妹紅3



8スレ目564


拝啓、○○様。
梅雨明けが待ち遠しく感じられる今日この頃でございますが、如何お過ごしでしょうか。
先日は、急に友人と押しかける形になってしまい、大変失礼いたしました。
その折に御家族や里のお話をして頂き、とても楽しい時間を過ごさせていただいたことを感謝いたします。
ところで、×月×日の夏祭りにご予定はあるのでしょうか。
お恥かしい話ですが、あまりこのような祭りに参加した事がないため勝手が判りません。
もし不都合でなければ、○○様に夏祭りを案内して頂けたらと思い、この度は筆を執らせて頂きました。
お返事を、心よりお待ちしております。
                          かしこ


「里に来たのだから、直接言えばいいものを」
「慧音うるさい。直接会うと憎まれ口しか出て来ないんだよ」

はぁ、と慧音は溜息をついた。素直じゃないのは面倒くさい性分だ。
「うん?なんだ、好きだとか愛してるとかは書かないのか?」

「ばっ……そんな恥かしいこと書けるわけないだろこの馬鹿けーねーっ!!」
ちょっともこたん火が出てるよ火!!

「半分は冗談だ。だが、事情は理解したぞ妹紅。
この手紙を○○に渡してくればいいんだな?」

藤原妹紅(検閲削除)歳。 まだまだ恋愛に奥手であった。


8スレ目 >>613


○「暑い、いやむしろ熱い、でも厚くはない」
妹「……何言ってんの○○」
○「おーもこたんかー、いらっしゃーい」
妹「そのもこたんって呼ぶのやめてっていってるでしょ」
○「いいじゃん別に減るもんでもないし」
妹「……燃やすよ」
○「ただでさえ暑いのにこれ以上暑くなったら死んじまうよ
  って人一人増えるだけでもだいぶ室温があがるな」
妹「私自身も暑いからね、なんなら帰るよ」
○「おいおい、せっかく来たのにそんなつれないこと言うなよ
  ゆっくりしていけ」
妹「うん、ありがと」

○「…………」
妹「…………」
ダラダラダラダラ
妹「○○汗がすごいよ」
○「うん、すんげぇ暑い……服脱いだら少しはましかな?」
妹「は?」
バッバッ!!
○「うーん、さっきより涼しいな」
妹「な!?ばっ!何で脱ぐ////」
○「暑いから、そうだ!妹紅も脱げ!」
妹「はぁ!?な、何言ってんの!」
○「まあまあ、そう遠慮しないで」←熱さで頭が茹だってます
妹「遠慮なんかしてない!ちょ!?もんぺ脱がすな!」
○「はっはっは!よいではないかよいではないかー!」←熱暴走中
妹「ね、ねえしても良いけど夜に、ね?」
○「ふははははは!それ(下着)をよこせ!俺は神になるんだ!」←楽しくなってきた
ガラッ
慧「○○、妹紅がそっちに来てないk……」
○「…………」←上半身裸
妹「…………」←下着のみ+真っ赤になって涙目

慧「…………○○」
○「は、はい!なんでしょうか!?」←正気に戻った
慧「次の満月の日が楽しみだな」
バタン
○「よ、予告殺人か!?そうなのか?どうしよう妹紅!」
妹「自業自得、せいぜい掘られないように気をつけてね」
○「畜生!なんて時代だ!」


8スレ目 >>620


「こんにちはー、妹紅いるー?
……あれ、留守か? でも飲みかけの湯呑みがテーブルの上に……」
「あ、いらっしゃーい」

       ,-へ,  , ヘ
    /,ヽ_,_i=/__,」
    / ,'   `ー ヽ パカ
   / ∩〈」iノハル.!〉   <おいすー
   / .|i L>゚ ヮ゚ノiゝ_
  //i>i ir^i `T´i'i| /
  " ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∪

「Σおおう!? 何で床から!?」
「ん、話してなかったっけ? この部屋の地下が倉庫になってるの」
「はじめて知りました」
「はっはっは、びっくりした?」
「うむ。……ところで妹紅、悪いがもう一回今のやってくれないか」
「?」
「『パカ、おいすー』っての」
「なんで」
「まぁいいから」

パカ もう一回 パカ もういっちょ パカ もうひとこえ p(ry

「あぁもう可愛いなぁ妹紅は!!!!」
「……」
「ありがとうゴメンナサイもう結構ですから炎やめてやめて炎」
「ったく。んで? 今日はどうしたの?」
「あぁ、偶然カキ氷セットとシロップがまとめて手に入ったんでな、持ってきた」
「おー」
「慧音も呼んどいたから。後から来るってさ」
「氷は?」
「勿論バッチリだ」

