幽々子7
うpろだ1068
幻想郷…ここは冥界――白玉楼。ここに人間が来ること自体が珍しい。
ここに来るまで大学の課題で付近の山に調査に行っていたが帰り道に遭難してここに来た。
一応課題もやらせてもらっている。とはいえもう1年経っているが。
「今年は蝶が早めに出てる…か。冬も短そうだったからなぁ」
背後からステルスもジャマーも真っ青の幽霊が覗き込んでいる。
「どう?レポートとかいうの…書けた?ちょっと見せて」
西行寺幽々子。ここ白玉楼の主だ。勝手に「ゆゆ様」と呼んでいる。
ちなみに本人曰く「タメ口でいい」らしい。
「今日確認できただけで蝶は4種類…他のは普通かな。」
「いい年になりそう…結構蝶は好きだから。どんな種類?」
「アゲハとキアゲハとキチョウ…あとはモンシロチョウ。メジャーなところしかいないけど」
「凄い…種類まで…」
「もう少し経って初夏から夏くらいにはオオムラサキも見られるはず…カメラでもあればなぁ」
こんな他愛ない会話。それでも興味を持ってくれるだけ嬉しい。
「幽々子様も○○さんもお昼できましたよー?紫様も来てるんで」
「「今行くー」」
庭師の魂魄妖夢の呼ぶ声に返事が思いっきり声が重なった。似てる…のかな。性格。
「やっほー○○ー。幽々子も久しぶりー」
八雲紫。飄々としているがこれでも大妖怪。ゆゆ様の親友だ。「紫姐さん」と呼ばせてもらっている。
「紫姐さんじゃん。いつ見ても変わんないなぁ」
「いい意味でも悪い意味でも後で藍と橙に言っとくからね…なんて冗談冗談」
今…目がマジだった。冗談が冗談に聞こえない。
ある夜――レポートを纏めていると咳に混じって血が出た。ハルゼミとカゲロウが確認できた日だ。
レポート用紙の一部が赤く染まる。
「この厄介な持病がなけりゃなぁ…もっと気が楽になるってのに」
持病の心臓病。今まで数か月に1回程度で済んでいたがまさか今になって再発するとは冗談じゃない。
次の日は問題なく過ごせたが誰にだって限界はある。生きている人間なら尚更だ。
それから一週間後。よりによって真夜中に――ゆゆ様の活動する時間帯に持病が再発した。
確実に周期が早くなっている。数か月から数週間に――数時間確実に縮んだ。
「何だよこの血の量は…尋常じゃないだろ…。冗談じゃない…まだ言ってないってのにさ」
「やっぱり…雲行きが怪しいと思ってたの。○○――今日の丑三つ時には息絶える…酷だけど」
こういう時に出てくるのが紫姐さんだ。でも恐怖に怯えるより気が楽になった。
「酷じゃないって。そろそろ言おうかなって思ってたとこだし。この持病のこと――ゆゆ様にさ」
「そう――――じゃあ邪魔者は退散するから。悔い…残さないようにね」
隙間が消える。ヤバい。また咳が出てきた。悪化しているのは理解できるがこれ以上は――血を失えないのに。
「○○…大丈夫!?ちょっと!冗談でしょ…」
見られた。こんな無様な姿を。石段にもたれかるしかない。
「現実だよ。これが人間の末路で…結末で…限界で…運命で…避けられない最悪のシナリオ」
幽霊が泣いてる。もういっそ「ゆゆ様の能力で殺して」って頼みたいがそれこそ言う勇気がない。
「さっき紫姐さんに言われてさ…今夜で息絶えんだって。持病だから覚悟はあったけど」
まずは持病のことを言えた。
「十数年向こうで生きて…やっとこっちに偶然とはいえ来れたのにこれとはね…まるでセミだよ」
「血…止まった…?どこか痛くない?死なせない…絶対」
人間にそれを言っても「死」という末路は避けられない。それが―――「ヒト」という生物。
「セミの成虫の寿命…は…約一週間…その間に言いたい…こと全部…言って死んでくんだよ」
「この…バカ…何で今まで…」
「言ったら…ゆゆ様…泣くじゃん…っ…命の短さがセミ…なら儚さはカゲロウか…楽しかったよ」
「どうせ…止められないなら…私のこの手で…殺してあげる。それでいい…?」
「本望…。好…きな人に…殺されるなら…普通の死…より受け入…れやす…いし」
視界が霞む。声が掠れる。血が溢れる。でも――――このまま死ぬとしてもタダじゃ散らない。
「来世で生きて…死んで…また会えたら…ここに来て。でも今は――お休み――反魂蝶…」
「好き…だった…よ…本気で。今度は――――セミ…じゃなく…て…もっと…強く――」
やっぱりここが居場所だった。
「○○…お別れは…サヨナラは…言わないでね」
反魂蝶で目を閉じる。反魂蝶どころか極楽蝶に見えた。
自分を「セミ」と例えた奴の意地。力尽きるまで――死ぬまで――生きて。足掻いて。鳴き続けて。
あれからどれだけ時間が経ったか。今は四季映姫ヤマザナドゥの裁判を受けている最中だ。
「判決を言い渡します―――――――――――」
何でもいい。この幻想郷に―――――白玉楼にいられるなら。
「被告人○○――――無罪です。つまらないですけど」
はい?無罪?マジっすか?なんでそんな判決を!?ってか今この人絶対つまらないって言ったし!
