映姫4



うpろだ221


六十年毎の、一周期。
現世も冥界も魂が溢れ返り、季節外れの花が咲き乱れる時。

彼女――四季映姫・ヤマザナドゥに取っては、通過儀礼のようなものだ。
無縁塚でサボる部下の尻を叩き、現界に赴いて人妖に『自称』有り難い説教を説いて行く。
そんな何時も変わらぬ、閻魔の日課だ。

だが、今回の開花騒動は、閻魔の元にひとつ、違う花が届く事となった。



「――映姫様、お客様ですよ」
「は?」

 是非曲直庁。
 時代の流れに対応して、変化を遂げた、地獄の公的機関。

 今日も閻魔と死神が、日頃のお勤めをこなしている場所。

 そんなところに来る客人とは、大変珍しいものであるが、

「まだ花は全て散っていないというのに……また花妖怪ですか」
「違いますって」
「では八雲の隙間妖怪」
「のんのん」
「まさか巫女ですか」
「あれが来れたら地獄のあり方を考え直さなきゃ行けませんよ」

 此処、幻想郷部署の客となると、大概の場合は迷惑を担いで現れる類である。
 寛大を持って成る閻魔でも、渋い顔になるのは否めない。

「では、冥界の?」
「だーから違いますって」

 が、彼女の部下は何故かニヤニヤと笑っている。
 嫌味っぽさを隠しもせず、不遜なほどに笑みを浮かべる。

「……小町、では誰なのですか」
「いえ、正しくは――新任の閻魔なんですがね」
「新任?」

 これは珍しい、と目を見開く。
 十王全てが閻魔を名乗るようになってから、新任が来ると言うのは初めての事だ。

「あれ?待って――十王に欠員は出ていない筈では?」
「はい。ですが人手不足で――この度、試験的に地蔵業務を閻魔業務を分担制にするそうです」
「……確かに、現状の業務では、説教廻りは時間外勤務ですが」

 だが、あれは自分が好きでやっている事だ。おいそれと他人に一任する気にもなれない。
 そんな表情が顔に出たのか、小町の笑みが益々深くなる。

「いいじゃないですか、働き詰めは身体に障りますよ」
「いえ、しかし――」
「ところで映姫様」

 映姫の反論を遮るように、小町が話題を変えに来た。

「もしかして――覚えてらっしゃらないのですか?約束」
「何の事です?」

 その返答に、小町の腰が砕けた。

「……ま、まさか本当に忘れてらっしゃるとは……」
「え?ご、ごめんなさい小町、私は何のことだが――」


『――小町さん、こりゃ百聞は一見にしかずの方が良さそうだ』



 そこに、事務所の扉越しに響く声。

「……そーだね、入りな。んでこの鈍感なワーカホリックに一発くれてやりなよ」
『ははは、相変わらずなのか。老けるぞ、映姫』
「んなっ」
 本人を前に、部下と揃って不遜の極み。
 無論、そこに物申さぬ四季映姫ではなく、机から立ち上がって檄を返す。

「同僚とはいえ失礼なッ!?何者です!?」
『では感動のご対面と行きましょうか』

 突きつけられた卒塔婆の前で、扉が開き――


「どうも。この度着任致しました――」

 現れたのは、一人の男。

「――って、もし、映姫王?」

 その姿を見て、映姫が固まった。
 パーフェクトフリーズもかくやの硬直である。

「あー、この服?どうよ小町さん、やっぱ変か?」
「ま、まあ確かに黒スーツに黒ハットの閻魔なんて、ハイカラが過ぎるたぁ思うけど――」

 そうではない。そうではないのだ。

「あ―」

 映姫の口から、声にならない声が漏れる。
 見開かれた瞳から、涙が溢れ出す。

「あなた――は」

「――はい」

 漸く搾り出された声に答えるように、男が歩み寄り、ハットを取る。

「百から先の、其れこそ数え切れぬほど時を刻みましたが――
 漸く、貴女の隣に、立つ事が出来ました」

 その声と顔を、映姫は覚えていた。
 何年前かはとうに忘れていても、覚えていた。

「ほんと、どの位になるんだろかね。
 全く、あたいより偉くなっちまってさ――おっと、口が過ぎましたな」
「今までどおり、○○で良いさ。で――何を泣いているんですか」

「――すみませんでした――忘れていてしまって」
「さて、待てとは言いましたが忘れるなとは言ってませんよ?」
「はい――待ちました。随分と、長く」
「これからは、人手不足に悩む必要もありませんよ――」
「はい――」


