鈴仙8



うpろだ1198



 誰かが泣いている。
 誰かが許しを請うている。
 泣く必要は無いのに。謝る必要は無いのに。
 朧気に浮き沈みする意識はそう思うのだけれど、布団に伏せた体はぴくりとも動かない。

 誰かが泣いている。
 誰かが許しを請うている。
 嗚咽の混じったその声が、あまりにも綺麗で、悲しかったから。

 その時、彼は決めたのだ。
 泣いている誰かのために、何かをしようと。

ーーー

 ちりんちりん、家の扉を開けて目に入るのは、幻想郷の家屋にしては珍しい、玄関と広間が一体になったような部屋。
 同時に扉の上部に付けてある涼しげな風鈴が音を発し、客の来訪を告げる。
 客――鈴仙・優曇華院・イナバはそれ程広くはない部屋をくるりと見回し、誰もいないことを確認すると同時にため息。
 毎度のことながら、この場所にはあまり来たくない。
 薬売りの道の最後に必ず寄る事になっているこの家。この家の主にかけてしまった迷惑の事を考えるとあまり顔を出したくないのだ。
 ここだけはてゐに押し付ける、という手もあるのだが、師匠にあることないこと吹き込まれても困る。
 もう一度部屋の中を見回す。
 大量のタオルが泳いでいる水槽に、いくつもの鋏が整頓されて置かれている棚。高さの調節が可能な椅子が部屋の中央で、自らを部屋の主だと誇るようにふんぞり返っている。
 誰もいなければ、用件だけ済ませて帰っても構わないだろう。
 鈴仙がほっとしながら荷物を地面に降ろした時だった。

「えっと、誰か来てるの?」

 彼女から見て右、窓の奥のほうから声が聞こえてきた。
 何だ、いたのか。
 少しの落胆。ため息と共に声が聞こえてきた方角へ向けて声を発する。

「こんにちは、○○、いるかしら?」
「あー、鈴仙? 今、裏にいるからちょっと待っててもらえる? すぐに終わるから」

 ああ、仕事の最中か。
 耳を済ませてみれば、誰かが嬉しそうな声を上げているのが分かる。
 この声は、氷精だろうか。妖精がこの店を利用している、というのは何だか変な感じがする。
 やっぱり、物だけ置いて帰ってしまおうか。その場に立ち尽くしたまま数分経ってから、ようやく鈴仙はそう考える。
 うん、そうだ。そうしよう。そう決意して踵を返すと、先程自分が入ってきた扉から、一人の男が入ってくる。

 咄嗟に、目をそらした。目線を、合わせないように。瞳を、覗き込まれないように。
 そらした目線の端、男が口元を寂しそうに歪めたのが見えたが、気付かない。気付いていないという事にしておく。

「おまたせ、鈴仙。毎日ご苦労様」

 その辺座ってよ、という言葉に鈴仙は、部屋の隅にある椅子を引っ張り出して腰掛けた。

「ううん。それで、調子の方はどう?」
「あー、仕事の方? おかげ様で順調だよ。さっきもチルノが来ててさ。妖怪とかそっちの方にも受けがいいってのは客商売としてどうなんだろうね」

 この問いかけには二つの意味がある。一つは彼の仕事の話。そして、もう一つは――

「……じゃあ、記憶の方はどう? ○○」

 ○○と呼ばれた男が、お茶の入った湯飲みを両手に持って近づいてくる。片方を鈴仙に渡すと、残りの片方に口をつけながら彼も椅子に腰掛ける。

「……そっちは今ひとつ、だね。この間来てくれた時と対して変わってない」
「……ごめんなさい」
「なんで謝るの。鈴仙が気にする事じゃないってば。きっとこっちに来た時にはもう記憶なんて無かったんだよ」

 ○○は最近、幻想郷に迷い込んできた外の世界の人間――らしい。
 らしい、というのは本人が記憶喪失に陥っている為、外見からそう判断している、という理由からだ。

「でも……」

 鈴仙は口ごもる。竹林の中に突如現れた○○の第一発見者は鈴仙であり、その時、ちょっとした事故がおきてしまった。
 目を、合わせてしまったのだ。鈴仙が持つ赤い瞳――狂気の瞳と。
 彼の記憶喪失はそれが原因だろう、師匠の永琳に言われなくても、瞳の持ち主である自分は十二分に理解している。
 だからこそ発生してしまう、負い目のようなもの。それが鈴仙がここに近づきたくないと考える理由である。

「あ、そうだ。持ってきてくれた物、確認してもいいかな?」

 ちょっと強引な話題転換。お使いの品の確認、永遠亭の使いとしての自分。その立ち位置は、彼女にとって救いの手。

「ああ、ごめんね。ちょっと待ってて」

 言って、鞄から乳白色の液体の入ったボトルを十本ほど、目の前の机に並べる。
 次いで、二つ折りにされた師匠直筆のメモを開いて渡す。
 ○○はそれを受け取ると、中をさっと確認し、頷きを一つ。

「ありがとうね、俺がこうやって店出してられるのも、永遠亭のみんなのおかげだよ」
「ところで……効果ってどうなの?」

 ちょっとした興味。何だかんだで世話焼きな師匠の事だ。弟子の不始末は師の不始末、とばかりに色々と気を配っているのは分かる。
 鈴仙の質問に、○○は嬉しそうに答える。

