幽々子6



12スレ目>>852 うpろだ893


 冥界の夜は寒い。
 冬ともなればなおさらだ。
 ○○が寝室としてあてがわれている白玉楼の一室は
 南寄りなのでさほどでもないが、
 それでも布団を厚くして手足がはみ出ないように
 丸くなっていなければならない。

「う~ん……ん?」

 ようやく寝付いた頃、背後の襖が開く気配がした。
 屋敷のあちこちで働く幽霊なら襖を開けて入ってきたりはしない。
 となるとほぼ二択だが、この時間に
 部屋にやって来るのが妖夢であるとは思えない。
 すなわち、導き出される結論は

「○○~……起きてる?」
「ね、寝ています」
「そう、それはちょうど良かったわ」

 入って来たのは、やはり幽々子だった。
 夜這いかとも思える状況だが、
 そういった緊張感は感じられない。

「今晩は寒いから、温かい抱き枕が欲しいと思ったのだけど、
 寝ているならわざわざ断りを入れる必要もなさそうね。
 ちょっと布団に入れてもらうわ」

 断って引き下がる相手ではないが、
 はいどうぞとは言い難い。
 まさか手を出すわけにもいかないが、
 健全な男子である以上冷静でもいられない。
 理性と煩悩の境界で一晩を過ごせば、朝には精神が擦り切れてしまいそうだ。
 毎朝、部屋まで幽々子を起こしに行くのは妖夢の日課になっている。
 部屋にいなかった幽々子が○○の布団の中で発見された場合、どうなるか。
 問答無用で斬り捨てられる結末を思い浮かべ、○○は身震いした。

 振り向いて目を合わせるといよいよ断れなくなる気がして、
 ○○は背を向けたまま、何とか状況を打開しようとする。

「あの……湯たんぽとかではだめなんでしょうか?」
「だめよ、お湯を沸かしてる間寒いでしょう?」
「えーと……幽々子さま、俺一応男なんですが」
「そうね、表面積が広くて助かるわ。
 妖夢だと細すぎて」

 どうやら無駄な抵抗だったらしい。

「それじゃあ、入れてもらうわね~」

 布団の端がめくられ、外の冷気が流れ込んできた。
 が、それも一瞬のことで
 すぐに柔らかな温もりが隙間を満たす。
 ひたり、と背中に手が当てられた。

 こうなってしまったら、もう逃げられない。
 せめて向かい合わせでなければ冷静さを保てると踏み、
 何とかそのまま眠りにつこうとしたのだが。

「あらあら、ちゃんとこっちを向いて?
 手を回してくれないと背中が寒いじゃないの」

 強引に振り向かせられた。
 目の前には、何が楽しいのか笑みを浮かべた
 幽々子の顔があった。

「ほらほら、しっかり抱きしめてくれなくちゃ」

 それにしても、本気を出せば一瞬で片が付くとはいえ、
 こんなに危機感がなくて良いのだろうか。
 そんなことを考えながら、○○は促されるままに
 抱きしめてくる幽々子の背に手を回した。

(あ、いい匂い……)

 普段すれ違った時などの涼やかなものとはまた違った、
 優美で甘い香りがする。
 白檀や伽羅といった種類までは○○にはわからなかったが、
 以前着物に香を焚き染めているのを見たことがあった。
 おそらくこれは夜着のための香なのだろう。
 煩悩に苛まれるかと身構えていた割には、
 安らいだ気分でまぶたが重くなってくる。
 これでは○○の方が、幽々子を抱き枕にしているようだ。

(それにしても、こうしていると)

 ふと、○○は思う。

(抱きしめ合う、っていう感じがするな)

 幻想郷に迷い込み、着いたところが冥界で
 ずっと白玉楼の世話になっているため
 ○○の交友関係は広いとは言えない。
 その範囲で想像してみる。

 例えば妖夢となら、
 こちらが「抱きしめる」形になりそうだ。
 体格の問題だけではなく、
 真面目だが幼さの残る彼女は
 こちらが主導権を持ってあげないと固まってしまうだろう。

 時折遊びに来る八雲 紫だと、
 どうしても「抱きしめられる」というイメージが消せない。
 抱きしめているつもりでも、
 結局相手の手の内にいそうな
 包容力、もしくは得体の知れない奥深さを感じる。

 得体の知れない、という意味では
 幽々子も紫に近いかもしれない。
 彼女の場合は深さ、よりも
 つかみどころのなさと言うべきだろうか。
 だが、だからこそこうして抱きしめていると、
 幽々子を確かな温もりとしてつなぎとめておけるような、
 止まり木としてつかまっていてもらえるような、
 そんな感覚に陥るのだ。
 立場や力、存在そのものの格の違いは承知の上で、
 幽々子とは「抱きしめ合える」ように思う。
 いや、あるいはそう思いたいのかもしれない。

(ああ)

 ぼんやりと考えていて、○○は一つの結論に到達した。

(俺、幽々子さまのことが好きなんだ)

 だが悲しいことに、そんなことを考えたところで
 向こうにすれば○○は現在ただの抱き枕、
 起きれば迷い込んだ居候に過ぎないのだ。
 してみるとこの状態は、生殺しだと思っていたさっきよりも
 なお辛いものに思えた。

