幽香1
1スレ目 >>510>>519-522
僕はいつの間にか向日葵畑に居た。
いつ何時でも太陽の方を向く向日葵。それはまるで太陽という歌手を見る
観客といった感じだ。
どうして僕は、こんな所に居るんだろう?
その疑問はここに来た時点で、とっくに捨てた。
この広い大きすぎる向日葵畑の景色を見ていたら、いつの間にかそんな疑問は
吹き飛んでいた。
「あらあら、ただの人間がこんな所に何の御用かしら?」
と、僕の背後からそんな気楽な声が聞こえた。
振り返ると、そこに立っていたのは傘を差した一人の女。
そのあまりにも自然な光景に、僕は一瞬、心を奪われていた。
「さぁ、話して。ここに、何の用なのか」
その女は僕に向かって再度問い掛ける。
「別に、特に用はないですよ。気がついたらここにいたんです」
「そう…」
僕のその言葉に、彼女は表情を変えずに小さく息を吐く。
ざわ…ざわ。
何故だろう?彼女と言う存在が現れたときから、妙な違和感を感じる。
その証拠に、奇妙なことに向日葵が騒いでいるような感じがするのだ。
「あなた、人間よね?」
「えぇ、まぁ…」
ドクン
心臓が高鳴る。今まで感じた事のないような圧力。
その威圧感が彼女から出ているものだと、ようやく僕は気付いた。
「さぁ…どうする?」
今までにない恐怖。足は震えて立っているのもやっとだ。
蛇に睨まれた蛙のように、僕は動く事が出来ない。
その彼女の笑顔は、僕の恐怖を増長させる。
「さぁ、あなたは帰りなさい」
「え?」
「帰りなさいと言ったの。十分に恐怖は味わったでしょ?」
いつの間にか威圧感と言うものはすっかりと消えて、震えは止まっていた。
あれだけの威圧感を出せるとしたら、相当な人間…いや、妖怪だ。
周囲の向日葵が落ち着きだす。
「あなたは…?」
「風見幽香。ここに住む妖怪」
彼女――幽香は振り返りながら言う。既に僕に対する興味は失ったようだ。
傘を差した後姿を、僕はずっと見送っていた。
奇妙な事に、あの時より僕は彼女のことが気になり始めたのだ。
僕がすぐに恐怖するほどの威圧感を持ち、その上それを隠さない
あの可憐な妖怪が。
僕はその次の日もその向日葵畑に来ていた。
あれだけの恐怖を与えられても、尚ここに来たと言う事は
結構、酔狂な人間になるようだ。
「また来たの?」
居るだけで威圧されるような、その笑顔。
そしてそれに似合わないゆったりとした声。
「えぇ、また来ましたよ」
周りの向日葵はざわざわと音を奏でて一斉に僕の方を向いた。
恐怖と言うよりも、むしろ歓喜。
僕と彼女がここに来たと言う事を喜ぶような向日葵のざわめき。
「本当の恐怖を教えて欲しいのかしら?」
「昨日までで十分に教えてもらいましたけどね」
彼女は笑顔で表情を固めながら、僕を見る。
昨日で十分、彼女の恐怖は味わった。威圧にも、ちょっとだけ慣れた。
その証拠に、足は昨日ほど震えてはいない。
「あなたは何でここに来たのかしら。ここはあなたの様な人間が簡単に足を踏み入れて
いい場所じゃない。帰りなさい」
優雅に何かの花びらが舞い上がり、彼女――幽香の周りに集まってくる。
「僕は…」
「あなたのことはどうでもいいわ。ここの向日葵は侵入者に過敏なの。
さっさと出て行きなさい」
「…嫌です」
幽香はビックリしたように、僕の方を見ていた。
やがて、その顔が不敵に崩れた。
「ふうん…つまり、あなたはここで虐められたいのね?」
「…そういう訳でもないんですけど」
「じゃあ、どういう訳かしら?」
その笑顔。屈託のない笑顔に対して、僕は目を逸らした。
僕の様子があまりにも不自然だった為か、幽香は訝しげに
顔を覗き込む。
「ぼ、僕は…」
ただ好奇心の赴くままに、ここに来たと言ったら彼女はどんな顔をするんだろう?
また帰るように言うんだろうか?