「ばっちり。たまーにくる里のお客さんにも好評だし、魔理沙が何本か持って行っちゃった。永遠亭で売り出したらどうかな? 多分売れるよ、これ」

 あの黒白め。おかげで私の仕事が増えるじゃないか。
 内心そんな愚痴を零しながらも、そうまで言うなら自分も一度使ってみようか、なんて気分にもなる。
 立ち上がった。用事は済ませたし、これ以上ここに居る理由は無い。

「じゃあ、今日はこれで。また必要になったら連絡して頂戴」

 言うだけ言って、踵を返す。そのまま出口へ向かって歩を進める。

「ねえ、鈴仙」

 足が、止まった。
 足を止めたまま、振り返ることは無く、相手に答える。

「何?」
「あのさ――」

 そこで、しばらくの間があった。
 彼にしては珍しい事だった。何を言うべきか迷っている、という空気が後ろから感じ取れる。
 沈黙の空間がいくらか続き、彼はついに、何かを決心したかのように、ふ、と息を吐いてからこう言った。

「あのさ、もし良かったら、髪切っていかない?」

 右手にある空間を見た。
 タオルが泳ぎ、鋏が並び、高さを変えられる椅子が部屋の中央でふんぞり返っている。
 そこは世間一般で床屋と呼ばれる職業の人間の仕事場で、それはつまり○○がここで床屋を営んでいるという事を意味している。
 記憶喪失の彼の荷物は櫛と鋏と剃刀で、記憶はなくしてもその使い方と技術だけは忘れていなかった。
 だから、彼は永遠亭を出て、店を開いた。
 何時までもここでお世話になっているわけにはいかない、と言っていたし、記憶に残っている行為を続ければ自分の記憶も戻るかもしれない、とも言っていた。
 はじめは永遠亭全体が反対していたが、試しにと何人かのイナバの髪を切らせてみれば、それは確かに様になっており、コレなら問題はないだろうとの結論が出たのだった。

 鈴仙が届けているのは、彼女の師匠特性の洗髪料だ。
 彼が師匠を薬師と見込んで頼みがある、などといって洗髪料の調合を頼み込んだ時は流石に開いた口が塞がらなかったが、当の本人が楽しそうに調合しているのだから、まあいいのだろう。

「……」

 少しだけ、考えた。
 最初は不安そうにしていたイナバが、作業を終えた後嬉しそうにあちらこちらを飛び回っていたのを思い出す。
 そんなに、いいものなのだろうか。
 興味を惹かれたというのもあるし、時間に余裕があるというのもあった。
 そして、なによりも。
 彼の手で髪を切ってもらいたいという願望は、彼が床屋である事を知ったときから、鈴仙の心の何処かで、間違いなく存在していた。

「……じゃあ、お願いしようかな」

 彼は、何処か安堵したような表情を浮かべて、部屋の真ん中にある椅子を指し示した。
 それに従い、椅子に腰掛ける。
 刈り布をすっぽりとかぶり、手回しで高さを調節する椅子が鈴仙を乗せて上昇する。
 鏡の向こう側の彼と目を合わさないように、薄く目を瞑った。
 霧吹きが髪を湿らせる感触が閉じた視界では強烈で、ぴくり、肩が震える。

 ――しゃりん。
 髪に櫛が入り、二枚の刃が触れ合う音がする。
 視界を閉ざした鈴仙の後ろから発せられるその音に、それ程恐怖を覚えない。

 目を閉じて、鋏が立てる音を聞きながら思い返す。
 初めて彼と出会ったあの時を。そして自分が起こした過ちを。

ーーー

 その時、鈴仙は竹林の中を歩いていた。
 師匠に薬の材料を取ってくるように言われたのか、何か用事があっててゐを探していたのか、それは覚えていない。
 風の吹かない夜だったことは覚えている。上弦の月が照らす光だけが世界の光源で、それだけあれば充分な明るさだったことも覚えている。

 静かな夜だった。蓬莱の人の形と月の姫が、二人の間にしか成立しないお遊びに興じる事も無ければ、誰かが弾幕を放つ轟音も無かった。
 しばらくの間一人で歩いていると、ふとした拍子に視線を感じた。
 周りを見ても誰もおらず、波長を用いて周囲を見渡しても何も無い。
 気のせいだ、と判断して再び歩き出したその時に、突如風が吹いた。
 思わず体を庇ってしまうほどの強風だった。草や枝が舞い上がるのを感じた。
 何の予兆も無く生じた風に疑問を覚えると同時に、風は止んでいた。
 代わりに鈴仙の視界に映っていたのは、一人の青年。
 鈴仙の足にして三歩ほどの距離に、呆けたように突っ立っていた。

 何が起きるか分からない世界とはいえ、今まで何も無かったところにいきなり人が現れたら唖然としてしまうのは道理という物。
 じろじろと、という表現で青年を見てしまっていた。
 突然現れた青年。怪しいし訳が分からなかった。視覚で情報を得る生物である以上、彼女がそれを観察しようと見詰めるのは、間違ってはいない。

