文9



うpろだ584


「~~~♪」
「ご機嫌だな、文」
 柔らかな陽射しが降り注ぐ昼下がり。
 俺は文と二人でピクニック、というものをしていた。

 ――お弁当を持って、山や川へ散歩にいくこと――

 それが定義らしい。
 早朝に俺を叩き起こしに来た文に誘われ、ホイホイと付いてきた。
 本当は2度寝したいくらい眠かったのだが、あんなキラキラした目を向けて
 ――ね、ね、行きましょうよ、ね!?――
 なんて言われては断れるはずがない。

「今日がいい天気でよかったな」
「本当は随分前から用意してたんですよ。 
 でもここしばらくは悪天候続きだったじゃないですか。
 だから今日こそは……今日こそは取材も兼ねて……っくしゅん!」
「おいおい、どうした、風邪か?」
「あはは、ちょっと鼻がむずむずしただけですよ。気にしない気にしない!」

 文の頭を撫でながら、彼女の仕事を思い出す。

 今回は幻想郷に入り込んできたばかりの謎のイベントことピクニックを、
 先行体験してレポートしようというつもりらしい。

「……つまり俺はオマケか」
「そ、そんなことないですよ?
 私はその、○○さんとなら……と思って」
 何故そこで顔を赤くする。

「早く行かないと目的地に着かん。さっさと行くぞ文」
 人差し指をもじもじと付き合わせる文を横目に、歩調を速める。
「あぅ、待ってくださいよ!
 ピクニックはゆっくり歩いて行くことに意義がーっ」
 知るかんなもん。

 小さな丘の頂に辿り着き、シートを適当に広げる。
 木陰も程よく存在する、昼寝にはもってこいの場所かもしれない。
 ……覚えておこう、この場所。でもどこかで一度見たような?

「さて、いい頃合ですし、お昼ご飯にしましょう!」
 文は大事そうに抱えていたバスケットをここぞとばかりに取り出す。
 飯……正直助かった。急かされながら準備したせいで朝、何も食べてないんだ。

 バスケットの中に入っていたのは、サンドイッチが2人前、横には紅茶の入った水筒。
 代表的なピクニックのご飯なんですよ、と自慢げに文は言う。

「それでは、頂きます」
 カツサンドに卵サンド、野菜サンド……色とりどりのモノが入っている。
 よくもまあ、これだけ準備したものだ、と感心。
「あの……どうですか?」
「むぐ……ん。美味いよ」
「そうですか! よかったぁ……」
 本当に嬉しそうに笑う文。 ……ちょっとドキっとしてしまったのはヒミツだ。

「……んで、この後どうするのが"ピクニック"になるんだ?」
「ええっとですねー」
 ごそごそとメモを漁る文。
「選択形式です!」
「は?」
「①このまま帰る
 ②いっそ昼寝
 ③仲良く遊ぶ
 ④読書を嗜む(本を持っていれば、ですけど)
 の中から、どうぞ!」
 ……こういうものなのだろうか。何かが違う気がする。
 しかし朝早くから起きているせいでちょっと眠いんだよなぁ。
「んじゃま、いい陽射しも降り注いでることだし、昼寝といこうか」
「はーい、それじゃ失礼しますね」
「おまっ!?」
 ごろんと横になった俺のすぐ隣、腕を枕にするように文が寝転んできた。
「えへへー。いいじゃないですか。こうするのもピクニックなんですよっ」
「……仕方ないな。今日だけだからな」




 ○○さんには謝らなければならないですねー
 目の前にある気持ちよさそうな寝顔を見ながら、ぼんやりとした頭で考える。
 私は、二つ嘘をつきました。
 一つ目はつい数分前。
 こんなに近くで眠る事はピクニックとは関係ないんですよ。
 私が○○さんに甘えるための、口実。ごめんなさい。
 二つ目は、私自身。
 実は元気でもなんでもないです。
 悪天候の中、他の取材に走り回ったせいで体調崩しちゃってます。
 でも、今日くらいは、○○さんと居たかったんです。
 ……ごめんなさい。



