鈴仙5
うpろだ366
○○さんが霊夢にふられて一ヶ月
外見は何も変わらない、しかし彼が落ち込んでいることは私でも見て取れた
「私じゃ・・・駄目なのかぁ」
大きな溜息、こんなところを師匠に見られたら、いやてゐの方が
「どうしたの優曇華、こんなところで溜息なんて、胡蝶丸でも飲む?」
「ほわちゃぁ!?」
「いやいや、驚き方がおかしいでしょ、なんか危ない薬でも飲んだ?」
「し、師匠・・・は、ははは」
まぁてゐじゃ無かっただけまし・・・かな?
「それで・・・失恋?」
「!!!?ななななにを言ってるんですきゃ!??」
「落ち着きなさい、薬打つわよ?」
いったい何処から取り出すのか、いつの間にか注射器が握られている
注射器の中は何か怪しい蛍光グリーンの液体
「落ち着きました、落ち着きましたから注射器をしまってください!」
「・・・それで・・・失恋なのね?いいえとか言ったらテトロドトキシン(はぁと」
選択肢が無い質問ってなんですか、しかも河豚毒?此処海ないけどまぁ河豚だけじゃ無いし、師匠だし
「ははは、告白もしないで失恋しちゃいまして・・・」
「ウドンゲ・・・やっぱり彼方は損な役回りよ、それで・・・相手は○○って言うあの人間?」
「ななななんでそれを!?」
「告白せずに失恋といったら相手に女が出来た場合、相手に好きな女が居た場合、まぁ限られてくるでしょ?そして貴女の親しい異性で最近ふられたと話題になったのは○○ぐらいかな、なんて」
「・・・師匠・・・私どうしたらいいかわかりません」
ウドンゲは私の胸で泣いた、流石にこの状況で「泣きたいだけ泣きお嬢ちゃん・・・胸は無いが貸してやるよ」
なんて冗談は言えませんわ
「ウドンゲ・・・」
かける言葉が見付からなかったのでとりあえず抱きしめておいた、母親代わり、何てつもりは無いけど、ただなんとなく
それに歳もお姉さんぐらいだし
「・・・もういいかしら?」
日が暮れるまで泣いてしまった、師匠は足がしびれたと文句を言う
充血した真っ赤な目で(元から赤いので変わりありません
「あ、ありがとうございました」
「ああ、ウドンゲ・・・告白もしてないのに失恋なんて、かっこ悪い、当たっても無いのに砕けちゃ駄目でしょー!」
「し、師匠?何を言って」
「いい?そいつに好きな女が居たから勝手に諦めて勝手に落ち込んで、それでいいの?あなたはその程度で諦めるような恋をしていたの?」
「師匠・・・私・・・」
「辛い事を言うようだけど・・・断られに行くようなものかもしれないけど・・・それでも」
「ありがとうございます・・・私、しっかり彼の口からちゃんと聞いてきます!」
親子のようだ、といったら怒られるだろうから姉妹のようだと言っておこう
仲の良い姉妹のように、何となくいい気分だ
○○さんは最近森によく行っているという情報を耳にした私は一人で藤岡探○隊ごっこをしながら森を探索していた
「きをつけろ、何処に何が潜んでいるか、わからないからな・・・」
隊長が森のを進んでいく、それについていくように隊員たちが
「あ、あれはなんだ!」
隊長が先の方を指差した、な、なんと其処には我々が捜し求めていた
「○○さん!」
探検隊ごっこ終了、強制終了
「ああ?あー・・・鈴仙?何でこんなところに」
「○○さんが森に居るとの情報を聞いて」
「さよか、それで何か用か?」
「は、はい!お時間いいですか?」
「うーん、ちょっと待ってろ」
散らばってる変な武器?を片付ける、秘密の特訓でもしていたのか、枝からフライパンが下がってたり
「待たせたな、それで・・・用とは何か?」
さあ、砕ける事がわかってる告白を、する
「・・・○○さんが霊夢にふられて一ヶ月・・・まだ諦め切れませんか?」
「そんな話か・・・女々しいかも試練が完全に吹っ切れてないよ、未練ずるずる引き摺ってる」
「そうですか・・・また霊夢に告白するんですか?」
「あー・・・それは無いと思う、彼女は俺を嫌ってるわけでも、好いてる訳でもないって解ったから」
