「センサーバード、センサーバード!くそっ!」

「航空師団より通達、スーパーXはただちに静岡上空の巨大生物迎撃に向かえ。繰り返す、スーパーXはただちに静岡上空の巨大生物迎撃に向かえ。」
「巨大生物!?」
三宅は顔をしかめる。その時、スーパーXの機体が大きく揺れた。
「巨大生物、名古屋上空に出現!現在位置は・・・真上です!」
その巨大生物は手から足にかけて発達した摸を持ち、背中には極突起が一列に生えている。その姿は恐竜バラノボーダ、つまりバランだった!
バランはゆっくりと自衛隊とジラの間に降り立つ。

その時、ジラが煙の中から姿を現した。多少ダメージは負っているものの、ジラの動きに翳りはなかった。ジラは自衛隊を睨み付ける
「二匹まとめてやってしまえ!攻撃再開!」
メーサーの嵐。しかし、ジラにはもう当たらない。完全にかわされた。
一方のバランにも、全く効果はなかった。その極突起がすべての光線を吸収していた。
(そのような攻撃、バランには通用しないぞ)
今度はバランがソニックブームで戦車を空中へと巻き上げる。ジラもパワーブレスでビルごと戦車を消し飛ばした。
自衛隊は、スーパーXを除き全滅となった。
「スーパーX、このままでは勝ち目はない!撤退しろ!」
「しかし、このままでは名古屋が・・・!」
「・・・撤退だ。」
「三宅隊長!」
「僕が行きます!」
「やめろ長野。この話では、お前はティガにはなれない・・・。(!?)」
「そんな・・・・・!」
「スーパーX、帰還します・・・。」

「いい様だな、パトリック!」
バランの上からジラの上に立っている男へ声が発せられた。その男――――――パトリック・タトプロス(ぱとりっく・たとぷろす)は不機嫌そうに答える。
「うるせーよ、それよりてめーはここの管轄外だろ、『岩手野 茨田儀(いわての ばらだぎ)!』」
岩手野は武将ヒゲを撫でた。
「ああ?わざわざ岩手から助けに来てやったってのによ、そんな言い草はねーだろ、米系野郎。」
パトリックの髪が逆立つ。サOヤ人を彷彿とさせる。
「んだとコラ!これでも日本人だ!肌白は生まれつきだっつーの!」
「そういやあ、てめえこそ管轄外だろうよ。ここはたしか・・・・そうだ、手塚のはずだ。」
「あいつはやられたよ。まあ、あんなひ弱昆虫じゃ当然だけどな。で、俺がアメからここに飛ばされてきたっつーわけ。」
「はんん、よりによってこんな奴が・・・・。」
「なんか言ったかおっさん!」
しばらくジラとバランの動きが硬直していた・・・・。
その時、地面のコンクリートに亀裂が走り、バラゴンが姿を現した。同時に放射火炎。バランとジラは反射的に横っ飛びでかわす。
「おや、四神獣様のおでましだぜ。」
「お前ら、禍津日使いか!神獣を実体化させて何を企んでいる!?」
「威勢がいいねえ、兄ちゃん。それはなあ・・・・生きて帰れたら教えてやるよ!」
バランとジラが咆哮する。
ジラのハイジャンプキック。バラゴンは地に潜ってかわす。しかし、出てきた所をバランにやられた。バラゴンは吹き飛ぶ。さらにジラが踏みつける。バラゴンはもがくが立ち上がれない。さらにパワーブレス。バランはソニックブーム。バラゴンは手も足も出ない。
「おらおら、どうした兄ちゃん!」
「ザマあないな!この程度で俺らを倒せるとでも思ってたのか!?」

「ジン君、坂本さんが!早く助けに行ってあげて!」
「・・・・・。」
「ジン君!!」
「・・・・・・・・。」
ジンと恵は公園にいた。ここは少し前、メガギラスの巣窟と化したところだ。
ジンは相変わらず今朝の事を引きずっていた。何を言ってもジンはしゃべらない。恵はどうしたものかと頭を悩ませている。
その時、バラゴンが宙に浮いた。そしてジラの長大な尾に打ち飛ばされる。
「あっ!!!」
恵が悲鳴をあげた。バラゴンの吹き飛ばされた先は住宅地だった。そこにはジンの家がある。家には祖母もいるはずだ。そして・・・・・・家は跡形もなく押し潰された。
「・・・・・・・・・!!!!!!!!!!!!!!!」
ジンはそのまま座り込んでしまった。声もでなかった。
ジンの震える瞳には、二匹の怪獣が咆哮する悪魔のように映った。
「・・・・・・・。」
「ジン君?」
ジンはゆっくりと立ち上がった。その表情は憎悪に満ちている。恵の背筋が凍りついた。
「・・・・・ギドラあああああああああ!!!!!!!」
ジンの叫びが名古屋にこだまする。
――――――だが、ギドラは現れなかった。
「・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・ジンく・・」
「何故だ!」
「え・・・・」
「何故出てこないんだ!今が必要な時だろ!!!僕の家族を奪ったあの野郎を殺すんだよ!!ギドラ!!殺れ!!!!肝心な時に出てこないのかよ、役立たず!!」