「ん……あれ、もう夕方か。おい、起きろ文」
「う……」
 そろそろ帰らなければならないのだが、文が一向に起きる気配がない。
「……文?」
 起き上がって文を改めてみると、昼までの元気がどこにもない。
 すっかり憔悴しきっている。息も荒い。
 額に手を当ててみたが、素人目にも分かる程の熱を持っていた。
「大丈夫か? しっかりしろ!」
 とりあえず木陰へと文を運び、俺の上着を脱いで文に被せる。
 こいつの薄着だけじゃあ悪化する一方だと思ったからだ。
 俺が被っていたブランケットも取り出し、文の身体を包む。
 薬のようなものを探したが、見当たらなかった。
「そういえば、近くに川があったな…ちょっと待ってろ」
 手ぬぐいを片手に小川まで全力で駆け、水を十分に含ませてから戻る。

「はぁ……はぁ……」
 息も荒くなる一方の文の額に手ぬぐいを乗せる。
 本当ならば今すぐにでも病院に運びたい。
 しかし、下手に動かせば悪化してしまうかもしれない。

 妖怪専門の薬師……たしか、数キロ先に永遠亭があったか。
 往診くらい頼み込めばしてくれるかもしれない。
「医者を呼んでくるからな、文。すぐに戻る!」
 聞こえているのかどうかすら分からないが、文に言い聞かせる。

 するり、と彼女の細い腕が俺の服の裾を掴む。

「○……○……さん……行かないで……」
「文! 気付いたのか」
「いつもの、ことですから……しばらくすれば…治ります」
 息も絶え絶え、目も虚ろなのに虚勢を張る文。
「だがしかし……」
「いいんです。いいです、から! ……傍に、居てください」

「………、わかった」
 彼女の懇願するような瞳に気圧され、思わず頷いてしまった。
 俺の声に安心したのか、再び目を閉じ、眠りについた文。
 服を掴んでいた手をそっと離し、立ち上がる。

「でも、水くらいは替えさせてもらうからな」
 すっかりぬるくなってしまった手ぬぐいを持ち、小川の水に浸しに行く。
「まったく、体調が悪いならそうと言ってくれれば……」
 ――別の日でも付き合ってやったのに。
「変なところで頑固なんだから。……幻想郷の奴らの思考はイマイチ理解できん」
 適度に水気を残すようにユルく搾り、文のもとへ戻る。




 先ほどよりは幾分か呼吸も落ち着いた文をのんびりと眺める。
 本心では今すぐにでも永遠亭へ向かって駆け出したいのだが、
 先の文の言葉が俺の身体をここに縛り付けている。
 俺が傍にいることで少しでも気が安らぐのなら、いてやろうと思った。


(……それはさておき)
 なんというか、その。
 こんな状況下で誠に不謹慎ではあるのだが。
 熱を帯びた文の身体はとても艶っぽく見えた。
 普段は健康的な腕やら足が、ブランケットに隠れてちらちら覗いているのがまた妙にアレである。
 これ以上見えてしまうのは俺の精神上よろしくない。全身を改めて包みなおそうと手を伸ばし

「ん……○○さぁん……」

「…………」

「……」

「ね、寝言か……」

 盛大に溜息をつく。
 読者諸氏には分かりにくいかも知れないが、今、俺の姿勢は色々とマズい状態だった。
 両足はかろうじて外側だが、両腕が文の顔を挟むように位置している。
 傍から見たら、覆いかぶさろうとしているようにしか見えないのだ。
 つまるところそれは、文から見ても同じに見えてしまうわけで。
 寝言で済んだのは不幸中の幸いというべきだった。
 そのまま起きないことを祈りつつ、ブランケットを整えた。

「ふぅ……」
 そのまま木によりかかり、沈みはじめた夕陽を眺める。
(これで良かったのかねぇ……)
 客観的に見るのなら、これは、間違っている。
 でも、俺達はこれでいいのかな、と思う。
(ま、文の容態が落ち着いたら背負ってでも連れて行くか……)




「……ふぁ……」
 いくらか眠れたせいで、体調もある程度落ち着いてきたみたい。
 まだ熱っぽいけれど、歩くくらいなら問題はなさそう。
 身体を起こすと、頭から何かがぽろっと落ちた。
 すっかり水気のなくなった、手ぬぐい。○○さんのものでしょうか。
 必死な顔をして私の名前を呼んでいた○○さんの顔を思い出す。
 ふふ、ちょっと嬉しかったな。
 ……そういえば○○さんはどこへ行ったのでしょうか?