だめだ、なかなかずばっ!っといえない、告白ってこんな緊張するものだったのか
○○さんはよく出来たなぁ
「○○さん・・・私は○○さんが好きです・・・霊夢の事が好きなのは承知してます、でも・・・言っておきたかったんです、すいません」
「鈴仙・・・そっか、ありがとう、でも君とは付き合えない、ごめん」
「いえ、断られるのは解ってましたから」
「・・・俺は君の事が好きだ、霊夢が駄目だったからとかそういうのじゃなくて君が好きだ・・・でもこんな半端な気持ちのまま、霊夢を引き摺ったまま君とは付き合えない」
「○○さん・・・」
「俺は君を好きだからこそ、こんなヘタレたまま君の好意に甘えるわけには行かない・・・だから」
「○○さん・・・私前にヘタレだとか甲斐性無しだとか、散々言いました、けど・・・○○さんは立派な人です、自信を持っていいと思います」
「いや、俺なんか」
「わたしは・・・私は自分の事で頭がいっぱいで、○○さんの気持ちも考えず告白しました、でも○○さんはそんなに深いところまで考えていたんですね・・・私、莫迦な女ですね」
「鈴仙・・・俺が霊夢を吹っ切れて、お前が好きだと、胸を張って言える様になったら、君に告白しに行っていいかな?」
「え、あ、は、はい!ずっと、絶対に待ってます!」
「ははは、責任重大だな、俺は莫迦だからさ、がんばるよ」
こんなに笑顔で、俺にこんな笑顔を見せてくれる彼女を、裏切らない為にも
こんな俺を好いてくれる彼女のためにがんばろうと思う、期待は裏切れない、絶対彼女に告白してやる
永遠亭、縁側
一人のおばsげふんげふん少女が、心配そうに空を見ている
「あの子・・・今頃ふられているわね、そうじゃ無いと怒るわよ」
え?何でふられてないと怒るの?
「だって霊夢が駄目だからすぐにウドンゲをとる様な莫迦男にあの子は渡せないわ、まぁそんな奴ならウドンゲも好きになったりしないだろうけど」
夕日が沈みかけている、もうすぐ夜だ
今夜は満月、夜なのに辺りがよく見えるだろう、なんてね
心なしか嬉しそうな永琳であったとさ
~終~
うpろだ554
私こと『因幡 てゐ』は、〇〇とか言う男が気に入らない。
よく解らない所から来たくせに生意気にも永遠亭に住み始めたことが、
住み始めてから数日も経たない内にウサギたちと仲良くなってることが、
何よりも、うどんげと一番仲が良いことが気に入らない。
そんなある日、私は、とある事を思いついた。
二人に悪戯して、喧嘩させようというような簡単なことだ。
――だけど、あの時の私には、あんなことになるなんて思いもよらなかった。
「ふぅ、今日の仕事は終わったぁ」
うどんげは、一日の仕事を終えて冬景色を見るために廊下にいるようだ。
その傍には、茶菓子と昆布茶が――二人分。
「……むぅ」
私と飲む為じゃなくて、〇〇と一緒に楽しむ為だろう。
だが、まだ〇〇が来る気配は無く、うどんげがお茶の準備をしているということは、 計画通り、ウサ。
「ぅ……うどんげぇ」
「なーに、て――てゐ? ちょ、どうしたのその血!?」
お腹を抑える私に、慌てて近寄るうどんげ。
ピンクのワンピースには、斬られた後とおびただしく流れてくる血――。
「コホッ、コホッ、包丁で刺された……こほっ」
「お腹は抑えて!! 早くお師匠様のところに……」
「〇〇に、刺され、コホッ」
「え――?」
血を吐きながら苦しそうに述べる言葉は、信憑性が無さそうな話でもそう思わせるには値する。
「なんで、〇〇が!?」
「嘘つきだって、ゴホッ、嘘つき兎は大ッ嫌いだって言って――」
大きな音を立てて、廊下にうつ伏せになりながら倒れる。
そして、口の中に仕込んだ血のりを思いっきり床に吐き出した。
「なぁ、うどんげ。なんか大きい音が聞こえたんだけど――って、てゐ!? どうした!!」
そう、大きな音を出して倒れたのは、後もう少しして来るはずの〇〇が駆けつけてくるからだ。
ここまで、上手くいくなんて、今日はツイてるのだろうか?
