妹紅5



うpろだ1363


「やぁ」

最近のおなじみの声だ。

「お、今日もきたのか。ご飯時だぞ、運がいいな」

「お、タイミングいいな、見計らってきたけどぴったりだ」

○○はそういうと少し笑った。

「やぁ○○さん、あなたも妹紅のご飯を食べに?」

「やぁ慧音さん。ご馳走になりにきましたよ」

そういうと慧音は目を輝かせながら

「そうだろう!そうだろう!妹紅のご飯はいつでもおいしいからな!」

慧音が妹紅の晩御飯のよさを一気に話し出した。

それを聞きながら照れくさそうに妹紅は顔を紅に染める。

「ほら、そんなのはどうでもいいからまずは食べろ」

妹紅はちゃっちゃと茶碗に炊きたての白米をよそる。

「今日は焼き魚か」

慧音が白米がどっしりのった茶碗を受け取ると、箸を取り出す。

自分で持ってきてるあたり準備万端といったところだ。

「今日ちょっと川で釣りをしてな、いい感じにつれたんだ」

「そうか、妹紅は釣りもうまかったな!」

見てるだけで面白い。

慧音の妹紅へのベタ惚れさは見てて心が暖かくなる。

○○も自然に口から笑みがこぼれた。

「まぁとりあえず○○も食べろ」

「ん、あぁ」

○○も妹紅から茶碗をもらい、箸をとる。

「んじゃ、ありがたくご馳走になるよ」

○○が魚に箸をつけて、身をつまむ。

「どれどれ…」

○○と慧音が白米と身を一緒に口に入れる。

『うまい!』

二人揃えていったせいか、妹紅は少し驚きながら、顔を紅潮させる。

「そ、そうか…?よかった」

妹紅は安心した顔で自分の茶碗にもご飯をよそる。

「いや、普通にうまいよこれは」

「妹紅が作るのはなんでもうまいな!」

二人が口々に料理を褒め、また顔を紅潮させる。

「…はは」

○○が少し笑った。

「ん?どうした?○○さん」

慧音が魚を食べながら聞いた。

「いや、さぁ…こんなに面白く飯が食えるって、単純だけどほんと幸せだなってさ」

○○が茶碗をおく。

「こうやって楽しい話をしながらうまい飯を食べてると、ほんと他のことなんかどうでもよくなってくる」

○○はそういってから、また魚を食べはじめた。

「…そうだな。私も慧音と食べる晩御飯はいつでもおいしかった」

「それは私もいつでもだ!」

そう慧音が言うと、妹紅がくすりと笑った。

「それから○○がここにくるようになって…またおいしくなったな」

妹紅がははっと笑ってまたご飯を食べはじめる。

「…」

○○が少し黙る。

「…?どうした?○○」

妹紅が何か失言でもしたかと心配そうに聞いてくる。

「いや、別になんでもないんだ」

○○がそういって、魚とご飯を一気にかきこんだ。

「…?」

妹紅はいまいち釈然としない様子で、魚をつまんだ。

「…妹紅」

○○が口を開く

「このご飯食べたら少し話したいことがある。…少し時間あるか?」

「…あぁ、あるが…」

妹紅は不思議そうな顔をして、○○を見た。

その間慧音は幸せそうな顔をしながら妹紅の手作りご飯を食べていた。




「今日の月は歪だな」

竹林を妹紅と散歩しながら、不意に○○が口を開いた。

「そうだな…○○とあったのも、こんな形を半月だったな」

私がそういうと、「そうだな」といい、あの日を懐かしむような目をした。

「幻想郷にきて1ヶ月か。里の暮らしにはなれたか?」

「ん?あぁ、おかげさまでな。慧音さんがいろいろと紹介してくれてね」

「そうか」

慧音に○○のことを話し、少し手伝ってやるようにいったが、○○もなかなか慧音さんと打ち解けてくれたようで私的にはうれしかった。

「慧音さんは寺子屋で勉強を教えてるんだな」

「そうだな…頭は少し固いが、悪いやつじゃない」

「固いやつ…ねぇ」

○○はそういうと、今日の晩御飯のときを思い出してたのか、少し笑った。

「ま、まぁ悪いやつじゃないだろ?」