「…あなたが、気になったから」
言うのは恥ずかしかったけど、僕は本音を言った。
ただの好奇心とか、そういうのは多分建前で、僕は彼女が
気になっているんだろう。
「そ、そう。私が気になったの」
「はい」
「…だったら――」
周りに漂っていた花びらが一斉に巻き上がる。
「あなたを虐めてもいいわよね?」
それは明らかな攻撃のサイン。目の前の彼女は僕に恐怖するように
威圧すらかけている。
しかし、先ほどの言葉で動揺したのか、昨日と比べるとその威圧感は
まるで涼風だった。
「どうぞ。僕を…虐めたいんでしょう?」
「…!」
僕の身体に次々に打ち込まれていく花の弾。
肉を貫いているのか、それとも貫いていないのか、感覚が
なくなるまで僕は立っていた。
幾多もの弾が打ち込まれて、ようやく気が済んだのか幽香は僕に背を向けた。
当の僕はと言うと、既に地面に倒れていた。
妖怪は人間を食らうものだし、正直、彼女に食われても悔いはない。
そんな事を考えながら、僕の思考はフェードアウトしていった。
意識が次第にはっきりとしてくる。それに伴って蘇ってくる痛覚。
背景は既にオレンジとなっていた。
「目が覚めたかしら?」
僕を見下ろす形で幽香が立っていた。
きっと僕を傷つけた罪悪感なんて欠片もないだろう。
「…まぁ、一応は」
まだ痛む体を押さえ立とうとするが、力は入らない。
それにしても…僕は食われなかったのか。ある意味、運が良かったのかもしれない。
「さぁ、帰りなさい」
ゆったりとした笑顔で話す幽香。
「ダメですよ。僕は、まだあなたに名前すら教えてないんですから」
「聞いていないわよ」
ふぅ、とため息を吐く幽香。
どうやら、僕の様子に完全に呆れているようだ。
「どうして私にそこまで関わろうとするのかしら?私はあなたのような人間が足元にも
及ばない妖怪よ?現にあなたは私相手に満身創痍よ。あなたは人間として
おかしいわ」
確かに、ここまでされて尚も関わろうとする人間は異常者以外の何者でもないだろう。
何で僕がここまでしているのか、自分でも分からない。
しかし、推測なら…いくらでもある。
「僕は…きっと、あなたが好きなんだ。一日で咲く花があるように…
僕は初めて会った時にあなたに恋をした。その恋の花は…あなただけの物だ」
頭の中はすでに空っぽに近い。
こんなにも傷が痛むのは、妖怪に恋をしたから、神が罰を与えたのかもしれない。
でも、言う事ができた。
「もし叶うなら妖怪さん、ご返事を」
「…六十年」
彼女は言う。
「六十年…回帰の時が訪れて、あなたが私を忘れず、ここに来れたら考えてもいいわ」
どうやら今のこの傷じゃ、僕はもう助かりようがない。
眠い…。
どうやら『今の』僕はここで終わりらしい。『次の』僕はちゃんと彼女の事を
覚えてくれるだろうか?
「幽香…」
僕は最後に彼女の名前を呼んだ。
向日葵畑を、僕は歩く。
ここに着いて間もないはずなのに、僕は何故かここに来た事がある気がした。
ひたすらに歩き、太陽を向く向日葵を僕は見る。
ここに来てから、何故か威圧感を感じて、それでいてやっぱり妙な
懐かしさを感じていた。
「あらあら、ただの人間がこんな所に何の御用かしら?」
はっきりとした女性の声が響いた。
そして、向日葵達がざわめき立つ。
「さぁ、話して。ここに、何の用なのか」
「…僕は、あなたに会いに来たんです」
「…?」
「やっと、分かったんです。あなたが…風見幽香、ですね?」
次々と鮮明になる恐らく自分の記憶。
彼女に殺されたこと、最後に交わした約束。
もっとも、六十年経った今彼女が覚えているか分からないけど。
「あぁ、もしかして…あの時の?」
「覚えていたんですか?」
「あそこまで変な人間はあなたくらいなものよ」
「そう、ですか?」
「そうよ」
彼女は威圧するような笑顔でなく、柔らかな笑顔で
笑った。
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1スレ目 >>688
「こんな所に向日葵畑なんてあったんだな」
周りは一面花、花、花。こんな所もあったんだなぁなんて感心してしまう。
俺は人里では強い分類で弾幕も撃ててその辺の妖怪なら簡単に倒せる。その上空を飛べたりもする。
そのせいで周りからは避けられてしまい人里から離れたところに住むことにしたわけだ。
たまに慧音様も来てくれて色々聞いてくる、最近は妖怪が来ないとか色々と。あんたが強いからじゃん。
暇だったので色々と彷徨っているうちに遠くに黄色の絨毯が見えたからこうやって来たわけだ。
「あら、珍しいわねここに人が来るなんて」
いきなり声をかけられて後ろを向いてみると、緑髪の傘を差した女が立っていた。大体身長は同じくらいか?
