幽々子1
1スレ目 >>9
ゆゆへ
「できれば死ぬまで、というか死んでからもずっと一緒にいさせてくれればと」
1スレ目 >>10
ゆゆ様のためなら死ねる
1スレ目 >>22
ゆゆ様へ
「僕は死にましぇーーーん!!」
1スレ目 >>77
ゆゆ様へ
「味には自信があります」
1スレ目 >>105
「幽々子様、あなたへの思いを歌にしました!」
「あらあら、それは嬉しいわね。妖夢、掃除はやめてこっちに来なさい。さあ、どうぞ」
「幽々子ねえさんの歌」~妖々夢音頭~
♪ ハア~~~ッ オッパイオッパイ日がくれる――――♪
幽々子ねえさんオッパイパイ――(オパーイ)
俺が幽々子のパイを吸い、幽々子が俺の【放送修正】(パーイ)
吸って吸われて吸って吸われて吸って吸われて日がくれる――(πッ)
そして涅槃の旅に出る――俺と幽々子。
気ずけば周りは白玉楼。「しらたまろう」じゃなくて「はくぎょくろう」。冥界の。
そして末永く暮らす。100年くらい。ガチで。♪
…高久屋さんの描いた幽々子様を見てこんなものが。
1スレ目 >>222
(二百由旬の春の庭)
『ゆゆこさま!!
あ、あああの……ん、んーと…
ぼ、僕は!…見つけてしまいましたッ!
こんな僕の魂を束縛して離さない、
この世で一b……じゃナクッテ…
あ、あああの世で一番き、きれいで……美しい…
満開の桜を!!
』
('ー`)んー…俺の頭の中だなorz
1スレ目 >>281-284
青年は、目を開けた。
まるで、子供のように。穏やかに、無邪気に。
どこだろう、ここは。
見渡す限りの、桜花の宴。
暖かな空気の中、桜の花は今が盛りとばかりに爛漫とそのあでやかな姿をさらしている。
ついぞ味わったことのない、母に抱かれたときのような安心感。あるいは長い長い旅を終えて、ようやく我が家に帰ってきたような安心感か。
立ち上がり、ふと青年は気づいた。
自分は、なぜここにいるのだろう。
どうやって、ここまで来たのだろう。
いや、自分はいったい誰だったのだろう。
我が身一つがここにあるばかり。その他一切がはぎ取られたかのようにない。
けれどもなぜだろう。空っぽでありながらこんなにも心が安らぐのは。
自分は、此処に来るべきだったのだ。何を恐れることがあろう。
青年はゆっくりと、桜の木々の間を進んでいく。
爽、と風が吹き、幾千もの花びらが淡い雪と見まごうばかりに舞う。その響きは天井の雅楽のごとく、その様は天女の誘いのごとく。
どれほど歩いたか。
やがて、青年はたどり着いた。
無限とも思えた桜並木の果て。ひときわ大きく、ひときわ枝振り見事で、そしてひときわ年を重ねた一本の桜の前に。
天に向かってその節くれ立った枝を伸ばし、地に向かってその太い幹を支えるための根を伸ばす。
その桜は、満開だった。
生の歓びを体現し、花咲く春を謳歌せんが為に。
桜は咲き誇り、遍く全てに春を告げる。
そして、その樹の前には。
一人の少女が、青年を見つめてほほえんでいた。
花霞のような桜色の髪。
匂い立つようなその美貌。
少女の中に聖母の慈愛をたたえた瞳。
線を引いたような愁眉。
柔らかな頬と首筋。透けるような白い肌。
身を包むのは、純白の花嫁衣装。
少女はほほえむ。
たどり着いた青年を、優しくねぎらうかのように。
この舞い散る桜全てを、愛するかのように。
長い間待ちわびた瞬間が、ようやく訪れたかのように。
ああ、と青年は納得した。
自分は、この少女に会うためにここへ来たのだ、と。
そのためにどれだけ長い道のりを歩んできたのか。
語ることのできない辛さだったのかもしれない。最も大切なものさえ失ってしまったのかもしれない。
何一つ覚えていない身では、自分の過ぎ去った過去は分からない。ただ、とても哀しく辛い道のりだったとしか。
けれども、今はそれで構わない。
目の前にいるこの少女と、再び会うことができたのだから。
それに勝る幸福など、ありはしない。
「ようやく、会うことができました」
少女の言葉に、青年の胸はかすかに痛む。
自分はどれほどの間、少女を一人きりにさせてしまったのだろうか。
死に別れより生き別れと言うが、自分がいない間どれだけ少女は寂しさを噛みしめてきたか。
けれどもそれも、少女の言葉で夏の雪のごとく溶けて消えていく。
「長い長い間お待ちしておりました。けれども、それも今宵限りで一抹の夢」
少女はあでやかに笑う。恋人を見つめる、一人の女としての瞳で。
「あなたは憂き世から逃れ、私はこの
西行妖から逃れることが叶いました。私はもう、西行寺ではありません。私は…………」
「幽々子…………」