「…そうだな、普通にいい人だ」

○○もいい人の点には納得したようで、素直に慧音のよさをわかっていた。

「…食べたばっかもあるし、少しつかれたな」

○○が腿のあたりをさすりながら言った。

「…そうだな、…もう少ししたら休もう」

私がそういうと、○○も一緒に歩き出した。



「…ここか」

○○がそういうと、私と最初に出会った切り株に腰を下ろした。

「一人できたら迷いそうだ」

○○がそういって苦笑いをした。

「はは、そうかもな」

私もそれにあわせて笑いながら答えた。

「…」

二人で切り株に腰掛け、少しの沈黙。

二人は共に空を見上げ、あの日と変わらない歪な半月を見上げていた。

「…○○」

「ん?」

「話ってのはなんだ?」

私はずっと疑問に持っていたことを持ち出した。


「…あぁ」

○○は空を見上げながら口を開く。

「いや、さ。俺が幻想郷にきて、妹紅にはお世話になりっぱだな…と」

「…そんなことか。きにするな」

「…そうか」

…また少しの沈黙が流れる。

「…少し寒いな」

「そうだな…」

出会ったのが10月の半ばごろ。

もうそろそろ12月になりかけの今、さすがに厚着もしないで秋夜を出歩くのは寒い。

「…」

○○が私に寄り添う。

「…な?」

いきなりのことだったから、私は口どもって焦ってしまった。

「…寒いか?」

○○が心配そうに問いかけてくる。

「い、いや、大丈夫だ」

「そうか、よかった」

そういうと○○は笑った。

○○のことだからそういうことで寄ってきたんじゃないだろう。

それでも自然と顔が熱くなる。

…よく見ると○○の顔も赤かった。

寒さのせいだろうか…


「…妹紅」

「な、なんだ?」

いきなり呼ばれたので、噛みながら返事をする。

「…大事な話があるんだ」

「…?」

大事な話…?

さっきの話で終わりじゃないのか…。

そういうと、○○は立ち上がって、私と向かい合うようにたつ。

「あー…うん…」

○○にしては珍しく、話を切り出すのに抵抗があるようだ。

「…どうした?」

「いや、うーん…」

…なんだ?

「ほら、早くしないと帰るぞ。寒くなってきたしな」

「あ…あぁ…あのな」

○○が帰るという単語に少し焦ったのか、できる限り早く話をいおうとした。

「…妹紅」

「ん?」

私は○○の顔を見つめた。

「あー…なんていうか」

○○はそういってから、言葉をつなげた。

「お前の左手を見てから、いや、最初にあったときから、妹紅のことが気になり出したんだ」

一呼吸おいてから、また続ける。

「別に、妹紅の特別な経歴とか、不思議な能力に惹かれたわけじゃない。純粋に妹紅のことが気になり出した」

「…」

…待てよ、○○。そこまでいったらどんな鈍いやつだって、言いたいことはわかってしまう…。

…○○…。

「妹紅…」

「…なんだ?」

○○は一呼吸おいてから、少し強めに言葉を発する。

「俺は…お前自身のことが純粋に好きなんだ」

「…」

…くそっなんで、なんでよりによって!

なんでお前に言われるんだ!

お前に言われたら…悲しくなるだけじゃないか…。

「…○○…わかるだろう…?お前の時計じゃ…私と同じ時は刻めないんだ」

「…」

「私じゃ何もお前に…幸せにさせてやれん」

「…」

「…お前が死んだあと、私はどうすればいいんだ…?」

「…」

そこまでいうと、○○は黙ってしまった。

…悲しいが、私は不老不死の体だ。

○○と同じ時は刻めない…。

わかってくれ…○○…。

「お前と…同じ時計…か」

不意に○○が口を開く。

「…これが…、俺の覚悟だ」

○○はポケットをまさぐると、小さいビンに入った、何かの飲み物を取り出す。

「…?」

「…お前について、多少調べたんだ…すまない」

○○は申し訳なさそうにうつむく。

…!