「……○○」

 名を呼ばれ、現実に引き戻された。
 目の前には、変わらず幽々子がいる。
 柔らかな笑顔だが、どこか先ほどまでと違う。

「今、誰か女の人のことを考えていたでしょう?」

 確かに、引き合いとして他の女性のことを考えていた。
 別に恋人同士の逢瀬ではなし、それが悪いわけではないはずだ。
 にもかかわらず心臓がどきりとしたのは、
 一つには口に出していないはずの思考を指摘されたから。
 もう一つには、幽々子の口ぶりが妙に静かだったからだ。

「○○、私は……こうしていることを
 とても幸せだと思っているわ。
 ―でも、貴方にとってそうでないのなら」

 驚く○○に構わず、幽々子は言葉を続ける。
 まなざしにが幾分真剣さがこもっている。

「もし誰か―妖夢とか、紫とか―
 もう他の誰かのことが好きになったのなら……」

 おとなしく身を引く、なのか。
 力ずくでも奪い取る、なのか。

 その先は口にされなかったし、
 聞く必要もなかった。

 ○○は、黙って幽々子を抱く腕に力を込めた。

「……そう、よかった」

 ほっとしたように幽々子は言った。

「おやすみなさい、○○」

 目を閉じ、すぐに寝息を立て始める幽々子。
 その温もりと幸せを感じながら、○○も眠りに落ちていった。









「……しまった」

 夜が明けてしまった。
 隣には幽々子が気持ち良さそうに眠っている。
 夜明け前に目を覚まし、妖夢が来る前に
 幽々子を起こして部屋に戻らせるというのが
 最良の手順だったのだが、
 今更気づいても後の祭りだ。

 ○○がやったこともない真剣白刃取りに
 挑戦する覚悟を決めようとしているところへ、
 足音が聞こえてきた。

「幽々子さま、起きてください、幽々子さま!」
「ん~、○○もう朝?……あれ、ここ私の部屋?」
「俺の部屋です!ああ、早くしないと妖夢が」

 ちょうどその時、勢い良く襖が開いた。

「○○さん大変です、
 幽々子さまがお部屋にいらっしゃらな……い?」
「あら、妖夢おはよう」

 間違いなく斬られると思い身を固くする○○をよそに、
 幽々子はゆったりと挨拶している。
 妖夢は、視界に入った光景を理解するのに
 時間がかかっているらしく、
 石になったかのように固まってしまっている。




 一瞬、間が空いて




「……おはようございます、幽々子お嬢様。
 お召し替えはお部屋に置いてきましたので、
 そちらで着替えてくださいね」
「は~い。○○も早く着替えて朝ごはんにしましょう?
 お腹すいたわ~」




「…………あれ?」

 何事もなかった。
 これはいったいどうしたことだろうか。
 釈然としないものを感じながらも
 ともかく無事であることに感謝し、
 ○○は朝食の席に向かうことにした。



「「「ごちそうさまでした」」」

 朝食を終え、箸を置く。
 幽々子の膳には明らかに○○や妖夢の数倍の量が
 載っているし、食べている時も急ぐ様子などないのに、
 いつも食べ終わるのは同時で、料理はきれいになくなっている。
 ○○にはそれが不思議でならなかったが、
 最近ではもうあまり考えないようにしている。

「……さて、剣術の稽古の時間ですね」

 妖夢がそんなことを言い出すのは本当に久しぶりだった。
 ○○が白玉楼に来てすぐの頃は、
 まだ妖夢が幽々子に剣術の稽古をつけようとしていたのだが、
 なんだかんだと言い訳をして幽々子は逃げてしまう。
 ついに妖夢もあきらめたのか
 (○○が来るずっと前からそれを
  繰り返していたと思うとむしろ良く持った方だが)
 しばらく稽古のことを言わなくなっていた。

「さ、○○さん行きますよ」
「え、俺?」

 思いがけない方向に話が進み、○○は驚いていた。
 今までこんなことは一度もなかったのだ。
 以前なら、何とか幽々子を説き伏せようとする妖夢と、
 のらりくらりとかわし続ける幽々子を
 横から眺めているだけだったというのに。

「そうですよ。さあ」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。……何で?」
「おわかりではないのですか?」
「うん」

 問いかける○○を見る妖夢は、何を今更といった顔つきだ。
 一呼吸置いて口を開いたが、
 あくまでも説明というより確認のためにそうするようだった。

「私は幽々子さまにお仕えする者ですが、
 同時に西行寺家の庭師兼剣術指南役でもあります」

 「西行寺家の」というところに力を込めてゆっくりと話す。

「うん。知ってる」
「……まさか幽々子さまを嫁に出してしまうわけにもいきませんので」

 さらりと言ってのける妖夢。

「………………え、婿入り決定?」

 少なくとも妖夢の中では、今朝の光景が
 そういったものとして受け止められたようだ。
 ○○は既に稽古をつける対象として
 認定されているらしかった。

「じゃあ始めましょうか。
 正直もう剣術指南なんかすることはないと
 思っていたので、嬉しくて……」
「あ、ちょっと、妖夢引っ張らないで、
 幽々子さまもなんとか言ってくださ」
「あらあら、がんばってね~」
「……そんな、殺生な」

