映姫5
うpろだ301
早速だが、街中で●●と遭遇した俺は、いつものように決闘をやっていた。
この野朗の弾幕キック、通称初見殺しチャイナキックを完全に見切らないと気がすまないし、この野朗に映姫の素晴らしさを教えてやらねばなるまい。
奴も似たようなことを考えているだろうが、まあ俺は奴じゃないし、そこの所は確実じゃない。
「くそぅ、俺の奥の手だ! 幻想となった『準 空 気 銃(改造エアガン)』!!」
「うげぇ!? 痛ぇ! 痛ぇって! この野朗、飛び道具使うんじゃねえ!」
「生身で光弾ぶっ放すお前よりはよっぽど良心的だ!」
俺が撃ち、奴が避けて蹴り返し、それを避けて撃ち返すという動作を繰り返すこと10分。
俺も奴も、全身汗まみれで息切れしていた。
あ、暑い……体力があっという間に奪われちまうぜ。
「ぜぇー、ぜぇー……あ、あづい……」
「同感だ……お前は霧の湖で泳げるからいいだろうが……」
「あの水は冷たすぎて泳げない……屋敷の中は涼しいけどさ」
日陰で水を飲みながら、俺と●●は暑さをしのぐ方法を話し合っていた。
コイツがよく入り浸っている紅魔館は涼しいのか。うらやましい。
それに比べて人間の里は、冷房なんて近代的なものは一切ないから蒸し暑くて仕方がないぜ。
「泳ぎてえなぁ」
「そうだなぁ、プールとかあれば……」
「プールかぁ、映姫誘って泳ぎたいなぁ。水着どんなのが似合うかなぁ」
「美鈴の水着かぁ、いかん想像したら鼻血が……」
「……」
「……」
「「それだ!!」」
どうやら同じ結論に到達したようだ。
俺と●●は互いの顔を見合わせ、親指を立ててニヤリと笑う。
コイツは名案だぜ。早速実行に移さねば。
「問題はどうやって作るかだが……」
「そこはほら、河童に頼めば」
「なるほど、その手があったか!」
計画の目処が立ったところで、俺達は里の調停者である上白沢さんのところへと向かうことにした。
~一週間後~
人間の里の一角に完成した、25mレーンのプールを、俺と●●は満足げに眺めていた。
流石は河童だ、いい仕事してるぜ。
既に水も張られていて、いつでも泳げる状態だ。
「よーし、今日は俺達の貸切だ!」
「泳ぐぜぇー!! っと、その前にだ。もう少し待とうぜ○○、もう少しで彼女らの仕度も終わるだろう」
「そうだな。仕方ない、準備運動でもして待つか」
その場でラジオ体操第一を初め、第二へ移ろうとしたその瞬間、プールサイドに設置してある更衣室から『彼女ら』が出てきた。
次の瞬間●●は鼻血を噴出して卒倒。
やれやれ、興奮しすぎだぜコイツは。
「急患1名、はい美鈴さんに預けまーす」
「すいませ~ん。ほら●●さん、しっかりしてくださいよ~」
「め、めーりんの、めーりんの( ゚∀゚)o彡゜オッパイ!オッパイ!おppぐはっ」
おお、首筋に手刀一発で落とすとはさすが妖怪。
そんな感じに感心していると、自分の横に映姫が居ることに気づいた。
タオルで水着を隠している。何故だろうか。
「あ、あの……」
「はっは、どうっすかえーき様、一般公開を前提として、また非常時の貯水槽として作られたプールは。善行っすよ善行」
「は、はい。善行ですけれども……」
はて、何故そこまで恥ずかしがっているのだろうか。
とりあえずその原因がなんであるか考えてみよう。
1.慣れてないから
まあこれは考える理由としては最も簡単。
しかし、彼女が慣れていないからといって、ここまで恥ずかしがるものか?