「それは…!」

「…」

○○は何も答えなかった。

…それがすでに答えだ。

「どこで…」

「永遠亭に忍びこませてもらった。比較的簡単に倉庫で見つけられた」

「…○○!」

「きけ!」

私が言葉を紡ごうとすると、それは○○の叫びで遮られた。

「…お前の答えを聞きたいんだ。お前が不老不死だとか…そんなのはどうでもいい。お前が俺のことをどう思っているかが大切なんだ」

「○○…」

「…もしダメだと言うなら…俺はお前に顔を合わせることはもうない。…頼む」

「…」

…○○…。

「…煙草を一本ゆっくりめに吸う。…その間に答えが欲しい。」

「…」

○○が煙草を一本出すと、ポケットを探る。

「…煙草、逆だぞ」

「…む」

○○が間違いに気づき、煙草を咥え治す。それと同時に軽く指をならす。

それと同時に○○の前に火が灯る。

「…すまん」

「あぁ…」

そういうと、○○はゆっくりと竹林に歩いていった。

…○○にあって1ヶ月か…。

この1ヶ月、短いようですごく圧縮された毎日だったな…。

…私は、○○のことをどう思っているんだ…?

…いや、隠すのはもういい。

…確かに私は○○が好きなんだ。

だが…いった通り、あいつと同じ時計じゃ、同じ時は刻めん…。

それに…あいつがあの薬を飲んだところで、本当にそれが○○の幸せなのか…?

○○…!




「…吸い終わった」

後ろから不意に声が生まれる。

それに気づき、私は後ろを向いた。

「…答えが欲しい」

「…ッ」

…なんて答えればいいんだ…

嫌いだと言えば、もとからいる存在じゃなかった○○は消え、また慧音と二人、"元通り"の生活になるだろう。

だがしかし、そんな簡単に消せるほど私のなかで○○はちいさくない存在だ…。

好きだが、蓬莱の薬は飲まないで欲しいと言えば…?

…確かに幸せな時間がくるだろう。

だが…果たして何年だろう。

60年?70年?

…私にとってはちっぽけな時間だ。

それに、○○だってそんな曖昧な返事は望んでないだろう。

…かといって、○○が蓬莱の薬を飲んだところで、それが本当に○○の幸せなのか…?

…ッ!


「…妹紅」

「…」

「お前と同じ時が刻めなくても。現在(イマ)は共に刻めるだろう」

○○が言葉を紡いでいく。

「…お前は俺に優しさと温もりのある時間をくれたじゃないか」

「…」

○○…。

「…お前が俺が死ぬのが悲しいというのなら、俺はいつだってこの薬を飲む」

そういって、○○は蓬莱の薬を取り出した。

「…俺が幸せなのは、この薬を飲むことや、不老不死をえられることじゃない…」

「…」

「お前と…同じ時を刻むことができるのが一番の幸せなんだ!」

…!

「…○○…ッ!」

私は○○に向かって駆け出そうとした。が、それは○○に遮られた。

「…すまない。返事が欲しいんだ…ここで妹紅と触れ合ったら、離れることが絶対にできなくなる…」

「…!」

…○○!


「好きだ!」

私は声を張り上げて叫んだ。

「私も…○○が好きなんだ!」

少し目尻に涙が浮かんできた。それでも言葉を紡ぐ。必死に。

「○○と一緒に時を共にしたい!優しさが欲しい!」

「…妹紅」

○○も少し目尻に涙を浮かべ、顔を紅潮させる。

「○○…好きだ!」

…そうだ。

私は○○が好きなんだ。

…もう迷わない。

○○と共に、永遠を共にしよう。

…怖くない。

○○がいるなら、永遠だってなんだって越えていけるはずだ。

…これが幸せなんだ。

○○はビンのふたをあけ、中身を一気に飲み干す。

それを見終えて、私は○○に走りだした。

固く抱きしめてくれた○○の腕の中で、歪な三日月の下、静寂な時を刻んだ。

「…これから共に歩もう。永遠を。な?」

「あぁ…もう迷わない。…好きだ」

「俺もだ。…なんだか不老不死って実感がないな」

「ふふ、これからさ。…でも、お前と一緒なら私はどこでもいけるさ」

「あぁ、俺もさ」

『共にいこう、永月を。』


新ろだ89


うわああああああああああああああ 出 遅 れ た あああああああああああああああああああああ!!!
間に合ってないことを直感で感じつつ、もうどうせなら開き直ろうと思いつつ。

