―――翌日。
国木田から呼び出しを受け、熊坂は任務司令室にいる。先の激戦の報告でもしているのか。すると突然、国木田が立ち上がる。
国木田「・・・そうか。被害は甚大・・・、戦死者も出ただろう・・・・。」
熊坂「少将、まるで戦場にあなたもいたかのように言うのですね。・・・あなたは本部で待機されていたはずでは・・・・?」
それを聞いた途端、国木田は目を血走らせ、わずかに身震いしている。それを確認し、熊坂はさらに畳み掛ける。
熊坂「――それに。・・・残念でしたね。浮葉たち3名は重傷だったものの、医療班の迅速の対応で一命を取り留めています。結果、此度の死者はゼロです。―――
バラゴンは殺られてしまいましたが・・・。」
国木田の体が、まるで振動しているかのように震える。そして右手を軍服のポケットの中に入れた。その手には―――拳銃が握られている。だが熊坂は気づかず、話をやめない。
熊坂「以前から部下にね、あなたの言動が不自然だっていう報告がされているんですよ。あの成宮からも密かに報告は受けていましたが・・・・。挙句の果てにはあなたがX星人と繋がっている・・・・な~んて言う者も出てきましてね。」
次の瞬間、国木田がポケットから右手を出し、即座に拳銃を放つ。あまりに突然のことに熊坂は反応できず、銃弾は彼の肩を貫通した。ドッと床に座り込む熊坂。肩を抑える指の間からは、禍々しい血が流れ出ている。拳銃を突きつけながら国木田が迫る。
国木田「ふっ、そんなに部下の話に耳を傾けていると、知らなくていいことも知ることになる。」
熊坂「・・・ぐっ!・・・・お前は一体何者なんだ!?目的はなんだ!」
国木田「―――あの時。なぜ私が素直にバラゴンの出撃を許可したか分かるか?」
あの時・・・・。熊坂もあの出来事のことはずっと不審に思っていた。あの国木田があまりにも素直すぎた。
国木田「あのバラゴンの脳内にはな、特殊回路が埋め込まれていたんだ。その回路がある限り、バラゴンは『我らが統制官』の発するエネルギーによって自由自在に操れる。――本当はあの戦いの中にバラゴンを投入し、お前たちの士気を上げさせたところでバラゴンを狂ったように暴れさせ、貴様ら絶望に陥れ、始末する予定だったが
ジャッカルの奴はしくじったな。」
熊坂は肩で荒く呼吸しながら、国木田の話を聞く。一方的に話され、混同してしまいそうだが―――これではっきりした。この男はX星人側だ!始末するなら今だが、肩の激痛で動くことさえ困難だ。それを見て国木田は、邪悪な笑みを浮かべ、熊坂の額に拳銃を押し付ける。
国木田「あまり調子に乗ると死ぬぞ。「熊坂上官」・・・・。」
トリガーを引こうとしたその時、急に扉がノックされた。なんとも場違いな効果音だ。そして「失礼します」という声と共に、一人の少年が入室してきた。
玉木「国木田さん、任務遂行の報告を・・・・って、なにしているんですかっ!?熊坂さん!?」
国木田「・・・虫が・・・・一匹迷い込んだか。」
国木田が玉木に拳銃を構えなおそうとするが玉木の方が速く、国木田の腕を掴み取り、その腕を捻じ曲げた。悲痛の声を上げ、そのまま床に倒れこむ国木田。
玉木「・・・何人なりとも、熊坂さんを傷つける者は、私が成敗します!」
国木田「くそっ!餓鬼め!」
熊坂「助かったぞ玉木。・・・よしその男を会議室に連れて行け。」
玉木「分かりました。熊坂さんは、傷の手当てをお早く!」
熊坂「・・・・ああ。」
さぁ、早く。と熊坂が玉木に促す。玉木は少々手荒に国木田を立ち上がらせると、任務司令室をあとにした。それを見届け、熊坂も司令室から出る。そして医療班のもとへと急いだ。
―――優馬の個室。室内は張り詰めた空気で満ちていた。
隼人「今回はなんとか助かったけどよ、・・・次はやばいぜ。向こうもまだ力を隠しているに違いねぇ。」
沙織「修行・・・し直しね。」
隼人と沙織が緊迫感に満ちている傍ら、優馬はなぜか、一人だけそわそわしており落ち着かない様子である。そして・・・・『あれ』を打ち明けることを決心した。
優馬「・・・・あ、あのさ。二人に言わなきゃいけないことがあるんだ。」
