文1



1スレ目 >>86


ストレートに

「射命丸さん、俺と付き合って下さい」

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1スレ目 >>131


「……で、なんで俺なのさ」
「この間の月都万象展で外界に対する興味は高まっていますからね。読者の読みたがる記事を書くのも文文。新聞の務めです。そこで今日は外界から来たというあなたに独占取材をですね……。もちろん三面記事ぶち抜きですので期待してください」
 と、文はなぜか誇らしげに胸を張る。まあ、俺の行動範囲である博麗神社周辺の人物はそんなに外界に興味を持っているようにも思えないのだが、俺の知らない集落なんかではきっとそうなんだろう。
 しかしながら会話になっていないのは気のせいだろうか。
「別に外の世界ならゆあ……ゴホン。紫さんに聴けばいいじゃないか」
 お茶をすすりつつ、脇を通ったカラスに煎餅をくれてみる。
 外の世界の事と言われても、俺の記憶の中にあるのはたかだか十数年かそこらだし、そもそもどの程度役立つのかも疑問系である。
「いくら私でもマヨヒガへそう何度も行けるわけではありません。それに彼女はもう冬眠していますよ」
「ふぅん……まぁ答えられる範囲で良いなら善処するよ」
「ご協力感謝します。では、始めにですね…………」


―――――――


「成程成程……やはり外界では科学の進歩が発展に大きな影響を与えている。と」
 かれこれ小一時間はインタビューを受けただろうか。どの質問もどうにか俺の知識の範囲内で答えられるものだったのが何よりの救いだが、『ロケットの材料であるという『アームストロング』とはどういう物ですか』とか、微妙に何か間違っている質問が多かったのも事実である。
「あ、次が最後の質問ですね。お疲れ様でした」
 と軽く頭を下げる文。釣られて俺も「いえいえ」なんて会釈を返してしまう。
「では最後の質問です。…………」
 止まった。
 メモ帳を凝視したまま、うつむき加減で文が止まった。
「お、おい、どうした?」
「…………?」
 成程。止まっているのではなく物凄い小声。うつむいているというか、そこはかとなく赤みを帯びだした表情を読み取られまいと顔の下半分を隠しているのか。
 そして、
「……私は……あなたのことが……好きなのですが、それについて、どう思われますか?」
 聞こえた。聞こえてしまった。
 そして同時に全てがジグゾーパズルのように繋がった。
 どうして今日、こんなインタビューなんて受けているのか。
 どうして「風神少女」の異名を持つ彼女を追って幻想郷を東奔西走したのか。
 どうして徹夜で文文。新聞の編集や校正、製版を手伝っていたのか。
 皆から「物好きねぇ」なんて言われたそれらの理由が解った。
「……その質問に答えるのは簡単なようでとても難しい」
 俺は座り直すとできるだけ真面目に答える。
「まずは射命丸文という人物の人柄から説明しなければならないんだが……時間も押しているようだし端折ってしまおう」
 新聞に対する情熱、ひたむきさ。そういう理屈っぽいものは全てひっくるめてしまおう……
「俺もお前が好きだ。愛してる」
 この一言だけできっと十分だから。

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1スレ目 >>151


射命丸スレよりコピペ

273 名前: 名前が無い程度の能力 投稿日: 2005/08/18(木) 10:55:05 [ jitlL1co ]

文を抱き締めたい
「な…何するんですか!記事にしますよ…?」
と言いつつも腕を僅かに緩めているにも関わらず逃げようとしない彼女に俺は言う
「記事ニスレバイイ。ダガ『事件』ノ欄デハナク、『おめでたニュース』ノ欄ニ
 俺ト君ガ載ルコトニナル」
文はマイクとメモ帳を取り落とすと同時に、俺の体に小さな腕を回した
「…取材拒否…できませんよね…?」
「ウム」
そして俺は彼女に


274 名前: 名前が無い程度の能力 投稿日: 2005/08/18(木) 11:34:23 [ Q4L8reDc ]

そっと口づけをした。
文も目を閉じて返してくる。
「んっ、ぷちゅっ……」
俺は、そろそろと文の柔らかな身体をまさぐり出す。
「あ、やっ、はぁ……」
文が身をよじる度その身体が俺にこすれる。