 引きずられていく○○を、
 幽々子は穏やかに手を振って見送った。




「……まったく、妖夢ったら気が早いんだから」

 食後のお茶を一啜りし、幽々子はため息をついた。

「私だってちゃんと求婚の言葉くらい欲しいのよ?」

 なし崩しにことが進んで、いつのまにか夫婦になっていた、
 などということになったらどうしてくれるのか。

 もう一口お茶を飲み、外を眺めた。
 二百由旬の庭は一面の銀世界だ。
 冬囲いをした木にも雪が積もり、小山のようになっている。

「今晩も寒くなりそうね
 ……また○○の布団で寝ようかしら?」

 白玉楼の一日が始まる。
 騒ぎの種をあれこれと抱えつつも、
 今日も冥界は平和であるらしかった。


12スレ目>>811


そういえば幽々子も抱き心地よさそうだ

「というわけで抱きしめてみた」
「あら、そんなことしてると妖夢が来ちゃうわよ?」
「その時はその時さ」
「もう、あなたったら…」
ぎゅーっ
「(うむ、やはり抱き心地良い)」
「(○○の匂い~♪)」
「…いかん、我慢できなくなってきた( 可 愛 す ぎ る ぞ )」
「もう、妖夢に怒られちゃうわ(しかしこの幽々子、ノリノリである)」
「かまわん、俺と幽々子の仲だ。口を挟むほうが野暮というもの」
「まだ昼間なのに…んっ…」

(検閲されました。続きを読むには死んで冥界に来てください)


12スレ目>>916


幽「はい、これ。」
○「これってチョコだよね。今日がバレンタインって知ってたんだ。こっちの人はこういう行事に疎そうだから諦めてたけど」
幽「これくらいの情報なら入るわ。味は保証するから安心。何ていってもこの私がカカオの栽培から始めたのだからマズイわけないわ。」
○「少し苦いかな?」
幽「ビターにしたけど苦手だった?なら--」
○「ん、んうっ」
幽「ぷはっ、どう?」
○「凄くおいしいけど甘すぎかな。」
幽「注文が多いわね。んっ、」


13スレ目>>329 うpろだ976(うpろだ962続き)


前回幽香と幽々子の続きになっています


とりあえず幽々子エンド

○○「幽々子さんだよ。」
幽々子「ほ、本当に私なの!私でいいの?」
○○「本当ですよ。幽々子さんといた時が一番楽しかったですから、それにこれからも一緒に居たいですし…」
幽香「悔しいわ!こうなったら!!」
そういいながら二人に分身しつつこちらに向けて傘を広げた。
「「ダブルスパー「妖夢!「はいっ!」
どこから現れたのか庭師の魂魄妖夢が僕たちの前に現れていた。
いったいどこに隠れていたのだろう?
二人は弾幕を展開していきながら、どこかへ消えていった。

幽々子「妖夢~夜ご飯までには帰ってくるのよ~」
○○「行っちゃいましたね…」
幽々子「じゃあ私たちはもっとここでイチャつきましょうか」
○○「はぁ、しょうがないですね。妖夢が帰ってくるまでですよ」

そう言いつつも木の前で背中合わせに座る二人の姿があったそうな……


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以下オマケ
妖夢「ふぅ、疲れました。幽々子様~帰りますよ」
幽々子&○○「zzz~」
妖夢「しょうがないですね二人とも」
その光景を見て苦笑いする妖夢であった。






妖夢「幽々子様はつれて帰ればいいけど、○○さんはどうしよう…」


13スレ目>>369 うpろだ979


 襖を開けると、こたつの中から靴下を履いた脚が生えていた。

「何やってるんですか幽々子さま」

 脚しか見えていないが、
 妖夢とはさっき廊下ですれちがったので
 消去法で幽々子さまだ。

「あら○○。今過ぎ行く冬を惜しんでいるところよ」

 こたつの反対側から声が聞こえる。
 亀のように頭と脚だけを外に出し、
 うつ伏せでこたつに潜っているらしい。

「妖夢ったら、もう三月だからこたつを片付けるとか言うのよ。
 まだまだ寒いのにひどいわ~」
「はあ」

 適当に相槌を打ちつつ、俺もこたつに入ろうとする。
 手前と対面は幽々子さまが入っているから、
 空いているところに回り込まなければ。

「あ、○○」
「……何ですか?」
「こたつに入るんだったら、
 脚が寒いから、あっためてくれないかしら?」

 ……何を言っているのだろうか、このお嬢様は。

「脚の方に座って、抱えててほしいの」
「……こたつの中にしまっておいたらどうですか」
「そうすると肩が寒いのよ~
 ……だめ?」

 そんな風に頼まれると断れない。
 抱えやすいように、ということなのか、
 幽々子さまはこたつの中で転がって姿勢を仰向けに直したようだ。
 仕方なく、俺は幽々子さまの足先を抱えてこたつに入ることにした。