急に真剣な表情で話し出した優馬を見て二人は一瞬、きょとんとするが、沙織の表情はすぐに優馬と同じものとなる。
沙織「なに?・・・・話して。」
そして優馬は語り始めた。―――時は、あの「物資採取任務時」まで遡る。あの時一行は国木田車を利用し、妙高山まで赴いた。その車内で優馬は見てしまった。『地球人類抹殺計画』と表紙に書かれた、禁断の書物を。あの時は気が動転していて咄嗟の判断ができず黙っていたが、今回X星人たちが攻めてきたこともあり、話した方がいいと思った。
優馬「・・・黙っていてすまない。もっと早く伝えていれば、こんなに被害は・・・・。君たちが傷つくことも・・・・なかった・・・!」
うっすらと眼に涙を浮かべる優馬。だが沙織は首を横に振り、その後に優しい笑みを浮かべ、優馬の肩に手を置いた。優馬は思わず驚いた表情で顔を上げる。
沙織「気にしないで。もう過ぎてしまったこと・・・・。過去を悔いてもなにも変わりはしない。それになによりあなたは・・・先の戦いでそれを返上する活躍を見せてくれたじゃない。あの時助けにきてくれなかったら、今頃私たち二人は―――死んでいた。」
あの無愛想だった沙織とは思えないその微笑に、眼から涙が溢れてしまう。頬を伝い、床に滴る雫。優馬は俯いたまま顔を上げない。そして、いい年した男がなに泣いてんだかと言いながら、沙織は優馬を優しく抱きしめた―――。
優馬「うっ・・・・く。・・・・」
隼人「―――けっ。・・・・なぁ、いい雰囲気のとこ悪いけどよ。これってやばいんじゃねぇのか?さっさとM機関の上層部様に・・・」
優馬「だ・・・大丈夫。このことは既に、ある人に伝えてある。」
―――会議室。机を激しく叩く音が室内を振動させる。しかし国木田はそれに微動だにしない。まるで呼吸するだけの人形のようだ。
ゴードン「吐け!てめぇの車内にあったこの書物はなんだ!?この表紙を見る限り、てめぇはX勢と繋がっているんだろ?こんな物を車内に放置しておくなんて、飛んだ馬鹿だな。色々と知っているんだろ?ぇえ?」
国木田「・・・貴様のような単細胞突進馬鹿に話すことなどなにもない・・・・。」
ゴードンの額に血管が浮かび上がる。机をひっくり返し、国木田の胸倉を掴むと物凄い形相で迫る。
ゴードン「ならいいだろう・・・・。オレのやり方で吐かせてやる――!!」
その後室内には、深夜までなにかを殴る音が響き渡っていたという。
―――深夜二時・・・・。優馬は前にもきたことがある純白の空間に立っていた。―――すると背後から足音が聞こえる。
リンク「・・・また心を痛めているのか?」
優馬「――リンクさん・・・。」
振り返ると、リンクが腕組みをして立っていた。だって・・・と、優馬は再びうつむく。するとリンクは優馬の肩に手を置いた。
リンク「過ぎたことだ。
田村沙織にも言われただろう?お前が悔いて悔いて悔い潰れようと、なにも変わりはしない。それでも私が認めた男か?いつまでもくよくよするな。男だろう?」
優馬「みんなそうやって言いますけど、オレが黙っていたからバラゴンは死に、沙織さんや隼人、和也たちだって死ぬところだったんだ。・・・・そう簡単に立ち直れるわけが・・・。」
またもやうつむく優馬にマスターソードを突きつける。思わず眼を見開き、後ずさりする優馬。
リンク「―――少し・・・・、お前に話さなければいけないことがる。」
優馬「え・・・・?」
―――リンクは語り始めた。単刀直入に言う。この世には三つの名剣がある。お前が所持する世界最強の斬撃を誇る太古の闘剣・マスターソード。お前が先の戦いで手合わせしたジャッカルの所持する、伸縮自在の光刃・バルキリアス。そして最後の一つ。それはX星人統制官のケルベロスと言う男が所持する、伝説中の伝説。手にした者は天下を取るのも夢じゃない宝剣・エクスカリバー。それら三つの剣は合体させることができ、それを成せば、マスターソードの超威力の斬撃・バルキリアスの伸縮・エクスカリバーの鍔の宝玉から発せられる破壊力絶大の閃光。全ての能力をもった世界最強の剣が完成すると言われている。既に三つの内二つは敵が所持している。恐らく敵の狙いは・・・・・・・・お前だ!!!