感極まった俺は下半身スッパ

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1スレ目 >>564


「今回のインタビューはこんなところです。今日もありがとうございました」
「うん、お疲れ様。男前に書いておいてくれよ」
「あらあら、文々。新聞は真実の泉ですよ?」
「それは残念」
「うふふ」
手帳から顔を上げた文の顔が、柔らかな笑みに綻んだ。

比較的最近の外界から幻想郷に来た、という物珍しさが彼女の好奇心に強く触れたらしく、
初めて会って以来、時には今日のように取材を受けたり、時には新聞の作成を手伝った事もあった。
住み慣れない幻想郷に不安だった自分にとって、文の人当たりの良さはとてもありがたいものだったし、
底が見えないけど根本的には実直な性格、感情のままにコロコロ可愛らしく動く表情、etc……
まあ詰まるところ、俺は射命丸文に、いつからか特別な感情を持つようになっていた。


「……あの、これは取材とは関係ない個人的な疑問なんですけど、一つ訊いてもいいでしょうか」
帰りの道中、三歩先を行く文が、ふと足を止めて振り返った。
「ん、何だい?」
こちらも足を止めて訊き返す。文の顔は珍しく下を向いていて、こちらから彼女の表情はよくわからなかった。
「その……帰りたい、とは思わないのでしょうか」
「……いきなりだな。何でそんな事を」
「今まで貴方から聞いた外の世界と、この幻想郷を比べてみての率直な感想です。
 貴方が過ごしてきた場所に比べて、ここは酷く不便ですし、
 何より貴方のような普通の人間には危険に過ぎます」
「まあ、そこは確かに間違ってはいないなあ……」
「なら、どうして幻想郷を選ぶのですか?」
「ん~~……」
唸りながら天を仰ぐ。緩やかに沈む太陽を孕んだ赤い空が、とても綺麗だった。
……うん、理由なんて、一つしかない。ここで彼女に伝えてしまおう。

「あのさ、文」
「はい」
面を文の方へと戻した。顔を上げた彼女と、視線が交わる。
「確かにあっちには色々便利な物がたくさんあって、生きていくに困るような事はそうそう無い。
 曲がりなりにも俺が生まれ育った場所だし、大切なものだってたくさんあった。
 帰りたいと望めば、あるいは帰る事もできるのかもしれない」
「……はい……」
自惚れだとは思うが、彼女の表情に少し影が挿したように見えた。
「でもさ」
この距離では本当に言いたい事は伝わらない。足踏み二つ彼女の方に歩み寄った。
そして、極上の硝子細工を扱うように、そっと彼女の手を取る。
「――あっ」
文の口から小さく声が漏れたが、その手が振り払われるような事は無かった。
「一番大切なものは、ここにしか無いんだ」
「え……」
触れた大好きな人の手から、あたたかなものが優しく沁みてくる。
この蕩けるようなぬくもりを、彼女も俺に対して持ってくれていたら嬉しいのだけど。
俺はひとつ息を吸って、そして彼女に告げた。
「文。好きだ。君を愛してる」

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1スレ目 >>636


「ゴホッ!ゴホッ!あ~」
朝から猛烈に頭が痛い、ついでに熱が出てきやがった。
咳も出るし・・・あーこりゃ完全に風邪だなぁ。今日は誰も入れないでおこう、なんとなく今日は大凶そうだし。

