映姫1
1スレ目 >>123-124
「本当は、ずっと黙っていたかった」
けど、それは敵わない事も、知っていた。
だって彼女は…嘘を暴く、地獄の最高裁判官なのだから。
「きっと、これは赦されない罪だから」
彼女の眼を見つめて、ただ言葉を紡ぐ。
折れてしまいそうな心をなんとか繋ぎ止めながら。
偽る事など、この瞳の前では出来なかった。
「俺は、貴女が好きになりました。貴女を…映姫さんを、愛しています」
それだけしか、言えなかった。俯いてしまう。
…彼女の言葉など、簡単に予想できた。
彼女は裁く者。俺は裁かれる者。圧倒的上位者と、下位の存在。
ただの一刀で切り伏せられ、この恋はきっと…終わる。
そう、思っていた。
「…私があなたを裁く事があるのならば」
静かに、映姫が口を開き、語り始めた。
「あなたを非と裁き、地獄へと落とします」
…そうだろうなと、自分でも思った。
ただ、今は俺に下される言葉を聞くのが大事だ。
俺は俯いて、彼女の言葉を待った。
「地獄へ落とされぬよう、あなたは善行を積まなければなりません」
「一体…何をすればいいんですか?」
お婆さんを背負って横断歩道を渡ればいいのか?
拾ったお金を交番に届ければ?
……違う誰かを、愛すればいいのか?
す、と彼女の手が、俺の頬に伸びた。
その手に導かれるように、俺は顔を上げた。そこに見えたのは…
「もっと…私を愛しなさい。思いを言葉にして、私に伝えなさい」
彼女の……映姫の、優しい笑顔。思わず胸が一杯になる。
「………映姫さんっ!!」
思わず、その体を抱きしめてしまう。腕の中の彼女の体は、信じられないくらい華奢で…
「い、痛い…気持ちはわかりますが、少し…弱めて…」
「あっ!?ご、ごめん…なさい……」
言われて、少し力を緩めた。けれど…抱きしめる腕を、放したくはなかった。
「暖かい…ですね」
俺の腕の中で、彼女はポツリと呟く。その声は、どこか幸せそうな響きがあった。
「最後に一つ、あなたが出来る最高の善行を教えましょう…」
「………なんですか?」
この彼女のぬくもりがある限り、俺はどんな事でもやっていける。
そう、信じられた。
「……私の事は、ただ映姫と…そう、呼びなさい」
なんだかミニ裁判みたいになった。告白でも何でもねぇよ…orz
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1スレ目 >>140
上の後日談
「…遅いな」
腕時計を見る。もう30分も映姫は遅れていた。
こうまで遅いと何かあったのか、待ち合わせの場所を間違ったのかと心配になってくる。
普段の彼女ならば、遅れるとは欠片も思わないのだが…
「やっぱり、デートなんてどだい無理だったのかな」
ただでさえ忙しい彼女なのだ。無理を通り越して無謀とも言えるかもしれない。
地獄へ運ばれる幽霊の量はまだ多いらしいため、仕事も過密。
そんな時にデートなんて、やっぱり迷惑だったんじゃ…
「はぁ、はぁ…お、お待たせしましたっ…!!」
ばびゅ~んという音までさせながら、映姫が俺の目の前に着陸した。
服装は仕事着のまま。しかも全速力で飛んできたのか、息が死にそうなほどに上がっている。
「お、落ち着け。慌てなくていいから、まず深呼吸…な?」
「はぁ、はぁ…は、はい…すー……はー……」
胸を軽くとんとんと叩きながら、映姫は言われるままに深呼吸をする。
顔の赤みも少しずつ引き、呼吸も穏やかになっていく。
…ちょっとだけ、朱に染まった顔をみていたかったのは内緒だ。
「…落ち着いた?」
「はい…落ち着きましたが…その………ごめんなさいっ!!!」
まるで頭で竹が割れそうな感じで頭を下げる映姫。
いきなりだったので一瞬呆然となってしまう。
「時間を決めたのは私なのに…遅れてしまって。私自身の手で自分を地獄に落としたい気持ちです…」
「いや…お仕事大変ならしょうがないよ。それより、出てきて大丈夫なの?」
「はい。午後からは休暇を取りました。あなたは何も心配しないで下さい」
どうやったら閻魔の仕事が休めるのかはわからない。
…けど、そうしてまで俺との約束を護ってくれた彼女の心が、とても嬉しかった。
「そっか。じゃ…行こうか、映姫」
彼女に向かって、俺は手を差し出した。
「はい…行きましょう」
彼女はその手にそって触れて…そしてぎゅっと繋いだ。
如何な苦しみ、悲しみが待ち受けていようとも、もう俺は恐れない。
どんな大きな溝だって、この温もりがあれば。
…余談だが、地獄では―
「ふぇーん…映姫さま、どこ行っちゃったんですかぁ?」
幽霊の山にてんやわんやする死神の姿があったとか。
彼女が座るべき席には、卒塔婆が一本机に直でめり込んでいるだけ。
そこには一枚のメモ用紙が貼り付けられていた。内容は一つ。
『外出します』
これだけだった。
…告白して終わり、じゃないと思うんですよね。その後もあってこそ、かな?