「○○」
「はい」
「みかん取ってくれる?」

 一冬食べ続けたみかんは、そろそろ貯蔵分がなくなってきている。
 ざるから一つ取って、こたつの中に入れて手渡した。

「どうぞ」
「ありがと」

 反対側でみかんを食べ始めた気配がする。
 あぐらを組んで座っている俺の脚の間で、
 幽々子さまの足がもそもそと動いている。
 うーむ、これはこれで幸せなのだが。

「あの、幽々子さま」
「むぐむぐ……ん?なーに、○○?」
「やっぱり何となく寂しいので、顔の方に回っちゃだめですか」
「あら、だめよ」

 だめなのか。
 なんともつれない返事だ。

「何故ですか?」
「だって……」

 幽々子さまは、いたずらっぽく笑った……ような気がした。
 見えないのだが、何となくそんな気配が伝わってくる。

「膝枕なんかしてもらって、貴方の顔を見上げてたら
 キスしたくなってしまうじゃないの。
 ……それでもいいの?」
「……ぜひ」
「まだ明るいわよ~?」
「明るくても暗くても、俺は幽々子さまとキスしたいです」
「……そう、じゃあ」

 脚がこたつの中に引っ込む。
 ややあって方向転換が済み、幽々子さまの顔が出てきた。
 頭を支え、膝に乗せる。
 顔にかかったふわふわの前髪を指先で分けてあげると、
 幽々子さまは目を閉じた。

 ちょうどその時だった。

「幽々子さま、○○さん、お茶が入りましたよー!」

 妖夢の呼ぶ声が聞こえてきた。
 触れ合う寸前まで近づいていた顔を離す。

「お茶だそうですよ」
「ええ」
「もうすぐ妖夢が来ますね」
「そうね」

 幽々子さまはこたつから這い出し、
 俺の向かいに座った。

「……また後で、ね?」

 柔らかく笑う幽々子さまを見ながら俺は、
 やっぱりこたつはもう少ししまわずにおいてもらおうかな、
 などと考えていた。


13スレ目>>205


「なあ幽々子」
「どうしたの○○、そんな怖い顔して。いつもの可愛い顔が台無しよ?」
「どうしたじゃねえよ…どうして僕をつけまわすんだ? もうこれで1週間だぞ」
「言ったはずよ? 貴方が好きだ、って」
「ああ、知ってるさ。僕だってお前が好きだ。…愛してるさ。けど好きだから追い回すってのは…その…なんか違うだろ?」
「……怖いのよ、貴方を失うことが」
「は?」
「…人間は脆く、儚い生き物。些細な事故で即彼岸行き、なんてことになりかねないわ。
けど私がついているなら、仮に貴方が命を落としても白玉楼に連れて来れられるでしょう?
それに、貴方を狙ってる彼岸の閻魔様が何をしでかすか分からない。如何に彼女と言えども、貴方を渡すわけにはいかないもの」


13スレ目>>237


じー・・・
ゆゆ「どうしたの?」

むにっ
ゆゆ「んむっ!?」

むにむに
ゆゆ「んー?・・・んふふ」

ちゅぱっ
ゆゆ「ん~?」

はなして
ゆゆ「ひゃなひまひぇん」

ゆるして
ゆゆ「ひゃめょ~」

ちゅぱちゅぱ




指があったけぇ・・・


13スレ目>>262


縁側で日向ぼっこしていて、あまりに気持ちが良いからついウトウトして、気がついたら幽々子様に膝枕されていた。
目があったら微笑みかけられて、恥ずかしいから起きようと思うけど、気持ち良いから。
暫くそのままでいるけど、昼食を告げに来た妖夢の声に気づいて、名残惜しく思いつつも、ゆったりと幽々子様と一緒に起きあがる。


13スレ目>>274


幽々子「ねーねー」
俺「何だよ」
幽々子「抱っこ。 抱っこして♪」
俺「駄目だ。 今この本いい所なんだから」
幽々子「むぅ……」

 やれやれ、幽々子の甘え癖も困ったもんだ。
 俺はそう思いながら本の続きのページをめくった。
幽々子「……ねぇ」
俺「もう少し」
幽々子「ねーねー」
 そう駄々をこねながら幽々子は座っている俺の膝元へ擦り寄ってくる。
俺「あとちょっと」

幽々子「……もー、こっちからいっちゃうわよ」
俺「うあ」
 いきなり俺の後ろから抱きついてきた。
幽々子「……いっつも本ばっかり読んでて……」
俺「……はいはい」

 俺は手に持っていた本を置き、幽々子のほうへ向き直る。
 そして、幽々子をそっと抱きしめる。
俺「……ごめんな。 構ってやれなくて」
幽々子「いいのいいの」
俺「機嫌の移りが激しいお嬢様だこと」
幽々子「あなたがいてくれるだけで嬉しいのよ、私は」
俺「……俺も、かな」
 一瞬も永遠、永遠も一瞬。
 こうして俺と幽々子が二人っきりでいられるのも、必然なのかもしれない。


