古来より追田の地に伝わる豊穣祈願の祭「拝籾回福(はいもみかいふく)」(籾を挟んで拝むことで一年の福を願う行事)
この独特な行事にはこれまた独特な楽器を用いる
その中でも特に特徴的かつ独創的なものが「鳴鱒誉(なるますよ)」と呼ばれる魚の形をした木笛である
淡竹や葦を用いた笙(しょう)に似た音色の明陽(めいよう)、年季の入った木製の胴で深みのある音を出す太鼓「季尊尼(きそんに)」と
併せて「明陽(めいよう)」「季尊尼(きそんに)」「鳴鱒誉(なるますよ)」の順に並び音を奏でる
一番神前に近い位置で演奏する鳴鱒誉は、土地神を目でも楽しませるという役割も持つため、装飾も美しく、この地の職人が技術の粋を
結集して作り上げた、歴史的のみならず美術的価値も非常に高いものとなっている
その巨大な木管の奏でる重低音は、山を一つ越えた集落まで届き、音色を肴に酒盛りをしたという逸話が残るほどである
時代が進み、豊穣神への信仰心が薄れていくと、この鳴鱒誉はこれまでとは異なる用法で使われることとなる
その可聴距離を活かして前線から本陣に敵襲を知らせる警報として重宝されるようになったのだ
こうして追田の地より運び出された鳴鱒誉の一つが後に名古屋城の物見櫓に設置され、それが後に天守閣のシャチホコのモデルとなったことは
余りにも有名だ話である
最終更新:2020年03月09日 20:52