ガチャッ
「こんにちわー。今日は良い事があったんですよ~」
そうだ、こいつが居たんだった・・・、勝手に入ってくるなって。
この勝手に入ってきた泥棒に間違えられても仕方が無い奴は天狗の射命丸文。文々。新聞っていうのを発行してた、ごめんしてる。
なんか知らないけど俺は天狗に良く好かれるんだよなぁ・・・なんで?まぁ何かと良くしてくれるからいいけど。
「いますか~、○○さんいますか~?」
「居るから漁らないでくれ」
「あ、居た」
こいつは俺が居ないと勝手に漁るからなぁ・・・。前に漁られて片付けるのに半日ぐらいかかったっけか、世も末だ。
とりあえずこいつだけには風邪をばらしてはいけない。絶対にネタにするからだ。
「どうしたんですか?寝込んじゃって」
「いや、二度寝しようかなとでも考えていたんだ。まぁそれよりも、良い事ってなんだ?」
そう言って話を強引にずらす、こいつは勘も鋭いから不自然な動きを見せたら絶対に感ずかれる。
「あ、それがですねちょっとコレを見てください、眼鏡の男の人がやっている店で手に入れたものです」
「ん?デジカメじゃないか、幻想郷にもあったか?」
「あ、知ってたんですか残念・・・。それはともかく、コレで何処でも写真が取れるんですよ!」
うわ~ヤバイな、こんなもの持っていたら鬼に金棒、いつも以上に気を引き締めないと拙いかも。
「それにしても、元気がないですよ?もしかして風邪でも引きましたか?」
「えっ?何でわかっ・・・あ」
「あ、当たりだったんですか?これはスクープに・・・って、えぇ!?風邪ですか!?」
「え?風邪だけど・・・」
なんでこんなに驚いているんだ?
「か、風邪ですか!?あの大量の人間を死に追いやったあの風邪ですか!?」
「そこまで大げさなものじゃないけど・・・」
「た、大変大変!あなたが死んだら私の楽しみが無くなっちゃいます!」
「だから死なないって・・・聞いてないな」
天狗の中では風邪を引くと死ぬなんてことになっているんだろうか?それにしてもこんなに慌てた姿は始めてみたな。
「あ、そうだ!何か私にお手伝いできる事があったらしてもいいですか?していいですね!」
「勝手に決めるな、まぁ別にいいけど。それじゃあちょっと桶に水を汲んで持ってきてくれないか?」
「解りました!今もってきますね」
ちょうど頭のタオルも温くなってきたし、とりあえず体を起こして待ってるかな。
「うわ、っととと・・・」
おいおい・・・大丈夫か?ってか水汲み過ぎだって、溢れんばかりまで入れなくてもいいのに。
「・・・っとととと、キャッ!!」
突然手を滑らせて桶が手から離れた。いや、それだけなら別にいいんだけど、その桶に入った水がこっちに向かってきている。
あーなんかありきたりだな。なんて思うけど一つだけ変なのがあった。
水の向こうに見える









カメラを構えたこの事態の張本人の姿が




ザッパーーーカシャーーン!!!


「やった!いい写真が取れた!これは使わなければ!」
なんかもう起こる気も失せてきた・・・はぁ。
「へくしょーい!!!」


その後服を変えたり布団を変えたり色々と疲れたけどとりあえずは元に戻った。
なんか余計熱が出てきたかもしれない。
「あ、そうだ。永遠亭から薬貰ってきてくれないかな?」
「解りました!十分で貰ってきます!」
そういって文は出て行った。大丈夫かなぁ、なんか不安だなぁ。
「戻りました!」
「早ッ!」
いや、まだ十分もたってないよ?いくらなんでも早すぎでしょ。通った後には酷い跡がついてるだろうに。
「・・・あれ?薬は?」
「あ、それがですね。症状を見ないと解らないかもってことで永琳さんについてきてもらったんです」
「そう・・・でもさ」
「はい?」
「腕だけつれてきても意味が無いと思うんだけど?」



「へ?」
「手、良く見れ」
「あれ?腕だけだ、何ですかね?」
「もしかして本気で飛ばした?」
「ええ、時間かけると悪いと思いまして」
「たぶんそれ」
つまりはこうだ。永琳さんの手首を掴んでマッハを越えるスピードで飛んだら、普通腕は飛ぶだろうに。
普通の人なら死ぬ、普通のなら。
「いたたたた・・・もう少し遅く飛べないの?」
腕一本飛ばして『いたたたた』で済ましたほうが凄い。良く見ると直ってるし、蓬莱の薬恐るべし。
「で、この人がその病人?」
「ええ、そうです」
「まぁとりあえず検診はしないとね」
「おねがいします、それがメインなので」
永琳さんの診断によると、普通の風邪だそうだ。
普通に寝てれば直るらしいけど・・・水を被った事が少し治りにくくなってるらしい。
いちいち寝てるの面倒でしょって渡されたのが、なんかドブの味がする薬。
鼻摘まんで飲んでみたところ、一気に気分が楽になった。流石永琳さん。



