「こんにちは、デジタルQの立花です。今日日本時間午前6時ごろ、アメリカ、ニューヨーク市に突如巨大なイグアナのような怪獣が出現しました。現在アメリカ軍と交戦中の模様です。この巨大生物は1997年にも同類の生物が確認されており・・・・」
この情報がはじめて僕の耳に入った時、僕は気絶しそうなくらい困惑した。ニューヨークには・・・・父と母がいるのだ。
アメリカ:ニューヨーク市
「撃て撃て、撃ちまくれーっ!」
戦闘ヘリ、戦車が一斉に巨大イグアナ ――――ジラに向かって火を吹く。しかし、どの弾丸も空を切る。ジラは俊敏な身のこなしで次々と砲撃をかわしていくのだ。そしてその流れ弾はことごとく高層ビルに突き刺さる。
「生物がハドソン川へ逃げます!」
「迎撃!この街から一歩も外へ出すな!」
高層マンションを突き破って、ジラが姿を現した。待ち伏せていた戦車隊が川の前に立ちはだかる。しかし、ジラは戦車隊を飛び越え川に身を滑らせた。
「ターゲットロスト。生物を逃しました。」
「くそっ!」
「行きましょう!ニューヨークに!」
「落ち着いてよ、ジン君!」
ジンと恵の二人は坂本の家にいた。家の中は意外と広く、アンティークな風貌に仕上がっている。
「んー、しかし相手はアメリカにいるからねえ・・・。それに敵とも限らないし・・・」
「何言ってるんですか!街をめちゃくちゃにして暴れまわってるんですよ!?こんなの許せるわけが・・・・」
ジン君は、このごろ性格が変わったように思う。前はぱっとしない人だな、と思っていたけど、『あの事件』があって以来、随分と輝いて見えるようになった。ただ、後先も考えないようになったけど・・・。
「んー、だったら言うけど、ジン君は街をめちゃくちゃにしても許されるのかな?」
「はい?」
(
メガギラスを
バラゴンから引き剥がした。メガギラスはビルに叩きつけられ、瓦礫の下敷きとなった。)
「あ・・・・(-_-;)」
ジンは少し苦い顔をした。
「市街破壊くらいじゃあまだなんとも言えないな・・・。根本的な理由がはっきりしないと善悪の判断はできない。」
「・・・・とりあえずニュースでも見てみませんか?情報収集すれば何か分かるかもしれないし・・・ほら、ちょうどやってますよ。」
恵はすぐ側にあったテレビのリモコンに手を伸ばした。どうやらちょうどニューヨークの怪獣に関するニュースらしい。
「たった今最新ニュースが入りました。先程アメリカ軍と交戦中だった巨大生物はハドソン川を南下、太平洋で行方不明となりました。この怪獣による街への被害は甚大で、今現在戦闘による生々しい傷跡が街全体に残されています。」
テレビの画面には、怪獣が突き破ったという高層マンションが無残にも壁面に大穴を開けている。
「うわー、すっごい・・・・!」
恵は半ば野次馬のごとくはしゃいでいる。・・・ただ、ジンだけは小さく震えていた。
「?・・どうしたの、ジン君」
「・・・こ、このマンション・・・、うちのお父さんと、お母さんが・・・住んでたマンションだ・・・・・!」
「・・!」
大穴からは、見えないはずの日差しが強すぎるくらいに差していた。
「ジン君のご両親は、アメリカにいたのかい?」
「はい、二人とも仕事で転勤になってしまって・・・。でも、ジン君は転校が嫌でアメリカには行かなかったらしいです。一応、家にはおばあさんもいましたから・・・」
「ふーん・・・・」
ジンは半ば放心状態で帰り道を放浪した。そんなジンを、恵は必死で慰める。
「大丈夫だって!きっと二人とも会社にいたって!」
「・・・・うん・・・。でも、朝早かったから・・・きっと」
「ううん、確かにちょっと会社には早すぎよね・・・・・はっ!い、いやきっと・・・そうだ、前の晩徹夜で・・・・」
「・・・・・。」
その頃、海上を低空飛行していた偵察機、『CCIセンサーバード』が太平洋上に巨大生物反応を察知した。
「巨大生物は現在日本に向けて侵攻中。」
国会議事堂、軍事会議室。
「困った事になりましたな・・・。」
「一体なんだってこう立て続けに怪獣が日本を襲うんだ。」
「このままでは我が国は壊滅です!議長、これは何らかの手を討つ必要があるでしょう。」