青年の口が動く。
何もかも忘れてしまった自分が、ただ一つ覚えていた彼女の名前。
名字ではない、その名前。
幽々子。それが彼女の名前。
どうしようもなく懐かしく、心に甘く残る名だろうか。
「はい。私は幽々子。西行寺のものではない、あなただけのもの。幾千の朝を、幾万の夜を過ごし、こうしてあなたの元に戻って参りました」
少女の笑みが、不意に歪む。
その頬を伝うのは、感慨の涙か。
「……身分違いだと、何度も諭されました。所詮叶わぬ恋だと、何度もあきらめかけました。けれどもあなたは私の手を取って下さり、私を優しく抱いて下さった。一度だけ、心と体の奥底から感じた、あなたの温かさ。そのぬくもりだけをよりどころに、私はあなたのいなくなった後も、亡霊としてこの地にとどまっていました。けれども、それももう終わり…………」
少女は涙を流しながら、自分の背後にそびえる老いた桜を見上げた。
「さようなら。西行妖。私は、この方と共に参ります」
青年の口を、再び言葉が衝いて出た。
「惜春の 思い知らずや 散る桜……」
すかさず少女が下の句を続ける。
「……われ一人待つ 君此に来るを」
青年はつぶやく。遠い昔の記憶をたぐり寄せ、大事に手で抱いて。
「君の詠んだ歌だった…………」
惜春の 思い知らずや 散る桜 われ一人待つ 君此に来るを
「はい。桜の散りゆく今生の別れの日に。覚えていて下さったのですね」
少女の流す涙は、もう感慨ではない。それは歓喜の涙。自分の思い続けていた恋人に出会うことのできた、その喜びの故に流す涙。
少女の詠んだ歌が、二人を今、再びかたく結びつける。
「忘れなど……しない。ずっと、覚えていた。どんなことがあっても、ずっと……」
少女は、静かに青年の方へと近づく。
桜花の精かと見まごうばかりに麗しく、淑やかに。
白い裸足が、桜の花びらでできた絨毯を踏む。
「つれて行って下さい。私の愛しい方。どこへでも、あなたの望むところへ」
瀟、と風が歌う。
奏、と木々がざわめく。
「一緒に、いよう。いつまでも、共に……」
舞い散る花弁は、二人をただ祝福するように。
「はい。今度こそ、永遠に共に……」
二人の影が重なる。
風も、木々も、花も。全ては一つの尽くせぬ恋歌。
思い焦がれた二人のための華やかなる音色。
青年はその両腕に、恋した少女を抱きしめる。
もう離れないようにと、強く激しく。
少女もそれに応えて、強く優しく抱き返す。
やがて見つめ合い、触れ合う唇と唇。
満開の桜に誓う、二人だけの祝言。
ただ静かに。ただ切なく。
さくらさくら、誰が為に咲く。
さくらさくら、二人の為に咲く。
さくらさくら、誰が為に散る。
さくらさくら、二人の為に散る。
さくら、さくら。
幽雅に、咲かせ。
永遠に──────
(完)
(>>254に倣って蛇足)
っすぐ……うょしでんな話いいてんならがな我……ぅう。と、したでめしたでめ、たしましら暮にせ幸もでまついは人二てしそ…… ・夢妖
てせ見し少、らしかのるいてい書に心熱になんそを何、夢妖らあ ・様ゆゆ
?!んょみ ・夢妖
第1章の人
ageてすみません。というわけでリクエストのゆゆ様エンド。自分としては、西行妖から解き放たれ、生前のゆゆ様に戻った感じでしょうか。
主人公はきっと生前の恋人という設定かな。口調が丁寧語で違和感を感じるかもしれませんが、生前のイメージですのでどうかご了承を。
あと文中の短歌は自作ですので助詞がおかしいとかあるかもしれませんが、笑って見逃してください。
ちなみにこのイラストからヒントを得ました。すごい好きです。
ttp://www.pat.hi-ho.ne.jp/yoh-ku/yuyuko2.htm
1スレ目 >>289
その青年は、桜の花びらと共に、そこを訪れた。
文明社会に生きる一般的な青年であった彼が迷い込んだ地は冥界、彼の文人の魂が集うと呼ばれる白玉楼である。
もちろん、そこには今ひとつ融通の利かない半人半霊の庭師がいて、動く物全てを飲み下しかねない亡霊の姫が居る。
普通に考えれば、ここは死人の居るところ、そして死人が生まれるところ。
しかし、彼は白玉楼の主たる西行時幽々子たっての願いで、この地に住まうこととなった。
その顛末はこうである。
夕暮れ時、白玉楼の廊下をうろうろと思い悩む一人と一人魂――妖夢。
何をそこまで悩むのか、彼女はふと現れた主人の気配にさえ気づくことなく、ひとりゆらゆらと頭を抱えていた。
「妖夢、夕食が遅れているわよ?」
舞い降りた言葉に妖夢は口から心臓を出しそうな驚き様で振り返り、必死に釈明を行う。
