紫3
2スレ目 >>241
「こんなところにいたのね」
美しい花畑の真ん中で、綺麗な、女性の声が聞こえた。
「君か…」
日傘を差した金色の髪の女性が、寝転んだ俺の隣にいた。
「花畑の真ん中でお昼寝かしら」
「…君じゃないんだから、そんなに寝たりはしないよ」
「あら、失礼ね」
彼女―――八雲紫は少し拗ねたような口調で言った。
万物の境界を操る能力を持ち、この幻想郷でトップに入る程の力を持つ大妖怪。
姿は女神のように美しく、心は女神のように残酷で気紛れな女性だ。
「あら、女神だなんて。嬉しいこと言ってくれるじゃない」
「心を読むなよ…まぁ女神と言っても、君の場合はカーリーかな」
「…本当に失礼な人ね、貴方は」
心なしか、そんなことを言いつつも彼女は笑っているように見えた。
この花畑に勝るとも劣らない、美しい笑顔。
その笑顔につられて自分も少し笑ってしまう。
「お隣、宜しいかしら?」
別に断る理由も無い、と言うと彼女は俺の隣に腰を下ろした。
「………」
「………」
二人の間に言葉は無く、ただただ、静かな時が流れる。
「…ここにいると、君と初めて出会った時を思い出す」
幾つ時が過ぎたか分からなくなった頃、俺の口が無意識に言葉を発した。
彼女は表情を崩さず、俺の言葉を聞いている。
俺がいた世界での出来事を―――
俺は兵士として、戦士として戦場を走っていた。
地には鋼鉄の馬、空には鋼鉄の鳥、道には戦士が走っている。
仲間は皆息絶え、俺ひとりとなっていた。
迫り来るは死神の列、抗う術は我が手にはない。
けれども立ち向かう。
母国を救うために散った仲間の為にも立ち向かう。
絶望が心を侵食しようとも、小さな希望で絶望を討ち、立ち向かう。
震える身体に鞭を打ち死神に立ち向かおうとした時、目の前に光が広がり、気づくと俺は花畑に佇んでいた。
そして目の前に、彼女がいた。
彼女は呟く―――『ようこそ、幻想郷へ』と。
その日から俺の人生は変わった。
彼女の玩具にされ振り回される日々、童話でしか聞かなかった者達の存在と触れ合った日々。
最初の頃は随分と戸惑ったが、今は慣れ毎日が楽しく心から笑っていた。
楽しくて、楽しくて、楽し過ぎたから、亡き仲間のことを忘れていた。
そのことに気づいた日から、心から笑えなくなった。
『仲間は血濡れの大地で泣いているのに!俺はこんな綺麗な世界で笑っている!』
苦悩が心を侵食していく。
『皆で生きて国に帰ろうという約束を…約束を交わした仲間達のことを、俺は、忘れていた!』
答えを見つけるのは簡単だった。
けど、それを口にすると今の生活が終わってしまうのが怖くて言えなかった。
けど、それを心に閉まったまま生きていくことの方が、もっと怖かった。
「なぁ、紫」
だから言おう。
「俺を」
約束を果たす為に。
「あの戦場に戻してくれ」
彼女は表情を崩さず
「そう…」
と呟いた。
空中に隙間が現れ、中から銃やリュックが落ちてきた。
俺は立ち上がり、それらを身に着けていく。
彼女は、表情を崩さない。
「止めるかと思った」
今の気持ちを口に出す。
「貴方が時間をかけて考え、決めたことだもの。貴方は頑固だから、殺されたって決めたことを貫くわ」
銃を手にすると共に、目の前に隙間が出来た。
「そうだ、聞きたいことがあるんだ」
最後に彼女の気持ちを聞きたかった。
「何故俺をここに呼んだんだ?」
彼女は、表情を崩さない。
「綺麗だったから…」
彼女の言葉に、俺の目が点になる。
「傷つき、倒れても、立ち上がって前に進もうとする生命はとても綺麗な光を放つの。
あの時の貴方の生命はとても綺麗に光っていた。
今まで見た中で、一番にね。
それが消えてしまうのは勿体ないと思った。
それで気がついたら、ね」
つまり、無意識のうちに隙間を開いてこちらに呼んでいた、ということだ。
「君にしては珍しいな。無意識に、なんてさ」
「それ程綺麗だったのよ。貴方の生命の輝きは」
彼女は、表情を崩さない。
「…じゃあ、俺は行くよ。今まで有難う。とても楽しかったよ」
彼女の姿を、胸に深く、深く刻む。
隙間に歩み寄り、中に入る。
「戦争が終わってさ!」
隙間が閉まりつつある中、思いついた。
「俺が国に帰った時さ」
彼女を忘れぬよう、彼女と約束を交わそうと思った。
「もし良かったら、俺の世界に来てくれよ。その時は色んなところに連れてって、色んなものを紫に見せたいんだ」
彼女は、笑った。
「それは、楽しみね」
何よりも綺麗な笑顔。
まさしく女神の微笑み―――
気がつくとそこは、あの戦場だった。
何一つ変わりない、あの戦場だった。
「…ただいま」
不思議と穏やかだった。
爆発音も銃声も軍靴の音も、何も怖くなかった。
今の俺は死ぬことは無い、とさえ思えてしまう程に絶望は消え、希望に満ち溢れていた。