しばらく後に慧音も到着して、3人で美味しく頂きましたとさ。


9スレ目 >>986


「また急病人の送迎? 〇〇も飽きないねぇ」

ここは迷いの竹林。 誰もまともに案内できない永遠亭、そこには如何なる難病でも治してしまう名医がいる。

そこに迷うことなく最短で案内できる例外、それが彼女だ。

「飽きはしないさ。 里に無事つれて帰れば、患者やその家族の笑顔が見れるからね」

そういう俺は、ごくごく普通の一般人。
強いて挙げるとすれば、弾幕に興味があることかな?
ちなみに見る専門。

「〇〇らしいな。 その家族の話を聞きたいところだけど……」

紅妹がじっと正面を見た
あぁ、永遠亭はすぐそこだ。

「ありがとう、中に彼を預けてくるよ」

病気になった近所のおじさんを、可愛いけど愛想の悪いブレザーうさぎに預け、すぐに紅妹のいる場所に戻った。

彼女は永遠亭に上がらない。 理由は聞いても答えてもらえなかった。
彼女なりの、事情があるのだろう。

外で、ぽつりぽつりとくだらない身の上話や、里の噂などを話すのがお決まりのパターンだ。
だが、別に濃厚な人生を歩んでいるわけじゃない。
この時間は楽しみだったが、正直もうネタがないのだ。 彼女と、もっと話したいのに。

「正直もうネタがない」

「〇〇は素直だな」

「と、言うわけで続きはweb……じゃなくて。
続きは俺の隣で見てくれないか?」

目をぱちくりさせる、察しの悪い妹紅に今度ははっきり伝えた

「君が好きだ。結婚してくれ」


11スレ目>>640


○○「zzz」

妹紅「・・・じーっ」
そーっと、そーっと
妹紅「(メガネげっとー)」
すちゃっ
妹紅「ぉ・・・おぉ・・・」
ふらふら

○○「・・・いや、そこまで度はキツくないはずだぞ?それ」
びくぅっ
妹紅「う、うるさい!いっぺんやってみたかったのよ!!」

ていうか起きたなら言いなさいよー
HAHAHA妹紅はお茶目さんだなぁ

慧音「おーい、お昼できたぞー」

そんなまったりした昼下がりをすごしたい


11スレ目>>730


妹紅は僕の何十倍も生きてきて、色々なものを見てきたのだろうな。
高々数ヶ月一緒にいたくらいで君の事をわかったような口を聞くのはおこがましいことなのだろう」
妹紅「伊達に1000年以上も生きてないからね。あんたなんかとは背負ってきた物が違うのよ」
「でも、そんな僕だからこそ見えるものもある」
妹紅「何が言いたいの?」
「僕は火になりたい」
妹紅「…。今すぐ焼き払ってあげようか?」
「どんなに強い炎を操っても、決して暖めることの出来ない君自身の心。
僕はそれを照らす火になりたいんだ」
妹紅「ちょ…さっきから何言ってるのよ。ほ、本当に消し炭にされたいの?」
「人は君を妖怪呼ばわりするけれど、本当の君が心優しい少女のままであることは
誰よりもこの僕がよくわかってる。あの日、迷いの竹林で君に出会ったときからずっと…」
妹紅「…ばか。」


11スレ目>>993


理由なんか無いんだ
君が好きだ、妹紅


12スレ目>>470


妹紅が頑張ってチョコレート作ってくれた
俺の腕の中に押し付けるようにチョコを渡して
顔真っ赤にうつむいたまま足早に妹紅が去っていった
箱開けると中にはおそらくハート型であっただろう
溶けかけのチョコレートがはいっていた
一口食べるとほろ苦いビターチョコの味がした
でもなんだかとても甘かった


12スレ目>>544


妹紅と結婚して60年、妹紅は俺が惚れたあの時の姿のままだ
俺は醜い老人の姿になってしまった
私が死んだら、妹紅、お前の火で私を焼いてくれ
そう言うと妹紅は切なげな表情を浮かべた
あぁ、分かった。
そう一言だけ呟いて


12スレ目>>870 うpろだ901


永い永い夜、月は暖かな白光を地上に送りながら
人々は眠りにつき
人ならざるものは起き

そんな理の中から少し外れた人間のお話。




ッ!・・・
「もうやめてくれ・・・頼む・・・」
 「ふん、誰が止めるか」

迷いの竹林、永遠亭と真逆の方向にある館
屋敷と呼ぶには小さすぎ、家と呼ぶには大きすぎる
その館を優しく照らす月光を突き破るような男の声

「頼む・・・許してくれ・・・」
 「だから誰が止めるといった、今宵は私が満足するまで止めんぞ」

男は両腕と両足を台に固定されていた
二つの長方形を並べ、その間を跨ぐように。
その横に立つ少女があった。
背から紅蓮のツバサを広げ、あたりを舞う火の粉の美しさに彩られているその姿は
火の女神と呼ぶに相応しい姿だった。

「もう・・・ッ!・・・限界だ・・・頼む・・・」
 「嫌だ。何度いったらわかるんだ?お前は」

長方形の台の間から立ち上る炎は、焼くには足りず
温まるには強すぎる。
そしてその炎は男の背をジリジリと焼いていく。
炎は畳や壁に移らず、男の背のみを炙り続ける

「妹紅・・・俺が悪かった・・・反省・・・している・・・本当だ・・・」
 「本当に?」
「あぁ・・・本当だ・・・だから炎で炙るのをやめてくれッ!」
 「ふんっ」パチンッ

