M戦記
special~
モンハンの世界へ
(物語はモンハン2nd Gを題材にしておりますが、決して忠実ではありません。作者独自の設定も多数含まれます。)
自分の分身を作り出し、手に入れた素材で装備を強化。様々な凶悪モンスターを『狩る』ことを目的とするゲーム『モンスターハンター』。中でもPSPの『モンスターハンターポータブル2nd G』は、2009年現在で300万本も売り上げている超人気ゲームソフトである。
CMでも放送しているが、これは茨城県民全員が所持しているという計算になるらしい。
今日は非番。この束の間の日常が、日々の任務で己の心に負った様々な傷を浄化してくれる。今日は思う存分休息をとることにしよう。
――午前9時。オレは窓の外から聞こえる小鳥たちが奏でる豊かなハーモニーに目が覚めた。ちなみにここは地球防衛軍本部・M機関に所属する優馬の個室。朝の彼のパジャマ姿を見れることは珍しい(のか?)。掛け布団をどけて目をこする。そしてため息を1つ。オレはベッドから出て、トイレに向かう。数十秒後用を足すと、個室に戻る。ドアを開けると同時に机の上にある黒い色の微長方形のゲーム機が目につく。
優馬「・・・PSP。・・・持っていても損はないと思って一応買っておいたんだよな。今日は非番だし、久々に自由を満喫しようかな。」
とは言ったものの、まだゲームソフトは一枚も持っていない。ため息混じりに頭を右手で掻き毟る優馬。だがしかし、ん?と思いPSPの横に置いてあった自分の財布の中身を確認する。―――すると。
優馬「・・・・札だけで、35000―――。」
思わず目を丸くする。そう言えば、密かに任務遂行のお礼に貰った報酬を貯めていたんだ。この金額はPSPのゲームソフト新品を下手すれば8本は買える。――それどころか、PSPの新品バリューパックを1つ買えるほどであった。財布を閉じると優馬はそれを力強く握った。そして心の内で、静かに闘志(?)を燃やす。今日は非番!己の日常が久々に帰ってきたんだ!・・・これは・・・行くしかない――!!
――宣言(?)から約30分後。そんな訳で優馬は都内のゲームショップの前に立っていた。無論、パジャマのまま。周囲の人々が嫌な視線を優馬に送っている。――だが、今そんなことは気にしない!ショップの看板を見つめ、再び財布を握り締めた。そして自動ドアを通過し、迷わずPSPゲームコーナーへと向かう。だが優馬は驚愕し思った。自分が普段は任務漬けで全くショップなんかに行かなかったせいだと思うが、ここまでの数が発売されているなんて―!!
優馬「・・・お金は問題ないんだけど、どれにしようか迷うなぁ。」
すると1つのソフトに目を奪われる。思わず手に取り、ガン見。・・・そう言えば、任務で妙高山まで物資採取に行った帰りに、隼人がこんなこと言っていたっけ?・・・と回想してみる。
――時は物資採取任務帰りの
国木田車の中。隼人が上機嫌でこんなことを言っていた。
隼人「なぁ、二人とも。普段ゲームってしてるか?」
優馬「ゲーム?・・・PSPとかDSとかPS3?・・・オレはPSPしか持ってないけど・・・。」
沙織「――フッ。普段は任務で忙しいのに・・・アナタよっぽど暇なのね。」
隼人「まあな♪(まあなって・・・。)それでよ、PSPで超面白いゲーム見つけたんだよ。」
ずいっと2人に詰め寄る隼人。思わず沙織は嫌な顔をし、少しだけ隼人と間を空ける。優馬はかなり興味がある様子。
隼人「―――『モンスターハンター』だ―――!」
優馬「・・・も・・・もんすたーはんたー?」
沙織「・・・・。」
隼人「そりゃもう熱いんだぜ!1人ではなかなか勝てない巨獣も仲間と力を合わせて戦えるのが本作の最大の魅力さ!まっ!オススメしとくぜ。あ、ちなみに最新作な。・・・Gって覚えときな!」
―――回想が終わる。今自分の手に収まっているソフトこそ、PSP版モンハン最新作のG!隼人のオススメに素直に従うのは少し不安だが、前から少し興味はあったゲームだからな。所持金35000!比べGの金額は4000だった。―――よし。これを買おう!今日はハント三昧だ!余裕があるので、念のため1GBのメモリースティックも。上機嫌で優馬は2品を持ってレジへと向かう。
店員「2品合計で5500円(適当)になります。」
優馬「・・・はい。」
先ほど何度も強く握り締めたため、財布から出てきたのは少しシワの入った、5000円札だった。+500円玉も出す。これでJustだ。
店員「はい。5500円ちょうどお預かりします。・・・・・レシートのお返しです。ありがとうございました。」
品が入ったレジ袋を受け取ると、走ってショップを出た。人ごみの中に潜り込み、猛スピードで駆け抜ける。さすがはミュータントと言ったところか。なんだか彼の顔はとてもキラキラしている。―――この日優馬は休日の暇をどう解消するかを見つけたのだった。
ミュータントの脚力を生かし走って戻ってきたため、自分の個室に15分くらいで到着した。待ちきれない優馬は購入したモンハンGをレジ袋から取り出し、封を切ろうとする。こういう時、作者ネオンは封を切るのにかなり手こずる。だが優馬は最初からハサミを使用し、あっさりと封を切って見せた。―――いざ!PSPにディスクを差込み、きどーーー!!
