紫19
新ろだ482
「ゆ、紫、何で……?」
目の前には一人の妖怪。
いや、人間がいた。
「あなたと同じ時間を共にしたいから、では駄目かしら?」
「そういう問題じゃなくて…………」
何と、紫が人間になってしまったのだ。
自分の能力を使って。
「結界の管理とかどうすんのさ」
「大丈夫よ、霊夢や藍がいるし」
「あんた程の妖怪がいなくなったら色々と大変じゃないのか。こう、パワーバランス的に」
「大丈夫。藍の能力の境界をいじって、今や藍はゆかりん二号」
「…………。藍さんとか橙ちゃん達はどうすんのさ」
「彼女たちは私がいなくてもやっていけるわよ」
「………………」
「他に質問は?」
有るけど、まともに答えてはくれないだろう。
「本当に良かったのかよ」
「あら、不満かしら?」
人間になっても不敵な笑みは変わっていなかった。
「不満というか、なんというか「私は」」
僕の言葉を遮る紫。
珍しく、語気を荒げている。
「妖怪としての自分を捨て、人間として一生をあなたと共に刻む覚悟をしました」
凛とした声。
「永い時間をかけて積み重ねたモノの殆どを捨ててしまいました」
それは、強く穏やかだ。
「それ程に、私はあなたを慕っています」
幽雅に。
妖しく。
「それ程に、私はあなたを愛しています」
優しく。
悲しく。
「あなたはの答えを聞かせてくださいな?」
彼女は微笑んだ。
かける言葉は無い。
いや、言葉なんて要らない。
「紫」
そっと、けれども離さぬように強く、金髪の少女を抱きしめた。
これが答えだ。
「ありがとう、○○」
「あぁ」
以前までと違い、腕の中の少女は儚く、弱い。
一生離すまいと、強く、抱きしめた。
新ろだ656(25スレ目>>738から)
昨日の一件から一夜が明けた。
「どうしようかな」
独り言が口から洩れた。
何のことはない振られてしまったので紫さんに逢った時の対応をどうしようか悩んでいるのだ。
「何が?」
「うおぇあ!?」
するといきなり耳元で声をかけられる
あまりの驚きで意味のわからない言葉を発する。
「ちょ、吃驚させないでよ!」
「いやいやいや。それはこっちの台詞です! てかなんで居るんですか?」
僕の奇声に相手――紫さん――は驚いたのか抗議をしてくる。
だが僕の方が驚かされた訳なのでそんな事は無視する。
「そんなにいっぺんに言わないで頂戴」
「……言わせるようなことしないで下さい」
すると次は違うことで文句を言われた。
なんで文句を言われないといけないんだと思いつつもそう返す。
「それもそうね」
「……はぁ」
すると彼女は納得した様子で頷いた。
意味もなく疲れてしまった…
「で、どうしたんですか?」
「なにが?」
一通りやり取りが終わったので僕は紫さんに当然の疑問を向ける。
すると真顔で聞き返された。
「…いや前触れもなく現れて何か用でもあるのかと」
そんなマイペースな彼女に若干呆れつつも今度は具体的に聞いてみる。
「ああそれはねぇ…貴方に逢いにきたのよ」
「……は?」
するとまったく予想外の返答が返ってきたので思考停止してしまった。
「だから貴方に逢いにきたの!」
「何かの冗談ですか?」
そんな僕の様子を見てか紫さんはもう一度そう言う。
が、僕には新手の冗談としか思えなかった。
「怒るわよ?」
「御免なさい」
試しにそう聞いてみる。
すると彼女の目が据わって若干怒っているような声でそう言われた。
やばいと思って僕は即座に謝る。
「まったくもう…」
すると紫さんは呆れたようにそう言ったのだった。
「まあ折角来たんですから寛いで行ってください」
「ええ。そうさせてもらってるわ」
とりあえずは紫さんと居間に移る。
意味もないと思いつつ寛ぐように勧める。
が、予想通りすでに寛いでいた。
「珈琲か紅茶どちらが良いですか?」
「それじゃ紅茶をお願いするわね」
「はいはい~」
そんな様子に相変わらずだな、等と思いつつも僕の口元には笑みが浮かんでいた。
「と言うか○○」
「なんですか?」
二人して飲み物を口にしていると紫さんに声をかけられる。
ちなみに僕は珈琲を飲んでいる。
「私が言うのもアレだけど昨日の今日なのによく平然としてられるわね」