「てゐが、包丁で刺されたらしいの」
「誰に!?」
「貴方、でしょう? よくも、てゐを殺そうとしたわね?」
「……へ? いや、嘘だろ? おぃ、うどんげ……そんな目で、俺を、見るな――よ」
言い出すタイミングもバッチリだった――いや、はずだった、
『や~い、うどんげったら、また、騙されちゃって!
私は刺されてなんかいませんよ~だ! ちょっとは〇〇のことは、信用してあげたら?』
――などと言おうと顔を上げるのと、パン、と乾いた音が響くのは同時だった。
そして鼻を刺すような硝煙のにおい。
〇〇が膝をついて、倒れる様子がスローモーションに見えた。
だから、見えた。〇〇の左胸におびただしい量の血が――
「……え?」
〇〇はまるで私のように、うつ伏せに倒れていた。
違うのは二点だけ。声も出さず、動きもしないという、ただ、それだけ。
「……」
うどんげは、〇〇だけを見ているため顔すら見えない。
だけど解る、今の彼女の表情は鉄のようにピクリとも動いてもいないだろう。
「……ち、違う、違うの……うどんげ、これは、演技、だったの。
〇〇は私のこと刺してない――刺してなんかない、よ?」
ピクリとも動かない、〇〇とうどんげ。
あのままだったら、温かくて幸せだったはずなのに。
こんな風にしたのは……私、だ。
「ごめん、うどんげ――ただ、悪戯しようと思っただけなのに。
ウソ、嘘だよね? あ、あはは……嘘だって言ってよ、うどんげ……ごめん、ごめんなさい――!!」
知らず知らずの内に泣き出していることにも気付かないまま、謝り続けた。
何故、だろう。ただ人間が一人死んだだけで、こんなにショックなのは?
足元から、何かが崩れて行くのを感じるのは?
嫌だ、イヤだ、こんなの――こんなの、いやだ!!
夢だ、ただ夢の世界の私が〇〇に嫉妬して嫌がらせをしただけの夢なんだ!!
夢なら、覚めて、覚めて……!!
「はぁ……もぅ、てゐ? ごめんなさいを言うくらいなら悪戯は止めなさい」
「そうだぞ、てゐ。もう少し素直になれ」
「ごめん、ごめ……ふぇ?」
……ため息を付きつつ笑顔のうどんげと、どっこいしょ、という掛け声と共になんでもないかのように立ち上がる〇〇。
涙を拭くのも忘れ、近くに寄ってきた二人を見上げる。
銃を片手に持ったうどんげと、胸から血を流した〇〇が――。
「まっ、〇〇、その――大丈夫なの?」
「ん? ペイント弾だからな。痛かったけど大丈夫だぞ?」
そう言って、ペイントで濡れたTシャツを示す。
心臓を撃たれていたならば派手に血が飛び出てるはずで、ただペイントがついてるだけに気付けないほど、私は慌ててた?
「いやぁ、最近、うどんげと話してたんだよ。『火曜サスペンス劇場ごっこをしないか?』って」
「そうそう。いきなりてゐが始めるんだから、驚いちゃった」
あはははは、と陽気に笑う〇〇とうどんげ。
――逆に、ハメられた。
「そっ、そうだよ! 一緒にやってあげたんだから、感謝してよね!?」
「あぁ、てゐの泣く姿なんて、映画だったら主演女優賞は狙えるぜ? 感謝感激だよ」
「手伝ってくれて有難うね、てゐ」
わ、解ってて、こんなことを言うから卑怯だ――!!
「ふ、ふん。暇潰し程度には手伝ってあげたんだから、いつか返してよね!?」
明らかな負け台詞を残して、その場から去っていった。
――いつか、騙してやるんだから!!
