はこの白玉楼の主、西行寺幽々子。
 こっちはうちの庭師をしているみょんよ」
「わ、私はそんな名前ではありません!」
「お世話になります、幽々子さん。よろしく、みょん」
「だから私はみょんではありません!私の名前は魂魄妖夢です!」






 白玉楼に居候することになった○○は、掃除などを手伝いながら日々を暮らしていた。

「みょんー、こっち終わったよー」
「だから私はみょんではありません!妖夢だと何度言ったらわかるんですか!」
「いや、わかってるんだけど……なんかしっくり来るから」
「もう……ちゃんと呼んでくださいよ?」

 何度かそんなやりとりを繰り返したが、それでも彼はやっぱり、妖夢のことをみょんと呼ぶのだった。





 いつだったか、妖夢が熱を出したことがあった。

「みょん、具合はどうだ?」
「……あ……○○、さん。みょんって、呼ばないでくださいよ……」  
「ああ、ごめん。熱上がるからその辺にしておこう。……まだ苦しそうだな」
「いえ……もう大丈夫です」
「ほら、無理するなって。今タオル換えてくるよ」
「……すみません」
「何かあったら呼んでくれよ?すぐ来るから」

 結局妖夢の熱が下がるまで、○○は何かと彼女の世話を焼いていた。
 後の幽々子曰く、傍から見ていて、○○の心配そうな様子の方が見ていられないくらいだった、ということだ。





 すっかり身体が治った頃、妖夢は○○に会いにいった。

「あの、○○さん」
「おお、みょん。もう大丈夫なのか?」
「ええ、おかげさまで。でもやっぱりみょんって呼ぶんですね」
「うーん、何となく可愛い響きで、似合ってると思うんだが」
「……!か、可愛いって」
「!い、いや何でもない!忘れてくれ!」





 雪が解けた頃、白玉楼を映姫が訪ねてきた。

「閻魔様がここへ来るなんて珍しいわね。今日はどんな御用かしら~?」
「……あまり芳しくない用事です、西行寺幽々子」
「あらあら、極悪人の霊でも逃げ出したのかしら」
「当たらずとも遠からずですね。怨霊のかけら、とでも言えばいいのでしょうか。
 意思こそありませんが、生きた身体を見つけてとり憑き、乗っ取ろうとする厄介なものです」
「……まあ」
「三途の川に流れてきたのがこちらの方へ逃げたらしいのですが、
 見つけ次第始末をお願いします。人間にとり憑いたりしたら一大事ですので」
「もしとり憑いてしまったら?」
「……一度憑かれたら引き剥がすことは不可能でしょうね。
 身体を得てしまったら危険な猛獣を野に放つようなものです。
 まとめて破壊するしかないでしょう」





 ○○と妖夢は二百由旬の庭を歩いていた。
 ただ寄り添って歩くことが、○○も妖夢も、なぜかとても幸せに思えた。
 自然と、顔に笑みが浮かぶ。

「もう春だな」
「そうですね」
「この庭にも、桜の樹があるんだな」
「私が丹精込めて世話をしていますからね。
 もうすぐ、綺麗な花が咲きますよ」
「……楽しみだな」
「楽しみにしていてくださいね?
 ○○さんにもぜひ見てほしいです」

 ……その時、まだ咲いていない桜の樹を眺めていた○○は、妖夢より一瞬早く異変に気付いたらしい。

「危ない!」

 突然突き飛ばされ、驚いた妖夢が振り返った時目に入ったのは、
 倒れた○○に一瞬まとわりつき、その身体の中へ入り込むように消えていく霊体の塊だった。





 そして、今に至る。





 映姫を送り出した後、知らせを受けて駆けつけた幽々子が見たのは、
 数刻前まで○○だったものと、襲いかかるそれを何とか受け流している妖夢だった。
 事態を把握した幽々子は、妖夢を引かせて自ら前に出た。

「……怨霊のかけら、だそうよ。とり憑いてしまったら、元には戻せないって」
「何とか、何とかならないんですか?」

 うろたえる妖夢を、諭すように幽々子はゆっくりと答える。

「もう助からない以上、○○の身体ごと滅ぼすしかない。
 だから、下がりなさい。貴女にあれは斬れないわ」
「……私が、半人前だからですか」
「いいえ。妖夢、貴女○○のことが好きでしょう?
 ついさっきまで○○だったものを斬ることができるかしら?」
「…………」

 妖夢はうつむいて押し黙ってしまった。
 答えられないことが、幽々子の言葉の全てを肯定していた。

「妖、夢」

 ○○の口が開いた。
 弾かれるように顔を上げた妖夢は、そちらに目をやる。

「……早く、逃げ、ろ」

 それは、消えかけながらも妖夢のことを案じる○○自身の意識が発した声だった。
 見えているわけではないのだろう。
 ただ、妖夢を傷つけまいとしてうわ言のように発せられた声だった。