2.俺が居るから
これは男冥利に尽きるわけだが、流石にないな……がっくり。
3.水着のデザインがきわどい。
コレは大穴。香霖堂の店主に注文した上で(サイズは極秘と書かれた封筒に入れられていた)購入したものだ。
そう変なものでは……
「あ」
そこで気づいた。
俺が注文したとき、店主の後ろにスキマ妖怪がいたことに。
そしてあの加齢s……もとい少女臭あふれる彼女が、こういう場合に何か悪巧みをしないわけがないのだ。
「まさか映姫さん、そのタオルの下ってもしかして」
「あ、あなたがこのデザインにしたんじゃないんですか!?」
「俺が注文したのはいたって普通のワンピース水着なんですけれども」
答え3。
答え―――3、答え3。
やっぱりそうか、そうだったか。
俺は頭を抱えたくなったが、とりあえず堪えて彼女にそっと耳打ちする。
「どんな水着なんですか」
「こ、こんなの……です」
そう言って、彼女はそっとタオルの中を見せた。
…………あぶない水着ですかそうですか。
「ぐはッ」
●●同様、俺も鼻血を噴いてしまう。
しかし、まだ倒れるわけにはいかない!
そうだとも、俺は彼女と泳ぐという目的をまだ達成していないのだ。
「だ、大丈夫ですか?」
「大丈夫ですとも! さあ映姫様、泳ぎましょうええ、泳ぎましょう!」
「め、眼が血走って怖いですよ……」
よっぽど俺の顔が怖かったのか、映姫様は少し怯えている。
落ち着け俺、興奮すんな。
頬を叩いて気合を注入。よし、これでいい。
「せっかく作ったんですし、まあ楽しみましょう映姫様。見てるのは俺と、あの二人くらいなもんですから」
「そ、そうですね」
「楽しむことが今の貴女に出来る善行っすよ。さあさあ、そんなタオルなんか取っ払って!」
俺は映姫の手をとると、そのままプールへ向かって一直線に歩いていった。
今年の夏は蒸し暑かったり大雨で散々だったが、今日一日で全部忘れて、充実した夏を満喫するとしよう。
いい思い出を作らなくちゃ、な。
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うpろだ335
きっかけは、あまりにも自分にとって都合が良すぎる夢だった。
『わ、私を幸せにすること。それが貴方に出来る善行……です』
純白のウェディングを着た映姫が、ポロポロと嬉し涙を流しつつ頬を紅く染めながら俺に向かってとんでもない台詞を言った瞬間、俺は飛び起きた。
全身は汗でびっちょりだ。これは、寝苦しかったというだけじゃないだろう。
それにしても、なんつー夢を見てたんだ俺は。
俺はアホか!? 妄想もここまで来ると呆れる他ないぜ。
「馬鹿馬鹿しい、何考えてるんだか」
下着を替えて、服も着替えて、気分を変えて今日は過ごそう。
そうすればこんな馬鹿馬鹿しい夢なんて、すぐ忘れる。
まったく、俺の脳内は春真っ盛りだな……やれやれ。
着替え終えて外に出ると、上空から白黒が箒にまたがって降りてきた。
珍しい。何の用事なのだろうか。
「どうした○○、元気がないように見えるぜ」
「魔理沙か。いや、夢見が悪かっただけだ、それよりも何しにこっちにきた?」
「ふーん、そうか。この前頼まれた品を持ってきたぜ……ナイトメア服用させた覚えはないんだけどな」
「お、サンキュー……ところで今なんか言ったか?」
「何も言ってないぜ」
魔理沙の言葉に引っかかるものを感じたが、特に深く追求しようとは思わなかった。
その後俺は、魔理沙と2、3言葉を交わした後に寺子屋へと向かった。
「……ナイトメア?」
魔理沙が呟いた謎の言葉。
それがあの夢の正体であるとは、そのときの俺には分かるはずもなかった。
「……今日はいい夢を見たようだな」
「ブッ!! ……ゲホゲホ、何言ってんスか慧音さん。今日の寝起きは最悪、きっと良くない夢見たんですよ……覚えてないけど」
寺子屋での手伝いを一通り終え、昼食をとっていると慧音がそっと耳打ちしてきたんで、思わず食べてたものを噴出しそうになった。
