藍4
12スレ目>>438 うpろだ828
「やっぱりここまで来ると違うなぁ」
尺上はあろう山女を釣り上げる、もうこれで十匹は釣ったな
わざわざ2時間も歩いた甲斐があるというものだ
「・・・もう十分楽しんだし、帰るか」
仕掛けと竿をリュックにしまい、険しい山道を、帰ろうとした、時だった
「おいおい、外はまだ解禁して無いはずではないか?」
俺は人生で一番驚いた
こんな山奥、山菜取りだって入らない奥、そこでまさか誰かに話しかけられるとは
「ああ、ここは内だから問題ないことは問題ないか」
声がした方、川の下流の方に、人影があった
「どうも、釣れてるみたいだな」
我が目を疑った
こんな山奥に軽装で少女が・・・じゃなくて、耳、尻尾
何の冗談だ?狐耳好きの俺が生み出した妄想か何かか?
ひーふーみー・・・9本と言う事はおなじみ九尾の狐って奴か
いや待てオカシイ、そもそも何故人型?耳っ娘?
「あ、あんたはいったい何なんだっ!?」
「ん?あ・・・すまない、この形じゃ驚いてもしょうがないな」
「・・・き、狐なのか?」
少女は尻尾をピクリと動かすと、嬉しそうに頷いた
「簡単に言うと狐の妖怪だ、だがとって食ったりしないから安心していい」
狐の妖怪・・・チクショウいなりずしか油揚げを持ってくれば何とかなったかもしれんのに
「妖怪・・・」
いざとなったらリュックを投げつけて、折りたたみの杖と、鉈とナイフでどうにかこうにか・・・してやる
「・・・話を聞いてるか?私は人を食わない、だからそんな殺気に満ちた目で見るな」
まぁ化物相手にどうこうできるわけもないか、ここは大人しく様子を窺った方が良いか
「それで・・・何の用だ?」
「ああ、君がここに来るのは何度目だ?」
「・・・3度目だ」
男は3度目と答えた
私はそれを聞いて、面倒な事になった、なるかもしれない、と思った
ここは幻想郷の端っこ、つまり「内側」
しかし彼は外の人間
つまり彼は3回ほど幻想郷と外を行き来している
結界によって外界と遮断されたこの幻想郷に、自由に入り込んでいると言うわけだ
「・・・困ったな、紫様にまた面倒な仕事を・・・」
しかし、この結界を行き来できる人間が居るとは、しかも釣りの為に
「・・・なぁ妖怪、話し聞いてもいいかな?」
「話?」
「いや、妖怪と話せる機会なんてまずないだろうから、色々聞いてみたいなぁ、何て思ってさ」
この男、マイペース過ぎる・・・目の前に現れた妖怪と話がしたいって・・・私じゃなかったら食われてるぞ
「・・・まぁ・・・いいだろう、私も外の話しを聞いてみたいと思っていた」
私はこの変な男と、なぜか話しをすることになった
妖怪は八雲 藍と名乗った
俺が藍という名前はとても綺麗だなといったら凄く照れていた
そんな様子を見た限り、人間と何が違うのか、よく解らない
藍の話すことを纏めると
ここは幻想郷という隔離された世界で普通は結界が張ってあって行き来が出来ないのだが何故だか俺は行き来が出来てるということ
そして彼女はその結界の管理をしたりしているのだと
「でな、パソコンってのはこんな感じの箱で、それで計算したり出来るんだ」
「いったいどういう仕組みで・・・・」
「よくは知らないが・・・・」
「・・・もうすぐ日が暮れる」
「そうだな、私も帰らなければいけないな」
二人で大きな岩に座り込んで、長いこと話していた
私はいいが彼は人間だ、あと2時間もあれば日は完全に沈んでしまうだろう
そのときまだ幻想郷の中に居たら、とても危険だ
「・・・さて、帰るか」
立ち上がった、とき
手首に、暖かい感触
「え・・・」
「あ・・・、ご、ごめん」
彼が、私の手を握った感触だった
なぜか心臓が、ドキドキと、大きな鼓動を鳴らしている
「き、気にするな・・・だ、だいじょうぶ」
変に意識してしまったせいで、顔がまともに見れない