――曰く、昼頃に外から迷い込んだ人間が、「貴様の包丁は素人同然だ!そのような腕でこれだけの食材を扱うとは料理への冒涜ッ!私に作らせろォッ!!」と妖夢をつまみ出して料理を始めたという。
どうも話によると彼は人の世では料理人であったらしく、その後、地の利があるのか鯉口を切らんばかりの勢いで怒鳴り込もうとした妖夢を「ユルせないっ!断り無く調理場に入ってきたのはユルせないッ!調理場は清潔でなくてはイケないのデスヨッ!」と伊太利阿風の恫喝で閉め出したらしい。
あの剣幕では生死はともかく台所に被害を与えずに排除することは難しい――だからどうしようかと思い悩んでいたというのだ。
幽々子は従者の呻きにふーんとだけ返し、その形の良い鼻で大気を吸い集める。
「――そう、じゃあ楽しみに待っているわ」
彼女はそうとだけ言うと、膳がやってくるであろう居間へと消えていった。
下手なことをすれば取って喰ってしまえばいい、とでも思っているように。
後に残るは途方に暮れる従者のみである。
で、そんなこんなで今日された食膳の評価はと言えば……
「うーーーーーーまーーーーーーーいーーーーーーーーぞーーーーーーーーーーーーー!!」
まぁ状景としては彼の味皇を思い浮かべていただくと良い。
故に彼は人の身にあって白玉楼の住人となった。
又その時従者は、生きた人間を冥界に住まわせて良いのか、といった疑問は、「半人が居るなら全人が居てもいいじゃない」という何とも大雑把な答えにより無かったことにされた。
「○○、食事はまだかしら?」
ちゃぶ台の前に鎮座した幽々子はやたらそわそわしながら台所に向かってそう言った。
青年――○○と呼ばれる彼が来てからと言う物、彼女は毎食ごとに期待からかちゃぶ台の前に正座してそわそわするようになった。
「後三分ほどでブリ大根が炊き上がります!」
台所からはそんな堅い物言いの、凛々しい返答が帰ってくる。
その言葉にわぁいとばかりに目を輝かせる幽々子を見て頭を抱えるのは傍らの従者。
――冥界の姫としてこれで良いのか?――でも○○さんのご飯は美味しいし――でもやっぱり人間が居るのは駄目なんじゃ?
要するにどうでもいい悩みであった。
そして、○○の作るご飯はとても美味しかった。
桜吹雪の舞う庭園、○○は一人縁側に座して、ぼんやりと桜を眺めていた。
視界の端では妖夢が庭木の剪定を行いながら二百由旬の距離をかけずり回っている。
妖夢は妖夢で、視界の端にとらえた男の姿を見てまた頭を抱えそうになる。
「就職口がなかったんだよ。食ってけるならいいや」
これは、何故人の住まうべき所に帰らないのかという妖夢の問いへの彼の答えである。
彼女はそんな、桜も女の子も綺麗だしねぇはっはっは、と続けるような彼がどうにも苦手だった。
物には在るべき所があると生真面目に考える妖夢にとってその返答はどうも曖昧すぎたのだ。
「サボりかしら?妖夢」
そして彼女は背後からの主人の声に半身ごと跳ね上がる。
思わず手が止まっていたらしく、妖夢は指摘にしどろもどろになる。
対する幽々子はそんな妖夢の脇を通り抜け、ぼんやりと桜を眺めている○○の手前まで歩いていった。
「―――綺麗だ」
その呟きは、人の世に有り得ぬ桜に対してか、それとも桜吹雪に彩られ、艶然と頬笑む幽々子に対してか――おそらくそのどちらでもあったのだろう。
「あら、ありがとう」
言葉は撫でるように掛けられ、彼は自分の賞賛した美しさが幽々子であるとやっと理性で解し、思わず顔を真っ赤にして慌てて立ち上がる。
「え!?ぁぇ!?うぇ?ゆ、幽々子っ!?え、ちょ…え!?」
慌てる○○は幽々子の両手で緩やかに制され、やっとこさ落ち着きを取り戻す。
調理場での凛々しい彼とはどうも繋がらない、どこか抜けた姿であった。
「ところで○○。少しお腹がすいたのだけれども」
「――解りました。台所にちょっとした菓子があります。食事の時間にはまだ早いので、それで虫を休めてください」
そして、幽々子の口からそんな食べ物の話が出ると、彼は突然人が変わったようにしゃんとして言葉を返した。
料理は彼にとって、妖夢にとっての剣の道のような物なのだろう。
そんな彼の生き様を、幽々子は憎からず思っていた。
幽々子が縁側に座って待つこと数分、○○は台所から何かを取って帰ってくる。
「幽々子様、持って参りました」
見れば彼の手には紙袋が握られている。
「これがあなたの作ったお菓子?」
幽々子は差し出された紙袋を受け取ると、がさりと音をさせて袋の中身を一粒取り出した。
それは血のように紅い、ビー玉ほどの透ける玉。
――アメ玉…ですか?