ゲームを開始すると、タイトル画面が表示された。
モンスターハンターポータブル2nd G
→ニューゲーム
ロード
優馬「いよいよだ。今世界で最も人気があるゲームと言っても過言ではないぞこれは。オレもそれの仲間入りだ。――よし!」
タイトル画面の「ニューゲーム」を選択する。すると画面が変わり、様々な選択欄とパンツ一丁の男性が映し出される。言うまでもなく、これは自分の分身となる主人公をクリエイションする画面。
優馬「・・・そうか。まずはこのゲームの主人公となる「自分」を作成するんだな?できるだけ現実世界とまんまの姿は避けたいな。飽きるし。でもまぁ、性別だけは同じにしておくかな。」
選択欄の男性の欄は変えずに、次は頭部の構成に移る。髪型と顔だ。一つずつ用意されているパーツを見て、確認していく。なるべく好青年のイメージがいいなと呟きながら、パーツを選び抜いていく。――こうして優馬の分身の頭部が完成した。分かりやすく言うと、髪型も顔も漫画「ひぐらしのなく頃に」の「北条悟史」のイメージ。金髪の好青年という感じに仕上がった。これでよしっ!次は服装だが・・・・待てよ。自分は今からゲームを始めるんだから防具なんてなくて当然で・・・。
優馬「あ~あ、せっかくかっこいい防具つけてやろうと思ったのに、まぁ仕方ないか。」
この分身の服装はTシャツにハーフパンツと、顔のわりにはしょーもない格好に決定した。
最後に決めるのはこのキャラの名前である。これが一番注意しなくてはならない作業だ。ん~、じゃあ・・・。
名前:悟史(まんまかいっ)
→決定
優馬「まぁ、いいか。大体姿形は北条悟史のまんまだし・・・。ってかオレ、ひぐらし知ってたんだな・・・。」
全ての制作作業を終え、決定ボタンをPUSH。
―――いよいよモンハンの世界へ!
気がつくとそこは小さな村だった。そのど真ん中に自分は立っている。村を一目した第一印象は、なんだか原始的だ。魔法などの非科学的な物やパソコンのような精密機器は、とてもじゃないけどこの村には似合わない。村人は皆立派な装備を身に着けている。その数、幾十・・・・。
悟史(優馬)「へぇ、この装備つけている人たち全員このゲームをPLAYしている人なんだよね。すごいな・・・。」
そんなことを言いながら村を歩いていると、誰かと肩がぶつかった。悟史は少しぐらついただけだったが、その誰かは地面に倒れこんでしまう。
悟史「しまった。大丈夫ですか?」
手を差し伸べる。するとその誰かは顔を上げた。女性だった。それも自分とあまり歳が変わらない高校生くらいの少女。少しボロい布地を身に纏っている。これも普段の「狩り」で消耗しているのか。分かりやすく言うと、その少女は戦国無双シリーズの「森蘭丸」を感じさせる風貌であった。悟史は「わぁ、蘭丸だぁ。」と思った。彼女は悟史が差し伸べた手を取り、立ち上がる。
悟史(あれ?ってかオレ、戦国無双知ってたんだ・・・・。)
彼女「すいません、よそ見していて。そちらこそ大丈夫ですか?」
悟史「ぼくは大丈夫。ぼくこそよそ見していてごめん・・・。」
すると彼女はズイッと詰め寄り、悟史を不思議そうに見つめる。思わず悟史は赤面し後ずさってしまう。すると首を傾げてから彼女が口を開いた。
彼女「・・・その装備。あの、もしかしてアナタ。このゲーム初めての方ですか?」
悟史「えっ?あっ、うん。今買ってきて始めたばかりなんです。だから分からないことだらけで・・・。あはは・・・。」
彼女「実は私も始めて、1週間の初心者なんです。」
悟史「え?そうなんですか?」
彼女「はい。」
ほ~。自分と同じ初心者か。いい人だし、パーティ組んじゃおうかなぁ。顎に手を当て、両目の視線を左上に泳がせる悟史。・・・おっとその前に名前くらい聞いておかなきゃ。
悟史「あの、改めて初めまして。ぼく『悟史』っていいます。よろしく。」
彼女「私、『沙織姫』です。こちらこそよろしくお願いします。」