あって数時間しか立っていない男に、そんな、まさか
「か、帰らなきゃなっ!じゃ、じゃあ」
反射的に、手が出た
彼がしたように、私も、彼の腕を掴んでしまった
「・・・なぁ藍さん」
「な、なんだ?」
「また来ても・・・いいかな?」
私も彼も、赤くなっているだろう、それは日暮れが近いからではない
互いに同じ思いを抱いていた事に、頬を染めているのだ
「もちろん、また遊びに来てくれると・・・私も嬉しい」
「そうか、よかった・・・また、近いうちに遊びに来るよ」
彼は笑っていた、私も笑った
彼が帰ってしまってまだ数十分と経っていない、それなのにもう彼がいつ来るのかが楽しみになっていた
「一目惚れ・・・なのかなぁ」
一人、小さい声で呟いてみた
たぶんそうだ、何で惚れたか解らないのだから、それ以外にいいようがない
まさか、自分が恋をするとは、予想だにしなかった
「・・・彼も、待ち遠しい気持ちなのかな?」
そうだと嬉しい
彼が・・・そういえば名前を聞いてなかったな、これはうっかりしていた
「次は、名前を聞かなくちゃな」
私の名前を誉めてくれた彼はどんな名前なのだろう
そう思うととても気になってしまう
「ああ、早く彼が来ないかな」
また、楽しみな理由がふえてしまったな
end
13スレ目>>32
庭先で元気に遊ぶ橙を見ていたら、外にいたころ聞いた歌を思い出した。
「黒猫のタンゴ タンゴ タンゴ 僕の……」
「誰が誰の恋人だと!?」
力いっぱい障子を開けて藍が飛び出してきた。
「……まだそこまで歌ってませんよ」
「そうか。
だがもしその先のとおりなら、私は二重の意味でお前を許さないぞ」
涙目なのは、親バカ半分、嫉妬半分らしい。
安心させるように、ふかふかの尻尾を手櫛で優しく梳く。
「心配しなくても、僕の恋人は黒い猫じゃなくて、金色の狐ですよ」
うpろだ1026
○○様
私、
八雲 藍は貴方をお慕い申し上げています。
紫様に連れていただき、初めて見た時より気になっておりまして、この度このようなお手紙を出させていただきました。
もし、よろしければ返事を頂きたいです。
「……」
顔を真っ赤にして手紙と睨み合うのは紫の式、藍である。
最近幻想郷にやってきた○○という人間に一目ぼれをしていたのである。
その○○に想いを伝える手段は何がいいだろうと、数時間考え込んでだした結論がこの手紙である。
そして、中身も数時間かけている。
何回か書き直して、結局はシンプル路線で行こうと決めてこんな内容にしたのである。
そして、見せるべくマヨヒガを発つ。
「どう、思ってくれるかな……」
道無き道を行き。
「邪魔……っ!」
道中の妖怪を薙ぎ。
「見えた……」
里に着いて。
「……」
彼の家の前に着いて。
「……やっぱり、私には紫様がいて、彼は人間で、それで……」
手の中の手紙は、硬く握られていて。
「……帰ろう」
届けられる事無く。
「……」
マヨヒガに帰ってきた藍は誰にも見つからないように自室へ入った。
少し落ち着いてから、未だ手に残る手紙を見て苦笑する。
それをそっと、棚の中に入れた。
さぁ、主が起きるまでに朝食を作らなければ。
「藍ったら、あんな所に何を隠したのかしら?」
藍が出て行った後、スキマから現れたのは紫である。
ばっちりだと思っていた隠蔽も、やはりこの妖怪には筒抜けだった。
部下のプライバシーなど無いらしく、音も立てずに棚を開ける。
「さーて御開帳ー」
楽しそうに中身を覗く。と、そこには。
「手紙……? 中に何が書いてあるのかしら」
封を切り、中を見る。
そこには、何回も書き直した後が見られる便箋が一枚。
「あらあらあらあら……。藍ったら何時の間に色気づいたのかしら……」
しかし、こんな内容の手紙がここにあると言うことは、