妹紅に告白したかった。ただそれだけのもの。





           ******厨二病注意******




 時は神無月。

 とある隙間妖怪が外の世界へと旅行を計画、
伴侶を伴うならば参加を許可するという条件で一般にも開放され、様々な人妖が参加しているらしい。
私もそれに便乗する為、申込書を記し、我が恋人である愛しの妹紅を勧誘。

  もじもじとしながら、
「さ…、さんかしても……、…いぃょ…」
と返答した妹紅は非常に愛らしく愛しくてもう私の理性は瓦解しそうになりながらも電光石火の勢いで準備を終え、共に旅立った。

 数ヶ月ぶりに訪れた私の故郷は特に変化もせず漫然と灰色の空気を私に浴びせかけてきていたが、
妹紅にとっては見る物全てが――まあそれも当然だが――珍しいようで、興味津々な子猫のような愛人は非常に私の心の癒しとなっていた。
まず踏みしめている地を見、前方を塞ぐコンクリートジャングルを眺め、まるで弾幕のように流れる人々に驚いた。
私はそんな恋人を眺めているだけでもう旅行にきた事に満足していたが、私には非常に重要な用を果たすために旅にきている。
気を取り直し、恋人と外の世界の観光をすることに決めたのだ。

 そこからはもう存分にイチャついたと自負している。
街で、駅で、店で、レストランで、料亭で、ホテルで、旅館で、家で、 
常に妹紅と共に在った。

 どこかへ連れて行くたびに、妹紅は笑い、私も笑い。とても幸せな時であった。


さんざん遊び倒し、桃色空間を展開させ、明日、いざ帰ろうとする時。

私は妹紅を呼び止めた。











「なあ妹紅、聞いてくれないか」
「なっなんだい、○○。そんな暗い顔して」

「妹紅、私は最低の男だ。私は最低の男だ。重要なので二度言った」
「さらに繰り返す、私は最低だ」
「私の精神は非常に未発達で原始的で幼稚で利己的であり、理性的とは程遠い」
「私の肉体は非常に醜悪で貧相で軟弱で脆弱で、健康的とは程遠い」
「私の性格は非常に鬱屈としていて狡猾で迂闊で残念で、
 さらに私の駄目さ加減を君に正確に伝えるためには広辞苑を引用しつつ一週間かけて日本語の勉強をし直さなければならない」
「そして私は人間として無能である。これは断言できる確定的に明らかな事実だ」

………。

「妹紅、ここまでは君は認識しているかな?」
「い、いや、ちょっと待ってよ。突然何さ、○○はそんな酷い人じゃないよ」
「ああ、私に対する擁護は今はいいよ。妹紅は優しいから、きっと全部否定して受け入れてくれるに違いない。
 でも、今話したいのはそういうことじゃないんだ」
「……? まぁ、○○がいいって言うなら良いけどさ…」
「話を続けよう。
 妹紅、僕は君に恋して、君を愛して、君から愛してもらうようになってからふと、感じていた感情があるんだ。勿論、恋慕以外で、さ。
 最初はそれがどうして感じるのか、どうしてそんな事を思うのか、非常に不思議ででしょうがなかった」
「理解が出来なかった、そのことに嫌悪したりした。
 考えては妹紅と一緒にいて、考えては仕事して、考えては食べ、そして寝た。
 でもある時、その正体に気づいて戦慄した時、同時に悟ってしまったんだ」

………、言ってしまっていいのか?

「それはいわゆる、『恐怖』だったんだよ、妹紅」

ああ、やっぱり。そんな悲しそうな顔をしないでくれ。

「私の行動が何か妹紅に害を成していないか?」
「私の言動が妹紅の品位を落としていないか?」
「私の存在が妹紅の存在を侵蝕していないか?」
「私の行為が妹紅の思考を妨げていないか?」
「私の何かが、妹紅を冒し、変質させ、
 その何かが妹紅として本来あるべき『モノ』――例えば反応とか、言動とか、行動理念とか――を破壊していないか、恐怖だった」
「 ……私は○○にされる事なら、どんなことでも平気だよ?」
「嬉しいよ、妹紅。
 やっぱり妹紅に愛されている私という個人は今この地球という概念全体に存在するありとあらゆる存在よりも幸福に違いない」

もうここまでだ。ここからは駄目だ!

「…でも、そういうことじゃないんだ」

やめろ!それ以上言ったら抑えられなくなる!