昨日振られた相手と一緒にいて平気なのかと。
「…ふむ。まあ別に嫌われた訳じゃ無いですからねぇ」
一応答える。
実際のところは良く解らない。
出会うまでは対応をどうしようか考えていたが、いざ出会ってみると振られたと言う実感がまったくないのだ。
だから僕は普段通りにしていられた。
「ほんと妙なところで強かね。○○は」
「それはどうも~」
そんな僕の内心を知ってか知らずか感心したようにそう言われた。
「昨日貴方を諦めさせるために言った言葉あるじゃない」
「『人の夢~』ってやつですか?」
「そうそれ。まさかあんな風に返してくるとは思わなかったから驚いたわ」
「ふむ。でもあれは落ち着いて考えると当たり前のことなんですけどね」
そして彼女は昨日の事について話し始める。
一日しか経ってないはずなのにその話をされてもなぜか平気だった。
「ふふ、たしかにそうね。でも嬉しかったのよ」
「え?」
そして彼女の言葉に相槌を打っていると予想外な事を言われた。
思わず声が漏れる。
「貴方は私を好きでいてくれる事を夢とまで言ってくれた……」
「っ!?」
昨日自分が言った言葉を思い出す
「正直に言うとね……あの時凄く嬉しかった」
「いや…あのその…」
平気だと思っていたのだが恥ずかしさは別だったのか一気に頬が熱を帯びる。
「でもね、嬉しいのと同時に貴方を疑った」
「……」
そんな僕の様子に紫さんは少しだけ笑みを浮かべるがすぐに消して続ける。
「昨日も言ったけど私は本気で他人を愛するのが怖かったのよ。何時も傷付いて来たから」
「そうみたいですね」
「だから貴方の言葉にも裏があると思ったの……」
「そっか…」
それは昨日とおなじ彼女の独白だった。
僕は何と声をかければいいか解らずにただ相槌を打つ
僕はただ聴くだけだった。だが大妖怪である彼女の弱さを垣間見た気がした。
「でもね…そんな私を貴方は…心配してくれた」
「……」
「私は貴方を疑っていたのに……それなのに貴方は最後まで私を心配してくれた」
ゆっくりと彼女は言葉を吐き出す。
「○○が居なくなった後ずっとその場で考えてた…」
「泣いてるくせに笑顔で私の背を押そうとしてくれた貴方の事を…」
その声は震えていた。
「それで気付いたの。傷付けられるのが怖いって言っている私が貴方を傷付けている事に……」
あの大妖怪八雲紫が今にも泣いてしまいそうな声で話し続ける。
「それでね…その事を自覚したときに…ね…胸が…凄く苦しくなって……」
僕はただそれを黙って聞いている。
「苦しくなって…気付いたの…」
消え入りそになりながらも僕に言葉を伝えようとしてくれている。
「私も…貴方の事が好きだった事に……」
最後に紫さんは絞り出すようにそう言った。
「でも気付いた時には遅かった……貴方を凄く傷付けてしまった」
「……そうですか」
気付けば紫さんは泣いていた。
「ごめんなさい…傷付けて本当にごめんなさい…」
「気にしないでくださいよ」
いつも余裕を持っていて相手を自分のペースに持っていく姿なく、ただの少女のように泣いていた。
僕は少し躊躇しながらもそんな彼女を抱きしめて言う。気にしないでと。
「だって……」
「僕は笑ってる紫さんの方が好きですから」
それでも何か言おうとするので自分でも柄じゃないような事を言ってみる。
「なっ///」
「だから泣かないでください」
予想外な言葉だったのだろうか、紫さんの頬に朱が差す。
「でも…」
「僕の事を好きと言ってくれた。それだけで十分ですから、ね」
そして僕は畳みかけるようにそう言った。
「……うん」
すると紫さんは諦めたのか困ったように笑ってくれたのだった。
「そうそう紫さん」
「なにかしら?」
僕は紫さんの隣に座りなおし思い出したことを話し出す。
「あの時『人の為(ため)と書いて偽り』って言いましたよね」
「ええ。でもそれがどうかしたの?」
「実はそれ違うんですよ」
「え?」
どうしても教えたかったから。
「人の為(しわざ)と書いて偽りなんです」
「あ……」
「だから人の為(ため)に何かするのは偽りなんかじゃないんですよ」
人の為にする事が偽りなんて悲しすぎるから。