13スレ目>>312


幽々子様「ねぇ」
「…ん?」

幽々子様「愛してるって言ってみて?」
「…何故急にそんなことを…」

幽々子様「いいからいいから。……それとも、あの時の言葉は嘘だったのかしら?」
「いやいやそんなことはないし…でもやっぱ恥ずかしいっつーか………愛してるよ、幽々子…」

幽々子様「わたしもよ、あなた…。ふふ、やっぱり、この響きはいつ聴いてもいいものよね」
「そうだけどさ……けど、本当にいきなりだな…」

幽々子様「でも、悪くはないでしょう?」
「まぁ、そりゃあ、ね…」

そんな冥界の平和な一時。


13スレ目>>346


幽々子様と一緒に縁側でお茶を啜りつつ、澄み渡った冬の空を見上げて。
もうすぐ春ですね、と饅頭を頬張る幽々子様に語りかけつつ自分も饅頭を口に運び。
そうね、花見の季節だわ、と和やかに微笑む幽々子様とほのぼのしながら午後を過ごす。


13スレ目>>367


死ぬ時は白玉楼の縁側で、夜桜を見上げて今までの思い出を幽々子様と語り合いながら静かに幕を下ろしたい。
勿論お茶と饅頭は忘れずに用意して、ちょっとした花見も兼ねて。
最後に安らかに微笑み、必ず此処に帰ってくると言い残してゆっくりと眠りにつきたい。


13スレ目>>373


「○○、○○」
「ん・・・ん?何ですか?幽々子様、こんな夜中に」
「今は朝の6時よ?」
「夜中の6時ですよ」
「・・・それは新しい解釈ねぇ」
「それよりも、なして僕の布団に入っておられるのでしょうか」
「こうするためよ」