こんな辺鄙な所に人間が来るわけ無いな、そう思い俺は身構えた。
「あらあら、いきなり身構えちゃって。そんなに苛められたいのかしら?」
余裕の笑みを崩さないその少女はそんな事を言ってきた。ついでだが俺はマゾではない。
多少の殺気を感じて思わず後ずさりをしてしまった。
「あなたに逃げ道はない、勿論上もね」
周りを見てみると向日葵が全部こっちの方向を向いている。なるほど、種で蜂の巣にするつもりか。正直ゴメンだ。
「さ、蜂の巣になるか苛められるか、どっち?」
勿論分が悪い蜂の巣を取るわけが無い、そう思って俺は上に飛んだ。蜂の巣を選んだ人は撤収。
「苛められるほうね、私もそっちのほうがいいわ」
同時に少女もこちらにあわせて飛んできた。
「少しは楽しませてちょうだいね?」
そういって彼女と弾幕ごっこを開始した。
目の前に写るのは弾、弾、弾、花。コレは・・・無理。
「あんまり張り合いが無いわね・・・もう少し粘れなかったの?」
「む、無理だって・・・」
案の定俺は負けた、避ける事しかできずに弾の一発も撃てなかった。
あんな攻撃の中でもこの女は余裕の笑みを全く変えずにいた。やっぱり強いな、こいつ。
さて、帰らないといけないが・・・思うように体が動かない、ダメージを受けすぎたな。
「帰りたい?」
「う、まぁ」
「そう、じゃあちょっと待ってね」
そう言って少女はブツブツ呟き始めた。その後俺の体が光に包まれると同時に体の傷が全部消えた。
「どうもありが・・・あれ?」
いない、どうしたのだろうか?まぁいいか、とりあえず帰ろう。
「あの向日葵畑に行って風見幽香に出会って生き延びただと?」
家に帰ったら慧音様が居たのでさっき起こった出来事を話してみると慧音様はありえないと言った様な声を出した。
どうやらあの緑髪の女は風見幽香と言う妖怪らしく、出会って生き延びた者は居ないらしい。運がよかったのか?
それにしても何かとあの少女、風見幽香のことが頭から離れない。奴は何者だ?・・・妖怪だ。
「ふむ、運が良かったか・・・本当にそうかな?・・・少し用事を思い出したのですまんが失礼する」
その後もなんかブツブツ言いながら帰っていった。とりあえず眠かったので飯を食べて寝た。
翌日も風見幽香のことが頭から離れずにいて、思い切ってもう一度行くことにしてみた。
やはり一面黄色、いつみても凄いなコレは。
「あら、また来たの?あんたも懲りないわね」
「なんか気になってな」
嘘ではない、実際思いっきり気になっている。
「そう?じゃあ前の時と同じように」
「『蜂の巣と苛められるのどっちがいい?』」
「それは私のセリフよ」
「先が読めればいいんじゃないのか?」
「読めれば心にとどめておく、外に出したら駄目よ」
なんてことを喋りながら上に飛ぶ、今度はもう少し粘ってみようか。
「じゃあノルマは昨日の二倍よ?」
「一,五倍にならないか?」
「三倍にする?」
「二倍でよろしくお願いします」
「また負けた・・・」
「当たり前よ、それに私はまだ本気じゃないわ」
あれでまだ本気じゃないって・・・こいつは底なしか。
「そういえばノルマはどうなっていたんだ?」
「覚えてないわ」
じゃあ二倍とか言わなくて良かったじゃないか・・・。
「さて、帰らないと・・・」
「その体で帰るつもり?」
「う・・・」
また動けない、前回より酷いみたいだ。
前回同様に風見幽香はブツブツ言い、体が元に戻ったと思うと消えてしまうのだ。
やっぱり首をかしげながら家に帰り、そのまま寝た。
翌日もその翌日もそのまた翌日も俺は向日葵畑に向かっていた。
日に日に避け続ける時間は延びていったがそれでも勝てた例は無い。
そんな日が続いて俺と幽香が出会って一週間が過ぎた日、いつもの通り弾幕ごっこを終わらせて幽香はいきなりこんな事を聞いてきた。
「ねぇ、こんなのやってて楽しい?」
楽しいわけが無い、こっちは必死でやっているんだ、下手したら死ぬし。しかし、なぜか俺は楽しいと感じていた。
「ああ、よく解らないけどなんか楽しい」
「こんな事が一生続いたらいいと思う?」
何でこんな事を聞いているんだ?そんな事を思いつつも正直に答える。
「そうだなぁ・・・続いたらいいと思うな」
どっかの蓬莱人みたいにはなりたくないけど。
「そう。でもそれは無理。なぜなら私は妖怪、あなたは人間だもの」
「だけど何もやってないのに無理と決め付けないほうがいいぞ?」
「そう、そうやって人間は幾度と無く無理をしてきた。得るものもあったけど失ったものもあったわ」
「それでも、それは後のためになる。無理と決め付ける前にやってみるのも人間のいいところだ」
「そうかもしれないわね。さて、今日はやる事があるからさっさと帰りなさい。でないと花にするわよ?」
「はいはい、解りましたよ・・・。・・・・・・あ」
「どうしたの?」
「・・・体が動かない」
「ふふ、しょうがないわね」
そういえばこんなに話したことはなかったな。回復されながら俺はそう考えていた。
たしか、ここら辺だったわね・・・。まったく、ここには花が無いのかしら?
