第五話
成宮「できるだけ被害出したくねぇからさっさと掘り始めるぞ!各自、作業開始!!」
その言葉を合図に四人は山の各地を掘り始めた。いつ、巨大獣が出てくるか分からない死と隣り合わせの緊張感。優馬たちは初任務で一生懸命掘っているが、和村はこの任務の「程度」を知っているため、常に辺りを警戒しながら掘っていた。
- そしてレアメタルが一つも採れないまま、8時間が過ぎた・・・・。現在:16時。
優馬「こんなに掘ってるのに、誰一人採れてないよな。本当に妙高山にレアメタルがあるのかな・・・。」
その時・・・!
隼人「うぎゃあああああああああ!!!!」
隼人以外「!!!」
突如妙高山に木霊する、隼人の悲鳴。まさか!悲鳴を聞きつけた成宮たちは、隼人の下に辿り着いた。
沙織「・・・・これって・・・・!!」
優馬「・・・・・・!!!」
そこには30メートルほどのやや巨大な体。バカでかい、口と目と耳と・・・・。頭部には鈍くオレンジ色に輝く一本角。瞳は燃えるように紅く光っている。そしてそのバカでかい口に隼人の片方の足が銜えられていた。隼人は宙に浮いている状態である。
隼人「なんだこいつは~~~~!?」
成宮「待ってろ!今、助ける!!」
腰のメーサー小銃を取り出し、構える和村。トリガーを引く。銃口から細く青白い閃光が放たれる。巨大獣の眉間に直撃。巨大獣がひるんだ。隼人は残っているもう一方の足で、巨大獣のアゴを蹴りつけた。足が開放され、地面に着地。よろけた後、巨大獣は甲高く勇ましい咆哮を轟かす。
沙織「全く・・・十分注意してないからこうなるのよ。」
隼人「・・・(ピクッ)・・・あんたさ、何様なわけ?」
優馬「まぁまぁ二人とも、任務中にケンカはないだろ?な?」
あわてて制止する優馬。
優馬「中尉!こいつがあの伝説の・・。」
成宮「いや、伝説ではない。この地球に存在している一匹の生物だ。」
優馬「こいつは知ってる。Mスクールで2001年の歴史を勉強している時に教科書に乗ってた。大和聖獣の『
バラゴン』だ。」
沙織「そう言えば私も教科書に乗ってたのを覚えてる。死んだはずなのになぜ?」
成宮「死んだ者は二度と生き返らねぇ。恐らく、蘇るように何者かにやられたのだろう・・・。」
隼人「ごちゃごちゃ言ってんなよ。こいつはオレらの任務に邪魔してきたんだぜ?先輩!」
成宮「そうだな。任務遂行のために、こいつを撃退するぞ!」
一同「了解!!!」
愛用武器を構える三人。まずは隼人がしかける。ジャンプし、トゲメリケンサックがはめられた拳で一発バラゴンの顔面を殴る。すかさず殴った場所に思い切り蹴りを入れる。大気が震えるほどの轟音が、辺りに鳴り響く。バラゴンはよろけ、地面に倒れた。
隼人「へっ!いきなりキツい二撃を食らわせてやったぜ。」
優馬「・・・おお。」
成宮(・・・ほう。こいつ、できるな。)
沙織「今・・・ね。」
小さく呟いた沙織がガトリング・メーサーガンをぶっ放す。バラゴンに雨あられの如く直撃し、バラゴンは煙に包まれる。
隼人「・・・ちっ。・・・おいしいとこ持っていきやがって・・・。」
舌打ちする隼人。その時、爆煙の中からバラゴンが超速で突進してくる。油断していた隼人は突進をモロに食らい、吹っ飛んで大木に叩きつけられた。
隼人「ごふっ。・・・・なんでオレが・・・・。」
優馬「あの突進・・・なかなかの威力ですね。」
成宮「ああ。食らわないように注意しろ。」
沙織「・・・・。」