俺は立ち上がり、走り出した。
なに、俺は死なない。
皆との約束を、紫と約束を果たすまでは―――
「ああ、ここにいらしたんですか」
美しい花畑の真ん中で、綺麗な、女性の声が聞こえる。
「あら、藍」
九尾の狐の尾をもつ女性が、腰を下ろした私の隣にいた。
「あら、じゃないですよ。さっきまで眠っていたのに忽然と消えてしまって。せめて出かけるなら一声かけてくださいよ」
彼女が心底疲れたような口調で言う。
「あらあら、随分と寂しい思いをさせてしまったようね」
「なっ!? べ、別に寂しくなんかはありませんでした!」
彼女―――私の式神の八雲藍は顔を真っ赤にさせて反論する。
そんな反応が可笑しくて、つい笑ってしまった。
すると藍は諦めたかのように溜息を漏らす。
「そう言えば、よくここにいますけど、何かあるんですか?」
藍はいつか聞こうと思っていた疑問を口にした。
「…貴方が私の式神になる前にちょっとしたことがあってね。ここは、その思い出の場所なのよ」
そんな言葉を聞いて、藍の目が点になる。
その反応はもっともだ。
幾年の時を生きる大妖怪であるこの八雲紫が、『思い出』という言葉を口にするなんて、私自身も驚いている。
「…さぁ、帰りましょう。お腹が空いたわ」
そんな驚きを藍に悟らせぬよう、家に帰ろうと歩き出す。
「あっ、待ってくださいよ、紫様~」
花々は生命を謳歌するように咲き乱れ、風は頬を撫でるように優しく吹き抜ける。
そんな美しいこの場所を、あの人を感じることが出来るこの場所を後にする。
「まったく、いつまで待たせるのかしら。
こんなに女性を待たせるなんて。
本当、失礼な人ね―――」
「大丈夫…俺は…俺は…死には…しない…」
◎チラシの裏
傷つき、倒れても、立ち上がって前に進もうとする生命はとても綺麗な光を放つという文を書きたかったのです。
一途な紫様と、哀苦しい愛を書きたかったのです。
立ち向かう男が書きたかったのです。
男が妖忌に輪廻転生する、という事を考えていましたがやめました。
有難う御座いました。
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>>147
時よとまれ、お前は美しい!
私の地上の日々の痕跡は
永劫へと滅びはしない
その幸せの予感のうちに
今味わうぞ、この至高の瞬間を
私は放浪していた
未だ我が従者たる存在無き頃、私は目的も無く、ただひたすらに無為な刻を過ごしていた
スキマから聞こえる声のまま、気まま自在に世界を回り、遊び、人に干渉し、殺し、食らった
そして
それは何時の頃だったろうか
私は声を聞いた
「神だと?、神が何をしてくれる?愛や青春や信仰を返してくれるのか!?」
それは一人の老爺の叫び
「無だ、休みなく考えた挙げ句、神も自然も何も教えてくれぬ、私はたった一人でこの世の未練さえ断ち切れぬ、分からない、無だ!」
神に絶望し、命の未練すら捨てきれずなおも知を求める爺
「悪魔よ!」
…悪魔に心を売るか…面白い
「私は此処に居ますよ」
まるで当然の如く、私は老爺の前に降り立つ
「何が欲しい?何ができる?何でも、金?名誉?権力?青春が欲しい!恋、快楽、情熱、本能、若さをくれ!お安い御用です、青春とやらを差し上げましょう。
但し条件が・・・、この世では私が、地獄ではあなたが奉仕するということで…」
私は矜持として、己が力を以ってこの男の願いを叶えてやることにした
そして、若返った男と私は世界を巡った
ワルプルギスの魔女と杯を交わし
世界の秩序を作り
あの世の女神を連れ帰り
そして女を捨て、見殺した
そして幾年月
いつしか私はこの男に不思議な感情が芽生えた
もっと巡りたい
もっと一緒になりたい
彼を■■■■■■たい…
そして…私はそれが『愛している』だと理解した
しかし
「時よとまれ、お前は美しい!」
その言葉を…言ったら魂を差し出すと言った言葉を言葉を吐いた
だから殺した
――殺したくなどなかった――
だから食らった
――もっと一緒に居たかった――
そして魂を奪った
――私は――私―
あぁ、なんて感じだろうか
――あぁ…私は…――
そうか…ただ愛していたのではない
――私は彼を――
――『殺したいほど愛していた』のだ――
「ま…紫さま…!」
式の声で目が覚める
私は…そう、冬になったから冬眠していたのだった
「あら…もう春かしら?」
「はい…丁度冥界の桜も満開ですよ」
そうだ、このところ毎年冥界の桜を寝過ごしていたのだ
「そうね…これから運動も兼ねて冥界まで花見にでも行きましょうか」
「はい」
…何か懐かしい夢を見ていた気もするが…まぁいい、もう半分くらいあやふやだ
それに過ぎ去ったことなど…もう今の私には関係の無いことなのだから…
過ぎ去っただと! くだらない! なぜ過ぎ去ったなどと?