優馬「―――!!」
リンク「残るはお前のマスターソードだけだ。次の戦いでは、お前が集中的に狙われるだろう。そのことは頭に入れておけ。」
優馬「・・・・・・・・・・・・。」
―――翌朝。X勢本部。トイレで用を足した
リカオンは『ある変化』に気づく。
リカオン「ジャッカルの奴・・・・いつもこの時間帯にはとっくに起きて、鍛錬している頃だよな?どこ行ったんだ?」
頭をぽりぽり掻きながら辺りを見回すリカオン。ふと真後ろに眼をを向けると、そこには
カラカルが立っていた。思わず「どわっと!」と驚きの声を上げるリカオン。だが、カラカルは微動だにせず、口を開いた。
カラカル「・・・すぐに
コヨーテを連れてきて。『ケルベロス様』がお呼びニャ・・・。」
リカオン「―――統制官が・・・?」
―――コヨーテの個室。この時間帯はコヨーテはまだ寝ているため、リカオンが起こす日課となっている。少々手荒にコヨーテの体を揺さぶり起こそうとするが、まるで死んでいるかのように動かない。舌打ち一つ。リカオンはコヨーテの腹に踵落とし。コヨーテのサングラスが宙を舞う。
リカオン「起きろってんだコラ。いつまで寝ているつもりだ!ケルベロス様がお呼びだぜ!」
コヨーテ「・・・すまん。先の戦いでの疲れが。先に行っていてくれ。すぐ行く。」
―――数分後。ある部屋に集結した一同。朝なので室内は明るく、一昨日の夜見えなかったケルベロスの顔が、はっきりと見て取れる。―――その姿は漆黒の衣服とマント。紫色のミディアムヘアー。口には八重歯がまるで牙のように閃いている。そしてなにより、彼は優馬とさほど歳が変わらない風貌だった。
リカオン「ジャッカルの野郎・・・どこ行っちまったんだ?」
ケルベロス「―――ジャッカルはもはや、オレたちの仲間なんかじゃない。」
コヨーテ「!」
ケルベロス「奴の行動なら全てお見通しだ。奴はここを抜け、防衛軍側につくつもりだ。」
リカオン「な・・・なんだとぉっ!?」
するとケルベロスは愛用の大剣を床に突き刺し、少々言葉を荒げる。
ケルベロス「リカオン、コヨーテ!任務を言い渡す!至急ジャッカルを追跡、捕縛・場合によっては――――――殺せ。」
カラカル「・・・こ・・・殺せ?・・・・ケルベロス様、それはどうかと思うニャ・・・・ひっ!」
大剣を突きつけ、カラカルを黙らせるケルベロス。――なんて冷酷さに満ちた眼であろうか。綺麗なはずの彼の蒼色の瞳は、氷のように冷たい。今の彼は仲間ですら殺しかねない。カラカルはペタンと床に座り込んでしまう。
ケルベロス「・・・・オレの邪魔をする奴は、皆敵だ。」
一言だけ言い、大剣を下ろすケルベロス。そして座っていた椅子に乱暴に戻る。ホッと胸を撫で下ろすカラカル。
コヨーテ「ケルベロス様、では私とリカオンはこれより任務に・・・。」
ケルベロス「・・・ああ。」
―――翌朝。任務司令室。肩の治療を終えた熊坂と
玉木裕太・
成宮和村・
北原奈菜が、何やら今後の方針について会合をしている様子。
成宮「・・・やはりそうでしたか。・・・・国木田少将がX星人側に・・・。」
熊坂「今後は・・・お前たちの力が戦局を大きく左右する。しっかり頼むぞ。」
玉木・成宮・北原「了解!!!」
するとそこへ扉をノックする音が響く。熊坂が入れと促す。扉が開くと、汗だくのゴードンと顔中腫れ上がった国木田の二人が入室してきた。どうやらゴードンは、今まで国木田を殴り続けていたようで息を切らしている。
ゴードン「だめだこいつ。黙してなにも喋ろうとしねぇ。」
前方に乱暴に国木田を放り投げる。床に倒れこむ国木田だが、死んでいるように動かない。
成宮「ゴードン大佐・・・少々やりすぎですよ。」
ゴードン「しょうがねぇだろ。話せば解放しようと思ったがなにも話さねぇんだからよ。」
倒れている国木田の背中を踏みつけながら少々、怒り気味に言い放つゴードン。それを見て熊坂は一つため息を漏らしながら、首を横に振った。
熊坂「もういいゴードン。国木田を放せ。あとはオレがその物騒な書物を読み倒して、X星人の目的の真相を暴いてやる・・・・!」
ゴードン「――――ちっ!」
舌打ち一つ。ゴードンは「地球人類抹殺計画」の書物を熊坂に向かって放り投げた。それを片手で受け取る熊坂。それを見届け、ゴードンは思い切り扉を閉め、部屋をあとにした。それを見て成宮は、やれやれといった様子。そして熊坂は地球人類抹殺計画の書を読み始めた。
―――同時刻、地球防衛軍本部付近。そこにはあのジャッカルがいた。優馬の奥底に眠る才能を垣間見るため、X星人を抜けたジャッカル。この行為は決して許されることではない。が、そんなことは分かっている。どうせリカオンとコヨーテあたりが追撃にくるだろう。そんなことをを考えながら歩いていた―――――その時!!
