「こんばんは、デジタルQの立花です。今日お昼頃突如福岡近海に浮上した岩塊から姿を見せた巨大生物は、福岡県から上陸し現在岐阜県に侵攻、その猛威を振るっています。」

第7章:玄武

すっかり黒く染まった空に、黒煙が立ち昇る。ビルは地に沈み、湧き上がる炎はその巨体を明々と照らし出す。ビル街を突き進むガメラをバラゴンが後を追う。
「止まるんだ、ガメラ!直日が何故日本を襲う!」
しかし、ガメラはまったく歩みを緩めない。バラゴンが火炎放射を放つ。だが、分厚い甲羅に弾かれてしまう。
「姿が具現化しているということは、どこかに使い手がいるという事か・・・?おい、使い手がいるのなら、いますぐ侵攻をやめさせるんだ!」
反応はない。緑の巨体にも、人間の姿はなかった。ガメラはなおも侵攻をやめない。
その上空に、楕円球体を角張らせたような緑色の鉄塊が姿を現した。
「こちらスーパーXⅡ操縦室、黒木。本部、聞こえるか?」
「こちら本部立花、しっかり聞こえてますぜ、特佐さんよ」
「こちらは巨大生物を肉眼で確認した。これより攻撃を開始する。」
「了解。万一の時は三宅のスーパーXと青木のガルーダがスタンバってるから安心しな。」

スーパーXⅡから放たれるミサイル。カドミウム弾だ。しかし、ガメラの甲羅には傷ひとつ付かない。代わりに火球を返した。猛スピードで迫る火球。その時、スーパーXⅡの機首が開いた。中は白銀に輝いている。そこにガメラの火球が突き刺さる。しかし、その火球は直後撃ち出した主の元に戻ってきた。火球はガメラの腹部に当たる。苦痛の咆哮と共に地に倒れこむガメラ。
「攻撃を跳ね返した!?」
この様子に、黒木は笑みをもらした。
「ファイヤーミラーは正常に作動しているようだな。機体破損率も0。完璧だ。」
ファイヤーミラー。スーパーXⅡのために開発されたダイヤモンドコーティングの特殊装甲で、相手の熱線、火炎、電撃、ありとあらゆる攻撃を一万倍にして反射する防御兵器である。
ガメラが起き上がる。その眼は獲物を捕らえる時の獣のように鋭い。再び火球。しかし、同じように跳ね返される。来た道を戻る火球。だが・・・・
「い、いない!?」
ガメラは既にそこにはいなかった。
「ど、どこへ消えた・・・・グッ!」
スーパーXⅡを襲う衝撃。ガメラは手足を引っ込めそこから炎を噴射。自らを高速回転させ、背後から体当たりを仕掛ける。
「か、亀が空を飛ぶだと!?ふざけてんのか!」
スーパーXⅡはよろよろと地面に向かって降下していく。ガメラはそれを見据えると、再び歩き出した。
坂本はその光景を呆然と見つめていた。
「玄武・・・・噂どおりの破壊力と防御力だ・・・・」

長野県:諏訪市
平和だったこの町も一瞬で火の海と化した。
(いったいガメラは何を考えているんだ・・?)
その時、ガメラの足が止まった。バラゴンも慌てて急ブレーキ。
ガメラの先には虚空に向かってぽっかりと口を開ける湖。だが、それだけじゃない。その真ん中に、黄緑の巨影がある。その姿はボツボツとした表皮に鋭い角。さらに手には電撃が迸っている。
「あれは・・・ガバラ!?こんな所に潜んでいたのか!」
ガメラはこいつを倒すために進み続けていたのだろうか。
ガメラが激しく威嚇する。ガバラはいささかガメラにビビっているようで、頭を抱えて後ずさりした。坂本は意外な展開に表紙抜けしてしまった。
「・・・・・・・(オイオイ)(^_^;)」
しかしガメラは全く手加減せず火球を見舞う。この様子ではこれで終わりだろうと思った。しかし、ガバラは手をかざし、その火球を受け止めた。楽しそうに体を振るわせるガバラ。さらに手をかざし、今度は電撃の渦をガメラに差し向ける。ガメラは手足を引っ込め空に逃れた。ガバラは悔しそうにジダンダする。
(この神獣、ガキっぽい・・・)
ガメラはそのまま高速回転&急降下でガバラに迫る。しかし、ガバラはそれを受け止めた。同時に手から放電を起こし、ガメラを痺れさせる。ガメラは手足をだしてそれをほどく。さらに肘から鋭いトゲをせり出し、ガバラに突き立てる。ガバラは目を潰されしばらく転げまわる。さらに火球を浴びせかけるガメラ。気が動転しているガバラは受け止める事ができずに吹っ飛んだ。巨大な水柱が天に向かって延びる。それでもフラフラと立ち上がるガバラ。そのとき、ガバラの動きがぴたりと止まった。その刹那巨大なハサミがガバラの首をボタリと落とした。それを追うように今度は白みのかかった紫の気体がガバラの体を包み込み、それが消えた時、ガバラの体は白い骨になって崩れ落ちた。ガメラも坂本も、この光景に驚きを隠せない。そして、そのハサミの主はゆっくりと体を起こした。
紅蓮の体に巨大な二対のハサミ。顔は海老に近いがザリガニとも言える。その眼に潜める凶暴さがそれだけで相手を威嚇する。その海老の上にも人がいた。
「このガマガエル、全然使えないです。邪魔だから死んでもらったです。」
すべてを押しつぶすかのような威圧感。ガメラが本当に察知したのはこちらの方だったのかもしれない。火球を連続発射。しかし、ハサミによって簡単に切断されてしまう。
「何者っ!?」
「今は戦いたくないから、帰るです。まったね~♪」
海老神獣は湖の奥底へ消えた・・・。

「禍津日・・・・何て大きな力を持ってるんだ・・・」

坂本はとりあえずガメラを二つ目の依白に収めた。
「やれやれ、こいつの使い手を捜さないとなあ・・・」
思わずため息が漏れる。本当に直日はこの先やっていけるのだろうか?

「こらあ!いいかげん起きなさいこのバカあ!!」
「!!!!!??????!?」
怒号の声にジンは跳ね起きた。目の前には血相を変えた恵が今にも殴りかかってきそうである。
「?・・・・おはよう」
「おはようじゃないっ!今何時だと思ってるの!?」
「え・・・え~と12時・・?確かに遅いけど、昨日は疲れたんだからちょっとぐらい遅くたって・・・」
「じゃあ外見てみたら?」
カーテンを開けた先の空には満点の星空が広がっていた。
「・・・・・・・・・・えっ!!!」
「そう!夜!夜中の12時なの!!!!!」
「うええええええええええええええええええええええええっ!!!!!!!!???」
ジンは布団から思わず転げ落ちた。
「まったく、これだから男ってのは・・・・ブツブツ」
その夜、恵宅はいつまでも明かりが灯っていた(らしい)・・・。

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最終更新:2007年03月25日 18:31