「……なぁ、うどんげ」
「どうしたの〇〇?」
「ちと、やり過ぎちまったか?」
「ふふ、それぐらいがちょうど良いのよ。てゐには」
「そっか」
雪景色を見ながら、二人で昆布茶を飲んでいる。
胸についたペイントがそのままなのが気になるが――ってか、洗濯して取れるかな、これ。
「でもよ、うどんげ。俺とうどんげの仲が良いから、てゐが不機嫌なわけだ。
ちょっとは、あいつとも遊んでやれよ?」
「てゐは、貴方の十数倍生きてるのよ? 貴方がお父さん面するなんて、百年早いわよ」
そんなことを言いつつ、茶を飲み始めるうどんげ。
別にそんな風に意識して、言ってるわけじゃないのだが。
「お父さん面って……じゃあ、お母さんはうどんげか?」
「――っ!?」
お茶を噴出しかけたらしい、変な顔をしてる。
月のウサギさんって、案外普通な奴なんだよな。最初に知ったときは、驚いたもんだ。
「だっ、誰が、貴方の――!!」
「そしたら娘は、てゐ。おばあちゃんが……永琳さん辺りかな?」
年齢的に一番年取ってるのあの人だし。
それに知識人だからな、いろいろな理由で適役だろう。
「へぇ、私が貴方たちのおばあちゃんね? フフ、なかなか面白いじゃない」
――聞かなかったことにしたい。
襖の後ろから、気配を消すのは個人的にいけないと俺は思う。
……言い直すことにした。
「あはは、訂正。おばあちゃん役は要らないな。嘘々」
「へぇ、私なんか要らない、って? 本当に面白い事を言うじゃない、〇〇」
――誤解です。
俺の人生オワタ。
「そう言えば、さきほど、新しい薬できたのよ。
実験台が必要なんだけど――誰か、受けてくれる人はいないかしら?」
「……永琳さん、その役を引き受けさせて頂いても宜しいでしょうか」
「あら? 受けてくれるの。それじゃあ、今すぐ私の研究室に来て頂戴。
死ぬほど苦いから、そこら辺は気を引き締めてね」
『死ぬほど』は、本当に昇天しかねない勢いなんだろう。
――おぉ、うどんげがトラウマがあるらしい。ガクガク震え始めたぞ。
と、知らないうちに永琳さんの気配が消えた。
「……おばあちゃんじゃなくて、従姉妹って言えば良かった、か?」
「ま、まぁ、頑張ってね……死なない程度に」
「――あぃよ」
討ち入りに向かう武士のように立ち上がろうとして――ふと、とある名案が浮かんだ。
「なぁ、うどんげ」
「早く行かないと、薬をもう一個追加されるわよ?」
あえてうどんげの話を無視。
真面目に早く行かないと、追加されかねん。
「いや、心理学上の話だがな? 人間、ご褒美があると頑張れるらしいんだ」
「それがどうかしたの?」
いや、さきほどの言葉が複線だって気づけ、馬鹿ウサギ。
「永琳さんの薬を飲んで生きて帰られたら、うどんげのファーストキッスは頂く」
「……はい?」
「だから、ご褒美!! 言ったんだから、絶対に貰うからな!!」
「いや、だから〇〇!?」
返事を聞かずに駆け出した。
そうしたら、義理堅いこいつのことだ。八割以上の確立でOK貰える――!!
――生きてればの話、だが。
俺が去った後、うどんげは呟いた。
「別に、ご褒美じゃなくても、良いのに……」
~終わり~
うpろだ572
一日寝て起きて、そうしたら全部元通りになると思っていたのに。
初めは本当に下らないことだったのに。
本当に、どうにもならないくらいに下らないことだ、それもすごく今更の。
藤原妹紅と言い争いになったというだけのことだ、それは私ではなくて姫がだけれども。
当の本人たち以外はあまり気にしていないようだけど、私がまだここに来るずっと前に姫は藤原妹紅に対して何かをしたみたいで、
(それがいったい何なのかは私はぼんやりとしか知らないけど、そのことで姫が彼女から物凄く嫌われていることは分かっている)
「・・・・あ」
朝起きて、あまりお腹が空いていないけど珍しく師匠が用意してくれた朝食をとりに食堂へ行ったら、白いガーゼが目に入った。
どうして顔の傷や手当ての痕はあんなにも痛々しく見えるのだろう。
彼の色素の薄い白の肌に嘘っぽいガーゼの白が痛々しかった。