「……幽々子さま、お下がりください」

 妖夢が、前に出た。
 もはや、その目にうろたえや迷いは見られない。

「妖夢」
「私が、やります」

 鞘から抜き放った二刀を構える。
 ○○の声はもう聞こえなかった。

「こんな時だけ、ちゃんと名前で呼んでくれるんですね」
「…………」
「貴方と一緒に、この庭の桜を見たかったです」
「…………」
「ちゃんと伝えられなかったけれど、○○さんのこと、好きです」
「…………」
「……だから、せめて私の手で」

 気迫に押され立ち止まっていた相手が、再び動き出そうとした刹那。
 決意に澄んだ妖夢の眼が、見開かれる。
 斬撃に込めた気合が弾ける寸前の、時間と空間が粘りついてくるような感覚。


 ……常人が見れば、一瞬の出来事にも、スローモーションにも思えただろう。
 ○○だったものと妖夢の位置は、いつの間にか入れ替わっていた。

「妖怪が鍛えたこの楼観剣に……いえ」

 真一文字に結んだ妖夢の口が開かれた。
 背を向けた妖夢の後ろで、○○の身体がゆっくりと体勢を崩していく。

「この魂魄妖夢に、斬れぬものなど」

 ○○が完全にその身を土に横たえたと同時に、
 妖夢も張り詰めていたものが切れたかのように膝をついた。

「斬れぬものなど、何も……何もっ……!」

 言葉が途切れ、止めどなく涙がこぼれる。
 倒れた○○と、泣き続ける妖夢を、幽々子は静かに見つめていた。































「それで?庭師の恋は悲恋に終わったわけ?」
「紫はそう思う?」

 あれからしばらく経って、幽々子は冬眠が明けて訪ねてきた紫とお茶を飲みながら話をしていた。

「思わないわね。だって○○って、さっき階段掃除してた彼でしょ?
 妖夢が名前呼んでたもの。それとも同じ名前の別人?」
「まさか。そう、あれがさっきの話に出てきた○○よ」

 湯呑みのお茶を一口すすり、幽々子は話を続ける。

「少なくともあの時の妖夢の一撃は、一人前の気合と、それに見合う意志を込めたものだったんでしょう。
 まさか無意識に○○に憑いたものだけを斬って、○○は助けるなんてことができるとは思わなかったわ~」
「……先代の庭師だったらできたかしらね?」
「どうかしら。できそうな気もするけれど、わからないわね」

 ふう、とため息を一つつく。

「ともかく、斬られたはずの○○が起き上がって、妖夢もそれに気づいてね。
 初めは状況がつかめないみたいだったけど、とにかく無事だったって理解できたみたいで。
 また泣き出した妖夢を○○が抱きしめて」
「晴れて二人は恋人同士、ってわけね」

 庭では桜も咲き、時折風に乗って花びらが舞っている。

「じゃあ、外の世界へのスキマを開いたりはしなくていいのね?」
「ええ。むしろそんなことはしないでくれるとありがたいわ」





「どうですか?白玉楼の桜は」
「……綺麗だな。見てると吸い込まれそうだ」
「良かった。気に入ってもらえたみたいですね」

 掃除が一段落ついて、○○と妖夢は桜の樹の下を歩いていた。

「来年も、その次の年も、一緒にこの桜を見たいな」
「……私も、○○さんと一緒に見たいです」

 どちらからともなく手を繋ぐ。
 しばらく歩いたところで、○○が立ち止まった。

「みょ……」
「だめですよ」

 妖夢は空いている方の手を回し、立てた人差し指を○○の口に当てた。

「ちゃんと、呼んでくださいね?」
「……わかった。妖夢、キスしていいか?」
「……はい、どうぞ」

 眼を閉じた妖夢の唇に、○○の唇が重なる。
 また一陣の風が吹き、桜吹雪となって通り過ぎていった。

───────────────────────────────────────────────────────────

うpろだ1160


早朝。白玉楼の庭で、一心不乱に剣の修行に励む少女が居た。
そしてその近くでそれをのんびりと見ている男が居た。
少女の名は妖夢。男の名は○○。
妖夢は白玉楼の庭師兼、白玉楼の主の護衛。
○○は白玉楼の主、西行寺幽々子に気に入られ、そこに住んでいる幽霊だ。
○○は、妖夢に話しかける。

「妖夢ちゃん、今日も修行がんばってるねー」
「あ、○○さん。そろそろ朝ごはんの準備に取り掛かりますから待っててください」
「む、それなら俺も手伝おうか」
「そんな、いいですよ。幽々子様とお話でもして待っててください」
「いーや、男が女ばかりに仕事させるのは俺は気に入らない――ほれ、タオルだ」
「ありがとうございます。――んー、そこまで言うならいいですよ」