またも突進するバラゴン。今度は沙織狙いだ。しかし、沙織は寸前で垂直にジャンプし突進をかわす。続いて成宮に突進に迫る。横飛びでかわす。そして今度は優馬に突進が迫る。
優馬「バカの一つ覚えか。また突進?寸前で横にかわし、横からマスターソードで斬りつけてやる。直線的な動きをする物体は横からの力に弱い!!」
優馬とバラゴンの距離は縮む一方だ。
優馬(今だ!)「・・・・あれ?足が動かない・・・!?」
下を見ると、優馬のつま先が地面から突き出ていた大木の根にひっかかっていた。慌てて外そうとするがもう遅い。優馬もバラゴンの突進の餌食となり、吹っ飛んで地面に叩きつけられる。
優馬「・・・ぐっ!!」
倒れている優馬を狙って、すかさずバラゴンが炎を吹いた。精一杯の力を振り絞り、優馬は地面を転がって炎をよける。
沙織「大丈夫!?」
優馬「・・・なんとか。」
優馬の無事を確認した沙織はふと前を見る。そこはバラゴンが地中から出てきた時にできた、巨大な穴。その中には一つの巨大なレアメタルが地面から顔を出していた。思わず沙織はレアメタルの下へ駆け出した。
優馬「・・・あっ!田村さん!?」
沙織に耳には優馬の制止は届いていない。
隼人「止めんなよ。」
優馬「・・・なんだと。」
隼人「あいつがああやって深追いすれば、もしかしたら傷を負って戦闘不能になる。そうすれば、あいつとは当分行動しなくて済むんだぜ。」
優馬「・・・お前!!」
その時、バラゴンは沙織がレアメタルに向かって走っているのに気が付く。すかさず沙織を狙ってオレンジ色の角を突き出し突進。無我夢中で走っていた沙織はバラゴンの突進に寸前まで気付かず、そのまま沙織の腕に角がかすり、腕は深くえぐられた。
成宮「・・・ちっ!!」
和村が突っ走り、バラゴンの顔面を渾身の力を篭めて思い切り蹴りつける。中尉トップクラスの蹴りを受け、バラゴンは数メートル吹っ飛んだ。そして沙織のところに駆け寄る。
成宮「深追いするな!もういい!オレがレアメタルを採ってくる!」
沙織「・・・・つっ!!」
腕を押さえる沙織。指の間から血が流れ出る。その間に成宮はさっさとレアメタルを抜き出した。バラゴンは気絶しているようだ。
成宮「・・・・ん?」
成宮「なんでしょう。」
国木田「聞こえているな。任務はどうだ?」
成宮「たった今、完璧なレアメタルを回収しましたよ。」
国木田「そうか。それでは、バラゴンはどうだ?」
成宮(やはり知っていたか。)「バラゴンは任務遂行のため今、撃退しました。死んではいません。」
国木田「そうか。ではそのバラゴンも回収してきてもらおう。」
成宮「なんですって!?」
国木田「バラゴンが目を覚まし、また被害が出たらどうするんだ。それにM機関で飼い慣らせば、大きな戦力にもなる。」
成宮「それはそうですが・・・。」
国木田「分かったら早く帰って来い。M機関に着くまでが任務だ。(遠足かよ。)」
成宮「・・・了解・・・。」
和村は持参していたロープをバラゴンの足に巻きつけ、もう一方のロープの端を国木田車に巻きつけ、M機関に帰還した。
――任務司令室
机をバンと叩く音が室内に響く。
国木田「成宮、どういうことだ。中尉は隊員たちの命を預かる存在だ。それに君ほどの者が、なぜ任務で負傷者を出す?」
成宮「いえ、
田村沙織は自分から深追いし、負傷しました。」
しかし国木田は瞬きもしない鋭い目でこちらを睨んでいる。
成宮「・・・・申し訳ありません。自分の不注意です。」
国木田「死んだはずのバラゴンが生き返っているように、今後もこのようなことが起こりかねん。できるだけM機関でも負傷者は出したくない。次からは十分、注意して任務に臨むことだな・・・!」