「貴方のできる善行は――帰ることです。病は除いておきました」
ヤバい。裁判長が後光纏ってる。何でか知らないが輝かしい。何だこの1万拾ったような感覚。
「それともう一つ……強くなること。頑張りなさい」
そうだ。幼稚園の頃将来の夢に「カブトムシ」って書いたっけ。そのことか。懐かしい。
裁判終了。例えるなら「空蝉」の体に戻る。質量があるとはいえ霊になったわけだ。これでもう死なない。
もう桜は散って――季節的に初夏らしい。白玉楼のこの石段は温度的に物凄くキツいワケだが。
「飛んじゃうかな」
何という横着。でも飛ぶのは最後の1段。それまで必死に登る。
すでに外は夕焼けに染まっていたらしく妙に自分が赤く感じる。
「さてと。行きますか。これがセミの来世…か。今度は何になれるのかね」
扉を叩いてみる。あれ?留守…じゃないはずだ。不法侵入+玉砕覚悟で敷地内に入ってみる。
妖夢はこの時間は買出しに行ってるはずだ。
「ゆゆ様…不貞寝してるよ…」
ここまで不思議な光景は今日まで見たことない。枕元に立って呼んでみる。専売特許強奪だ。
「――――――――――誰…?」
ウソだろー!?寝返りのついでに気取られた!?
「心配してくれてたみたいで。約束通り「来世」が来たんで」
「…」
そりゃ無言にもなる。死んだ人間が霊になって自分の前に現れるわけだ。
「ホントに…○○…?嘘じゃない…?幽霊じゃない…?」
「厳密には幽霊だと思うけど感覚は確かって…どうなんだろ」
泣きながら後ろに腕を回された。いや今自分の目の前にいるのは幽霊だが。
「今度は何になれてる…のか…楽しみじゃない?」
精一杯の泣き笑い。それでも嬉しい。帰って来れただけでもいい。何になろうが今は関係ない。
「何でもいいかな…。自分は自分だし」
自分を何に例えようが別にそれはそれだ。
でも望めるとするならまたセミでいい。コオロギでもいい。鳴いて――叫んで――伝える。
「あ。それとあの一言の過去形は撤回。もうセミは死なないから」
「ふぇ…?」
言うチャンスは今だ。
「好き「だった」んじゃなくて…今でも…好きなんだよね」
「っ…おかえり…○○――――」
終わりがないなら――終焉がないなら――死が来ないなら――まだセミは叫べる。
ゆゆ様にひっ憑かれ…もといひっつかれて数分。
そろそろ夕飯だなぁと2人で居間に向かう。
「盛大に帰還…もとい生還~」
皆盛大に驚くかな。でもこの楽しみは一瞬にして一気に跡形なく木端微塵にまんべんなく粉砕された。
「知ってましたよ?まぁ生還おめでとうございます。最初は驚きましたが」
「妖夢…何で知ってんの!?」
あれ?
「お。○○か。久しぶりだな。一時は心配したんだぞ?ほら座れ」
「へ!?藍さんも知ってたって…何で?」
嘘ォ!?
「だって紫様が教えてくれたから」
「橙…なるほど。お陰でようやく状況が把握できた」
あぁ…そっか…。
「大正解~。裁判からずっと見てました~。見せつけてくれるじゃない?白昼堂々と。ねぇ?」
「静けさの犯人は紫姐さんか…通りで誰も驚かないわけだ。ゆゆ様…判決は?」
「今度ヤツメウナギをおごること。そうしなかった場合…冷蔵庫の中身を明け渡すこと。全てね」
目が本気だ。カリスマオーラがヤバい。使い所間違ってるとは思うが今は敢えてツッコミを入れない。
でもここが一番落ち着ける。
何になれたかはわからないが…また生きられる。
自分の翅で――――――また飛べる。
うpろだ1146
深夜の庭を歩く。
静かに、静かに。
やっと寝入ったみんなを起こさないように……。
そうして、やっと門の前まで来て、男はゆっくり振り返った。
目に入るのは、
辺り一面を染めるかのように、幽雅に咲く桜木。
たかが半年、されど半年、世話になった白玉楼の屋敷。
そして……
「!? ジイさん……」
「行くのか……」
「…………」
「なぜだ!? 何故ここを出ていくっ!!?」
「俺と、……何よりお嬢の為だ」
「お主は幽々子様を好いておったではないか! 幽々子様にしてもお主のことを」
「ジイさん! それ以上は……。
俺だって、お嬢の気持ちはうすうす感付いてはいたさ。」
「ならば尚更! 何故このようなことを、――――!!
在り方、か……?」
「あぁ、そうだ
俺とお嬢では在り方が違いすぎる。それこそ、絶望的なくらいにな」
「――ッ!! お主がっ! 儂にその胸中を語った時にお主は何と言ったか!? よもや忘れた訳ではあるまいな!?」
「俺の想いに種族なんざ関係ねぇ、確かにそう言ったさ。
その気持ちは変わってねぇ。いや、変わる訳ゃねぇ、変えたくもねぇ……。
……けどな、ダメなんだよッ あくまでそれは俺の想いだけじゃなくちゃダメなんだよッ!!
俺はお嬢が好きだ! お嬢も俺を想ってれてるッ! けどッ! それでぇッ!!
……それで一緒になって、一番悲しい思いをするのは誰だ……
結局、一番つらい思いをするのは誰だよ……」
「お主は、其処まで……」
「俺は人間だ。
アンタらみたいな半人半霊でも、幽霊でも亡霊でもましてや妖怪でもねぇ。
俺は人間なんだ……。何の取り柄もねぇただの人間なんだッ!!