 いや。
 思えば、鈴仙のその行為は、見惚れていた、と言ったほうが良かったのかもしれない。
 居なかったはずの場所に気がついたら居た、という現象よりも、その人物の姿形や自分よりも高いくらいの背の高さ、月の光を跳ね返す黒髪に、見惚れていた。
 一目惚れという概念は、存在する。その時の鈴仙の状態は、間違いなくその単語に合致していた。
 青年が、我に返ったように周囲を見渡し、視界に鈴仙を納めた。

 鈴仙に、目を合わせて。
 何かを訊ねようと、口を開く。

「――あの、」

 胸が、高鳴った。
 視線は、絡まったまま。
 だから、きっとそれが引き金だったのだ。

 青年は、突如苦悶の表情を浮かべたかと思うと、声を発する事も無く倒れてしまった。

 色彩に濃淡があるように、記憶にも濃淡はある。
 その日の出来事の中で、記憶に濃く残っているのはそこまで。
 慌てて永遠亭にその青年を運び込んだ事とか、師匠に青年の世話をするように言い付けられた事とか、そういったことはぼんやりとしか覚えていない。

 ――いや、もう一つだけ。こびりつく様に記憶に残っている事柄が、一つだけある。
 目を覚まさない彼に、謝った。
 一目惚れしてしまった彼をこんなにしてしまったことを、泣きながら謝った。

 彼との出会いが長い時間の中で風化していってしまうことがあっても、きっとそれだけは朽ちることなく脳裏に残るだろうという確証がある。
 あの姿に自分が見惚れなければ、あの声に高鳴る胸が無ければ。そもそも、最初に出会ったのが自分でなければ。
 彼は、こんなことにはならなかったのだ。

 その思いは鈴仙の体を這う鎖となり、彼が目を覚まし、記憶を失っていた事で彼女を縛り上げてしまった。
 結果生まれる、苦手意識のようなもの。それが、彼女から青年を遠ざけた。
 用事があれば話しかけたし、呼びかけられればそれに答えた。
 けれど、そこに初めて相手を見たときの思いが見え隠れしないように。
 想いを鎖で縛って、心の奥底に沈めていた。

ーーー

「――はい、おしまい」

 風が○○の声を運んでくると同時に、それまで彼女を包んでいた布が取り払われるのを感じる。
 椅子が下がっていき、服を手箒で軽く払われる。閉じていた目を開き、手渡された手鏡を恐る恐る覗き込み、思わず息を呑む。

 作業としては、大した物ではない。腰まで届くほどの長髪を、肩口まで切って全体を整えただけ。
 けれど、鏡の中に移っていた自分はそれまで見た事のない自分だった。
 これが本当に私なのだろうか、そう思うと変身した自分が不安そうにこちらを見る。

「どう……かな?」

 ○○の声に、怯えが混じっているように感じられる。
 何も言わずにずっと鏡を見つめている自分が怒っていると感じたのかもしれない。

「凄い……これ、本当に私?」

 逆だ。思わず聞き返してしまう。
 立ち上がると頭は軽く、今飛び上がればそのまま月まで行く事が出来そうな錯覚を受けるほど。
 ○○は両手に持っていた刈り布を手首でばさりと一振りして、ほっとしたような笑顔を見せる。

「大丈夫、今俺の目の前にいるのは鈴仙、君だよ。気に入ってくれた?」

 頷く。嬉しさでそのまま舞い上がりそうだった。そのまま舞い上がれそうだった。

「良かったー、鈴仙って髪が綺麗だからさ、こういう事言い出すのに凄く勇気が必要だったんだ」
「な……!」

 さらりと口に出された自分への褒め言葉に対応できなくて、顔中が真っ赤になる。
 何を言うかな、と搾り出すように呟く。

「だって事実だもん。俺、鈴仙のその綺麗な髪、大好きだよ」

 顔の赤みが濃度を増す。何でこう恥ずかしいことをさらりと言えるのだろうか、彼は。
 悔し紛れに反撃してみる。

「……ふ、ふーん。髪だけなんだ。君にとっての私って」

 言ってみてから、とても悲しい事実だと思う。
 知っている。この散髪師は、髪を切るという行為が心の底から好きなのだ。だから誰が相手でも真摯にその髪を切り、相手を喜ばせる。
 その情熱は髪に向けられているものであって、個人に向けられているものではない。

 言われた相手は、その言葉に困ったように笑う。
 その笑顔はきっと、彼女の好みの顔。

「どう、だろうね。もしかしたらそうなのかもしれない」

 思う。私の好きな笑顔で、言わないで欲しいと。分かりきった答えでも、曖昧なまま希望を残していて欲しかった。
 踵を返す。薬売りの仕事はもう終わっている。今日は竹林の中をふらふらと歩いて帰ろう。

「でもね、知ってる? 俺がこんなに相手のことを考えて髪切ったのって、鈴仙が初めてなんだよ?」

 足が、止まる。

「突然この世界に来て君の赤い瞳を覗き込んだあの時から、君が俺のために泣いてくれたあの時から。
 いつかこの人の髪を切ってあげようって、決めていた。
 それが俺に出来る恩返しの形だろうって、朝も昼も夜もずっと、君に似合う髪形を考えていた。
 はは、おかしいよね。髪型を考える為に顔を知って性格を知って好みを知って、気が付いたら惹き込まれちゃってた。
 凄い時は一日中何をやっても君のことしか考える事が出来なかった日もあった」