あ、あった。相変わらず中は散らかってるでしょうに。そう思いながらもドアを叩く。
「あー?って幽香か珍しいな。それで、何か用か?」
毎度毎度この接客はなってないと思うと思うけど表情には出さない。
「・・・魔理沙、ちょっと頼みたい事があるのよ」
他人に頼むのは癪だけど今の状況じゃあそんな事は関係ない、あの人が言っていたようにやるだけのことはやってみようと思う。
「・・・・わかった、中に入れ」
散らかってるんでしょうね、そう思いながら私は中に入った。
「へぇ、幽香も変なこと言うわね・・・元々変な奴だけど」
なんてことを博麗神社の巫女、博麗霊夢と話していた。霊夢とはお茶のみ仲間、なにかとお世話になることが多い。
「なんだろう、何か意味しているとは思うけど・・・変だな」
「私にしてはあんたと幽香が出会ってること自体が変よ」
毎回容赦がない。まぁそれがいいんだけど。
「でも、そろそろその答えが出てくるかもしれないわ」
「何でそんな事が解るんだ?」
「勘よ」
霊夢の勘は良く当たる、注意しておかないと。・・・っとそろそろ時間だ。
「さて、そろそろ行きますか」
「待って、行く前に伝えておくわ」
「なんだ?」
「あなたはまだ死んではいけないわ、死んだら悲しむ人が居る。私も悲しいけどそれ以上に悲しむ人が居るわ。それだけ」
「ああ、肝に銘じておくよ」
霊夢の話に多少の疑問を感じながらも俺は幽香の居るところ、向日葵畑に向かった。
「遅かったわね、待ちくたびれたわ」
「別に決めてないだろ?」
今回は雰囲気が違う、話をしていてよく解った。
「そうね、それより今日はあなたに言いたい事があるの」
「?」
「私は、どうやらあなたの事が好きみたいなのよ」
「へ?」
いきなりのぶっちゃけ発言に脳内が混乱中です。整理中、整理中・・・。
えっと、つまりは俺の事が好きだってこと?よくみると幽香の顔がほんのり赤い。
「それであなたの事が好きだから私はあなたを全力で倒す事にしたわ」
意味が解らない、話が飛躍しすぎですよ?
「な、なんで?」
「愛ゆえに、かしら」
一瞬頭の中で慧音様が愛ユエニ!愛ユエニ!と叫びながらバズーカを持って暴走している姿が見えた。
あー、里の子供達がみたら泣くわ絶対。
それはそうと、愛ゆえに全力で倒して何をするつもりだ?
「そういうことだから、覚悟してもらうわよ?私の本気だから気をつけることね」
気をつけるも何も死ぬって。
「それじゃあいつも通り、『蜂の巣と苛められるのどっちがいい?』」
「苛められる以外の選択肢は無いと見えるが」
「大・正・解。それじゃあ行くわよ!」
何処を見ても弾、花、弾、花。かろうじて避けているけど・・・到底無理。
っと、危ない危ない。こちらも攻撃しなければ意味がない・・・か。
「どうしたの?避けるだけじゃあ終わらないわよ」
っていうか殺気が酷いよ、あんなの避けるの厳しいって。
この弾幕避けていると解るが今までやってきた弾幕は甘っちょろいものだとよく解った。
それでも何度もやったから避けるのは・・・慣れてきた!
「っ!う、うわっ!」
突如バランスを崩して俺の体がよろけた。無論この隙を逃す幽香ではあるまい。
「それじゃあコレでお終いにするわね」
いきなり幽香が二人に分身した。その後すぐに強大な魔力を感じた、拙いこのままじゃ・・!
『デュアルスパーク』
二体から出た光の弾道は俺の体を貫くと思ったら俺の体、大体胸辺りに吸い込まれていくように入っていった。
な、なんだこれは?
「・・・・!」
デュアルスパークが終わったと同時に俺の体に激痛が走った。痛すぎて声も出ない。
体が動かない、だんだん意識も薄れてきた。俺は、死ぬのか・・・・。
(いいか、まずお前の魔力を対象にぶつける。魔力の量は大きいほうが良いが多すぎたって良いわけじゃない、大きすぎると魔法を使う前に体が破裂する。
あと、一度でも本気を見せた奴じゃないと成功はしないぜ)
とりあえず下準備はコレで良いのかしら・・・。あとは、えっと。
(次に対象にこの魔方陣を書いた後に呪文を唱える)
魔方陣を書いてっと、えっと呪文は・・・。
「ブツブツ」
これでよしっと、それで最後は・・・。
(ここまで来たらあとは簡単だぜ、相手にもよるけどな。何をするかって言うと)
「私の初めて口づけ、あなたにあげるわよ?感謝しなさいな」
(キスをするんだぜ)
『契約執行』
う~ん、何があったんだろう妙に意識がはっきりする。死んだんじゃなかったのか?