「そう…。なら私も○○の為に何かできる事をしなきゃいけないわね」
「期待してますよ~」
「ふふ。期待しておきなさい」
それを聞いた後彼女は愉快そうに笑みを浮かべてそう言いだした
僕も釣られて笑う。
一度はすれ違ってしまった僕たちだったけど最後は微笑み合っていられた。
ただそれだけが嬉しかった。
新ろだ689
「ポーカーでもしない?」
「は?」
突然の提案につい間の抜けた返事をしてしまった。不覚。
「だからポーカーしましょうって言ってるの」
「あ、ああ。いいぜ」
答えた瞬間紫はスキマから五十二枚のカードの束を取り出す。便利だなスキマ。
「やっぱりポーカーなら賭けるものがないとつまらないわよね。」
……それが目的だろう。何を企んでいやがる。
ま、勝ったら勝ったらで……良い考えがある。
「敗者は勝者の言うことを一つ聞くってのでどう?」
勝てる気しないんですが。普通の人間なのに。
「ハンデとかないのか?」
「うーん、付けてあげないことも無いわ。その代わり「やっぱりいい」え?そう?」
紫が出す条件はロクなものがない。
具体的に言えば年代物の大吟醸を出せとかポケモン図鑑完成させてこいだの。泣ける。
「三十枚のチップが先に無くなったほうが負けよ。チップはそこにあるわ」
いつのまにかカードの横に大量のチップがあった。便利だなスキマ。
「そういえばさ、二人だけでやるのか? 二人でやるポーカーって珍しいが」
「そうよ。二人っきりでやるの……」
意味ありげな言い方だけどいちいち気にしてたら身が持たないから突っ込まない。
「じゃあ始めましょう。親は私からよ」
「……お手柔らかに頼むぜ」
場代のチップを出して手札が渡される。至って平凡な手札。3588J。ワンペア。
「私はパスよ」
「俺は……ビッドだ。二枚賭ける」
一応ワンペアだしビッドしておいた。さて、どうくるかね。
「コールよ。二枚出すわね」
降りてこないな。勝負手か?全く読めないが。コイツの表情は全く読めない。
「確か……カードを交換するんだったな」
「そう。私は二枚交換するわ」
「じゃあ俺も二枚」
3、5を交換することにした。紫がカードを引いてからニヤニヤしてる。よほど良い手なのか。
とりあえずカードを二枚引く。
引いたカードは……8とJ!フルハウスだぜ!人生捨てたモンじゃないね!
「賭けチップの限度ってあるのか?」
「ないわよ。それがどうかしたの?」
「くくく……ならばレイズ! さらに十八枚追加! 合計で二十枚賭けだ!」
言っちゃった。まあフルハウスなら負けることはほとんど無いだろう。
それでも紫はニヤニヤしている。賭ける気か?
「コール。それに乗るわ」
「ほほう、余程手に自信があると見える」
「さあ、どうかしらね?貴方こそかなりの勝負手なんでは無くて?」
その通りです。というかニヤニヤやめろ。
「よーし、公開するぜ。後悔するなよ?」
「十点」
……即答ですか?流石に悲しい。
そして手を公開する。
「フルハウス」
「フォーカード」
……え?
「あら、聞こえなかったの? フォーカード。フォーオブアカインドよ」
いや、豆知識はいいですから。さっきまでのテンションが一気に下がった。
アレかな、熱いものを急に冷やすと割れるっていうけど。俺の心は割れちゃったのかな。
「○○? 何ブツブツ言ってるの?」
ニヤニヤしてやがる。というか声に出してたのか。俺大丈夫か?
「さて、二十枚頂戴するわ」
「あれは彗星かなーいや彗星はもっとぶわぁーっと」
「精神が崩壊したのね、可哀想に」
知ってるんですかZガン○ム。
そして俺の二十枚は奪われてしまった。嗚呼、馬鹿な自分。
「さて、続きやりましょう」
「ちくしょー! 足掻けるだけ足掻いてやる!」
負ける気満々だな俺。
――省略――
「……足掻けなかった」
「まさか、一敗もしないで勝つとは思わなかったわ……」
結果:ストレート負け
チート使ってんじゃないのか?運が無いだけですか。そうですか。
「……さて、勝ったから貴方に一つお願いするわね」
「オーケイ何でも言ってくれ。約束は約束だ」
「なら……○○、貴方を貰います」
……ワッツ?
何を言ってるんです紫さん?