 背後から、抱きしめられる。

「ねえ、鈴仙。今日髪を切ったのは、ここが境界だったからだと思うんだ。
 これ以上君を考えていたら、俺はきっと君に恋してしまう。君のことしか考えられなくなると思う」
「……その気持ちが、私の瞳から生まれた狂気の結果でも? 私は君を狂わせてしまったんだよ。
 狂気の中でねじ込まれた想いなんだよ、君のそれは。だから私は、君に好かれる資格なんて、無いんだよ」

 そう、思い込もうとしていた。
 出会いが悪かったのだと、諦めようと思っていた。
 なのに、彼の腕の力はますます強くなっていくのだ。腕の温もりが、思い込みを打ち砕いていく。

「関係ない。始まりがどれだけ不純でも、間違っていても。今の俺はきっと、君が好きなんだ。
 狂気がどれだけ心を蝕んでも、それだけは決して歪みやしない。絶対だ。
 だから、聞かせてくれないかな。俺は君に恋しても、いいのかな……?」

 変身した自分が、今までの臆病だった自分に勇気を与えてくれる。
 両手を広げればどこまでも走っていける気がする。今ならどんな相手も敵じゃない。

 澄み渡る青空に、彼女の声が吸い込まれていく。
 狂気の瞳が介在する余地も無い、一つの答えが導かれる。

「……私は――」


新ろだ12


 鈴仙と喧嘩になった。
 原因は、俺の目の前の食卓にある。
 人参のグラッセにソテー、かき揚げ、きんぴら、煮物、野菜スティックにんじんのみ。
 人参50%のメンチカツ、にんじんの味噌汁、そしてデザートは冷蔵庫ににんじんゼリーだそうだ。
 そして、俺は人参が嫌いだ。



 それは俺と鈴仙が一緒に、里の食堂で昼食を食べていたときだった。
「そういや鈴仙って料理できるのか?」
「そりゃ出来るわよ?なに、もしかして出来そうにないって思ってる?」
「いやぁ、永遠亭に遊びに行くと、いっつも他のイナバ達がご飯の準備してたから、ね」
「む、それじゃあ今日の夜は私が腕をふるうわ!」
「おお、それは楽しみだ。期待してるぜ」



 そして現れたのは、忌々しき根菜どもだった。
「鈴仙、一つ言い忘れてたことがある」
「何?」
「俺、人参ダメなんだ…ちっこいガキの頃から、一度も口にしてないぐらいに…」
「……ねぇ、○○……」
「……すまん……」
「人参も食べられないのに、月の兎を彼女にしたっていうの?
 酷い…○○がそんな人だったなんて…」
「え、あ、いや、でも、愛は本物だかr」
「食べて」
「え゛」
「愛が本物なら、食べて」
「……どうしても?」
「……」
「……」
「そっか…それじゃもう片付けるわ」
「すまん……」
「いいのよ、○○との縁もこれっきり片付けるから!」
「え!?」
「当たり前じゃない!人参も食べられない人とこれ以上…これ以上……ぐすっ」

 鈴仙は泣いていた。
 考えてみれば当然だ。
 折角腕を振るって作った料理に箸すら付けてもらえなかった。
 人参が食べれるか否か、じゃない。
 俺は鈴仙の愛情を撥ね付けたんだ。

「……食うぞ」
「いいの、無理しないで」
「鈴仙泣かせたままにする方が、俺にとっては無理なんだよ!
 大体、折角彼女が作ってくれた料理に一口も手を付けないとか、彼氏のすることじゃないからな!
 さぁて、全部平らげてやるぜ!」
「○○…」




 大見得を切ってはみたものの、これはとんでもない難題だ…
 何とか食べ進むには…加工度の高い料理からいかなくては…
 まずはメンチカツだ。
 こいつならば、肉と半々で、しかも衣を付けて揚げてある。
 ソースを多めにかけ、覚悟を決めてかじりつく…

 サクッ

 心地よい歯ごたえと共に、人参の臭みが…こない。
 下処理がいいのか、人参の嫌いな部分は何一つなかった。
 これは美味いじゃないか。

「大丈夫、○○…?」

 次にかき揚げを口に運ぶ。
 サクサクとした歯ざわりと共に人参の嫌な味が…ない。
 …?これは…?

「うん…」

 きんぴらと煮物に箸を付ける。
 ……そういえば、最後に食べてから既に軽く十年以上の歳月が流れているわけだ。
 要はあれだ…食わず嫌い状態。
 人間、成長するうちに味覚にも変化が出て、嫌いだった物も平気になってくることがままある。
 ただし、それを食べる機会がなければ、気付くはずもない。
 俺は、目の前にある人参のフルコースを既に楽しみ始めていた。

「○○、普通に食べてるように見えるんだけど…」
「ああ、どうも食えるっぽい。っていうか普通に美味しいわ、これ」
「なによそれ…」
「いやぁ、最後に人参食べたのって、ほんとに小さい頃だったんでな。
 もう平気になってたっぽい」
「はぁ…一口食べたら許してあげようと思ってたけど、なんか拍子抜けしちゃったわ」