過ぎ去るも何も無いも 所詮は同じことよ!
われら被造物を無へと引きさらう永遠の創造
そんなもの なんになる?
過ぎ去っただと! それになんの意味がある?
何も無かったのと同じことではないか
何かがあったかのような 堂々巡りの空回り
永遠の無の方がよっぽどましというものだ
あとがき
…ごめんなさい。
私にはこそばゆい展開は無理でしたorz
短い上にえらく壊れてる…
悪魔よ…私に萌えの文章を書ける力をください…
もっと光を…
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>>148
八雲家に居候して三ヶ月。
俺は居候して初めての危機に陥っていた。
「ごほっごほっ、あーだるい」
困った事に風邪を引いてしまった。
しかも家事担当の八雲家NO2の八雲藍が居ない時にである。
「紫さんがご飯作ると言ってたが、大丈夫かな…」
襖の向こうで調理しているであろう、その後ろ姿を想像しため息をつく。
この三ヶ月間、彼女が台所に立つ姿を見た事が無い。
昔は藍さんに家事を教えたそうだが、今はどうなのだろうか。
「お待たせ、久しぶりだから少し時間が掛かったわ」
料理を載せた盆を持って紫さんが現れた、盆の上には美味しそうなお粥が乗っている。
だが安心は出来ない、肝心の味が分からないから…
何はともあれ、作ってくれたことに感謝の意を伝えないとな。
「紫や、いつもすまないねぇ。お前には苦労をかけっぱなしで、ごほっごほっ」
病人は病人らしく振舞うべしとの計算結果から導き出された結果がこれだ!
さぁ俺の見事な演技に合わせてくれ。
「あら急に老けたわね。人間病気になると弱気になるのかしら」
合わせてくれなかった…
「ほらお粥を作ってあげたから、食べさせてあげる」
演技に合わせてくれなかったショックを受けている脳が、その言葉を理解したのはお粥が口元に運ばれたときだった。
「食べさせてくれる!?熱っ」
そりゃまぁ出来たてのお粥は熱いわけで、当然熱いものを口に入れればこうなるわけである。
しばらく熱さに苦しむが何とか食べる、お粥の味は美味いものであった。
「味はどうかしら?」
心配そうに顔を覗き込んでくる、紫さんの髪から甘い匂いがしてドキッとしたのは内緒だ。
「美味しいですよ、思わず『ハッピーうれピーよろピくねー』ってぐらい美味しいです」
「良かったわ、久しぶりだから心配してたのよ」
本当に心配していたのだろう、紫さんは一安心という感じでため息をつく。
その顔を見ながら、美人に飯を作ってもらえるなんて最高だなと思っていた。
しばらく紫さんの顔を眺める。
「ふふ、私の顔に何かついているかしら?」
しまった、顔を見ているのに気付かれた!
「料理上手だなと感心してただけですよ」
とっさに誤魔化す、見とれていたなんて言えやしない。
「そういえばあなた、恋人とかは?」
何でそんなことを聞くのだろうと思いながら…
「残念ながら、美人の恋人募集中」
自分で言ってて寂しくなった。
「そう意外ね。恋人の所へ帰そうかと思ったけど、ふふふ、なら安心ね」
辺りの気温が下がり、紫さんは妖しく笑う。
「ここに居てもらおうかしら、ねぇ○○?」
さっきまでの笑顔が嘘のような冷たい笑顔に変化する。
でもどこか悲しそうな気がする、答えが欲しいと叫んでいる気がする。
なら答えないと駄目だろう、駄目だったらその時は諦めよう。
「占いなんか信じていなかった、年上に夢中になるって結果が出てた」
「だから…どうしたのかしら」
「今はその占いは当たってるなと思う、ずいぶんと年上だけど」
「え…」
目を丸くする紫さん。
「それに帰りたいならとっくの昔に言ってます」
「ふふふ、あはは、私ったらなんて馬鹿なのかしら。そんなことにも気付かないなんて」
先ほどまでの冷たい空気が嘘のように消える。
「ほんと、ごめんなさいね」
そう言って涙混じりの微笑みを見せる。
「でも告白はしてくれないのかしら?」
少し物足りなさそうに呟く。
「まったく病人に無理させないでください」
今までのやり取りで忘れていたが、俺は本来寝ている病人なんだ。
思い出した瞬間頭がふらついてくる。
「告白は…病気が治っ…たときのお楽しみ……ということで…お休みなさい」
そう言って布団を頭からかぶる。
「楽しみにしているわ。お休みなさい○○」
「これからが大変だな」
部屋から紫さんが出ていったのを確認すると、布団から頭を出す。
自分でも大変な事をしたと思っている、告白とは…
「やるだけやってみるか、まずは風邪を治さないと…」
これから待っている事に期待半分不安半分で眠りにつく。
***************
後書き
読んでいただき、誠に有難うございます。
とりあえず前回の続きと思いきや続きになってねぇeeeeeeeeeeee!!