次の日

【○○ 布団での水遊び!?】
なんていう絵と見出しの中に書かれていた文字は俺の怒りを爆発させるには十分の火薬だった。






「こんの天狗がー!!!」

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1スレ目 >>763


「どうして酒飲みってそうなのかしら? 相手のことなんか全く考えないんだから」
息を切らせて薬を求めに来た天狗の少女を、八意永琳は一瞥する
「は、はい…申し訳ないです」
射命丸文は罪悪感で涙を零しながら頭を下げる
「私に謝られてもね…まぁいいわ。見捨てるわけにも行かないし」
永琳は薬棚を空け、ごそごそと中を掻き回した
「はい、この2つね。こっちはすぐに飲ませて。もう1つは状態が良くなったら飲ませること。
お湯で溶いて、冷めてからよ。間違えたり、飲み方守らなかったらどうなっても知らないわよ」
「は、はいっ…ありがとうございます!」
紙で包んだ粉末薬を受け取るや否や、文は幻想郷一とも言われる速度で駆け出していく
「やれやれ…あわただしいことね」

 あの人と出会ったのは、桜が咲き始めた頃だった
外界から来たということで、これはもう密着取材しかないって思った
話を聞くうちに、私の中で何かが変わった
──好きなの
外界では新聞記者を志していたという彼が、私の新聞を手伝いたいと言ってきたときにはもう舞い上がる気分だった
──愛してるの
極上のお酒を手に入れたから、一緒に飲みたかった
──相手のことなんか全く考えないんだから
ああ、そうだった…自分が酒好きだからって…私は…
人間が酒に弱いってことなんて、考えてもいなかった
人間とかどうとか、そんなことはどうでも良かった
──離れたくなかったから

 家に辿り付いた文は、お湯を沸かし始める
「早く、早く…」
湯が沸くまでの数分すらもどかしい
湯呑に薬を溶くと、文はその匂いに思わず顔をしかめる
「うわ、何この匂い…」自分が飲むわけでもないのに嫌な気分になる
「…これじゃ飲ませられないわ」
男の頭を抱え、少し体を起こしてやるものの、これでは口には入らず零れてしまうだけだ
(……いいわよね)
文は薬を自分の口に含み、体を抱きながら口移しで流し込む
(良くなって)心の中で、静かに祈るように


──これが、最初で最後のキスになりませんように

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1スレ目 >>949


この幻想郷に、久しぶりに外の世界から移り住んできた者がいるらしい。
その移入者は人間の青年で、大蝦蟇の池の近くのオンボロ小屋に居を構えたという。
何時ぞやの花の異変以来、目立ったニュースも無く、
ネタに飢えていた私は、他の天狗仲間に先を越されては堪らないと、真っ先に彼の元を訪れる事にした。


「♪幻想の不思議を~、今日もあややがメッタ切り~♪」
雲ひとつ無い青空を、上機嫌で飛び回る。
照りつける太陽と吹きぬける薫風のコントラストが、とても気持ちよかった。
「……あっ、あれかしら?」
池のほとりで、人間らしき青年と顔見知りの氷精が、何やら楽しそうに遊んでいる。
青年は、美貌と言うには少々及ばないが、形の整った、なかなかに精悍な顔立ちをしていた。
「一体何をしているのかしら……」
これだけの距離において、彼らの目でこちらの姿を捉える事は不可能だろう。
天狗の目を凝らし、風を使って、会話が届いてくるように調整する。
愛用のメモ帳を開き、ペンを胸ポケットから取り出した。


『……これ位の大きさが、ちょうどいいかな』
そう言って彼は、一枚の葉っぱをチルノさんの方に掲げた。
あれは……シロダモの葉かしら。
『で、これをこうして丸めて、と……』
『ふんふん』
『で、口の中を少しすぼめて……』
興味津々な様子で見つめるチルノさんに一つ笑いかけると、彼は丸めた葉っぱを口先にあてがい、そこに息を吹き込んだ。
ビー――――――ッ。
「……へえ」
今時草笛とは、なかなか粋な真似を。
『わあ、すごいすごい! ねえねえ、あたいにも出来るかな!?』
『ああ、簡単だよ。やってみるか?』
はしゃぐチルノさんに手ほどきをしている姿を見て、私は彼の第一印象に、かなりの高得点をつけた。

ビー――――――ッ。
『あは、出来た出来た! ねえねえ、他にも何か無いの?』
『よし、分かった。とっておきを見せてやろう』
そう言って力強く袖を捲り上げると、彼は立ち上がり、お尻を突き出した。
『ふんっ』
ブー――――――ッ。