妹紅と呼ばれた少女が指を鳴らすと、男を炙る炎はフッっと蝋燭を吹き消すように消えた。

「ハァ・・・ハァ・・・」

男の荒い息遣いが静かな夜によく響く
カチンッ、妹紅は男の体を拘束している4つの留め金を外した
ゴロンッ、男の体は台と炎から開放されて背に焼け跡を残したまま畳へ転がった

ドスッ
「ウッ!・・・カハッ・・・・」

いつの間にか男の傍に立っていた妹紅が男の腹部に思い切り蹴りを入れた
男の口からは赤黒い血が痰とともに吐き出される。
妹紅は男の肩を優しく抱き上げると

 「ごめんね・・・焼け跡も綺麗に直すから・・・」

そういうと奥から小さなツボを手に戻ってきた
その中に入っている白濁色の薬を優しく男の背に塗っていく。
すると瞬く間に男の背の焼け爛れは消え、もとの健康的な肌色へと戻っていく。
二人は優しく抱き合い、その姿を月光が優しく照らしていた・・・。





「こんなプレイもたまには悪くなかったけどな~」
 「バカ、あれは永琳の薬があったからやっただけで本当はあんなこと」
「アドリブで蹴りなんていれちゃってさぁ、あれは結構効いたけど」
 「あ、あれはだな・・・その・・・」
「まぁ、俺はよかったけどなー、妹紅のあの蔑むような目なんて特に」
 「私はあんなこと二度とやらないからな」
「なんで?」
 「そ、それは、お前の体に傷なんてつけたくないからだよ、たとえ全快するんだとしてもな」
「へぇ~、じゃあ今日は拘束して鞭で」
 「お前私の話聞いてなかったのか?」



反省しない


12スレ目>>937 うpろだ908


「……○○、目が覚めた?」

 開きかけた目をこする。
 ぼんやりとした視界がだんだんはっきりしてきた。
 ほのかに明るい月夜の竹林は、ひんやりと心地よい空気で満ちている。
 頭の下には柔らかい感触。
 目の前には慈しむように見下ろす妹紅の顔が見える。

「ああ。おはよう、妹紅」

 そうだった。
 数時間前、妹紅は俺を竹林へ呼び出し、
 これから先の時間を共に歩んでいくことを懇願した。
 それを受け入れた俺は彼女の肝を食べた。
 蓬莱人になったという実感はまだ湧かない。
 少なくとも、妹紅が俺を愛してくれていること、
 妹紅を愛おしいと思う気持ちを胸の内に確かに感じることは、
 ただの人間だった時と変わらなかった。

「気分はどう?何ともない?」
「うん、大丈夫。
 もうすっかり元気だよ」

 不老不死の副作用といったようなものではない。
 別段そういったものはないということだった。
 ただ、流石に人間一人分の生き肝を一息に食べるというのは
 あまりない経験だったので、少しふらついてしまったのだ。
 まだ少し血の味が口に残っている。
 無理をしてあまり心配をかけてもいけないので、
 妹紅の膝枕で休ませてもらっていた。
 いつの間にか眠ってしまったらしい。

「妹紅こそ、腹の傷はもういいのか?」
「粉々にされたってすぐに再生できるんだもん。
 あのぐらいなんてことないよ」

 ほら、と言って、妹紅は服をめくり
 脇腹を見せてくれた。
 確かに、自ら肝を取り出した時の
 鮮血を噴き出していた大きな傷口は跡形もない。





「さて、と。これで俺たちは一蓮托生、
 生きるも死ぬも一緒……じゃない。
 どこまでも、一緒に生きていくわけだな」

 身を起こし、妹紅に手を差しのべる。
 妹紅はそれにつかまって立ち上がると、
 俺を力いっぱい抱きしめた。

「うん……ごめん。
 本当に、ありがとう。
 これから、よろしくね」

 話しているうちに、涙声になってくる。
 俺が蓬莱人になってから、
 妹紅は泣いたり笑ったりしながら
 繰り返し謝罪と感謝の言葉を口にしている。

 年を経ることなく生き続けることの苦しみを知っているから。
 誰かに一緒に生きて欲しいという当たり前の願いが、
 自分にとってはどれほど遠いものだったかわかっているから。
 だからこそ、俺が受け入れたことに対しても
 喜びと申し訳ないという思いが相まっているのかもしれない。

 その思いの源となる不老不死の孤独を知り、
 今の妹紅の気持ちを俺が本当に理解してやれるのは
 まだずいぶん先のことなのかもしれない。
 それでも、今はただ妹紅を安心させてやりたかった。
 しっかりと抱きしめてくる妹紅に負けないくらい、力を込めて抱きしめる。

「俺の方こそありがとう、
 永遠を生きる伴侶に俺を選んでくれて。
 ずっとずっと、よろしくな」

 唇が重なる。
 これから二人で生きていく誓いのキス。

「んっ……」

 口の中にわずかに残っていた血が、
 妹紅の舌で舐め取られる。
 絡めた舌と舌の間で次第に鉄の味が薄れていった。
 代わりに、甘く柔らかい妹紅の味が広がっていくような気がした。