 結局、人参のフルコースを平らげて満腹になった俺は、縁側で月を見ながら休憩していた。
 今日は十六夜、綺麗な月が雲の無い空に浮かんでいる。

「ちと食いすぎたか…」
「私の分まで全部食べたら、そりゃお腹もきつくなるわよ」
「いや、食ってたら止まらなくなってさ…」
「ふふ、でも、嬉しかった。
 あんなに美味しそうに食べてくれたんだもの」
「本当に美味しかったからなぁ…また作ってくれよ。
 ああでも…さすがに人参フルコースはやりすぎだぜ?」
「あ、あれはその…好きなもの作ってたらああなっちゃって…えへ」
「兎の人参好きは恐ろしいな…」

 月明かりに照らされた鈴仙の顔は、息を呑むほどに綺麗だった。
 同時に、もし人参が今でも食べることが出来なかったら…
 俺は、この綺麗な顔を見ることが出来たんだろうか…

「なあ、鈴仙…俺が料理を一口も食えなかったら、本当に…」
「…その時は、人参1%入りのオレンジジュースで勘弁してあげたわよ」

 鈴仙は、月の兎というよりも悪戯兎のような顔で微笑んだ。

「やっぱり鈴仙は優しいな」
「貴方には特別、ね」

 俺達は少しの間見つめ合うと、どちらからともなく笑い出した。


うpろだ1268


「こんにちは、薬の点検に来ました」
「来たよ~」
「ちょっとてゐ、挨拶ぐらいちゃんとしてよ!」
「はは、ご苦労様。
 それじゃあ上がって、薬を見ておいてくれ。
 その間にお茶を淹れるよ」
「あっ、いつもすみません」
「今日のお茶菓子な~に?」
「てゐったら!」
「今日はブランデーケーキだよ、新聞で見かけたんで買ってみたんだ」
「やった!それ一度食べたかったんです!」
「鈴仙ったら~」
「あはは…し、失礼しました」

 ここは里の薬局兼俺の住居。
 いや、正確には永遠亭の出張所か。
 人里から永遠亭は結構遠い為、薬だけでも提供できるようにと作られたのだ。
 そして、その少し前に隣家の火事で家が焼けて困っていた俺が店番として雇われた。

「薬はあんまり出てないみたいですね」

 薬の残りを確認している鈴仙が声をかけてきた。

「ああ、薬はね…」
「薬局なのに、カレー粉ばっかり売れてるね~」
「確かに材料はほぼ漢方薬とはいえ、売上の半分以上がカレー粉ってどうなんだろうな…」
「診察に来た親御さんが、子供が食欲が無いときでも食べるからって買ってるって師匠が。
 体壊して薬を飲むぐらいなら、そのほうがいいですもんね」
「最近暑いからな…無理もないか」
「そういえば、お茶は熱い奴?」
「いや、朝方にチルノを捕まえて氷を作ってもらったよ。
 冷やしカレーが気にいったらしい」
「さすが子供ね…」

 お茶を淹れ、ケーキを切って居間に運ぶ。
 氷水で冷やしたおしぼりも
 ブランデーケーキの甘い匂いが、薬局の方まで届いたようだ。
 鈴仙とてゐが、呼ばれるまでもなくやってきた。

「いい匂い~」
「薬の補充、終わりました。
 夏祭りが近いから、酔い覚ましなんかを多めに置いておきました」
「ご苦労様、二人とも。
 今日はアイスティーにしといたよ」
「やっと人心地つけるわ、もう暑くて汗だくなんだもの!」
「ほんと、今日は暑いよね~」

 よっぽど暑かったのか、鈴仙はネクタイを外し、ボタンを二つほど外している。
 冷たいおしぼりをおでこに当てながら、ストローでアイスティーを飲んでいるが、当然、少し前傾になるわけで…
 正直、目の毒だ。

「あー、生き返るわー」
「死んでないけどね~」
「確かに暑いのは分かるが、落ち着いたらボタンぐらいはきちんと掛けてくれよ。
 目のやり場に困る」
「えっ!?やだ、忘れてた!」
「そっか~、鈴仙も色気で男を釣る歳になったんだね~」
「ちょ、ちょっとてゐ!変なこと言わないでよ!」
「しまった、あまりにも美味しいエサにまんまと釣られた!」
「もー、○○まで!」
「どうよ○○?一家に一匹鈴仙ちゃん?」
「いや是非とも一匹所望いたす」
「価格は三百円ポッキリですぜ~」
「うぬぬ…月給三か月分か…月賦でおk?」
「一括のみ受け付けウサ」
「……」

   『幻 朧 月 睨 ( ル ナ テ ィ ッ ク レ ッ ド ア イ ズ )』


「「すんません、調子こきました」」
「分かればよろしい」

 物理破壊を伴わない、家にやさしいコスト5スペル。
 相手にも優しいのが今回ばかりは幸いした。



「そういえば、夏祭りは三日後だったっけ」
「ああ、救護テントは俺も手伝うんだったっけ…」
「そうよ、忘れないでよね。
 夏祭りを楽しめないのは残念だけど、みんなの思い出に影を落とさないようにするのも大事なんだから」