「うむ・・・しかし、話によれば怪獣は砲撃を回避できるほど俊敏な動きをするらしい・・・誤爆で街にも被害が出かねん・・・」
その時、一人の男が立ち上がった。自衛隊特別本部長、黒木翔特佐だ。
「その件に関しては我々自衛隊にお任せいただきたい。」
「どういうことだね黒木君。」
「えー、我々自衛隊が開発したこの『スーパーX』を使って巨大生物の鎮圧を狙います。」
「『スーパーX』?黒木君、冗談を言っている場合かね、そんな特撮映画の兵器のようなものが・・・」
それに対し黒木は強く、だが冷静に反論する。
「冗談ではありません。このスーパーXは首都防衛のために設計され、ありとあらゆる攻撃用兵器を搭載、さらに最高時速200キロで飛行可能です。」
会議室がどよめく。
「今回、このスーパーXが巨大生物に対し、照明弾及び『カドミウム弾』を発射、巨大生物の注意をひきつけます。そこへ我々の持つメーサー部隊が一斉攻撃を仕掛けます。いくら俊敏さが取柄な巨大生物であろうと光の速度で移動する事は不可能。しかし、我々のメーサー戦車ならば光の速度での攻撃が可能です。」
再び会議室がどよめく。その時、一人の男が会議室に入り、議長に耳打ちをした。
「巨大生物が、名古屋市に上陸しました。・・・・それから、これは極秘情報なんですが、静岡県で今回の巨大生物とは別の巨大生物が目撃されたとの情報が・・・現在は国民のパニックを避けるために、この情報は一般には伏せてあります。」
「じゃあ・・・・」
「元気だしなさい、きっと大丈夫だから。」
「・・・・・・。」
ジンは相変わらず放心状態だった。父と母の生存確率は、あまりにも少ない。はっきり言って、もうどうしようもなかった。恵もなんとか慰めるが・・・。
その時、遥かに火柱が上がった。夜の空が赤く染まっている。
「ジン君、行ってみようよ!」
「・・・・・・。」
「・・・・・・バカあ!いつまでもウジウジしてるんじゃないの!ほらいくよっ!」
「え・・・ちょっ・・・・!」
ジンは恵に無理やり引きずられ、赤い空の方向を目指す。
名古屋都心部。そこにはあのイグアナ型巨大獣、ジラの姿があった。ジラは逃げまとう人々を次々と踏み潰していく。さらにジラから発せられる強大な空気の塊――――パワーブレスが夜景を吹き飛ばす。都心部は壊滅状態だった。そこへ、戦車隊の砲撃。しかし、あっけなくかわされる。砲撃は後ろのビルへと直撃。ビルは無残にも崩れ落ち、戦車隊を飲み込んだ。
「やはり実弾は無理か・・・・。」
立花はため息をつく。そこへ無線通告。
「特別本部の黒木です。これよりそちらにスーパーXを投入します。そちらの部隊はすみやかに撤退してください。」
「もうすこし早く来てほしかったですなあ、特佐さんよお。」
鈍角的なフォルムが上空から影を落とす。
「こちらスーパーX操縦室三宅。スーパーX及びメーサー車、待機位置に到着。」
「よーし、巨大生物の到着を待て。」
メーサー隊が息を潜めて見守るなか、ゆっくりと爆発が近づいてくる。機首が一斉に爆発の方向を向く。ついに目の前のビルが崩れた。
「生物を肉眼で確認!」
「慌てるな、照明弾発射。」
「照明弾発射!」
漆黒の空にぼんやりと光が浮かぶ。ジラはそれを威嚇するように仰ぎ見る。
「カドミウム弾発射!」
スーパーXの砲塔が競り上がり、鋭角的な弾丸を撃ち出す。弾はジラの喉笛に突き刺さった。ジラはもがきながら咆哮する。
「メーサー隊攻撃開始!」
合図と同時に青白い光線がジラに集中していく。ジラは苦しみながらもかわそうとするが、あまりの速さに対応しきれない。ジラは煙に包まれた。
「やりました特佐、成功です!」
歓喜にわく自衛隊員。しかし、黒木と立花だけはうかない顔をしていた。
「本当にやったのか・・・?」
その時、『CCIセンサーバード』から無線通信が入った。
「新たな巨大生物が、静岡から飛び立ちました!現在追跡中です!・・・・しまった、見つかった!あああああああああっ!」
「どうした、センサーバード応答しろ!センサーバード!」
最終更新:2007年03月09日 15:45