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1スレ目 >>254-255
「あなたのために思いを込めて、一晩かけて作りました!!
好きです! どうか受け取ってください!!」
男に差し出されたもの、それはとても丁寧に作ってあり、絵柄のセンスもよく、
少し明るめの色にもかかわらず嫌味を感じない、そんなずっと使いたくなるような
本当に使い手のことを考えて作られた心のこもった座布団だった。
四季映姫はこめかみを押さえながら一度目をつぶってから再び目を開き、男をよく観察した。
冗談を言っているようには見えない。
彼がどれだけ本気かはこのすばらしい座布団を見ればよく分かった。
男は顔を真っ赤にして照れながら、しかし目をきらきらさせて返事を待っている。
こんなに判断に迷ったのは映姫には珍しかったかもしれない。
映姫はできる限り冷静を保って答えた。
「あなたは…、あなたは、周りの冗談を真に受けすぎる…。名は体を現す、
呼び名というのはその人の人生を決めるもの。
呼び名に存在意義を求め、大きく生き方を変えたものもいることを知りなさい。
あなたに限りませんが…もう少し悪乗りを抑えること。
それが今あなたが積める善行よ」
「そ、そんな…山田様!」
「だーかーらー、山田じゃなくて、ヤマ、ザナ、ドゥ! もう一度言うわよ?
ヤマ、ザナ、ドゥーーー、、、、、えー、コホン。
だいたい、ヤマザナドゥは私の役職名です。私の本名は四季映姫、
言ってごらんなさい。シキ、エ、イ、キ」
「エイキ…映姫様」
「そうです、それが分かったら帰りなさい」
男は、座布団をもって肩を落として帰りはじめた、しかし、なぜかそわそわしはじめた映姫は
男が門をくぐる前に呼び止めた。
「待ちなさい、その座布団…、それは受け取ります。
あなたの気持ちが本物であることは分かりました。
ならば、せめてその気持ちだけでも無駄にしないこと、それが私の善行に思います」
「映姫様! ありがとうございます! 受け取っていただけるだけでうれしいです」
「ありがとう…。これは、大切に使わせてもらいます」
「はい!」
男はとても澄んだ笑顔をした。
「……」
「…? 映姫様?」
「い、いえ、そ、そうね、次、次に来るときはもう少し人として成長してから来なさい。
それもあなたにできる善行の一つよ」
「はい、必ず!」
男が見えなくなるまで映姫は見送ると、はぁ…と大きなため息をついて肩を落とした。
「あの騒がしい人たちにかかわったのがいけなかったのかしら…でもこの座布団、
本当に使いやすそう…。たまにはこういうのも、よいかもしれません」
映姫は自分用の大きな椅子に座布団を乗せた。
←← 足 蛇 ←←
。たっ座に子椅くよい勢らがなめら赤を顔し少は姫映
ーーーーーーーーーーーーーブ
……
!!ンーャシガ
……様季四、し
。たしと落をみの湯たいてっ持てしに白蒼を面顔が町小
!!ンーァウ、んーせまていきも何、んせまて見、私
たっさり走らがなき泣は町小
!すまし殺が私ろしむ、えい、定決獄地、ハハ、ハハア
!!ーーーーーーーーーーーーーーーーーいさなてっ待
。話の別たまはのたっ徨彷を林竹てめ求を薬の莱蓬が男
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1スレ目 >>308>>310
俺「山田様、私の嫁になること
これが今の貴方が積める善行よ。」
山「貴方の語尾が気になるわね、
貴方が男性なのか女性なのかはっきりさせてあげるわ