正直スマンカッタ。
次も頑張るさ。
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>>332
「紫・・・」
「何?」
「愛してるぜ」
「知ってるわよ」
こんな夢を見た
>>451
「――うん…あれ?ここどこ?」
目を覚ますとそこは綺麗な和室であった。
自分の周りをキョロキョロしながら状況を整理しようとする。
昨日の夜コンビニに買出しに行って…
その途中でいままで都会の中を歩いていたのに突然景色が変わってしまったんだ。
かなり深そうな森だったかな…そして森の中を暫く歩いて…
その後どうなったのかな…なんでこんなとこに居るんだろ
ダメだな…うまく整理しようにもできないな。
考えていても仕方が無いからとりあえず、外出てみよう。
いつまでも布団の中に居ても仕方ないので、立ち上がり襖を開けて外へ行くことにした。
――ガラ
「へ?」
襖に手を掛けようとした時、狐の耳を付けた女性が襖を開けた。
「うわ!!」
俺はその女性が現実ではありえない格好だったので、驚きその場に腰を落とす。
「いきなり驚くとは失礼な人間だな」
その狐の女性は俺に向かって文句の言葉を漏らす。
俺は何も喋れずにその女性を見つめることしかできなかった。
「目が覚めたようだな。お前の分も夕飯用意してあるが食べるか?」
俺が驚いているのを無視して女性は淡々と話しかけてくる。
「夕飯?」
「そうだ。腹は空いてないかと聞いているのだ」
言われてみれば腹は減っているけどなんか怪しすぎるな。
俺はそう思いここがどこなのかいま疑問に思っていることを聞いた。
「あの、ここは?」
「質問なら後で紫様が答えてくれる」
質問はあっさり却下されてしまった。
それより紫様って誰だろ…
「紫様って誰ですか?」
「質問は後にしろと言っているのに…紫様はお前をここに連れてきた方だ」
女性はため息を吐きながら紫様のことを教えてくれた。
俺をここまで連れてきたか…どういうことだか、まったくわからなくなってきた。
「その紫様ってどこに?」
「居間で夕飯を食べている所だ。紫様がお前も呼んでこいってことで来たのだが」
とにかく今はその紫様に会うしかなさそうだな
「あの、夕飯いただきます」
「わかった」
女性は歩き始めた。俺も立ち上がりその後を追う。
その途中外が見えた。すでに真っ暗で周りには山や森が広がっている。
まるで夢の中にでもいるような感覚になってくる。
「…いてて」
頬をつねってみても痛いだけだった。
夢なんかじゃないんだな
「着いたぞ」
考え事をしていると狐の女性に声を掛けられる。どうやら居間に着いたようだな。
「お連れしました」
狐の女性に続いて居間に入る。
居間にはちゃぶ台があり、二人がこちらを見ていた。
一人は猫耳で幼い感じの女の子で、もう一人は金髪で大人な感じであり、しかもかなりの美人だ。
「お前の場所はそこだ」
狐の女性に座る場所を指示されてそこに座る。
うーん…視線が気になるな。なにか話さないと…
すると右隣に座っていた金髪の女性が声を掛けてくれた。
「遠慮しないで食べていいのよ」
「あ、はい。いただきます」
狐の女性も左隣に座り、四人で夕飯を食べる。
こんな状況でも飯を食べてしまう俺は素直なのか、アホなのか…
「ご馳走様でした」
俺は出された食事を食べ終えた。料理は和食でかなりうまい。
他の三人も夕飯を食べ終える。
そして狐の女性が食器を片付け始め、俺はどうしていいか分からず座っている。
すると隣に居た金髪の女性が話しかけてくる。
「食事はどうだった?」
「とてもおいしかったです」
「そう、それならよかったわ」
金髪の女性は笑みを浮かべる。
俺はここに連れてきた紫様について聞いてみた。
「あの、貴女が紫様ですか?」
「そうよ。私は八雲紫」
この人が紫様か…すると向かいに座っていた猫耳の女の子がこちらに話しかける。
「私は橙っていうの」
猫耳の女の子は元気に自己紹介をしてくれた。そして狐の女性もこちらに戻ってくる。
「私は八雲藍」
狐の女性も自己紹介をしてくれた。なんか冷たい気がするな…元々こういう人なのかな…
俺も自己紹介しないと。
「俺は―」
「家畜だな」
自己紹介しようとすると藍さんが口をはさむ。
「え?いや家畜って」
俺は戸惑って藍さんに反論するが紫さんが間に入る。
「それより、聞きたいことあるんじゃないの?」
お茶を飲みながら紫さんが言う。