剣の修行を終えた妖夢と○○は、白玉楼の無駄に長い廊下を歩く。

「いつも思うんだが、ここの廊下は無駄に長いな」
「そうですね、二人では広すぎるくらい…」
「んー、俺と妖夢の二人で住人を増やすってのはどうだ?」

妖夢の顔はまるで熟れたトマトのように真っ赤に染まる。
…まるで兄妹のような二人だが、実は恋人同士である。

「な、何を言うかと思えばっ…!いい加減にしないと斬りますよっ!」
「ちょ、霊体だから成仏しちゃうって、やめ、やめて!死ぬ!死んでるけど死ぬぅ!」

そんなくだらない会話をしているうちに、○○と妖夢は台所に到着した。

「さーて、手伝うとか言ってみたものの俺は料理ができないわけだが」
「…もっと早く言ってください」
「ごめんなさい」
「じゃあ、食材と食器を取ってきてください。」
「うっし、ちょっと待っててくれよー」

食器と食材を妖夢の言うとおりに揃えた○○は、一人考えていた。
その内容は、妖夢との関係を白玉楼の主――幽々子に打ち明けるかどうかということである。
この二人は、自分達の関係を幽々子に話したことがないのだ。
それで、○○は一人で悩んでいた。この関係を打ち明けていいのかどうか。
考え終わらない内に、食材と食器は揃ってしまった。
――いつまでも悩んでいても仕方が無い。一旦、そういうことにした○○は、妖夢に話しかける。

「用意できたぞっと」
「ありがとうございます。じゃあ、準備しますから待っててください。」

とんとん、と部屋に包丁で野菜を切る音が響く。妖夢はかなりの料理上手であり、
実際、白玉楼で幽々子と○○が食べる料理はほとんど妖夢が作っている。
部屋の隅でも○○は考える。この関係を打ち明けると、もしかすると今のような関係は崩れるかもしれない。
そう考えると、○○はどうも幽々子に打ち明けるのを怖ろしく感じてしまう。
しかし、いつまでも隠し通せるわけではない。むしろ、そちらのほうが怒るかもしれない。
そう考えると、早く打ち明けたほうがいい気もする。
――結局結論が出ない。自分の優柔不断な性格に落ち込んだ○○は、大きく息を吐く。
息を吸うと、おいしそうな匂いが漂ってきた。今朝の朝食は煮物。そう断定した○○は妖夢に近づく。

「妖夢、今朝の朝飯は煮物かな?」
「わ、いきなり覗き込まないでください。○○さんの好きな筍を使った煮物ですよ」
「お、そいつは嬉しい。筍が使ってあることより、妖夢が俺の好きなもので料理してくれた事が、な」
「もう、○○さんったらそんな事言わないでください。好きな人に女の子は尽くしたいんですよ?」
「幽々子様にもしっかり仕えてあげなよ、と。では、ちょっとつまみ食い…」
「こら、駄目ですよ…って、ひゃあっ」

○○は妖夢を押し倒す。

「料理じゃなくて、妖夢をな」
「こんな朝から…駄目ですよ?」
「美味しいものはいつ食っても美味しいんだぞ?」
「むぅ…キス、してくれないと嫌です」
「はいはい」

○○は妖夢に唇を重ね、彼女の服に手をかk「妖夢ー、ご飯まだー?」
「「…え?」」

二人が唇を重ねた瞬間、幽々子が部屋の扉を開けて入ってきたのだ。

「あらあら、お取り込み中ねー?じゃあ私は待ってるから~」

そう言って、あっさりと幽々子は部屋を出て行く。

「ちょ、ちょっと待って下さい幽々子様!」
「こ、これは誤解でー!」

二人は、顔を真っ赤にして反論するが、その相手はすでに近くには居なかった。
…俺の悩みはなんだったのだろう…そう思い、○○は大きく息を吐いた。
…隠してきたはずだったのに…妖夢も、大きく息を吐いた。

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朝食の場、いつもならそれなりに賑やかな場だが、
今日は静かだった…主に、○○と妖夢が顔を真っ赤にして俯きながら食べているせいだが。

「この煮物おいしいわねぇ、妖夢~…聞いてるの?」
「…ぁ、はい、聞いてます!新鮮な筍を使いましたよ!」

さっきから何を言ってもあたふたと言葉を返す妖夢が面白いのか、幽々子は何度も話しかける。

「それで、二人はどこまでいったの~?」
「「ブフォッ!」」

そんな事を幽々子が笑顔で言い、二人はほぼ同時に食べていたものを口から吐き出してしまう。
向かい合って座っていた妖夢と○○は、互いの食べていたものが顔にかかる形となる。

「す、すまん妖夢」
「わ、私こそ…!」
「あらあら、うふふ」

暢気に笑う幽々子に、あんたのせいだよと二人は内心毒づきながら、顔を拭く。

「夫婦初めての共同作業ぅ~」

そんな事を幽々子が呟いたせいで、二人の顔はさらに真っ赤になる。

「…どこから、知ってたんですか?」

○○は質問する。

「告白の時からぜーんぶ。ごめんなさいね、紫に頼んで見てたの~」

この発言には、妖夢も○○も驚いた。妖夢に至っては独り言を呟き始めた状態である。
一方○○は、悩んでいた自分がバカらしくなり、くつくつと笑い始めた。

幽々子もそんな○○が可笑しく、笑い始める。雰囲気に呑まれ、妖夢も笑う。

朝の白玉楼に、笑いが響いた――

おしまい

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最終更新:2010年05月23日 00:46