だからまず、もう少し私のほうに寄りなさい、さぁおいでなさい」
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1スレ目 >>334
「貴方は地獄行き。とりあえずは永遠の劫火に灼かれては蘇る事を1万回続けなさい」
「お許しを!閻魔様!せめて地獄は!地獄だけは勘弁を!」
許しを乞う死者の魂へ答える声ははなはだ冷たかった。
「閻魔の採決は覆らない。過去に悔やまなかった分、今悔やみなさい」
側に控えていた獄卒は、哀れにも慈悲を叫ぶ魂魄を力任せに掴み、地獄の入り口へ放り投げた。
「ヤマザナドゥ様。本日のお裁きはこれまでのようです」
勤めを果たした獄卒は跪き、頭を垂れる。
本日の裁判はこれまで。裁判長には暫しの休憩の時間が、獄卒には罪人を責める時間が始まる。
しきたり通り、獄卒は閻魔が奥の間に消えるまで頭を垂れる。
閻魔は、労いの言葉すらかけず、獄卒もそれを期待しない。
獄卒と閻魔では、役職もそれにかかる責任も違う。お互いに会話する必要もないし、会話をする資格もない。
だが、今回は違った。
「あれから…私は貴女の役に立てているのでしょうか?」
今まさに、奥へと消えんとした閻魔の動きがぴたりと止まった。
「徳が高い癖に、自ら獄卒の罰を受けたいという奇特な死霊が、大昔にいましたね。確か」
獄卒は罰である。
獄卒は罪人に責め苦を強いる。強いなければならない。
惨たらしく長く罪人を苦しめ、反応を示さなくなれば、別の責め苦へ切り替え、再び罪人達に絶叫の合唱を強いる。
獄卒は自らの良心から、永遠に責め苦を受ける罰である。
「その奇特な死霊は、奇特なことに、今の今まで獄卒になった事を悔いてはいないそうです」
獄卒は顔を上げた。視界には閻魔の後ろ姿が見えるだけで、その表情までは判別できない。
「おかしな話ですね。理由を聞かせて頂いて構わないですか」
獄卒は少し考える素振りを見せたが意を決して答えた。
「愛するヤマザナドゥ様と同じく、罪を裁くという事の"痛み"を分かつことが出来るからと…」
「惜しい、20点」
「20点とは、惜しいのですか?」
「もっと気の利いた口説き文句を考えること、それが貴方の積める善行ですよ」
そう言って振り返った閻魔の顔には、まんざらでもなさげな微笑みがあった。
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1スレ目 >>473>>476
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_ソヽ/`、シi
_>=ヘ 山/=<,
. ((ん'ノノルレム))
_ソレリ ゚ ヮ゚ノリ(_
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(ン::::/:::l::ヽ
`~i,ンT,ノ~´
廃業したっていうのは小町の嘘よ。本当はあまりにも仕事をサボってばかりだから私がクビにしたの。
それと最後に一言。小町、私にもいい男を紹介すること。これが今の貴方が積める善行よ。
…………う、ううっ……ぐすっ……みんな私をおいて結婚しちゃったぁ…………。寂しいよぉ、辛いよぉ、私だけ行かず後家になるのはいやだよぉ。
このままずっと仕事の毎日でお婆ちゃんになっちゃうのなんていやぁ。バカ、バカ、小町のバーカ!勝手に男なんか作って辞めやがって。
なんで私ばっかり独身なのよ。いいもん、このまま処女で一生終わっちゃうもん。恋なんかしないもん。みんな死んじゃえーッ!