 幾星霜を、どれだけ重ねた昔だろうか。
 その時、一人の阿呆が居た。

「楽しみですな。一緒に茶を飲むのが」
「はい―」

 長き裁判の結果、得た無罪の判決。
 それをとんでもない理由で突っ撥ね、自ら地獄の門を潜った不心得者である。

 その理由を、その男は地獄の門の前で、こう言い放った。

「漸く――惚れた女の寝顔を、公然と拝む事が出来ます」


 曰く。
『惚れた女の紐のままでは、未練にしたって耐えるに偲びん』と。


「そっ―あなた、そんな事を覚えてたんですか!?」
「無間地獄は何も無い所でしてな――思い出を掘り返す時間には事欠きませんでしたよ?
 それはもう涎の雫の長さまでくっきrぐぉ」

 男の鳩尾を抉る卒塔婆。
 それを振るった映姫の表情は、照れ隠しの憤怒が被さっていた。

「――変わらないのね。あなたは」
「――あの無の中では、変わらぬものしか残りませんよ――貴女への想いとかね」
「これほど不純な閻魔も居たものですかね」
「これほど純粋な閻魔も居ません」

 それは昔、遠い別れの前にも交わしたやり取り。
 それを尻目に、やれやれと部下は退散を始めた。


「――さて、部下の厚意に預かり、敬語は止めにしようと思うんだけど」
「そうね。でも公私は白黒付けましょうかね」
「今言う事じゃ無かろうに」

 昔と違う事は、ただ一つ――


「ただいま。映姫」
「ええ。おかえりなさい、あなた」

 いつでも、寄り添う事が出来る距離にいる事だった。







「――お二人さーん、そろそろ新任挨拶の時間ですよー」


 玄関を叩く音と、小町の声。

 世にも珍しい閻魔の夫婦、最初の朝は、そんな無粋な目覚めから始まった。

「……案外、ロマンチックにはいかないな」
「……そう、ね」
 同じ寝床から、同じ柄の寝巻きで、気だるげに目覚める。
 これだけ見れば充分にロマンスなのだが、何分安月給ゆえの共同宿舎。
 玄関からの声が直に届く程度には狭かった。
 映姫が羽織った大きな男物のシャツも、その寝乱れた髪も、この状況では色気ないものだ。

「……でも、一緒ってのは良いな」
「ええ。私もそう思うわ」

 それでも。

「おはよう、映姫」
「おはようございます、あなた」

 この二人は、幸せなのであるが。



「しっかし、ここに二人は狭い」
「寝床は兎も角、他は通るのも億劫ね」

 朝の洗顔は、狭い洗面所故に交互に。
 なんとも窮屈な物である。

「まあ、これも良いのかも知れないな」
「いえ、それは困るわ」

 適当に出来合いの朝食を済ませ、制服の袖を通す。
 互いの身だしなみを整え合いながらの、忙しない朝のやり取り。

「――せめて、子供部屋が二つは欲しいわ」
「……閻魔同士で子連れか。しかも気が早いぜ奥さんよ」
「何れは貯まるでしょう?色々と」
「溜め過ぎると二つじゃ足りなkぐぉ止めろネクタイはヤバい」

 色めき立つ会話も程ほどに、二人揃って玄関を開け――。

「「――昨夜はお楽しみでs」」

「おはよう御座いやがりますねこのサボり魔」
「そしてパパラッチは飛んでお帰りッ」

 上司夫妻を売った駄目部下とパパラッチを、見事なコンビネーションで粉砕した。
 具体的且つ一言で説明するなら、【重裁『ランページ・ジャジメント』】だろうか。

「ったく――それじゃ行きましょうか、奥さん」
「勿論ですわ――それはもう文字通り地獄なりとも何処へでも」


 幻想郷の閻魔さまに、旦那様が出来ました――。

 文々。新聞、どうにか上がった今朝の号外(検閲済み)の、見出しであった。










 おまけ




 勤務時間の、とある話。



「――しかし、小町」
「何でしょう?」
「自分の夫の仕事振りというのも気になりますね」
「あー……」
「というわけでこれから、視察も兼ねて顔を出そうかと」
「うー、あー、その」
「あの人の勤務先は解かりますよね――って、小町」
「あ、あいつなら今、そろそろ極卒との定例会で」
「賽の河原ですね――どうしました?顔色が悪いようですが」


「どうしても、ご覧になります?」





 賽の河原。
 親に先立った不孝者の霊が、己の罪を償う場所。

「よしよし、今日も沢山積んでいるね」
「あ、黒帽子の閻魔さまだー!」

 黒ハットの閻魔は、その穏やかな物腰で、早くも子ども達に馴染みつつあった。

(ああ、ちゃんと子ども達とも打ち解けてますね)
(はい……)

 それを物陰から見守る上司と部下。
 別にやましい事があるわけでは無いが、閻魔が覗き見とはこれ如何に。

(で、何が問題なのです?確かに、少々甘すぎる気もしますが)
(いえ、あたいの旦那の部署から聞いた話なんですがね?)
(そう言えば届を出したのよね、おめでとう)
(あ、有難う御座います。で、ですね)