「意味が分かりません」
「そのままよ。貴方を貰って……ええ、と……私と付き合って……もらうわ」
「……え?」
何この状況。告白と受け取ってよいんでしょうか。紫の顔がすげー赤い。
「これはつまり……告白と受け取って……良いのか?」
「……反論は許さないわよ」
「当たり前だろ。俺が勝ったときにも同じこと言おうと思ってたしな」
「え? そ、そう。ありがとう」
礼を言われた。微妙に会話になってない。
「つまり両想いだったわけだ」
「え、あ、」
「俺も……お前のことが好きだ、紫」
自分から言ったのにパニックになってる紫可愛い。抱きしめたい。
ああ、ここは抱きしめてもいい状況か。
「あ……」
「愛してる、紫」
「えっと……私もよ、○○……」
そういって紫に口付けした。
ポーカーありがとう。やっぱり人生捨てたモンじゃなかった。
新ろだ711
「はぁ。……みんな暢気なものねぇ」
幾つかのスキマから外の様子を眺めていた彼女が、それを閉じた。
その表情からは、隠しようもない呆れと――僅かな羨望が見て取れる。
「砂糖異変、だっけ」
幻想郷中に広まり続けている謎の現象。
曰く、その異変に中てられた物は砂糖の塊に成り果て。
曰く、その異変に中てられた者は意中の者とくんずほぐれつ。
実害は前者のみ。後者は……犬も食わない、という奴である。
黒幕が誰なのか掴めず、解決に向かった者も……今頃は、きっと。
「ええ、そう。全く……そういった異変を解決するはずの二人ですらあのザマじゃあ」
「当分はこのまま、と?」
そうねー、と投げやりに返事をするなり、床にごろりと寝転ぶ紫。
年甲斐もないものだ、と壁にもたれたまま、ここの主の醜態を眺める。
ふと、視線が合った。
つまらなそうだった彼女の表情がにんまりと笑みを作る。
「ねーぇ、○○」
全く持って嫌な予感しかしない。
「なんでしょう」
中腰の姿勢を取り、いつでも逃げ出せる様に、障子に手をかけようとしたあたりで。
「ぐぇ」
上から感じる、重み。
突然の衝撃に耐えることも出来ず、姿勢を崩して倒れこんでしまった。
「えへへー」
声の主は、先ほどまで眼前にいた少女。
どうやらスキマを抜けて上から落ちてきたようだ。
「あの、紫さん?」
「なぁーに?」
ちなみに現在の状況。
私、下敷き。スキマ妖怪、馬乗り。顔は……否応なしに見える距離。
「そのホクホク笑顔は、何を企んでいるのでしょうか」
「失礼ねー。私がいつも何か目論んでいると思っていたら大間違いよ?」
何故ご機嫌なのか見当も付かないが、どうやら今の彼女には、
多少の失言を見過ごせるくらいの度量があるようだ。
「だったら私の上から退いてくれないかな?」
それならばこの程度の願いも――「ダーメ♪」――駄目だった。
「藍も――それに橙も恐らく――きっと異変に飲まれて惚けてる頃よ。
それはつまり、ここには私とアナタ、二人だけ。それに――」
にっこり、と。満面の笑顔で視界が埋まる。
「――踊らにゃ損々、っていうじゃない?」
ああ、それもそうか、と思う反面。一つの疑問が浮かぶ。
「……私で、いいのかい?」
「んーん。○○じゃなきゃ、ダメ――んっ」
こうしてここに新たな患者が一組。
砂糖異変の夜は、尚更ける。
新ろだ782
「○○」
「何スか紫姐さん」
「……」
「用が無いなら行かせて欲しいんですけど」
「あの、その、ね?」
「はい」
「いってらっしゃい。」
「ああ……はい、行ってきます」
「ちゃんと帰ってきて……ね?」
「~~っ、了解!」
「ただいまー……」
「おかえり○○ーっ!」
「うわっとと。ただいま、紫姐さん」
「ご飯にする?お風呂にする?それとも……」
「はいはい。とりあえずご飯から食べたいかな」
「待っててね、すぐに出すから」
「……どしたい」
「ううん、美味しそうに食べるなーって」
「いやまあ、うん。実際美味しいしね」
「そう。……えへへ」
「風呂いってくるー」
「背中流しましょうか?」
「馬鹿いってんじゃないの。それじゃ、また後で」
「もう……冗談じゃないのに」
「ふーい、いい湯だった……あれ、姐さん?」
「……くー……くー……」
「おや○○、紫様は……」
「ああ、藍さん。その、寝ちゃったみたいで」
「"○○が帰ってくるまで起きてるんだから!"、と頑張っていたからな。顔を見たことで気が緩んだのだろう」
「……そっか。俺、部屋まで運びますね」
「うむ、頼んだぞ」
「らじゃー」
「……どうも、服の裾掴まれて動けない○○ですこんばんわ」
「くー……くー……」
「解こうとすると凄く切なそうな顔をするので解くに解けません」
「すー……すー……」
「暴れると起こしてしまうのでそれも出来ず」
「ぴー……ぴー……」
「……今日くらいは、いいか」