「…わけわかんない。今日の○○はなんかおかしいよ? あんまり行きたくないけど、帰ったら永遠亭に連れて行ってあげようか? 」
「それには及ばないんだ、妹紅、私はいたって正気なんだよ、残念ながら。
 ……妹紅、君はそんな最低な『私』と一緒にいたら、きっといつか、私が原因のなにか理不尽で悲しい目に遭う時が来ると思う。
 いや、妹紅が気づいていないだけで既に遭っている可能性だってあるんだ。
 でもきっと妹紅は気づかない、『私』という存在に対する愛のせいで気づいていない。そして私も気づいていない、私は鈍感だからね。
 これが一体どんなに悲劇的なことだかわかるかい!? 妹紅! 」
「その悲劇はまず間違いなく私のせいだ。
 君が私を愛するような関係にしたのは私だ。
 妹紅が気づかないでいるよう妹紅を変質させてしまったのも私だ。
 そしてその悲劇にたいして認識すらしないような存在に君は愛を注ぎ込んでいるんだ!
 そんな愚者が幸福の内に無意識的に君を攻撃し、蹂躙しているかもしれないと考えると、私は! 私は!! 」
「○○! ○○っ! しっかりして、おちついて。
 本当にどうしたの今日は? ○○、何か変だよ。何かに酷く怯えてるみたいだ」

アア、モウトマラナイ。引キ返セナイ!

「そうだよ! この感情はまさしく恐怖なんだ!
 妹紅!! 私は君が恐ろしい!君が怖い!! 」

私を愛してくれて、私は感謝してもしきれず、ただただ感謝して

「どうすれば君が喜んでくれるのか?」
「何か会話をする? 何か贈り物をする? 何か行動する? 何か振舞う? 何か、何か、何だ!?
 私はどうすればいい? 私はどうすればいいんだ? 私はどうすればいいのか?
 もし君が喜んでくれなかったら?
 いや、もし君が嫌な思いをしたら? 私のせいで何か不愉快な思いをしたら?」
「私のせいで君を怒らせてしまったら!?」

君にはいつも笑顔で居て欲しくて、笑っていて欲しくて、笑わなくても、穏やかな気持ちでいてほしくて

「私は妹紅に嫌われたくない!」

君が傷つくのが怖くて、それ以上に君に嫌われるのが怖くて

「振り向いてくれなくてもいいから、とにかく嫌われたくない!
 しかし私は妹紅にもっと幸せになって欲しい!
 そのためには私は君の前から消え去っても良い!体が滅びても構わない! 」

妹紅がいないと、もう私は生きていけなくて、でも私が死んで妹紅が悲しむくらいなら、最初から妹紅を好きにならなければよかった訳で

「これはひどいわがままだ!!」

到底吊り合わないのに、こんな歪で異形な私を君は愛してくれて。私は妹紅の事が愛しくて

「こんな大きな矛盾が私には突き刺さっていたんだ!! なんて醜いんだ!! 私はっ!!」

愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて、壊れてしまいそうで

「嗚呼、私は醜い!! 自己嫌悪する私が! 自己卑下する私が! 欝かね!? 私は!」

彼女がただただ愛しくて愛シくて愛しクて愛シクて愛しくテ狂っテシまイそうで!!

「○○っ!!」
私の胸に飛び込んできてくれる妹紅。ああ暖かい、柔らかい。
ふわりと彼女の髪が私の頬と肩をくすぐる、なんていい香りなんだ!
彼女の体温を感じ、少し落ち着いてきた。やはり私は、言うなれば妹紅中毒のようだ。
「○○、しっかりしてよ。○○、私はあなたがいればそれだけでいいんだ。
 ○○さえいればもうそれだけで私は幸せになれちゃうんだよ?
 だからそんな辛そうな顔をしないでよ、自分をそんな風に責めないでよ、そんな風に泣かないでよ…」
「………私は、泣いているのかね?」
「んーん、涙は出てない。でもあなたは今、泣いてるんだと思う」
「……。そうかい、妹紅が言うのならそうかもしれないな。…でももう大丈夫、妹紅に元気にしてもらった。」
「ふふっ、現金な奴。……でも元気になってくれたなら嬉しい。」
「すまないな、妹紅。…………なあ、…妹紅」
「なあに○○? 何でも言ってよ。何でもやっちゃうから」