そういうと、幽々子様が顔を寄せてきて・・・

白く滑らかな両腕が、優しく僕を包み込んだ。
胸に押し込むように抱いた僕の頭を、彼女は優しく撫でる。

「・・・あ、あの」
「寝坊する悪い子にはお仕置きが必要ね」
「へ?」
「朝ごはん、お願いね」
「・・・うへぇ、それは酷いです師匠。まだ眠いですよ」
「いいから」

そう笑顔で凄まれてはいく他無い。仕方ない、作りに行くか
…それに、こうもせがまれたら悪い気はしないし。

「・・・はい、今行きます」
「お願いね」

さて、何を作るかな・・・


14スレ目>>46


「命尽きても、貴女の側にいることを誓います」


うpろだ1042


 俺が幻想郷に着いてから六日目の夜、俺はいつものように嫌な夢にうなされていた。まさに悪夢と言ってもいいほどのリアルな夢だった。
 夢の中での俺は、真っ白な空間にただボーっとしているんだ。視界はぼやけていて、ただその空間が白いと言う事だけが認識出来るだけだった。まるで大自
然に放り込まれた赤子のように、何もかもがわからなかった。思考しているしていないというより、できないと言った方が適切かもしれない。
 そのまま夢の終わりまでは長い間があるんだ。これが俺にはとても怖かった。『来る』とわかっていながら『いつ来る』かわからないが故の恐怖、っていっ
たら想像がつくだろう? まさにそれだよ。俺は――夢の終わりに死ぬんだ。
 もちろん死ぬ事も怖かった。何しろ夢でありながら全身には激痛が奔り、白い空間は真っ赤に変わるんだ。最初の晩にこの夢を見て、起きてみたら俺は胃の
中の物を残らず布団の上に吐いていたよ。幽々子様は笑顔で許してくれたけど、妖夢の目つきが怖かったなあ。『何で私の仕事を増やすんですか!』ってね。
あの時は自分から手伝いを申し出て、何とか妖夢の機嫌を直そうと大変だったなあ。
 ああ、ごめん。話がそれたね。それで俺は七日目の朝を迎えた。その日はいつもより早く目覚めちゃったんで、いざ妖夢の手伝いでもしようかと思ったらど
うやらもう食事をつくってたみたいで、『貴方にやれる事はありません!』って言って追い出された。それで手持ちぶたさなものだから、だだっ広い白玉楼の
端っこに座ってボーっとしてると、まるで図ったかのように幽々子様が前から歩いて来たんだ。
 俺がお早いですねと声をかけると、幽々子様はそういう気分の日もあるわと扇子で口元を隠しながら笑った。
 正直、美しいなと思わされたね。幽々子様にとっては何気ない仕草なのかもしれないけど、それには異性を魅了する十分過ぎる魅力があった。こりゃあ死に
誘われるわけだと納得したよ。
 挨拶をした後、やっぱり俺はボーっとしていた。何かを考えるわけでもなかったけれど、ただただボーっとしていたい気分だったんだ。そこまで気分が沈ん
でいたわけでもないんだけどね。ただ、なんていうか、『ああ今日もこの夢か。今日もここで死ぬのか』っていう感じの呆れって言うかなんて言うかねぇ。
まあそんな感じ。
 普段なら幽々子様もそのまま俺の隣に座ってボーっと妖夢の朝食を待っているのが普通だったんだけど、その日は珍しく幽々子様から話題が出てきたんだ。
『幻想郷での生活にはもう慣れた?』
 俺はボーっとしていたからその質問の旨を計りかねたんだけど、わからなかったから言葉通りの意味でとらえて答えた。
『ええ。まあ、慣れました。幻想郷の人達の価値観っていうのも大体わかってきたし、さすがに一週間あれば環境には慣れますよ』
『そう? 今日もうなされていたみたいだけれど』
『……えーっと……』
 何か聞かれていたっていう驚きよりも、どっちかって言うと恥ずかしかったね。やっぱり男としては女にそういうのは知られたくないわけで。
『貴方が見ている夢の内容は知っているわ。貴方が何度も何度も苦しい思いをしているのも知ってる』
『……あー、幽々子様人の夢の中を見る程度の能力も持ってたんですか?』
『私の友人にそういう事のできる人がいるのよ』
『はぁ……』
 俺が返答に困っていると、さっきまで笑っていた幽々子様の目が、鋭く細められた。とても、真剣な表情だった。
 でもそんな表情ですら俺には魅力的に見えてしまっていた。
『……ここにいる貴方の身体は実体ではないわ。それは幽霊の身体。それは前に教えたわね?』
『ええ。俺はもう生きていないんですよね。そして今は、閻魔様の裁きを受けて転生か成仏を待っていると……あんまり記憶ありませんけど』
『そうね。閻魔の裁きを受けていないのは当然だわ。だって、貴方……実は死んでいないのよ』
 幽々子様のその言葉の意味を、俺は数瞬理解できなかった。
『……は、はい? 幽々子様?』
 何かの冗談だろうか。そう思って戸惑いの視線を向けた俺に対して幽々子様は真剣な眼差しを以て答えていた。
『そろそろ貴方をあちらの世界に返すべきなのでしょうね。これ以上長引いては、貴方が壊れてしまう。あの夢は貴方が死んだ瞬間に見ていた映像。貴方は死
の瞬間を完全に覚えていない。だから貴方の身体はまだ死を受け入れないでいる。
 精神と身体は密接につながり合っている。二つの間に差が生まれ、均衡が崩れればその関係は簡単に壊れてしまうわ。貴方の精神と身体は、既に限界まで来
ている。だからこそ返さなければならないの。貴方を、元の世界へ』
 話の意味は俺みたいなのには理解できない高度なものだったが、なんとか『俺は実は死んでいなくて、幽々子様は俺を元の世界に戻そうとしている』という
事まで理解できた。
 でも、納得できなかった。
『俺は馬鹿だからよくわかりませんけど……俺は今の生活が好きです。妖夢が居て、幽々子様が居て、毎日三人で楽しく過ごしている。まだたったの六日と少
ししかここにいませんが、向こうで過ごすよりここでの生活は幸せです。それを、帰るなんて……』
『……そこまでこの白玉楼を愛してくれていてありがとう。……でも、ごめんなさい。もうこれは仕様がないことなのよ』
 幽々子様のその言葉の直後、俺の身体は妙な浮遊感に襲われた。
 とっさに下を見ると、無数の目のようなものがある大きな空間がそこにあった。
『うわ、ちょっと――』
 俺の言葉は最後まで続かなかった。
 まだお礼を言っていない。妖夢に話していた俺の世界の話はまだ途中のままだ。それにまだ、俺は自分の思いを告白していない。
 俺こと○○は、西行寺幽々子が好きだった。たったの六日とちょっとだけど、それは紛れもない愛なんだと思えた。

 だっていうのに現実は非情だ。
 次に俺の目の前にあったのは、白い天井だった。一瞬夢の中の白い空間の存在が頭を過るが、それはその空間が持つ独特な匂いでかき消された。
 そこは病院だった。


 俺にとって幻想郷で過ごしていたのは一週間足らずという短い時間だったにも関わらず、元の世界では既に数年が経過していた。
 どうやら俺は街中で突然気を失って以来、ずっと原因不明の昏睡状態にあったらしい。
 俺が目を覚ましてボーっとしていると、定期でやって来る看護婦が真っ先に驚き、慌てて医者を呼んできた。
 男性の医者は『良かったですね』と言い、昏睡状態だった俺の説明をしたが、さっぱり俺の頭の中には入ってこなかった。家族が泣きながら俺の意識が回復
した事を喜んでくれていても、俺はどこか上の空で、俺の心の中はずっと曇っていた。
 西行寺幽々子――愛しい人がいない世界とはこんなにも苦しいのか。
 それから死ぬまで、俺の心の中には常に西行寺幽々子の存在があった。
 心の中の彼女の姿は不変で、その美しさは色褪せる事はなかった。
 ただ一つ残念なのは、年を重ねる毎に俺の心が歪んでいく事だった。
 歪んだ心は思い出を歪ませる。思い出は美化されると言うけれど、俺の中の西行寺幽々子の姿はどんどん曖昧になっていった。最初のころは身体の細部まで
覚えていたのに。声も吐息も、何もかもが美しく残っていたのに。年月は俺の思い出を劣化させていった。
 それでも俺は西行寺幽々子を愛し続けた。最後の方はもう妄信に近かったんだと思う。自分が西行寺幽々子を愛し続けていると信じる――冷静になって考え
るとそれは実に不幸な事だった。だってそれは愛じゃない。愛は不変じゃないんだ。年月は愛すらも歪ませる。俺は西行寺幽々子という存在に執着し続けて、
生きる事の意味や人生の価値を全く考えずにおろそかな一生を終えた。
 看取る人が誰一人としていない、孤独な最期だった。
 そうして俺は、今度こそ閻魔様の裁きを受ける事となった。