「――あンた新入りかい?困るんだよねーガキに甘くしちゃ」
「「ひっ」」
 其処へ、肩を怒らせ、金棒を肩に担いだ極卒が歩み寄る。
「ん?」

(む?なんですかあの柄の悪い極卒は)
(あー、今季入ってきた新入りですね)
(では夫の顔を知らないわけですね?全く、私が一言――)

「そうか、私を知らないかね――それは良い」
「あーん?てめえ何言って」
「ア テ ン シ ョ ン (気をつけ)ッ!!!」

 極卒の声を遮るような、鋭い檄が飛んだ。 

「●●!」
「アイ!サー!」

 そして何処からとも無く、くるくると回転して現れる死神の男。

(あ゛ー!!?何やってんのアンタ!?)
(ど、どうしました小町)
(う、うちの旦那です)
(はい?)
(地獄での監察官をやった、って聞いてましたけど、まさかそっちだったとは――)

「どう思う」
 黒ハットの閻魔に、何故か前時代的な軍服を来た死神が応答する。
「イエス・サー。致し方ない事かと思われます。
 この男は、つい最近訓練機関を終えたばかりで有りますが故。サー」
「ふん、つまり体制的に蔓延する怠惰か。成る程――」

 黒ハットを押さえ、落胆のジェスチャーを示し――

「おい、貴様」
「な、何だよテメエ、死神従えて――」

「馬鹿もんが!!閻魔様がお呼びだ!口を慎め!!!!」
 軍服死神こと●●が、躊躇ない叱咤を浴びせ、極卒が怯む。
 それにしてもこの男、ノリノリである。

「な、こ、こいつが、閻魔さま!?こ、こりゃ失礼を」
「貴様の頭蓋にはクソしか詰まっていないのか?」
 黒ハットの鍔越しに、○○の眼光がぎらりと輝く。
「それとも、ソレが貴様の脳が導き出した、上司に対する態度かね」
「ひっ、し、失礼しま――」

「ふざけるな!!聞こえんぞ!!」
 檄が飛び、獄卒が縮み上がる。
「たッ!!大変失礼致しましたッ!!!」
「言わねば解からんか!!その口がクソを垂れる前と後ろに――」
「サー!!大変失礼致しました!!サー!!」
「よし。いいだろう。
 今回はそのクソ以下の熟成の、粗末な脳ミソに免じて、大目に見てやる」
「さ、サー。感謝します、サー」

 先程までの柄の悪さは何処へやら、新人獄卒は足早に去っていった。
 それを不満も隠さず嘆息し、黒ハットの閻魔が辺りを睥睨する。
 気が付けば、騒ぎを聞きつけた他の獄卒が集まっていた。
「こらお前達、とっとと業務に――」
「いや●●、丁度良い」


 黒帽子を一層深く被りなおし――


「改めて、これだけは言っておく。

 映姫は大変寛大な閻魔であったが、私は違うぞ!!
 田舎の昼行灯気分に浸かり切ったその性根を、この私が直々に扱き倒してやる!!
 覚悟するがいい!!」

 罵倒する。

「いいか!!?貴様等獄卒は、蝿に集られるクソにも劣るクソ虫だ!!
 それも訓練されていない、的当ての鬼にもなれない張子のクソ虫どもだ!!
 それをこの私が自ら!!徹底的に!!血の小便が出るまで鍛えなおしてやる!!
 貴様等が名乗る事さえおごがましい罪人である事を、その髄にまで刻み込んでやる!!」

 語彙の全てを尽くし、罵倒する。

「どうだ!!嬉しいだろう!?だが勘違いするな!!全ては貴様等の為ではない!!
 ――そうでなければ、私の給料に響くからだ!!そこに酌量はあっても慈悲は無い!!」

 全身全霊で、罵倒する――!

「――返事はどうした!!」
『サー!!イエス・サー!!』

 その罵倒に、軍人モドキの死神がまた合いの手を入れる。

「ふざけるな!!聞こえんぞ!!!」
『サー!!!!!イエス・サー!!!!!』

(……これなんてFMJ?)
(……)
(つーかうちの旦那もノリノリだなあ……あ、手ェ振った。こっち気付いてるな)

「おおー……最近の閻魔様って――格好いいー」
「ははは、そう言うな。照れるなあ――こら貴様等、聞いているのか!!?」

(えー最近の子ども達ってあーいうのが良いのかーうわーやだなそれ)
(……)

(あ、もしもし、映姫様、大丈夫ですか?お気を確かに――)
(……素敵)
(は?)


