永琳5



10スレ目>>584


「あのー」
私室に篭って新しい薬の調合をしていた
「あのー、だれかいませんかー?」
上手く行かないなぁ、ウドンゲに材料を取ってきてもらおうかしら
「すいませーん」
…誰もいないのかしら?
「だーれーかー?」
ああもう、私が行けばいいんでしょ!
「だーれーk「はいはい!どちら様!」
「うをっ!?あ・・・こ、こんにちは」
誰かと思えば・・・知らない男
腰にでかい刃物をぶら下げている・・・敵?
「何か御用かしら?」
「あ、はい!竹を一本貰いたくて」
「竹?」
「竹は勝手に取ってはいけないと言われまして」
「誰に?」
「藤原妹紅さんに・・・」
あの娘か・・・散々燃やしておいて何を今更
「・・・なんに使うのかしら」
「釣竿にしようかと思いまして」
流しそうめんでもするのかと思ったが・・・平凡だ
まぁ一本ぐらいいいだろう、私有地というわけでもないし
しかし・・・ただの人が良く迷わずにここまで来れたわね
「まぁ一本ぐらいいいでしょ」
「ありがとうございます!」
男は一礼して、背を向けて歩いていった
遠目に見ていたが竹を選んでいるのだろう、触ったり撓らせて見たり
暇つぶしに眺めていると、男は一本の竹の前で止まった
「・・・あれに決めたのかしら?」
男は腰に下げていたでかい刃物を抜き、根元から見事に竹を斬った
「あら・・・いい腕してるわね」
その後葉っぱ落したり根元の太い部分を切ったりしていた
やっぱり暇なので私はただ眺めていた
数十分ほどで少し長めの竹竿が出来ていた
「なんだ、先っぽしか使ってないじゃない」とか思いながら見ていた
作業が終わったのか、竹竿と太い竹を抱えた男が、戻ってきた
「ありがとうございました」
「いえいえ・・・その太い方は何かに使うの?」
「はい、鰻の仕掛けを作るのに」
なんだか面白そうね・・・鰻かぁ・・・そろそろ食べたいわね
蒲焼もいいんだけど、前に里で食べた蒸篭蒸しがおいしかったわね
「いっぱい獲れたら、持ってきますよ」
「え、いいの?」
「はい、貴女がよろしければ」
「・・・そうね、期待して待ってるわ」
「はい!期待して待っててください」
男は上機嫌に帰っていった、私もなんだか機嫌がよかった
あ、でも鰻なんか捌けないわよ・・・誰か捌けるウサギはいないかしら?



後日
「ああっ!師匠が一人で鰻食べてる!?」
「う、うどんげ!?」
鰻は男に捌いてもらいました
男に貰った鰻は永琳一人で美味しく頂きました









そのもっと後日
湖に流れ込む支流のひとつ、そこを上流から流れ込みまで歩いてみる
「・・・あ、やっぱり」
探していたものを見つけて、私はすこし、上機嫌だ
「○○さん、ここで釣りしてるのね」
「え?・・・永琳さん!こんにちは」
「こんにちは・・・今日は何を釣ってるの?」
○○の竿からは太目のタコ糸のようなものが伸びている、大物を狙っているのか
「ナマズを釣ろうかと、あれは大きいですから・・・あ、どうぞ」
彼なりの心遣いか、風呂敷をひいてくれた
私はその風呂敷を少し彼の方に寄せて、隣に腰を下ろし、一緒になってウキを眺めた
「・・・」
「・・・」
時折頬を撫でる風、浮きは微動だにしない

どれ位経っただろうか?残念な事に何の釣果もない
私はすぐに飽きると思っていたのだが・・・なぜか飽きずにここに居る
水面が揺れる、風によって波が起こる
日の光で水面が光る、岸辺には小魚が群れている
退屈、永遠を生きる私にはありえない事なのかもしれない
「・・・お?」
「え?」
ウキが動いた?