起き上がってみると幽香が笑いながらこっちを見ている、そんなに面白いか。
ひとまずこの事が起こった元凶に話を聞かないと。
「なんで生きてるんだ?俺は」
「そうねぇ。私が生かしたから、かしら」
「生かした?」
ってことは普通なら死んでるってことか。
「そう。そのおかげでこれからあなたは私の従者よ」
「従者?」
なんかどっかのメイドみたいだな。そもそも俺が従者って・・・。
「あなたと私は正式に契約をしたの、だから私の従者」
「いつだ?」
「あなたが気を失っている間」
おいおい、有無を言わせないで契約ですか。
「これであなたと私はずっと一緒よ。ずっとね」
「ずっと一緒か・・・」
「うれしくない?」
「うれしいさ、だって俺も幽香のことが、・・・好きだからな」
「ふふ、ありがと。でも、主人には敬語で」
「はいはい。わかりました、幽香様」
これでずっと一緒にいられるわけか。なんだか楽しくなってきた、なぜかは知らないが。
「さて、それじゃあまたやりましょうか、傷も治ってるし」
「ま、また?」
「敬語って言ってるでしょ。大丈夫よ、手加減してあげるから」
「わかっ、わかりましたよ・・・」
「いま間違えそうになったでしょ」
「いえ、別に」
そういって二人は空へ飛び。
戦い合う。
蛇足
「へぇ、そんなことがねぇ・・・」
「まぁ今となれば良い思い出かな」
あの時のことはもうすでに良き思い出だ。
「この後ろで寝ている奴がねぇ、ありえないわ」
「すー、すー・・・」
幽香様は俺におんぶされながら静かな寝息を立てている。まったくあの時の威厳は何処へやら・・・。
「本当だ、あの威厳は何処へやらだな」
「でも、前の幽香は人前で寝るなんてことしなかったわ」
「そうだよな、なんでこうなったんだろう・・・はぁ」
「紫と結構似ているかもしれないわね」
「あのスキマ妖怪と?」
「紫だって最初からあんなにだらけてた訳じゃないのよ。昔はあの姿から想像もつかないようだったって言ってたわね、式が」
「それと何の関係が?」
「鈍いわね、紫も幽香も強い妖怪よ。強い妖怪ほど孤独感を嫌というほど味わっていたから、ずっと一緒に居られる人物を見つけると
こうなるのかもしれないわね。長生きすればするほど内面は弱くなっていくのよ、別の意味でね」
「そんなものかな」
「永遠に一人で生きるなんて到底無理ね、だからあなたも幽香を大切にしなきゃ駄目よ?」
「主人を大切にしない従者が居ると思うか?」
「私には解らないわ」
「霊夢らしいな。さて、帰るとするよ」
「また来なさいよ。ご主人様と一緒にね」
「ああ、またな」
「あーあ、幽香様ももう少し威厳を持ったっていいんじゃないだろうかな」
「すー、すー・・・ずっと一緒だよ?すー、すー」
「ええ、ずっと一緒ですよ」
このままずっと、一生一緒ですよ。
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1スレ目 >>957
上を見ればどこまでも青い雲一つ無い空が見える…
横を見ればたくさんの向日葵が咲いている…
そう、僕は今向日葵畑で寝転んでいる。
否…倒れていると言った方が正しいか…
何故かと言うと僕は先ほどある妖怪と弾幕勝負をして物の見事に撃墜されたのである。
その妖怪の名は…風見幽香。
「まだ、生きていたのね…人間の癖にタフなのね…」
「ふん、伊達に弾幕が張れたりスペルカードが使えるわけじゃないんだよ…」
「でも…このままだと貴方は死ぬわね。結構出血もあるし…」
そう、僕は先ほどの弾幕勝負のときに相手の弾をモロに額に受けてしまい、そこがぱっくり割れてしまっているのである。
あまり痛みは感じないが…寝転んでいたし、意識も朦朧としているので血が流れていることも最初はわからなかった。
しかしなるほど、触ってみればドクドクと血が噴出している状態である。このままの勢いならば…確実に出血多量で逝くだろう…
「貴方…スペルカードが使えるぐらいなら回復ぐらいは出来るんでしょ?」
「いや、僕の魔力はさっき使ったスペルカードで品切れだよ…これで決めるつもりだったんだ…まさか全てかわされるとは思わなかったがね…」
焔符"クリムゾン スターロード"、僕が誇る最大級のスペルカードだったが…この妖怪の前では風の前の塵に同じ。いとも簡単にかわされてしまった。
「おかげでこっちは驚いてすぐ目の前に飛んできたアンタの弾に気付かずにコレだからな…今の僕には"自業自得"と"自意識過剰"の二つの言葉が同時に当てはまるね…」
「フフフ…あまり妖怪をナメない方が良かったわね。」
「ふん…どっちにしたって僕の命運はここで尽きたよ…さあ、殺すなら一思いに殺してくれないか?その方が僕も楽だし、それにアンタ自身も…これ以上この綺麗な向日葵畑が血に穢れるのは思わしくないだろう。」
もう、生きる気力なんて無くなった。毎日を生きる為に日々スペルカードの強化をしていたころが馬鹿みたいだ…
今まで鍛えてきた最大スペルカードだって、いとも簡単に破られたんだ。もうこれ以上努力をしたって無駄さ…
僕は来るべく攻撃に備え、目をつぶった。
…
……
………
だが、来るはずだったその攻撃は何故か来なかった。
それだけじゃない、額に違和感を感じる。
しかもその違和感はむしろ心地よく癒されるような…
…………
目を開けると彼女の顔が目の前にあり、彼女の手が額に触れていてそこから青白い光を放っていた。
これは…回復してる……何故?