(映姫様は泣きながら貴方の審判そっちのけで走り去っていきました。どうしますか?)
→後を追う
とりあえず待つ
今がチャンスとばかりにここから逃げる
476 名前: 名前が無い程度の能力 投稿日: 2005/09/27(火) 09:28:45 [ Dz.sD8Z6 ]
(映姫様は泣きながら貴方の審判そっちのけで走り去っていきました。どうしますか?)
後を追う
→とりあえず待つ
今がチャンスとばかりにここから逃げる
追いかけて慰め、励まし、笑い合う。もしかしたらこれが積める善行なのかもしれない。
だが追えなかった。何を言おうと今の彼女は聞く耳を持たないだろうから。
冷静になって帰ってきたところを慰めてみようと思う。
――1日が経った。
彼女の帰ってくる様子は無い。特に何とも無し。
居場所も特定出来ているらしく、まだ1日目なのでもう暫く待つ事にする。
――3日が経った。
彼女の帰ってくる様子は無い。少しイライラして来た。
迎えを全て地獄送りにしたらしい。閻魔様ってのは結構やる。
――1週間が経った。
彼女の帰ってくる様子は無い。偶に貧乏揺すりをするようになった。
審判を待つ列の距離が川を越えたらしい。
半月が経った。
彼女の帰ってくる様子は無い。気が付くと壁を叩いている。
夜雀曰く、後方で暴動が起きたらしい。俺には暗くて何も見えなかった。
1ヶ月が経った。
彼女の帰ってくる様子は無い。漫画の様な青筋が立てられるようになった。
……我慢の限界だった。
彼女の部屋の前に立つ。
「山田ぁッ!出てこぉぉぃッ!!」
扉に向かって叫んでみるも中からの返事は無い、
無駄を承知でノブに手をかけてみた……開いてる?
中に入ると其処は闇、仕方なく持っていたたいまつに火を付け奥へ進む。
1歩1歩慎重に歩を進めていった。
一体どの位歩いたのだろうか、映姫様の姿は一向に見えてこない。
ああっ、火が…。頼みの綱の火が消えてしまった。
暗い!見渡す限り真っ暗闇だ!
私は明かりを求めて手探りで移動しようとした。
ゴンッ!その途端足が滑り、壁に強烈に叩き付けられてしまった。
ざんねん! わたしのぼうけんは ここで おわってしまった!
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1スレ目 >>481
えーきさま結婚してくれ
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1スレ目>>491
「映姫、俺と一緒に無職やらないか?」
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2スレ目 >>136
静粛に! 只今より、映姫裁判長の判決文を伝える!
主文!「GJ!」
なお、職人諸氏はこれから尚一層の努力の元、己の萌えを一つでも多く形にすること!
また、まとめ人殿については、決して無理をせず、体調を慮った上でもろもろの作業を行うこと!
そして、読む側のものも己の萌えを完全燃焼させ、叶うならば書き、さにあらずとも、
多くの同志とともに職人を支え、ともに萌える事!
以上が、それぞれに出来る善行であるとのお達しである!
「…って、こんな感じでいいのか?判決文の読み方って」
「まだ人間界の裁判所の癖が抜けきってないようね。
あなたには私のサポートをしてもらうんだから、
一刻も早くこの法廷でのスタイルを覚えること、
そのための努力を惜しまず、それからも向上心をなくさないこと。
それがあなたに出来る善行よ、わかった?」
「了解。がんばるよ」
「ん。きたいしてるからね」(ほっぺたにキス)
「…。
よおーし!やるぞぉーっ!!」
…こうですか?わかりません!
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>>135
私は幻想郷の裁判長。
名前は四季映姫。
先日、酷く傷つく事件があった。
いや、現在進行形で続いている。
「う、ううっ…あの二人っ!」
あの二人は本当になんというかもう。
急に殊勝な態度になって…うぅ。
「別に、私だって好きで一人身やってるわけじゃないというのに…」
と言うか一人身じゃない! 一人身じゃないよ!