「君を■■てもいいかい?」








「えっ―――?」








「性的な意味でも、その本来の意味としても、だ」
「だっだめだよ!!もちろんいつ戴いてくれちゃってもいいけどっ!いやそうじゃなくってもう何言わせるのさ!!そんなことしたら○○が…」
「ああ、死ねなくなるな。だがそれがどうしたね?」
本当にどうしたというのか。
「『どうしたね?』じゃないよ!! 死ねないって、想像以上に辛いことだよ? 
 っていうか! 死ねるから生きるって素晴しいんだよ!? それを、○○は!! 」
「でも妹紅は死ねないではないか」
「そうだけど!! いやむしろだから………、っ……ぅう~とにかく駄目っ!! 」
「どうしても? 」
「どうしても!! 」
「成る程、では実力行使に移ろう」
「………なに? 分かってると思うけど私は○○よりかなり強いよ?
 やりたくないけど、今後そんなこと二度と思わないように一回お灸を据えてあげようか? 」

 ああ、妹紅、

「……なあ妹紅、さっき話した恐怖の話、まだ続きがあるんだ」

 愛しい、妹紅、

「…? いきなりなにさ? 」

 君は 私の 世界の 中心 で、

「妹紅、私が死んだら、妹紅はどうする? 」

 君の 笑顔は 私の 狂喜 で、

「……とりあえず凄く悲しむ。悲しんで泣いて嘆いてこの世の終わりみたいな顔して、叫んで喚いて慟哭して悲観にくれる。
 少なくともその後1000年ぐらいはそんな感じだと思うけど」

 君の 涙は 私の 慟哭 で、

「じゃあ、今私が死んだらどうする? 」

 ああ、愛しい妹紅

「えっ? 悪い冗談はよしてよ。もう何がなんだかわからなくなっちゃう自信があるけど、とりあえず永遠亭かな 」

 君は 私に 笑顔 を くれ た。 だから、 だから―――妹紅!

「ああ、完璧な回答をありがとう。ここからは、○○マジックタイムだ!!  」

 私は 君から 孤独を 永遠に 奪い去ろう―――!!

「はあっ!? 」
「サア我ガ右手ニ握リタルハ一本ノ注射器!
 所謂一ツノ最高傑作ニシテ私ノ頂点ニシテ起爆剤!!マズハ之ヲ我ガ頚動脈ニ打チ込ミマス!」

 そのままヅグン!っと一突き、何のためらいもなく打ち込んだ。
 痛覚は無い―――というか興奮により阻害され、感じない。

「次ニ我ガ右手ニ取リ出シタルハ一振リノ短剣!銘ハ『プラグ』!
 コノ短剣ハカツテ鎖帷子ヲモ刺シ貫イタト言ワレル『スティレット〔メイルブレイカー〕』ヲ模シタ剣兼鍵!!
 コノ短剣ヲ…… 」
「っ!」

身構え、腕に炎を灯す妹紅、ああ美しい。しかしその行動を確認した私はにやりと笑い、大きく思いっきり振りかぶり勢いをつけて。

「ガフゥッ!!」

私の 首に 突き立てそ のまま 脳 が わたs の命 令を 正しく実 行するうtに―――

「ギはあァッ!!」

引k抜k―――!