とりあえず否定しとくが、勿論それは嘘だ。まだばっちり覚えているぞ畜生。
が、あんな夢見たなんて言った日には俺はどんな目で見られるか分かったもんじゃない。
「ふむ、そうか。顔が少しにやけているからそう思っただけだ。違ったのならすまない」
「あ、別にいいっスよ。というかにやけてたんですか?」
「少しな。だから今日はいい夢でも見たのかと思ったが……」
そんな顔してたのか。
自分の顔を鏡で見てみたいが、あいにく手鏡なんぞ持っていないのでそれは無理な話だ。
とりあえず頬を叩いて顔を引き締めよう。
「……痛い」
「強く叩き過ぎだ」
Exactly(その通りでございます)……
それは夢だとすぐに理解できた。
だって彼が、ちょっととぼけた感がある彼が、あんなにはっきりと真顔で、あんな事言うはずがないのだから。
言うならもう少し、なんというか……もう少し
『俺と君じゃ寿命も違うし立場も違う。でも、俺の生涯……いや、死後も懸けて君を幸せにしたい。ずっと一緒に、いよう』
馬鹿みたい。
これは私の願望。
でも、これは妄想じゃない。彼は私を大事に想ってくれている。
それはよく知っているし、彼もそれを自認しているから。
……幻想郷に迷い込んだ一人の人間。誰もが忘れていた旧知の友に手を差し伸べた、優しい人。
でも頭に血が上りやすくて、すぐに熱くなってしまう人。
そんな彼が愛しくてたまらない……こんな気持ちは、何百年も生きていたけど初めてだわ。
「……彼が来て一年、か」
明日で彼が幻想郷に迷い込んで一年が経つことになる。
こんな夢を見たのも、その所為かしら。
「明日は久しぶりに休みが取れますし……ふふ、ちょっと彼を驚かせましょうか」
私はちょっとだけ悪巧みを思いつき、ほんの少しだけ悪役っぽい笑みを浮かべた。
さて、ちょっと小町の様子を見に行きましょう。
「おはよーございます四季様。よく眠れましたか?」
「おはようございます小町。ええ、いい夢を見れました」
「それは良かったですね。……よーし上手くいった上手くいった。流石は月の薬剤師」
小町、聞こえてますよ。
まったく……あの夢は貴女の仕業でしたか。
本来ならお仕置きをするところですが、まあいい夢だったので今回は許しましょう。
「明日は休暇をとるので、よろしくお願いしますね」
「はい、わかりました。やっぱ彼のところに行くんですか?」
「ええ、そうですよ。ちょっと、ね」
今回はちょっとお茶目にやってみたいですね。
彼の狼狽する表情が、容易に想像できます。
そういえば今日は、映姫が休みを取る日だった。
目が覚めて真っ先にそのことを思い出した俺は、急いで服を着た。
だらしない格好でいた日には、どんな説教をされるのやら……
「いい朝だ」
昇る朝日を見ながら、俺は呟く。
そして思い出した。今日は、俺が幻想郷に迷い込んで一年になることに。
ああ、もう一年か。
月日の経つのは早いものだ。ほんの数ヶ月前のことのように思えるが、それはやはりここの生活が楽しいからなのかもしれないな。
「おはようございます、○○」
「ああ、おはよう……今日は早いねってえっ……!?」
まだ時間的には6時半くらいだろうか。
そんな早くからやってきた映姫の姿を見た瞬間、俺は言葉を失った。
純白のドレスを身に纏った彼女の姿は、あの『下らない夢』を思い出させるのに十分だったからだ。
(なんだよ、あれは下らない俺の願望が見せた夢で、あの映姫も俺の妄想の産物だったってのに)
それでも、こんな風に着飾った上で俺のところに来てくれた映姫の気持ちがうれしい。
全く最低だ、俺という奴は。
自分の都合のいいように考え始めてきている。
アホか。まったく、俺も何時までも昔のように子供じゃないんだ。
「どうしたの?」
「いや、なんでもない。ただ、綺麗過ぎて言葉も出なかっただけさ」
「そう? ちょっと気になる反応だったけど、貴方がそういうならきっとそうなのね。それと、綺麗って言ってくれてありがとう」
「ああ」