リカオン「ヒャッハ~ッ!!」
ジャッカル「――!」
背後から飛び掛ってくる、死神のような禍々しいリカオン。そのディノサイスの一撃を間一髪でかわす。だが、すぐにコヨーテが神速の爪牙をもって突っ込んでくる。瞬時にバルキリアスを取り出し、何発か受け止め一瞬の隙を見てコヨーテを蹴飛ばす。そして距離をとるため、後ろへ跳躍した。
リカオン「―――っち!・・・やっぱ、簡単には死なねぇか。」
コヨーテ「――――。」
ジャッカル「・・・お前たち・・!」
太陽を背に、リカオンとコヨーテのシルエットだけが浮かび上がる。二人の持つ得物は太陽光を反射し、目がくらむほどに煌いている。思わずジャッカルはその眩しさに顔の前に手をかざす。
コヨーテ「ケルベロス様からの命令だ。―――貴様を拘束する。帰ったら、少々苛烈な拷問が待っているぞ?」
リカオン「でもよぉ、こいつはオレたちを裏切ったんだぜ?拘束して拷問してそれで、はい仲直り♪で終りかよ?いっそのことさ、―――――ここで殺してオレたちの手柄にしようぜ?」
ジャッカル「―――――!!」
コヨーテ「・・・よせリカオン。ここは地球防衛軍の本部付近だ。技が派手なお前が暴れては、すぐに奴らに察知されてしまうぞ。」
するとリカオンはため息一つ。ディノサイスを地面に突き刺した。
リカオン「いいだろ?そんな奴らオレたち二人の敵じゃねぇって。・・・・・それにさ。前から思ってたんだよ・・・。」
コヨーテ「・・・・?」
リカオン「Ⅲ-Xの中じゃあ、あいつが一番できが良くていっつも褒められてただろ?そういうの見てて以前からムカついてたんだ。いつかボコってやりてぇって。・・・・な?絶好のチャンスじゃん?今。」
コヨーテ「・・・・餓鬼かお前は・・・・。」
リカオン「まぁ、いいや。じゃあてめぇは手ぇ出すな。そこで見とけ!こんな奴、オレ一人で十分だからよっ!!」
コヨーテ「・・・・・好きにしろ。」
呆れたコヨーテは3歩ほど後ろに下がる。それを見届けリカオンは、邪なる笑みを浮かべ、ジャッカルに猛スピードで迫る―――!
ジャッカル(――――来るっ!)