この際名前はいいかと思い、俺は質問を始める。
「なんで俺はここに?それにここはどこですか?」
「まず、ここは幻想郷。あなたの住んでいた世界とは、また違う世界よ」
紫さんの説明を受けてもよく分からなかった。
「待ってください。そもそもなんでこの世界に俺がいるんですか?」
「それは、私が連れてきちゃったって言うのが正しいかしら」
笑みを絶やさず紫さんは説明する。
連れてきちゃったってどういうことだ…
「あの、連れてきちゃったっていまいち意味がわからないんですけど」
紫さんは少し考え込んでからこちらに話始める。
「そうね…偶然ってことで納得してくれる?」
「へ?」
「偶然貴方は神隠しにあった。それでこの世界に来たってこと」
「はぁ…それで元の世界へは帰れないんですか?」
俺はため息混じりに紫さんに聞いた。
「帰れなくもないけど、暫くここで暮すことになるわよ」
ここで暮らすか…でもうまい料理も出るし、三人とも美人だしな…
「じゃあ、暫くお世話になろうかな」
下心丸出しで俺は答える。
「そう。貴方お酒は飲める?」
紫さんは相変わらずニコニコしながら聞いてくる。
「はい、少しぐらい」
「それじゃあ、飲みましょう」
そして俺は紫さん達とお酒を飲んだ。
途中"私たちは妖怪よ"とかなり重要そうなことを言い出す。が姿からして納得する俺もいた。
そしてこの幻想郷のことを詳しく話してくれた。
俺が住んでいた世界から隔離された世界であること
ここは、マヨヒガという場所だと…
「―うん…朝か」
昨日は結局紫さんにかなり飲まされてしまった。
気がつくと布団の中。誰かがここまで運んでくれたのかな。
「起きているな、朝食できているぞ」
襖が開き、藍さんは朝食を用意してくれたことを告げる。
起きなきゃな…でも二度寝したいな
「おい、寝るな!」
「zzz…」
俺はもう寝始めていた。藍さんすません。
「げふっ!」
藍さんが布団に包まっている俺を蹴り上げる。
骨折れたかと思うほど痛い。
「起きたな。早く来るのだぞ」
藍さんは居間に向かっていく。
俺は情けなく、立ち上がるのに時間が掛かった。あまりの痛さゆえ…
居間に向かうと橙がすでに食事を終えているところだった。
「あ!遅いよ!」
橙に怒られてしまった。でもそんな橙もかわいいな…
―ギロリ
いま寒気がしたような…げっ!
藍さんを見るとこちらを睨みつけていた。寒気の正体はこれか…
俺はそそくさと自分の場所に座った。
「ご馳走様でした。あと藍さん朝はすいません」
朝食を食べ終えて藍さんに朝のことを謝った。
食べている最中もこちらに嫌がらせをしてきたので、朝のことだけでも謝ることにした。
「二度寝しようとしたら"また"だからな」
またが強調される。あれをもう一発は勘弁して欲しいので藍さんの言葉に頷く。
それを見た藍さんは、三人分の食器を片付け始める。
三人分?紫さん居ないのかな…
「ねぇねぇ」
考え事をしていると橙がこちらに話しかけてきた。
「どうしたの?」
「外で遊ぼ!」
橙からお誘いがきた。特に断る理由もないからOKしようとする。
―ギロリ
ま、またか…振り返らなくても分かるこの寒気。
このまま遊ぶと死ぬかもしれないな…
居候の身だし藍さんの手伝いしたほうがいいかな。
「ごめんね、橙」
「ダメなの?」
遊ぶのを断ると橙は落ち込み、猫耳も垂れる。
ごめんよ橙。遊んだら藍さんに殺されそうなんだよ…
心の中で橙に謝る。
―ギロリ
な、なぜだ!また寒気が走る。どういうことだ…遊んでもダメ、遊ばなくてもダメ。
どうしろって言うんだ!っと心の中で叫んだ。
「あ、橙。外で遊ぼうか」
俺は多少の恐怖を覚悟して落ち込んでいた橙に声を掛ける。
「え、ほんと?」
「う、うん」
どうやら選択肢は合っているみたいだな。寒気が消えた。
「それじゃあ、早く行こう!」
橙は立ち上がりこちらの手を引っ張る。
俺もその場を立ち上がり橙に黙って引っ張られる。
なんかこういうのもいいな…
その後橙と森で遊び(っていうか散歩かな)そして外の世界のことやいろいろな話をしたりした。
「そろそろお昼だし家に戻ろう」
俺は腹が減って死にそうなので橙に呼びかけた。
「うん!お昼ご飯食べたらまた遊ぼうね」
橙はこちらに振り返り素直に同意してくれた。
お昼からもまた遊ぼうと誘われる。俺もできれば遊びたいよ…
「はは、そうだね」
軽く返事をし、二人で家に戻った。
「ご馳走様でした」
帰ってきてからすぐに橙と藍さんで昼食を食べ始めた。
