『M(ミュータント)育成学校』。(通称:Mスクール)ミュータントとして生まれた者が
必ず通う施設である。ミュータントとは人間離れした身体能力をもった超人類のことだ。
18歳から入学でき、3年間通う。ここで基礎勉強・実技訓練を学び卒業試験にうかれば、
対怪獣用戦力の一つである「M機関」に入隊することができる。M機関というのは、
十数年前より確認されているミュータントだけを集めた戦闘組織のことを指す。
また、防衛軍の中にある一戦力としても活躍する。防衛軍の組織にはM機関を含め
「防衛軍隊」・「機龍隊」など、様々な戦力が存在する。M機関はそのうちの一つである。
ただ、ミュータントとして生まれた者はM機関にしか入れないという条件もある。
今日もM機関に入隊するため、多くの生徒がMスクールで勉強をしている。
第一話↓
―――2006年

優馬「・・・ふう。今日も一日がんばらないと。」

彼の名前は皆本優馬(みなもとゆうま)。この学校に通う3年生である。もうすぐ卒業だ。
ミュータントは兵器と己の肉体を用いて戦うが、優馬は兵器・格闘のどちらの成績も
優秀である。性格は完璧主義で、今まで基礎勉強や実技訓練など完璧にこなしてきている。
3年前、地球を襲ったX星人から全世界を守った勇将・「尾崎真一」にあこがれている。

隼人「おっす!優馬。」
優馬「おお。おはよう、平岡。」

彼は平岡隼人(ひらおかはやと)。優馬同期で優馬成績を上回るエリートである。
父が元M機関の大佐だったため、自然にエリートとなる。隼人は兵器でも成績は上位だが、
肉弾戦では群を抜くトップクラスの実力を誇る。優馬はライバル同士のような関係。
優馬には一目置いているようであり、チームを組むとなれば真っ先に優馬選ぶことも。

優馬「今日は早かったんだな。まだ教室入室までには時間があるぞ?いつも遅いじゃんか。」
隼人「な~に。たまにはライバル同士、仲良く登校しようよ♪」
優馬「・・・なに言ってんだよ・・・。」

Mスクールには6教科授業があり「用語・戦略・歴史・科学・英用語・実技」の6教科だ。
用語とはM機関が使う言葉を勉強する、普通の学校でいう「国語」のようなものだ。
戦略とはM機関で様々な戦いに対応できるよう戦法を学ぶ。いわゆる、「数学」である。
歴史とはこれまでの怪獣出現のことや地球防衛軍などの発展を辿る。これは「社会」。
科学とは実際、怪獣にこのようなことをするとどうなるのかを学ぶ。「理科」である。
英用語はM機関が使う英語の言葉を勉強する、中学校などの「英語」ようなもの。
実技とは兵器を実際に使用し、体験したり肉弾戦での技を磨く。「体育」ようなものである。
卒業試験は筆記試験と実技試験が行われ、特定の条件を満たすと卒業をなるのだ。

言い忘れていたがこのクラスの連中は入学三年目なので、21歳である。
優馬が教室の戸を開けると、まだ誰もいない。みんながくるまで一人で今日の予習を
するのが、優馬スタイルである。隼人は机の上で足を組む格好で席に座った。

隼人「なぁ、優馬・・」
優馬「話しかけるな!今日の予習をするところなんだ!」
隼人「なんだよ、お前。お前ほどの頭があれば予習なんていらねぇだろ?」

隼人は優馬の肩に手を置きながら言った。

優馬「うるさい。・・・で?なんか話があんの?」
隼人「あのさぁ、沙織のこと・・・・どう思う?」
優馬「ああ・・・田村さん?」

田村沙織(たむらさおり)。優馬や隼人と同じクラスの女性である。
容姿美麗で、彼女を狙う男も少なくない。目だった功績は特にない。
冷静沈着であり、利口ぶった態度も時々見られる。

優馬「・・どうかしたのか?」
隼人「あいつさぁ、キレイな奴だけど無愛想だし利口ぶってるじゃん。あ~いうの嫌いなんだよな。オレ。」
優馬「・・へぇ~。まあ、オレもあんまり深くは考えてないけど。あの人のことは。」

優馬はまるで興味がないように答えた。

隼人「今日は3時間授業で、用語・歴史・実技か。」
優馬「・・・そうか。今日は特別日課で、三時間だけだったな。」

そう話しているうちに時間は過ぎ、教室入室時間となって多くの生徒が
教室へ入室してきた。彼らはまるでミュータントではないような普通の
学生のようにはしゃいでいる。あっという間に教室は騒がしくなった。
登校にしてきた生徒の中には、田村沙織の姿もあった。