それにしても、ここですごした結果俺もずいぶんと大人びたもんだな。
一年前は、ただ勢いと頭に血が上った結果の行動が多く、生傷が絶えなかったもんだが……
まあ、今でもたまに無鉄砲になるときがある。それは反省しないといけない。
「それにしても、俺がここに来てから"もう"一年か……」
「"まだ"一年、です。人間の寿命は短いとはいえ、あなたにはまだ何十年も残されているではありませんか」
「それもそうだ」
確かに、もうあっちに戻らないと決めた以上、俺はここで余生を過ごすことになる。
俺は今21だから、あと50年は生きるってことになるな。
だとすれば、時間はまだ……
「そういえば、今日はやけにうれしそうだけど、いい事でもあったのか?」
俺はふと映姫の頬が少し緩んでることに気づき、一つ質問をしてみた。
その時は気づかなかったが、それは昨日、俺が慧音さんに言われたことと、ほぼ同じことだった。
「ええ、昨日ですけれどいい夢を見れまして。それで、今日が楽しみだったんですよ」
「へぇ、どんな夢なんですかね」
俺はちょっとした好奇心から、彼女の夢の内容を聞いてみた。
「貴方の夢です」
そして、彼女の答えにドキッとした。
「夢の中で、貴方は私をずっと幸せにすると言ってくれました。生きてる間も、死んでからも」
その内容は、俺の見た夢に似ていた。
あまりにも似すぎていた。
「夢とはいえ、それがとてもうれしくて……」
彼女は俺が見た夢を知っていて喋っているんじゃないだろうか。
ふとそんな疑問が浮かび、それは彼女が俺に向けた視線で確信に変わった。
『嘘はダメ』と目で言っていらっしゃる。
ああもう、完璧降参だ。あんな目で見られたら本当の事喋るしかないだろう。
「……俺も似たような夢を見たよ。純白のドレスを着た映姫が、自分を幸せにすることが俺に出来る善行って言ってた」
「……」
ああ、そこで顔を真っ赤にしないでくれ。
予想してたことなんだろう? こっちまでこっ恥ずかしくなるじゃないか。
「ハハ、これは夢だけじゃもったいないな。正夢にしてしまおうじゃないか」
もうこうなれば、死なば諸共!
俺の気持ちを、はっきりとぶつけてやるぜ。
「……俺と君じゃ寿命も違うし立場も違う。でも、俺の生涯……いや、死後も懸けて君を幸せにしたい。ずっと一緒に、いよう」
二度目の告白。
正直言ってかなり恥ずかしい、くさい台詞だ。
「わ、私を幸せにすること。それが貴方に出来る善行……です」
俺の告白を聞いた彼女は、嬉し涙を流しつつそう答えてくれた。
夢の彼女と全く同一の台詞に、俺は驚きを隠せなかったが、それ以上に彼女の答えがうれしかった。
夜、打ち上げられる花火を見ながら、俺達は縁側でスイカを食べていた。
最後の三尺玉が打ち上げられ、轟音とともに星が綺麗に広がってゆく。
俺はふとあることを思い出し、映姫に聞いた。
「ところで俺が夢を見たって知ってただろ?」
「ええ、勿論です」
「何で分かったんだ?」
「小町が私に薬を盛ったんです。胡蝶夢丸というので、楽しい夢を見れる薬だそうで……逆の胡蝶夢丸ナイトメアというのもあるそうですが」
「俺は飲んだ覚えはないんだが……ってナイトメア?」
ナイトメア。それは確か、魔理沙が言ってた謎の単語。
……ああ、なんとなく読めてきたぞ。
「それでちょっとカマをかけたら白状しましてね、あの白黒の魔法使いと共謀して貴方にも飲ませたと」
「ああ、そういうことか」
おせっかいな死神と、普通の黒魔術師に今日は感謝しておこう。
しかしもう夜も更けてきた。ちょっと早いが、布団を敷くか。
俺は立ち上がろうとしたが、その瞬間映姫に袖を引っ張られて制止されてしまった。
何事かと映姫のほうに視線を向けると、上目遣いで頬をほんのり紅く染めながら、映姫がおずおずと口を開いた。
「あ、あの……その、今日は一緒の布団私と寝ること。そ、それが貴方に出来る善行、です」
「……」
これは我慢しなくてもいいってことですね?答えは聞いてない!