ふと、彼の瞳がこちらを向く。
「おはよう、鈴仙」
穏やかに○○はそう言って笑った。
いつもと同じきれいな笑顔なのに、その頬に張られた大きなガーゼはやっぱり痛々しく私の目に映った。
それだけじゃない、服で隠れているけどきっと腕のところにも、白い包帯が巻かれているだろう。
それらは私のせい、だ。
ごめんなさい、ちゃんとそう謝ろうって思っていたのに喉に声が引っかかって何も言葉が出てこない。
昨日の夜うやむやになった後自分の部屋で何度も何度も練習したというのに。
ごめんなさい○○。
たったそれだけの言葉がどうして出ない。
私はただ小さくなってスカートを握り締めることしか出来なかった。
○○は絶対に私を馬鹿にしたり嘲笑したり、私が上手くものを言えなくたって怒ったりしないことは分かっているのに。
「鈴仙・・・・みんなもう朝食を終えたよ」
今はそれぞれ好きなことをしているんじゃないかな。鈴仙もあとで永琳さんのところに行くといい、ちゃんとご飯を食べてから。
私に毎日の朝食を、ちゃんととるように言ったのはこの人だ。
ちゃんと食べないといざというときに力が出ないから、無理だと思っても少しくらいは食べたほうがいい。
永遠亭の住人はどちらかといえば互いに干渉はなしで、みんないつも忙しいし、
人里に行ってもあまり人間と親しくしたりはしないけれど、○○だけはいつだって根気よく私に付き合ってくれた。
なのに私はありがとうも、ごめんなさいも、未だ何一つ言うことは出来ないのだ。
「・・・・・・うん」
か細い声で○○の言葉に答えるのが今の私には精一杯だった。
置かれていたのは師匠の最近の趣味なのかどうなのか、洋食だった。
いつも作る和食とは勝手が違うなと思いつつ口に運ぶ。
パンを一切れ、スープを半分、それからハムエッグとサラダを少しずつだけ食べて(ちゃんと全部きれいにしたのは紅茶だけだった)、
私はそそくさと師匠の実験室へ向かった。
師匠は大抵永遠亭の片隅にある離れで薬の調合などをしている。
私はいつもそこで彼女の手伝い、ときどき実験台。
言われるのは殆どどこそこにあるアレ持ってきて、だとかこれ適当に混ぜといて、だとか、簡単なことばかり。
自分で里に薬を配りに行ったり、拘束されて(気まぐれに)新薬試されそうになって逃げ出したり。
最後の一つはあんまり必要ない、というか止めてほしいのだが、これをしないとどうにもならないのよというか文句言うなと言われてしまえば私には泣く泣く頷くことしか出来なかった。
「・・・・ウドンゲ」
「何ですか師匠?」
「謝ったの?」
師匠の問いかけに私は詰まる。誰に、とは言わなかった。
該当者は一人だけ。
「早く謝っておきなさいね」
「・・・・はい」
私が言葉に詰まって答えあぐねていると、師匠はそれだけ言ってもう用は済んだとばかりにまた薬に取り掛かった。
結局のところ私は自分でどうにかするしかないのだ。
○○の怪我は私のせいなのだから謝って当然だ。
治療するだけじゃ足りない。
私自身だってそう思うけれど、いざ○○の前に出ると上手く言葉が言えなくなる。
「・・・分かって、ます」
昨日の話。
藤原妹紅と姫がまた言い合いになっていたのが白熱してそれ自体は日常茶飯事というかそれなりによくあることで誰も気にしなかったのだけれど、
流石にスペルカードを取り出したときに○○が動いた。
彼女の撃った弾幕が、それを避けた姫の真後ろにいた私に当たりそうになったのだ。
その時藤原妹紅を怒鳴りつけた剣幕はいつも穏やかな○○にしてみればあり得ないほどで、私やてゐや姫、藤原妹紅どころか楽しんで見ていた師匠でさえ呆気にとられたのだった。
だから私には傷ひとつないのだけれど、私を庇って代わりに撃たれた○○は弾幕にかすって傷を残すことになった。
だから、今私は○○とどんな顔をして会えばいいのかが分からなくて、こうしてうだうだしていることしか出来ないのだ。
伸ばしかけた腕を引っ込める。
手の甲をドアに触れさせて、けれどその次の動作には移れずに何度も何度も降ろしては意を決して持ち上がるのだがその先には続かない。