/*
チルノの裏「ちょ、ちょっと何すんのよ!」*/
○○は料理を藍様が作ったものだと思い込んでいますが、
実はあくせくとゆかりん自ら腕を振るっていたものだったり。
でもそんなの知らない鈍感。
最後のシーン、確信犯なのか否かは……かみのみそしる。
/*チルノの裏「……く、くすぐったいじゃない」*/
新ろだ1022
2月14日。この日は世界各地で女性が男性にチョコを贈るという、一大イベントの日だ。
日頃の感謝を込めて義理チョコを贈る者や、自らの好意を形にする本命と呼ばれるチョコを贈る者がい
る。自分はどちらかと言えば、迷いなく後者だと断言する。
何故なら、自分には愛しい恋人がいるから。
「ってなわけで、チョコを作ろうと思う」
2月14日の前日。八雲家の居間でコタツに入っていた青年が、向かい合って座る少女にそう言った。
「む。バレンタインは女から男にチョコを贈るのだろう?」
九つの狐の尻尾を生やした少女、八雲藍が、主人の恋人である青年にそう指摘した。バレンタインデー
なら彼女も知っている。数年ほど前から外界の文化やお祭りが外来人によってもたらされ始め、その中
にはバレンタインデーも含まれていた。
去年は文々。新聞がバレンタインデーの特集を組んだので、その概要はよく覚えている。
藍が自分の知識とは違う青年の行動に首を傾げると、彼は頭を振り、
「別にそこまで厳格に決まってるわけじゃないぞ。というか紫は今冬眠中だし、チョコ作りなんてできないだろ?」
「まぁ、な」
彼の言う通り、藍の主である八雲紫は絶賛冬眠中である。その眠りの深さたるや恐るべきで、故に紫が
冬眠中に起きてチョコ作りするなど彼も藍も可能性は低いと考えていた。
「なら、俺から贈って紫には春にお返しを貰えば良いって寸法さ」
「なるほど。バレンタインデーにお前が紫様にチョコを贈り、ホワイトデーにお返しを紫様が作るというわけか」
「その通り。で、藍にはチョコの原料に良い物がないか教えて欲しくて」
「どれどれ……」
青年が渡してきたメモ用紙に目を通すと、そこには彼が作る予定のチョコの原材料がずらりと並べられ
ていた。彼が洋食に詳しく、またその腕前も一級品であることは知っていたが、洋菓子にも詳しいとは
驚きだ。
彼が紫様のスキマによって偶然幻想入りし、幻想郷に住んで早2年。最初の1年は八雲の屋敷で居候と
して扱っていたのだが、その時に彼の料理の腕前を知った。本人曰く、洋食しかできないのが欠点だと
言うが、それを補うだけの腕前はあると断言できる。
ただ、菓子も作れるのは初めて知った。いや、あれだけの知識があるなら、菓子だって作れてもおかし
くはないか。
「そうだな。わかる範囲でなら……」
藍は鉛筆を持つと、青年のメモ用紙に良い材料の在りかを記していく。彼女も八雲家の家事を担当する
身であり、料理にはそれなりにこだわっている。故に美味しい材料を売っている店や自生している場所
も、少なからずわかる。
藍がメモ用紙に書き終え、それを青年に渡す。彼はその内容を見て、驚きに目を丸くした。
「なかなかハードな場所にあるな、オイ」
「仕方ないだろ。使うなら天然物が一番だが、ここは幻想郷だ。自生している場所など、ろくなところではないぞ」
「まあ、その通りだよな……」
藍の言葉に、苦笑しながら頷いた。メモに記されているのは魔法の森や妖怪の山。どちらも、只の人間
である自分には少々危険な場所だ。
だからといって、行かないというわけにはいかない。愛する人のために、最高のチョコを贈ってやろう。
そう、決めていたから。
「それじゃ、ちょっと行ってくるわ」
「大丈夫か?何なら私もついていくぞ」
「空は飛べるし、弾幕ごっこもできる。ちょっと危ない程度、どうとでもなるさ」
藍の提案を、快活に笑って断る。幻想郷で生きていくために、弾幕と飛行技術を身につけた。これで大
凡の危険からは免れるだろう。なら、わざわざ藍の手を煩わせる事もない。
「無理はするな。お前が死んだら紫様が悲しむ」
「はいよ。明日の夕方あたりにまた来るから、橙も呼んでおけよ。全員分のプレゼントを用意してやるからな」
「ああ、わかった」
藍の返事を聞くと、彼は居間から縁側へと出て空へ飛んで行った。彼女から受け取った、メモを握りしめて。
「さて、そろそろだな」
バレンタインデー当日。ちょうど太陽がてっぺんに登った頃、藍は八雲の屋敷のとある部屋を訪れてい
た。ふすまを開けた先にいるのは、彼女の主、八雲紫であった。彼女は布団の中で静かな寝息を立てて
、安眠に溺れている。
「紫様、起きて下さい。バレンタインデーですよ」
「うぅん……」
藍が肩を揺さぶると、紫は緩慢な動きをしながらも上体を起こした。これほどあっさりと起きれるとは
