「沖縄沖、映像はいります。」
映像に映し出された黒い巨影。
「こいつは・・・二年前の・・・・」
「・・・・・ゴジラ・・・」
立花は低い声で言った。
「奴は沖縄を壊滅させ、現在沖縄沖を侵攻中。このまま真っすぐ進めば、ゴジラは鹿児島に上陸する事になります。」
「すぐに護衛艦隊を出撃させるべきだ。陸上自衛隊はスーパーX並びにスーパーXⅡ、ガルーダは鹿児島に待機。戦車隊も五個師団は必要だな・・・。」
黒木もいつに無く落ち着きが無い。必死に戦略図を組み立てていく。そこへ、立花が横から声を出す。
「そんな人員じゃ足りない。5個師団?冗談じゃない。・・・全機だ。出動できるかぎり、全て。もちろんメーサー機、戦闘機もだ。それから、テスト段階まで開発が進んでいる新型機も出撃させる。あと、宇宙のアレも。」
「!?そんな無茶な!今回の新型機は新技術が導入されていて、まだ扱いがわかっていないんですよ?それに、『DT』は周りにどんな被害を及ぼすか・・・。」
「そんなことを言っている場合ではない。奴に生半端な攻撃は通用しない・・・。本当なら、これでも足りないくらいだ。格が違うんだ、あいつは・・・。」
「・・・・メカニックの伊吹さんに新型機の準備をするよう連絡を取ってくれ。」
「特佐!」
「ただし准将、もしもこの選択が間違ったという事になれば、それなりの責任は覚悟できますね?」
「・・・・わかった」

「何、今から!?」
メカニック担当の伊吹吾郎(いぶきごろう)は驚いて言う。ちなみにスーパーXやガルーダを手がけたのは彼だ。 
「しかしねえ、新型メーサーの方はまだ何とかなるとして、この二機はなあ・・・」
伊吹は目の前の巨大な二つの鉄塊を見上げる。
「こいつらはまったく新しいシステムだし、テストもしないで実戦ってのも・・・いつオーバーフローするかわからないし。」
「お願いします。緊急事態なんです。」
黒木は滅多に下げない頭を下げた。伊吹は困ったように頭をかいた。
「・・・・まあ仕方ない、特佐さんの頼みだ。ただしちょっとでも異状がみられたら運行は停止させてくれ。」
「わかりました。ありがとうございます。」

格納庫から地響きをたてて次々出動する戦車、メーサー、戦闘機。地上には深緑の道が永遠続いているかのようだ。
「スーパーXは第一滑走路へ。」
スーパーX:コクピット
「射撃はよろしくな、長野」
「はい。・・ところで三宅隊長・・・」
「ん?どうした?」
「今回も僕はティ●にはなれないんですか・・?」
「ん、まあそうだろうな。ま、とにかく頑張ろう。」
「・・・・・はい。」
「スーパーX発進。続いてスーパーXⅡ、第一滑走路へ。」
スーパーXⅡ:コクピット
「こちら黒木。部隊の指揮はお任せします、准将。」
「そちらこそ、堕ちないように気をつけてくれよ。」
「わかっています。では。」
(今度こそ、止めてやる!)
「スーパーXⅡ発進。続いて第3ハッチ開放、ガルーダリフトアップします。」
ガルーダ:コクピット
「そういえば、茜ちゃん元気かな~あれから会ってないけど。」
青木は色々な妄想を頭に浮かべた。しかし、そのせいで・・・
「ガルーダ、速やかに発進してください、後がつかえています。」
「おっと、ヤベ!」
急いで発進したガルーダはフラフラと上昇した。
「続いて『ジェットジャガー』、発進位置にスタンバイ。」
人間の形をした巨大な機体が、滑走路を歩いていく。そして、手を両手にあげて、空へと飛び上がった。
「ジェットジャガー発進、続いて『メカニコング』発進位置にスタンバイ。」
今度はゴリラのような機体が滑走路を駆ける。そして、背中から火を吹かして宙に舞った。
「頼んだぞ、ジャガー、コング・・・」
管制室から伊吹は二機を見守った。

宇宙・地球軌道上
「何!?Gが現れたって?」
谷原章介(たにはらしょうすけ)はやっと来た仕事に少し嬉しそうだった。
「いや~このスピップ号の操縦室に閉じ込められて1年、もう忘れられてるんじゃないかと心配したよ。」
「閉じ込めって・・・・と、とにかく例のヤツ、準備しといてくれよ。」
「はいはいりょーかい、准将。・・・あそうだ、ついでにムーンライトSY3も地球にやっとこうか?」

