「破壊教徒の聖祭」リプレイ

破壊と再生の神シヴィテールを奉ずる地下教団は、その教義の過激さ故に取り締まり対象とされている。
ある日、僅かに生き残った狂信者たちが、リーンとそこで生きる人々を生贄とすべく最後の「祭り」をはじめた。ギルドを通じ、各地区で爆発物を持って暴れるテロリストを討伐・拘束する冒険者たち。手練の活躍により破壊音や悲鳴が収まりつつある状況の中、治安隊が本命の工作員を追い詰めたとの情報が入った。
現場には巨大かつ強力な魔法陣の中、隊員数名と黒ずくめの男たちが倒れていた。傷ついた治安隊員は、駆けつけた冒険者に恐ろしい言葉を残して力尽きる。「この魔法陣にはリーン全体を吹き飛ばせるほどの恐ろしい力がこめられているようです…絶対に起動させてはいけない…あなた方冒険者の中にも彼らの仲間がいるようです…気をつけて…リーンを頼みます…うっ…!」
崩折れる治安隊員に冒険者たちの興味が注がれた僅かな隙をつき、黒ずくめの男の一人が魔法陣の中心に這い寄った。「嗚呼…偉大なるシヴィテール!破壊と安寧をもたらす我が主よ!まずはこの忠実なる下僕の血をお受け取り下さい!!同士たちよ、よくぞ来てくれた!この欲望の街リーンに必ずや熱と炎の祝福を!シヴィテールの御前で逢おうぞ!!」
恍惚の表情で叫んだ男は、自らの喉元をナイフで掻き切る。
鮮血を浴びた魔法陣は不気味な光を放ちはじめた!

侍キョウ:…冒険者の中にも…でござるか
リリウム:厄介ね…
エサルレッド:魔方陣にゃ近づくな。不用意に近づいたら敵とみなすぜ
ゆきとん:おぉ、怖い…とりあえず皆、離れるんや。うちは退散やね
侍キョウ:…そうでござるな。魔法陣には近づかぬ。
フィン:とりあえず周りを殴る。疑わしきは罰せよだ
リリウム:…ふぅん。冒険者に襲い掛かろうというわけ?
エサルレッド:おお、いい度胸じゃねえか
カティノ:ひええ…とは言え自分以外は信用できない…
シェリー:どうかしら。フィン。そんな貴方がこの場をかき乱しているのではなくて?
フィン:信じられるのは自分だけ…なのは分かるだろう?
侍キョウ:恐ろしいことを考える輩よ、フィン

応えながら侍キョウは静かにエサルレッドの隣に立つと、腰を深く下ろし、刀に手をかけた。

侍キョウ:だが…今この場にいたっては是も非もない!拙者はリーンのため、小より大を取る!

エサルレッドは不意をつかれたものの、侍キョウによる死角からの一撃を剣でいなす。

侍キョウ:ふふ…さすがはエサルレッド殿。噂に違わぬ剣捌きよ
エサルレッド:…ぶっ殺す
ゆきとん:うちは逃げるのみ…怖いから逃げに徹するでぇ…
リリウム:…やっていられない。さっさと抜ける準備だけしておこうかしら
カティノ:キョウさんなら私の魔法でなんとかなる…まずは…

カティノが小さく呪文を唱えると、睡眠を誘う魔力がゆきとんを襲い、その意識を奪う。さらにリリウムからも眠りの魔法がフィンに向かうが、これは不発に終わった。

ゆきとん:うわぁ!ちょ、それ無理やって!…ぐぅ…Zzz…
カティノ:ふっ、迂闊に近寄るとこうですよ!
侍キョウ:カティノ殿がゆきとんに、リリウム殿がフィン殿にスリープ…?いずれにせよ両者は別陣営と見えるか
リリウム:…さっさと後ろのお嬢様然とした彼女の所にでも行ってくれないかしら…起動されるわよ?
シェリー:なっ!?私のことかっ
フィン:そこはカティノが俺たち側なら射程範囲内だ。今更行っても間に合わん

先ほどの意趣返しとばかりに、フィンが魔法使いに向かって俊敏な一刺しを放つが、リリウムは超人的な集中力でそれを躱す。

リリウム:お馬鹿さんね…今ので捉えたと思った?

戦士同士の対峙は続いている。居合による刀の一閃も、剣を使った熟練の防御技でエサルレッドの身には届かなかった。

侍キョウ:ちぃ…おのれ
エサルレッド:どうしたよ、狂信者
侍キョウ:何を言う、狂人めが

膠着状態を打ち破るべくカティノから眠りの魔法が放たれる。その対象はエサルレッド!

エサルレッド:眠くないっ…てめえらっ!

エサルレッドの反撃が侍キョウを捉える!生命が失われるほどの傷を受けながら、侍キョウは滑るように疾駆し、魔法陣の中心部にたどり着いた。

侍キョウ:良いぞカティノ殿!これでリーンは救われる…!
シェリー:…止められない!?
リリウム:…ッ、しまった!?
フィン:そっちか!
侍キョウ:そう、救われるのだ!!!!!

侍キョウは最後の力を振り絞るように自身の血と祈りを魔法陣に捧げる…と、大地が僅かに震えはじめた。

シェリー:私に…私達にそう多くの時間は残されていないようで
エサルレッド:おい、まともなやつ!止めるぞ!!
カティノ:くっ、私の魔法なら起動する前に!