 ケーキをつつきながらの会話。
 夏祭りは残念ながら楽しめない。
 …だが、テントには鈴仙がいる。

「わかってるよ。
 まあ、今回は別に出店を回らなくてもいいしな」
「ほうほう、○○は別の楽しみを見つけたみたいだね~」
「ああ…だが言えば兎鍋だぜ?」
「亀の甲より年の功、幸せうさぎがそんな野暮しないって~」
「なにコソコソ話してんのよ、そこ」
「「なんでもないよ~」」
「…ものすごく気になる…」

 アイスティーとケーキを楽しみながらの、おばかな会話。
 この時間を過ごす為に、俺は生きているのかもしれない。

「ん~、このケーキおいしいね~」
「ああ、先にちょっと味見したけど、かなりいい味だよな。
 ちょっと酒がきついけど。」
「そう?丁度いいと思うけどな~」
「ん~、お酒の香りがすごくいいね~ほんとおいしい~」
「あれ?鈴仙ちゃん、ちょっと酔ってる?」
「よってないよ~?ケーキぐらいで月の兎が酔うはずないじゃない~あははははははは」
「あ、そうか…」
「え?なになに?」
「このケーキ、はじっこに酒がやたら多く染み込んでるんだ。
 鈴仙の皿のケーキ、ちょうどはじっこだ…」

 このケーキの端は、やたら多く酒を含んでいる。
 味はいいんだが、そのアルコール量は酔うには十分すぎる。
 味見をした俺が言うんだから間違いない。

「ん~おいしい~」

 鈴仙は、幸せそうにケーキを食べている。

「まあ、この後は帰るだけだから怒られたりはしないし、まあいっか~」
「いいのかよ!」



 上機嫌でケーキを食べ終えた鈴仙は、そのまま帰ると言い出した。

「本当に大丈夫か?」
「だいじょうぶだいじょうぶ~このていどなんてことないわ~」
「ちょっとやばそう…」
「ふう…てゐ、鈴仙のことよろしくな」

 そういって、俺はてゐの頭を撫でてやる。
 いつも帰り際にやっていることだ。

「はいよ~、ふふふっ」
「いっつもてゐだけずるい~!私も~!」
「えっ!?」

 鈴仙が、頭をなでてくれと言い出した…本格的に酔ってるな。

「はやくはやく~」
「はは、仕方ないな」

 鈴仙の頭を、言われるがままに撫でてやる。

「ん~♪」
「やれやれ…すっかり可愛くなっちゃって…」

 とん

 鈴仙が、頭を俺の胸に預けてきた。

「…鈴仙?」
「…ん…もっと…」

 鈴仙の頭を撫でている右手はそのまま、左手で鈴仙を抱きしめる。
 鈴仙も俺に抱きついてきた。
 両手を俺の後ろに回し、手を背中に這わせてきた。

「…鈴仙…」
「○○…」

 …ずっとこのままで…


「三分経過~」
「「えっ!?」」

 てゐの一言を合図に、俺と鈴仙はものすごい勢いで体を引き離した。

「あー、すまん。ちょっと調子に乗りすぎた」
「わ、私こそごめん…」

 顔が熱い…
 鈴仙の顔も真っ赤になっている。
 少し酒が入った状態とはいえ、なんとも恥ずかしいことをしてしまった。

「それじゃ、夏祭りでね~」
「ま、またね○○!」
「お、おう!」
「青春だね~」
「「うるさいよ詐欺ウサ!」」
「あれ?夫婦?」
「「……!」」

 そのまま、互いに一言も発することが出来ないまま、鈴仙とてゐは帰っていった。





「…あれ?三分経過とか、滅茶苦茶野暮じゃないか?」

 寝る前になって気付いたあたり、俺にも相当酒が回っていたようだ。

「…次は夏祭りか」

 次に鈴仙に会えるのは夏祭りの日。
 その日を待ち焦がれながら、タオルケットをかぶる。
 だが、俺の手は鈴仙の暖かい感触がいつまでも残っているかのようで、とても眠れそうにない。

「…鈴仙」

 愛する人の名を呟き、俺は無理矢理に目を閉じた。


うpろだ1270


 体に響く太鼓の音と、篠笛の調べが心地よい。
 夏の暑さも、夕闇と共に収まっていた。

「みんな楽しそうだな~」
「そうだなぁ…」
「ごめんなさいね、○○まで付き合せちゃって」

 八意先生が、申し訳無さそうに話し掛けてきた。

「あーいや、人里の祭りに救護テント出してもらってるんですし。
 毎年、医者が酔っ払って役に立たないのも分かってましたから…」
「医者が酔っ払うとか…結構無茶苦茶なのね…」
「腕は悪くないんだけどね、勧められると断れない人だから」

 そんなわけで、今年は祭の会場の二箇所に救護テントが出ている。
 普通なら患者は分散するはずが…

「鈴仙、消毒薬の瓶を取って」
「はい師匠。
 …気のせいか、みんなこっちのテントに来てるような…」
「医者がアテにされてないせいだな…」

 患者はほぼこちらのテントに集中していた。
 まあ、患者といっても大体は人ごみに酔ったか転んだ程度のものだが。
 それでもひっきりなしに来られると、なかなか辛いものがある。
 祭りの開始から2時間ほどして、やっと客足が落ち着いた。