「Zzz……」
 寝ちゃってますねー……
「おーい、○○さーん?」
「ん……」
「もう夜ですよー?」
「よ、る……? そうだ文っ!」
「うひゃあ」
 きゅ、急に飛び起きないで下さい……びっくりするじゃないですか。

「あ、文か? 熱は下がったか? もう大丈夫なのか?」
 私の肩を掴んでがくがくと揺さぶる○○さん。
「あああう、だい、じょう、ぶ、です、から、ゆらさ、ないで~~」
「あ、ああ……すまない」

 うう、頭がフラフラします。
「病み上がりにシェイクはキツいですよ~……」
「……重ね重ね、申し訳ない。だが本当に大丈夫なのか?」
「はい。まだ少し熱っぽいですけど……歩き回る位ならなんとか」
「そっか……よかった」
 心底安心したような溜息をつく○○さん。



 かけられていた上着を○○さんに返し、二人を包むようにかけて。
 のんびりと星空を見ながら、お話。

「えっと、ご心配をかけたようで……すみませんでした」
「いや、いいよ。お前が無事ならそれでいい」
「……はい」
 真顔でそんな恥ずかしい台詞を言わないで下さいよぅ……
「ただな、一つだけ教えてくれ」
「何でしょうか?」
「体調が悪いのなら何故言わない。
 そうと言ってくれれば別の日にいくらでも予定は空けたのだが」

「……やっぱり覚えてないんですね」
「何をだ?」
 覚えていてくれなかったことに多少の落胆を覚えつつ、思い出させるように口を開く。

「今日は私と○○さんが出会って丁度一年なんですよ」
「……そうだったっけか。暦なんて見ないからなぁ」
「ちなみに、会った場所はココですよ?」
「んー……?」
 首を傾げる○○さん。思い出してくれるかな?

 あれは丁度一年前の今日。
 取材の帰りにちょっと休憩しようと立ち寄ったこの丘。
 彼は「ここが俺の庭だ」と言わんばかりに
 開けた場所のど真ん中で大の字に寝転んでいたのだった。

「あー……人が気持ちよく寝てるのを叩き起こして「取材させてくださいっ」って言ってきた日のアレか」
「う゛……そう、です」
 根に持ってましたか……あやや。
「……あれからもう一年かぁ」
「そうですよ」
「お前といると一年も早いなー」
「へ?」
「いや、見てて面白いし、話してて楽しいし。要するに退屈はしないって事」
「あはは、どうもです」
「……んで、その一年と無理して外出したことと何の関係がある」
「ほら、記念日というか、何と言うか……」

「馬鹿者」
 私の軽く頭を小突いて、○○さんはそのまま続けます。 
「そうであっても、俺はお前に無茶なんてして欲しくない。
 今日は軽めで済んだからよかったものの……」
「……ごめんなさい」
「あんまり無茶、すんなよ」
 ブランケットの下で、抱き寄せられる感触。
 あ、あれ……今日の○○さんはいつになく大胆デスヨ!?
「本当に心配……したんだからな……」
「○○、さん……」

