ある日の昼下がり。連日の過酷な依頼をこなす日常からやっと一日の余暇をひねり出してつくった、貴重な休日の優雅なひととき。4人の冒険者は、「鍋と樽」に出るのもおっくうに感じ、宿屋の食堂で簡単な昼食をとり、それぞれまったりと過ごしていた。…すると、アルマがはたはたと駆け込んでくる。
GM:アルマ「あ、いた。ちょうどよかった。ちょっとあなたたち、闘技場にお手伝いに行ってきて頂戴」
ビーチェ:闘技場?また何故ですの?
エミール:このまちには闘技場というものがあるのですね
タリスカー:闘技場…怖いですね
GM:アルマ「あなたたち昨日もおとといもロクに依頼なんてこなしてないでしょう?」
エミール:そんな…結構お仕事させていただいたつもりなのですが
スカァサ:路銀稼ぎ程度でいいのよ、私は
ビーチェ:それに今日は休日と…ええ、たまの休日ですのよ?
GM:アルマ「…はい。ということでこの依頼行ってきて頂戴」
エミール:…
GM:「ついさっきね、闘技場の職員の人が駆け込んで来て依頼されたの。闘技場でやるショーに使う予定だった動物が逃げ出しちゃったんだそうよ。それで捕まえる手伝いが欲しいってことなの」
スカァサ:管理がなってないわ
エミール:猛獣ですかね
ビーチェ:はあ…それを私たちに、と
タリスカー:ショーが上手くいかない、なんてダンサーとして許せませんね
GM:アルマ「なんだかすごく慌てた様子で、今すぐ人手が欲しいって言っていたわ。他に手の空いている冒険者もいないし、ハイ、チャッチャと行ってきて。 い い わ ね ? 」
タリスカー:強引ですねえ…
ビーチェ:少し無謀なのではないかしら…(ボソリ
スカァサ:まぁいいわ
エミール:なんだかすごく都会的な依頼ですね。ワクワクします
アルマから宿を追い出された冒険者たちは、闘技場への道すがら、即席の仲間とあいさつを交わす。
タリスカー:はじめましての方が多いですね。ダンサーのタリスカーと申します。
スカァサ:スカァサ、旅人
エミール:まだまだ新米冒険者のエミールです
ビーチェ:御機嫌よう、皆様(私が一番レベル高かった!
タリスカー:頼りにしていますよ
ビーチェ:いえ、こちらこそ頼りにさせてもらいますわ。
エミール: 着いたようですね
GM:職員「ああ!依頼を受けてくれた冒険者の方ですね!?待っていました!さぁ、こちらです!早く!」
ビーチェ:受けたと申しますか受けさせられたと申しますか
スカァサ:忙しないわ
タリスカー:…ちょっと、状況の説明を
エミール: ショーの動物が逃げ出した…としかお聴きしてないのですが
GM:職員「ああ、そうだったんですか!実はですね、搬入作業中だった闘牛用の牛が三頭、檻を壊して抜けだしてしまったのです!」
ビーチェ:闘牛、ねえ…
タリスカー:牛ですか…
GM:職員「一頭だけならまだ我々のみでなんとかなったのですが、最初に暴れだした一頭が他の檻にまでぶつかったせいで大人しくしていた二頭も興奮させてしまい…」
スカァサ:それは大変ね
GM:職員「さすがに三頭同時では今いる係員のみでは手に余ってしまい、冒険者の方々にご協力をお願いしたく、依頼したわけなのです!」
エミール:これは…力仕事ですかね
GM:職員「牛達は第2会場の中で暴れまわっています。今はなんとか出入口の扉をふさいで閉じ込めていますが、檻を破るほどの力のある牛達ですから、これもいつ破られるかわかりません。ですので、どうか!あの暴れ牛たちをどうにかして食い止めて欲しいのです!お願いします!」
タリスカー:食い止める、と言われても…
スカァサ:もう少し檻を頑丈にした方がいいんじゃないかしら
ビーチェ:まあ、これで人的被害が出ても嫌ですし
エミール:とりあえず協力いたしましょう。まちに逃げたら大変ですから
GM:職員「ああ、ありがとうございます!それでは、こちらの捕縛縄をお持ち下さい!本来はもっと大型の魔獣などに使うものですが、念のためです。こんな事態になってしまった以上、牛を殺してしまうことになっても仕方ないと思ってはいますが…それでも一応商品ですので、できましたらあまり危害を加えず、捕獲していただけると有り難いのです」
ビーチェ:もう、皆様無理難題を…
タリスカー:難しいことを仰る
スカァサ:どうせ刺して殺してしまうのに
GM:職員「それではあらためてお願いします!牛は第2会場です!ここから中央のスタッフエリアに入って、すぐ右の道を行くと場内へ出られます!よろしく頼みましたよ!」
職員に送りだされた4人は、第2会場を探して奥へ進む。
タリスカー:我々がやられたら元も子もないですからね…捕獲できればいいですが、拘りすぎてやられないようにだけ気をつけましょう
スカァサ:こっちかしら。迷子になりそうだわ
エミール:そちらはスタッフエリアですね。関係者立ち入り禁止のようです
タリスカー:こっちじゃない?