それはいつの間にか傍らまで来ていた妖夢の言葉。
「は。ここの桜の香りを練り込んだ飴です。これこそ、今の飢えた幽々子様にピッタリの代物にございます」
○○は澄ました顔でそう告げた。
その言葉が引き金になったのだろうか、幽々子は思わず口元を押さえてくすくすと笑い出す。
対する○○もどうも小さくくっくっと笑っている。
そして、妖夢は何のことか解っていないらしく、ただ半霊を?型に曲げるだけである。
「人が幽霊を養う飴――そうね、ここは冥界だもの」
「ええ。ここが人の世の対ならば、それが何より正しいでしょう」
そうやって二人は笑い会う。
残されるのは要領得ないみょんな従者だけである。
「それにしても幽々子、いい拾い物したわねぇ」
そう言って○○の漬けた古漬けを囓って酒をあおるのは八雲紫。
その横では突き出しの煮物を前にして打ち拉がれる9本の尻尾が転がっている。
今はこの場にいないが、その式の式である黒猫も白玉楼までやって来ている。
今日は食事のお呼ばれ――要するに、やたら料理の上手い新たな従者の自慢である。
「そうね、あれは万人に一人程の才能をちゃんと伸ばした代物だわ」
水を向けられた幽々子は自分の器の最後の煮物を口にすると、柔らかな唇に杯を当てた。
――本当、人の世ももったいないことをするものね。
幽々子がそう呟いたのと、怒声が響いたのは同時だった。
「猫が調理場に入場するなど禁止禁止禁止ィィィーーーッッ!!調理場は常に清潔であらねばならんのだァァァァァーーーッッ!!!」
次いで聞こえ出す幼い鳴き声、気が付けば傍らで煮物に敗北感を抱いていた式神が消え去っている。
「……幽々子、アレは何かしら」
紫は笑顔も張り付いたままそう訪ねる。
今の彼女を漫画的に描写すれば、頭に巨大な水滴が張り付いていただろう。
「ああ、あれ?料理中台所に入ろうとするといつもああなのよ」
――私も摘み食いに入ろうとして何度も摘み出されたわ。
またもや、幽々子がそう呟くのと怒声が響くのは同時であった
「貴様ッ!橙になにをするだ「狐も入場禁止だァァァァァーーーーーッッ!!!」
居間には沈黙、台所の方からは圧倒されて謝り倒す狐の声。
「……凄まじいわね」
「ええ。台所でなら霊夢だって敵わないんじゃないかしら?……そろそろ自分の式を引き取りに言ったら?」
幽々子の言葉に紫はそうさせてもらうわと立ち上がる。
縁側に立つ紫は思いっきり耳の寝た式と泣きじゃくる式の式の情けない姿に少し頭を抱えて、○○にやんわりと謝罪の意を述べていた。
「いえ、こちらも少し言い過ぎました。今度からは気を付けてもらえれば結構ですので……」
日本的慣行として頭を下げ返す○○に、二匹の式も頭を押さえられてごめんなさいとお辞儀した。
すると○○は懐から取り出した小さな包みを二匹に渡す。それは件の飴玉であった。
「まぁ、食事までは四半刻かかるから、それでも舐めて落ち着いてくれ」
次いで頭をぽんぽんと撫でられ、式の式は泣いた烏がもう笑うように機嫌を取り戻した。
式の方はというと、撫でられたりお菓子を貰ったりといろいろ自尊心に響く物があったらしくしょぼくれていたが。
そして八雲家一行が居間に返ろうとした時、そこには物欲しそうに○○を見つめる幽々子がいた。
「…? どうかしましたか幽々子様。食事はまだですよ」
「私にも、飴をちょうだいな」
幽々子そう、は桜色の唇を突き出して囁いた。
「…酒に飴は合わんでしょう。何より煮物が「もう全部食べちゃったわ」
○○は相変わらずの主人に軽くため息をつくと、懐から一粒の飴を取り出して渡そうとする――が、幽々子は受け取らない。
一体なんだ、と○○が思っていると、幽々子は相変わらず死して尚艶やかな唇をこちらに向け、口を開いている。
――合点がいった。食わせろ、と。観衆の前で。
見やれば八雲家がビミョーなツラで観戦モードに入っていた。
橙などは藍によって口に飴を放り込まれ、何も見ないようにされている。
――どこまで期待してるんだお前等。
思わず突っ込みたくなる心を堪えて、○○は飴の包みを剥き幽々子の唇に飴玉をあてがった。
はむ かぷ
――うわ柔らけぇ。つか幽霊なのにあったかいよ!ふにゅふにゅだよもう!