 感極まって後ろを振り向くと。
「Zzz……」
「あ、あれ……寝てる……」
 今日は色々、迷惑かけちゃったかな。

「○○さん、今日はお疲れ様、でした」
 回された両腕に、背中にある○○さんの身体に、全てを預けて。
 私も眠ることにした。






 ちなみに、この翌日。
 今度は○○が逆に風邪を引くことになるのだが、それはまた別の話。

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8スレ目 >>311



「○○、いますー?」
「ん。ああ」

文が取材から帰ってきた。
疲れてはいるのだろうが、やけにニコニコした顔つきで俺の方に歩いてくる。
なにがあったのやら

ぼふっ

「……」
「んー♪」
「何の真似だ」

胡坐をかいている僕の足に、頭から飛び込んでくる文。
僕の両脚を枕代わりにして寝ようとしている。

「ちょっと今日は疲れました」
「理由になってないぞ」
「いいじゃないですか、別に」
「……はぁ」

そのまま身をゆだねる。
僕の両脚には、心地よい暖かさと重さがのっかかる。

「○○」
「なんだ」
「家に帰ってきたら、いつもこうさせてください」
「なんで」

「○○を感じてないと、寂しくてしんじゃいそうです……」
「……そっか。わかった」
「……しばらく、こうしてて良いですよね」
「ん」

僕が肯定の意を示すと、文は僕の両脚に顔をうずめて、力強く掴んだ。
それこそ、僕を二度と放さないぐらいに力強く。

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9スレ目 >>545


「○○さん前々から思ってた事があるんですけど聞いても良いですか?」
「別に良いけどなんだ?聞きたいことって」

いつものように「文文。新聞」を作るために編集してる合間
同じく作業をしている○○さんに
私は常々疑問に思っていたことを聞いてみた

「出会いは最悪だったのに○○さんってどうして天狗に対して友好的なんですか?」

彼との出会いは約半年ほど前、妖怪のいる山で天狗に追いかけられているところだった
そもそも天狗と言うものは妖怪には珍しくきっちりと上下関係があり閉鎖的な社会だ
それゆえに余所者が自分達の領域にはいてくるとこれを排除しようとする傾向がある
さらに○○さんは人間なのに天狗の術を使って逃げていた
自分が傷ついても天狗たちを傷つけることは一切せずに
その後私が仲裁に入り何とか事なきを得た
そしてそのお礼と○○さんは新聞作りを手伝ってくれている

「俺昔小さい頃京都に住んでてな、山に入ったときにふとしたことで天狗の里に迷い込んだことがあるんだよ」
「京都の天狗の里と言うと鞍馬天狗ですか?」
「そうだよ、それで数年間そこでお世話になったんだ、術とかはその時にな」
「そうだったんですか、だからあの時天狗たちに追いかけられてるときに攻撃しなかったんですね」
「ああ、俺にとっては天狗は家族同然だからあんまり戦いたくなかったんだ」

正直天狗の里に迷い込んで生きていて尚且つ育ててもらったと言うのは驚いたが
考えてみれば牛若丸と言う前例もある、おそらく鞍馬天狗達は久しぶりに人と会えて懐かしかったのだろう

「それにさ、将来嫁にするなら天狗の娘って決めてるんだよ俺」
「はぁ、相手のあてはあるんですか?」
「一応いるよOKを貰えればだけど」
「○○さんならきっと大丈夫ですよ、他の天狗たちも○○さんが山に入っても排除しようとしなくなりましたし」
「ふーん……じゃあ言うか
 文、好きだ」
「…………は?わ、私ですか?」
「そうだよ、あの時山で人目あったときから俺は文のことが好きなんだ
 新聞作りの手伝いだって文と一緒に居たいから」
「あややややや/////」
「で、返事、良かった聞かせてくれないか?」
「………………………………私も好きですっきゃ!?」

そう私が言うと同時に○○さんは私を抱きしめました

「ありがとう、文これからもよろしく頼むな」
「こちらこそ、よろしくお願いします」

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9スレ目 >>591


「やっと会えました。あまり女性を待たせるものではありませんよ?」
「え?何?(初対面なのに何言ってんのこの子)」
「自己紹介が遅れましたね、私としたことが。
私は射命丸 文。前世の貴方と愛し合った者です。」
「そ、そうなの?じゃあこれで…(なんという電波。これは関わってはいけない)」
「ま、待って下さいよ、ちゃんと証拠もあります!貴方の額のアザです。文って書いてますよね?
数百年前、貴方が死ぬ前に呪いを、もといおまじないをかけたのです。この私が。」
「これお前の仕業かよ!」
「はい。こうして貴方と再会出来る様に。
…思い出してくれなくてもいいのです。貴方と会えただけで、私…」
「(な、なんだ?泣いているこの子を見てると記憶が…)」