ズブッ ぞぷん…ップシャアアアア………

「○○っ!?○○っ!?○―――」

―――……














―――再構築、再構成、再起動―――<<















「はい、生き返りましt…」
目の前に、炎をまとった拳が空気を切り裂きながら接近してくる。
「馬鹿ぁあ!!! 」
ドガッ――
妹紅の怒りを存分に蓄えた右手が、見事に私の頬に突き刺さった。
「何てことしてるんだ!! びっくりした、心配した!! とりあえず一回死ねぇ!! 」
「ちょ、もこー落着いて…」
「馬鹿! 馬鹿! 馬鹿! 馬鹿! この大馬鹿野郎!! 」
罵られる度に妹紅の懇親の一撃が、その愛くるしい拳が、次々と私に着弾する。
「何でっ! なんでっ! どうしてっ!! どうして人間をやめたんだ!! この馬鹿っ!! 」
殴られ、叩かれ、殴打され…、そのたびに、「ああ、愛されてるんだなぁ」と実感が沸く。
「ひっぐ…、これじゃあ、○○が死ねないよぅ……、私のせいで…、○○が死ねなくなっちゃった…、……ぐすっ」
「それは違うな、妹紅。私は人間であることをやめたが、蓬莱人になったわけじゃないんだ。ちゃんと死ぬ方法はあるのさ」
「一緒だよ!!私のせいで…、○○が……、○○がっ…!! 」
「聞いてくれ、妹紅。
 私は今、私の意思で自分に鍵を刺したんだ。一体この行為のどこに君という存在が介入する余地があったというのかね? 」
「屁理屈なんていらない!! 私さえいなければ○○はそんな怪しげな存在にならなくても…、むぐっ!? 」
言っても聞かない口は塞いでやれ、落着かない子はこうだ!!
「むーっ!? むーっ!! 」

………………。

「ぷはぁっ!! 」
「落着ついたかい? 」
「…んな訳ないだろ!! この馬鹿! 」
また一回殴られた。
「ふぐぅっ! …なかなかバイオレンスな愛だね、妹紅。
 でも私は妹紅がすることならなんだって受け入れようじゃないか。それはもう残酷なm…」
「なに格好つけてんの? …そんなに死にたいの? 馬鹿なの? 死ぬの? 」
ふと目の前の妹紅を見ると、目は据わり、能面のような表情をしていた。
しかも妹紅の背中から不死鳥の羽が生えている、本気モードなんですね、見ればわかる。とりあえずそろそろ潮時か。

「すいません」

The・土下座~☆大盛りすたいる☆~

このポーズで許してもらえなかったらもう特盛りしかない。
しかし特盛りは一部の高等テクニックを習得したものにした体現できぬ技…、果たして今の私に出来るのか…?

「………」ゲシッ!!

黙って頭を踏みつけられる、私の尊厳はどっかへ行ってしまいそうだよ。
「………で? 説明してもらおうじゃないの。中途半端とか嘘とかだったらぶち殺すから」
「ははあ! 」

 それから私の体の現在の状況をいろいろ話した。正座で。
きちんと手順を踏めば死ねること、恐らく(この場合、私が蓬莱人がどのようなメカニズムで生き返るかきちんと理解していないので暫定だが)
蓬莱人とは別の存在であること、この先身体能力の衰退成長はあれども老化はしないこと、妹紅が滅びるまでは死ぬつもりが無いこと、その他いろいろ喋った。

「……なんで? 」
「えぇっ? 何故と聞かれても、そういう存在になりたかったから努力と根性で実験して発明したからとしか…」
「どうして、そんな存在になろうなんて、思っちゃったの? 」
「……、簡単な話だよ。妹紅ともっと一緒にいたい、私の寿命なんかじゃ全然足りない、私が死んだら妹紅が悲しむ。
 じゃあそういう存在から脱却しよう、っていうのが動機さ」
「そんな、……やっぱり○○は馬鹿だよ。私みたいな女のためにそんなことまで……ふむぐぅ!? 」
「んー♪ 」
「んー! むーっ? 」

むちゅー

「ぷはぁっ」
「ふふふ妹紅の唇は非常に美味かつ甘露だね。やはり私は妹紅中毒レベル5といったところか」
「いきなり人の唇奪っといて何言ってんの!? まるで人を何かの毒物みたいに言わないでよ、失礼な」
「………」
「………」
「………」
「………」
「……妹紅」
「…なにさ」
「愛してる」
「………私も……」
「………」
「……っき………だ…よ…? 」


 パリーン ピシャーン (なにか種子的な物が割れ、はじける音)


「ええい愛しい妹紅め!! 一体何度私の心と理性を粉砕すれば気が済むのか!! 」
「ひゃっ!? ちょっといきなり……ひゃあん!! 」
「何度自分の理性が崩壊しないようにと抑えてきたか! そしてまたいつかは、またいつかはと、それを一体何度繰り返してきた!! 」
「んぅっ! ゃっ、あぁん!! こんなっいきなりっ…! 」
「もう止まらぬさ!! 所詮己の理性など己の抑えられる所までしか抑えられん!! 」
「ちょっ! ぅあ、だめっ! ああん! 」
「そして私は本能に従う!! 従うべくしてな!! 」
「意味がわからっ! あ、あっ、せめてもうちょっとやさしく…くぅん! 」