死んだって、必ずここに戻ってこれるとは限らねぇ。それに、転生しちまえばなんもかんもまっさらになっちまう。
ずっとお嬢の傍に居てやることができねぇなら、それはお嬢の荷物を増やすだけなんだ……」
「だから、か」
「そ、だから――俺はここを出ていく。
……今なら、まだいい思い出にくらいはできるだろうしな……」
「…………」
「…………」
「……………………」
「……………………」
「ふぅ、もう何を言っても無駄なようだの」
「すまねぇ。
お嬢を頼むぞ、ジイさん」
「ハッ、何をたわけたことを。西行寺家を護るのが我が魂魄家なれば儂が幽々子様を守るのは当然のことよ。しかしッ!」
「?」
「しかし、その御役目を妖夢に引き継いだ暁には真っ先にお主の居所割り出して首に縄つけてでも連れ戻してやるわい!」
「ハハッ、そんときはよろしく頼むよ、ジイさん。
……さて、そろそろ行くわ。」
「そうか、せめて、達者で暮らせよ」
「二人によろしくな」
そう告げて去ってゆく背中を見やりながら、妖忌の胸に湧いてくるのは寂寥感だけだった。
あの若者を往かせて本当に善かったのだろうか。本当にあれ以外の道は無かったのだろうか。
果たして、人と妖(アヤカシ)、共に歩む道は本当に無いのだろうか。
はたして……
「……はたして、これでよかったのかのぅ」
「いいのよ、これで」
「!! 幽々子様……!」
「…………。
“瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の――”」
「“――割れても末に あわむとぞ思う” 信じておられるのですな、あ奴のことを」
「そりゃぁそうよ、だって――
好きになった人のことだもの」
「……」
「……」
「妖忌も、信じてるわよ」
「ふむ、おまかせあれ」
それから暫くして――
妖夢に家督を譲った妖忌はその言葉通り旅に出た。
当てなんて無い、いつ終わるとも知れない旅。
それでも、きっと私は信じている。
二人が揃って、この白玉楼の門をくぐって帰ってくる日を。
……………………
………………
…………
……
「――――――」
「幽々子様~、お茶が入りましたよ~」
「あらあら妖夢、ありがとう。ちょうど欲しかったのよ」
「いえ。それで、先ほどから何を読んでらしたんです?」
「あぁ、これ? 妖忌からの手紙よ」
「え、おじい様からの!? 一体いつ!?」
「ついさっき、あなたがちょうど出かけているときにね」
「みょん!? なんてタイミングで……」
「あなた宛てのもあるから、後で読むといいわ。
さて妖夢、明日の晩御飯はちょっと豪勢なものを用意してくれないかしら?」
「え、それは構いませんが、なぜ突然に?」
「帰ってくるのよ、二人が、ね……」
うpろだ1159
夜、白玉楼に遊びに来た○○
幽「あら、○○じゃない」
○「こんにちは! ……あれ、妖夢お姉ちゃんはいないの?」
幽「そうなのよ~。妖夢ったら私の事ほったらかしにしてどっかに行っちゃったの~」
○「そうなんだ……幽々子お姉ちゃん、可哀想……」
幽「でも、大丈夫よ。今は○○がいるもの(ぎゅっ)」
○「わわっ、ゆ、幽々子お姉ちゃん?」
幽「妖夢の代わりに○○が――あ、そうだわ。○○、これから妖夢の代わりになってくれないかしら?」
○「え?」
幽「大丈夫よ、代わりと言っても○○の世話が私がしてあげるわ。食事に着替え、添い寝までしてあげるわ」
妖「随分と過保護なんですね」
幽「あら、妖夢。いつから居たの?」
妖「最初からいましたよ……それにほったらかしにしてって、お茶持って来いって言ったのは幽々子様じゃありませんか」
幽「あら、そうだったかしら。今は○○の事で頭が一杯だわ」
妖「いつもの事ですね……はい○○くん、お茶ですよ。ここに置いておきますね?」
○「わぁ、妖夢お姉ちゃんありがとう!」
幽「むぅ、こんな事なら私がお茶を持ってくれば良かったわ」
妖「○○くんを抱きしめながら言っても説得力全くないですよ。あと、そろそろ離してあげたらどうですか?」
幽「嫌よ。妖夢に○○は渡せないわ」
妖「取りませんよ」
○「お茶飲めない……」
幽「○○ったらもがいちゃって、可愛いわね。食べちゃいたいくらいだわ」
妖「はいはい、分かりましたから。とりあえず離してあげてください」
幽「この子食べてからでいいかしら?」
妖「洒落になりませんからやめてください!」
○「お茶……」
うpろだ1225
「ゆゆ様~」
「なぁに?」
「いい加減寝てる人の上で漫画読む癖やめません?」
「だってこの漫画、おもしろいんだも~ん」
「それは答えになってませんよ・・・」
俺が布団の上にうつ伏せの状態で漫画を読んでるとき、その上にぴったり覆いかぶさる状態で、ゆゆ様が漫画を読むようになった。
漫画を読んでる時にゆゆ様が上に乗っかって、胸があたるので漫画の中身が頭に入らない。
じゃ、なくて、上に乗っかられると、重くて読みにくいので頭に入らない。
「頭を本置きにされると角が刺さってちょっと痛いんですが」
「ごめんなさいね。面白いんだもん」
「いやいや、ゆゆ様。答えになってませんって」
「○○?次の巻は?」
「あ、これです」
また話をそらされてしまった
「漫画が面白いのも分かるんですが、俺も漫画を読む身でして・・・非常に申し上げにくいのですが、乗っかられてると読みにくいんです・・・」
「じゃあ貴方。読まなきゃいいのよ」