ちょっとした訳があっていろいろその、あの。
事の発端は、ある一人の男だった。
名前は…なんと言っただろうか。忘れた。
ともかく、その男が、ひょんなことから私の部下である、小野塚 小町に会ったことから全て始まったのだ。
その男は、――どう理由付けしたかは知らないが――その日から毎日小町に会うようになっていった。
別段、そこはどうでもいいことだ。
なぜなら、今まで仕事をサボり気味だった小町が、早めにその日のノルマを終わらせるようになったからだ。
何故か、――まあ後で判明したが――送ってくるのは変人の霊ばかりだったが。
とにかく。
仕事をしっかりこなしてくれるなら、口を出すことも無いだろうと思い、放置しておくことにした。
彼が小町のところに来るようになって1週間ほど経った。
どうも、小町が変人の霊ばかり送ってきたのは、彼の家の周りの花を処理するためだったらしい。
小町も隅において置けないものだ。
私は今日もいつもと同じ場所で2人をうぉっちする。
のぞき? いえいえ、これはもしもの時にいつでも出て行けるように…です。反論は許しません。
自分の心に理由をつけて、うぉっち再開。
よく見れば、今日は―――もとい、今日に限らず小町の様子が少しおかしい。
よく見なくてもおかしい。顔が赤い。
ここからでは会話が聞こえないのがもどかしい。もっと近づこうかしら。
そう考えた矢先に、事件は起きた。
男が、いきなり小町の胸を鷲掴みにしたのだ。
これは許せない。
すぐに出て行こうと思ったが、小町が鎌の柄で男を何度も打ち付け始めたので、別の意味で焦って出ていった。
あれじゃ呼吸も出来ないだろう。
頭を引き抜き終わった男に自己紹介を済ませ、男の様子を観察する。
男はボロボロだったが、さして反省の色が見られなかった。
説教が必要なようだ。
少女弾幕中...
驚いたことに、男は私の裁きを避ける事をせず、全てまともに受けた。
大事な事は、心のどこかでわかっているのだろうか。
これ以上ここにいるのは野暮というものだ。
私は二人の元を去った。後は二人の問題だ。
流石に私も、人の恋路を邪魔するような真似はしたくない。
それから数週間後。
最近、幽霊がまた送られて来ない。
何かあったのだろうかと小町の様子を見に行くと、大変なことになっていた。
「…………来る…………来ない…………来る……………………来ない…………」
…………ぶちっ…………ぶちっ…………ぶちっ…………………ぶちっ…………
これはひどい。
小町は、そこら中に咲いている彼岸花で花占いをしていた。
ただ花占いをしているだけならいいのだが…。
小町の周りは薄墨をぶちまけたかのように暗く見えた。
つまりこれは…、例の彼が来なくなったのだろう。
全く、何故ここの者は私の裁きを正しく理解してくれないのだろうか。
こうなっては仕方が無い。
力ずくでも彼を小町に会わせなくては。
私は、彼の家へと飛んだ。
一時期、彼の家の周りはラフレシアで覆われていたという。
そして今は…。
「これはひどい。」
つい、そう口に出して言ってしまうほどであった。
彼の家の周りは、幻想の毒花、ゲルセミウム・エレガンスが満開になっていた。
両者の問題解決のためにも、ここは早く会わせなくては。
そう思いドアに手を掛けようとしたところ、
「はっ…さ、サボテン?」
サボテンがドアを覆っていた。
どうやって入れと言うのか。いっそ吹き飛ばそうか。
少し危険なところに思考が踏み込んだところで、なんとか無事に入れそうな窓を発見した。
仕方ない、ここから入るしか。
彼はのほほんとした顔でそこにいた。
全くのんきなものだ。
この場合、事情はついてから説明した方が早いだろう。
有無を言わさず彼を引っ張り出し、私は塚へ戻った。
小町の惨状を見て、彼もそれとなく察してくれたようだ。
説明は短い方がいい、好都合だ。
私は、早く小町のところに行くように諭し、傍観者にまわることにした。
「あたいは、あんたが大好きだ!!