そのとき、泣きながら○○の額に文字を書く文の姿が浮かんだ

「ちょw今なんか見えたぞwww」
「!?何か思い出したんですか?わあ、嬉しいです!
…あの、また会いに来てもいいですか?一緒に居ればもっと思い出せると思うんです。」
「(なんとなく思い出してきた。
この子は昔と変わってない気がする。そしてそれを望んだのは俺だった)」
「あの、黙っていたらわかりませんよぅ…」
「いや、すまん。また来てくれるか?もっと君の事が知りたいんだ」
「は、はい!貴方にそう言って頂けるなら…喜んで」

「あと、額のアザは消してくれ。ていうか消せ」
「あ、それは無理です。」


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12スレ目>>441 うpろだ829


「では、その『うぃず』というゲームはストイックさが逆に中毒性を生んでいるわけですね」

 私こと射命丸 文の発行する「文々。新聞」、
 次回掲載予定の記事は「特集!外界座談会 お題『てれびげーむ』」です。
 ○○さんの家に遊びに行った時に、元いた世界ではこれが爆発的に流行っていたと聞いて思いついたこの企画。
 外から来た人間である東風谷 早苗さんと○○さんに
 ここ守矢神社の縁側でトークを繰り広げてもらう、という趣旨だったのですが……

「そうそう、レベルの上限が天井知らずだしねー。
 村正出るまで何時間も粘ったりもしたね。
 あ、でも初心者にはちょっと敷居高いかもねー」
「あ、俺それわかります。小学生の時初めてやったんですけど、
 一生懸命作ったキャラでいざ潜ったら、道に迷っちゃって。
 あっという間に全滅しました」
「いっぺん諏訪子が早苗にやらせてみたことがあったわね。
 しばらくしたら居間の方から
 「きゃあああっ、八坂様の首がーッ」とか
 「諏訪子様が、諏訪子様が灰にっ」とか
 縁起でもない叫び声が聞こえてきてね。
 思い入れでキャラ作った時に限って凶悪な罠やモンスターが」
「八坂様、だから私はもっとほのぼのしたゲームの方が好きだと……」

 割って入った神様二柱の方が盛り上がっているのは気のせいでしょうか。
 そもそもこの内容はちゃんと読者にわかるのでしょうか?




「えーと、では他にはどのような……あれ?」

 向こうから走ってくるのは椛ですね。勢い良く尻尾を振っていますが、何かあったのでしょうか。

「どうしたの、椛?」
「あ、いたいた。文さん文さん、今日非番なんですけど大将棋の相手してくれませんか?」
 ああ、何かと思えば。期待に満ちた目でこっちを見ているところ申し訳ないですが取材中なんです。
「ごめん、今『文々。新聞』の取材中なのよ。誘ってくれて悪いけどまた別の日にしてくれない?」
「そうなんですか?あ、○○さんと一緒ってことはついに告h……」
「ストーーーーップ!」
 う、うかつにもほどがありますよ椛!
 確かに先日貴方と飲みながら打ち明け話はしましたが、
 私が○○さんのことを好きなのはまだ秘密なんです!

「椛、ハウス!」
「わふっ!?」
 反射的に、今来た方向へ駆け出す椛。
 ふう、普段の躾(暗示とも言いますが)の成果ですね。
 次はきっと相手してくださいねー、と叫びながら椛は帰っていきました。




「さ、気を取り直して取材を再開させていただきますね……あれ?」
 ○○さん、何だかこっちを見る目が変です。
 も、もしかしてばれてしまったとか?