「ふー、やっと一休みできるな」
「みんなご苦労様。
 てゐ、ちょっと抜けて食べ物と飲み物を調達してきてちょうだい。
 あ、チョコバナナだけは絶対に外さないでね」
「わたしかき氷!」
「俺は焼きそば!」
「らじゃ~!」(`・x・)ゞ

 てゐは何故か敬礼をして、外に飛び出そうとした。

「てゐ!ゲームは一回だけにしなさいよ!」
「鈴仙ちゃん、無駄に鋭いな~わかったよ~」

 ぺろっと舌を出して、てゐは雑踏に消えていった。

「一回ならいいんだ?」
「いつもなら真っ先に逃げてるはずなのに、今日は頑張ってたしね」
「そうね、珍しいこともあるものね…何かあったのかしら?」

 俺たちが不思議がっていると、一人の男が飛び込んできた。

「す、すいません、八意先生は!?」
「はい、どうされました?」
「頭を打ったまま動けなくなった人がいて…すぐに来てくれますか?」
「分かりました、場所は?」
「その…向こうの救護テントです…」
「…どういうことかしら?」
「それが、椅子に座ってる先生に無理に酒を勧めた男が、勢い余って先生を椅子ごと後ろに…」
「…はぁ…分かったわ。
 鈴仙、○○、悪いけどしばらくお願いね」
「わかりました師匠」
「はい、早く行ってあげてください。
 ここはしばらく大丈夫だと思うんで」

 八意先生は、愛用のバッグを持って向こうのテントに向かった。

「やれやれ…まさか先生が患者になるとはなぁ…」
「ほんと無茶苦茶ね…私達が居なかったら、ほんと悲惨だったんじゃない?」
「全くだな」

 この状況で、目の前で将棋倒しでも起ころうものなら、もはや手の打ちようがないだろう。
 四人いても対処できるかどうか分からないのに、今は俺と鈴仙の二人しか…
 …二人しか…いない…
 そのことに気付き、鈴仙の方を向いてしまった。
 鈴仙もこちらを見ていた。
 お互い、一言も発せず、身動きもしないまま、時間が流れた。


 ドーーーーーーーーーーーーーーン


 その音に、俺も鈴仙もびくっと体をふるわせた。

「花火が始まったみたいだ。
 お、こっからもよく見えるな」
「本当、綺麗ね…」

 テントから少し外に出て、花火を眺める。
 暗闇に咲く光の華をしばし眺めていた。
 ふと、横に居る鈴仙を見る。
 花火の光が、鈴仙の瞳に映り、色とりどりに輝いてる。


 気が付くと、俺は鈴仙の肩を抱いていた。
 鈴仙もこちらに体を預けてくる。 

「…綺麗だね…」
「うん…」

 俺と鈴仙は、花火が終わるまで、そのまま立ち尽くしていた。
 …今しかない、本気で気持ちを伝えるなら。

「すいません!うちの子が転んでしまって…」

 足に怪我をした子供を抱いた母親が駆け込んできた。

「あっ、はい!こちらに座らせてください。
 ○○、創傷用の一式用意して」
「あ、ああ、分かった!」

 …ま、次の機会を待つか…


 しばらくして、八意先生は向こうのテントでそのまま待機する旨連絡が来た。
 てゐは結局逃げたのか、そのまま戻ってくることは無かった。
 鈴仙は「もう!結局逃げたのねあの詐欺ウサは!」と怒っていた。
 そんな鈴仙をなだめつつ、やってくる患者の治療を続け、祭りは終了した。

「これで終わりかな…お疲れ様、鈴仙」
「うん…ほんと疲れちゃった…」

 鈴仙は耳までぐったりしていた。

「た、ただいま~」
「ちょっとてゐ!今まで…って、なんであんたがぐったりしてんのよ」
「ひ、姫に捕まって、そのまま今まで市中引き回し…」
「それはまた、大変な目に遭ったな…」
「それじゃあ責めるに責められないわね…ご苦労様」
「とりあえずかき氷以外は確保してきたよ~」
「お、それじゃ早速食べるか」
「うん、もうおなかぺこぺこ!」

 出店の焼きそばやお好み焼きを食べながら、くだらない会話をする。
 次こそは言葉で伝えよう、そう思いながら。




 花火が始まって、しばらくした頃。

「チョコバナナおまちど~」
「あらてゐ、どうしてこっちに?」
「あっちは熱くて近寄れないのよ~」
「ふふ、そういうことね。
 それじゃ、かき氷は私が頂いちゃおうかしら」
「半分ちょ~だい~」


うpろだ1276


今日は幻想郷でもっとも暑い日らしい
そして暑いといったら倒れる人も多いそうで、永遠亭で手伝いをするようにと師匠に呼ばれたので
来てみたら案の定



輝夜「あちいぃ~溶ける~溶ける~」



……とまあ、こんな感じであったので普通に師匠の手伝いをすることにした


永琳「あらよく来たじゃない。てっきり運ばれてくる方だと思ってたわ」
○○「そんなにやわじゃないですよ師匠。それで何を手伝えばいいんですか?」
永琳「そうね……とりあえず運ばれてくる人たちがとのくらいのものか調べておいて」
○○「了解しました。……それで鈴仙はどこに行ったんですか?」
永琳「あの子なら町に出かけてるわよ。里のほうでも倒れる人が多くてここまでこれないからって」
○○「あの鈴仙がね……優しいところもあるんだなぁ」
永琳「ふふっ、今頃気づくようじゃまだあなたもダメダメね」
○○「???」
永琳「じゃあよろしくね」