「………………………」
――――ぽろっ。
手元からペンがこぼれ落ち、池に小さな波紋を立てた。
…………ええっと、今、彼は、何を。
『……ふっ。どうだチルノ。俺のラストスペル、死風「ガーリックタイフーン」は!!』
彼は、いかにもいい仕事をした、という風な爽やかな笑みを浮かべ、額に浮かんだ汗をぬぐった。
『あははははっ、すごい臭いっ!! それはあたいには出来ないや!!』
チルノさんは、無邪気に大笑いしながら、バンバン手を叩いていた。
『ハハハこやつめ!』
『あははははは!』
「…………」
疲れた。まだ何もしてないけど、とにかく疲れた。
何とも言えない敗北感を胸に、今日はそのまますごすごと帰る事にした。



…………改めて次の日。


今度は彼の家を訪れてみると、今日は一人で過ごすつもりだったらしく、快く取材を受け入れてくれた。
これから少し遅めのお昼ご飯という事らしく、軒先に出汁と茸の甘い香りが漂っていた。
「どうする? 多めに炊いたから、ついでに一緒に食べてくか?」
「いいんですか? ありがとうございます」
何だ、やっぱり優しい青年ではないか。昨日のアレは、何かの間違いだったのだろう。

「……美味しい」
彼の用意してくれた茸ご飯と山菜の煮付けは、どちらも見事な手前だった。
インタビューとして色々と彼自身の事を尋ねながら、複雑に味の染みた料理に舌鼓を打つ。
「凄いですね。料理は得意なんですか?」
「ああ。向こうでも一人が長かったからな。いつの間にやら身になってた」
「……そうですか」
誰の心にも、必ず陰を孕んだ部分はある。訊いて良い事と悪い事の分別くらいは、私も出来ているつもりだ。
茸ご飯を口に放り込む。出汁の甘味と茸の薫りが口内を満たし、鼻先を抜けた。
「味付けも見事ですけど、この茸も美味しいですね。何ですかコレ?」
絶妙な歯ごたえに、芳醇な風味。少なくとも私の知る物に含まれてはいなかった。
「知らん。天井裏に生えてた」
「はい?」
…………ええっと、今、彼は、何を。
「あはははは何でそんな物をははははは調理あははははするんですかあははははは!!」
ゲラゲラ笑いながら彼に箸を突きつけるが、もちろん面白がっている訳ではない。
「ははははは他に食べ物もははは無かったしあはははは美味しそうだったからあははははは!!」
「ハハハこやつめ!」
「あははははは!」
『はははははははははははは!!!』
ドンガラガッシャー――ンッッッ!!!!!
大笑いしながらマウントポジションを取り、彼をタコ殴りにした。
「はははコラコラはしたないはははははちょっ、白いのが見えてははははぶべらっっ」
オンボロ小屋に、肉を叩く音と、男の悲鳴が響きわたった。


少女打撃中……


「……ごめんなさい。少しやりすぎました」
発作が治まってテンションが元に戻ると、下になった彼の顔を見て、かなり手酷く痛めつけてしまった事に気づいたのだった。
腫れ上がった目蓋に薬草を塗りこんでやりながら、らしくもなく平静さを見失った己の未熟さを恥じ、素直に彼に頭を下げた。
「あ痛たた。いや、全面的にこっちが悪かった。
 なあ、お腹が痛いとか、気分が悪かったりはしないか?」
顔を腫らし、鼻血を拭いながら、なお彼は私の体の事を気遣ってきた。
……今日色々と話をして、一つ気づいた事がある。
彼は少し馬鹿で常識に欠けるところがあるが、とても優しい人なのだ。
「大丈夫です。強いて言うなら、拳が少し痛むくらいです」
「そうか、よかった。……なあ、よかったら、これに懲りずにまた来てくれないか? こっちに来てから、友達が全然少なくて、ちょっと寂しいんだ」
「いいですよ。貴方なら、少なくともネタに困るような事は無さそうです」
浮かべた笑みの柔らかさに、自分で驚いた。
……私の中に、こんな表情があったのか。
「そっか、どうもありがとう。これからもよろしくな、文」
そう言って彼は嬉しそうに笑い、私の名を呼んだ。