またまたご冗談を。
「あ、幽々子様!また○○さんの上で漫画読んでるんですか!」
ちょうどいいところに来てくれた妖夢。
妖夢が来るといつもゆゆ様を俺の上から無理やり引っぺがしていく
少し惜しい・・・じゃなくてすっきりするのでありがたい。
「ごめん、妖夢。今日も頼むわ」
「分かりました」
「え~?○○ぅ?私の事を裏切るの?」
「いやいや、ゆゆ様。俺の身にもなってください」
「およよ・・・」
泣きまねをされてもその程度じゃあ少し心が痛む。
じゃ無かった。その程度じゃあ動じない。
「では幽々子様。いつもどおり失礼します」
「いやぁ~。今日は○○とくっついて漫画を読むことにしてるの~」
漫画をそこら辺にほおり投げて俺の腹の辺りに手を回してしがみつく。
相変わらず豊満な胸が・・・じゃなくて相変わらず我侭だ。
でもそこが彼女の可愛さでもあると思う。
とか何とか思ってたら妖夢がゆゆ様を引っ張り、ゆゆ様が俺を引っ張る形になっていた。
「幽々子様~。粘らないでください~。漫画なら持って行っても良いですから~」
「い~や~~。今日はここで漫画読むのぉ~」
いやいや妖夢。俺は良くない。いや、まぁ漫画が無いならないでこのまま寝るが。
だがしかしこんな可愛いゆゆ様を、無理やり引っぺがすのも酷なものだ。
「ん~・・・妖夢?」
「はい?」
妖夢がゆゆ様をひっぱる手を止めた。が、ゆゆ様は妖夢を睨んで、まだ警戒しているのか、俺にしがみ付いてる。
「ごめん妖夢。今日はもう良いよ。俺もまぁ・・・そこまで迷惑でもないし、ゆゆ様がこんだけ嫌がってるんだから。な?」
「んー。○○さんがそういうなら・・・しょうがないですかね」
流石妖夢。分かってくれてる。色々と。
「今日もわざわざ連れ戻しに着たのに、我侭言ってすまんな」
「我侭なのは幽々子様ですから」
ズバッと言ってくれて少し助かる。俺に言う勇気は無い。
「あらひどい。ねぇ?○○?」
すいませんゆゆ様。妖夢のおっしゃるとおりです。でもそこがまた好きなんです。
「本当ごめんね妖夢」
「いえいえ。まぁそういうことなら。失礼致します。」
妖夢が一礼して去って行く。
「もう妖夢ったらひどいわねぇ・・・」
「ゆゆ様も少しは妖夢の苦労も分かって、反省してくださいよ。いや、まぁ来てくれるのは本当に嬉しいんですが」
「妖夢も毎回毎回私の事を引っ張りにこなくていいのに~。ねぇ○○?」
俺はなんとも言えん。嬉しいけど、静かな漫画タイムを満喫したいときに、ゆゆ様にはすまないけど少しだけ邪魔だ。
ちょっと邪魔なくらいで全然可愛い彼女だからいいんだが。妖夢の苦労も考えると、そことなく否定をしておいたほうがいい気もする。
「ちなみにゆゆ様。なんで今日は粘ったんですか?いつもならずるずるりと引きずり出されていくのに」
「漫画の続きが気になるのと、今日は○○と一緒にいたいから・・・かしら?」
あ、なんか凄い嬉しい。
こういうところがあるから、ゆゆ様を甘えさせてしまう。
「そうですか・・・有難うございますゆゆ様。今日も、愛してますよ」
「私も○○の事大好きよ~。あとさっき投げちゃった漫画とってくれない?」
もう少し「大好きよ~」の余韻を楽しみたかった。
「はいはい。」
そういって彼女の手に本を置くと、また俺の上に乗っかって頭を撫でてから本を読み始めた。
頭を撫でられたおかげで(?)眠くなった。ゆゆ様のナデナデにはきっと不思議な魔力がある。今も幸せな気分になれた。
「では、すいませんが、俺はもう眠いんで勝手に寝てますよ」
「じゃあ私も寝るわ~。○○。一緒に寝ましょ?」
これは嬉しい。ゆゆ様と一緒に寝られるなんて。じゃ無くて、妖夢に怒られるよ。
「いやいや、妖夢に怒られますよ?」
「妖夢がきたら○○が退治してくれればいいじゃないの~」
「俺も妖夢を追い返すのは心が痛むんですよ・・・」
「いいのいいの。もしここで私が追い返されたら私の心はもっと痛むから」
「少し返しがずれてますよ」
「そんなことはどーでもいいの。私が寝るって言ったら○○も一緒に寝る。妖夢は妖夢の部屋で寝る。常識よ?」
と言ってゆゆ様は俺の布団の中に潜り込んで、わきの下あたりに手を回し、抱きついて眠る形になった。
何か愛しくてたまらない
「じゃあ○○~。お休みぃ~」
俺はすべての愛を込めて、ゆゆ様を抱きしめてからこう言った。
「おやすみなさいゆゆ様。これからも、愛し続けますよ。愛の限り力の限り」
「ふふふ。ありがとう。」
彼女の顔の表情は分からなかったが、きっと彼女も幸せそうな顔をしているだろう。
今日は髪の毛の匂いと俺の胸の下あたりにあたってる胸の感触を楽しみながら寝よう。
じゃ無かった。何事も無いかのように、さっさと寝よう。そして、幸せな夢の国へ。
うpろだ1243
「妖夢~おなか減った~」
「幽々子様。夕飯までまだ時間がありますよ」
「○○~おなか減った~」
「ゆゆ様。夕飯までまだまだ時間がありますよ」
一般的なおやつの時間まであと10分
ごろごろしてるゆゆ様が、妖夢に、僕に、声を掛けて「おなか減った」アピールをしている。
「○○?おやつの時間まであとどのくらい?」
「あと10分くらいですねぇ。あと少しですよ」
「待~て~な~い~」
頬を膨らませて駄々をこねるように寝転がる。
そしてそのまま僕のほうに転がってくる。
「ゆゆ様。怪我しますよ」
「や~。おなかへったぁ~」
ガッ!