「文って……オフの時は結構くだけた話し方なんだな」
「……は?」

 ばれたわけではないようですが……
 ○○さん、何だか寂しそうです。
 そういえば普段話す時は丁寧な話し方でさっきは―
 ―はっ、椛と話していたのが私のオフの状態だとすると、
 ○○さんにはオンの状態で……義務で仕方なく接していたと思われているのでは?
 このままでは○○さんと私の距離が遠のいてしまいます!
 こ、ここは一つ冷静に誤解を解かなければ……

「わ、私にとって天狗の社会というものは分かちがたいしがらみでありま
 た種族としての絆によって構成されるものであることから内部ではことさら親
 しさを強調する必要がありますごくたまに一天狗として外部に接する際も決して下につかない姿勢
 を示すためにあえてくだけた話し方を使わねばならないのです一方新聞記者は私の生き様であり、読者にも取材先にも
 愛される記者となることが良い新聞作りの近道である以上節度ある話し方は最低条件で
 してつまり何が言いたいかというと私が話し方を使い分けるのは状況に応じ
 てのことであって片方がオンで片方がオフというようにどちらが上でどちらが
 下と区別するものではないのであるからして○○さんに接する態度は作り物ではありませんし確かに椛とは親しいですが
 さっきのように話している時が素の私であるということではないのですそこのところをわかって
 いただきたいのですがいかがでしょうかっ!」

 い、息が切れました。少しも冷静になれませんでした。
 皆さん呆気に取られているようですがこれでわかってくれましたよね?

「んー、よくわかんなかったけど
 要するに丁寧に話してる時は
 記者として接してるってことかな?」
「遊びに来ましたよー、とか言って俺の家に来ることがあったけど、
 そうか、何だかんだ言っても取材の延長だったのか……
 結構嬉しかったんだけどな……」

「あやややややややや!?」

 ああ、全然伝わっていません。
 諏訪子さんどうしてそんな余計なまとめ方をするんですか。
 ○○さんが遠いです。
 もう、涙が出てきました。

「文さん、泣かないでください。新聞記者が文さんの生き様だということは
 取材ではなくても口調がそちら寄りになることが多いわけですよね?
 ほら、○○さんだってわかってくれますよ」
「うっ、ぐすっ、ありがとうございます早苗さん。
 ―○○さん、取材目的や、ひっく、義務感だけで、貴方に、会いに行ってるわけでは、すんっ、ないんです。
 わかって、くれますよね?」
「ああ、大丈夫。ちゃんとわかった。
 いや、俺も良い友達ができたと思ってたのに
 仕事だから会いに来るのかと思ったら寂しくて……」




 友達?



「―友達じゃ、だめなんです」
「あ、文!?」

 もう、抑えきれません。後から後から出てくる涙も、この気持ちも。
 気がつくと○○さんにすがりついて、胸に顔を埋めていました。

「わた、私、は、○○さんのこと、好き、です」
「!」
「新聞記者でも、天狗でもなく、一人の女の子として、見て、ほしいんです」
「…………」
「それ、なのに、ぐすっ、ただの、友達だなんて、ひど、い、です……」

 わけがわかりません。
 たぶん○○さんも呆れてると思います。
 じゃあ何と言えば良かったんだと聞かれても、答えられないでしょう。
 でもほんのささいな言葉が、私には
 大事なものが遠くへ流れていきそうなところをやっと掴んだのに、
 永久に届かないところへ放り投げてしまうものに思えて、
 どうにもなりませんでした。
 今抑えていたものを解き放ったら、本当に届かなくなってしまうかもしれないのに。




「……まず最初は、さ。友達になれたらなって思ったんだ」
「え?」
「初めて外の世界のことを取材したいって俺のところに来た時に。
 明るくて、元気で、情熱的で。
 まず何とか友達になって、さ。
 そうしたらいつかきっと、気持ちを伝えられると思って」
「○○さん」
「ようやく友達ぐらいにはなれたと思って、
 その先に一歩近づけたなんて勝手に喜んでたからさ。
 今日なんか急に脚払いをかけられたみたいで
 すごくショック受けたりしたんだ」
「○○さん、その先って」
 顔を上げて、○○さんを見ました。
 私が好きになった、男の人。
 いつになく真剣な顔で私を見ています。
「友達で終わるつもりなんかない」