 俺の順番は案外早く周ってきた。俺に三途の河の渡り方を教えてくれた死神の少女曰く、何でもここ最近外の世界では様々な形での延命処置が生まれ、俺の
ような平均年齢そこそこでこちら側に来る人間は減少しており、この時期は丁度死者の魂が最も減少する時期だとの事を死神の少女は上司である閻魔様から聞
かされていたらしい。
 死神の少女は俺に渡し賃を請求してきた。渡し賃とは何の事だかさっぱり理解できなかったが、適当に自分のズボンのポケットを探るとそこにはパンパンに
膨れ上がったガマ口の財布があった。わけがわからなかったので、とりあえずその財布を丸ごと死神の少女に渡すと、少女は満足げな表情で三途の河の川幅を
かなり縮めてくれた。
 どうやら聞く話によると、この渡し賃というのは今生きている俺の周辺で俺を慕ってくれていた人々の財産の合計だと言う。どうしてあそこまでお金があっ
たのかは正直猛進的に生きてきた俺には疑問だった。俺は人に慕われるような存在ではないと自分では思っていたし、だからこそただただ仕事をしてきただけ
だったからだ。
 兎にも角にも俺は案外簡単に三途の河を渡る事が出来て、そしてすぐに閻魔様の裁きを受ける事となった。

 罪なき人などいない。ましてや俺など、自分自身を騙したという酷い罪を持っている。閻魔様もそこはお見通しだった。
 正直言うとあまりその時の事は覚えていない。ただ、歪みながらも一つの愛を貫き通した姿勢は評価してもらった事だけは覚えている。
 罪状は『転生か成仏かを選ぶ間、冥界に送る』というものだった。
 冥界。俺が恋い焦がれ、想い狂い、愛し続けたただ一人の女性――西行寺幽々子の居る所。
 ただそれだけと言ってしまえばそれだけなのだが、それだけの事に俺は浅はかにも心躍った。
 俺は馬鹿だった。歪んだ思い出の事を忘れ、ただ『幽々子様』に会える事だけを喜んでいた大馬鹿者だった。
 俺は馬鹿だから、『幽々子様』の想いなんて微塵も考えてなかったんだ……。

 閻魔様の裁きを受け、俺は冥界に足を踏み入れた。そして真っ先に白玉楼目指して、長い長い階段を駆け上がった。
 霊体になった俺の姿は、不思議な事に『幽々子様』に恋い焦がれていたあの当時のままだった。これが想いの力なのかどうかはわからないが、その時ばかり
はそれに感謝した。何しろ想い人に一刻も早く会いたかったからな。
 階段を上るのに、まる一日はかかったと思う。これはあくまで俺の焦燥感からの感覚なのかもしれないが、実際にそのぐらいかかったんじゃないかと思う。
 そうして俺は再び白玉楼の土を踏んだ。


『……どうしてここにいるの?』
 幽々子様の第一声はそれだった。俺は幽々子様の姿を見て、その声を聞いて、満足げにうなずいて見せた。
『ずっと、ここに来たかった。あの時言った事は嘘じゃないって事を証明したかった。俺は、ここが好きです。大好きです。幽々子様に再び会えて、俺はもう
それだけで十分だ。満ち足りた。半生を過ごしただけの価値が、ここにはある。
 ずっと、言えなかった。でも今なら言えます。
 幽々子様、俺は貴方が好きです。愛して、います』
 その言葉に偽りはなかった。俺はその瞬間、半生をかけて願い続けていた想いが実ったんだ。これほどの幸せはなかったさ。
 俺の満足げな表情とは対照的に、幽々子様の表情は曇っていた。鈍感な俺でもさすがにそれには気づいて、どうしたのか聞こうと近づいた瞬間――
 頬を、はたかれた。
『――馬鹿っ!』
 幽々子様は、堪え切れないような表情で泣いていた。子供が泣きじゃくるような大粒の涙を浮かべて。
『私も、貴方の事が好きだった! でもそんな事言われたら、昔貴方を見送った事が一層辛くなるじゃない!』
 俺はほとんど反射的に、幽々子様の身体を抱きしめた。ふわっとした感触と共に、幽々子様の持つ心の温もりが俺の身体いっぱいに広がる。
 幽々子様はそのまま、俺の胸に顔を埋めて泣いていた。そんな幽々子様に対して、俺は強く抱きしめて一緒に泣いてあげるぐらいしかできなかった。
 そして――
『……私は嫉妬深いの。貴方が妖夢と仲良くしているのを見て、イラッとしてしまうぐらい嫉妬深いのよ。そんな私でも良いの?』
『そんな幽々子だからこそ、俺は愛し続けられたんですよ。』
 ――俺と幽々子は、泣き顔のままキスをした。