……
ゴボッ!
低い音を立てて浮きが沈んだ、そして右に、奔った
「うおっ!来たッ!!」
ただの竹竿、しかし相当糸が長いらしく、引き寄せるだけでも大変だろう
リールではない伸べ竿、そこをカバーする弾力と長さ、糸の強度そして竿捌き
十分ほど経っただろうか、魚は暴れる様子もなくなり、○○は手で糸を手繰り寄せていった
「よっ、と」
水に手を突っ込み、何かを引き摺り上げた
「じゃーん、ドデカイですよ」
口とエラに手をかけて、引き摺り揚げたその魚は、間違いなくナマズ
普通でないのはその大きさだ、私の首ぐらいまであるだろうか
「この鯰を見てくださいよ!どう思います!?」
「凄く・・・大きいです」
「俺もこんなの初めて釣りましたよ」
そして夕方まで粘ったが釣れたのはすっぽんだけだった

こんなにでかいのを一人では食べきれないという彼の提案を受け、永遠亭でのちょっとした夕食会
鈴仙やてゐより大きい鯰、珍しそうに見る因幡s、部屋から出てこない姫様・・・食べ物のにおいがすれば出てくるでしょ

○○の~3分クッキングー
まず釣ってきたナマズを氷水につけ、動きを鈍らせます・・・氷水につけたのがこちらです
そしてーまず頭部を切断します
ドンッ
そして腹を開いて内臓を出しまーす、卵がありますねーメスでしたか
そしてこれを3枚おろしです、切ったものがこちらです
まずは白焼きですね、櫛を4本ほど挿します、刺すときは串が放射状になるように刺してください
そして焼きあがったのがこちらです、そしてこれを秘伝のたれ(鰻屋から拝借)につけてまた焼きます
…はいできました、ナマズの蒲焼・・・何十人前?とりあえず相当多いですねー
「いい匂いがするわねー」
あ、姫が出てきた・・・ログアウトしてきたのかしら?
皆でわいわい食べていた(少し飲んでる兎も
ナマズ一匹でこんなに飲んで騒げるなら、鬼や魔法使いが宴会しに来るかもしれない
縁側に腰を下ろし、遠くから皆を見ていた
そういえば○○さんの姿が・・・?
「永琳さん、コッチですよ」
「○○さん、どこに・・・?」
彼は私の隣に、土鍋を置いた・・・中身はなんだ?
「じゃーん、○雑炊」
「まる?ああ、すっぽんの事ね」
「へへへ、子供には食べさせられませんな」
二人で酒を飲みながらすっぽんを食べた、甲羅の端などはとても美味かった
「うーん、やっぱりプロにしてもらってよかった、前に自分でしたときは・・・」
「どうだったの?」
「泥臭くて・・・」
やはり餅は餅屋、素人が余計な事しても駄目という事か
「あ、どうぞどうぞ」
「ありがと・・・おかえし」
「どうもどうも」
お互いにお酌しあって、もう何本飲んだのだろう?
酔うには程遠いが、心地よい感じだ
「○○さん・・・」
「永琳さん・・・」
酒のせいか、スッポンのせいか、そんなことは知らない
ただ隣にいる彼女と、そういう空気になってしまったのだ
「んちゅ、ぁん」
ボタンの上から二つを外して、その隙間から手を入れた
「はぁっ、や、やだ、んっ」
キスをしながら、その豊満な胸を揉みしだいた
「○○さんの、手・・・冷たい、あ、ん」
「永琳さんの胸はあったかいね、それに凄くやわらかい」
「んっ!つよく、しない、で」
「ああ、だいj・・・」
俺は血の気が引くのがはっきり解った、さっきから火照っていた体は夜風にさらされて一夜を明かしたように冷え切った
「え?なに――」
息を荒げて、とろんとした目で、俺を見た、そして俺の視線の先に気付いたとき、目が覚めたようにびくりとした
「あ、ああ」
ここは縁側で、ウサギ達も外に出て飲んでいた、何故そのことを忘れて縁側でコトにいたろうとしたのか
普通の兎の、腹黒そうな兎も、ブレザーの兎も、お姫様も
皆こちらに魅入っていた、中学生が神社でエロ本を見付けたときのように、好奇心に満ちた目で
せめて奥の部屋に行ってればなぁ
「きゅう」
永琳は恥ずかしさあまりに気を失い、俺は気まずい空気の中に残されてしまったのだ