「いったーい!」
ほら。言わんこっちゃ無い。
「大丈夫ですか?」
「・・・お菓子くれたら治る・・・」
涙目で僕に訴えかける。
負けそう。
「我慢してください。妖夢がお菓子を出すまで」
「い~や~。○○ぅ~頂戴~」
さっき体を打った場所からまた転がりながら、僕が座っている前にうつ伏せになった。
そこで僕の顔を眺められる。上目遣いに殺されそうだ。
「だめ?」
「だめです」
良く断った自分。
昔ゆゆ様に甘くしてしまって、妖夢にこっぴどく怒られた記憶がある。
ここに遊びに来過ぎて、妖夢に、何か手伝え!と怒られたので、妖夢の手伝いでもしようかな。と思い、始めたのが妖夢(教育係)補佐。
時間は守るもの。と教えるのも無論、教育の一環らしいので。
僕もまぁ悪魔で、教育係になってしまったので、ゆゆ様を甘えさせてはいけない。らしい。
「そんなにも私にくれないなら、強硬手段に出るまでよ」
「何するんですか・・・」
今までここまで食い下がったことは2回くらいしかない。
1回目も2回目も、妖夢に泣きじゃくりに行ったが、一蹴。
僕に慰めてもらい、おやつまで待っていた。
「くれなきゃ、ちゅーするわよ」
何を言うんだゆゆ様。絶対にお菓子を渡さなくなるよ。
・・・じゃないよ。一瞬理性が無くなってた。
「いえいえ!何を言うんですか!妖夢に怒られますよ!」
「や~。くれないならちゅ~するの~!」
僕のことを押し倒すゆゆ様。
最早抵抗する気はあまり無い。が、一応抵抗しておく。
「やめてくださいって!もうそろそろですよ!」
「待てない~ちゅ~するか、おやつ~」
ゆゆ様の尖らせた口が俺の首くらいまで来たところでふと横を見ると
お盆を持った妖夢が。
「・・・妖夢!いやいやいやいやいや!ちがくてむぅっ!」
あ、普通にキスされた
「あ、妖夢~おやつ~?」
ゆゆ様が何事も無かったかのように妖夢の元に、走る。
目が怖いよ妖夢
「何・・・してるんですか・・・○○さん」
「いやいや、これはちがくてさ、ゆゆ様が無理矢理というか」
「・・・○○さんがそういうなら、きっとそうなんでしょう」
正直に生きてるとこういうときにすぐに信じてくれる人が居ると凄い助かる。
が、ゆゆ様を裏切った気もして、少し心が痛んだ。
「幽々子様?」
その呼びかけに小走りのゆゆ様が足を止める
「なぁに?」
「おやつ抜きです」
「えぇ~!?」
いや、なんかしょうがない気もする。
「○○さん」
「はい」
「後で台所に来てください。○○さんの分のおやつもありますから。渡しても、幽々子様には「絶対に」あげないでください。
量は二人分くらいありますが、気にしないでください」
・・・つまりそれはあげていいって事かな?
「分かった。有難う。妖夢」
「ふえ~ん」
ゆゆ様は泣きながら部屋に戻っていく。
夕飯まで昼寝でもする気かな?
