KPIとひと口に言いますが
ITサービス、ITサービスマネジメント、といった類いの本を読むと、よく出てくるのがKPI(Key Performance Indicator)という用語です。「
コールセンター白書2008」でもご多分に漏れず第1章から登場します。恐らくどのコールセンターでも少なからず関っている事と思います。具体的にどんな事が書かれているのかを見る前に、KPIということで立卦してみると、
得卦 澤風大過
互卦 乾為天
之卦 澤天夬
を得ました。
これは、KPIマネジメントが本来の在り方を逸脱していわゆる「管理のための管理」になりやすい傾向にある、という事を意味します。つまり、コールセンターの品質や業務の改善の為の指針となるべきところがノルマやプレッシャーをもたらすものに変貌してしまっているのではないか、という点が危惧されます。筆者は品質管理のリーダーをやっていた事があるのですが、計数や指標を用いる時は、よほど注意深く運用しないと数字を上げる事ばかりに注意が行ってしまい、その他のバランスが崩れる事もあります。最近のようにあちらこちらでKPIが叫ばれると、そういう事が置きやすくなるのでは、と思います。
コールセンターも人間が運営しているので、人がそこで働くとはどういう事かを根底にふまえていないと、本来より良い結果を目指すべきものであっても、十分にその威力を発揮出来なくなります。
本当の難しさ
KPIの効果を期待出来るようにする為には、それなりの前提条件を満たす事が必要です。KPIそのものは、決まった手順で計測、計算を行なえば誰がやっても一定の結果を得る事が出来ます。しかし、それが自分のセンターの実情に合っていて、その結果を有効に次の業務改善に役立てられるか、というと、なかなか教科書通りにいかないのが現場というものです。これは、筆者が以前「サービス業のTQC」活動のリーダーを経験した時に得た教訓のひとつです。他の計数や手法もそうですが、そのものの意味や技術を覚える事よりも、それを自分の組織に適合させる事の方が、はるかに難しいのです。そして、それがうまく出来ない場合に、期待された効果が得られなかったり、雑多な作業ばかりが増えて却って効率が下がってしまったりするのです。
コールセンター白書2008の第1節では、KPIの必要性を説き、コールセンターで熊楊なKPIの紹介をしながらも、有効に活用出来ている例がまだそう多くはない現実について指摘しています。
KPI自身のコストパフォーマンスについて
どのような作業であっても、組織内で人が動けばコストが発生します。そのコストは誰かが回収しなければ、企業の経営は成り立ちません。KPIの場合はどう考えれば良いのでしょうか。例えば、目的が「自分たちのセンターのパフォーマンスを知る」事にある、とした場合は目的そのものが収益性とは関係のない次元のものなので、このKPI活動は全面的にコストである、という事が出来ます。一方、「応答ミスによる余剰コストを10%減らす」といった事が目標の場合、改善プロセスの流れとしては、「現在どの位の応答ミスがあるのか」を測定し、改善策を実施し、その結果どうなったかを再度測定して、確かに目標が達成出来たかどうかを評価する事になるので、KPIのコストは削減されたコストの一部ないしは全部として計上する事も可能になります。
このように、KPIを運用する時は、闇雲に業務の中にねじ込んで何でもかんでも数字を出せば良い、というのではなく、あらかじめ位置づけを決め、それだけでコストパフォーマンスが明確になる様にしておく必要があります。
どうやって自社に適合させるか
では、どのようにして自社にKPIを適合させ、計測するだけでなく、事業の上でのパフォーマンス向上に役立てられるかについて考えてみましょう。
自社に必要な指標は何か
本当にKPIが必要でしょうか?
業界の流れや他社がやっているから、といった情報を見て、脅迫観念にとらわれてはいませんか?
自社に必要なKPIがあるとすれば、それは一体どういった物なのか、マネジメント視点から、現場視点から、それぞれ洗い直してみる事が、まず必要ではないでしょうか。KPIはあくまでも道具であり目標達成の為の手段である、というコンセプトに立ち、適正な目標設定を行い、達成の為に必要ならKPIを採用する、という方向性で検討してみましょう。
自社で出来る事と出来ない事を分ける
人がいないのに人手のかかる作業は出来ません。お金がないのに外部に頼む事も出来ません。このように、明らかに実施する事自体に無理があるのに無理してでもKPI管理を実施するのは、多くの場合、不毛な結果に終わります。そればかりか、KPIアレルギーな人を沢山産み出して終焉を迎える事にもなりかねません。人を投入して、手間をかければ質の高いKPIが採取出来て、緻密な分析結果が出せるかもしれませんが、先にも述べた様に、それは手段であって、目的ではないので、そこに重きを置くべきではありません。
KPIとして考えられる様々な指標を、必須、あれば良い、なくてもよいにランク分けして必須と考えられるものがどれ位あるのか、それを採取する事が現実的なアクションなのかどうか、現実的でないとしたら、その理由、と、掘り下げていくと、自社で何をすべきかが次第にはっきりしてくると思います。
KPIを得た後
一番問題なのはここかもしれません。手順は決まっているのですからKPI採取まではやれば出来る事なのです。しかし、その結果をどう判断するのか、次にどんなアクションを起こせば良いのか、一般的な情報はあってもそれに自社を適応させる事が出来るのか、よく判らない場合もあると思います。
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最終更新:2009年08月27日 11:28