何度となく同じ動作を繰り返しては諦めたように溜め息をついた。
けれどここで逃げてしまえば更に謝りづらくなるだけだと分かっている。
そうして更に時間は過ぎてうだうだしていると、不意に扉が迫ってきた。
否、開いたのだ。
「・・・・部屋の前に誰かいると思ったら・・・・どうかした、鈴仙?」
「あ・・・・○○、あの」
「うん?」
「・・・・ごめんなさい」
やっと言えたのはその一言だけだった。
庇ってくれてありがとうも、傷つけてしまったことも何も言えずに、何よりも言わなければと思い込んでいたものしか出てこなかった。
一瞬、○○は驚いたように瞳を開いて、それからすぐにゆるりと笑った。
ぽんぽん、と軽く頭を撫でられる。
「俺は別に男だし、こんな傷の一つや二つで大騒ぎするものでもないよ。
それより体が冷えるから、早く部屋に戻ってちゃんと寝て明日もちゃんとご飯食べて。そうしてくれた方が俺は嬉しい」
「う、うん・・・・」
「お休み、鈴仙。よい夢を」
「おやすみなさい」
部屋に戻る背中に声がかかる。
そんなに俺に侘びがしたいなら、明日は永遠亭のみんなで一緒に午後のお茶でもしようか。
他愛ない約束で全てを流してくれる○○はもういつもと同じで優しかった。
そのことが嬉しくて私はうんと頷いて、それから見上げた空には砂金を散らしたように満天の星があった。
きっと明日は、晴れになる。
11スレ目>>35
恋愛の形は人それぞれ、なんて言葉がある。
なるほど、今の永遠亭をあらわすのにこれ以上の言葉はあるまい。
「いやぁ、水も滴るいい男とはよく言ったものね」
「そういうてゐの方こそずいぶんと真っ白い肌をしているじゃないか」
「「ふふ、ふふふ……」」
今、私の前には一組の男女がいる。
すなわち頭から水をかぶった○○と小麦粉まみれのてゐである。
この状況を的確に表現するならお互いがお互いを同時に罠にはめた、とでも言おうか。
とにかくこの二人のせいでこの部屋は大変な惨状になっている。
正直に言うとこの色気もへったくれもない二人がどうして恋人と呼ばれる関係でいるのかいまだにわからない。
ただ対峙している二人の顔はどちらも不敵で、かつ親愛に満ちていることはわかるから私にはおよびつかない絆があるのだろう。
しかしそれに私を巻き込むのはやめてほしい。
「二人ともずいぶんとおもしろいことをしてるわね」
「「ひぃっ! え、永琳!?」」
ほら、まごまごしてるうちに来ちゃった。
「さて、言い訳はあるかしら?」
「えっとだな……。これは不可抗力というか何というか……」
「そ、そうウサ。 私たちは悪くないウサ」
「赤いのと青いのとどっちがいい?」
「い、いやぁーー! 青いのはダメー! 死ぬー! ていうか赤いのもやめてー!」
「ダ、ダメ! あんなに大きい針は入んないから。もう注射じゃなくて兵器だから!」
どうやら師匠の言葉は彼らのトラウマを問答無用でこじ開けたようだ。
「永琳さん! やめてください!」
と、この永遠亭にすむ男たちの中で一番人畜無害なのが出てきた。
「あら、邪魔をするの? ●●?」
「そうじゃなくて……。その……、僕にもやってください! できれば両方!」
そう、人畜無害ではある。ただのマ○でしかないのだから。
彼のおかげで師匠の私への仕打ちは減っているので感謝はしている。
けれど近寄りたくはない。
「そう。ならついでに黄色いのもやってあげるわ」
「ええ、ぜひお願いします!」
サ○の師匠と彼はいいコンビ、いやいずれはいい夫婦になるのかもしれない。
ただ私としては、どこか遠くでやってほしいと思う。
「ういーっす、ってまた何かやってるのか?」
上下にジャージをはいた、だらしない男がやってきた。
今来た男はこの中で一番のダメ男であり、いわゆるニ○トと呼ばれるやつである。
え? 姫も同じだって? 姫は働かないのが仕事でしょ。
ていうか、こいつを見たのは三日ぶりだ。まぁいつも姫と一緒にひきこもってるからな。