咄嗟にジャッカルは腕輪を手に取り、バルキリアスを発動する。ディノサイスがジャッカルの命を斬り裂こうと暴れまわる。その猛攻を冷静に的確に受け止め、かわし、対処するジャッカル。
リカオン「やっぱ通常の斬撃じゃ、こいつにゃ効かねぇ・・・・。」
通常攻撃では倒せない。そう確信したリカオンは続いて空高く跳び上がる。同時に身構えるジャッカル。するとリカオンはまるでブーメランのようにディノサイスをジャッカルに向かって投げる。空気を斬り裂くような音を立て、回転しながら迫る大鎌。しかしその巨大さ故にスピードがない。避けろと言っているようなものだ。この程度の攻撃――!いとも簡単にジャッカルはディノサイスをかわした。
リカオン「――――!」
ジャッカル「この程度の速度の攻撃ではオレは倒せん。」
コヨーテ(・・・・・フッ。・・・・・甘いんだよ。)
不気味な笑みを浮かべるコヨーテ。それに続き、リカオンも甲高い声で爆笑した。
リカオン「―――へっ。誰がこんなのろまなブーメラン攻撃でお前を倒そうと思うかよ!」
ジャッカル「なに?―――――!?」
よく見てみれば、ディノサイスの柄の先端から肉眼ではやや見えづらいワイヤーがリカオンの手に向かって伸びている。
コヨーテ「・・・そう。ブーメラン攻撃をわざと外し、相手が油断している内に柄に巻きつけておいたワイヤーを引っ張る。引き戻された鎌は相手を斬り裂く二重攻撃。・・・言わばヨーヨーの原理だ・・・。」
ジャッカル「―――くっ!」
ジャッカルはありったけ体を翻し、それを避けようとする。だがそれより早く、リカオンはワイヤーを引っ張る。引き戻されたディノサイスは勢いよく、ジャッカルの脇腹を深く抉った。迸る禍々しき紅。たまらずジャッカルは地面に倒れこむ。すかさずリカオンは引き戻したディノサイスを握りなおし、振り上げて空中からジャッカル目掛けて急降下する。完全に必殺の技だ。食らったら間違いなくあの世行きである。精一杯の力を振り絞って、ジャッカルは地面を転がった。目標を見失ったディノサイスが地面に深く突き刺さる。必殺の一撃であったため、なかなか引き抜けない。すかさずバルキリアスを伸ばし、リカオンの左足に巻きつける。そのまま持ち上げ、思い切り地面に叩き付けた。
ジャッカル「はぁ・・・・はぁ・・・・。―――ぐっ!!」
脇腹に激痛が走る。思ったより傷が深く、出血も多い。長くはもたない。早いとこ決着を着けなければ―――!さすがのジャッカルでもⅢ‐Xを2人も相手するのはまずい。バルキリアスを伸ばし、今度はリカオンの体中に巻きつける。この状態で力を込めるだけで相手の体を四散させることができるジャッカルの十八番。数多の戦士がこれに恐怖した。無論、リカオンの心境も同じであり。
リカオン「・・・おっ・・・おいコヨーテ!なにボ~ッと突っ立ってやがる!さっさと助けろ!」
コヨーテ「・・・最初に手を出すなと言っただろ・・・?」
リカオン「今は状況が状況だ!ホントに殺される―――!頼むよ、な?コヨーテ!」
だが、リカオンの必死の説得も虚しく、コヨーテはまるでリカオンを他人のような目で見ている。これにはリカオンもさすがにブチ切れた。
リカオン「――コラァッ!さっさとしろォォッ!!」
ジャッカル「・・・終わりだ・・・・!」
バルキリアスを握る手に力を込めようとしたその時。瞬速でコヨーテが2人の間に割って入る。突然のことにしばらく呆然とするジャッカル。そしてコヨーテはジャッカルの腹にありったけの力を込めた蹴りを入れる。一瞬、意識が飛んだ。猛スピードで吹っ飛び、地面に叩きつけられるジャッカル。同時にリカオンに巻きついていたバルキリアスも解ける。
リカオン「・・・ふぃ~、ひやひやさせやがって。・・・まぁ、助かったぜ。ありがとよ。」
コヨーテ「・・・この任務はお前とオレ、2人に課せられた任務。オレだけ本部に帰って叱責を受けるのはごめんだからな・・・。―――ここからはオレもやる――!」
リカオン「へへっ。・・・そうこなくっちゃな、相棒!」
ジャッカル「・・・くそっ!これだけのダメージを受けていなければ、あいつら2人が相手と言えども互角に戦えるのだが・・・!まずいな・・・。」
絶望的状況―――。
時同じくして任務司令室。優馬・沙織・隼人の3人は今日も任務へ出発するところであった。
熊坂「よし。揃ったな。では本日の任務を言い渡す。」
とその時、扉が吹き飛ぶ勢いで開けられた。入室してきたのは玉木裕太だ。
熊坂「玉木か。なにがあった・・・?」
玉木「大変です!この施設付近にX星人反応がっ!!」
聞いた途端、一同の表情が一変する。思ったより早かった、X星人の再襲来。熊坂は『地球人類抹殺計画』の書を握っていた手に力を込める。だがそんな中、優馬はマスターソードを握り締めたあと、部屋を出て突っ走っていった。
沙織「・・・・ち、ちょっと優馬!?」
仲間の制止にも聞く耳持たず。優馬は決心した。先の戦いでは自分のせいでここまでの被害が出てしまった。この勝負、オレ一人の力でなんとかしてみせる――――と。
最終更新:2009年02月08日 17:55