、少々意外だ。やはり、愛の力故に為せることだろうか。
「……藍、あの人は?」
「昨日から材料の調達で外出しています。夕方には来ると言っていました」
「そう……ふぁ」
欠伸をしながらも布団から出ると、ぼさぼさになった髪を手櫛で軽く整え、服を寝間着からいつもの私
服へと着変えた。
さて、と一瞬で思考を切り替えると、座して待つ藍へと目を向ける。
「藍、材料は揃っているわね?」
「はい。既に材料から調理器具まで全て揃えてあります」
「さすがね。早速調理にとりかかるとしましょう」
「わかりました」
普段ならいつもどおり寝て過ごすはずだが、今日だけは違う。
バレンタインデー。それがこの日、2月14日の別名だ。
それを知ったのは昨年の文々。新聞の特集だ。冬眠から覚めて居間に積まれていた文々。新聞を読んだ
時に、バレンタインデーの特集が組まれていたのを目にしたのだ。
その時はもう春だったし彼に渡す事はできなかったから、今年こそは作ろうと一念発起して藍に起こし
てもらうよう頼んだのだ。おかげで寝坊することなく起きる事が出来た。これなら来年もできそうだ。
藍を引きつれて台所へと向かうと、そこには材料と器具、それと料理本まで置いてあった。
その光景に満足しつつ、早速料理本へと目を通す。
「へぇ~。チョコといってもこんなに種類があるのね」
「まずはどれを作るか決めましょう。私見としては、トリュフというものが程良く手間をかけられるの
で宜しいかと」
「ふむふむ。なるほど……」
藍のアドバイスを聞いて、トリュフの作り方が載っているページを開く。確かに、藍の言う通りトリュ
フはそれなりに手間がかかりそうだ。これなら愛情を込めて作ったという思いが、彼にも伝わるはずだ。
思わず頬がにやけてしまうのを堪えながら、一通り作り方を把握する。
「あら?お酒も入れるのね」
意外な材料の名前を見つけ、思わず目を丸くする。チョコレートにお酒なんて合うのだろうか。
「トリュフにはお酒を入れる場合の方が多いんです。結構味も合います」
「……食べたら酔ったりしないかしら?」
ふとした疑問。
彼はお酒にそこまで強くない。そんな彼にお酒入りのチョコなんて渡したら、もしかしたら酔ってしま
うのでは?
もし酔ってしまったらどんな行動を起こすかわからない。博麗神社の宴会でも酔っぱらいのどんちゃん
騒ぎを見た事はあるが、凄まじかった。恥も外聞も捨てたような行動を取ったり、人前だというのに恋
人に迫る輩さえいた。
彼も、そんな事をするのだろうか。想像してみるだけで、顔が赤くなるのがわかる。
「……紫様。もしや、彼にお酒入りのチョコなんて食べさせたら酔っぱらって迫られてしまうかもしれ
ない、などと考えているのですか?」
「ど、どうしてわかったの!?」
「お顔に書いてあります」
正しく想像していたことを当てられ、思わず動揺が表に出てしまった。
不覚。これでは主人の尊厳も何もあったものではない。
動揺を見せる主人に、藍はため息をついた。
「紫様、彼と付き合ってどれくらい経ちましたか?」
「え?えーっと、1年と5カ月ほどかしら」
「では紫様。恋人の行為はどこまでなされましたか?」
「ら、ららら藍?な、何を言っているのかしら?」
いきなりの質問に、紫が先ほど以上の狼狽ぶりを見せる。この反応を見る限り、やはり進んでいないの
か。
主、八雲紫は外見とは反して恋愛には奥手な方だ。妖怪という存在であり、尚且つ強大な力を持ってい
たが故に主に近寄る男など皆無であり、結果として恋のいろはさえ知らぬまま今まで生きてきた。
故に、紫様は彼とはキスまでの経験しかない。しかも、唇をふれ合うだけのソフトな方だ。霊夢や幽々
子様などギャップにも程があると言っていた。それは同意せざるを得ない。
だから、そろそろその先へ進ませようと私は画策した。紫様だっていつまでもこのままではいけないと
は思っているだろうし、彼だって紫様と愛し合いたい気持ちはあるはずだ。
ならば不肖、八雲藍。彼の国を傾けた腕を持って、紫様と彼の仲をより深めてみせよう。
「紫様、ここまで付き合って彼に迫られて困るも何もないでしょう。どうせならキスから先へと進む良
い機会ではないでしょうか?」
「キスの先……」
私の提案に、紫様は顔を真っ赤にしながら私の言葉を反芻している。見た目だけならうら若き乙女だが
、これでも私よりも長生きしているのだ。半ば信じられないが。
「そうです。紫様も、このままではいけないと思っていたのではないでしょうか?彼との関係を深める
ために、その先へ行かなければと思っていたのではないですか?」
「た、確かに藍の言う通りよ。けど、私にはそんな知識なんて無いし……」