優馬「はぁ~あ、結局!予習できなかった・・・。」

優馬は頭を強くかきながら言った。

隼人「・・・オレのせい?・・・まぁ、いいだろ?三時間だけなんだし。」
優馬「・・・お前はエリートだから、そういうことが言えるんだよな・・・!」
隼人「・・・・?」

するとガラッという音をたて、教室に入ってきた人物がいた。
ざわついていた教室は一気に活気がなくなり、静かになった。

武田「みんな席につけ~!」
隼人「あ!きた!武田さん!」

武田光秋(たけだみつあき)。このクラスの担任をしている。通称・「武田さん」。
教師歴8年のベテランで、歴史の授業を担当教科としている。キレるとめちゃくちゃ怖く、
多くの生徒に恐れられているが生徒のことはしっかりと面倒を見る、根は優しい先生だ。

武田「え~と。今日、君たちは特別日課です。先生たちでそろそろ卒業試験のことを考えていかなくてはならない時期なので。君たちは早く帰って、卒業試験に備えること!
うかうかしていられませんよ?君たちはあのM機関に入隊するかも知れないんだから!」

隼人(・・・やっぱ朝は、武田さんのうざったい説教から始まるんだよな。)
沙織(M機関・・・ねぇ・・・。)
優馬(それだから今日は短縮なんだ。帰って勉強だ!絶対合格してやる!)

キンコンカンコ~ン♪

武田「チャイムが鳴ったな。じゃあ一時間目の用意して~。」
優馬「一時間目は用語だな。」

―――一時間目開始。

友里「はい。これは・・・「轟天号」と読みます。」

立花友里(たちばなゆり)。Mスクールの用語を担当。この学校の先生の中では、一番若い。
友里「じゃあ、みんな読んでみて~。」
生徒たち「・・・轟天号!」
友里「もう一度。」
生徒たち「轟天号!」
隼人「・・・でさ、その轟天号ってなに?優馬なら知ってるだろ?」
優馬「なに言ってんだ。お前の父さんは元M機関大佐だろ?聞いてないのか?」
隼人「親父がM機関だったのは、オレが赤ん坊の頃なんだよ。知ってるわけねぇだろ。」
優馬「轟天号ってのは・・・・・・・わかんないっ!」

あまりに意外な返答に隼人は机に頭を打った。

隼人「痛って~!」
優馬「オレのせいかよ。」
隼人「違げぇよ。・・・なんでお前が知らないんだって思ってよ。」
沙織「なにやってるの、二人とも。授業中でしょ?」
隼人「はぁ~、・・・はいはい。」

隼人は大きくため息をついて答えた。

友里「続いてこれは・・・「百発百中」と読みます。では読んでみて。」
生徒たち「百発百中!」
優馬「は?こんな言葉、勉強しなくてもわかるよ。」
沙織「・・・なんでも「醍醐事務総長」って人が多く口にするそうよ。」
優馬「・・・へぇ~。」

とまぁ、こんな感じで授業は続き用語の授業は終わった。

隼人「あ~~~!終わったぁ~。」
沙織「・・・次は武田さんの「歴史」の授業ね。」
隼人「あ~あ!あの人の授業は重みがあって、どうも苦手だな。」
優馬「歴史は興味があるぞ・・・!」

だがいつものように、武田は授業開始時間に遅刻し生徒たちは
武田がくるまでやりたい放題だ。するとガラッと戸が開き、武田が入ってきた。
教室は一気に静まり返り、張り詰めた空気で充満されていく。

武田「・・・よし。それじゃあ、始めましょう~。」
隼人「・・・きたきた・・・・!!」
沙織「全く!いちいち、うっさいわね!」
隼人「・・・はいはい。わかりました、黙るよ。」
武田「え~と、前は機龍隊発足までやりましたね。では今日はその機龍対ゴジラの場面を
   やりましょうかね。」
優馬「結構、歴史も終盤に差し掛かってきたな・・・。」
武田「え~、防衛軍でも歯が立たなかったゴジラに機龍を使用することで、多大な
   ダメージを与え撃退に成功した。とある。そこでだ!ズバリ、ゴジラの撃退に
   成功した機龍の最終兵器の名前を知っている人はいるか~?」
優馬「なんだっけ?・・・アブソリャート・ゼリー?違う!なんだっけ?」
沙織「はい。」
武田「あ、田村。答えられるか?」
沙織「はい。・・・機龍の最終兵器は、「アブソリュート・ゼロ」です。」
優馬「そうだ!それだ!」
隼人「・・・ちっ!」

隼人は沙織が答えたのを見て、不満そうに舌打ちをした。

武田「はい。正解です。しかし家城隊員のアブソリュート・ゼロのゼロ距離発射により、
   アブソリュート・ゼロ破損。並びにゴジラには逃げられたと教科書にはあります。」