俺は彼女を抱き上げると、一瞬で布団を敷き終えてその中に滑り込んだ。
「ふふふ、これはいいネタになります! タイトルはずばり『人間と熱愛中の閻魔様が朝帰り!?』私は記者として最高のネタを手に入れました!!」
その一部始終を見ている鴉天狗の存在に気がつかないで。
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うpろだ337
ところで、映姫の背は低い。
俺がでかいだけかもしれないが、まあ多分両方じゃないかと俺は思っている。
俺の身長は18……2だっけかな、確か。
それに比べて、彼女は150あるかどうかって感じだ。
30cmほどの身長差があると結構視点が違う。
しかしこの幻想郷は、旧来の日本人の体格に合わせたつくりの建造物が多く(日本人の身長が伸びたのは戦後からだ)、
180cm以上の人間はことごとく頭を打ってしまう。
注意すれば回避できるのだが、やっぱり意識が他のほうに向いてると避けれない。
そういうわけで俺は今現在、映姫と会話しつつ家の中に入ろうとして見事に頭をぶつけて悶絶していた。
一瞬だけ気絶したかもしれない。めちゃくちゃ痛いぞ。
「だ、大丈夫?」
「なれて、ますから……いてて」
そのまま倒れてしまいたかったが、彼女にそんな情けない姿を見られるわけにもいかないのでとりあえず耐える。
がんばれ俺。
「何時もぶつけてるの?」
「建築基準が古いんっスよ。俺ぐらいの身長だと、狭くて狭くて。あたた……こりゃコブになったかな」
頭をさすりながら、台所で氷を用意して患部を冷やす。
「背が高いのも困りもんだな」
「……それは私に対するあてつけかしら?」
「えっ!?」
余り深く考えずにそんなことを言ったんだが、それが彼女の癇に障ってしまったらしい。
「滅相も無い。これは自分を皮肉ってですね……」
「いいですか! 私だって好きで背が低いわけじゃないんですよ!
毎回毎回同僚からはからかわれ、小町にはおもちゃにされて挙句の果てには威厳がないと霊に言われる!」
「そ、それは……」
「霊にまで言われるんですよ!? これは閻魔として死活問題です!」
「そんなこと……」
俺に言われても困る、と言おうとしたが、前半部分が非常にまずかった。
必死になりすぎて顔が真っ赤な映姫が、涙目で俺に詰め寄ってきた。
「そんなこと!? そんなことですって!? 貴方の顔を見ていたくて見上げていたら首が凝るし、私からキスだって出来ないんです!!」
「………」
なんつーこと言ってくれやがりますか映姫様。
あまりの爆弾発言に、俺の顔も沸騰しそうだぜ。
というかその帽子はまず取ろう、な!
「いや、そのですね」
「毎回毎回貴方からしてくれるのが嫌なわけではないんですけれど、少しくらい私が主導権を握りたいんです!」
「落ち着いてくださいよ映姫様」
「私は冷静です! ただ、少し頭にきているだけです!」
人はそれを冷静とは言わないっスよ。
「ああもう、貴方と言う人は何時もそうやって」
ええい、こうなれば最終手段をとるしかあるまい。
口 で 口 を ふ さ ぐ !
「少しくらいは背の低い人の事をうむっ!?」
やった! さすが俺! そう簡単に出来ないことを簡単にやってのける!
そこにしびれ……自己陶酔じゃねえか。
「ぷはぁ……な、何を」
「何をったって、こうでもしなきゃ落ち着きそうになかったからな」
「そ、そーいう意味では……」
あー、さっき散々主導権が取れないと嘆いておられましたねェ。
「それじゃ映姫様からやります?」
「うっ」
散々嘆いていたわりには、自分からするのは恥ずかしいようだ。
「ま、したい時は何時でも言ってくれれば、俺は何時でも準備オッケーだぜ?」
「今の言葉、嘘偽りありませんね? ならば絶対に地獄に落としてあげますよ♪」
「キス地獄ですか? んっ……」
外では相変わらず蝉が鳴き続けている。
夏はまだ、続きそうだ。
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7スレ目930-938
俺、夏になったらえーき様に水着をプレゼントしてバカンスに誘おうとおもうんだ。
盆になったら忙しくなるからな。(色んな意味で)
ただ…えーき様に会うちびっこいサイズが、
この紺色のしか見つからなかったんだ。
俺、裁かれるかもしれんね… 法廷| λ....
931 :名前が無い程度の能力:2007/06/08(金) 19:45:52 ID:FR0LYi5EO
よし、運び屋である俺がえーき様にとどけよう
大丈夫、料金は君の勇気で十分だ
全責任は俺が持とう
932 :名前が無い程度の能力:2007/06/08(金) 20:43:31 ID:VtUohprQ0
スク水ってわからんだろうし
肌の露出も少ないから普通に着てくれんじゃね?