「……何のつもりだ?」
「確かに貴方を殺すのは一番手っ取り早い。けど、私自身の納得がいかない。だったらもう一つの方法『貴方を回復させる』をすれば貴方は生きられるしこの向日葵達もこれ以上血に穢れる心配は無い。それに…私自身もこれで納得がいく」
「…何故アンタは僕が死ぬことに対して納得がいかないんだ?別段、僕みたいな人間アンタにとってはどうでm」
…とまで言ったところでいきなり唇を塞がれた。
彼女にキスをされていると気付くまでに多分10秒ほどかかった。
「ん……これがその質問の答えよ…」
治療が終わった額を彼女が撫でる。
そして背中に手を回され抱きつかれた。
「……つまり…どういうことなんだ?」
脳内で
チルノとリグルがラッパを吹きながら回ってる
何なんだ…彼女は何が言いたいんだ?
「鈍感な人ね…つまり私は貴方が好きってことよ」
今度は脳内で慧音と妹紅が抱き合って「好き!」って叫びながら回っている。
そんなバカな…今日初めて会って、弾幕勝負をやっただけなのに…
「…初対面の相手に…そんなことを…ふざけているのか?」
「あら、私は至って真面目よ。貴方が好きです、これから一生付き合っていただけませんか?」
「…もしここで僕が断ったら?」
「貴方は敗者。断ることが許されると思ってるの?」
「ふん、だったら僕は"人生の敗北者"ってことになるのかな…」
「フフフ…じゃあ私は"勝ち犬"ってところかしら」
「フッ…答えはOKだよ。これから一生、スペルカードの強化に付き合ってもらおうかな…」
「じゃあ私も一生弾幕勝負に付き合ってもらうわね。」
なんつうかその…微妙な作品に…
前回の鈴仙が少しやっちまった感があったから基本に戻ってみたのですが…いかんせん文章が稚拙すぎるな…
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>>257
クリスマスは今年もやってくる――
白銀は、幻想の世界すらも包み込む。
冬の妖精や妖怪は歓喜に踊り、秋の涼しさは冬の寒さに変わり
日々刻々と、その時は近づいていた。
「…寒ぃ」
ボロ小屋で毛布に包まりながら、彼は呟く。
○○という名の彼はちょうど一年ほど前に幻想郷に来てしまった
『外界の人間』である。
施しなくここに辿り着いた彼は、巫女や香霖堂の助力を受けて
今に至る。
その助力というと、今彼が包まっている毛布とストーブである。
石油ストーブであるのだが、半端に壊れているのか暖を取るには、
いささか温かった。
言うなれば、『ペンションで起こる殺人事件』のような状況に似ているのである。
外に出る事は叶わない。何故ならば、戸が凍りついているから。
助けを呼ぶ事も叶わない。何故ならば、通信手段がないから。
「…たすけて、えーりん」
永遠亭の竹取娘の言葉を思い出して呟く。
身体を暖める呪文ですらなかったが、気休め程度にはなった。
日本で自分のように凍死する人間の数を想像して、彼は眠りに落ちた。
1 花の妖怪と楽園の巫女
冬に咲く花はあまり多くはない。
それは生命が活動するにしても、冬の気候は厳しいから。
向日葵はもう咲いていないし、秋にある花も既に散ってしまった。
「寒いわよねぇ」
「本当ね」
現在、私は神社で巫女と熱いお茶を啜っていた。
「で、何でここにいるのよ?」
「まぁまぁ、気にしないほうがいいわよ」
冬に咲く花が、ここに多い事は言うまでもない。
神社には霊的なものが色々流れてくる。花に取り付く霊も多いのだ。
あの花の異変ほどではないが。
「それよりも幽香。あんたあの向日葵畑はどうしたのよ?」
「普通に考えてみなさい。今の時期に向日葵がどうなってるのか」
言うまでもない気がするけど。
私の言葉に霊夢は頷いて
「ご愁傷様」
なんて不吉な事を言った。
「死んだ訳じゃないんだから、そういう事は言わないで頂戴」
空の雪が、酷く積もっている。
向日葵が凍死したと言えば、間違っていないのかもしれないけど、
死ぬと言う表現は、あまりにも例え易く同時に使ってはいけない禁忌の言葉だ。
「はいはい、それはともかく…あんた帰らないの?」
「帰る?」
帰る場所は確かにあるけど、今は帰る時ではない。
彼女が邪魔と言うなら話は別だけど。
「年末が近いわよ。準備しないの?」
「まだ準備まで二週間あるわよ?」
日にちと言う概念はあまり妖怪に関係ないけど、祝う日は祝ったりしないと
騒いだりも出来ない。
「…いや、そっちもあるんだけどね」
はぁ、とため息を吐く霊夢。
「今年ってクリスマスもやるのよねぇ、まったく…」
「巫女がクリスマスなんて世も末ね」
「…そもそも管轄が違うわよ」