「文、俺も文のことが好きだよ。
 恋人に、なってくれないか」

 ああ、今日は何だか、たくさん涙が出る日です。

「―はい、喜んで」

 抱きしめてくれる腕が温かくて、抱きしめた身体が温かくて。
 私は、涙が止まりませんでした。




おまけ

「あーうー、青春だねー。
 わたしの若い頃を思い出すよー」
「あ、あのっ、私お茶を淹れてきますねっ」
「早苗、お茶なんて野暮なもんじゃなくて
 めでたいんだからお神酒を持ってきなさい。
 あ、二人とも結婚式はうちで神前にしなさいよ?
 オンバシラおまけしておくから」



(少女千里眼使用中)
「なあんだ、やっぱり文さん告白したんですね。
 これは当分大将棋の相手はしてもらえないかなあ
 ……幸せに、なってくださいね」

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11スレ目>>475



「○○さん!そっちいきました!」
「あい分かりました!」
 今、俺たちは茂みの中で音を出さないようにカメラを構えている。今日は稼ぎ時、俺と文さんは、仲良くカモを追っていた。狙いは●●と霊夢。シャッターに指がかかった。
 パシャッ。
「ん?●●。今なんか変な音しなかった?」
「HAHAHA。風の音じゃないのかい?さあ行こう。」
 これで、年末にはお前達のイチャつく姿が新聞に出るが恨むなよ●●。これでも俺たちは仕事なんだ。
 それに・・・
「取れました!文さん。」
「わぁっ。やったぁ。有り難う御座います!○○さん。」
 この笑顔を見る事が出来るんだからさ。

 ・・・・・
「それにしても、クリスマスにこんな事やっている俺たちって。悲しくなりますねぇ。」
「あら、私の笑顔を見れるから良いんじゃないんですか?」
「まあそれもそうですが・・文さんは良いんですか?」
「私はこうして貴方と一緒に居るだけで満足ですよ。」
「馬鹿。」