 夜明けも近づき、空が白んできた。

「……そろそろ帰ろっか」

 どのぐらい抱き合っていただろうか。
 妹紅はそう言いながら、名残惜しそうに身体を離した。

「そうだな。ここからなら妹紅の家の方が近いかな?」
「うん、明るくなる前に着けるといいんだけど」

 竹の枯葉を踏みながら、歩き始める。

「今日は慧音さんが来るんだっけ?」
「いつも朝早くに来てくれるんだよね。
 見つからないうちにこの服洗っちゃわないと」

 妹紅は肝を取り出した時に、
 俺はその肝を食べた時に、
 服が血まみれになっている。
 この格好で会ったら、慧音さんが取り乱しかねない。

 そうこうしている内に、妹紅の家が見えてきた。
 どうやら慧音さんより先に着いたようだと安心したその時。

「「「あ」」」

 惜しい。後一歩だったのだが。

「な、二人ともどうしたんだその格好は!
 いったい何に襲われたんだ!?
 傷は?大怪我じゃないのか、大丈夫なのか!?」 

 ……ああ、やっぱり。
 俺は妹紅と一緒に慧音さんを必死でなだめることになった。





「―そうか、○○も蓬莱人になったのか」

 怪我をしたわけではないことをなんとか納得させ、
 血のついた服を着替えた俺達は、
 事の次第を慧音さんに説明した。
 正直、俺は娘との結婚を申し込むために父親と向かい合っているようで、
 ひどく緊張していた。

「……よほどの覚悟があってのことだろう。
 私から言うことは何もない。
 ああ、ただ一つ……」

 「一度でいい、妹紅を奪っていく君を殴らせろ」とか言われたら
 どうしようかと内心固くなる。
 無意識の内に奥歯を噛み締めていた。

「式はちゃんと挙げるようにな。
 二人とも、辛いことは多いだろうがどうか幸せになってくれ」
「慧音さん……」
「慧音……うん、絶対、幸せになってみせるから」

 温かな言葉に、胸がつまる。
 思えば幻想郷に迷い込んでしまって
 右も左もわからなかった俺を助けてくれたのも慧音さんだった。
 これまで妹紅を支えてきてくれたことも合わせて、
 どれほど感謝してもし足りないぐらいだ。

「さて……お前たち、式はどうする?
 やはり守矢神社か博麗神社で神前式にするか?」

 そうだ。そこまでは考えていなかった。
 さてどうしたものか。角隠しを着けた妹紅も良いが、
 ウェディングドレスの妹紅もさぞきれいだろうと思う。

「あ、あの、さ」
「ん?どうした、妹紅」

 妹紅は、何だか顔を赤くしてあらぬ方を見ている。
 何か希望があるのだろうか。

「その……私が、まだ普通の人間だった頃のやり方じゃ、だめかな?」

 妹紅が蓬莱の薬を飲む前……ずいぶん昔だったはずだ。
 百年や二百年ではなかったと思う。

「ふむ、確か外の世界では平安時代と呼ばれている辺りの前後だったな」

 慧音さんは妹紅から聞いた話を書物と照らし合わせたのか、
 その辺りまでは認識しているらしい。
 当時の形式は通い婚とか、妻問い婚とか言ったろうか。
 外にいた頃歴史の授業で習ったような気がする。
 男が女の家を訪ねていって結婚が成立する、
 というところまでは覚えているのだが。

「いや、私もちゃんとわかってるわけじゃないんだけどさ……」
「いずれにしても細かく突き詰めればきりがないだろう。
 妹紅がわかっている範囲をできるだけ再現して、
 足りないところは私が補うことにすればいいのではないかな。
 ○○は異存はないか?」

 妹紅の望みなら、俺に異存などあるはずもない。

「ええ、構いません。
 俺も詳しくないから、慧音さんに色々お世話になると思うけど」
「よし、そうと決まれば善は急げだ。
 私は妹紅の話を聞いて、色々と調べてから準備を始める。
 そう時間はかからないだろうから、
 ○○は今日のところは家に帰って、明日私の家に来てくれ」
「あれ?慧音、3人で準備した方がいいんじゃないの?」
「その時の楽しみにとっておいた方がいいこともあるからな」

 妹紅は何となく釈然としない顔をしていたが、
 平安式でなくとも経験がないことなので、俺もなんとも言えない。
 今日は大人しく帰ることにした。









 次の日。

「慧音さん?慧音さーん?」

 言われたとおり来てみたが、返事がない。

「留守なのかな……うわっ」

 向こうから、正月でもないのに大きな臼を担いで慧音さんがやってきた。

「すまない、待たせてしまったな。
 さあ、入ってくれ」
「あの……慧音さん、その臼は」
「ああこれか?ちょっと借りてきたんだ」

 何に使うのか聞きたかったのだが……
 しかし普通一人で担いで運ぶものではない気がする。
 臼を軒先に置き家の中に入ると、
 慧音さんは座布団を出してくれた。

「さて、妹紅の時代のやり方で婚礼を行うわけだが、
 まず大筋として、○○が妹紅の家を訪ねて婚姻を成立させる、と。
 ここまでは良いな?」
「はい」

 その辺りまでは何とか知っている。

「よろしい。さてその手順だが」

 慧音さんは一枚の紙を取り出した。

「これにまとめておいたから、見ておいてくれ」
「え、これだけですか?」
「○○の方は特に服装をそろえたりしないからな。
 訪ねていく側だから、基本的な作法を守れば
 大してすべきことはない。
 ……それとも、烏帽子が被りたかったか?」