神社の神主がサンタの服を着ている図を想像してみる。
ここの神社の神主なんて見た事がないけど、それも面白いかもしれないわね。
そう、それよりも…
「クリスマスにも大晦日にも、彼は来るんでしょ?」
「あー、○○さんの事? 来るわよ、凍死してなければ」
「そう」
○○という変な人間の男が居る。
あの人間、奇妙な事に私を恐れないのだ。
風見幽香という妖怪の名を聞けば、普通は恐れ戦くものだけど…。
それもそのはず、あの人間は私のことを知らない外の人間だったから。
…軽く虐めたら、一週間くらい寝込んだけど。
「なに、まだ虐めるの?」
「妖怪が人間を虐めるのは日課でしょう? 一部の強いものを除いて、だけど…」
そう言って目の前の紅白を見る。
彼女は色んな意味で規格外。
「さ、彼の様子を見に行くわ。ついでに花の贈り物をしにね」
「お歳暮ね」
「私、彼に感謝はしてないけど?」
「私は感謝してるわよ? あんたがただの人間に恋する姿なんて見れるもんじゃないし」
誰が恋をしているのと言うのかしら?この能天気紅白。
「まぁ、いいわ。それじゃ、ね」
言いながら私は空に飛び立つ。
「好きな子ほど虐めたくなるって言葉…知らないの?」
2 花の妖怪と木造プレハブボロ小屋
目の前は凍りついている。
戸にはまるで、造られたような不細工なオブジェの様な氷がびっしりと
所狭しと張り付いていた。
こんな優雅さも欠片もないものは吹き飛ばしましょう――
氷を砕いて、戸を開ける。
冷気が中から吹き出てきた。
もしかしたら、外よりも中の方が寒いんじゃないのかしら?
とにかく、中に入ると冷え切った空気が私を撫でる。
「…ほぅ」
白い息が出る。
やはり絶対に小屋の中の方が寒い。
そんな冷たい空間の中には、壊れかけたストーブと毛布に包まっている物体があった。
間違いなく、この中に居るわね。
生死はともかくとして、彼は眠っていた。もちろん生きている意味で。
「…よく死ななかったわね」
そこは素直に感心しておけるわね。普通なら死んでもおかしくないのに。
でも、その無垢な寝顔を見ると悪戯をしたくなる。
「…さぁ、どんな悪戯をしようかしら?」
花の弾幕を張るのも、眠っていると反応は薄そうだし、ここまで鈍いと逆に
死んだ事にも気付かないかもしれない。
傘で突いてみる。 …こんな気候で眠れる人間がその程度で起きる筈がない。
それよりも、起きた時に驚かす方が――
…私にちょっとした悪戯心が芽生えた。
3 花の妖怪の奇妙な悪戯
時刻的に昼頃、俺は起きた。
最近の気候のせいか、ボロ小屋の俺の家は寒かった。
再び寝ようとした俺の頭は、ハンマーに殴られた時のような衝撃の襲われた。
「すぅ…すぅ」
目の前に、会うたびに虐めてくる妖怪が寝入っていた。
落ち着け、俺。素数を数えて落ち着くんだ…。
素数は自分の数字と一以外で割れない数字…俺に勇気を与えてくれる。
「…位置に産後七十一」
どこの呪文だ俺。
そんな呪文は神父も聞いた事ないぞ…?
まぁ、馬鹿な事を考えていたら、頭も冷えた。元々外気が冷やしてくれたのは
内緒だが。
とにかく状況確認だ…。
俺がいた。幽香がいた。そして何故か隣で幽香が眠っていた。
「…あ、頭悪いなぁ」
自分の思考がループしかけるのを止める。
とにかく、状況把握は後だ。
きっと、あと数分もすれば幽香は目を覚ますだろう!
さぁそこで問題だ。この状況をどうやって脱出する?
三択、ひとつだけ選びなさい。
答え①(自称)ハンサムな○○は突如脱出のアイディアが閃く
答え④他の人が来て助けてくれる
答え⑨脱出できない。現実は非情である。
おれが選びたいのは④…じゃねー。④て言う数字は縁ギが悪いんだ!
しかも、この状況…勘違いする奴が出る可能性がある!
やはり…①しかねーようだな!
「…んー」
身悶えを始める幽香。
選択の予知なし。
あばよ皆…!
答え⑨――
答え⑨――
答え⑨――
「おはよう」
「…はい?」
至って普通の反応だった。
…いや、普通ならここでおはようなんて言葉は出ないんじゃないのか?
「もしかして幽香…」
「貴方の慌てる顔…虐め甲斐があるわね」
悪戯っ子のような笑みを浮かべて彼女は言った。
やっぱり…どうやら初めから俺は彼女の手の上に踊らされていたようだ。
「…幽香」
「さて、無事も確認したし。貴方にはもう一働きしてもらおうかしら」
…嫌な予感が走った。
いや、それは予感じゃなくて――確信。
「花符――」
予感的中。
彼女の周囲には花びらが舞い上がっている。
その花びらをどうするかは…予想がつく。
「『幻想郷の開花』」
ボロ小屋に穴が開くも構わず、俺は逃げる。
弾幕ごっこなら外でやってくれ!