気づいた頃には、飴は摘んだ○○の指ごと幽々子の口の中。
吐息に混じって飴からの桜の香りが緩やかに流れでる。
そしてゆるりと糸を引き、幽々子は指から口を離す。
それはやたらに艶めかしくて――いくら客に怒声を浴びせた仕置きにしてもやりすぎだ!――と○○に思わせるほどであった。
良い物を見せて貰ったと居間に帰っていく紫一行と、その後を追う幽々子。
顔をゆでだこのようにした○○が思わず眉間に皺を寄せていると、幽々子はふいに振り向いて微笑み、唇だけを動かして呟いた。
○○にはそれが何を言わんとしたかが何となく解った。
――おいしかったわ。
○○はいよいよ持って動けなくなり、台所から助手の妖夢の嘆きが聞こえてくるまで放心し続けることとなった。
指の唾液をどうしようか迷ったことは、言うまでもない。
その日の食事も又、素材の命に申し訳が立つ、素晴らしい味であった。
又、みょんな従者は騒ぎの間中、鍋のあく取りに追われていたことを付け加えておく。
それから歳月は容赦なく流れゆく。
厨房に飛び込んできた黒白を相変わらずの怒声で追い払った。
料理の腕に感服した式神とメイド長が料理を習いに来た。
何となくやってきた紅白がメシにつられて半月居着いた。
鬼の宴会の料理に忙殺された。
捕らえられた夜雀を「中華料理は二本足で歩こうが羽が生えていようが食材とするッ!中華に出来て日本料理に出来んハズが無イィィィィィィッッ!!!」と料理した。
桜の季節には幽々子に例の飴をねだられるようになった。
料理の腕は、ますます磨きが掛かっていった。
そうして彼は青年から壮年へ、他の二人を置いていくように年老いる。
ある時、彼は幽々子に何故そこまで料理に血道を上げるのかと問われたことがある。
「生きているってことは、必ず何かを犠牲にしているってことだから」
――だから俺は、自分の為の犠牲に胸を張れるように、犠牲になった物に恥ずかしくないように、料理をするんだ。
いつもの主従の口調とも料理中の口調とも異なる、とても穏やかな口調で彼はそう答えた。
――死んでゆくことに恥ずかしくないように――
その言葉に、幽々子は柔らかく微笑みを返すだけだった。
そうして彼は壮年から老年へ、他の二人を置いていくように年老いる。
精妙であった包丁さばきが僅かに狂い始めた。
鯖寿司の小骨を取り損ねた。
味付けが少しずつ、過日の味に劣るようになっていった。
それは経験だけではどうにもならない、生きた肉体の衰え――
ある日、彼はちょっとした用事で白玉楼を訪れていた霊夢にこんな質問をしたことがある。
幽霊に、怨霊になるとはどういう事なのか。
対して彼女はこう返した。
――そんなもの、相応の未練を残して死ねば誰でもなるわ。後は力があれば良いんだけど、アンタにはないわね。
そしてもう一つ付け加える。
――でも、よっぽど強い未練がなければ、白玉楼になんてたどり着けないわよ?