――――とくん。

心臓がひとつ強く跳ねて、甘く蕩けた血が体中を巡る。
……あぁ、何という事だろう。
この世に生を受けて以来、ゆうに千を超える年を数えてきたこの私が。
初めて会ってからほんの一日で、ただの人間に恋をしてしまったのだ。



――それ以降、私は時間の隙を縫っては彼の元を訪れ、多くの時間を彼と共有するようになった。
やはり彼は破天荒な人で、時々ついていけなくなる事もあったが、
そんな彼に振り回されるのも、時には彼を振り回すのも、今まで身に覚えた事の無い、充実した体験だった。



さて、それから二月ほど経って――――



「俺が?」
「すみませんっ、もう貴方しか頼れる人がいないんです!」
仲間内での新聞大会に間に合わせるのに、どうにも手が足りなくなり、彼に助力を仰ぐ事にした。
「よし、任せろ。三流スポーツ新聞の風俗情報並みに役に立つ記事を書いてやる」
「……そんなの載せたら私、爪弾きにされちゃいます……」
前途は多難だった。


「へえ、こんな風になってるんだ」
物珍しそうに、彼は周りをキョロキョロと見回した。
そう言えば、彼を私の家に招待するのは、これが初めての事だった。
「それで、俺は何をすればいいんだ?」
「そうですね……差し当たって、半面分のコラムを一つ書いて欲しいんです。
 あとは……私がもし寝ちゃったら、起こしてくれませんか? 多少乱暴にしても構いませんので」
もう丸三日寝ていないので、今でも気を緩めると眠ってしまいそうだ。
「多少エロい事をしてもいいんだな?」
「…………」
真剣そのものの目で手指を怪しく蠢かしながらそんな事をのたまう彼を前にして、危機感が眠気をどこかへ飛ばしていくのを感じた。
……彼は本気だ。
色々な意味で気を引き締め、ほどなく作業に取り掛かる事にした。


「よし、こんなところか。……なあ、文。出来たから、推敲してみてくれ」
「あ、はい。ありがとうございます」
渡された原稿に、ざっと目を通す。
「ふむふむ……」
驚いた。初めてこういう物を書いたとは思えない程の文章力だ。
構成、言葉の使い方、全てにおいて高いレベルでまとまっている。
……ただ一つ、問題があるとすれば。
「誰がエロ本の読書感想文を書けと言ったんですか……」
「ダメ?」
「当たり前です!!」
グシャグシャに丸めた原稿を彼のおでこに投げつける。
すこーん。
「OUCH!」
頭から軽そうな音を立てて何故か英語で悲鳴を上げると、彼は椅子ごと後ろにひっくり返った。
……少し眠気覚ましにはなったかしら。



少女原稿中……



夜の帳もとっくに降りて、いよいよリミットが迫る中、私の中の睡魔もいよいよ勢いを増して襲い掛かってきた。
「……なあ文、大丈夫か? 相当辛そうに見えるぞ?」
「だ、大丈夫です……あと少し、あと少しで終わりですから……」
どろどろになった頭の中に鞭を打って、重くなった手を無理矢理動かす。
「もういいじゃないか。大会に間に合わなくても、新聞はいつでも出せるだろ?」
「嫌です……せっかく初めて貴方に手伝ってもらったのに、落とすだなんて、絶対嫌です……」
「……ふう」
彼は一つため息を漏らすと、隣の部屋へと足を運んだ。
「まったく意固地だな、文は。他の天狗の娘は、もう少し聞き分けがいいと思うぞ?
 いつもはもっとハキハキしてて楽しそうなのにさ」
そんな意地の悪い事を言いながら、彼は隣の部屋から持って来た毛布を、私の肩にかけてくれた。
「俺は、そんな辛そうに新聞を書いてる文は、見たくないな」
そして、私の頭の上に手を置いて、ゆっくりとかき混ぜるように、優しく撫でてきた。
…………ひどいや。
そんなに優しくされたら、もう起きてなんていられない。
彼の手のぬくもりを胡乱な頭いっぱいで味わいながら、意識が急速に落ちていくのを感じた。