と心の中で叫ぶが、きっと無駄なのだろう。
「ほらほら、避けてみなさい」
その舞う花びらの中心で、彼女は女王様のような高らかな笑みを浮かべていた。
ちくしょう…そんな笑顔が大好きだぜ!
花びら弾を身体中に打ち込まれながら、俺はそんな事を思っていた。
4 造花の贈り物
時が過ぎるのは、まったく持って光陰矢のごとしだった。
冗談じゃない。
楽しい時は過ぎる。
「さーて、と…」
向こうの世界から流れてきたらしい、香霖の本を読みながら
俺は手元を動かす。
クリスマスが近い。
友達とつるんで遊んでいた時にはなかった奇妙な感覚が
今、心の中にある。
元の日常に戻る気はさらさらない。
…ここにはここで十分面白いものがあるからだ。
幽香に虐められたり、幽香に虐められたり…幽香に虐められたり……?
…あれ俺、Mじゃないよな…?
「あ、やべぇ…ミスした」
回想している間、手元の作業が間違っていたらしい。
幽香に出会ったときはおかしかった。
初めて会ったのは、博麗神社。
その時、友好の証かどうか分からないけど、貰ったものがある。
向日葵の造花(レプリカ)。
そうして言い放った台詞も印象に深い。
『貴方には向日葵が足りないわ。でも本物は勿体無い。
だから偽者をあげるわ』
結局何が言いたかったのかはよく分からなかった。
それが今はこうしてちょっとだけ、あることに役に立っているのはマシなのか?
それにしても難しい。
女はよくこんな事が出来る…。
四苦八苦しながら進める。始めたのが恐らく前の月だったから…
一月くらいだろうか?
一日中これに費やしていた時もあるが、本当に難しい。
目標の半分よりちょっと上に到達していない。
こんな状態で、本当に出来るのだろうか?
「…徹夜には慣れてるし、きっと何とかなるだろ」
今の俺に出来る事は信じる事だけだった。
5 メリークリスマス
クリスマスパーティー。
そんなのは仮の姿。中身はドンチャン騒ぎの宴会に近かった。
「それじゃ、メリークリスマスだぜ!」
『メリークリスマスー!』
女が三人寄れば姦しいと言うが…一体十人以上の女が集まった時には
何と言えばいいのだろうか?
答えは簡単だった。
一時間後、姦しい
二時間後、おぞましい。
三時間後、盛者必衰。
四時間後、栄枯盛衰
五時間後、(一部を除いて)死屍累々
「…これ以上付き合ってたら、冗談じゃない」
明らかに酒の量が、俺の許容量を超えている。
だから、逃げた。
どうしようもなくて、逃げた。
だけど後悔はしていない。
…香霖が褌をしている姿なんて、おぞましいものは二度と見たくない。
単に酔っ払っているということを信じたい。
もし、あれが本性だったら、俺は二度と関わらないぞ…。
6 花の妖怪の奇妙な贈られ物
会場である紅魔館の外に出て、俺はボーっと湖を見る。
呑気な妖精たちが飛んでいる。
冬だからこそ、活性化しているのかもしれない。
「ここにいたの?」
「あぁ、逃げてきた」
絶対に戻りたくない。
あの中は…地獄だ。
「お前は居ても変わらないだろ、妖怪さん?」
「そうね」
夜中でも傘を差すのは止めないのか。
そのまま、俺の隣に腰を降ろした。
「ほら、これ」
渡すべきだったものを彼女に渡す。
紙袋で渡したから、何が入っているか分からないはずだが。
「何を作ったのか知らないけど、何で作ったの?」
作ったものという事はバレていた。
「『作る』って心の中で思ったときに、既にその行動が終わってたんだ」
深い意味はない。
ただ送り付けたかっただけだ。俺の一方的な想いを。
「まさか、マフラーに向日葵柄とはね」
中身を開けた彼女が呟く。
そう、俺はあの造花と本を参考に、必死こいて編み上げたのだ。
無論、慣れない事はするもんじゃない、と深く心に刻みこんだ。
「ありがたく、受け取っておくわ」
「モノのついでだ言っておく…俺は…お前が好きだ」
「あぁ、そう」
えらく淡白な反応で、俺は嬉しい。
希望とか理想とか憧れとか、そう言うの全部勘定して
俺はこいつが好きになったんだ。
「ありがとう、これからよろしく」
抱きついてきた彼女からは、季節外れの向日葵の匂いがした。
「メリークリスマス」
「メリークリスマス」
後書き
===館の裏===
幽香のクリスマス物を書きたいんですが構いませんね!
===館の裏ここまで===
クリスマスが今年もやってくるので書きました。
クリスマスを祝うには早すぎるが…フライングだ!
花やっていると、やっぱりどうも幽香が一番好きなキャラかもしれません。
ほら、目茶苦茶に余裕のある態度とか…茶目っ気とか…
ああもうなんで伝わらないかなぁ
…この、ド低脳がァーッ!
…ゴメンなさい>orz
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最終更新:2010年05月11日 16:12