「○○さん?」
「はいよ?」
「幽々子様はああいう方なんです。なるべくきっちり今度からは断るように。お願いします」
「分かったわ。じゃあゆゆ様には「絶対にあげない」二人分のお菓子貰っていくよ」
「はい。どうぞ」
妖夢はフフフと笑い僕にお菓子を渡してくれる。
「どうも。今度なんか妖夢用のお菓子でも買ってくるわ」
「あ、お願いします」
そう言って僕はゆゆ様の部屋の前にお盆を持って行く。
「ゆゆ様?」
「グスン。なぁに?」
ちょっと涙声だ。
「ちょっとよろしいでしょうか?」
「いいわよ・・・」
「失礼します」
スススと片手で障子を開け、様子を見る。
布団の中にうずくまっている。
「私のエネルギーが切れる前に、用事を済ませて頂戴」
「妖夢には「内緒で」お菓子、もって来ましたよ」
そういいながらゆゆ様の寝室にある机の上にお盆を置く。
と同時くらいに布団が宙を舞いゆゆ様が飛び起きる。
さっきの涙声が嘘だったかの用な笑顔だ。
「○○ぅ!有難う!大好きよ!大好き!」
僕を敷き布団の上に引き込んでほお擦りをする。
もう可愛すぎる
「ゆゆ様。そんなことよりお菓子を」
「あ、そうだったわ」
そういうとすぐに僕の元を離れてお菓子のところに飛びつく。
「今日は柏餅だったのね」
「どうぞお召し上がりください」
「いただきます」
モニモニと柏餅をほおばるゆゆ様。
「○○は食べないの?」
笑顔で食べているゆゆ様を見ているだけで十分だ
が、お言葉に甘えよう。
なんだかんだで妖夢のお菓子は手伝いの楽しみの内のひとつだ。
「では、いただきます」
そう言って一口齧る。
相変わらず妖夢の手作りお菓子は美味い。
「お腹も減ってるせいか、○○と一緒に食べてるせいか、おいしく感じるわ。きっと両方ね」
そう笑顔で言いながらもうひとつの柏餅に手を伸ばす。
「有難うございます。僕もゆゆ様と食べる時間が幸せです」
とかなんとか言ってると、4つ、あった柏餅が何故かもう1つしかない。
もうゆゆ様は2つ食べたのか。
「あんまり急いで食べると喉を詰まらせますよ」
「大丈夫大丈夫。それより○○。何個食べたの?」
「あ、僕ですか?1つですが、僕はもういいんで、ゆゆ様が食べてください」
ゆゆ様が幸せそうに食べている姿を見るだけで十分だ。ゆゆ様も幸せになるし。
「悪いわよ。私はもう2つ食べたの。○○は1つしか食べてないのね?」
「いや、そうですが・・・僕はもういいんで」
「遠慮しないでいいから」
「いえいえ。いいですよ。ゆゆ様が召し上がってください」
このままだと埒が明かない。と思っていたらゆゆ様の案
「う~ん。じゃあ半分個しない?」
お、無難。二人とも幸せな案。
「じゃあちょっと包丁取ってきます」
「あ、ちょっと待って」
とゆゆ様が言うと突然口に柏餅を半分くらいほおり込む。
「あら?全部たべるんですか?」
「ん~んーんん~」
ゆゆ様が口から半分くらい出てる柏餅を指差しながら何かを言ってる。
つまりその口から半分でてる柏餅を食えと。そういうことですかゆゆ様。
「いやいやいや。それはダメですって。もう僕はいいんで食べちゃってください」
「んー!」
ちょっと怒った表情を見せて僕を抱き寄せる。
はぁ。もう食べるしかなさそうだ
「・・・では、いただきます」
そう言って唇に触れないように、一口齧るとゆゆ様は、齧った残りの柏餅を口に詰め込んで、頬を膨らましたまま僕にキスをした。
唇に触れないようにした努力が無駄になった。が、努力が無駄になったのに、初めてプラスに物事が動いた。
「んんん~んん~んん」
なんだか良く分からないが、笑顔で柏餅をモグモグしてるゆゆ様は微笑ましすぎる。
「飲み込んでから喋ってください」
僕がそういうと喉を鳴らしながら飲み込む。
お茶をゆゆ様の手に渡すとそれも結構豪快に飲み干した。
そして一息つく。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫よ。○○。大好きよ」
「僕も、大好きですよ。ゆゆ様」
ゆゆ様がお盆に湯飲みを置く
そしてもう一度僕にキスをした。
僕はお盆を持って部屋から出る。
「では、お昼寝中、失礼しました。夕飯時になったら起こすので、ごゆっくりお眠りください。」
うpろだ1269
「暑いわ~」
「奇遇ですね。僕も暑いと思います・・・」
「それは奇遇っていうのかしら?」
そんなくだらないやり取りを延々と続ける、真夏の昼下がり。
妖夢が少しダルそうに庭の手入れを行ってる間にゆゆ様の暇を潰している。
「○○~暑いわ」
最近彼女は「暑い」という言葉を一日に15回は言う。
「ちょっとタオルでも濡らして持ってきます」
「そんなの一時しのぎにしかならないわよ~」
「その一時しのぎを繰り返したら、いつまでもしのぎになりますよね。つまりそういうことです。」
「・・・それもそうね?」
適当に返してパパッと台所に行く。僕もタオルでも無いといい加減熱中症になりそうだ。
水を流し、タオルを濡らす。冷たい水が手を流れ落ちる。暖かい手が目を塞ぐ。
「だ~れだ?」
「・・・ゆゆ様。あんまり動くとなおさら暑くなりますよ」
「○○。残念。妖夢でした~」
「・・・はぁ。幽々子様。こんなくだらないことで、私の仕事の邪魔をしないでください」
こんなくだらないことのために妖夢を連れてきたのか。夏の暑さはくだらなさ促進効果もあるようだ。
「ゆゆ様?妖夢も仕事中です。あんまりくだらない事で止めないであげてください」
「私も暇なんだもん」
「幽々子様は暇でも、私は暇じゃないんですよ」
「妖夢。また仕事戻っていいぞ。あと、このタオル、お前にやるわ」
ぽいと冷えたタオルを妖夢に投げる。
