物質に光を入射し、原子内から軌道電子を飛び出させる現象を光電効果といい、飛び出す電子を光電子という。
五十鈴「高校物理をやった人なら話自体は覚えているかしら?」
七海「なんとなくは。」
五十鈴「高校物理をやっていない人のために軽く説明しておくわね。」
五十鈴「光電効果っていうのは金属に光を当てたとき、ある一定以上の振動数の光を当てることで内部の電子が飛び出す反応のことよ。」
七海「ああ、そんなのもあったなあ...」
五十鈴「振動数が低い波だといくら光の強度を上げても電子は飛び出さないの。」
五十鈴「詳しくは説明しないけど、光が波と粒子の二重性をもつことの発見につながった実験なのよ。
五十鈴「この時飛び出す電子を光電子といって、この電子のエネルギーは E=hν-W で与えられるわ。」
五十鈴「h はプランク定数っていう比例定数、ν は光の振動数、W は仕事関数といって電子を金属内から電子を飛び出させるために必要なエネルギーよ。」
五十鈴「言い換えれば、光子のエネルギーから電子の結合エネルギーを引けば、光電子のエネルギーになるわ。」
七海「光のエネルギーより仕事関数が大きかったらどうなるの?」
五十鈴「何も起きないわ。仕事関数ってようするに電離エネルギーのことなの。」
七海「そっか、電離しないから何も起きないんだね。」
五十鈴「光電効果が起きる確率は原子核と電子間のクーロン力が強い電子のほうが大きくなるわ。」
七海「どうして?」
五十鈴「難しい話だから詳しくは解説しないけど、この反応には原子核も関与するの。」
五十鈴「だから一番原子核に近いK軌道の電子が放出されやすいのよ。気が向いたらコラムで解説するわね。」
七海「電子が遷移...ってことは特性X線も発生するの?」
五十鈴「よく気付いたわね。特性X線ともう一つ発生しうるものがあるけどわかる?」
七海「えっと...オージェ電子?」
五十鈴「その通り。それで光電効果が起きる確率だけど、これは原子番号の5乗に比例し、エネルギーの3.5乗に反比例するってことを覚えておいて。」
五十鈴「私が作ったからちょっと雑な図だけど光のエネルギーと線減弱係数の関係を示したグラフよ。」
七海「線減弱係数って何?」
七海「ほんとガバガバ…」
五十鈴「気にしない。」
七海「L吸収端、K吸収端って書いてるところはなに?」
五十鈴「電離エネルギーと光のエネルギーが一致した時に線減弱係数のジャンプがおきるのが吸収端よ。」
七海「なんでそんなことが起きるの?」
五十鈴「光子のエネルギーがK軌道の電子の結合エネルギーより小さくなったらそいつは電離できないでしょ?だからそれより小さくなったらガクッと断面積が小さくなるのよ。」
七海「あぁ、なるほど。」
最終更新:2018年07月03日 21:57