海上自衛隊、航空自衛隊は既に鹿児島湾に侵入しつつあるゴジラを捕捉していた。
「目標を肉眼で確認。攻撃を開始します。」
一斉攻撃が始まった。ヒューイコブラ、F-15、イージス艦隊の怒号の放火。その爆音は天をも切り裂いた。たちまち黒煙がたちこめる。だが、一瞬先青白い閃光がそれを吹き飛ばした。それだけで9機もの戦闘機が炎に包まれた。
「ひるむな!一歩たりとも進ませてはならああああん!!」
戦艦のロケット弾攻撃がゴジラの胸に次々突き刺さる。しかし、まるで傷ひとつ付かない。フリゲート艦隊の爆雷も無意味だ。そんな哀れな艦隊をゴジラは恨むように、鋭くにらみつける。その空虚な眼が、ますます破壊神の形相を装わせていた。ゴジラの背びれが発光し、口元が歪んで見える。そして、その青白い熱線『放射熱線』はまとめて艦隊を焼き払った。四散、炎上し海底へと沈んでいく鉄塊。その炎をゴジラはじっと見据え、高らかに咆哮した。

山口県・某所
「海自、並びに空自からの連絡が途絶えました。」
戦車、メーサー車の並ぶ荒野。その報告は空しく戦場となる地に響き渡った。
立花は憮然とした顔つきでモニターに映る黒い巨影を見つめた。
「死んでいなかった・・・・という事か・・。」
ひとつ深いため息をつくと、立花はオレンジがかった空を見上げた。
(大和聖獣達・・・どうか我々を見守っていてくれ・・。)

「結局、彼らは間に合いませんでしたわね・・・。」
声がした。それは、自衛隊とは別のヘリの中だ。
「彼らは今どこ?」
質問された少女はこめかみに手を当てて目を閉じて応えた。
「コウリュウ使いは沖縄にいる。禍津日と戦って気絶してるみたい。あの子は・・・飛んでる。コウリュウのところへ向かってる。どうやらセイリュウをだせるようになったみたいね。あと、ビャッコは・・・何の動きもないわ。」
少女は見もしない光景を次々読み上げた。
「まったく、これじゃあ何のために彼らを沖縄にこさせたのかわかりませんわ・・・。」
明日香はふぅとため息をついた。
「・・・それにしても、超能力ってのは便利すぎて恐いくらいね、未希。」
「何よ、今更。」

地面に不気味に響き渡る足音は、ゆっくりと近づいていた。兵士たちは息を飲んだ。既に空には星が輝きだしている。再び鳴り響く足音。その足音は次第に大きくなっていく。緊張が走った。メーサー機が一斉に足元のほうへ砲塔を動かす。足音は目の前まで来ていた。耳が裂けるような禍々しい咆哮。そして、その黒い破壊神は、ゆっくりと姿を現した。
「ハイパワーレーザービーム車は前へ!」
前進する両者。そして、ハイパワーレーザービーム車の真紅の閃光が、戦いの火蓋を切って落とした。真紅の閃光はゴジラの喉元を集中攻撃。しかし、ゴジラの歩みは緩まない。
「熱線砲、援護!」
他よりも数倍大きいパラボラ砲塔から、オレンジの野太い熱線がゴジラの皮膚を焼ききろうとする。しかし、ゴジラに苦渋の表情はない。さらに74式戦車の鉄鋼弾がゴジラの全身を貫こうとする。だが、結果は同じだ。ゴジラがまた一歩前進する。その瞬間、足元が爆炎を上げた。ブラスト・ボム。地面に仕掛けられていた単一方向性爆弾。これは効いた。
「メーサー隊総攻撃!」
ここぞとばかりにメーサー殺獣光線車、92式メーサー車、93式自走高射メーサー砲、ガルーダが一斉に火を吹く。ようやくゴジラが苦しみの咆哮を上げる。そこにすかさずカドミウム弾を放つスーパーX。それはゴジラの口内に見事命中した。もがくように鳴き叫ぶゴジラ。その時、ゴジラの背びれが突如発光した。放射熱線が放たれる。全兵士に恐怖が走った。
しかし、そこへ黒木のスーパーXⅡが立ちふさがる。ファイアーミラーだ。熱線がゴジラの元へ帰っていく。1万倍の威力になった自分の攻撃を受け、のけぞるゴジラ。
恐ろしい事に、これまでの陸自の損傷はなかった。
「このまま押せば・・・いける!」
兵士たちの顔に、ようやく光が戻ってきた。

だが、このときはまだ誰も予想していなかった。まもなくこの地が、惨状の地と化す事を・・・。

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最終更新:2007年05月06日 21:51