俺は腹がかなり減っていたのですぐに食べ終わった。
そして二人も昼食を食べ終える。
「そういえば、紫さんは?」
俺は朝も昼も姿が見えない紫さんのことを藍さんに聞いた。
「紫様ならいまお休みになっている」
「紫様は夜しか起きないんだよ」
橙が補足説明をしてくれた。
話せる時は夜だけか…正直俺は紫さんに惚れていた。
紫さんに会いたいと朝から考えていたのに残念だな…
「ねぇねぇ」
考え事をしていると橙がこちらに話しかける。そっか遊ぶ約束したんだっけ
「お昼も遊ぶんだったよね」
「うん!」
橙はうれしそうに返事をする。隣でお茶を飲んでいる藍さんが少し恐い。
俺はその場を立ち上がり外に出ようとする。
「橙、こいつと"弾幕ごっこ"してあげなさい」
藍さんが口を開く。"弾幕ごっこ"ってなんだ?どんな遊びなのか予測ができない。
ごっこって言うぐらいだから遊びみたいだけど…
「藍様、人間相手にいいんですか?」
俺が考え事をしていると橙が藍さんに聞いていた。
人間相手にって妖怪の遊びなのかな…
「橙、人間だからって馬鹿にしちゃいけないよ」
「うーん…わかりました!」
橙は"弾幕ごっこ"をやる気になって外に出て行った。
「ほれ、早く行かぬか」
藍さんがニヤニヤしながら俺に声を掛ける。
「いや、藍さん"弾幕ごっこ"ってなんですか?」
「"弾幕ごっこ"とは食後の運動だ。楽しいぞ」
本当に楽しいのか?…でも橙も出て行っちゃったし、とりあえず後を追わないとな。
藍さんのニヤ気ッぷりが気になるが外に出ることにした。
外に出ると橙が手を振っている。とにかく橙の元へ行くことにした。
「それじゃあ、始めよ」
「待って、待って!」
橙がいきなり始める宣言をするので慌てて声を掛ける。
「どうしたの?」
「いや、何をやるのかがまったくわからないんだよ」
俺は橙に説明を求めていた。
「橙、騙されるな!もう始まっているぞ!」
振り返ると藍さんも外に出ていた。
騙されるなってなにを言い出すんだ、あの人は…
「あ、そっか。それじゃあ、いくよ!」
橙はこちらに弾幕を展開する。
これは…死ねる!俺は脳裏にそう浮かんだ。
なるほどこれが"弾幕ごっこ"か…俺は必死に橙の攻撃を避けようとする。
しかし、普通の人間である俺が避けられる訳がなく、被弾する。
「いってーーー!!」
やっぱ痛いよ!これ!このままじゃマジで死ねる!
「橙!必殺だ!!」
藍さんはテンションを上げまくっている。
「それなら…『鬼符「青鬼赤鬼」』」
必殺ってなんだよ!
俺はプッと笑うがその笑いが一瞬で消えた。
「―うん…」
目が覚めると夕焼けの空が見えた。
「目が覚めたかしら?」
ひょっこりと紫さんが顔を覗かせる。
突然のことに驚いたが、体中が痛くて動けなかった。
「えっと、どういう状況ですか?」
「覚えてない?貴方は橙と"弾幕ごっこ"していたのよ」
そっか橙の攻撃を受けて気絶してたのか…
横を見ると橙と藍さんが居た。
「ごめんね…」
「…すまなかったな」
橙と藍さんがこちらに謝る。
でも藍さんは明らかに笑いを堪えているようだ。
藍さん…騙しやがったな…なんて奴だ。
「それにしても俺、よく生きてたな」
自分の丈夫さを褒める。あれだけの攻撃で生きているのだから。
「私が貴方を助けたのよ」
紫さんが?なんか嬉しいな…自然と笑みを浮かべる。
憧れの方に助けてもらえるなんて、素直に嬉しかった。
「ありがとう…ございました」
「それじゃあ、藍。夕飯の用意をして」
「わかりました。橙も帰ろう」
一段落し、紫さんが藍さんに夕飯の用意をするように言った。
藍さんは橙を連れて家に戻って行く。
俺は紫さんと二人きりになり緊張しまくっていた。
な、なにか話さなきゃな…
急に気恥ずかしくなり、俺は紫さんの顔が見られなくなってしまった。
「どうかしたの?」
俺の様子が変なことに気づいた紫さんに声を掛けられる。
俺は紫さんに自分の想いを伝えようとした。
「あの、紫さんに伝えたいことが」
「あら偶然ね。私も貴方に伝えたいことがあるのよ」
俺は想いを告げようとすると紫さんも伝えたいことがあると言い出した。
紫さんが伝えたいことってなんだろ?
「あの…先にどうぞ」
「ふふ、やさしいのね」
俺は紫さんに先を譲る。正直まだ心の準備が出来ていなかったからだ。
「私は貴方が"好き"よ」
紫さんの突然の言葉に頭の中が真っ白になった。
へ?いま何て…好きって言ったの?