「なーんてね」とおどけた声とともに、眠りの魔法が再びエサルレッドを包み込む。が、彼の強靭な精神は、その魔力を弾き飛ばした。

カティノ:なんですって…
エサルレッド:カティノも狂人だ!
シェリー:…くっ、間に合わない…?
リリウム:これは…詰んだかしら?
侍キョウ:滾れ、滾れ…!シヴィテールの力よ…!!
シェリー:あなた、今一体何をっ

シェリーが邪神への祈りを遮るべく踊るように剣を振るうが、侍キョウがその手で複雑な印を結ぶと、その身が影となって切っ先から逃れる。エサルレッドの渾身の一撃もカティノには届かなかった。一方眠らされていたゆきとんが覚醒する。

ゆきとん:…はっ!現状説明を!
エサルレッド:とにかくカティノを潰せ!
カティノ:うぐぐ…
ゆきとん:了解!うちは逃げる!さらばだ!

混沌とした状況に恐れをなした(?)ゆきとんが身を隠す。フィンはリリウムの動きを目の端に捉えながらも、邪神への祝福を続ける侍キョウへと近づいていく。

侍キョウ:ふ、ふ、ふ…さあ、我が神が目覚めまでもう少し!!!!
シェリー:あなたが目を覚ましなさい
エサルレッド:させねえよ!
リリウム:フィン、侍キョウがあなたの範囲内よ…これでも私を潰そうとするならあなたも敵ね?
フィン:ああ、そうだな。だが安心しろ!

シェリー、エサルレッド、フィンそれぞれの得物が侍キョウの身体を切り裂く!完全な致命傷を受けながらも、狂信者の顔は歓びの感情を湛えていた。

侍キョウ:…かふ…っ、ふ、ふふふ…人は所詮、血によってしか救われぬのだ…
エサルレッド:うるせえ。とっとと死んどけ
シェリー:これ以上、魔方陣を触れさせるわけには…
カティノ:くっ…同士キョウがやられましたか

フィンは本性を現したカティノに鋭い槍の一撃を放つが、魔女は「おお、こわいこわい」と人を食ったように跳ね回る。加勢に向かおうと動きはじめたエサルレッドの脳内へ、シヴィテールのものであろう破壊と殺戮へ誘う囁きが響き始める…。

エサルレッド:ぐっ…
シェリー:瘴気が、エサルに…!?
エサルレッド:…ああ、もう全部面倒臭え。終わっちまえよ…
リリウム:…駄目ね。これは
シェリー:…最も相手にしたくない冒険者でしたわ
フィン:エサルレッドのことはお前達に頼んだ
カティノ:さあ…あなた方もシヴィテール様の力の前に跪くのです…

狂乱状態となったエサルレッドを止めるべく、リリウムから風の刃が放たれる。彼はそれを避けようともせずに大剣を振るうが、その切っ先は空を切り続ける。

フィン:エサルレッド、お前の動き、鈍くなったんじゃないか?
エサルレッド:どうだっていいんだよ、全部終わっちまうんだ…面倒臭え
リリウム:…

邪神による教化の囁きは続いている。エサルレッドに続いてその甘美な声に耐えられなくなったのはシェリーだった。

シェリー:…っ…身体が、言うことを利かない…!?
リリウム:あら。あなたもそちら側なの?
フィン:楽にしてやるぞ
シェリー:そこを退きなさい、フィン! でないと、私…

フィンの槍とシェリーの剣が交差する。カティノの大地の魔法による支援もあり、フィンは深い傷を受けてしまったが、最後の気力を振り絞って立ち続ける。

シェリー:ぐっ…。駄目…駄目、なのに…っ!
フィン:そうそう倒れると思うなよ?

リリウムとエサルレッドの闘いも佳境に入った。剣と風、双方の刃が直撃し、互いの身体を貫く。

リリウム:…痛いじゃあないの
エサルレッド:痛みのねえ世界につれてってやるさ

先にとどめを刺すべくリリウムから放たれた風魔法は、カティノの呪文によって術者自身に跳ね返り、その意識を刈り取った。

リリウム:くっ
カティノ:惜しかったですね、フフフ…
エサルレッド:後はお前さんだけだぜ、フィン。楽になっちまえ
カティノ:さあ…シヴィテール様の前に帰依するのです…
フィン:あいにく俺は諦めが悪いのでな!
ゆきとん:少し待つでぇ
エサルレッド:ゆきとんが居たな…最後はお前か?

物陰から姿を現したゆきとんは、一瞬希望に目の光を蘇らせたフィンの期待を裏切り、魔法陣の中心で祈りの声を張り上げる!

ゆきとん:ふっふっふっ…これも全部、シヴィテール様の為!
シェリー:…まだ、燃ゆる命の臭いが、しますの
エサルレッド:ぶっ殺せ
ゆきとん:リーンに滅びを!

戦いのさなか、まだかろうじて息を残した冒険者たちは、突如として強い光に照らされた。
完成してしまったのだ。狂った教義の信奉者達の造りあげた、そのおぞましい成果が。
リーンの守護者は身を灼く凄まじい光と音と衝撃に包まれながら、それを悟った…。


勝利ポイント

【工作員陣営】
侍キョウ:魔法陣起動成功→勝利条件達成
カティノ:魔法陣起動成功→勝利条件達成
ゆきとん:魔法陣起動成功→勝利条件達成
【冒険者陣営】
リリウム:魔法陣起動阻止失敗→勝利条件未達成
フィン:魔法陣起動阻止失敗→勝利条件未達成
エサルレッド:狂乱状態で止め失敗→勝利条件未達成
シェリー:狂乱状態で止め失敗→勝利条件未達成
最終更新:2017年09月20日 17:09