なんか変な師匠。うふふと笑いながらどっか行っちゃったし
それにしてもあの鈴仙がわざわざ里の方へ出向くなんて……明日は雨だろか?
……って早く師匠の手伝い終わらせないと






それにしても鈴仙か……
師匠に言われたとこはきちんとやるし、
いつも俺に対しては厳しいけど言ってる事は正しいし
髪さらさらで可愛いし、
ウサ耳だし、
赤い眼もなんかかっこいいし
……俺、鈴仙のことどう思ってんのかなぁ……




鈴仙「ただいま、あれ、○○じゃない」
○○「っと、よお、れいせ……ん……?」
鈴仙「どうしたのよ?」



の、ノースリーブだとぉ!?
ま、まさか今までにこんなことがありえたか!?




○○「な、なぁ鈴仙?」
鈴仙「何よ?」
○○「なんで今日はそんな格好なんだ?」
鈴仙「え?暑いからに決まってるじゃない」
○○「だ、だよな~あははは」
鈴仙「ま、まさか……ちょっと近寄ってこないでよ?」
○○「なんで?」
鈴仙「あんたもどっかのバカと同じで「腋サイコーーー!」とか抱きついてこないでよね!」
○○「……悪いがそこまでは腋に執着はしていないぞ」
鈴仙「ほっ……」
○○「まったく人をなんだと思ってやがる……」
鈴仙「そ、それじゃあ今の私どう……思う?」



今の私?そんなもん可愛すぎるにきまってるじゃないか!
っと危ね~思わず本音を言っちまうところだったぜ
でも……本当に可愛いよなぁ……




鈴仙「○○?」
○○「のわぁ!い、いつの間に横に!?」
鈴仙「ねぇ……私のこと……どう思う……?」




すすすすすすs擦り寄ってこないでくださいれれれれれ鈴仙
りりりりr理性ががががが





○○「そ、その……す、すすすすす」
鈴仙「す?」
○○「す……す、すごく可愛いと思う……」
鈴仙「そう!嬉しいよ○○!」





……ああ、なんだろうこの笑顔を見たらなんでもできる気がするぜ……





永琳「そう、それじゃあこれも追加でヨロシク」
○○「……ハッ、し、師匠!?勝手に心読まないでください」
鈴仙「何考えてたの?」
○○「い、いやなんでもない。そ、それよりこれ早く終わらせようぜ」
鈴仙「そうね、とっとと終わらせましょう」




永琳(うふふふ、上手くいったわね。この「自分の本当の気持ちに気づく薬」……あとはこのまま……うふふふふふふ……)
輝夜(えーりんがこわいよぉ……)




○○「鈴仙そっちはどうだ?」
鈴仙「うん、もう終わるよ」

よ、ようやく気持ちが静まってきたぜ……


鈴仙「○○?」
○○「へっ?あ、ああ」
鈴仙「そのさ……この後空いてる?」
○○「あ、ああ」
鈴仙「大事な話があるんだけど……いい?」


だ、大事な話!?ももももももしかしてそれって!?



鈴仙「その……ここじゃあなんだから外に出て話ていいかな」











○○「それで……大事な話って?」
鈴仙「その……あのね……」


こ、これは愛の告白ということですか!?
そ、そそそそそんな心の準備が……






鈴仙「実は……」
○○「ゴクリ……」





鈴仙「実は○○は師匠に薬を打たれてるの!!」
○○「俺も鈴仙のことs……ってええ!?」
鈴仙「そうなのよ……って○○何うつむいてるの?」



ああ、なんだろうこの悲しさ……
そう、そうだったのか……ということはこの状況を!!



○○「はっ!?鈴仙っ!」
鈴仙「っ!!そこか!!」



永琳(ちっ気づかれたか……まぁいいデータが取れたからいいわ。ここは退散ね)
ドロン!


鈴仙「遅かったか!」
○○「もういいよ鈴仙……どうせデータ採集に使われてただけだから……」
鈴仙「それにしても……何でそんなに落ち込んでるの?」
○○「ああ、それは俺が鈴仙のこと好きだから、てっきり鈴仙も俺のこと好きだと思って……あはは、これもきっと師匠の薬の   せいだよね」
鈴仙「!?……そ、それは……私も……その」
○○「えっ?」
鈴仙「わ、私も○○のことが好きだから……」
○○「あ、あははは、な、なんだ両思いだったのか」
鈴仙「そ、そうみたいね……あははは」
○○「あははは……」
鈴仙「ははは……」
○○「……」
鈴仙「……」
○○「そ、そろそろ戻ろうか」
鈴仙「そ、そうね戻りましょ」



永琳(うふふふ、鈴仙よく見破ったけどまさか自分も打たれてるなんて思ってないわよね……うふふ、いいわ~初心な恋愛……   ここからきっと二人とも大人への階段を上って……うふふふふh)
輝夜(……さっきから永琳「うふふ」としか笑ってないし……死亡フラグかしら……)
てゐ(いや!あんた死なないやん!?)


最終更新:2010年05月27日 23:16