「渡せなかった、か。じゃあ、私が渡してあげましょう、っと」
それは心底楽しそうな顔をしながら、再びスキマに潜る紫であった。
「ふぅー。何故かいつにもまして紫様がニヤニヤ笑ってられたような……」
嫌な予感がする。足早に自室に向かって棚を開ける。
「な、い……?」
別の場所も探す。無い。
「! 紫様!」
時は既に遅いのだろう。
「今日は。どなたか、いらっしゃいますか?」
「!?」
有り得ない、彼の声。
彼はただの人間で、妖怪に襲われようものなら、死は免れない筈で、
「あ、藍? 彼、途中まで連れてきたから。それと、あの手紙も見せたわよー?」
言いたい事だけ言って主はスキマに逃げた。
「え? ちょ、紫様!?」
「あれ、誰も居ないんだろうか。すいませーん」
彼の声がマヨヒガに響く。
どうしよう……。
うpろだ1057
「藍ー、○○ー、今日は神社で宴会よー♪」
こういう時だけ妙にハイテンションになるスキマ妖怪、
八雲 紫。
俺が幻想郷に来てからこの人(?)と何故か同居する羽目になっている。
最初は訳が分からなかったが、今はまぁそれなりに楽しんでるから良しとしとく。
「今日『も』の間違いでしょう?全く・・・こういう時だけテンション高くなるんですから・・・なぁ○○?」
その紫さんの式神で九尾の狐、八雲 藍さん。
あんな主を持ってから、いろいろ気苦労が絶えないらしい。
…ぶっちゃけるが、正直に言って俺はこの藍さんが好きである。恋愛感情を抱いている。端的にいうとLikeじゃなくてLove。
でも俺はそれが言い出せないでいる。要はヘタレである。
「藍さんや紫さんはともかくとして、俺の身はどうなるんですか。至って普通の人間ですよ、酒だって強くない」
「ちびちびと飲んでれば良いさ。酔い潰れても私が何とかしてあげるから」
「そうですか・・・でももうあんな目には遭いたくないなぁ」
「むぅ・・・あれは私の目の不行き届きだ・・・済まないな」
「いやいや、もう過ぎたことですし。そこまで気にしなくても」
何があったかというと、前に行った宴会で魔理沙に無理やり日本酒の一升瓶を飲まされたことがあって、
そのせいで1週間ぐらい頭痛と吐き気に悩まされた事がある。
一種のトラウマ、という奴だ。
宴会自体は嫌いじゃないんだ。あの楽しい雰囲気の中に混ざれるのはいい事だと思ってるんだが・・・
「・・・そうか、なら良いんだが・・・よし、それじゃあ行くか」
「行きますか」
ちなみに橙は昼間に遊びすぎて疲れて寝ている。
俺達が神社についた頃にはそれはもう沢山の人妖で溢れかえっていた。
よくもまぁこれだけ集まるよな、といつも思う。
お前らそれだけ酒が好きか。ちくしょう、俺はもうあんな目に遭うのはいやだってのに―――と悪態をついてみてもしょうがない。
とりあえず連中に混ざる事にしよう。話はそれからだ。
「おー、○○じゃないか。久しぶりだな」
俺のトラウマを植え付けた張本人。普通じゃないっての・・・
「久しぶりなのは誰のせいだと思ってるんだ」
「悪い悪い、今日から気をつけるからさ」
「その言葉も聞き飽きた、全く反省の色が見えないのをどうにかしてくれっての」
「まぁそう言うなって。ほれ、駆けつけ一杯だ」
(今日は絶対に飲まされ無いようにしよう、あんな目に遭うのは嫌だ)
人妖宴会中 Now feasting...
「・・・うえぇぇぇ・・・」
畜生、気をつけようと思った結果がこれだよ・・・
「もうダウンかぁー?相変わらず弱いなぁお前はさぁー」
「妖怪は良いとして・・・魔理沙達人間が妖怪並に強いのは・・・いろいろとおかしいと思う・・・」
「はっはっは、ずっと続けてりゃあこれぐらいにはなるぜー?」
「なりたくねぇ・・・」
心の底からそう思う。こいつみたいにはなりたくない。
人妖未だに宴会中 Still feasting...