恥ずかしすぎるのでこの後の事は深く語らない、女子と共同で保健の授業を受けた後の休み時間のような思い出はウンザリだ

まぁ嬉しい報告といえば俺に彼女が出来たことかな?これだけは、夢でも、酔った勢いでもないのだ
そして今日も俺は、永遠亭へ足を運ぶ、愛しの薬剤師に会う為に


うpろだ550


それが誰の物であったのか、思い出すのに少し時間がかかった。風化して、今にも崩れてしまいそうな
その鞄はかつて僕が幻想郷に迷い込んだ時に持っていた物だ。僕はその鞄を丁寧に、丁寧に開けた。中
にあった物は、手帳と写真だった。手帳は書いてある字も読めないほど痛んでいたが、写真のほうはか
ろうじてとか写っているものをみることができる。写真には五人の人間が写っていた。三人の男性と二
人の女性。男性のうち、一人は僕であるとわかったが、あとの四人はどうしても思い出せなかった。そ
れどころか、どんな状況で、誰が撮ったのか、その写真に関するあらゆることが思い出せなかった。お
そらく彼らは、外の世界にいた頃の家族なのだろう。なのに、彼らの名前も、彼らと過ごした思い出も、
何も思い出せなかった。そして、僕は外の世界にいた頃を思い出そうとして、愕然とした、僕は外の世
界にいた頃のことをさっぱり覚えていなかった。外の世界にいたということしか覚えていなかった。全
身を貫かれるような感覚に襲われた。僕はただ、茫然と、写真を手に佇むしかなかった。


あの日から一か月程して、後悔しているのかと聞かれた。彼女―八意永琳が、なぜ今さらこんなことを
聞いてきたのかは僕には理解できなかった。確かに不死の人間になってまったく後悔しなかったと言え
ば嘘になるかもしれないが、これは僕自身がそう望んだからであって彼女等には何の落ち度もないこと
だ。それに、僕が不死の人間になったのは、もう何百年も前の話である。彼女が僕にした質問は、本当
に「何を今さら」 といったものなのだ。
「今さら、後悔しているように見えるのか」
僕は少し苛立って答えてしまった。怒るほどのものでもなかったと、少し後悔した。
彼女は少し申し訳なさそうな顔をして言った。
「気を悪くしたのなら、あやまるわ。でも最近少し元気が無いみたいだったから」
僕はその言葉に体を強張らせた。写真を見つけたあの日から、僕の心の中に何かもやのようなものが生ま
れたのは確かだからだ。なるべく表に出さないようにしていたが、やはり彼女には隠し通せなかったよう
だ。しかし、僕は何ともない振りをしようとした。
「そんなことはないよ。少し疲れているだけだ」
「嘘。あなたは嘘を言う時に必ず目を逸らす」
今度は不機嫌な顔をして彼女が答えた。やはり何百年も一緒にいると、お互いの癖もわかってしまうもの
か。ただ、僕は未だに彼女の癖というものがわからない。彼女は他人に隙を見せない人だから、おそらく
輝夜様も鈴仙も知らないだろう。
あっさりと嘘を見破られた僕はただ黙りこむしかなかったが、追及は止まらないかった。
「後悔しているなら、はっきり言って欲しい。それとも、何かトラブルでもあったの?」
僕は悩んだ。正直、聞いてほしいという欲求もあったが、彼女は蓬莱の薬のこととなるとどうしても自分
一人の責任にしようとする。写真のことを打ち明けるということが彼女を苦しませることになるのは明白
だった。それだけは、避けたかった。
「遠慮する必要はないわ。あなたの問題は私の問題でもある。素直に答えて。このままじゃ夜も眠れないわ」
彼女はそう言うが、どうするべきかわからなかった。話してしまえば楽になれるかもしれないが、代わりに
彼女が傷付く。だが、隠し通すこともできそうにないのも事実だ。