武田は右手で教科書のページをめくり、左手で腰をボリボリかきながら言う。

武田「そこで次です。アブソリュート・ゼロの修復は不可能と見なされ、機龍には代わりの
   兵器が搭載されました。では、この新兵器の名称を分かる人は答えてください。」
沙織(わかるけど、いいや。)
隼人・優馬「はい!!」
武田「おあ!二人同時か。でも、手を上げるのがちょっとだけ早かった隼人に答えてもらう。」
隼人「はい!確か、三連ハイパーメーサーだったような・・・。」
優馬「・・・・ちぇっ。」
武田「正解です。」
キンコンカンコ~ン♪
武田「はい、これで終了にします。今日は皆さん集中して授業を受けていられたと思います。」

隼人「ふぅ~、なんか今日の武田さんさぁ、なんか優しくなかったか?」
優馬「そうか?授業の時はいつもあんなふうだとは思うけど・・・。」
沙織「・・・試験も近いし、わたしたちにストレスを溜めないようにしてるんじゃない?」
優馬「・・・ああ、それかも。」
隼人「ったく。またお前の意見、採用かよ・・・!」


3時間目、実技の授業

片桐「おらぉあ~!そんなことじゃM機関には入れんぞ!もっと腰を入れろ!」

片桐光男(かたぎりみつお)。Mスクールで実技を担当する熱血教師。
いつも竹刀を持っている。マジメに授業しないとこれで叩かれるという寸法だ。
今は生徒全員で蹴りこみの練習をしているところだ。これが結構、キツイのだ。

生徒「せあ!せあ!せあ!」
隼人「こんなの、格闘戦の達人のオレにはお茶の子さいさいだ。」

バシッ!体育館中になにかで叩いたような音が響く。
生徒たちの視線は叩かれた方へ、自然に集中する。

生徒「痛ってて!」
片桐「てめぇ、マジメにやれ!蹴り方が甘いんだよ!」
生徒「・・・すいません。」
優馬「やれやれ。あ~ゆ~の見てると、ムカついてくるよな。」
隼人「自分は一生懸命やってるのに!・・・ってか?」
優馬「うるさいな。」
沙織「二人とも!先生きたわよ!」

片桐は竹刀を床に叩きつけながら三人のところまで迫ってきている。
三人は、慌てて蹴りこみを再開する。片桐は一瞬、三人を睨んだが
そのまま、その場を通り過ぎていった。

隼人「・・・ふぅ~。命がけだな。・・・実技の授業。」
片桐「よし!蹴りこみ終わり!それでは三人一組をすぐにつくれ!」

それを聞いた優馬、隼人、沙織は自然と決まっているように三人組みを作った。

優馬「先生、一体なにをするんですか?」
片桐「これから説明する。今からその三人組みで模擬戦を行ってもらう。」
優馬「模擬戦?」
隼人「模擬の格闘戦ってことか。」
片桐「卒業も近いお前らには、そろそろこのような訓練も必要だからな。
だが、三人一組では一対一はできない。そこで三人の中から一人!
審判を決めてもらう。模擬戦で熱くなりすぎて死者が出ても困る。
審判に決まった者は勝負がついたと判断したら、止めに入れ!
止めが入った場合、すぐに終了。審判は戦った二人にアドバイスなど
あげてもいいだろう。・・・では、各組ごと模擬戦に入れ!!」

優馬「んじゃあ、誰が審判やる?」
隼人「そりゃあ、沙織だろ?」
沙織「わたし?」
隼人「決まってるだろ。お前がオレらと対等に戦えるわけないし・・・。」
沙織「・・・あんたね・・・。」
優馬「まぁ、とりあえず最初は田村さんが審判で頼むよ。」
沙織「分かったわよ。それじゃあ、二人とも前に出て。」

優馬と隼人は一歩前進し、向かい合う。いきなりライバル同士の戦いだ。
他の多数の生徒も、自然と視線が二人の方向へいってしまう。

沙織「それでは、皆本優馬VS平岡隼人の模擬戦を行います。」
優馬「・・・・。」
隼人「・・・・。」
沙織「・・・・始め!」

まずは優馬が一発、蹴りを入れる。隼人はそれを軽々と受け流す。
蹴りの勢いがありすぎたせいか、優馬は受け流されたくらいで体勢を崩す。
フラついている優馬の背中を隼人が蹴りつける。優馬は体育館の床に倒れこんだ。
隼人の方が肉弾戦の技術は上なので、先手を取るのは隼人と言い切っていいだろう。
起き上がった優馬の蹴り。しかし隼人は受け止める。だが優馬は残っている片足で
隼人の顔面を蹴りつける。「シャイニング・ウィザード」というプロレス技だ。
この技は優馬の最も得意とする技である。しかし隼人は怯まず優馬の足を持ち続ける。
そして次の瞬間、隼人はそのまま自らを回転させる。優馬も足を持たれているため回転。
「ドラゴン・スクリュー」である。この技もプロレス技で自らを回転させ相手も回転させる。
しかし発動者は相手の足を持っているのでダメージは全て相手が負う。隼人の得意技だ。
だが両者とも体力の消耗が激しい技を使ってしまったために、肩で呼吸をしている。