……………………




目が覚めた時には、日は真上に昇り、もう取り返しのつかない時間になっていた。
今まで大会で勝った事も無かったけど、不戦敗というのは初めての事だった。

「……ごめんな。起こせって言われてたのに」
彼は、申し訳無さそうな苦笑いを浮かべていた。
そんな彼を責めるような資格は私には無いし、そんなつもりも無い。
「いいんですよ。新聞はいつでも出せる、でしょう?」
せめて、彼から学んだ事だけは、大切にしよう。
私の新聞は、時間に急き立てられて書くようなものではない。
それに、今は大会で勝つ事なんかより、もっと欲しいものがあった。
「……ねえ。実は、一つ記事を差し替えたいんです」
椅子ごと彼の方に体を寄せ、その肩におでこをちょこんと乗せた。
彼が文句を言わない事に、安堵を覚える。

私は、見た事も無ければ信じてもいない神様に、初めて祈った。
「……どんな記事に?」
――どうか、彼が私を受け入れてくれますように。


「そうですね……『私たち、付き合う事にしました』……っていうのはどうでしょうか」

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2スレ目 >>123


爽やかな冬の日。
彼女は天高くを舞い。いつもの通りに俺のところへ来る。
それは既に日課になっていて、俺も気づかない内にそれに
慣れ親しんでいた。

幻想郷の日常であり、普通の人間だった俺にはちょっとだけ
非日常でもある。

「…ふぁ」

俺の寝ぼけ眼と欠伸で始まる一日は、いつものように爽やかな朝から始まった。
ここに紛れ込んでから数ヶ月、未だに日常の変化には完全に慣れてはいない。

何せ文明や、生活様式さえ違うのだ。
色んな意味で外国に近い感覚がある。
今更、電気やガスが無い生活を送るとも思っていなかった。

娯楽らしい娯楽も、はっきり言えばほとんどないのだが、唯一
俺でも楽しめる娯楽のような物があったのだ。


とりあえず、朝食の準備から始める。
畑を作り、自給自足な生活を送る。考えてみれば、こうした生活が
今まで何百年も続いているという事は、驚くべき事なのだろう。

電機や物に囲まれた生活から、一切を捨てて離れてここに住んでからは、
全てを新鮮に感じた。

「どうもー、文々。新聞ですー」
そんな挨拶と共に、一人の少女が玄関から来た。
黒い髪に下駄のような靴。そして、不思議な形の帽子。
「あぁ、おはよう、文」

この少女がその唯一の娯楽を持ってきてくれる射命丸文だ。
彼女はこの幻想郷の記者らしく、週に一回、俺に暇つぶしになる新聞を
持ってきてくれる。
内容はともかくとして、これを読むのは最早日課になっていた。

「これから朝食、食べるところだけど…食べてく?」
今日の朝食の献立は味噌汁、ご飯、川で捕った魚と山菜だ。
会心の出来といえば言い過ぎだが、それなりに自信はついてきた。

きゅるるるるる

彼女のお腹の音が鳴った…それがサインなのかもしれない。
文は真っ赤になって俯いてしまった。
幻想郷をいつもいつも朝早く空から駆け巡れば、それも当然なのかもしれない。

「そ、その…」
「…席についててくれ、すぐ持っていくから」
「は、はい」

テーブルなんて洒落た物はここには無い。
有るのは、リサイクルできる家具と、適当な趣味の物と、生活に必要な物だ。

ちゃぶ台の上に、次々とメニューが彩られていく。

「いただきます」
「…暖かい内に食ってくれ」

いつもの食事が始まった。
少しくらい騒がしいイメージのある彼女だが、食事の時はいつも静かだった。
食事中は大抵話さないし、特に話すことも無い。
…いや、俺が口下手で無愛想なのもあるんだが。

「これ、今日の新聞です。…それとご馳走様でした」
「どういたしまして」

彼女の手から新聞を受け取る。
これが無ければ、俺の一週間は無いだろう。
人間、退屈で死ぬという事も、もしかしたらあるのかもしれない。

「晩御飯はどうする。食べていくか?」
「…お願いします」
彼女は礼を一つすると、空高くへと飛び上がった。



昼は寒いし、夜も寒い。
冬とはまったくもって辛い季節だった。
これが季節を感じさせるのだから文句は言えないのだが。
彼女には手袋とマフラーを持たせたから、風邪を引くことはないだろう。