ビーチェ:奥行って右ね
スカァサ:奥の……右?
エミール:ああ、これですね。家具が積まれています
ビーチェ:あら、バリケード
タリスカー:物々しいですね
エミール:みなさん準備はいいですね?
ビーチェ:ちょっと待ってくださいます?隊列を確認したいのですけど
スカァサ:ふむ
タリスカー:一応、私は前衛です。この剣を振り回すのが精一杯なので、守ってくれます?
エミール:女性に頼るわけには…
スカァサ:まぁ、最悪牛が突っ込んでくるくらいよ
ビーチェ:私も前に出ることはできますが、後ろにいるに越したことはないのですけど
タリスカー:あと、別に女性とは限りませんよ、オレは。男とも限りませんがね?
エミール:あら…ではタリスと私で牛を捕まえます
スカァサ:男の子たちが体張って守ってくれるわ
エミール:最悪取り逃したら…お願いしますね
ビーチェ:分かりましたわ。では捕獲はあなた方に任せますわ
タリスカー:ま、頑張りましょうエミールさん
スカァサ:もういけるかしら?
エミール:ええ。バリケードをどけます
エミールが積み重なった家具をどけ、4人は牛が暴れているという第2会場へと足を踏み入れた。
スカァサ:広いわね
エミール:いた…あれが檻を蹴破ったという牛…思ったより大きい
ビーチェ:確かに3頭、ね?
タリスカー:…いやー、怖いですねえ
エミール:できるだけ傷つけたくはありませんが、自分の命再優先で取り組みましょうね
タリスカー:ですね…
ビーチェ:分かりましたわ
スカァサ:任せなさいな
牛達はかなり気が立っており、また会場の壁を壊すほどに力もあるようだ。そんなものが街中にでも逃げ出してしまっては一大事だ。なんとしてもここで食い止めなければ!
⇒アクティブシーンに移行します。
タリスカー:…全部オレの方に向かってる!?
スカァサ:スリーピング! …あら?
エミール:スカァサの失敗は珍しいですね。でも大丈夫。私が捕まえます。さあ覚悟なさい
エミールは太い捕縛縄を使い、手前の暴れ牛を縛り上げる。その隙に一頭の牛がエミールを突き刺そうと突進し、スカァサがスリーピングでその阻止を試みた。
スカァサ:スリーピング!…だめね
タリスカー:…オレの方に突っ込んでくるかと思えば
ビーチェ:プロテクション!
牛の角がエミールの内臓を貫こうとしてその瞬間、ビーチェによる魔法の盾により、かろうじて致命傷は免れた。
エミール:…ッ!!…!生きてる…
ビーチェ:プロテクションがなければ一撃であったかもしれませんわね。念には念を入れておきましょう…ヒール!
エミール:感謝します。この赤い服が…関係ないですかね
スカァサ:ひらひらの外套がダメなのよ
ビーチェの神聖魔法によりエミールは動きの速さを取り戻し、仇敵となった牛を縛り上げる。タリスカーは最後の一匹に慎重にせまり、その援護となるよう、スカァサから誘眠の魔術が放たれた。
スカァサ:やっと寝たわ。獣は効き辛くて仕方ない
エミール:ああ、魂の質が違う相手には、そういう魔法は難しいのですか
ビーチェ:後は眠った牛だけね
最後はタリスカーが鼾をかく牛に近づき、起こさないようにそっと縄を掛けた。
これでもう、ひとまずは牛が人を傷つける心配はなくなっただろう。
エミール:お見事
タリスカー:ふぅ、眠っていたお陰で助かりました
スカァサ:やれやれ、もう少し魔法の精度を上げなきゃね
エミール:私はいつもどおり迂闊でした。
ビーチェ:いえ、それを補うのが人、そして仲間ですから。上手くいったようで何よりですわね
エミール:…この牛たち、結局ショーで殺されてしまうのですか?
スカァサ:でしょうね、きっと。それが嫌で暴れたのかもね
ビーチェ:さあ、そこまでは存じ上げません
タリスカー:…それは多分考えない方がいいですね、エミールさん
エミール:世界との関わりにおいて、役割は選べないもの…せめて苦痛のないように祈りましょう
スカァサ:ま、なんでもいいわ
ビーチェ:さあ、かえって休暇の続きをいたしましょう
冒険者たちは、抵抗できなくなった牛をもっと頑丈な魔獣用の檻に入れる作業を手伝ったのち、宿屋へと戻るのだった。
⇒クエストクリア!
最終更新:2016年11月08日 17:36