「あ、冷た。ありがとうございます」
妖夢はタオルで顔を拭きながら、また庭に戻っていった。
あの庭師も大変でしょうに。
「○○~。最近冷たくないかしら?」
「暑いですよ」
「それが冷たいって言ってるのよぉ」
「暑い時に熱いことやるのも、なんじゃないですか」
「そうかしら?何でもやってみるもんよ?」
彼女が言うならばしょうがない。そして手を拱いている。
「ハァ。では、ゆゆ様、失礼します」
と、言ってゆゆ様の頭を撫でる
「暑いわ」
「でしょう?じゃあ今日は、大人しく冷タオルとでも熱くなってましょう。お互い」
棚からタオルを出して濡らし始める
「○○?」
「はい」
「今度いつ雨降る予定なの?」
「あ、でも確か今夜から降り始めるらしいですよ」
タオルを絞りながら答える
「じゃあ少しは涼しくなるわね」
「そうですね。流石にそろそろ雨でも降らないと、タオルが、常時必要になるでしょう」
ゆゆ様にタオルを渡す。顔を拭いて、冷たさに、クゥと唸りながらゆゆ様は言う。
「じゃあ今夜からはまた熱くなってもいいのね?」
「それにしても暑いですよ。いや、でも、お願いしますが」
「じゃあタオルで少し冷えたことだし、少し位熱いのに慣れておく?」
と、彼女が言って、俺に抱きつく
「暑いわ」
すぐに離れる
「・・・夜まで保留ですね」
「そうねぇ。冬に(○○暖かい~って)言ってたみたいに抱きついても、大丈夫かしら?」
「それにしても、夏なんだから暑いでしょう」
「そうかしら?私は大丈夫よ?」
なにが大丈夫なんだか。
「じゃあ夜までまたダラダラしてますか?」
「そうね。一時的なタオルもあるし」
「一時したらまた冷やしに行きますよ」
「じゃあその時はまたついて行って熱くなるわね」
「勘弁してください」
「勘弁しないわ」
これ以上暑くなるのは勘弁だ。これ以上熱くなるのは目を瞑ろう。
うpろだ1282
「よしよし…順調に種類は増えてるな」
ここは幻想郷の白玉楼。一度死んでもう自分は厳密に言えば幽霊だ。生態学の昆虫レポートを今でも書いてるワケだが。
「頑張るわねぇ…これ紫ん家から持って…じゃなくて。貰ってきた差し入れのお団子」
「ゆゆ様…それパクったんだ…まぁいっか。あざーす」
団子を口に入れた次の瞬間。狙ったかのように聞き慣れた声。
「幽々子ぉー!私のお団子パクったでしょ!?スキマ妖怪を敵に回したことを後悔させてやるわ!」
「あらあら~…バレちゃった?その足の速さは女郎蜘蛛ってとこかしらね。私はもちろん蝶だけど」
むしろハナカマキリだと思ったのは秘密だ。もちろん夜雀の捕食者的な意味で。
「紫姐さん久し振りー。結構美味いよコレ」
「○○も元気してた?って…あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!私の…ゆかりんのお団子をよくも…!」
八雲紫。でも再会がピチューンの予感で埋め尽くされてるんだが。ネクロファンタジアがどこからともなく聞こえてきそうな威圧感だ。
「紫姐さん…ゴメン。今度外界のいい店紹介するから許したげて」
「うーん…じゃあそのお団子は譲るわ。残り持って来るから」
「さすが○○…白玉楼の策士ね」
この状況で中立の立場を保つのはキツい。どっちに味方しても後が恐怖の2文字で埋まる。そして3秒後。
「お待たせ~☆ゆかりん、参上!!」
「こんなに隠し持ってるなら少しくらい分けてくれても…ねぇ?」
「そだね」
それ何て仮面ライダーだ?知ってたのか。
「「「ゆかりん、参上じゃないですよ!!!」」」
妖夢と橙と藍さんがシンクロして登場。これはすげぇ。
「藍さんも橙も久しぶり。元気ですかー!?」
「元気でーす!」
「あぁ。久しぶりだな。変わらなさそうで安心したよ」
その隣ではゆゆ様が妖夢のスーパーお説教タイムに突入。ゆゆ様涙目。むしろ泣いてるぞ!?
「全く…これだからカリスマが減少するんですよ!拾い食いするわつまみ食いするわ他人ん家のお団子掠め取るわ!何でも吸い込む桃色の球体ですか!」
「だって美味しそうなんだもん…」
「言い訳になってないです!罰としてこれから1週間のおやつは梅干し1つだけ!悪化した場合1日1食に減らします。反省の色が見られるまで無制限に」
「妖夢の人でなしー!!ケチー!!うつけぇー!!」
「はい?私は半人半霊ですから少なくとも人であって人じゃないですよ?今の文句で3食のお代わり禁止にします。いいですね!?幽々子様ぁ!?」
「○○~…妖夢がいじめるぅ~」
うわぁ…妖夢が謀反だ。キレてる。「白玉楼の明智光秀」の称号を贈呈したい。しかも梅干しはおやつに入らない気がするんだが。
そんなこんなで解散。さっきゆゆ様にヤケ酒に連れて来られて今はゆゆ様の部屋にいるわけだ。
「っく…うぇぇ…妖夢のバカぁー…○○は裏切らない…?」
「むしろ裏切れない性格なんで」
泣き上戸かとツッコミを入れたくなるがここは耐える。
「幽々子様ー…います?」
来た。白玉楼の明智光秀こと魂魄妖夢。ちょっと外に出る。
「いるんだけどさぁ…今行ったら確実に反魂蝶かまされるぞ?」
「それでも行きます」
コイツ…忠臣だ。
「さっきのは演技です…おつまみ持って来たんで」
「ふぇ?」
「ご飯もありますよ?」
「食べる!さっきのも許すから」
「小腹減ったから軽く1杯頼む」
ちょっと遅い夕食(?)を済ませる。部屋に戻ってレポート用紙を整理中だ。
「今週の分はこれで終わり…痛ぇ!指切った!」
「だーれだ?」
「紫姐さん…色っぽい声出してもバレてるって」
「えー?脅かし甲斐ないわねぇ…ゆかりんつまんないなー」
「んで…何かあった?」
「ちょっとね。はいコレ。プレゼント」
何か物々しい箱が出てきたぞ…?