あんたが会いに来てくれないのに、もうこんな仕事やってられるかっ!!!」
コマチー!?
上司の前でそれは無いですよー!?
だがここで説教など始めたら今までの行動は全て水の泡だ。
抑えて、抑えて。
「……俺だって、理由なんて無くても、ここに来たかった!!
小町と話をするのが楽しかった、小町が笑うのが嬉しかった、小町のゴム鞠のような胸をただ眺めるのが好きだった!!
俺だって、小町が大好きだ!!
俺が人間じゃなければ、お前を嫁にして×××を×××に××××して、あまつさえ××に××××したいくらいだっ!!!」
くぁwせdrftgyふじこlp;
確かに正直に、とは言ったけれど、ちょっと正直になりす…ぎ…
私の意識はそこで途絶えた。
目が覚めると、彼は小町の膝枕で寝ていた。
よく見るとその近くに彼の体が真っ二つになって転がっていた。
つまり、小町は彼を死神にしたらしかった。
「人間じゃなければ~」の件だろう。
彼は、目が覚め説明を受けたときは動揺していたようだが、すぐに順応したようだった。
二人が幸せなら、それでいい。
私は、祝福の言葉を二人に投げかけた。
「……一件落着ですね。一時はどうなる事かと思いましたが」
祝福ばかりもしていられないが。
「何はともあれ、めでたい事です。さて、貴方も死神になった訳ですから、これから覚える事がたくさん……」
「……まだいたんですか、映姫様」
「え?」
待て、その反応はおかしい。
「そうですよ。あたい達、これからもっとイチャイチャするんですから、さっさと帰って下さい」
「え、え?」
ちょ、ちょっと、二人とも少しは私に感謝したって…。
『……………………』
お姫様抱っこの体勢のまま、二人にジト目で睨まれる。
「う……あ、貴方たち、上司に向かって何て態度を……」
「おい見ろよ小町。あれが外の世界で言う所の『行かず後家』だ。
これから幸せな俺たちに嫉妬して、一人身の憂さを存分に晴らす気だ」
「う、うう……」
あああぅうううぅうぅ…。 な、なにを…
「ああ……あたい達、これから謂われの無い難癖を次々つけられて、鬼上司にネチネチいびられるのね……」
「う、う、う……」
あぁぅぅううぁああぁ? いますごいひどいこといわれたきがするよぅ…。
「うわああああああああんっっ!!!
羨ましくなんてないわよおおおおおっっ!!!
お前ら二人とも死んじまええええええぇぇぇぇぇぇ~~~~…………(フェードアウト)」
耐えられなくなって私は捨て台詞を残し、その場を高速で去った。
今考えると閻魔らしからぬ台詞だったが致し方ない。
そして、今。
未だに、私はあの二人の陰湿なイジメにあっている。
何かあるたびに私に見せ付けるように…あの二人…あの二人…っ。
「羨ましくないなんて言ったけど羨ましいわよバカ!
羨ましい羨ましい羨ましい羨ましいうらやまし」
「落ち着け」
「ひゃんっ!?」
私としたことが周りが見えていなかったらしい。
声の方向に振り向くと、そこには
「よっ、映姫。久しぶり」
「あっ…○○!」
待ち望んだ人がいた。
「○○! 貴方、仕事はどうしたのですか!」
気持ちとは裏腹に、私の口からはそれを咎めるような言葉が出た。
それもそのはず。
彼は、ここ幻想郷の閻魔のうちの一人なのだ。
こんなところでサボっていていいはずがない。
「生憎、こっちの地域は霊が少ないようでね、今日の仕事は終了だ。
…それともあれか? 来て欲しくなかったのか?」
その聞き方は、卑怯だ。
「そ、そんなわけ…ないじゃ…ない、です…か」
傍目から見ても私の顔は今真っ赤になっていることだろう。
照れ隠しのために、私は彼に説教をすることにした。
「そ、そんなことより! 貴方はそう、最近ご無沙汰過ぎた」
第一声は思いっきり裏返った。失敗だ。
ついでに言い回しがちょっとあれだった気がするが、構ってられない。
「人の気持ちを考え、私を寂しがらせないこと! これが貴方に出来る善行です!」
あれ。今とんでもないことを口走った気が。
「ははは…まあそのなんだ、最近は忙しかったんだ」
「さっきと言ってることが違います!」
「それももう、今日で終わりだったんだがな」
「…はい?」
言っている意味がわからなかった。
忙しいのが今日で終わり?