「知識なら私がいくらでもお教えしましょう。肝心なのは紫様のやる気です」
「私の、やる気?」
そうです、と頷き、紫様を真正面から見つめて語りかける。
「この日は女性が男性へと思いの丈をぶつける日です。紫様。あなた様の想いは、キスなどという浅い
行為で済まされるものですか?」
「それは、違うわ。私の彼に向ける愛情は、何よりも深いわ」
躊躇いつつも断言してきた主に、藍は追い打ちをかけるようにして言葉を重ねる。
「ならば紫様、先へと進みましょう。彼への想いの丈を、行動で表すのです」
「彼への、想い……」
紫は噛み締めるかのように、ゆっくりとその言葉を呟く。
そうだ。彼への想い。それがどれほど深いものかなど、とうの昔にわかっていたではないか。
冬眠をしている時にはよく彼が夢に出て、春が来るのを今か今かと待ち侘びた。彼が風邪を引いた時な
どわざわざ永遠亭の薬師から薬を貰って、つきっきりで看病をした。
これだけ彼への想いが深いのに、何故自分はキス程度の行為で愛情を表わしていたのか。自分の浅はか
さに、後悔の思いがつのった。
「……わかったわ、藍。私に、その先の事を教えてちょうだい」
「わかりました、紫様。それと、チョコの事で私から1つ提案があります」
「何?」
「それは――――」
藍からの提案というものを耳にして、一瞬思考が停止しかけた。藍の提案が信じられず、呆然としなが
ら彼女を見つめる。
「……藍、それ本気?」
「ええ、本気ですとも。これをやれば世の男性は須らく狼になる事間違いなし。彼も紫様に夢中になる
でしょう」
「藍がそう言うなら確かでしょうけど……」
困惑しながらも、藍の意見を聞き入れる事にした。もしかしたら彼だって今さらその先に進む事を躊躇
うかもしれないし、そうなれば藍の提案が効果を発揮してくれるはずだ。
そのシーンを想像して赤面しながらも、紫はチョコレート作りへと手をつけ始めた。
結局、全部の菓子を作り終えたのは5時だった。
「早いとこ紫に届けなきゃな……」
空が暮れゆく中、猛スピードで空を飛びながら青年は呟いた。
言わずもがな、夜は妖怪達が活発になる時間帯である。その前に八雲の屋敷へと到着しなければ、途中
で妖怪に襲われる可能性は高い。
原材料をわざわざ採集して作ったこれらの菓子を紫達に渡さなければ、死んでも死ねない。むしろ死ん
でも亡霊になって必ずや紫の元へチョコを届けてみせる。料理人の執念は、時として山よりも高く海よ
りも深いのだ。
日が地平線の向こうへと沈んだ頃、ようやく八雲の屋敷へ到着した。
「ハッピーバレンタインデー!」
ガラリと戸を開けるとともに、声を上げて屋敷へと入っていく。居間の方へと歩いていくと、そこには
うきうきしながらこちらを見つめる橙と、ニヤリと笑う藍の姿があった。
……ニヤリ?
「ハッピーバレンタインデーです!」
「おう、橙。ハッピーバレンタインデー。これ、お前のために作ってきたクッキーだ。マタタビの粉末
入りだ」
橙は元が猫でチョコが苦手だというので、クッキーを作ったのだ。橙もそれを察してか、喜びに顔を綻
ばせる。
「にゃー!ありがとうございます!」
クッキーを入れた箱を手渡すと、橙は満面の笑顔をこちらに向けてきた。純粋で良い笑顔だ。
「藍には生チョコを作ってきたぞ。好きだったよな?」
「ああ。よく覚えていてくれたな」
「世話になった人の好みぐらい覚えてるさ」
藍へ生チョコが入った箱を手渡すと、彼女も嬉しそうに微笑みを浮かべる。
2人とも喜んでくれて良かった。後は冬眠中のお姫様にこのガトーショコラを渡すだけだ。とは言って
も、彼女の枕元に置くだけで、すぐには反応が見れないのだが。
「さて、それじゃ紫のところに行ってくる。いつものところだよな?」
「ああ。久々に会うんだ。2人っきりで楽しんでこい」
「ん、ありがとよ」
藍の言葉に若干の違和感を感じつつ、居間から出て紫の寝所へと向かう。彼女の寝所は昨年の冬眠の折
に知る事が出来た。屋敷の奥にある、広い部屋だ。
その部屋の前に辿り着くと、心なしか心臓が早く動くのを感じた。いや、気のせいではない。2ヶ月ぶ
りに彼女に会えるということで、胸が高鳴っている。例え寝ているとしても、彼女の寝顔を見れるだけ
でも幸せだ。
ふすまに手をかけ、静かに開く。そこには、冬眠中の紫が布団に潜ってみの虫のようにまるまっている
姿が
無かった。
「……あれ?」
予想していた光景とは反した恋人の姿に、間抜けな声が口から漏れていた。彼の視線の先、布団の上に
は正座してこちらを見つめる紫の姿があった。
「ゆか、り?」
「ひ、久しぶりね」
困惑しながら恋人の名を呼ぶ青年に、紫は上ずった声で挨拶をした。