あはは、と笑いながら握手しようと手を差し伸べる悟史。・・・だが、その穏やかだった彼の顔はすぐに険しくなる。・・・この人今、「沙織姫」って言ったぞ?え?沙織?・・・ま・・・まさかっ。な~んてそんなことあるわけないかぁ。
悟史「あの~・・・人違いだったらすいません。もしかしてアナタの「本体」
田村沙織さん・・・・ですかね?」
沙織姫「―――え?・・・あ、はい。一応そうですけど。」
やっぱり―――!この人沙織さんに比べるとすごく優しいんだもん。間違えるわそれは。・・・・っで、でも。これはいいチャンスだ。身近な人がモンハンやってたんだ。初心者のぼくには、まだ誰も友達いないし。沙織さんに色々と教えてもらうとするか。
沙織姫「なにか?」
悟史「あの・・・・ぼくの本体は・・・・「
皆本優馬」っていうんですけど・・・・。」
沙織姫「えええええええええっ!?」
思ったとおりの反応だ。沙織さんや隼人には黙って買ってきたからな。まぁ、これを機に2人とモンハン仲間として過ごそうかな。・・・でも、肝心の隼人は今どこに?もしかしてクエスト中かな・・・?
沙織姫「なに?優馬いつの間にモンハン買ってきたの?」
悟史「やめてよ優馬だなんて。ここはモンハンの世界なんだから、お互い本名で呼び合うのはやめようね?」
沙織姫「・・・分かったわ。悟史。」
悟史「でも沙織姫なんて名前じゃ、すぐバレるよ。」
沙織姫「しょ・・・しょうがないじゃない。特に名前は気にしなかったの。」
あ、名前を気にしなかったのはぼくも同じだった。と思いながら苦笑いする悟史。少し困った顔をし、うつむく沙織姫。普段の沙織の言動とは全然違う。・・・すると沙織姫は、何かを思いだしたようにハッと顔を上げた。唐突さに思わず悟史は、わっと!と驚く。
沙織姫「ちょっとついてきて。」
悟史「?」
彼女に言われついていくと、行き着いた場所には大量に物が入りそうな巨大ボックスが置いてあった。自然に大きい箱だね。という言葉が漏れる。沙織姫は箱を重たそうに開けると、何かを取り出した。その手に握られていたのは、身の丈ほどもある何かの骨を加工してでできたような大剣であった。
悟史「うわっ。なに?」
沙織姫「実はもし悟史がモンハン始めたら、と思って用意して置いた。これ使って。少し重くて無骨だけど、威力は初心者には十分。それにアナタには大剣しか似合わないから。」
悟史「わぁ、ありがとう。沙織姫!大切にするよ。武器も少なくて困っていたんだ。」
悟史は骨大剣を沙織姫から受け取った。沙織姫が手を離した瞬間、急にズシリと重たくなる。おっとっととよろめきながら、やっとのことで構えることに成功する。
悟史「・・・や・・・やっぱり重いね。」
沙織姫「この世界じゃ私たちは、ミュータントじゃなくてハンターを生業としている「人間」だからね。重くて当然よ。でも、きって使いこなして見せて?」
悟史「うん・・・がんばる・・・。・・・・で?沙織姫の武器は?」
すると沙織姫は再び箱を探り始める。そして、あった。と一言。私のはこれ、と見せられたのは立派な長弓だった。それを人差し指に引っ掛けて、クルクルと回してみせる沙織姫。
悟史「へぇ、ここでは沙織姫は「弓使い」なのか・・・。で、ぼくが「大剣使い」か。」
沙織姫「ねぇ、武器も決まったことだしさ。一回狩りに行ってみない?」
悟史「えっ!?狩りに!?」
顔の前で両手をひらひらさせる悟史。そんなことはお構いなしにほら、行こっ♪と沙織姫は悟史の手を引いて、村の出口へ向かっていく。
悟史「ちょっ・・・ちょっと待って!沙織姫がいても、ぼくが足手まといになっちゃうよ。もっと仲間増やしてから行かない?」
沙織姫「大丈夫。実はこの先の密林で隼人の分身と待ち合わせしてるの。」
悟史「え?・・・隼人と?」
2人は木々が鬱蒼と生い茂るジャングルの中へと駆け込んでいった。
―――近づく脅威に気づかずに―――。
最終更新:2009年05月16日 22:13