覚悟を決めるしか、なかった。

「条件がある」
「何かしら」
「聞いたことを後悔しないこと。それと、決して一人で背負い込まないこと」
彼女の体が強張るのが、わかった。  


一か月前のことは全て話し終えた。彼女は悲しそうな顔をして黙っていた。その表情には後悔も含まれている
ように思えた。
「なぜ、外の世界でのことを忘れてしまったのかわからない。一番忘れたくなかった思い出なのに、忘れたこ
とすら忘れていたんだ」
その後に続く言葉を言うのは少し躊躇ったが、ここまで言ってしまったのだから、言ってしまおうと思った。
「そうして、いつか、永琳達と過ごした日々の大切な思い出まで忘れていってしまうのではないかと考えたら、
怖くなった。初めて永遠の命というものが怖くなった。決して後悔しているんじゃない。怖くなったんだ」
そう言い終えた時、彼女は泣いていた。やはり、こうなってしまった。わかっていたことだったのに。後悔
の念しか浮かばなかった。僕はただ、彼女をなだめることしかできなかった。どうしようもなく、無力だった。
なぜあんな物を見つけてしまったんだろう。なぜあの時中身を見てしまったのだろう。わからない。

泣きながら、ごめんなさい、と何度も呟く彼女を前にして、何も言葉が出なかった。


どれくらい時間が経ったか。お互い、ようやく落ち着きを取り戻した。先に口を開いたのは僕だった。
「やっぱり、言わない方が良かったな。ずっと心の中に留めておくべきだった。すまない」
気の利いた言葉の一つでも言えれば良かったが、情けないことに、思いつかなかった。
「私が無理矢理聞いたのが悪いわ。これほど深刻な問題とは思わなかったの。取り乱してしまって、ごめんなさい」
彼女は、そう答えると、自嘲的な笑みを浮かべた。
「私はあなたを求めたばかりに、あなたの大切なものを奪ってしまったのか。そう考えたら、涙が止まらなかった」
話す前に僕が出した二つの条件を両方とも守っていないな、と僕は少し笑って答えた。この件について彼女にはま
ったく非が無いということをはっきりさせなければならなかった。
「蓬莱の薬を飲んだのは、僕の望みだ。僕が永琳とずっと一緒にいたいと望んだ。後悔なんか、していない。だから、
永琳が責任を感じる必要はないんだ」
それに、外の世界にいたことはもう何百年も前のことだし、もう僕を知っている人間なんていない。かの隙間妖怪に
依頼すれば、外の世界に行くこともできたのに、それをしなかった自分に責任がある。と付け足した。
「それでも、薬を与えたのは私。責任がないとは言えないわ」
彼女は真剣な顔で言った。わかっていたことだが、やっぱり強情だな、と思った。仕方のない人だ。
「ならさ」
これが、今の僕に唯一言えることだと思う。
「覚えておこう。このことを。二人で」
二人で、このことを覚えておこう。そうすれば、少なくとも彼女達と過ごした日々は絶対に忘れない。そう思った。
記憶というものが、いかに脆く、失い易いものなのかわかった。だから、このことは覚えておこう。これから、いつ
まで続くのかわからない無限の時間の中でそれができるのかどうかわからないけど。
「そうすればきっと、大丈夫。昔のことは忘れてしまったけど、皆と過ごした日々もこれからのことも、きっと忘れない」
「ありがとう」
彼女は満面の笑みを浮かべて、抱きついてきた。僕は彼女の温もりと心臓の音を感じながら、二度と彼女を悲しま
せないと、強く心に誓った。

この日の約束と誓いを胸に、僕はこれからも彼女と共にこの幻想郷で生きていく。


8スレ目 >>102


「永琳!俺の心は君の矢で見事に貫かれた!だから俺の全てをお前に捧げよう!」


8スレ目 >>401


「永琳!お前と共に歩めるならどんな茨の道でも一緒に歩ける!!」


8スレ目 >>531


人は、いつか死ぬ。それは避けられないこと。


「えーりんおねーちゃん、えーりんおねーちゃん!」


今、私の目の前で楽しそうに笑っているこの子も、
成長し、いつか年老い、やがて死んでいく。
私は、いつまでも変わらずこのままで………。


――それは、耐えれそうにないわね――


だから私はこの子を。


「ねぇ、○○」

「なーに、えーりんおねーちゃん?」

「少し調子が悪そうだから、このお薬を飲みなさい」

「うん、わかった!」


こうして私は『永遠』を手に入れた。


8スレ目 >>533


「ねぇ、永琳」


あれから――永琳が○○に蓬莱の薬を飲ませてから数ヶ月。
怪我をすること――してもすぐに治る――も、
病気になることもなくなった○○は、
そのことを疑問にすら思わず、日々を過ごしていた。