もうここに来てから幾度の春が巡ったろうか。
彼の両腕は、目は、味覚は既に衰え、彼女たちに食事を作るどころではなくなった。
そして、心もいつしか萎びていた。
彼は悟る。
――今咲きかけている、明日にもほころびそうな桜が開く所はもう見れないだろう。
伏した床、遠い耳に知己の声が届く。
幽々子と妖夢も彼が長くないことを知っている。
だからこそ、彼女たちはその人生の最後に、彼に、彼の料理に関わった者達を呼び集めたのだろう。
種々雑多な妖怪が彼の最後に別れを言いに来る。
中でも吸血鬼などは――うちのコックになると約束するなら、吸血鬼にしてあげるわよ?――などと囁く。
もちろん、彼がそれに応じるはずがないと知ってのこと。
紅白の巫女やメイド長など、人の身にある彼女らは既に老いて、彼の顔に遠からずの運命を悟り挨拶を交わす。
年老いた黒白の魔法使いが、もう大人になった半人の娘を連れて来た時は、年老いてしまったせいか命の営みに思わず目頭が熱くなった。
そして来客達が全て帰っていき、彼はそう広くない彼の部屋で一人になる。
ふと物音がして、いや、呼びかけられて障子で隔てられた庭の方を見た。
――――斬ッ!!
刹那、彼の衰えた目に閃光が走り二百由旬の大庭園がありありと姿を現す。
立っていたのは――妖夢。
数十年前、最初に出会った時と変わらぬ姿で抜き放った刃をこちらに向けている。
いや、変わっていないわけではなかった。
彼女の動きはあの時よりもさらに洗練されているし、二百由旬の桜はいまだ顔を覗かせていない。
「○○さん。私はあなたのことを尊敬しています!」
刃を仕舞った妖夢は、精一杯の気持ちを込めてそう叫ぶ。
「ですから!…っ!だからっ!……ぅぐ……んぅぅ……」
そして何事かを続けようとした彼女は、思いあまって目に涙をため、もう何を言おうとしているのか解らなくなっている。
「…駄目じゃないの、妖夢。ちゃんとしなければいけないわ」
天からの声に目を向ければ、春の青い空にたなびくは亡霊の姫。
彼女は、それこそ出会った時と何も変わらず、手に何かを抱えて頬笑んだままこちらを見つめている。
「……でもっ………ゆゆござまぁ!……」
対して妖夢は最早顔面が崩れて鼻を啜り、泣きじゃくる手前だった。
幽々子はそれにふぅと小さくため息をつくと、じゃあいいわ、と言って○○の方に向き直った。
「――庖丁人・○○。今日まで私に仕えた大義、言葉もありません。そこであなたの最後のために一つ趣向を用意しました」
彼女は冥界の姫として凛々しくそう唱えると、手に抱えた何かを捧げて何かを呟く。
ふわり、と柔らかい風が吹いて、二百由旬の桜は瞬く間に満開に化粧を直した。
吹雪く桜の中、幽姫は重さもなく降り立つ。
その様はまさに一枚の絵画にして、あの日の思い出。
ならば、彼はこう呟く。
「―――綺麗だ」
そして、傍らに舞い降りた彼女はこう答える。
「あら、ありがとう」
満開の桜の下、二人の笑い声がかすかに響く。
緩やかに日は落ちて、太陽と共に彼の命も最早終わる。
傍らには幽々子。
数十年――彼女にとってはとても短くて、とても長かった思い出の話。
彼女が握る腕は枯れ木のようで、しかしまだ暖かい。
「――さて、そろそろお開きのようです」
彼はそう言うと幽々子の手を握り返す。
「――そう、今までご苦労様。○○」
幽々子は粛々と、そう答えた。
「――さしあたって幽々子様には一つ申し上げたいことがございます」
かすれた声はそう続け、幽々子はそれに耳を近づけて言葉を聞き逃がさんとする。
「しかし、申し上げません」
そして、老人は小さく、弱々しく笑う。
幽々子も、弱々しく微笑み返した。
「――幽々子様、知っていますか」
夕暮れの部屋。
小さく響くのはそんな言葉。
幽々子が何を、と返すと、○○はそのまま続ける。
「自由な幽霊となるには、強い未練が必要だそうです」
それは、幽々子が知らぬはずもないこと。
彼女は彼の言葉に優しくうなずく。
それを見た○○は穏やかに笑い―――息を引き取った。
春の空、桜吹雪の下、妖夢の泣き声と共に、出席者二人だけの彼の葬儀は行われた。
――死んでから顔を合わせるなんて、気を悪くするだけだから葬式にはこないでくれ。
それが彼が知己に言った言伝である。
誰はばかることがない故、妖夢は二百由旬に響き渡る泣き声を上げる。
しかし、喪主たる幽々子は終始頬笑んでいた。
やがて、ゆるゆると彼の抜け殻を収めた棺を土に埋めると、二人は墓所に背を向け、二百由旬の桜並木を歩き出した。
ふいに強い風が吹き、二人は桜吹雪に一時目を奪われる。
ひらひらと舞う花びらが飛んだ先には、人影が一つ。
「――○○」
幽々子はぽつりと呟いた先。
そこには、初めてここを訪れた時の姿のまま、○○が立っていた。
いや、それは正確には昔のままではない。
僅かに大地から浮いた、その重さのない質感は、幽霊以外の何者でもない。
「何とか、未練が足りたようですな。幽々子様」
彼はそう言うと桜の中を幽々子目指して足早に進んでいく。
いそいそと、まるで旅行から帰った様に駆け寄る彼の姿に、幽々子は思わず、お帰りなさい、と声を掛けた。
――ただいま、幽々子様。しかし、せいぜい数日の留守ですよ?