(なんて良い声……強い語調……野蛮にして知的な罵倒……)
(え?ちょ、映姫様、何ウットリ桃色吐息な奥様フェイスになってるんですか、ねえ)
(ああ、最高よあなた……今夜は楽しみにしてなさい……ああ、あぁ――)
(ぅわ、駄目だこの人)

何はともあれ。
この夫妻の仲が円満に行きそうなのは、間違いなさそうである。







おまけ2。


「ふーむ、よもや此処までとは。俺から教える事はもう無いな」
「は、有難う御座います。●●先生」
「いやいや、堅苦しいのは無しだ。――で、どーよ、奥様との生活は」
「いやー良いですね。オンの凛々しい姿も可憐ですけど、オフの気の抜けた表情もまた――うむ、
 こう――駄 目 だ !! 何 と も 言 え な い!!」
「そうかそうかこの駄目閻魔め。
 あー小町も可愛いったら可愛いんだが、ギャップって奴はまだ控え目でな?
 もーちょっと色々と慎ましく可憐な小町も、もっと見たいもんだ」
「でも、そういうタイプだと思いますよ?」
「時々は見せてくれるんだが、ワンスモア、だな。

 あ、胸は慎ましくない方gげふう」
「何 言 っ て い る ん だ い っ!!?」
「俺は慎ましいほうが――おや聞いてたのか小町さん」
「○○も!!映姫様に知られたらどうなるか」
「既に知っているさ」
「はあ?」

「『そっちの』話の相談相手は、全て先生からだからな。そして其処に居る」
「こ、小町ったら、案外おしとやかな所もあるのね……ぽ」

「こ の エ ロ 旦 那 ァーーーーッ!!?裁きを受ける前に 死 ね ぇ !!」
「うわぁい小町ブリーガーだ幸sぽぐぅ」

 是非曲直庁・幻想郷課は、今日も春度が全開でした。

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7スレ目>>631


「ふぅ…」
「お疲れ様です、四季様」
今日の裁判を滞りなく終え、小さい体を一杯に伸ばす四季様に
俺は湯気の立つ湯飲みを手渡す。 ちなみに中身は梅こぶ茶だ。
「ありがとう…やはり、この香りと味は落ち着きますね」
一度思い立って振舞ってみたら思いの外気に入られたようで、
以来梅こぶ茶が仕事の後の一杯となっている。
年寄り臭いとか思ってても口には出さない。 まだ地獄は経験したくないからな。
「○○、今失礼なことを考えませんでしたか」
「滅相も御座いません」
「それならば良いのですが…うう、ちょっと熱いですね」
ふーふーと息を吹きかけお茶を冷ましながら飲む姿を見て、思わず笑みが零れる。
外見相応の、どこか子供っぽい仕草から感じる微笑ましさか、
はたまたその光景を俺だけが目にしていると言う優越感からか。
「どうかしましたか?」
「いえ別に。 次からは少し温めに淹れますね、四季様」
「そうしてもらえると助かります…ではなくて。
 少し変ですよ、○○。 キチンと休養は取っているのでしょうね?」
「ご心配なく。 睡眠時間は十分ですよ」
そうですか、と彼女は満足げな表情で頷き、またお茶を口に運ぶ。
しばらくの間、閻魔の仕事場には、小柄な少女の微かな吐息が響いていた。

「ご馳走様です」
「お粗末さまです、四季様。 お味の程は?」
うーん、と四季様は下唇に指を当てて考え込む。
「若干ですが、薄かったような気がします。 あとは…」
「少し熱くて飲み難かった、ですね。 精進いたします」
苦笑を混ぜながら言う俺に、彼女はほんの少しだけ不機嫌そうな瞳を向け、
「それもそうなのですが…私が言いたいのは」
「???」
はて、まだ他にあっただろうか。 わずかに首を傾げて見せると四季様は、
「言葉遣い、です。 仕事は終わったのですから、その」
顔を俯かせて、ぼそぼそと言葉を紡ぐ。 最後の方は殆ど蚊の泣くような
声だった。 彼女の意図…と言うか希望は何となく分かる。 しかし俺は
敢えて気づかない振りをしてみせることにした。 たまには構わないだろう。
「すみませんが…他に、何か?」
「うぅ…そんなに私の口から言わせたいのですか」
イエス、絶対にイエス。 アレ、俺ってSだったんかな? と軽く戦慄
している俺に、愛用の勺で口元を覆った四季様は少しの間口篭っていたが、
「し、仕事は終わったのですから上司と部下ではありません。
 そ、その…今からは恋人として接して欲しいと私は言っているのです!」
一気に捲くし立てて見せた。 視線の関係上表情を伺うことは
出来ないが、恐らくは真っ赤になっていらっしゃるのではないかな、と思う。
俺は軽く咳払いをすると、
「分かったよ、映姫」
畏まった口調を廃して四季様…もとい映姫に微笑みかけて見せる。
「そうです、それでいいのです。 貴方は少し悪戯が過ぎる。
 もう少し恋人の意志を汲むこと、コレが貴方に積める善行ですよ?」
「勿体無いお言葉です」
「ま、また! だから貴方と言う人は…」
勺で俺の額を打とうとする映姫の腕をやんわりと掴み、体ごと手元に引き寄せる。
外見どおりに小さく軽い、恋人の身体を腕の中に収めながら、俺は彼女の耳に口を寄せ、
「ごめん、映姫。 ちょっと悪ノリが過ぎた」
「貴方は…狡い人ですね」
「…嫌いになったか?」
「そんなことは、ありませんよ」
背中に回された両の腕に、力が籠る。 強すぎず弱すぎない、心地よさに満ちた抱擁。