「何でしょうか、姫様?」

「あなたは何故、○○に蓬莱の薬を飲ませたの?」

「何故、とは?」

「普通の人間に、『永遠』なんて耐えれるわけないじゃない。
 そして、それが分からない貴女ではない。それなのに、何故?」


問うてはいるが、別に輝夜はその事をどうとも思っていない。
ただ、ふと…そう、何となく、本当に何となく、聞いてみただけだった。


「ふふふ……」

「?」

「姫様、普通の人間は何故『永遠』に耐えれないと思いますか?」

「………あぁ、そういうこと」


輝夜は悟った。たった、その一言だけで。


「あの子にとって、『永遠』こそが普通。
 姫様も私もウドンゲもてゐも兎達も、変わらぬまま……。
 だから飲ませたのですよ。あの子が、『永遠』が普通である間に」


あの日から、数ヶ月。○○は、今日も元気に永遠亭を駆け回っている。
何も知らず、知らされず、疑問にすら思わず――――。


8スレ目 >>683


「れ、鈴仙、匿ってくれ!」
私の部屋に妙に慌てた○○がやってきたのは、つい先ほどのことだ。

「あの時、一口食べた瞬間に悟ったね。あんなに美味いモノは食べたことがなかったよ」
「美味しいなら美味しいって言ってあげればいいのに。あなたが言えば、師匠、きっと喜ぶよ?」
「いや……俺の頭の中に、物凄い勢いで警報が鳴り響いたんだよ、これが」
てっきり惚気話なのかと思いきや、○○は深刻極まる顔をする。
「ふーん?」
「あれは恐ろしい。真の意味で餌付けされるところだった」
「男の人にとって、ご飯が美味しいのはいいことなんじゃないの?」
○○はうな垂れ、力なく首を振った。
「鈴仙にも経験がないか? 自分の意思が抜き取られていくような恐怖を。
 踏み越えてはいけない一線を感じたんだ」
「……まさか」
「ああ、通常の調理とは異なる、何らかの工作が行われたことを俺は悟った」
「あは、はは……」
また大げさな物言いだけれど、確かに怖い話だ。
「それで逃げてきた、と。うーん、しかたないかも」

ハ`ーーン!
「ひどいッ! 料理を前に逃げ出した上に、とんでもない濡れ衣まで着せるつもりなのね!?」
脈絡もなく師匠登場。まぁこんな人だ。
「うそつけっ! 絶対何か仕込んだだろ!」
「○○は! 私のことを信じてくれないの!?」
○○の追求にも、迫真の演技で返すこの御仁。面の皮厚すぎるのもどうかと思う。
「俺は、俺はな! 強制されてじゃない、自分の意思で永琳が好きなんだ!
 この気持ちが体よく操られて、踏みにじられるのは我慢ならん!」
「○○……」

見詰め合う二人。あぁ、まーた始まったよ。
「私が間違っていたわ。……ごめんなさい」
「いいんだよ」
ひしと抱き合う○○と師匠……に、ふと目が合う。
「あら、うどんげ。どうしたの、こんなところで?」
「……ここは私の部屋です」


11スレ目>>404


12月25日 博麗神社

ここの連中は、クリスマスくらい上品に祝えないのだろうか。
やれやれ、と僕は溜息を吐きながら後ろに広がる惨状に目を移した。
死屍累々と言えば良いのだろうか。神社の中にも外にも酔い潰れた幻想郷の住人共が倒れている。
僕は上手い具合に受け流しながらちまちま飲んでいたため、そこまで酔うには至らなかった。
神社の縁側で幻想郷の少女達の屍を眺めながら、僕は独り言のように呟いた。
「酒を飲むなとは言わないが、もう少し節度ってものをだな―」
「まったく、その通りだわ」
誰かと声の方向へ視線を向けると永琳が少し不機嫌そうな顔をしながら立っていた。
彼女は永遠亭の医者で僕も永遠亭で彼女の世話になっている。遥か昔から。
「節度ってものを知ればもう少し楽しくお酒を飲めるのに、ね」
あなたは優秀だわ、と付け加えて彼女は僕の隣に座った。
彼女の美しい銀色の髪の毛が、冬の冷たい風に吹かれて静かに揺れた。
その光景に、僕は思わず見惚れてしまった。この世のものとは思えない美しさだな、と思う。