 烏帽子って……あれか、お内裏様が被ってるようなやつか。

「いえ、結構です」
「そうだろう。まあ、ちゃんとした服を着ていくんだぞ」

 紙を広げてみる。本当にあまり内容がない。

「暗くなってから人に見つからないように女性の家を訪れる、
 翌朝は暗い内にこっそり帰る……
 この三日間続けて通うっていうのは?」
「三日続けて女性の家に通うことで、結婚が成立するらしい。
 それまでは忍んでいた関係が、晴れて公のものになるわけだな」
「へー……この『あとあさ』は?」
「後朝(きぬぎぬ)か。
 訪ねた翌朝、男性が帰る時の別れのことだな。
 お互い和歌を詠んで別れを惜しんだりするそうだ」

 和歌というと……

「五七五七七のですか?
 俺そんなのやったことないですよ」
「まあ、その辺は二人で裁量してくれ。
 ところで、日取りだが……明日だな」
「え、明日!?」

 それはまた急な話だ。
 こういうことは吉日を選んで、とか
 そういうものじゃなかったのだろうか。

「その吉日が明日を逃すと当分ないんだ。
 妹紅の了承はもらってある。
 ……本当は手紙をやりとりするところから始まるようだが、
 まあこれはいいだろう」
「わかりました」

 既に二人で生きていくと決めている以上、
 これは形式的なけじめのようなものに過ぎないはずなのだが、
 そうとわかっていても緊張が抑えられない。

「○○」
「……はい?なんですか慧音さん」

 呼ばれて、そちらを向く。
 慧音さんは、真剣な目で俺を見つめていた。

「妹紅は……ただの人間だった時も、決して愛情に恵まれてはいなかったらしい。
 蓬莱人になってからの孤独は言わずもがなだ」

 俺の肩に、慧音さんの両手が置かれる。

「だが、これからはお前が一緒にいてやれる。
 永遠に生き続ければ、いつかは孤独の時間を二人で過ごした時間が上回る。
 ……私も、ずっと一緒にいられるわけではない。
 どうか、これから妹紅が生きる時間を共に支えてやってくれ」

 俺は、黙って力強く頷いた。
 絶対に、妹紅を幸せにしてみせる。
 何千年経っても、ここで慧音さんに約束したことは忘れない。





 ついに、その日が来た。
 今、俺は妹紅の家の前にいる。
 ここまで歩いてくる一歩一歩が、
 期待と緊張で宙を歩いているようだった。

 そっと戸を叩く。
 返事がないので、大きな音を立てないようゆっくりと開けた。
 見慣れた妹紅の家の中。
 薄明かりの中、カーテンのような仕切りが立ててある向こうに人影が見える。

「……妹紅?」

 帳の向こうの人影が、わずかに動いた。

「……○○?来て、くれたんだね」
「ああ。今そっちへ行くよ」

 仕切りの向こうに回りこんで、俺は息を呑んだ。

「……やっぱり、私にはあんまり似合わないだろ?」

 妹紅は、十二単姿で座っていた。
 いつものリボンは着けておらず、
 きれいに梳いた長い髪は灯りを受けて艶やかに光っている。
 恥ずかしそうにうつむいている様子は、普段の元気な姿からは想像もつかない。

「似合わないなんてそんなことない。すごく、きれいだ」
「……ありがと、○○」

 そう言うと妹紅は、改まった様子で手をつき、深々と頭を下げた。

「……ふつつかものだけど、よろしくお願いします」
「……こちらこそ、よろしく」

 俺も床に額をつけるように頭を下げる。
 普段は軽口を叩き合うような仲なのに、やけに神妙になる。
 頭を上げると何だかおかしくなり、二人で顔を見合わせて笑ってしまった。

「少し飲む?慧音が昼間持って来てくれたんだ」
「あ、もらおうかな」

 場の雰囲気を和らげるためにも、少し酒を入れるのもいいかと思った。
 が、ざっと見渡しても見当たらない。

「ごめん、戸の横に置いてあるんだけどこの格好だと動きづらくて……」
「……おーけい、今取ってくる」

 どうも見た目以上に大変な服装らしい。
 だが、それを差し引いても余りあるくらい、今日の妹紅は美しかった。




「ま、おひとつ」

 ほんとは自分で注いだらいけないみたいなんだけどね、と言いつつ、
 妹紅が銚子から酒を注いでくれる。

「……それにしても、よく色々と用意できたなあ」

 妹紅の十二単もそうだが、調度品や今使っている酒器も、
 なかなか立派なものである。
 妹紅の杯に酒を注ぎながら、俺は感嘆の声を上げた。

「慧音があちこち駆け回ってくれたんだ。
 阿求の家とか、マヨヒガとか」

 妹紅はそう答えると小さな杯を干し、膳の上に置く。
 なるほど、その辺りなら当時の雰囲気を持ちつつ
 実用に堪えるものがありそうだ。

「ありがたいよね」
「ありがたいな」

 まったく、慧音さんには何から何まで世話になりっぱなしだ。
 色々と貸してくれたり、譲ってくれたりしたのであろう
 稗田家やマヨヒガにもいずれお礼にいかねばと思う。