その光景は数分後、霊魂を送り忘れたサボタージュの権化が部屋に飛び込んでくるまで続いた。

「コマチー? 入室の際にはノックをしろと教わりませんでしたかー?」
「い、いえそれはですね。 連絡が遅れちゃマズいと思ったわけで」
「やれやれ…来月の給料査定、楽しみにしておくことです」
「そ、そんな殺生な! ○○、アンタからも言ってくれないか!?」
「小町。 黙って訊くこと以外で、部下が上司に出来るこたぁないぜ?」
「う…うわーん!! 神様のばっかやろおぉぉぉー!!」

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7スレ目>>690-691


     、    ___,,..‐ァ、___      ,.    ,: '"´ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ト 、   |::>''"´:.:.//T\:.:`"''<i//i    /
::::::::\,::'":.:.:.:.:.:.:.:.i | i .閻 | |:.:.:.:.:.:.:.`y:::!.    |  少しばかり人の弱みを見つけたら
、::::::::::::\_:.:.:.:.:.:.:.:| |_l 魔 l |::.:.:.:.:.:/:::/     |  ここぞとばかりに突付きまくる
. ';:::::::::r---r-ヘ_r‐'-、__,.r‐ァ'-‐''"ヽ.,__ノ>      !  その根性が気に食わないのです
 !/ァヽ、_rへ、/_>、,__!,.イ:.:.:!:.:.:.:.:.〉ヾ!-'、<_]  |  花映塚では私が⑨に負けた?
く__/:. ノ ( .:.:.:.:/ !:.:.:/!:.:./ |:.:/!_,:.ィ/!:.:.:.',、 ヽ.    !  何が花映塚ですか
 !/:.:. ⌒ ;.::./メ、!,/__レ'  レ' !_,,.!'rァ!:.:i:.:.:ト、 |  .!  たかが弾幕ごっこに負けただけです
/,.!:.:.:.:i:.:/:.:./ァ'ーr--r'    ´ト '! !.!:.:!:./  )'   |  お遊戯の勝敗ではなく
/ !:.:.:.:';:i:.:.:.:iハ  ト  !.     '-''ン'|:.:レ',.イ   <  審議者として説教を行って何が悪いのです
 ';.:!.:.:.:レへ;:| ゝ `"´    .  ⊂⊃|'_ノ、.,_,.ヘ.,,_ |  大体いい歳して弾いじりなんかしてるんじゃありません
 ハ:!:.:.:.:i.:.';:.:⊂⊃   ,. -‐、  ,.イ|:.:|ゝヽ、.,_____ノ|  他にも言いたい事が沢山ありますよ
イ ハ!:.:.:.:.!:.:.:ハ:.`i> 、.,_!____,.:'イi:.:.::!:r        |  私が一生懸命作ったカレーライスに
`´/.レヘ:.:!.:ノン´ンヽ、二「__ン:::ヤ!:ノン!.  ___    !  ジャガイモが入っていたからって
. / ,'  !ァ''"´ `ヽ:::::::ヽ、_o'::::::::`'マ`ヽ. / /7  .|  食べずに全部残すとはどういう了見です
'_,ノ  /      ヽ,.- 、.,::___::::::::::!   ハ//i/ __ !  私は別にいいのです
   k、  、  ノ´   _____,,ン--─ '''""´  ̄\\  野菜を作ったお百姓さんに申し訳無いでしょう
  //ヽr'" 7´  、 `ヽ.____         // ) ) そもそもの罪は告白しておいて
 ./ ./ /iヽ.r/i  ヽ ヽ,_ソ:::o ̄""iニ=;─;:-'- ' .|  結婚するつもりが無いというあなたの態度です
 |__,|_/」 .!Y iヽr 、_ン'"i::::::::!::::::::::!"   !    |  ええそうですよ 勘違いして一人で浮かれてた
      ヽ、.,____,,.. イコ:::::::o::::r-!、 _/      |  私が悪いんですよ
      ,.く:::::::/::::::::::::::::::::!:::::::::::Yく !、     ',  …… じゃなくてですねえーと
     /::::::`ート、:;____:::::::/!::::::::;:イヽ.ノ     ヽ、 _____________________________________________________


  「とまあ、こんな事があって、ここまで逃げてきたわけだが」
  「それであたいにどうしろってのさ。夫婦喧嘩は犬も食わぬって言葉知らないのかい?」
  「いや、ほとぼりが冷めるまで置いてもらおうかなー、と」
  「お断りだよ。あんたが喧嘩した直後にここにいるってだけで四季様の機嫌が悪くなるってのに。
   いくらあたいでも巻き添えは御免だね」