パシッ!
ジンの頬に痛みが伝わる。ジンは何が起こったのかと一瞬驚きを隠せない。
「・・・ジン君、肝心なときに出てこないのは・・・・・ギドラじゃなくて、あなたよ・・」
「・・・・・・。」
ジンは我に返った。目の前には火の海と化した名古屋、そして怪獣の呻き声。
「・・・・・ごめん、僕・・・・」
「弱虫・・・」
「え・・・?」
「この弱虫!何よ、パパとママがそんなに恋しい!!?だったら一緒にアメに行っちまえばよかったのよ!!!」
「そ、そういう問題じゃ・・・・・」
「だったらどういう問題なのよ!!」
「え、それは・・・だって育ててくれた親が死んじゃったのに・・・・元気でいられるわけが・・・」
「いいかげんにしなさい、このバカあ!」
「!!!」(この人、性格変わってないか・・・・?)
「何で死んじゃったって決め付けるのよ!分からないでしょ、その場に行って見てきたの?死体でもテレビに映ってた?」
「い、いや・・・・」
「・・・だったら育ててくれた親を信じなよ・・。決め付けちゃったら、なにもできないよ。」
「・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・うん、そうだね。決め付けても・・・・・何ににもならない!・・・それに、僕にはほかにやる事がある!」
ジンは倒れているバラゴンを見た。
「・・・・僕、行ってくるよ!」
「うん!」
「来い、ギドラ!」

バラゴンを見下ろす巨体。ジラはさらに噛み付く。もはやそこからは抵抗する力さえ感じられない。
「なんだ、もうくたばっちまったか?」
しかし、バラゴンは突如首を持ち上げ、鈍く光る角をジラの瞳に突き刺した。ジラは左目から鮮血をどくどくと流し、体を振るわせた。同時に悲痛な叫びを上げる。
「ジラああああああっ!!なろお、噛み砕いてやる!!!」
ジラの怒りが、口先からバラゴンに伝わってくる。整然と並ぶ牙が、バラゴンの表皮に食い込む。
しかし、さらにジラを衝撃が襲う。腹部に何かから頭突きを喰らった。ジラはバラゴンを口から落とし、ビル群へ突っ込んだ。バラゴンは地にボタリと落ちる。辛うじて目を開いた先には、夜の闇をやさしく照らす黄金竜。ギドラだ。
「坂本さん!すいません、遅くなりました。」
「むう、新手か!?」
「ジン君!あいつらを倒してくれ!すまないがバラゴンはしばらく動けそうにないんだ!」
「わかりました!」
ギドラが吹っ飛んでいったジラに突っ込んでいく。しかし、それをバランがさえぎった。ひるまず噛み付く。だがバランは宙に逃れた。今度はバランのソニックウェーブ。ギドラがコンクリートにめり込む。そこへジラが起き上がり、パワーブレスを見舞う。ギドラがのけぞった。すかさずバランが急降下で襲い掛かる。しかし、ギドラはそれを受け止め電撃波を送る。バランの皮膚が焼け爛れていく。ジラが助けようとするが、片目を失ったせいでパワーブレスの狙いが定まらず、逆にバランに攻撃を仕掛けてしまった。
「何やっとるかあボケエ!」
「うるせえ黙ってろ!」
ギドラがバランをジラに投げつけた。二匹はまとめてビルに突っ込む。
「いまだっ!」
ギドラの周りの静電気が収束していく。それに気づいた二匹は慌ててもがく。
光壁引力粉砕波!
二匹に巨大な光の塊が迫る。その時、ジラがバランを蹴り飛ばした。
「ぬおっ!パトリック、何のつもりだ!!」
バランは光壁にぶつかり、四散した。あたりにはバランの肉塊が降り注ぐ。ジラは空中の岩手野を瞬時に拾い上げ、海中へ身を沈めた。

「悪いな、あのままじゃ二人まとめてオダブツだったんでな・・とりあえず集めるモノは集めたし、置いてくるモノは置いてきた。結果オーライだ」
「くそう、これだから米系は・・・・・うう、バランん・・・・・」
「しょうがねえだろ・・・・て、だから米系言うな!」

燃え盛る紅蓮の名古屋を、ジンはただ一人見つめていた。名古屋市は壊滅。バラゴンは重傷。自衛隊も全滅・・・。
もう少し、もう少し早くギドラを呼んでいれば、こんな事にはならなかったかもしれない。ジンは自分を責めた。
「くそ・・・・僕は・・何も助けられなかったのか・・・・。」
「そんなことない!!」
それは恵だった。
「だって、もっと早くギドラを呼んでいれば・・・・街は・・・・」
「でも、逃げなかったでしょ。」
「え・・・」
「たしかに、もっと早く呼んでれば、バラゴンだって、街だってあんなにはならなかったかもしれないよ。けど・・・、あのまま呼ぼうとしなければ、もっとひどい事になってたと思う。それで助かった命だって、きっと少なくなかったと思うよ。」
「恵さん・・・・」
「・・・・・帰ろう、一緒に。」
「・・・でも、僕もう家が・・・・。」
「大丈夫!私の家にくればいいでしょ!私ひとり暮らしだし、ちょうどいいじゃない。」
「うええええええええええええっ!!!!!!?」
「何よう、なんかヤラシイ事考えてない!?もうバカあ!」
「え!?いやそんな事・・・・・」
「いいからおばあさん連れてきなさいよ!これなら問題ないでしょ!」
――――翌朝、祖母は遺体で発見された・・・。

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最終更新:2007年03月19日 19:56