「ところで、さ」

 さしつさされつして、銚子も空になってきている。
 俺達はとりとめのない話をしながら過ごしていた。

「ん?何、○○」
「どうして、こういう風にしたいって思ったんだ?」
「……え?」

 なぜそんなことを聞いたのだろう。
 本当に、たわいない話のつもりだった。

「いや、俺はきれいな妹紅が見られて嬉しいけれど、
 妹紅ってあんまり昔にこだわらない感じだったから」

 妹紅はちょっと考えるような素振りを見せて、
 少し寂しそうに笑いながら話し始めた。 

「私って、あんまりおおっぴらにできない子だったみたいでさ。
 母様と一緒の家に住んでて、一応暮らしの助けはしてもらえてるから
 すごく貧しいわけじゃなかったけど、母様はあんまり構ってくれなくて。
 父様が来ることは全然なかったし」

 ―もう、千年近く前のはずだ。
 なのに妹紅は、まるで昨日のことのように話す。

「珍しく父様が来てくれた時に、お土産だよって、立派な絵巻物をもらってね。
 それがさ、きれいなお姫様が、優しい男の人と恋をする物語だったんだ」
「…………」
「滅多にないお土産だったし、何となく印象に残っちゃって。
 いつか私のところにも、好きになった男の人が訪ねてきたらいいな、とか思ってたんだ。
 それに」
「……妹紅」

 妹紅の目には、いつしかうっすらと涙が浮かんでいる。

「父様も母様も、もうずっと昔に死んじゃったろうけれどさ。
 もしどこかで見ていてくれたら、私が結婚するの、喜んでくれるかなと思って。
 それなら父様達にもよくわかるやり方の方が、もっと喜んでくれるかなって」
「妹紅っ!」

 俺は、妹紅を抱きしめた。
 彼女がずっと抱えてきた寂しさを、少しでも埋めてやりたかった。

「……ねえ、○○。父様達、喜んでくれるかな?
 おめでとうって、言ってくれるかな?」

 俺の胸の中で、妹紅は子どものように泣いていた。
 今はただ、こうして泣ける場所になってやることぐらいしかできないけれど。

「……ああ。きっと、心から祝ってくれてるよ。
 でも、こんな頼りない婿で心配かけてないかな?」
「バカ……私には、最高の旦那様だよ。
 …………ありがとう、○○」

 いつか、寂しいことや辛いことを思い出さなくても済むくらい
 彼女の時間を笑顔で満たしてやれるようになりたい。





「ん……○○?」

 朝だ。
 結局妹紅は、俺の腕の中で安心したような顔をして眠ってしまっていた。

「おはよう、妹紅。目が覚めた?」
「……ごめん。私、眠っちゃったんだね」

 まだ少し眠そうに目をこすりながら、
 妹紅はばつが悪そうに身を離した。

「気にすることないって」
「だって、ほらその……本当は、さ……
 えと……ふーふの………いとなみ、とか……」

 言っている妹紅の顔も真っ赤だが、
 聞いている俺も顔が熱い。
 妹紅の寝顔に見とれたりしていてすっかり忘れていたが、
 言われてみれば本来そういうものだったはずだ。

「ま、まあ……明日もあるしな」
「そ、そうだよね!三日連続で通ってくるんだし!」

 大事なところをうやむやにしてしまった気がするが、
 ともかく通い婚一日目はこれで終了、ということだ。
 さて、『後朝』とやらだが……

「……ごめん妹紅。俺和歌とか全然詠めない」
「……いや、いいよ。実は私もさっぱり……」

 実に気まずい空気だ。

「あ。要はお互いの気持ちを確かめ合えばいいんだよね?」
「まあそうだけど……わっ」

 いたずらっぽく目を輝かせて、妹紅が再び俺に抱きついてくる。

「へへ。愛してるよ、○○」
「……俺だって、愛してるぞ、妹紅」

 お互いの気持ちを伝え、キスを交わす。
 まあ、俺達ならこんなものだろう。
 優雅ではないけれど、幸せだ。

「さて、家に帰らないとな」

 暗い内に帰るはずだったが、もう夜明けも近い。
 戸口に向かって歩き出そうとした俺の服の裾が引っ張られた。

「……もうちょっと、一緒にいてくれないか?」

 振り向くと、妹紅と目が合った。
 寂しそうな、目だった。

「……そうだな。もう少し一緒にいようか」

 流されているような気もするが、それでも構わないと思った。



















 三日目の夜が過ぎて、朝。




 風呂敷包みを持った慧音さんが、
 俺と妹紅のところに来た。

「……三日目の朝なわけだが」

 慧音さんは半ば呆れたような顔でこちらを見ている。

「○○、お前三日間ずっとここにいただろう」
「あ、わかります?」

 帰ろうとするたびに妹紅が寂しそうな顔をするので、
 そのたびにもう少し、もう少しと伸ばしている内に
 三日目になってしまった。
 妹紅は時々いつもの服に着替えて家事を片付け、
 俺も置いてあった服に着替えてあれこれ手伝ったので、不自由はなかったが。
 ……一日目の保留事項も解決したし。