   だよなあ。俺だって他人の巻き添えとか真っ平御免だ。
   ま、俺も本気で小町のとこに入り浸ろうとしてたわけじゃないけどさ。
   人間心の準備というかインターバルというか覚悟完了というか、そういうのは必要なんだよ。

  「ところでさ」
  「ん、なんだい?」
  「弾いじりってなんか響きがエロいよな」

   うっわ、小町がすっごい冷ややかな目で俺を見てる。

  「……いいからさっさと謝って料理を平らげてきな。それで万事解決するだろうさ」
  「それは暗に俺に死ねって言ってるんだな?」
  「お、そりゃいい。あんたにあたいの仕事を手伝ってもらうのも悪くないかもねー」

   そう言ってカラカラと笑う。
   やれやれ、どうにも小町には敵わない。
   でも結構ガチで深刻な事態だし、このままってのもシャクなので、精一杯の悪態をついて帰ろうと思う。

  「クソッ! なんて時代だ!」


   正直ネタとしか思えない悪態をつきながら、彼は四季様の下へ戻っていった。
   やれやれ、事あるごとにあたいの所に厄介事を持ち込まないでほしい。
   それでなくてもこっちは忙しいし、どうせすぐ元の鞘に収まるんだから。

   というか、四季様も四季様なんだよ。
   家事もろくすっぽ出来ないくせに、ここぞとばかりに○○の為に頑張っちゃったりして。
   指に絆創膏張ってたの、○○やあたいが気づいて無いとでも思ってるのかね。
   大方女らしい所見せようとしてこさえた傷だろうけど。
   ○○が某メイド長の料理の話をした矢先にコレだ。中々可愛い所あるじゃないのさ。

   ……でもあたいは決して四季様唯一のレパートリー、どどめ色の物体をカレーとは認めない。絶対に。
   四季様、○○が他でもない貴方の料理を残したのは、絶対ジャガイモとかそういう問題じゃないですから……。

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うpろだ280


拝啓おふくろ様、あなたの息子は今とてもピンチです。

「さ、今から私が貴方に下す罰を当ててみなさい」

怒り心頭、怒髪天を衝くという表現がまさにぴったりとも言える状態で、えーき様は手にした笏を俺に向けた。
すっごい怖いですえーき様。

「さ、彷徨える大罪?」
「NO!NO!NO!」
「じ、十王裁判?」
「NO!NO!NO!」

俺の願望を込めた予想はことごとく外れ、残るは地獄のごとき苛烈さを誇る審判しか残らない。
OH MY GOD!

「もしかしてギルティ・オワ・ノットギルティですかぁぁぁぁ!?」
「YES!YES!YES! ……ってこら、待ちなさい!!」

俺は答えを待たずに逃げ出した。
だってまだ死にたくないもん。

「待ちなさい! 一度あの世で私に詫び続けなさい○○ーッ!!!」

当然のことながら、えーき様は恐ろしい勢いで俺を追ってきた。
引き立て役だった過去に決別する気は毛頭ないので、俺はもう必死に走ったわけだよ。

「俺が何をしたぁぁぁ!!」
「紅魔館の門番とイチャイチャしてて何を言ってやがりますかぁ!!」
「冤罪だァァ!!」

えーき様が怒ってらっしゃる理由が分かったが、それでなんで俺がこんな目にあうのか分からない。
俺は紅魔館に行った事なんて一度もない。
たった一度だけ、門番と顔を合わせたことがあったが……たった一度だ。

「いいから黙って審判を受け入れなさい!」
「ぐえっ! ……あ、あぶねぇ」

防備品A、ヘルメットに深々と突き刺さった笏を見て、俺は血の気が引いていくのを自覚した。
殺る気満々だよこの人ー!!?

「ド畜生、殺られてたまるかー!!」

人間の里の家の隙間を縦横無尽に駆け回り、えーき様が落ち着くまでの時間を稼ごうとするが、飛行可能である彼女の前にはあまり意味をなさないらしい。
気がつけば真上に居て、レーザーをぶっ放そうとしてくるから怖い。
慌ててその場から駆け出し、家の角を曲がった瞬間――――何かが出てきた。
避けきれない!
俺はその何かにモロにぶつかり、そのままもつれ合って転倒。
衝撃と痛みで視界がはっきりとしないが、俺とぶつかったのは人間のようだ。