むしろ大人っぽいものを持っていってサイズがあわない
方がおそろしいことになりそうだww
933 :名前が無い程度の能力:2007/06/08(金) 20:46:32 ID:uVUOlBZM0
「外の世界の競泳用水着です」とか言えば着てくれるに違いない
嘘はついてない上、下心が無いと勘違いしてくれるw
「今日も忙しかったわね、でも明後日の○○と遊びに行くのは
休みが取れてよかったわ」
そのことを考えると知らずに顔がにやけてしまう、しかし私はすぐに
問題思い出して気が重くなる
「はあ…でもせっかくなのに去年と同じ水着なのは問題かもしれませんね」
そう、忙しすぎて買いにいく暇がなかった。休みを取るためには仕方のないことですが
「まあ、遊びいけるだけで良しとしますか…」
そんな風に自分を納得させていると
「すいません、宅配便です」
とドアをノックされた
私は誰からだろうと思いながらドアを開け荷物を受け取った
「○○からのようですね、軽いですけど何が入っているのでしょう」
荷物の封を開けてみるとそこには水着と手紙が入っていた
『今度のデートはこれ着てくれよ、ぶっちゃけ俺の好みだけどな』
と書かれていた
「ま、まったく○○は何を考えているのでしょう、こんな破廉恥な…」
私はそう言いながらもうれしさを抑えられないでいた
「まあせっかくですし、人の好意を受け取るのも善行ですしね」
あらためて水着を見てみてみると
「け、けっこう大胆な水着ですね…」
なんというか自分には合わないような気がする
「これが○○の趣味ですか、しかたありませんね。まったく○○は…
男の方というのはしょうがないですね。とにかく着てみましょう」
試着中……
「これは…」
水着は着れた、着れたのだが
「む、胸が…」
足りなかった、絶望的なまでに足りなかった
私は崩れ落ちた
「どうすれば……」
1、とりあえず去年の水着を着ていく
2、某メイド長の如く詰め物をする
3、小町に相談する
「ここはとりあえず3でしょうか…」
私は小町のもとへ向かった
その頃小町の元へ同じような荷物が届いていた
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7スレ目949
1.
がちゃりとドアが開く。
その向こうから現れたのは四季映姫・ヤマザナドゥであった。
顔をしかめながら肩を回す所を見ると、相当疲れているらしい。
大きなため息を一つ、帰途についた。
「疲れました……」
2.
しかし、彼女が着いたのは自分の家ではなく、○○の家であった。
ほとんど深夜といっていい時間帯の訪問のため、○○は目をむいて驚いていた。
それでも映姫を家に上げたのは彼の優しさか、それとも。
「疲れました」
「はぁ……。とりあえずお茶でも飲めよ」
差し出されたお茶に口をつけながら、映姫は一日のことを○○にこぼす。
やれ小町がサボるだの、やれ陪審員が適当すぎるだの。
最近食堂のご飯は味が落ちてきているだの、服の虫食いに悩まされているだの。
○○が席を立とうとお構い無しに映姫は愚痴をこぼし続けた。
「映姫……? 寝たのか?」
「……ねてません…………でも、ねむいです」
「…じゃあ今日は泊まってくか? ベッド使っていいぞ」
「すみません……お言葉に甘えさせていただきます」
3.
「…………○○」
「どうした? まさかベッドメイキングが下手だって言うのか?」
「私は疲れました。今までないほどに、それはもう幻想郷一です」
「だから寝ればいいじゃないか」
「○○、抱いて下さい」
「抱い…………映姫お前っ!?」
「ちちちちがいますっ! そうではなくてですね! こうギュってして下さいって言ってるんです!」
「……ああ、なるほど。焦ったぞ…」
「それで、○○。いいですか?」
「お、おう。いいぜ。ほれ、ぎゅ~」
「……………………○○はあったかいですね」
「映姫もあったかいぜ。湯たんぽになりそうだ」
「……してみますか?」
「え?」
「だから、湯たんぽ。私を湯たんぽにしてみますか?」
――――――――――――――――――――
するする!