「昨日一昨日と○○の家を見に行ったが留守のままだったからな。
 ……まあ私も薄々そんな気がしていたからこちらに来なかったんだが」

 そう言って慧音さんは風呂敷包みを開いた。

「三日目には餅を食べるそうだ。作ってきたから食べるといい」

 あの臼はこの餅を搗くためのものだったらしい。
 搗きたてらしく、美味い。

「ともあれ、一応これで晴れて夫婦になったわけだ。
 当時は妻の家で婿の面倒を見たわけだが……」
「わかってますって慧音さん」
「どっちがどっちをとかじゃなく、
 私達はちゃんと二人でがんばって暮らしを立てていくよ」
「それならよろしい。
 さて、三日目の朝が過ぎたらお披露目の宴を開くということだが、
 ここからは幻想郷式でいくことになった」

 幻想郷式というと……ああ、わかった。

「準備であちこち回った時に話が広まってな。
 顔見知りの連中が博麗神社で宴会を開くと言っているんだ。
 気の早い者はもう集まっているかもしれないな」
「……じゃあ、主賓ももう行かないといけないですね」

 妹紅の手を取る。ぎゅっと握り返してくる感触が嬉しい。

「それじゃあ、妹紅」
「うん。行こうか、○○」

 まず手始めに、門出を祝福してくれる人妖達のところへ。
 二人なら、永い時も、どんな場所でも、きっと幸せに生きていける。


12スレ目>>583、584


   妹紅が去った後に私は昔のことを思い出していた

  一緒にご飯を食べたこと
  タバコの火がないからつけてもらったこと
  雨の日に濡れて帰ったら乾かしてくれたこと

  意外とどうでもいいようなことばかりが頭を巡るんだな
  と私は少し苦笑した
  終わりを妹紅の火で終われるならそれもまた一つ
  蓬莱の薬、というものがあったそうだが
  妹紅も私もそれを望んだりはしなかった。
  私は妹紅の永遠の中の一粒になれればそれでよかった。
  いろいろ考えているうちに眠くなってきた
  明日は妹紅が鍋を作ってくれるっていっていたな
  楽しみにしよう。




  輝夜「本当によかったのかしら?」
  妹紅「なんのことだ」
  輝夜「彼のことよ」
  妹紅「蓬莱の薬ならいらない、前にそう話したはずだが」
  輝夜「そう、それならいいのだけれど」
  妹紅「なぜ私の心配をする、お前にとって私の悲しみは蜜だろう」
  輝夜「たしかにそうかもしれないわ、なぜかしらね自分でもよくわからないわ」
  妹紅「お前らしくもないな」
  輝夜「そうね、でも貴女もらしくないわ」
  妹紅「何故だ?」
  輝夜「その頬の雫はなにかしら」
  妹紅「ッ・・・」
  輝夜「たまには泣いてもいいのよ」


12スレ目>>704


「さて、これが蓬莱の薬か」
 森の奥、木々というある種の結界により閉ざされた空間。いるのは俺と一人の少女だけ。
 そして俺の手元にある瓶にはすこしとろみのある液体が溜まっていた。
「そうよ」
「でもなんでまだとってあるんだ?これがお前の人生を狂わしたんだろ?」
「そうね、何でだろう。もったいなかったのかもしれないわ」
 少女は俺から視線をそらし、明後日の方向を向いていった。
(嘘がばればれなんだよ)
 俺は心中でつぶやいた。この永劫のときを生きる少女は寂しいのだ。
 まわりの人は変わり、死んでいくのに自分だけ変わらずに行き続ける。変化し続ける世の中にある不変という名の特異点。
 それで心の奥底では自分のように永劫を生き続ける人間を求めていたのだ。殺しあう相手ではなく、安心して傍にいられる相手として。
「んくっ」
 俺は一気に瓶の中の液体を飲み干した。薬特有の苦い味が口の中に染み渡る。
「うげぇ」
 俺は舌を出した、その刹那――。

 ゴッ!

 俺の米神に強い衝撃が走る。体が宙に浮き、木々へと叩きつけられる。
「うぐっ」
「……なぜ飲んだ、何故その薬を飲んだんだ!」
 俺が顔をあげるとそこには怒りに染まった少女の顔があった。
「同情か?貴様、私に同情してその薬を飲んだというのかっ!」
 胸元をつかまれ、締め上げられる。その真っ赤な瞳が俺を射抜く。
「もしそうだというのなら、私は貴様に永劫の苦しみを与えようぞ!」
 おそらくその怒りは俺を想ってのことなんだろう。自分のような存在をもう生み出さないため、自分の味わった苦しみをもう誰にも味合わせないため。
 優しいやつだな、お前は。
「バーカ、俺が同情で自分のみを差し出すかよ。これは俺のためだ」
「……っ!」
 襟元を閉める力が緩む。顔に動揺の色が表れるも怒りの表情はいまだ消えず、である。
「お前とならさ、別に永遠に生きる苦しみも乗り越えられると思ったんだよ」
「……っ!?」
 完全に俺の襟元から手を離し、うろたえる少女。顔が赤いのは照れであろうか。
「だーかーら、お前とずっといたいんだよ、妹紅。それこそ永遠にな」
 そういって永久の歳月を変わらずに生き続ける少女、妹紅の唇にそっと自分の唇を押し付ける。
「――――!」
 妹紅が顔を真っ赤にして俺の顔を遠ざける。
「おっ、お前、自分が何をしたか分かってるのか?私なんかのために――」
「阿呆。何度言わせるんだ、こっちだって恥ずかしいんだぞボケ。それにお前なんかじゃない、お前だから飲んだんだよ」
 そう言って妹紅を抱き寄せる。
「うっ、うわぁぁぁぁ……」
 妹紅は子供のように声をあげて泣いた。寂しかったのだろう。
 それも仕方がないことだ、何せ今までは共に変わらずに生き続ける相手が殺したいほどに憎む相手だったのだから。
「これからはずっと一緒だぜ」
 そう言って俺は妹紅の頭をそっと撫でてやった。