優馬「やっぱり強いな。お前は・・・痛って!」
隼人「さっきのドラゴン・スクリューが効いてるみたいだな。お前のシャイニング・ウィザードもかなり痛かったけどよ・・・。」
沙織(二人とも・・・まだいけそうね。)

沙織はそう判断し、二人の戦いを止めなかった。優馬は右膝をさすりながら立ち上がる。
隼人は優馬のシャイニング・ウィザードをモロに顔面に食らったが、さほどダメージはないようだ。
次の瞬間、隼人は飛び上がり自らの膝を曲げ、そして勢いよく突き出しドロップキック。
優馬は腕を交差させガードしたが膝の痛みで足の踏ん張りが効かず、その場にしりもちをついてしまう。
すかさずそこへ隼人が走りこみ、拳を突き出す。だがそれを、優馬は前転をしてよける。
そしてまた二人は再び対峙し、沈黙する。するとそこへ沙織の大声が響いた。

沙織「そこまで!」
隼人「・・・?あ?なんでだよ。まだ始まったばかりだろうが。」
沙織「なに言ってんの?優馬はさっきから膝の痛みで勝負に集中できてないじゃない。
   このまま続けても、症状が悪化するだけ。よってこの勝負はここまでにします!」
優馬「・・・ん、まぁ、そうしてくれたほうがいいや。・・・痛って・・!」

優馬は膝をさすりながら、つぶやいた。

片桐「よし!全班、模擬戦は終わったな。では次は兵器体験をするぞ。」

このMスクールはM機関に許可をもらい、兵器を少しわけてもらっている。
片桐は体育館の用具庫からミュータントの標準装備・「メーサー銃」を取り出し
生徒に配った。生徒たちはいつものように興味津々で、はしゃいでいる。

片桐「これからその銃を使って、実技訓練を行う!」
沙織「今日はどんな訓練をするんですか?」
片桐「あれを見ろ。」

片桐が指差した方向には横に長い台の上に空き缶が置いてある。

隼人「・・・・なるほど。」
片桐「勘のいい奴はもう分かったろ。今からそのメーサーであの空き缶を撃ち抜くんだ。」
優馬「オレは兵器の扱いは得意だから、楽勝かも。」
片桐「ただし撃つ際にはこの線から撃て。空き缶までの距離、10mだ。」
生徒たち「10m!?できっこないっすよ!!」
片桐「はじめから諦めてるようじゃあできるわけねぇだろ。考えるより先に動け!」

すると一人の生徒が一歩前進し、メーサー銃を構えた。
しかし緊張しすぎているのか、トリガー(引き金)をなかなか引けない。

生徒「・・・あわわわわ・・・・・!」
片桐「・・・撃てねえか。じゃあ次にやる奴、出て来い!」

今の生徒の緊張様からか、他の生徒は誰も立候補しようとしない。
すると、この男が名乗り出た。

優馬「オレが撃ちます。」
片桐「ほぉ、優馬か。お前は兵器の成績は優秀だからな。・・・よし、やってみろ。」

優馬はメーサー銃を構え、片目を閉じて狙いを定める。そしてトリガーを引いた。
銃口から放たれた青白く細長い閃光は、見事空き缶を撃ち抜いた。

生徒たち「おおおお!さすが優馬!」
片桐「まぁ、当然の結果だな。よし!どんどん出て来い!」

今の優馬の成功を見て、他の生徒は自信がついたようで次々とクリアしていく。
当然、隼人や沙織も成績は優秀なので楽に空き缶を撃ち抜いた。

キンコンカンコ~ン♪

片桐「おっ、チャイムか。じゃあ今日はこの辺で授業を終了するぞ!」

―――教室

隼人「ふぅ~、これで今日の授業は終わったな。」
優馬「そっか、今日は短縮日課だったんだ。」
沙織「・・・・。」

―――帰りの会:先生からの連絡

武田「え~、不慣れな短縮日課も無事終わりましたね。明日も短縮です。試験前日なので。
   早いものですね。時が経つのは。君たちがあと二日でこのMスクールから去るのは悲しいです。まだ怒鳴り足りなかったりするんですよね。君たちのことを。・・さて!
   さっきも言ったように、明日も短縮なので午後の時間を有効に活用してください。
   ここで余裕ぶっこいて午後、だらけているような奴は滅びますよ?以上!解散!!」

生徒たち「ガヤガヤガヤ・・・・・。」
優馬「さて、帰って勉強だ。」
最終更新:2007年09月27日 20:06