「そういえば」
しばらく二人とも黙ったままだったが、唐突に永琳が口を開いた。
「あなたがここに来たのは、何年前だったかしら。あ、何百年と聞いた方が良いかしらね」
唐突だな、と僕は少し考えた後、答えた。
「忘れた。多分、かなり前」
我ながら酷い答えだな、と思ったが、本当に忘れてしまったようである。
多分っていうのは便利な言葉よね、と彼女は笑った。
まったくだね、と僕も笑った。
「正直な話、両親の顔も思い出せないんだ。一応、蓬莱の薬を飲むと決めた時、ある程度覚悟はしていたのだけど。
何せ、この先何百、何千年と生きていくものだから、ある程度昔の事を忘れてしまうのは仕方ないなって」
彼女はまた笑って言った。
「酷い息子ね。ご両親に同情するわ」
「言うなよ、僕だって少しは気にしているんだから」
しかし、本当に両親や兄妹の顔まで忘れるとは思わなかった。意外と僕は淡白な人間なのだろうか。
なんだか、少し、気持ちが悪い。
「ま、過ぎた事を言っても仕方ないわ」
少し酒を飲みながら、言った。
「正直私もあんまり昔のこと、覚えてないわ。そう気付いたとき、確かに少しショックだったけど」
姫様もそうなのか、と聞くと、多分ね、と答えた。
「これから、まだ何百、何千年、それ以上時間があるのに、そんな事考えても辛いだけ」
そして、大切なのは、これから。と付け加えた。
確かにそうなのかもしれない。過去は自分の生きてきた証でもあり、それが失われるのは悲しいことであるが、
僕達にはこの先、無限の時間があるのである。百年後の出来事も、その先何百年も過ぎれば、また過去の事として
記憶から消えてしまうのだろう。無限の時間を生きるという事は、そういう事であるのだ。
常に前を向いて歩いていかなければ、耐えられないのだ。
「そうだね。僕には少し覚悟が足りなかったのかもしれない」
吹っ切れた、と言えば良いのか、何となく楽になったような気がする。
明日から前を向こう。そう思う。
「ありがとう、永琳」
彼女はフッと笑って、言った。
「これからもよろしく、ね」

気がつけば後ろでは生き返った屍達がまた騒いでいた。
「やれやれ」
溜息を吐きながら、永琳が言った。
「この子達は今しか考えていないようね」そしてこう付け加えた。
「やっぱりあなたは優秀だわ。多分、この子達はあなたのようなこと、考えもしないわ」

僕等はきっと、これから数え切れないほどの人と出会い、別れ、忘れ、数え切れないほどの出来事を
経験し、忘れていくことだろう。それでも、前を向いて歩いていかなければならない。
それが生と死の輪から外れた者達への罰である。
とても長くて、苦しい道だと思う。しかし、彼女と一緒なら大丈夫。そんな気がする。