「「いてててて……」」

同時に呻き声を上げる、俺と誰かさん。
心なしか声が似てるような気がしたが、まあ気のせいだろう。

「ん?」
「あ?」

いざ起き上がろうとしたとき、俺はその誰かさんの顔を見た。
……驚いたことに、そこには『俺』が居た。
体格も、顔も、身長も同じだ。ついでに声も。

「○○が2人……!?」

上空に居たえーき様も流石にこれには驚いたようだ。
しかし一番驚いているのは、俺と俺2号(今命名)だろう。

「大丈夫でs……えぇー!? ●●さんが2人ッ!?」

その時、タイミングよくやって来たのは例の紅魔館の門番。
名前は……「ほんみりん」だっけか?
まあいいや、兎に角『俺』の浮気疑惑の相手だ。
しかしこの俺2号、名前まで似てるとはどういうことか。マジもんのドッペルゲンガーかなんかだろうか。

「あ、なるほど」

その時俺はぴんと来た。
紅魔館の門番といちゃついてたって言うのは……多分コイツだ。
ここまで俺にそっくりならば、えーき様が間違えてしまうのも無理もない。

「えっ!? あっ、あ……うあぁぁぁぁん!!」

ようやく己の間違いに気づいたのか、えーき様は顔を真っ赤にしたり真っ青にしたりめぐるましくその表情を変え、挙句の果てには泣いてどこかへ飛び去ってしまった。
よっぽど恥ずかしかったのだろう。あと、俺を殺しかけたのを反省しているのかもしれない。
行く場所は大体検討がつくし、慌てて追う必要もないだろう。体痛いし。

「仕方ないなぁ……」

ヘルメットに突き刺さった笏を引っこ抜いてもう一度かぶり、俺は後ろで尻餅をつきっぱなしな俺2号へと振り返る。
今一事情が飲み込めてないようで、奴さんはまだ目を丸くしていた。

「こっちも色々事情があるんでな。まあ、また機会があればじっくり話し合おうぜ!」

さて、職務を投げ出した閻魔様を探しにいこうか。
俺はえーき様が飛び去った方向へ、駆け足で向かうことにした。

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うpろだ286


えーき様に勘違いで殺されかけてから3日。
俺は……いや、俺とえーき様は買い物という名の、いわゆる"でぇと"をしていた。
はっきり言わせてもらうが、人生初体験である。
歓喜の歌も今なら歌えるかもしれない。いや、きっと歌えるぞ!
しかし私服のえーき様は可愛い。相変わらずのミニスカで生足が拝めるのもたまらん。
いつもの帽子もないから、直に見えるうなじもまた艶かしい。

「どうかしましたか?」
「いいえ、何でもありませんとも。決して生足かーいいよかーいいとかうなじハァハァとか思ってませんともぐえ」

ちょっと興奮しすぎていらぬことを口走ってしまった。反省せねば。
自分の頭に突き刺さった笏を引っこ抜き、絆創膏を当てて治療だ。

「もう、せっかくの機会なのですからそういうことを考えてないで、今を楽しみなさい。それが貴方にできる善行ですよ」
「おや、映姫様は今がよければ良いと言う考えは否定なさっていたような」
「細かいところを気にしない! あなたは大雑把なのか神経質なのか分からなくなるときがあるわ」
「よく言われたことです。っと、このネックレスは似合うかもしれませんねぇ」

俺は露店の品物の中からネックレスを手に取るとを、えーき様の首にかけた。
うん、似合う。無茶苦茶似合う。

「あっ……あ、ありがとう」

そこで頬を染めるのは反則。
俺の心にハリケンショットですよコンチクショウ。

「いやはは、これも善行ってやつですよ。親父さん、これ代金ね」

店の人に代金を渡し、また別の場所へ向かおうとする俺達。
しかし! その前に立ちはだかる黒い影が!!

「ふふっ、見つけたぞ……」
「げ、俺2号」

家の影から現れたのは、俺そっくりな人間。その名も●●。
俺と同様に外からやってきた奴なのだが、コイツはどうも紅魔館で世話になっているらしい。
門番と一緒に居るところを、よく目撃されているそうだ。
ま、そのせいで俺が殺されかけたわけだが。

「なんの用だ。俺は今スウィートスウィートなタイムを満喫しているというのに」
「そうです。せっかくの休日だというのに」

俺とえーき様はこの空気の読めないヤローにブーイングを浴びせかける。
が、このヤローの面の皮はかなり分厚いようだ。
閻魔様のブーイングを浴びてもなお涼しい顔をしてやがるぜ。

「ふっ、それが貴様のコレか」

●●は小指をおっ立てながら、ニヤリと笑う。
うわ、こんなところまで俺そっくりとは気味が悪いぜ。

「その通りだ。悪いかコノヤロー、無茶苦茶可愛いんだぞ」
「えっ、あの……っ」

とりあえず負けじと胸をはって答えてやる。
えーき様の顔はまっかっかだ。可愛いなーもう!

「ほう、言い切るとは流石だ。だが! 美鈴の方が美人で可愛いと断言してやろう!」
「なぁ~にぃ~?」

聞き捨てならねえなぁ。
俺は奴を睨みつけて、一歩前に出た。絶対訂正させてやるぜ!

