すべての始まり


眩しい。

真夏の中ベンチで寝ていたせいか顔が日焼けしてヒリヒリする上に喉が乾いてきた。

理系の大学生 白崎 都志

「モシモシ、聞いている?」

同い年の女学生が顔を覗き込む。

「眠い。」

「いや、眠いじゃないでしょ。」

彼女はそう言って日焼けで痛んだ皮膚を摘み双方に伸縮させる。

痛みに耐えきれなかった彼は痛いと二回繰り返し言って起き上がり、コンビニ弁当に付いていたお絞りで顔を冷やした。

「研究室で何作ってるの?」

「この物質の使い道を探している、別にこれといった物を作っているわけじゃないよ。」

「ところで私の音楽プレイヤー壊れたんだけどみてくれない?」

「もしもし、いきなり話題変換しないで、しかもそれ専門分野じゃないから。」

「それじゃあ、治しておいてね。」

「おい!人の話全然聞いてないな!」

そのまま走り去って行くのを見てそのままその音楽プレイヤーを見る。

「・・・新しい物を買った方が安いぞ・・・」

音楽プレイヤーウォーキングをいじってみるとボタンの接触が悪くなっていた。

ジャンクショップでも行って新しいボタンを買って直すことにした。

彼が言っていた物質とは電気抵抗が限りなくゼロに近く、下手したら銅や金より低い、また金より柔軟性が高く加工も容易。

そして柔軟性だけではなく、材質の具合で硬さも調整できる万能な物だ。

試しにこの素材でモーターを作って電池ではなく電波で使った物。

実際に電波を流してみるとモーターが作動した。

力がどれぐらいあるかを確かめるために、ミニ四駆にモーターを積み走らせると電池に比べ弱い上にスピードも遅いが電波を使ってのことなので大した成果だと言われた。

研究室に戻ると使い道について考えてみた。

「・・・・使い道は部品関係で間違い無いね。問題はそれでどう使うか・・・
待てよ、宇宙でも使えるかな?光がなくても自然に出来た電波なら腐るほど飛び回っているしソーラーパネルを使う必要が。」

まだ、正式に決まってもいないのに夢をはびこらせていると、パソコンのモニターを見る。

これからの可能性について、色々頭の中で勝手に構築していると何故か急に眠たくなってきた。

時計の秒針の音が鳴り響く中、修理を頼まれたウォーキングは何もない白い机の上を支配していた。

スウスウと寝息をたてている都志が重い目蓋をうっすらと開ける。

しかし、しっかりと開けることが出来ない、しかし彼はそれは開けることができないのではなく、開けているが何も見えないことに気づかなかった。

いや記憶がないことが。

最後に見た光景は闇だった。

第二話へ


最終更新:2011年08月03日 23:44