昼間の内に洗濯を終わらせて、焚き木に火を点けて新聞を読み始める。

バサッ

「…へぇ、氷の妖精が再び悪戯、冬眠してた蛙をたたき起こして逆鱗に触れる…ねぇ」
妖精とはここまで適当な考えをする者達だっただろうか?
まぁ悪戯こそが、妖精たちのする所行だろうが。

そう言った感じで、新聞を読み進めていると、一枚の紙が落ちてきた。
どうやら文が俺宛に書いたらしい、丸い文字でこう書かれていた。

『本日の夜中、とある方の取材を致しますので、できれば手伝ってください。射命丸文』

これは珍しい。
彼女が俺を手伝わせるような事は滅多に無い筈だ。
せいぜい原稿を手伝ったり、夜食を作ってあげたり、寝室を貸してあげたりしているくらいだ。

「…暇だからいいか」

どうせ夜までには、する事なんてない。
朝ご飯はその場で考えるほうなのだから。

そうして新聞を読み進めていると、カラスが鳴き始めていた。
既に日は暮れており、彼女もそろそろ来る頃になるだろう。
息は白くなるし、寒くて嫌になる。

だからこそ、冬は苦手なのだ。
毛布の心地を覚えてしまうと、朝なんて起きる事は出来ない。

「…夕飯か」
丁度、芋があったので煮っ転がしにしようと考えた。
彼女は鶏肉が苦手だ。
言うまでも無いだろう、彼女は鴉天狗なのだから。

豚肉もあまり手には入らない。
手に入れたとしても、別段困る事は無いだろう。

「戻りました」
「あぁ、おかえり」

寒そうに身を震わせて、文は帰ってきた。
帰って来たは語弊があるが、俺にとっては帰って来たで合っている。

晩御飯は食べる時と食べない時がある。
彼女のように朝から晩まで飛び回り、記事を書き上げて、配る。
という事を繰り返していれば、自然と会わないこともある。

箸の音だけが、響く。

「それで、手伝うんだったか?」
彼女が箸を咥えたまま、こちらを見る。
「あ、はい。お手伝いをお願いしたいんです」
「…何処まで行くんだ?あまり遠くは遠慮願いたいんだが」
「大丈夫です。すぐ近くですから」
にこりと彼女は笑う。
その笑みに不思議な違和感を覚えたのは、俺の気のせいであると信じたい。



真夜中の山――
俺と彼女は始めてここで出会った。
初めて出会ったときの印象は、『あの世からのお迎え』だったけど。
「…はぁ」
白い息が出る。
空は澄み渡り、月は輝いている。
「で、ここで誰の何の取材をするんだ?」
寒さに身を震わせながら彼女に訊ねる。
ここに来るまでに、何も聞かされていない。
なにを聞いてもだんまりで、必要な情報は何一つとして教えてもらっていない。


「あなたへの…密着取材です」


そう俺の耳に届いた瞬間、彼女が不意に抱きついてきた。
柔らかい感触と、冷えてしまっている体温が伝わってくる。
「文…」
「…それでは、質問です」
彼女は俺から離れようとせず、質問を投げかけた。
「あなたは…私をどう思っていますか?やはり、迷惑と――」
そう言いかけた彼女の口を、唇で塞いだ。
「これが答えなんだが…これじゃダメか?」
恥ずかしくて、彼女の方を向く事が出来ない。
きっと、今の俺の顔を見るとトマトと比べられるくらい真っ赤なのは間違いないだろう。
それだけ今、俺の顔は熱い。こんなに身体は寒いのに。

彼女の腕の力が強くなった。

俺という存在を離さないとでも言うように、力が篭る。
「…そっか、これって一応、密着取材だよな」
俺も彼女の方に寄り添い、抱きしめる。

「あ、雪…」
季節としてはまだ早いはずだが、しんしんと雪が降り始めていた。
好意的に解釈すると、どうやら俺達を祝福してくれているようだった。

俺は離さない。この大事な彼女を――








後書き

===遺書の裏===

首を括る覚悟なら…とうに出来ておるわ!

===遺書の裏ここまで===

『告白』とは『恋』を知る事!『愛』を我が物とする事じゃあ!!

…いや、冗談ですが。
みんなの書く文が可愛すぎた。
それに触発されました…。遺書の裏に書いたとおり、首を括る覚悟は出来ている!

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最終更新:2011年02月27日 00:19