「ちょっと、ちょっと●●さん。ちょっと目を離したら……ああっ、閻魔様の連れ人に喧嘩を売ってるぅ!?」

その時、またもや家の影から誰かが現れた。
在中華的妖怪、名前は確か紅美鈴。
紅魔館の門番であり、このヤローとイチャイチャしてるともっぱらの評判だ。

「テメー、好き勝手言いやがって……映姫はなぁ、可愛くって、細かいことによく気づいて、優しくて、でも実は甘えんぼさんなんだぞコラ!」
「ちょ、ちょっと○○! 何口走ってるんですか!?」
「ほう、だが美鈴は気立てが良くて、美人で、芯が強くて、胸も大きいんだぞこの野朗!」
「●●さん! 恥ずかしいから大声で叫ばないでください!」

俺も奴もすっかり頭に血が上っている。
コイツは白黒つけんといけないようだな……
こんなこともあろうかと! 鍛え続けたこの体ッ! 奴をぶちのめして己が正義を証明してやるぜッ!!

「この胸にしか目がいかないエロ助め、ぶちのめしてやる!」
「このロリコンがァ……手前こそぶっ飛ばす! そして美鈴が幻想郷で一番の美人であると知れ!」
「誰がだコラ。幻想郷で一番の美人は映姫に決まってんだろうが!」

まるで西部劇のガンマン同士の一騎打ちのように、俺と奴は距離をとって立っている。

「手前、格闘技の心得はあるのか?」
「カラーテを少々」
「奇遇だな、俺もだ」

奴が構える。人間同士であるならば肉弾戦しかあるまいて!
だが、それは俺の希望的観測にしか過ぎなかった。

「でりゃああ!!」

奴が突っ込んでくる。
蹴りか! 俺は軽く回避しようとしたが、奴の足の裏に集まる光を見た瞬間、全身の血が引いた。

「でぇ!?」

それは光弾だった。
奴は人間でありながら弾幕を発射する手段を身につけていたというのか!?
弾が俺の肩をグレイズし、服が焦げる。
やべえ、死ぬ。

「ふはは! 避けるとは流石だ。これが俺の、美鈴との愛の結晶! その名も『初見殺しチャイナキック』!」
「まんまじゃねーか! くそ、反則だぜ」
「○○ッ!」
「男の勝負に手を出すなァ!」

前に出ようとした映姫を制止する。しかしコレはまずいぞ。
奴の蹴りはショットガンだ。外の世界の人間が弾幕撃つなんて反則だぜ。

「ふっ、貴様に弾幕が撃てるか? 撃てないだろうなぁ、それが貴様と俺の、嫁に対する愛情の違いだ!」
「んだとぉ!」

俺の、俺の映姫に対する想いが奴に負けているだと!?
そんなことはない! 俺はッ! 俺はッ!!

「俺はッ! 世界で一番映姫を愛してるんだよォォォォ!!」

前に出ろ、前に出ろ!
奴の蹴りはさっきので見切れたはずだ。直感を信じろ!
蹴りが放たれる、その瞬間が最大のチャンスだ!

「手前ェェ!!」
「うおおおおおお!!」

奴が蹴りを放とうとするその瞬間に横に回りこみ、一発奴の顔に叩き込むッ!
しかし、奴の反応速度は俺の予想以上だった。
自分の顔に向かってくる拳。
完全なカウンターだ。

「ぐはっ……」
「ぐえっ……」

だが、確かな手ごたえを感じ、俺の意識は飛んだ。


意識がはっきりしてきたとき、俺が真っ先に感じたのは「やわらかい」だった。
それもそのはず。映姫様が膝枕をしてくれていたのだ。

「まったく、あんな無茶を……」
「でも、彼の気持ちをその口から聞けたじゃありませんか。あそこまで想われているなんて、私ちょっとうらやましいです」

よく見ると●●には美鈴さんが膝枕している。
あの野朗も、俺と同じく気絶したようだ。まったく、やれやれだぜ。

「でも、貴女と違って私には職務がありますし……」
「時間なんて関係ないですよ。要は、どれだけ彼と楽しい思い出が作れたか……大切なのはそこじゃありませんか?」
「……そうですね、貴女の言うとおりです。私ったら、いつもは偉そうな事言ってるけれど、そんな大事なことに気づかないなんてダメですね」
「そんなことはない!」

俺は思わず大声を出してしまった。

「眼が覚めてたんですか?」
「ついさっきに。映姫様、貴女のお陰で俺は誰かを愛することの素晴らしさを知れた。貴女から大切な思い出も沢山もらえた。だから、貴女は自信を持って良いんだ」
「○○……」

すげえキャラじゃないなと感じつつも、俺は起き上がって映姫を抱きしめた。

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最終更新:2010年05月11日 14:15