「何を考えているの」
と、不意に聞かれた。
「多分、これからのこと」
彼女は呆れたような顔で言った。本当に多分、って便利よね。と。


10スレ目>>732


「おはよう、○○」
「おはよう、永琳」
起床はいつもそろって朝6時。
起きてすぐにするのは庭の鑑賞。
鮮やかな紅葉に目を覚まし、鳥の鳴き声に頭を動かすのだ。
「身体はもう大丈夫?」
声が聞こえ、隣の方を見る。
目に入るのは、板張りの床にパジャマというあまりに不釣合いな格好。
そして、月の光のような柔らかな銀色の髪。その顔が、心配そうにこちらを見ている。
「うん」
それに対し、○○は言葉足らずな答えを返す。
「よかった・・・」
昨晩の事。彼女は、珍しく進んで晩飯を作ってくれた。・・・まったく、つくづく策士である。
料理に、蓬莱の薬を忍ばせていたのだ。
秋から冬へ移り変わってゆく、その幻想的な景色。
○○の身体もまた、幻想的な変化を遂げていたのである。
「不死の身体」
口に出してみても、やはり永遠の重さなど判らない。
庭の緑を眺めているうち、いつの間にか終わってしまいそうにも思える。
「どうしたの?」
永琳がこちらの顔を覗き込んでくる。
彼女のように数百年も生きれば、永遠の重みとやらも分かってくるのだろうか。
そう思い、永琳の貌を覗き込んだ。
…集中してものを見ると、対象が大きく見えるのだそうだ。
つまり、永琳の貌がだんだん大きく見えるような気がするのは・・・
単純に永琳が近づいているからだった。いつの間にか背に腕が回され、逃げられない。
ゆっくりと、だが確実に近づいてくる。
そして、触れるだけの口付け。だが、○○の思考を妨げるのにはそれで充分だった。
頭がはっきりしない今の内にと、永琳は畳み掛けるように続けた。
「余計な事は考えないの。貴方と私は永遠に一緒、それで充分じゃない」
そう言って、永琳は○○の身体を抱きしめた。
「うん」
○○は、ただだけ一言そう言った。
永琳は満足そうに顔を綻ばせ、そっと○○にしなだれかかった。


12スレ目>>424 うpろだ825


目が覚めると、隣に誰かの気配を感じた。それと同時に腕に圧迫感を覚える。
また兎か、腕枕とはずうずうしい奴だな、と気にもせず二度寝を始めようと思ったが、混濁した意識の中ではっきりと『ちょっと待て』と頭の奥から止めが入った。

『兎にしてはやけに馬鹿でかいじゃないか』

その声の通り、永遠亭の兎にしては大きい。……自分の身長より頭一個強小さい位だろうか。
その根拠は、足。俺の脚に相手の脚が絡んでいる。兎達ならそれこそ俺の膝に足先が届く位の大きさだし、すねにつま先の感触があると言う事はまず無い。
ならば誰か?身長的な理由で腹黒兎は除外。後のメンバーは……と考えながら腕枕にされた手を相手の頭頂部に置いてやる。
……月兎、脱落。頭の上に耳?らしきものは無い。というか耳なのかあれは?
「……ん」
頭を触られたのに反応したのか、相手が声を……

   その時、俺の時間が止まった。

相手の手が動いて俺の服の裾部分をぎゅ、と掴んで俺の体を自分の方に寄せた。たったこれだけの事なんだが……問題はそこじゃない。
俺は何度も話してる相手の声なら隠れていても明確に言い当てる事が出来る。その能力が叫んでいるのだ。『ありえない』と。
さっきの行動のせいでさらに混乱する。明らかにこんな事をする人物じゃないし、少なくともこの二つが結びつく事は無い。
最終確認。目を開けて、相手を確認。……すぐに目を閉じた。