「あ、あの俺も同じこと言おうと思っていました」
俺も流れに任せて紫さんに想いを伝える。
まさか、紫さんが俺のことを…
「そうなの?ふふ、うれしいわ」
紫さんが俺に笑いかける。
その笑顔は、美しさの中にどこか妖しい感じもあって、俺は紫さんを魅入ってしまっていた。
「目、閉じてくださる?」
紫さんに声を掛けられ目を閉じる。
目を閉じると紫さんは俺を抱きかかえる形となって…
「紫様、夕飯の用意が出来ていますよ」
「二人で先に食べ始めていいわよ。私は着替えてくるから」
「わかりました。それじゃあ、橙食べようか」
「はい!いただきます」
ちゃぶ台の上には三人分の食事があった。
<あとがき・談話(?)など>
作者(俺)「ここまで読んでくれてありがとうございました」
主人公(こっちも俺)「おい!どういうことだ!!」
作者「どういうことってなんね?」
主人公「お互い好きってことで楽しい生活じゃないのかってことだ!」
作者「紫さんの好きとは"喰う対象"ってことかな。妖怪だし」
主人公「…なんじゃそら…」
作者「彼女たちと話できただけで十分でしょ」
主人公「いやいや、作者。イチャついてないから!」
作者「俺としては、十分イチャってたよ」
主人公「…それより最後の三人分ってなによ?どういう意味よ」
作者「そこは想像におまかせってことで」
主人公「…なんてこった…」
作者「今回は、違う感じを出したかったのでこういう形になりました。
キャラ破壊してしまった気がします。
本当にすいません」
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3スレ目 >>76
気が付いたら、俺の隣で酔っ払ったゆかりんが寝ていたと言う事実以外全部要らない。
あげくのはてにすっぽんぽんで寝ていると言う衝撃的な事実以外何も要らない。
どうやら、まよひがに帰る道を間違えて僕の部屋に迷い込んだらしいけど、もうそれ以上の考察は要らない。
ううん、なんて甘い声だしながら寝返りをうって、僕に抱きついてるゆかりん。
この比類なき幸せの前には、この世のシガラミ一切合財、なにもかも、全てが透明になる。
だから、明日の朝目が覚めたとき、お腹が減ったゆかりんにハラワタをかじられ
てるかもしれないなんて、そんな些細な心配事も要らないのだ。
あまりの幸せな体験に思わず書き込んでしまいました。
それでは僕はゆかりん専門の抱き枕に戻ります。
うふふ。
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3スレ目 >>116
なんだか神隠しに遭ってマヨイガに拉致られたらしい。
そのまま晩の食卓に並ぶかと思ったらたっぷり太らせてから食うそうだ。
どこのヘンデルだか。
そして紫様の暇潰しの相手をしながら太る生活が始まった。
紫様はいつも何が言いたいのかがさっぱりわからない。
だが一週間もするとやっぱりわからなかったが考察ぐらいはできるようになる。
紫様の意図をああだこうだと調べて考えるのは楽しいし、
その深い知識と頭の回転にはいつも驚かされてきた。
加えて美貌の中でいつも浮かべる余裕の微笑には胸に来るものを感じる。
そしてある日、紫様が俺の顔をまじまじと見て言う。
「知っているかしら? 一番美味しい物を」
当然知らないと答えると紫様の手は俺の頬にかかり、唇は言葉を紡ぐ。
心臓がバクバク言うのを感じた。
「脳味噌よ、それも知恵がついてると格別に美味しいのよ、
まぁ間に合わなかったけどしょうがないわね」
紫様は魚を品定めするような顔をしていた。
その手が俺の首に移動していく、そこで初めて紫様の意図を理解した。
今日はクリスマスイブで俺は七面鳥の代わりなんだと。
なぜか恐怖も後悔もなかった、本望だとさえ思えた。
少しでも紫様に近づけた気でいたから。
そこまで考えて俺の意識は途絶えた。
クリスマスネタを先駆けてみた。
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3スレ目 >>391
紫の細い体をそっと抱き寄せる。
紫の両腕が腰に絡む。
俺と紫の目が合う、俺が見下ろす形だ。
左手を紫の背に添えて右手でブロンドの髪を梳く。
とろんとした瞳は月並みだがどんな宝石よりも綺麗だ。
髪を梳く手を紫の頬へと移す。
ほんのり赤く染まった頬、柔らかい胸、ふわりとするいい匂い。
そのすべてに俺の心臓の動悸も高まる。
紫は俺をじっと見つめる。
待っているのだとわかっていた。
ここまで魅力的な八雲紫を見せられて言えないはずが無かった。
「愛してるよ、紫」
返事はない、だが腰に回された細い腕に力を込め、
俺の胸に顔を埋める、俺にはそれだけで十分だった。
ふと、紫が顔を上げてこちらを見る。
どうやら紫には不十分らしい。
ゆっくりと目を閉じる紫の唇に俺は自分のそれを近づけていった。
俺の脳みそもうだめぽ。
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3スレ目 >>570
「だ~れだ?」
「……紫」
「あたり~、よくわかったわね」
「こんな古臭い事するのは紫ぐらいしか居ない」
「それってどういう意味?」
「そんな事覚えているから年k……いや、なんでもないですすみませんでした」
紫から発せられた凄まじい殺気に思わず謝ってしまう。紫は何時も通り胡散臭そうな笑みを浮かべていた。
「……紫、今ならまだ無かった事にできるんだからな」
俺と紫は共に生きていく事を互いに誓った。それはお互いに望んだ事だ。
しかし俺は人間、彼女は妖怪。俺たちの前には絶対に乗り越えられない壁があった。
それは、寿命。妖怪は人間に比べてはるかに長寿である。勿論俺達も例外ではない。