恥ずかしいから止めとく
→あえて無視して、映姫から布団に入ってくるのを待つ
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10スレ目>>589
「何処だここは」
家の裏山で筍を取っていた俺は、蓋が開いていた古井戸に足を突っ込んでしまい、その中へと落ちていった。
その後衝撃で意識を失ってしまったが、目が覚めると暗い井戸の底ではなく、妙な場所にいると言うことを理解した。
どれくらい妙かと言うと、地平線までずーっと花畑しか広がってない。
花畑以外では唯一広大な河があるようだが、向こう側が見えないなんて恐ろしいな。
いやまて、何で向こう側が見えないのに河だって分かったんだ俺。
「うーむ、誰かいないもんかな」
これが夢ではないと言うことは、独り言をぶつぶつ言っている時点で理解できている。
今まで見た夢の中で、俺が言葉を発したことは一度もないからだ。
「おや珍しい、生きた人間がここにくるなんて」
「!?」
ぼーっと河を眺めていると、突然背後から声をかけられ、俺は驚きのあまり足を滑らせて河の中へと落ちてしまった。
不思議なことにこの河は浮力が働かないらしい。
このまま水没してしまうかと思ったが、何かに引っ張り上げられて辛うじて生還に成功する。
その時に俺は、俺に声をかけたのが誰か、そして助けてくれたのが誰かと言うことを知った。
「危ない危ない、生きてる人間を死なせちゃ怒られるからね。大丈夫かい?」
「死ぬかと思ったが大丈夫だうん人間ってのは思ったよりも強いなァところであんた誰よ」
「その前に落ち着きなって。はい深呼吸、一息で全部言うんじゃないよ」
すーはー。
言われるままに深呼吸をして、気持ちを落ち着ける。
3回ほど深呼吸をした後に、俺は目の前の(見た目物騒な)大鎌を持ったに再度質問を投げかけた。
「あんた誰よ、あと此処何処よ」
我ながら簡潔すぎる上に無礼極まりない対応だ。
気を悪くして鎌でばっさりと斬られても、いやそれは嫌だが、まあ文句はあまり言えないような気がする。
「此処は彼岸、あたいは死神の小野塚小町っていうんだ」
んでもって、その疑問にとんでもない回答を返してくれたわけですよこの人は。
彼岸だって!? 冗談じゃない、あの世じゃないか。
あと死神ってか。うわ、俺の人生オワタ
「orz」
「はいそこ落ち込まない。人の話はきちんと聞くもんだよ。あんたは珍しいことに、生きたまま彼岸へきたんだ」
「生きてるとしても、どうやって帰ればいいんだ」
「それは流石に知らないなぁ、あたいの生きている間にこういうことはなかったからねえ。話には聞いてたけどさ」
「orz」
絶望した! 帰れる可能性がないことに絶望した!
あまりの救いのなさに『ここで入水しちゃおうかな』と衝動的に思った時、この死神サンはふと何かを思い出したかのように手を叩いた。
「そうだ、四季様に聞けば分かるかもしれないね。おや、四季様って誰だって顔してるね。閻魔様だよ、え・ん・ま様」
「ジーザス・クライスト!」
閻魔様ってか、舌抜かれるのか俺。
物凄い不安を感じながら、俺は死神サンに誘われるまま彼岸を歩いていった。
……死神に誘われるってのは相当嫌な気分になるということを実感しながら。
「と言うわけで四季様ー、生きた人間1名ご案内でーす」
「どういうわけかよく分からないけど、とりあえずはご苦労様」
花畑の中にあった建物の一室で、俺は『閻魔様』とご対面していた。
はじめはどんな奴かと思って身構えたんだが、第一の感想はこれだね。
『可愛い』
一目惚れってのはこういう事を言うんだろうな。
見た目の可愛さに、俺のハートは一瞬でピチューンである。
「はじめまして、私は四季映姫、ヤマザナドゥです。さて、あなたの状況を詳しく説明しますとですね、あなたは運悪く彼岸に落ちてしまったわけですよ」
「いや、それは既に聞いた」
「ふむ、小町も真面目に仕事をしていると言うことですね。では次です。一応あなたが帰る方法はあります」
「今さっき帰りたくなくなった」
「え!?」
俺が『家に帰りたい』考えていたと思ってたのだろう。事実さっきまでそう思ってたわけだが。
それなのにいきなり帰りたくない、だからな。