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(返事がない、失神してるようだ」
「おぉ~い、生きてるかぁ~?そんなんじゃあこの先生きのこれないぜぇ~?」
「魔理沙・・・また酔い潰したのね・・・?」
「おぉ~、霊夢かぁ~。○○が弱いのが悪いのさぁ~♪」
「全く、あんたもベロベロに酔ってるじゃない・・・」
「こんなん酔ってるうちに入んないZE~♪」
「はいはい、さっさと家に帰った帰った。もうお開きよ」
「うぇ~い・・・」
「・・・ふぅ、人一人帰すのも楽じゃないわ。さて、後は○○だけど・・・」
「おーい、霊夢ー?」
「あら、藍じゃない。どうしたの?」
「そこで倒れてる○○を引き取りに来たんだよ。全く、魔理沙も加減を知らないな・・・」
「誰にでも容赦なく飲ませるからねぇ・・・まぁ相手にする○○も○○だわ」
「今度は魔理沙を相手にさせないようにしておこうか」
「よろしくね」
「・・・よい、しょ・・・っと。じゃあ、またな」
「えぇ、またね」
「・・・・・・・・・・・・ぅぇ」
どれ位経っただろうか、いつの間にか体勢が変わっていた。
「・・・気がついたか、○○」
「・・・ら、藍・・・さん・・・?」
まだ意識がぼんやりしている。
「今度から魔理沙を相手にさせないようにしておくさ。それなら大丈夫だろう」
「・・・毎回毎回・・・本当にすいません・・・迷惑かけて」
「いいってことさ。好きでこうしてるわけだし」
…こうしてる?
どういうこと?
「・・・えーっと・・・藍さん・・・?」
「ん、どうした?」
「俺は今、どういう格好・・・じゃなくって、どういう体勢になってるんですか」
「あぁ、そう言えば○○が起きる時は大抵家についてからだったな。それまでは私がおぶってるよ」
「そ、そーですかー・・・って、え?」
…おぶってる?
それってつまり
「おんぶされてる・・・ってこと?」
「まぁ、そういうことだ」
何だか急に目が覚めました。
「すす、す、すいません!も、もう大丈夫ですから、降ろしてください!」
「ダメ。今の状態じゃ歩くことも出来ない。それに言っただろう?私が好きでこうしてるって」
「で、でも」
「素直に従いなよ。マヨヒガにつくまで寝てたって良いさ」
「・・・そうですか。じゃあお言葉に甘えるとします・・・」
「うん、それでいい」
…なんか、こうしてると藍さんの背中ってすごい安心するというか落ち着くというか・・・
「そろそろ飛んでくけど、いいか―――」
「・・・zzz」
「―――って寝ちゃったか・・・っと、それじゃあ飛んでくかな」
「・・・・・・・・・・ぅぇぇ」
いつの間にか寝ていたらしい。急に目が覚めたはずだったんだが・・・
辺りを見回すと見慣れた部屋。
どうやら家に着いていたらしい。
(・・・何と言うか、夢を見ている気分だ・・・)
妙に浮遊感がある。まだ酔ってるのか、俺は・・・
「目が覚めたか、○○」
どうやら横に藍さんがいたらしい。
「ええ、何とか・・・頭が痛いですが」
「それなら・・・少し、外に出ないか?夜風に当たるのは酔い醒ましにはもってこいだ」
「じゃあ、そうします・・・」
「ふぅ、ちょうどいい冷たさだ。気分が良い」
「・・・藍さん」
「ん?どうした、急に」
「言うべきか言うまいか迷っていた事があったんですが・・・言おうと思います」
「私にか?・・・何だ?」
「・・・俺、実は藍さんのこと・・・好きなんです」
…言っちゃった。
「・・・○○?」
「前から・・・いや、最初に会ってからずっと、好きでした。一目ぼれ、って奴です」
「・・・だが、私は」
「あなたは紫さんの式神でもあるし、それ以前妖怪でもある。人間と妖怪は相容れない、って紫さんに聞かされた事もありました」
「・・・だったら」
「でも俺はそんなのとは関係無しに・・・あなたが好きなんです」
「○○・・・」
「・・・抱きしめても、いいですか。あなたを・・・強く」
「・・・ああ。好きなだけ」
「ありがとう・・・ございます・・・っ」
「・・・っ!」