しかし成宮にも言い分はある。
成宮「しかし!入隊して本当に間もない者たちを、物資採取のような高難易度の任務に派遣することはいかがなものかと・・・!!」
国木田「・・・これは上司の命令だ。背くことは許さん。」
少し苦悶の表情を浮かべ、言い返した国木田。これ以上話しも無駄と確信した和村は、任務司令室を後にした。
――昨夜の廊下
こちらでも問題は起きていた。
優馬は隼人の胸倉を掴み、激怒した。
優馬「なんで田村さんを助けなかったんだ・・・・!!」
隼人「・・・昨日も言ったろ?・・・あいつの援護は絶対しねぇって・・・!!いっそのこと、あのまま逝ってほしかったぜ・・・。」
優馬「いくら嫌いでも死んでいいなんておかしいだろ!オレたちはMスクールから一緒に過ごしてきた「仲間」じゃないのか!?」
隼人「・・・うっせぇな。お前のその偉そうな説教、むかつくんですけど・・・!!」
優馬の手を振り払い、その場を立ち去ろうとする隼人。しかし今度は肩を掴まれる。
優馬「オレたちはチームなんだ。一人でも欠けたらダメなんだよ。・・・・・・・でも、お前のようにチームを乱す奴なんか、M機関なんかに必要ない!」
隼人「・・・・!!・・・離せっ!!」
優馬を押しのける。優馬は床に倒れこんだ。そのまま隼人はその場をあとにした。
―――翌朝、M機関の精鋭たちが見守る中、会議室に呼ばれた仮成宮隊。
玉木「・・・熊坂さん、揃ったようです。」
玉木祐太(たまきゆうた)。16歳という若さで史上最年少大尉にまで上り詰め、おまけに頭脳明晰な麒麟児。熊坂に才を認められ、それ以来、戦場では熊坂に忠義を尽くすべく奮戦する。
熊坂「うむ・・・。で、どうする成宮。田村沙織のケガも軽くはない。少しの間、任務を言い渡すのはやめておこうと思っている。そしてその穴をこちらで用意した者で埋めようかとも考えているんだが。」
沙織「・・・いえ、こんなケガなんともないです。大丈夫です!」
力強く反論する沙織。
ゴードン「けが人がガタガタぬかすな!・・・黙ってろ!」
ゴードン大佐(ごーどんたいさ)。かつてのX星人襲来時、尾崎たちとともにX星人殲滅に貢献した男。指揮能力にも優れている。
小室「大佐、おさえておさえて。」
小室中佐(こむろちゅうさ)。彼もX星人殲滅に従軍した者である。ゴードンに忠義を尽くす。
優馬「・・・成宮中尉、これでいいんですか?」
成宮「黙っていろ・・・。」
そんな中、隼人の脳裏にある記憶が蘇る。
(優馬「オレたちはチームなんだ。一人でも欠けたらダメなんだよ。・・・・・・・でも、お前のようにチームを乱す奴なんか、M機関なんかに必要ない!」)
隼人「・・・!」
その時。隼人が考えられない行動にでた。
隼人「このままで大丈夫です!!」
沙織「・・・!」
熊坂「どういうことだ。」
隼人「確かにケガは軽いものではありません。しかし、彼女が大丈夫と言っているんです!任務継続を祈っているんです!オレたちのチームには・・・・沙織さんが必要なんです!!」
優馬「・・・・隼人・・・!」
熊坂「・・・ほぅ。成宮、どうする?」
成宮「・・・はい、彼らたちがそういうのであればこの三人のチームで大丈夫かと。」
玉木「分かりました。では、これで会議を終了にしたいと思います。」
ざわざわざわ・・・。
優馬「・・・どういう風の吹き回しだ?」
隼人「別に?・・・お前の言葉に動かされただけだよ・・・。」
優馬「ほぉ~。」
最終更新:2007年04月08日 20:19