驚くのも無理はない。
「ど、どどどどういうことですか!」
「四季様動揺しすぎですよ」
予想外の事態には閻魔様とはいえ比較的弱いのか、動揺している様子が俺にもわかった。
「可愛いもん、君。こんな可愛い子に会えたのにすぐ帰る気にはならないなァ。もっと親睦を深めたいと思うわけで」
「か、かかか、可愛いだなんてな、なな何を言っているんですか貴方は!!」
うん、可愛い。実に可愛い。
死神サンは上司の急変に最初目を丸くしていたが、すぐにニヤニヤとし始めた。
どうやらこれをネタに、からかう気満々らしい。
「そ、そそ、そういう貴方も中々格好いい……って、な、何を言っているんですか私ー!!」
「照れるなァ、そんな事言われたのは初めてだよ」
「あははははははははは!! 四季様カワイイー! ……きゃん!」
完全に動揺して自分でも何を言っているかよく分からない様子の閻魔様の様子が、死神サンはどうやらツボに入ったらしい。
跪いて腹を抱えて笑い、床をビシビシと叩いていた。
が、次の瞬間頭に高速で飛来する何かが突き刺さって沈黙。
そのまま退場を余儀なくされた。
「ふぅー、ふぅー……と、兎に角ですね! そ、そのですね! い、いきなりそういうことは言わないのが礼儀です!」
「じゃあまずはお友達と言うことで」
今だ動揺が収まらない彼女に俺が妥協案を出してみると、笑顔になって(まだ動揺しているようだが)頷いた。
「そう! まずはお友達から始めましょう! ええそれがいいんですそれが」
こうして俺と彼女は、お友達と言う関係になった。
後日談
それから幾らか時間が過ぎ、すっかり彼岸とこの世を行き来する方法を見出した俺は、暇を見つけては彼女のお手伝いをしたりするようになっていた。
最初はお友達の関係だった仲も、手を繋ぐという段階を経て、友達以上恋人未満(小町曰くだが)まで発展していた。
あの後知ったんだが、小野篁って人もずーっと昔に俺のように彼岸へ出向き、閻魔様の裁判の手伝いをやったらしい。
だから彼岸から帰る事が簡単に出来たそうだ。
「ねえ、○○」
「なんスか?」
彼女の勤務時間が終わり、また何時ものように素敵(と言うにはあまりにも何もないが)な彼岸ライフを送っていると、不意に彼女が口を開いた。
はて何だろうと彼女のほうを見ると、何やら俺を驚かせようとしているようだった。
「何時も同じ事ばかりじゃ貴方もつまらないでしょう?」
「確かに新しい刺激はほしいところですねェ。あ、でも君といるのがつまらない訳じゃないんだ」
「ふふ、それは分かっています」
ああひやっとした。
彼女に嘘をつくことは出来ないから、こういう質問をされると何時もドキドキ物だぜ。
「三途の川の向こうに行ってみませんか?」
「三途の川の? 現世っスよね、うーん……気になるねェ。うん、行ってみたいな」
「それじゃあ、私につかまってくださいね。少し飛ばしますよォ……」
浮かび上がる彼女の腰にしっかりとしがみ付き、足が大地から離れても腕力だけで落ちないようにする。
直後、すさまじい加速で彼女は飛行を開始した。
眼下を流れる風景は、花畑から河に変わり、物凄い勢いで突き立っている岩が後方へ後方へと流れてゆく。
永遠とも思える距離を飛行した後、にわかに風景が変わり、石がゴロゴロと転がる河川敷にたどり着いた。
どうやら三途の川を渡り終えたようだ。
「此処から現世です。もう少し……きついでしょうけれど我慢してください」
「おう」
そこからさらに山の上を飛び、のどかな農村の上を飛び、霧が濃い湖の上を飛び、不穏な空気が漂う山を飛び、そして遂には雲の上に到達した。
俺は眼前に広がる巨大な扉に面食らうが、以外にもあっさりとそのファンタジーな光景を受け入れてしまう。
「今まで見てきた場所、それが私の管轄区。幻想郷です」
「すげぇ……すげえ! こんな場所があったなんて。俺、こういう光景に憧れてたんだ」
「うふふ、気に入ってくれて嬉しいわ」
子供のようにはしゃぐ俺を、映姫は母親のような穏やかな顔で見つめていた。
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最終更新:2011年02月26日 23:37