このダメ人間が四六時中姫とイチャついていると思うとムカムカしてくる。
いつかやつの顔面に鉛玉をぶち込みたい。
と、どうやら事態は最終局面へ向かっているようだ。
とばっちりが来ないうちに自分の部屋へ戻っていよう。
「さぁ、命乞いの準備は出来たかしら?」
「ひっ! め、めーりんめーりん助けてめーりん……」
「あ、や……やめて……ウサ」
「はぁはぁ……。もっと! もっとやってください!」
「なぁ、いったい何が起こってるんだ?」
もう一度言おう。恋愛の形は人それぞれである。
けれどせめて私だけは普通の相手と普通の恋愛をしたい。
これが今の私の切実な願いである。
8スレ目 >>252
永遠亭。一人の人間と一匹の月兎が縁側に座っていた。
「ほらほら~じゃんじゃん飲みなさいよ○○~」
「いやいや落ち着け鈴仙、お前大分酔ってるだろ。」
「なにお~!そ~いう○○こそ顔真っ赤で酔ってるんじゃないの~?」
四半刻ぐらい前からすっかり出来上がった鈴仙が指摘する。
「それはその、お前がそんなにくっついているからだな…」
「あ~○○照れてるんだ~、か~わい~か~あい~」
呂律が回っていないんだかなんだかよく分からない。
「とりあえず落ち着け。お前酔いすぎだ。頭冷やせ。」
夏だということで永遠亭メンバーで軽くプチ宴会でも開こうということになったのだが、ビールから始まり
焼酎になって、鈴仙が酔い始めたあたりで永琳師匠が、
「お邪魔虫は退散するから頑張ってね~」
と、まだ飲み足り無そうな輝夜さんとてゐを引きずって部屋へ引っ込んでしまった。
「べろべろの鈴仙を押し付けられただけのような気がするんだがな…」
「む、なんかいった?」
流し目でこちらを睨んでくる鈴仙。手には座や…ゲフンゲフン銃弾。何処にぶち込む気だ。
「イイエナンデモアリマセン」
「ならよろしい」
「早いとこ寝かしつけないとな…酔っ払いはどうも苦手だ…」
この前博麗神社の宴会にも行ったが、酔った白黒魔法使いや小鬼にからまれ、気づくと半分体をスキマに押し込まれて寝ていた。
「だから~酔ってないってば~」
「ウソつけ!じゃここにグラスが幾つあるか数えてみろ。」
ちなみに、今は鈴仙のグラスと俺のグラス、師匠たちが置いてったグラスで計五つある。
「えーっと一、二、三、四、五個あるわよ。」
鈴仙は一個一個触って確かめる。
姑息な手を使いおってこの月兎が。
「○○だって酔ってるんじゃないの?ほらほら、ピンクの象が見えてませんか~?」
おいおいそれはアル中の幻覚だろうって…
「うわ!わわ!」
「あはは~図星かなっ?」
んな馬鹿な。実際見えるったって俺はアル中じゃない。ちょっと待てまさか…鈴仙の目を見る。
「あっ、てめ、卑怯な!ビビったじゃねえか!」
「わはは。ばれたか~」
「ばれるわ!あーびっくりした~」
鈴仙は幻視を使っていた。波長をずらすとこんなことまで出来んのか。
「あーもうさっさと寝ろ!俺ももう寝る!」
「えーじゃあ最後に一つお願い~」
「なんだ、もう飲まないからな。」
「いやそうじゃなくてさ…」
鈴仙がなぜかもじもじしている。ええい何だ。
「早くしろ。俺はもう眠いんだ。」
「あの、そのさ。そ、添い寝とか…」
「はぁ?( ゚Д゚)」
今何と言った?わが耳がこの歳にして逝かれたか。
「だからその、添い寝を…」
「寝言だったら床についてから言ってくれ。」
しかし鈴仙は意識ははっきりしているようだ。
「じゃあせめて布団まで連れてって。」
まあ実現可能な願いのうちに聞いておこうと、鈴仙をお姫様抱っこする。
重くは無いがなんかこう、恥ずかしい。誰も見ていなくても。
「ほれつきましたよっと…」
部屋に着いて、鈴仙をおろそうとして気付く。
「す~す~」
「なんだ、もう寝てやがんのか…」
寝息を立てている。その寝顔を見て酒も手伝って少し理性が飛びそうになる。必死に押しとどめる。
「どっこら…よっと。」
少々爺臭い声とともに鈴仙を布団の中に転がす…ぼふっ。
柔らかい音とともに自分の体も布団の中に投げ込まれる。イヤボクナニモシテナイヨ?