彼がそう返した頃、二人の距離はもう一歩分にまで近づいていた。
幽々子はいつものように微笑みを浮かべたまま、透けた彼に口を開く。
「そう言えば、言い残したことがあったんじゃないかしら?」
そう言われた彼は気恥ずかしげに頭を掻くと、言ってしまえば未練が無くなるのでは?と口の中で呟いた。
すると、満面の笑みの幽々子は言いきる。
「――大丈夫よ。未練が残って成仏できないようにしてあげる」
そこまで言われてはどうにも退けない。
彼は、はぁ、と生返事を返すと、居住まいを正して息を吸い込み、ガチガチに緊張して宣言した。
「―――私は!私は、幽々子様が、大好きだ!!っ…あ、愛している!!!」
さぁ、と桜吹雪が舞う。
桜が晴れた後、幽々子の目にはついぞ見せたことのない涙が浮かんでいた。
――ありがとう――
彼女は光る滴を浮かべて、彼にそう返す。
そして返事は、と一歩踏み込んだ○○に、小さく囁いた。
「――ところで○○。少しお腹がすいたのだけれども」
その言葉に、彼は一瞬面食らって一歩引く。
体勢を立て直す頃には、彼は何を言わんとしているかに気づいて、懐から小さな包みを取り出した。
「――解りました。ここにちょっとした菓子があります。食事の時間にはまだ早いので、これで虫を休めてください」
○○は言うと共に飴玉を剥き、彼女の前に差し出した。
「ええ、頂くわ」
すると幽々子はそうやって差し出された飴玉を自分の手で摘む。
――え?
その行動に何を意味するのか、理解できずに○○が戸惑っていると、幽々子は呆けた彼の口に、その飴玉を放り込んだ。
「これが私の――答え!」
――瞬間、二人の影は重なった。
白玉楼には、幽霊の夫婦が住んでいるという。
彼らは永遠に、共に生きて――いや、共に死に続けていくのだと。
了
そして、みょんな従者はその傍ら、感動して良いのか赤面して良いのか判別がつかず、オーバーヒートによって倒れていた。
本当に了
1スレ目 >>298
「幽々子さん…あなたが好きです!」
「…ごめんなさいね」
やっぱり、としか思わなかった。
幽々子さんのような美しい女性が僕とつりあうわけはないのだから…
「私もあなたのこと好きだけど…あなたは人間。私は亡霊。相容れる者同士ではないわ」
え?
僕が茫然とする間に、幽々子さんが近づいてきた。
幽々子さんは何も言わず僕と唇を重ねた。
ほんの一瞬…でもそれは、とても永かった。
「…さようなら」
気がつくと、そこには誰もいなかった。
ただ、桜の花びらが舞っていた。
まだ冬だというのに。
柔らかな感触の残る唇をなぞりながら…僕は決意した。
幽々子さんの元へ、行こう。
僕は持っていたカッターナイフで、自分の首筋を切り裂いた。
目の前が暗闇に包まれる直前。
幽々子さんの姿が見えた気がした。
その表情は喜びなのか、悲しみなのか、怒りなのか。
とにかく、僕は後悔していない。
暗闇が晴れた。
目の前に広がるのは…一面に舞う桜の花びら。
その向こうに、幽々子さんはいた。
「幽々子さん!」
「馬鹿!」
次の瞬間には幽々子さんの平手が僕の頬を打っていた。
「なんでそんな簡単に死ぬのよ!そんなことされたってちっとも嬉しくないわ!」
僕が見上げた幽々子さんの顔は…哀しかった。
再会の喜びなど微塵もなく、ただ哀しみに溢れていた。
「あなたみたいな大馬鹿者は…出直してきなさい」
「え」
「待ってるから」
目の前が再び暗闇に包まれた。
「おい!目を覚ましたぞ!」
目を開けるとそこにいたのは…僕の両親。
「よかった…本当によかった…」
僕の兄弟。僕の友人。
「自殺なんて馬鹿なこと…二度としないでよね」
本当に、僕は大馬鹿だった。
こんなにも自分を思ってくれる人たちがいるのに。
幽々子さん。僕はまだそっちへは行けません。
あと何十年か…いつまでかかるかわからないけど、待っててくださいね。
窓の外を見た。
桜の花びらが舞っていたような…気がした。
まだ冬だというのに。
でも、もうすぐ春だ。
完
1スレ目 >>303
ゆゆ様、正直どうしてなのかよく分からないんだけど
なんとなくすごく好きです!!