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12スレ目>>607 うpろだ853


「おはようございます! 新聞でーす!」
「やあ、おはよう。最近の新聞は枕元まで配達してくれるんだね、知らなかったよ」
「あら、美少女に起こされて悪い気はしないでしょう? その上新聞まで配達してくれるんですよ?」
「そうかもね。僕がその新聞を取ってないということを気にしなければね」
「大丈夫です。購読料は勝手に頂いていますから」
「それは一般的に泥棒って言うんじゃないのかな」
「でも、読むんでしょう?」
「まあ、貰ったからには読むよ」
「じゃあ私が購読料を頂いても問題ないはずです」
「その理屈で言うと、道にこの新聞を貼り出しておけば、通りがかった人は全員購読者にならないかな」
「んもう。分かってないですねえ。私が配達しに来ているという点が重要なんですよ」
「頼んでないけどね」
「それはさておき、待ってるんですけど」
「何を?」
「朝ごはん」
「ないよ」
「食材はあったじゃないですか」
「うん、つまり君にあげる分はないって事だよ」
「ははは。そんな事言っても無駄ですよ。作ってくれるまで帰りませんからね」
「ははは。意地でも作らないよ。作るまで帰らないと言うのなら、僕がここで飢えて死ぬのをずっと見ていてくれ」
「えっ……そんな……」
「なんで照れるのさ」
「だって、死ぬまで一緒にいてくれって……」
「どれだけポジティブに受け取ればそうなるんだよ」
「それは冗談として、今日は紅魔館のレミリアさんを取材する予定なんですが」
「そう、行ってらっしゃい」
「私がインタビューしますので、あなたはその場面をカメラに収めてくださいね」
「あ、やっぱり僕も員数に入ってるんだ」
「当たり前じゃないですか!」
「力説するところなの?」
「あなたにも真実に触れる喜びを味わってもらおうという、私の親切心が分からないのですか」
「真実って言えばさ、この幻想郷の真実をお伝えする『文文。新聞』なんだけどさ」
「ええ」
「前回――つまり、今手元にあるこの新聞だけど――前回も僕、なんだかんだで手伝ったよね」
「そうですね」
「前々回も僕、色々と手伝ったよね。取材とか写植とか」
「ええ、そうですね。助かりました」
「どういたしまして。で、だ。すると、この新聞、何割かは僕が作ったと言ってしまってもいいわけだよね?」
「そうなりますね」
「じゃあ、なぜ僕はこの新聞を手に入れるのにお金を払わないといけないのかな。いやそもそも頼んでないんだけどさ」
「いや、その考えはおかしいですね」
「どうおかしいのさ」
「取材や作業は、当然あなたと私の二人で行うわけですが」
「うん」
「こんな美少女と二人きりでデートしておいて、報酬まで要求しようというんですか!」
「あぁ、あれデートだったんだ……」
「分かりましたか?」
「いや、分からないけど……まあいいや」
「……」
「なんで驚くのさ」
「まさか納得するとは思わなくて」
「いや、納得してないけどね」
「そもそも、なぜあなたは私の取材に付き合ってくれるんですか!」
「どういうキレ方なんだそれ」
「なんですか、あなたひょっとして私のこと好きなんですか!?」
「そうだよ?」
「え」
「あ、気づいてなかったんだ……なんかそれは傷つくんだけど……」
「え」
「惚れた弱みでもなきゃ、やってられるわけないじゃない」
「え、えぇ……!?」
「当然、そういう暗黙の了解の下でやってると思っていたんだけど」
「……変わってますね」
「うん、ちょっと後悔してる」
「後悔してるんですか!?」
「いや、だって、君が気づいてなかったって事は、要するに僕のことを、何でも言うことを聞いてくれる便利な人くらいにしか思ってなかったって事でしょ?」
「いや、それはその……そうじゃなくてですね……」
「うん?」
「気づいてくださいよ!」
「いや分かんないよ」
「当然、そういう暗黙の了解の下でやってると思っていたんですよ!?」
「いや、だから、何の話さ」
「はぁ……もういいです……」
「ええと、それでさ」
「はい」
「君さえよければ、なんだけど」
「ええ」
「暗黙の了解を……暗黙じゃなくしても、いいかな」
「え……あ、へへ、えへへへ」
「気持ち悪い表情だね」
「私を怒らせたいんですか!?」
「まさか。それで、どうなのかな」
「え、あ、あの……あー……よ、よろしくお願いします……」
「うん、こちらこそ、よろしくお願いします」
「……ふふ。じゃあ、取材の前には腹ごしらえですね! 朝ごはん作ってください!」
「いや、それとこれとは別問題」
「なんでですか!」

どっとはらい。

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12スレ目>>450


「○○さんの浮気もの!!」
ガシャン!ガシャン!

「うわぁ!?ちょっと落ち着け文、何のことかさっぱりだぞ」
「とぼけないで下さい!!ちゃんと証拠の写真だってあるんですよ!」

バサッ

写真には茶屋で○○と楽しそうに談笑する女の人が

「……これか」
「ほら!やっぱり浮気じゃないですか!そりゃ私は妖怪ですよ
 妖怪と一緒にいる○○さんが少数とはいえ悪く言われてるのだって知ってます
 ○○さんのことを考えるなら同じ人間の人と添い遂げたほうが一番だってことも知ってます
 でも!それでも……私は○○さんのことが好きなんです!
 お願い…お願いですから、私を捨てないで下さい…うぐっ、ひっく」
「文……」

ギュ

「安心しろ、俺は絶対に文を手放さない」
「本当…ですか?」
「ああ、本当だ、写真の人だっていきつけの雑貨屋の店員さんで偶然であったから話をしてただけだ
 文が気にするようなことなんて全然起こってないよ」
「うぐっ、ごめんなさい、疑ったりして……」
「気にしてないよ、不謹慎だけど嫉妬してくれて嬉しいぐらいだ」
「○○さん、好きです!大好きです!愛してまs、んっ!?ん……」
「俺も愛してるぞ文」

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最終更新:2010年05月11日 18:13