12スレ目>>901


「ん、なにこれ」
 「と、とりあえず受け取ってくれ!」

そう言うと妹紅は小さな袋のようなものを
俺の胸に押し当ててきた

「お、おう・・・」

妹紅の気迫に押され受け取ってしまったが・・・
これはなんだろう

「開けてもいいか?」

そう聞いたのがまずかったのだろうか
妹紅は少し俯いた後に足早にどこかへいってしまった

「なんか悪いことしたかな・・・
 とりあえず開けてみるか」


チョコレート


あぁなるほど・・・俺は理解した
今日が2月14日であること
昨日妹紅が徹夜で台所にいたこと
全て繋がった

おそらくハート型だったのだろう、少し溶けて形が崩れたチョコが入っていた
「・・・・・・苦いな」
ビターな大人の味がした
でもどこかほんのり甘かった


13スレ目>>166 うpろだ955


 炬燵と蜜柑。
 これほどまでに仲睦まじい存在は、そうは無い。



 最後の蜜柑に手を伸ばす。
 その手が、向かいに座る少女の手とぶつかった。
「…これは俺の蜜柑だ。その手をどけるんだ、妹紅」
「いいや、これは私の蜜柑だ。
 そっちこそ女の子に蜜柑ぐらい気持ちよく譲れよ、○○」
「お前、俺の何十倍年上だよ…」
「私は永遠の十六歳だぞ?」
「ともかく、この蜜柑は俺のだ。
 まだ台所にあるから、持ってこいよ」
「やだ、寒い」
「お前火使えるじゃん?」
「疲れるもん」
「どっかの姫様みたいになってきたな…」
「う、その扱いだけはやめてくれ」
「んじゃ蜜柑もってきてくれ」
「うー…そうだ、一つゲームをしよう」
「何だ?花映塚か?」
「その蜜柑を交互に食べさせて、最後の一房を食べたほうの負け。
 もちろん蜜柑を剥く前に決めるんだぞ?」
「よし、いいだろう、先手後手は妹紅が選んでいいぞ」
「それじゃあ、先手で!」
 少女皮むき中…
「半分だけ剥いておこっと…結果が見えちゃつまんないもんね」
「よし、じゃあまずは妹紅が食え」
「違う違う、食べるのは○○だよ。
 はい、あ~ん」
「え、お、おい」
「さっき言ったでしょ、『その蜜柑を交互に食べさせて』って」
「う、そういえば」
「ほら、あ~ん」
「あ、あ~ん」
 もぐもぐ
「ほら、次は○○の番。
 あ~ん」
「お、おう」
 もぐもぐ
「ん、おいしい。
 それじゃ、はい、あ~ん」
「あ~ん」
 ぽいっ
「んぐ! お、奥のほうに蜜柑を放り込むな!」
「あはは、ごめんごめん」
「そんじゃこっちも!」
 ぽ~ん
「むぐっ」
「おーナイスキャッチ」
「もー、それじゃこれでどうだ!」
 シュッ!
「むぐっ!早い、早いよ!」
「あはは、やるじゃん」

 などと繰り返しているうちに、残り四分の一となった。

「これで決着、皮剥くよ?」
 ぺりぺり…
 出てきた房は、3個。
「くっそー、俺の負けかー」
「あはは、大勝利~」
 ぽいっ ぱくっ
「むぐむぐ…せめてしっかり味わってから行こう…」
 ぽいっ ぱくっ
「もぐもぐ…まぁまぁ、ちょっと暖かくしてあげるからさ」
 最後の一つを妹紅は放り投げた。
 ぽ~ん
 天井スレスレまで放り投げた蜜柑を、必死で追う。
「おい高いっ…!」
 目の前にあるのは、蜜柑ではなく、炬燵から乗り出してきた妹紅の顔。
 そのまま唇同士が触れ合った。
「も、妹紅?」
「ふふ…ほら、早く蜜柑持ってきてよ、耳まで真っ赤にゆだってるうちにさ」
「っ!…わかったよ」
 お前だって真っ赤じゃないか、と思ったが、可愛いので言わないことにした。


 炬燵と蜜柑。
 これほどまでに仲睦まじくさせる存在は、そうは無い。


最終更新:2010年05月29日 02:08