たぶん、こうすごい?ところとかほんとに好きなんです
あと、大食いのところとか!
ゆ「妖夢、この人がなんと言ってるのか分かりやすく説明してくれる?」
よ「食べられたいそうですよ」
_| ̄|○
1スレ目 >>436
西行妖の幹には 歌が刻まれている
妖夢「…いたづらに…いましなきよにいきゆけど…さんぜのてんに…ながなきをねなく…」
幽々子「妖夢、どうしたの?」
西行妖の麓に蹲り、幹と睨めっこしている妖夢に幽々子は声をかけた。
妖夢「あ、いえ。幹に歌が刻まれていまして」
幽々子「ああ…これね」
幽々子は幹に歩み寄り、懐かしむようにその痕を指でなぞった。
妖夢「どういう意味なんですか?」
幽々子「ふふ、妖夢はもっとお勉強しなきゃね」
妖夢「な…っ、ちゃんとしてますよー!」
幽々子「ねえ妖夢、大好きな人が突然目の前から、永久にいなくなってしまったら、どう?」
妖夢「どう…って、そりゃあ悲しいですよ。きっと泣きます」
幽々子「この歌はそれを詠んでいるのよ。
『貴女の居ない世にただ無意味に生きていようと、今までも、今も、これからも
幾度生まれ変わろうと、只々貴女の居ない事を天に嘆き泣くばかり』…ってね」
妖夢「幽々子さま…それって、もしかして…」
幽々子「ええ。生前…いえ、この姿になってからも私が今までで、只一人お慕いした方が…」
妖夢「…」
幽々子「私の亡骸に手向けてくださった、歌よ」
妖夢「幽々子さまは…寂しくないのですか?」
幽々子「ええ。妖夢だって居るし…それにこの歌はプロポーズの言葉だもの」
妖夢「プロポーズ?」
幽々子「ええ…幾度輪廻を経ようとも途切れない、死を以ってしても別つ事の出来ない…永遠の想い」
妖夢「幽々子さま…」
幽々子「これ以上素敵な愛の告白が、他にあるかしら?」
幽々子はそう言って立ち上がり、天を見上げる。
妖夢(この歌は…幽々子さまにとっての、その方への愛の告白でもあるのか…)
輪廻を繰り返しながらも女想い続ける男
輪廻の輪を外れた亡霊でありながら、永遠と彼の者を慕う女
これからも決して交錯する事の無い、其々の想いを乗せた歌が紡がれた。
幽々子「…いたづらに いまし亡き世に 生き行けど
三世の天に 汝が亡きを音泣く………」
星天を見上げながら呟いた幽々子の頬を、ひとすじの雫が伝っていった。
1スレ目 >>931
――さくらさくら――
――やよいの空は 見わたすかぎり かすみか くもか――
――にほひぞいづる いざやいざや 見に行かん――
――さくらさくら――
小さな人形と死者―
新しい庭師が増えた。最初はそれだけだった
その少しのズレが自分を変えていた事に気づかずに――
俺「幽々子様。聞きたい事があるんですけど」
妖夢「私、あなたの事が――」
幽々子「やっときてくれたのね。紫。早いとこお願い」
紫「つらいから?」
俺「嫌われてるんだなぁ…」
幽々子「逃げているだけよ」
メディ「私は愛のおかげでここにいるわ。あなたは?」
庭師「お前も悔いを残さないようにな。」
幽々子「私は…私は!」
俺「ここにいるとつらいから…さようなら――」
――ここはどこだろう。
俺は目の前に広がる満開の桜の先にある家の戸を叩いた。
そこには君がいた――
幽々子「妖夢ーこの人をお願いね」
妖夢「また庭師が増えるんですか。なんか最近増えてませんか(;´Д`)」
――それが始まり。儚くも悲しき物語の――
美しき桜の舞い散る死国を舞台に繰り広げられるせつなく、それでいてとろけるような物語。
分岐によって変わる世界観。涙あり、笑いあり、ツンデレあり(!?)
新スレ開始まもなく公開しますヾ(゚∀゚)ノシ
2スレ目 >>5
幽々子様へ
「僕は死にまーしゅ!あなたが好きだからー!」
最終更新:2010年05月31日 21:45