そこで私は一つ言い忘れていたことをかろうじて思い出し、ピタリと動きを止めた。

「………妹紅」
「はぁ、はぁ、何よ…」

そして妹紅の前で一度手を合わせ

「………いただきます」

「っ!? ばかぁっ!! ひゃ、やあん!! 」





………
……

『はい、ここまでよ』
 えー!? もっとみせろー!!
『はいはい、まだまだ他の組のがあるんだから。それにこの後はそれはもうねっちょねちょな行為が延々と』
 っ!! そこまでよ!!
『っていうわけだし、私もあそこで文字通り真っ赤に燃えてる乙女が怖いし次いくわよ次ー』
 ぉおーー!!
「ぉおーー!!……ああ、妹紅、すまないがそこの八目鰻をとってくれないかね」
「ごめん○○、ちょっとあの悪いスキマをしばき倒してくるからあとで……、ってなんで○○まで面白そうに見てんのよ!? 」
「いやぁ、妹紅の愛らしい姿がもう一度見れるなんて幸せだなあと思っていただけさ」
「―――っ!? 死ね! やっぱり一回死ね! ばーか! 」
「ああ照れる妹紅もかわいいよ妹紅、実にグッジョブだ。今のこの気持ちを表すならばそう…、『あもい』」
「………まーた変なこと言い始めて…」
「そう、『嗚呼妹紅かわいいよ妹紅君のことが愛しすぎて私はもう妹紅のことが妹紅妹紅妹紅妹紅妹紅妹紅ーーーー!! い』の略だ」
「………なんでこんな変な奴に惚れちゃったんだろ…、…今でも好きだけど…… 」

 パリーン ピシャーン

「妹紅ーーーーーーーーーーーー!! 」
「っ!? こらっ! こんな所で! や、やめっ」



『そこまでよ!! 』









おまけ

「…えーきさま、えーきさま」
「なんですか小町」
「なんか一人、人間が寿命を弄くったみたいなんですけど…、どうしましょ」
「………ああ、その件なら問題ありません。…いえ、問題はあるのですがどうしようもありません」
「…ああ、輪廻の輪から外れちゃった感じですか? あの月人関係で」
「月人関係と言ったら関係がありますが、蓬莱の薬では無いのですよ」
「………、馬鹿の類で? 」
「……まあ馬鹿といったら馬鹿でしょうね。なんていったって恋人と添い遂げるために己の手で己を新たな存在に昇華させてしまったわけですから」
「あれ、でもこいつ元々外の人間じゃないですか」
「ええ、故に馬鹿の類なのです。
 もし、彼が幻想郷へ来なかったとしたら?
 外の世界は社会体系が激変していたところでしょう。少ない手順で不死になり、且つ好きなときにとある手順を踏めば死ねる。
 そんな傲慢で理不尽な存在が、64億余突如として出現することになりますからね」
「…それって大変なことじゃないですか? 」
「とりあえず閻魔と死神たちは職を失いますね。天界も冥界も地獄も人口流入がストップし、深刻な人手不足に陥り最終的には我々は孤独な存在と化します」
「大問題ですね。転生する端から不死にされたんじゃ、どんどんこっち側の人口は減りますし、輪廻のバランスが取れなっちまいますよ? 」
「しかし彼は今幻想郷にます。それに彼自身は少なくとも吹聴してまわるような性格でもないし、その気も無いようです。
 ………まあ、それはそれとして、その内裁きには行きますが」
「彼の自宅に残された資料や薬品の類はどうするんです? 」
「一人の馬鹿が独自の理論で完成させた技術です。
 恐らくただの奇特なガラクタとして処分されるか、机上の空論だと一蹴されて忘れ去られるでしょう」
「まあ、彼が恋人と一緒に居たいが為だけにやっちまったモノですしね」
「ま、蓬莱人が一人増えたと思っていても問題は無いでしょう」
「わかりました、そういう風にあつかっときます。…じゃ」
「…待ちなさい小町、今日の分のノルマは?」
「………あーとーでー♪」
「………だーめーよー♪」


最終更新:2010年05月29日 02:26