「あ、ああ、久しぶりだな。どうしたんだ?冬眠、しなくて良いのか?」
紫の身を案じるかのような言葉に、彼女は嬉しさを感じつつも、冷静であることを装う。
「平気よ。それより、今日はバレンタインデーでしょ?」
「ああ。そう思って、俺からプレゼントだ」
部屋の中へと入り、後ろ手にふすまを閉めて紫の傍によると、手に持っている綺麗なラッピングが施さ
れた箱を手渡した。
「ありがとう。中身、開けても良い?」
「どうぞどうぞ」
青年からの了解を得て、包みを綺麗に剥がしながら箱を開ける。出てきたのは1人用の大きさの、円い
形のガトーショコラだ。色が良く、形も整っていて、ほのかに香るチョコの香りが食欲をそそる。
「美味しそうね。あなたが作ってくれたの?」
「まあ、な。原材料にまで気を遣った、自信作だ。遠慮なく食べてくれ」
朗らかに笑って食べるのを勧めてくる彼を見つめながら、藍から聞いた事を思い出す。ここから、キス
の先へと至るための作戦が始まるのだ。
ごくりと、唾を呑みこみ、至極平然に彼へ1つお願いをしてみる。
「食べるのは良いんだけど、口移しで食べさせてくれないかしら?」
言ってしまった。ああ、ついに言ってしまった。
口から心臓が出そうになりつつも、彼の反応はどうかと表情を伺ってみる。案の定、突然のお願いに目
を丸くして固まっている。
当然か。何せ、今まで口移しなんて経験したこともないし、しかも私からお願いをしたのだ。彼、相当
困惑しているだろうなぁ。
「……紫。もう一回、言ってくれないか?」
「口移しで食べさせて欲しいって言ったのよ。女の子にこういう事、何度も言わせないで」
冷静さを装っているものの、実際にはこれ以上とないほど心臓がばくばくしている。これで彼がお願い
を聞いてくれなかったらどうしよう、と思ってたら、私が持ってたガトーショコラを取って、こっちを
見つめてきた。
「やる、ぞ?」
「……」
青年の問いかけに、紫は目を閉じる事で応じた。彼はガトーショコラをつまむとそれを口に入れ、その
まま紫の唇へと自らの唇を重ねた。いくらか咀嚼してペースト状になったガトーショコラを紫の口に入
れようと、恐る恐る彼女の口に舌を入れながら口移しを行う。
だが紫は彼とは対照的に、貪るように自らの舌を彼の舌へと絡め合わせてきた。青年は驚きつつも自ら
も舌の動きを激しくさせ、紫の口を貪るように舐めつくす。
初めてのディープキスを経験した紫は、互いの舌が触れ合う度に脳へ直に迸る心地良さに、うっとりと
まどろんでいた。
(凄く、幸せ……。キスだけでこんなに心が満たされるなんて、全然知らなかった……)
未知の快感に頭がぼーっとするも、舌の動きは止めない。口移しされたガトーショコラを食べ終えても
紫は彼の唇を求め続け、また彼も恋人の求めに応えた。
しばらくして紫が青年の唇から離れると、彼女はしばらく呆けたように宙を見つめていた。
「紫、大丈夫か?」
「……え?ええ、大丈夫よ。ちょっと、気持ち良くて……」
「そ、そうか」
お互い顔を赤くしながら、相手をいたわる。
「なあ、紫。どうして急にこんなことをしたんだ?」
初めての経験にどぎまぎしながらも、青年は紫にそう訊ねた。いつもの紫は奥手で、こんな事を自らし
ようとする少女ではない。なぜいきなりこんな事をしようとしたのか、それが気になった。
「藍にね、そろそろキスから先の事もしてはどうですかって言われたの。確かに長い付き合いになるし
、私も愛情表現の1つとして、こうやってあなたと……」
そう言いながら、しまいにはもじもじと声がか細くなっていった。紫の答えを聞いて、青年は納得した
ように息をついた。
「なるほど、な。紫がそう考えていてくれたのは嬉しいけど、あまり無理しなくても……」
「む、無理なんかじゃないわよ!?ちょっと用意するから、耳ふさいで向こう向いてて!」
むきになった紫に言われ、渋々と彼女の言う通りにふすまの方を向いて耳をふさいだ。何をしているの
だろうと不安と期待が入り混じった想像をしながら、紫から声をかかるのを待つ。
「こっち向いて……」
耳をふさいでいたせいで小さくしか聞こえなかったが、確かに紫の声が聞こえた。おそるおそる振り返
って紫の姿を目にした瞬間、確かに心臓が止まった。
冬だというのに白いビキニを着て、体を抱きしめるように回した両腕の中には谷間が寄せられた胸があ
り、その谷間に液状のチョコレートが溜められている。傍らに置いてあるボウルには、なみなみと注が
れた液状チョコレートがあった。
呆然とする青年に向けて、紫は彼に囁きかけた。
「ば、バレンタインデーのお返しに、ゆかりんのチョコレートかけは如何かしら?」
最終更新:2010年08月06日 21:28