…多分、今度こそ目が覚めた。
辺りを見回すと、やっぱり見慣れた自分の部屋。
(・・・なんて夢を見てたんだ?俺は・・・)
夢の中で俺は、藍さんに俺がずっと思っていた事をカミングアウトしていた。
とんでもない事だと、俺は頭を横に振る。
「・・・○○」
ふと、声が聞こえた。
「うえっ・・・ら、藍さん・・・!?」
「・・・○○、お前・・・私の事を」
「も、ももももしかして・・・言っちゃってましたか・・・?」
「・・・いや、紫様が」
「紫さんが・・・?」
藍さんの話によれば。
紫さんが『何となく』開けたスキマの先が俺がさっき見ていた夢の中だったと言う。
これは面白そうだと紫さんは藍さんにそのスキマの中を覗かせて。
俺の気持ちに気付いた・・・というか、気付かされた藍さんは混乱しながらも俺の部屋に来て・・・
今に至るわけだ。
「・・・何と言うか、バレちゃいましたね。あはは・・・」
「・・・○○」
半ば諦めの気分が混ざったような声で俺は話す。
「本当にすいません、また迷惑かけちゃいましたね」
「・・・○○っ」
何も悪くないはずなのに、つい謝ってしまう。
俺の悪い癖。
「いつもいろいろしてもらってばっかりで、藍さんには何もしてあげられなくて」
「○○っ!!」
「・・・っ!」
どうにかして話を変えようとしても、藍さんがそれを止める。
「・・・どうして」
「・・・え?」
「・・・どうして・・・言わなかったんだ」
「っ・・・それは・・・夢の中で、俺は『あなたは紫さんの式神でもあるし、それ以前妖怪でもある。人間と妖怪は相容れない』って言いましたよね」
「・・・」
「その後に俺は『そんなのとは関係無しに・・・あなたが好きなんです』とも言いました」
「・・・ああ」
「・・・でも俺は、夢の中の俺とは違った。夢の中の俺は結局理想で、現実の俺は『人間と妖怪は相容れない』って言葉に縛られて言い出せなかった。
言おうと思っても・・・心のどこかで『人間と妖怪は相容れない』って思ってて、やっぱり言い出せなくなっていた」
「・・・」
思いつきなんかじゃない、ありのままをどうにか言葉にする。
「それで、時が経つにつれて・・・この想いを心の中に封じるようになった。そんなの、ただ辛くなるだけだって、気付いてたのに・・・」
それがずっと前から出来てたら、どんなに楽だったろうか。
「いつも通り、紫さんにあれこれ言われたり、橙と一緒に居たりする藍さんが好きで・・・そこに俺が入ったら、そういった姿が見られなくなるんじゃないか・・・そう思いこんで、ずっとこの想いを封じていた」
俺は、大馬鹿者だ・・・
「きっと、俺は馬鹿だったんです。言いたいんならすぐに言えば良いのに・・・余計な事を考えて、自分の思った事をはっきりと言えない・・・馬鹿野郎だったんです」
そこまで言い切った瞬間、急に体が藍さんの方へ引き寄せられて。
「ああ・・・○○・・・お前は、大馬鹿者だよ・・・人の気持ちも考えないで・・・勝手に自分だけで突っ走って・・・大馬鹿者だよ・・・お前は・・・っ」
気がつくと、俺は藍さんに抱きしめられていた。
「藍、さん・・・?」
「何も、お前だけじゃないんだぞ・・・?この鈍感男め・・・っ」
「な、何の事ですか・・・」
「だから言っただろう・・・『○○をおぶっているのは私が好きでやってることだ』って・・・」
「・・・それって」
…藍さん、何か忘れてるような・・・
「マヨヒガに帰るだけだったら紫様のスキマを使えばすぐに帰れるだろう・・・?」
あぁ、そうだ。
藍さんはきっと忘れてると思うから・・・
「・・・藍さん、一つ忘れてるようだから言いますが」
「・・・何だ?」
「藍さんがいつも俺をおぶって帰るのを俺が知ったのは今日です。それまでは本当に気を失ってて、いつの間にかここに帰っていた・・・って思ってたんですよ」
藍さんの腕の拘束が、少し緩んだ気がした。
「・・・そうだったか?」
「そうですよ」
そうだ。
俺はここで目が覚めるまでずっと気を失っていた。
「・・・そう言うのは思っても口に出さないでくれ。こう・・・雰囲気とかあるだろう」