「へへ~つかまえたっ!」
どうやら鈴仙に引きずり込まれたようだ。ちょっと待てまさか…
「添・い・寝」
「いやまて待てマテ!ヤバイって!酒入ってる!理性飛ぶ!かんべんして!」
必死にもがくががっちりホールドされて逃れられない。
「だいじょーぶそんなことしたら明日ぶち込むから。」
「いやそれ大丈夫じゃない!ぶち込むって何を!?」
「じゃおやすみ~」
その頃部屋の外。
「あらあら優曇華やるわね~」
「いいんですかししょー?あれあのまんまで。」
「大丈夫。なんかやりそうだったら少し物音出せば止めるわ。」
「理性飛んだら関係無いと思いますが…」
「あの~師匠とてゐさんそんな床でボソボソ話しこんでないで助けて~」
「「!!」」
「き、気付いてたの?」
「そりゃししょーこんなふーに話してりゃーねー。…撤退!」
「あ、てゐ!待ちなさい!自分だけ逃げるなんて…」
「そういって師匠だって逃げてるじゃないですか!たすけてえーりん!」
結局鈴仙が寝て少ししてから抜け出しました。
オチなし。
8スレ目 >>829
はぁい!私は鈴仙・優曇華院・イナバ!れーせんって呼んでね(はぁと
それはさておき、師匠に頼まれた薬の材料を探しに山に入ったのはいいんだけど
「迷った」
迷っただけならいいのよ、崖から落ちたら下が川で少し流されて此処は何処でしょう?
足も捻ったか折れたかで痛いんですよ、もう歩くのも億劫で
「誰かー!たーすーけーてー!」
こんな山奥になのに妖怪一匹いやしない、人間なんかいるわけもない
もう・・・やだ(涙
もう今日は眠ろう、川が近いから水には困らない、妖怪に食べられないかが心配だけど
ああ、ねむたくなってk
「お嬢ちゃん!?大丈夫かッ!?」
何か幻聴が聞こえるーなんだー?
私の意識は其処まで考えてきれた
「おっ!目が覚めたかい?」
あれ?ここは・・・
「ここは俺の山小屋だ」
「嗚呼、私助かったんですね」
「森で人が倒れてると思ったら人じゃなかったし、どうしようか迷ったけどまぁ・・・」
何だこの男、きこり?某格闘漫画のキャラみたいな筋肉だ、ゆーじろーこえー
「ありがとうございました、迷って、怪我して・・・よかった」
「足は折れてはないみたいだ、一応応急処置はしておいたから」
足には包帯が巻かれていた、葉っぱか何かが当ててあるのか、薬草だろう
「しかしブレザーで山入るのはどうかと思うよ?スカートは危ないし」
「はい、今度から気をつけようと思います」
「ま、妖怪だから大丈夫か!そういえば君ってほんとに妖怪?」
「ん~まぁ妖怪です、一応」うさみみもーどですもん(違
「ふーん、あと少ししたら日が昇るから此処を出よう」
うっすらと空が白み始めてる、ああ、もう一日経っちゃったか、師匠怒ってるかなぁ
おかゆをご馳走になった、美味しかった、やっぱ山菜と岩魚だね
「はい」
「はい?」
いきなりしゃがんで背中を向けられた、はい?
「おんぶ、その足で歩くのはよくない」
「いや、けど」
「遠慮するな」
結局おぶってもらいました、背中広い!筋肉!
一度里に下りて、其処から永遠亭まで送ってもらう事にした
「此処だったんだ、全く反対側・・・」
後ろから指差して指示を出し永遠亭まで・・・到着した
「此処でいいのか?」
「はい、ありがとうございました、いつか恩返ししますね!」
「兎の恩返しか・・・じゃあ一ついいかな?」
「はい、なんですか?」
「今度また・・・いや、止めておこう」
「?」
「今度は家に遊びにおいで、お茶ぐらいは出そう」
「は、はい・・・あの名前を聞いてなくて」
「俺ぁ○○、しがない山男だ」
何か複雑なポーズをとってた、こえー
「○○さん!此処にも遊びに来てくださいね!」
去っていく彼に、呼びかけた
彼は振り返らずに、手ふっていた
最終更新:2011年02月26日 22:52