「ダブルホーネット…?」
「そ。ガラクタは外の世界から貰ってきてあの河童にオーダーしたの。命名は河童だけど」
「ハンドガン系の銃剣じゃん!ちょ…マジにくれんの!?サンキュ!」
そういえばこの幻想郷に来てから丸腰のままで何か護身用の物が欲しかったところだ。
「ちょっと!こっち向けないでよ!ゆかりんが撃たれるじゃない!」
「あ。ごめん」
「じゃまたねー」
すげぇブツ貰った。とりあえず大事に持っておこう。次の朝。
「あ。○○さんおはようございます」
「妖夢って早ぇなぁ…あれ?ゆゆ様は?」
「後ろにいるんだけど」
「「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」
声が重なったぢゃないか。うーん…相変わらずのステルス性だ。
「今日も暑くなりそうだな…こりゃ」
取扱説明書つきとは本格的な。弾丸は専用のもの以外に通常の弾丸も発射できるとのことだ。
「妖夢ーちょっといいか?」
「はい?どうかしましたか?」
「一回だけ手合わせしてほしくてさ。武器ならあるし」
「銃剣ですか…怪我しても知りませんよ?」
試合開始。今回は弾丸じゃなく銃剣の刃の方の慣れが目的だ。
「これ使い勝手いいなぁ…。紫姐さんから貰ったんだけどさ」
「そうですね。ここまで善戦するとは紫様に感謝しないと。――――隙あり!」
もちろん黒星だ。さすがに無理があった。それからしばらく練習。ちなみに炎天下でだ。
「おいおい…マジ…かよ…」
3時間後にダウン。帽子被らなかったのが原因だな。
「生きてますかー?」
「虫の息だけどなんとか」
布団の中で目が覚めた。というか毛布はやめてくれ。凄まじく暑い。
「復・活!」
夜には調子が戻った。でもたまーにこういう時は…やっぱ来たか。
「霧雨魔理沙!ここから先は今度こそ通さない!魂魄妖夢、行きます!」
「まーた厄介なヤツが…今回は何も盗もうってワケじゃ…」
「問答無用ぉ!」
「人の話を聞かないヤツだぜ…ほい。マスタースパーク」
全く騒がしいな…。
「うわぁぁぁぁ…!」
「一丁上がりだぜ」
妖夢が眼前に落下してきた。ちょっと焦げてる。
「おーい…大丈夫かー?」
「ダメ…みたいです…あの白黒…を…止め…」
「ぅおい!気絶にはまだ早いぞ!?」
まぁ相手が相手なこの状況だ。どうしようもないが一応足掻くか。
「例のブツは…と――――うぉぉ!?弾幕!?」
「そこでストップだ。ゆゆ様の所には行かせたくないんでね」
「お前も話を聞かないヤツだな…私はレポートってヤツを見に来たんだぜ?」
「じゃ要件を先に言えっつーの」
「後から要件を言うのが霧雨クオリティだぜ」
何じゃそりゃ。
「ちょい待っててな」
――3分後――
「ほい」
「これ…全部お前が書いたのか?」
「白玉楼で見られた蝶を中心にグループ分けしたからざっと50枚くらい?」
「ちょっと借りてくぜ」
行っちゃったよ。バックアップに1枚ずつ複製しといてよかった。
「またバックアップ作るか」
「魔理沙がいたみたいだけど?」
ゆゆ様登場。ちょっとビビった。
「ゆゆ様じゃなくてレポート貸してってさ」
「つまんないなー」
「喉乾いたしお茶でも淹れるかな」
「賛成~」
「お茶菓子の在り処は把握してメモってあるのだよ」
「さすがは私の策士ね」
「どーも」
イチャつくこと1時間弱。
「んー…ところで○○。妖夢は?」
「確か中庭で気絶してたはず…ちょっと行ってくる」
お茶菓子全滅。でも殺気っぽいオーラが中庭から湧いてるんだが。
「大丈夫ですよ。自分で手当てしたので」
「「――――――――!!!!!」」
目が笑ってない。こ れ は ヤ バ い 。
「お茶菓子全部食べましたね…?○○さん?幽々子様ぁ!?」
「とりあえず逃げるしかない…あぁなった妖夢は止められないもの」
「分散しかないじゃん!」
二手に分かれて逃走。
「逃がしませんよ」
「う…ぁ…○○…ごめん…ね」
「峰打ちです」
嘘だぁ!?速すぎやしないか!?
「本体だけじゃないですよ」
「無念…」
「同じく峰打ちです」
気がついたらゆゆ様と正座させられた。これは…まさかスーパーお説教タイムか!?
「お茶菓子全部なんてまた太りますよ幽々子様!しかも○○さん!あれ高かったんですよ!レア物ですよ!?」
「「はい…」」
突き付けられたパッケージには「期間限定」の4文字。
「あ。これ賞味期限切れてますね。今から新しいの買ってきます」
…何ですと?賞味期限切れとな!?
「「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…」」
大当たり。(食当たり的な意味で)
「はい。薬も買って来たんで」
「「ごめん」」
「気にしないでください。お茶入りましたよ」
これからお茶菓子は取らないでおこう。
最終更新:2010年05月31日 22:36