「はは、そうですね。すいません」
イマイチ締まりが悪い、微妙な空気になってしまった。
空気が読めない。俺の性格の悪さである。
でも、今回ばかりは何とかなりそうだ。
なぜなら・・・
「あの、藍さん・・・」
「何だ?」
「・・・抱きしめても、いいですか。あなたを・・・強く」
「・・・ああ。好きなだけ」
「ありがとう・・・ございます・・・っ」
夢の続きを、今ここで始める事が出来るからだ。
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何だか途中からわけの分からない話になって申し訳ないorz
でも俺は藍様が好きなんだ。どうかそれだけは・・・
うpろだ1140
昼下がり、藍は買い物の為に里に訪れていた。
幾つもの店がずらりと並ぶ商店街で、既に彼女は里の守護者と人気を二分する、ちょっとしたアイドルだった。
大根一本買っただけで、あれやこれやとおまけと称し、過剰すぎるサービスをつけようとする八百屋の主人の耳を引っ張る細君をやんわりと宥めて店を出る。
なんだかんだできっちり牛蒡はおまけして貰った。愛する家族の胃袋と家計は私が守る。八雲の狐は良い母さん。
その後も何軒か店を回りあらかた用事を済ませ、さて、いざ帰還となったその折、唐突に空腹感が彼女を襲った。
昼はきっちりと済ませてはいるがそこはそれ。短針も水平に傾く時刻だ。小腹が空くのは生物の道理。
ふと目に付いたのは一軒の蕎麦屋。
覗いてみるとどうも繁盛していないようだ。客の気配は無く、カウンターの席には店主が一人。退屈そうに広げた新聞を眺めて、はー、ほー。と意味無さ気に零していた。
そんな店内の有様を他所に彼女の研ぎ澄まされた九尾の感覚は何かを必死に訴えかけていた。
この店には何かある。
確信にも似た直感に身を任せ、意を決して暖簾をくぐる。店主の親父がこちらに気付き、らっしゃい。と一言告げる。
「きつねそばを頼む」
「はいよ」
出された茶を啜りながら待つ事暫し、程なくして注文の品がやってきた。
目の前には、ほこほこと湯気を立てるきつねそば。薬味のネギ、辛子はお好みで。
見た目は至って普通のきつねそばだ。だが、事此処に至って藍は相手を侮る様な真似はしない。
手を合わせて、いただきます。丼の中央に鎮座する魅惑の油揚げを、備え付けの割り箸を使って掴み上げる。麺? ツユ? そんなもんは後回しだ。
たっぷりツユを含んだ御揚げに迷う事無く食らいつく。これぞテンコーまっしぐら。
その時、藍に衝撃が走る。
ジューシーの一言では決して表現しきれないこの厚みはどうだ。香ばしい油の風味。上品でほのかな甘み。吸い込んだツユも手伝って絶妙な旨みのバランスを見事に実現させている。
「あむっ……んぅ、はぁ……」
もはや他の物は目に入らない。ただただ、口内を蹂躙していく揚げの存在だけがこの上なく愛おしい。
「じゅ、うぅぅぅ……ぷは」
今度は噛むのではなく、その瑞々しい唇をふんだんに使って揚げに染み込んだツユを吸い上げていく。
「あ、はぁ……んふ、美味しい」
一心不乱にきつねそばを味わう藍を見て何故か前のめりになる蕎麦屋の主人。勿論、表現に不純な所は一切ございません。
綺麗に完食した後しばらく幸せを噛み締めるように緩んだ顔で余韻に浸っていたが、やがて凛とした表情を取り戻し、腰を上げる。
「御馳走になった。主人、勘定を頼む」
しかし、その言葉に親父は静かに首を横に振り、ポツリと。
「お代なんかイラネェよ」
面食らったようにきょとんとする藍。
「しかし、それでは」
「かまわねェよ。こっちもいいモン見せてもらった。ありがとよ」
藍は尚も納得がいかない様だったが、ここまで言われては頷くしかない。
「そう仰るのなら……」
「ああ、毎度ありだ」
店主の声に送り出され店を出て、ふと晴れ渡る空を見上げてひとりごちる。
今度は橙と紫様も連れて来るとしよう。
「らっしゃい! おや、妖怪のお客さんとは珍しいね。何を握りやしょうか」
「あの、えと……河童巻き」
最終更新:2010年06月01日 00:30