おk。これは現実じゃないんだ。もう一度目をあけよう。ゆっくりと。そうしたら違う人物が……

わかっている。これは悪あがきだと。だがそうせざるを得ないのだ。
心の中でぶつぶつと言いながらゆっくりと目を開ける。しかし、やっぱりそこにいたのは……



「う……んー……」



すやすやと安らかに眠る薬師、八意永琳だった。……夢じゃないのは確かだ。
とりあえず頭の中を整理しよう。『目が覚めたら永琳が俺の布団で添い寝(それも腕枕させて)していた』。あと『おっぱいえーりん』……いかん、思考が乱れた。
胸元に行った視線を彼女の顔に戻しつつ、これからどうするべきかと思考をめぐらせる。
……どの思考の糸を手繰ってもnice boat.しか出てこないのはいかんともしがたい。というかこうしてる事自体が死亡フラグなのか?
いや、とネガティブになりかけた思考を打ち切る。少なくとも永琳は自分の意思で俺の布団に入り込んできたようだ。
根拠としては主に腕枕とかこうやって密着させるあたり。……しかし、もしその対象が俺ではないとしたら?
例えば自分の主たる輝夜姫。……主に甘える従者もそれはそれで、まあ、なんだ。『可愛い』って言うのか?
その、実際、今も可愛く見えるわけで。うん。……普段の印象とは真逆な永琳に俺の心はつつかれまくっている。
まず、安心しきった寝顔。軽く微笑んでいる。次に、腕にかかっている下ろした髪。さらさらで絹糸みたいだ。
そして一番ギャップが大きいのが俺の服を掴んだ手。……まるで子供のようだ。
小さくため息をつき、すでに頭の上を離れていた手をもう一度頭の上に戻し、小さく撫でてやった。
「んーっ……」
くすぐったいのか、小さく身動ぎをする。さらに子供っぽく思えてしまい、クスクスと笑ってしまった。
「しかし、これからどうする?」
永琳を起こさないように小声で呟く。永琳が寝たまま逃げ出す事は不可能。脚が絡んでいて、外した感触で起きてしまうかもしれない。
……と、なれば。お約束である『誰かが起こしに来てこの現場を目撃される』か、死亡覚悟で『自分で起こす』か。
「生憎だが、俺は死ぬ覚悟は出来てる。お約束と言う言葉が大嫌いでね」
その『お約束』に『反逆』してやる。というわけで……
「永琳さん。なんでこんな所にいるんですか」
今まで我慢していた突っ込みも含め、永琳を揺り起こす。
「……んー、何よまったく、まだ眠いのにぃ……」
「とりあえず何で俺の布団で寝ているのか説明してください」
光に慣らすようにゆっくりと目を開ける永琳。さて、今後の反応はどんなだ?

一位、取り乱す。二位、呆然となる。三位、泣き出す(ある意味では最悪の可能性)。

と、ランキングが出たあたりで完全に目を開き、俺の方を見た。
「おはよう、永琳さん」
「……ええ、おはよう」
……意外や意外。ランキング外だった『普通に反応する』が的中してしまった。
「何故俺の布団に?」
「……」
率直に聞いてみると答えはすぐに返ってこなかった。
「……嫌だった?」
「はい?」
「私と一緒に寝るのは嫌だったの?」
そう思っていると逆に質問されてしまった。……そんな事言われたら答えは一つしかないじゃないか。
「嫌じゃないです。ただ……ものすごく意外だったもので」
「意外?」
「あー、その。永琳さんって誰かの布団に入ったりとかはあんまりしない人なのかな、と思ってたんです」
「つまりは行き遅れって言いたいのかしら?」
「なんでそっちの話に行くんですか!?」
違う違うと首を必死に振る。……そんな誤解されたらそれこそ殺されてしまう。
「……私も、甘えたい時くらいあるのよ。いつも頼られてばっかりじゃあ疲れるでしょう?」
確かに。輝夜姫が動かない限りは姫の代わりにここを切り盛りしているのは永琳だ。というか姫が動かなくてもいいように相当頑張っている。
当然そんな生活じゃあ精神的にも疲れもたまる。
「いや、まあ……寝てる永琳さんが凄く可愛かったし、永琳さんの働き振りを見たらこっちも『来るな』なんて言えませんし」
この台詞を言い終わった直後。
「あういえくぁwせdrftgyふじこl」
永琳が意味不明の言葉を呟きながら跳ね起きて慌てて俺の布団から出た。
「あ、ああああ」
「どうしたんですか永琳さん?」
「あああなた、私のことを可愛いって……」
「ええ。それはもう堪能させてもらいました。頭を撫でたら気持ちよさそうにしてましたからね」
俺の言葉を聞き急激に顔を真っ赤にしてしまう永琳。
「……永琳さんって、意外と初心なんですね」
「わ、悪いかしら?月時代も男性経験なんて一度も無い……って、何を言わせるのよ!」
「いや、永琳さんが勝手に自爆しただけですから」
こう返されて永琳はあうあうと口を動かし続ける事しか出来なくなってしまったようだ。
「可愛いなぁ、本当に」
その様子を見ていたらつい肩を震わせてく、く、く、と笑ってしまった。


添い寝鈴仙を読んでいたら突然『添い寝する永琳は可愛いよね』という電波が降りてきました。
その衝動に身を任せ、オチなしの永琳ネタを書いてみたり。


最終更新:2010年05月28日 22:56