「いや、俺は今日限りで閻魔を降りることになったんだ」
「な、なんですって!?」
寝耳にミミズ…じゃない、水だった。
「なんでそんなまた急に!」
「いやな、仕事の合間を縫ってお前に会いに来る、今の生活に嫌気が差したというか」
「そ、そんなに私に会うのが嫌なんですか!」
「そっちかよ!」
「じゃあどうして!」
「だからさ、もっとお前のそばにいたいって思ったんだよ」
「えっ…」
「でだ、俺は明日からお前の補佐として働くことになった。そうだな、『左遷』ってとこか?」
「そ、それじゃ」
「ああ。これからよろしく、映姫」
彼はそう言うと、にっこりと微笑んだ。
「ところで映姫」
「なんですか」
「さっき、何かずっとブツブツ言ってたとき、もの凄く怖かったぞ」
やっぱり見られていたらしい。恥ずかしい。
「どこから見てたんですか…」
「えーっと…『好きで一人身』…のあたり?」
「ほぼ全部見てるじゃないですか!?」
全部見られていたのかあれを全部見られくぁwせdrftgyふじこlp;
「お、おい映姫! 大丈夫か!?」
彼の悲鳴を遠くに聞いた。
「あー…映姫? 大丈夫か?」
次目が覚めたとき、私は彼の声を頭上から聞いた。
…もしやこの体勢は。
「ひっ…ひひひ膝枕っ!」
「あー…その、つい」
やっぱりそうだった。
私は彼の膝枕で寝ていたのだった。
「貴方と言う人は…」
「いや、なんと言うか罪滅ぼしと言うか。…嫌だったか?」
だから、その聞き方は、卑怯だ。
「いえ…、そんな、むしろ嬉しい、です」
「そっか。…さて、じゃあそろそろ」
「待ってください。…その、もうちょっと、このままで」
「ああ、わかった」
今はこのまま、彼に甘えていたい…。
「あらあら映姫様、随分とらぶらぶなご様子で」
「ほんと、そうだねぇ」
その雰囲気も結局長くは続かなかった。
「ギャー!?」
私は声に驚き跳ね起きた。拍子に彼に思いっきり頭突きをかましてしまったがそれどころではない。
「あががががががが…」
彼は舌を思いっきり噛んだ様で地面に伏して悶えていた。後で謝ろう。
「あああああ貴方達っ! 仕事はどうしたんですかっ! ていうかいつからっ!」
「さっきも誰かに言ってたなあそれ」
「そこからいたんですかっ!?」
「いやー、顔を赤らめる映姫様なんて、珍しいものも見れて良かった」
「良くありません! 待ちなさい!」
「待てと言われて素直に待つ奴は」
「いないねぇ」
全くもう、この二人は!
少しは浸らせてくれてもいいのに。
まあ、いいだろう。
幸せに浸る機会なんか、これからいくらでもある。
これからずっと、○○と一緒なのだから…。
備考:後書き忘れたのでここで。
2スレ目 >>222氏の小町のものを読んで、思いついたもの。
引用多いですね、すいませんorz
視点変わっただけのとこが多々。
こういうのって普通作者本人がやることだよなあ、と思いつつ。
BGM 赤と黒
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>>309
今書いているのが年内に出来そうにないので
先にえーきんにお歳暮を贈っておこう。
クリスマス?そんなもの知らない!
っ「永谷園お茶漬けセット」
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最終更新:2010年05月11日 13:49