だからこそ、今なら心の傷が深くならずに別れられると俺は紫に伝えていた。
「確かに、今ならまだ間に合うわね。……でもね、私はあなたが好き。人間を好きになるとは思っても見なかったけど……ね」
それは俺も同様だった。今でも驚いている。妖怪を好きになるなんて。
「……もう一度言うけど、私はあなたが好き。今別れるなんて考えられないわ。
当たり前の事だけど人妖関係なく、死んだらもう会えない―――訳ではないけど、多分会えないわ。
だからね、私は生きているあなたをあなたが生きているだけずっと見ていたいの。
死して別れるのは仕方がないけど、あなた生きているうちに別れるなんて嫌。たとえ死ぬ時の別れが辛くとも、ね」
「……でも、俺は紫に迷惑を掛けているんじゃ――」
と、俺の発言は紫によって遮られた。
「何度も言わせないでよ、私はあなたが好きなの。だから迷惑なんてこれっぽちも感じた事は無いわ。
私はあなたの傍に居るだけで、あの、その、えっと、し、幸せ、……なのよ」
言い忘れていたが、本当の紫はとても恥ずかしやがり屋である。本来は隠しているが、俺の前だとたまに見せる面白い所。
その証拠に今の発言で紫本人顔が真っ赤である。
「そうか」
妙に納得してしまったのは、紫が能力でも使ったせいだろうか。
いや、どっちにしろ別に関係ない。ギクシャクしていたのが取れたのだから、これほどいいものは無い。
「じゃあ、行くか」
別にどこかに行くわけではない。人生という道を進むだけだ。ゴールは死。
そして俺は、そのゴールまでの距離が紫に比べ短すぎる。その道を進むのはとても悲しい事だ。
俺が死んだ後、紫はその俺の分まで一緒に背負い進むだろう。
「ええ」
けれど、二人ともそれを望んだから別にかまわない。
「……紫、腕にしがみ付かないでくれるか?」
幻想郷は全てを受け入れる。
「なぜかしら?」
それはとてもとても残酷な事で、
「いや、腕がおm――イタイイタイ骨が、骨が折れる折れる折れる!!!」
とても幸せな事だ。
正直スマンカッタ
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4スレ目 >>14
よし、俺も紫に求婚しちゃうぞっ!行ってくる(`・ω・´)ノ
マヨヒガ| λ…………
・・・寝てた。(´・ω・`)
三顧の礼を尽くすさあ。
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4スレ目 >>110
外より神隠しに遭いいくらかの月日が経った。
「……で……なので……」
そして私は外の世界のことを彼女に話していた。
「……だから……です」
しかしそれももう終わる。ネタがなくなったのだ。
「……これでもう話すようなことは無くなりました」
これからどうなるのだろう?
元から外のことを話す条件で置いていてもらったのだ。このまま御役御免だろうか。
「はい分かりました」
彼女が口を開く。さてどうなるものか。
「じゃあお返しにこちらのことも聴かせてあげましょう。
長い話ですからね。それまでここにいなさいな」
またいくらかここに厄介になることになった。これは随分長くなりそうだ。
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4スレ目 >>113
季節は梅雨時
「なあ」
縁側から外を見ながら、居間にいる 見た目金髪美人なのに
いやに、日本茶を啜る姿が様になっている妖怪に話しかけた。
「ん、なあに」
「あんた、前に幻想郷はすべてを受け入れるって言ったよな?」
見てはいないが彼女の顔はきっといつもの様に笑みをつくっているだろう。
「ええそうよ、幻想郷はすべてを受け入れるわ。それはもう残酷とも言えるほどに・・・」
言っていることはすごいが、その声はえらく楽しそうだった。
「その対象がとんでもない愚か者だったとしてもか」
「とんでもない愚か者?」
多分、彼女は訝しげにこちらを見ているだろう。
しかし、俺は彼女のほうを見ることが出来ない。出来る筈がない。
「ああ、人間の癖に・・・ 何の力もない弱っちい人間の癖に」
「絶対的といえる大妖怪に恋慕の情を抱いているとんでもない愚か者だ」
口調は軽いが、声は僅かに震えている。
俺は恐れている。
拒絶されるのを、必要とされないのを、何よりこの場所に居られなくなる事を!
何よりも、何よりも恐れている!!
その時、フッと背中に軽い重みがかかった。
「そうね、その対象がどんな愚か者だろうときっと」
抱きしめるのではなく、身を完全に預けるわけでもなく。
「この場所は、その愚か者を受け入れるわ」
背中合わせに座るだけ、片方だけが寄り掛かるのではなく
「だって幻想郷は残酷なまでにすべてを受け入れるのだから」
ともに身を預け支えあう。
「・・・っ」
「それに」
声にならなかった。彼女の方を向く事だって出来なかった。
しかし、彼女はそんなこと気にせずに言葉を続けた。
「今この時、私を支えてくれているは」
それはまるで歌のように
「きっと力ある者じゃなくて」
それはまるで風のように
「私が受け入れたその愚か者よ」
俺の心に深く深く染み込んで来る言葉だった。
季節は梅雨時、しかし陽光が降り注ぐ昼下がり
二つの寄り添う影一つ、その片方からはポタリポタリと雨音がなっていた。
初執筆、初投稿でなんちゅー物作っているんだ俺は!!
と言うわけで、見る専門だったのですが勢いで書いたりしちゃいました。
文才無いんであまり読めるようなものじゃありませんが。
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最終更新:2010年05月21日 06:41