                                               はい。これでこの話はお終い。」
「はぁ……予想外にディープというかなんというか、ちょっとしたネタ程度に考えていたんですが、意外にも深い内容で心が動いてしまいました。
 一新聞記者としてはもっと冷静にならないといけませんね……」
「いや、むしろ女の子らしくて良いんじゃないかな。俺はそう思うけど。」
「そ、そうですか……」
 俺は今、新聞記者である射命丸文に事の全てを話し終えたところだ。もちろん幽々子の了解も取ってある。
 今回の話は最近急増している『外界からの迷い人』達の一種の道しるべになれば良いなという考えで、俺から射命丸さんに持ちかけたネタだった。
 丁度ネタに困っていた射命丸さんは快く取材を引き受けてくれて、今日に至るというわけである。
「あらー? 私という者がありながら他の娘を口説くなんていけない子ねー。」
「ああ、いやそんなつもりはなかったんだ。ごめん幽々子。恥ずかしいから背中に乗っかるのはやめてほしいんだけど……」
「○○に変な虫がつかないようにしてるのよ。あら、この場合は鳥だったかしら。」
 今俺の背中には幽々子が文字通りくっ憑いている。霊同士でありながらこういうのは一体どうなんだろうか……。
「えーっと、○○さんは今もまだ『転生・成仏待ちの霊』との事ですけど、どうするかご予定はあるんでしょうか?」
「どうするって……どうなるんだろうねぇ。」
「そうねぇ、○○は一生――いえ、永遠に『転生・成仏待ちの霊』で決定ね。転生したり成仏したりするのは私が許さないわ。」
「あはははは……。」
 俺はついつい困った笑いをしてしまう。でも実際に永遠に『転生・成仏待ちの霊』で決定なんだろう。幽々子の目はマジだ。
「まあ、俺も転生とか成仏とかしたいとは思いませんしね。幽々子が居て、妖夢が居る今の生活で十分です。――あれ? そういえば妖夢は?」
「妖夢には休暇を与えたわ。今頃は例の彼の元にでもいってるんじゃないかしら。
 それよりも○○、妖夢がいないから炊事洗濯掃除、よろしくね?」
「あはははは……というわけだから射命丸さん、今日はわざわざどうもありがとう。今度ネタに困ったら妖夢を訪ねてみると良いよ。妖夢のは妖夢ので多分、
面白いネタになるだろうから。」
 そう言って、俺は笑って見せる。
「あ、はい。じゃあ私はこれで……」
「ちょっと待って。私の話がまだ終わってないわ。……じゃあ○○、よろしくね。」
「わかったよ、幽々子。」
 最後にそう言って、俺はその部屋を離れた。








「○○はああ言ってたけれど、実は○○は貴女に言ってない事があるの。」
 西行寺幽々子は突然、私にそう切り出してきた。
 私としてはさっきの話で十分つじつまがあっている気がしていたが、そう言われると気になる部分も出てくる。
 そう。例えば――
「何故○○さんが冥界に、それも白玉楼に来ていたのか、ですか?」
 私がそう言うと、西行寺幽々子は満足げな表情を浮かべた。どうやら当たりらしい。
「そうよ。○○が何故白玉楼に来ていたのか。それはね、私が○○に一目惚れしたからなの。」
「……はい?」
 何故それが○○さんが白玉楼に来た事に繋がるのか。私にはさっぱりわからなかった。
 だから私は、視線で話の次を促した。
「……前に紫に外の世界を見せてもらった事があったわ。その時丁度、街中を歩く○○が見えたのよ。一目見て好きになったわ。
 だから私は――○○を、死に誘った。」
 西行寺幽々子の言葉に、私は驚きを隠せなかった。
「……つまり、貴女は○○さんに会いたいがために、○○さんと話したいがために彼を半死状態にまで誘い、冥界に連れて来た、と?」
「ええ、そうよ。」
「それを○○さんはご存知なのですか?」
「当然知ってるわよ。でも、『それでも俺は幽々子が好きなんだ。幽々子、愛してる。』って言ってくれたの。」
「…………」
「あ、今の話はさすがに記事に載せるのはマズイかしら。今のは"おふれこ"という事でお願いするわ。」
「……ええ、構いませんよ。」




 西行寺幽々子は笑顔で話していたが、冷静に考えてみればそれはとんでもない事だ。
 西行寺幽々子は○○さんを気に入り、半死に誘った上に○○さんは○○さんで西行寺幽々子を半生愛し続けたと言う。一人の亡霊の感情に任せた行動が、一
人の人間の人生を大きく狂わせた事になるのだ。
 でも――
「本人達は幸せなのでしょうね。恋は盲目、さしずめ愛は狂気とでも言うべきでしょうか。」
 これはあくまで妖怪と人間の間における愛の一つの形である。全てがそうなるとは限らないし、同じような形になる場合もなくはないだろう。
 しかし昨今増加し続ける『外界からの迷い人』の増加の中には、このように恋愛に繋がる部分も出てくるだろう。そんな中で恋愛が歪むのは避けられない事
である。
 私はただ、この恋愛の形の歪みが幻想郷全体の歪みに繋がらない事を祈るばかりだ。



最終更新:2010年05月31日 22:30